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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200680110 | 審決 | 特許 |
無効200680187 | 審決 | 特許 |
無効200680009 | 審決 | 特許 |
無効200680070 | 審決 | 特許 |
無効200680238 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 E04G |
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管理番号 | 1159391 |
審判番号 | 無効2005-80351 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-12-05 |
確定日 | 2007-02-19 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3672848号発明「多層型高所作業足場装置の安全柵装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3672848号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3672848号に係る発明は、平成13年7月6日に特許出願され、平成17年4月28日に特許権の設定登録がされ、その後の平成17年12月5日に朝日リーラック株式会社よりその特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明の特許について無効の審判が請求され、これに対して被請求人より平成18年3月10日付け答弁書が提出され、請求人より平成18年6月12日付け弁駁書が提出され、その後の平成18年10月27日に口頭審尋が行なわれたものである。 2.本件発明 (2-1)本件発明1及び2は、本件特許の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 (本件発明1) 「縦枠バーを支柱バーに成す方形枠体のフレーム体を並設して該支柱バーを上方へ継ぎ足し連結すると共に、該並設フレーム体の上端間に足場板を渡設敷設する多層型高所作業足場装置に装着する安全柵装置にして、前記多層型高所作業足場装置の外側の前記支柱バーに着脱自在に装着する支承脚部と、前記足場板の手摺部を一体に備えて成り、該支承脚部は支柱バーを中間空所に収容する対称一対の脚管から成り、前記継ぎ足し連結の前記支柱バーに沿ってせり上げスライド自在にして、さらに操作レバーを有する挟着係止片を該脚管に設け、該挟着係止片によって前記中間空所内の支柱バーを挟着係止自在にした固定係止手段を備えて成る構造を特徴とする多層型高所作業足場装置の安全柵装置。」 (本件発明2) 「支承脚部が支柱バーを中間空所に収容する対称一対の脚管から成り、該脚管のそれぞれに手動操作によって逆八字状・開脚状を呈するレバー形状の落下防止用係止片を備え、該逆八字状の該落下防止用係止片をフレーム体の横桟の上側に係合させて前記支承脚部をフレーム体に係止し、かつ、該落下防止用係止片を前記開脚状にして該支承脚部の前記支柱バーのせり上げ移動自在にした固定係止手段を備えた請求項1に記載の多層型高所作業足場装置の安全柵装置。」 (2-2)本件特許の発明者等に関する表記 (イ)特許出願の願書の発明者の表記 本件の特許出願の願書を見ると、その【発明者】の欄には「諸戸 勲」との記載があり、他に発明者の記載はない。また、その【特許出願人】の欄には「株式会社扶桑工業」との記載があり、他に共同出願人の記載はない。 なお、本件特許の特許出願書類を精査しても、上記「諸戸 勲」以外の者から本件の特許出願人が特許を受ける権利を承継した事実を示す手続書類は見いだせない。 (ロ)本件特許公報の発明者の表記 甲第7号証の本件特許公報を見ると、上記(イ)と同様に、その【発明者】の欄には「諸戸 勲」との記載があり、他に発明者の記載はない。また、その【特許出願人】の欄には「株式会社扶桑工業」との記載があり、他に共同出願人の記載はない。 そして、本件特許は、本件特許公報に記載のとおりのものとして、平成17年4月28日に、その特許権の設定登録がされている。 3.請求人の主張 審判請求人は、「本件特許第3672848号発明の明細書の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」(請求の趣旨)との審決を求め、下記の証拠を提出して、本件特許は、「発明者でないものであってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものである」から、特許法123条第1項第6号に該当し、無効とすべきものであると主張する。 (証拠) 甲第1号証:有限会社イワタテクニカルサポートの岩田勝之が作成した「報告書」 甲第2号証:確認テストの撮影写真 甲第3号証:旧試作品の撮影写真 甲第4号証:旧試作品の追加撮影写真 甲第5号証:早期審査に関する事情説明書 甲第6号証-1:意見書 甲第6号証-2:手続補正書 甲第7号証:特許第3672848号公報 甲第8号証:特開2003-64863号公報 甲第9号証:「土木工事用わく組足場安全施工マニュアル(案)」、29頁、32頁、39?40頁 なお、審判請求人は、平成18年10月27日の口頭審尋において旧試作品の見本を持参し、提示した。 4.被請求人の主張 被請求人は、平成18年3月10日付け答弁書において、本件特許第3672848号の発明は、その特許願である特願2001-205540号出願の願書に発明者として記載した「諸戸 勲」が真の発明者であるから、冒認出願によるものではない旨を主張する。 なお、被請求人は、同上答弁書により、その添付書類として「発明経緯書」及び多層型高所作業足場装置の購入を証明する書面としての「請求書」の写しを提出している。 5.旧試作品の構造及び甲第1号証の「図-3」の図面に示された構成について (5-1)旧試作品が備える構造について 有限会社イワタテクニカルサポートの岩田勝之が作成した「報告書」である甲第1号証によれば、平成13年5月15日に株式会社桑立工業へ持参した試作品(旧試作品)は、平成9年4月22日に製作されたものであって、同甲第1号証に添付された資料の写真「Photo-3」に示されたものである。 (ちなみに、上記写真「Photo-3」に示されたものと、口頭審尋期日に請求人が持参した旧試作品の見本とは、外観的に見て、相違がないものであって、後記するように、被請求人も、当該提示された旧試作品の見本が、外観的に見て、被請求人が借りたものと相違しないことを認めている。) ところで、同甲第1号証には、上記旧試作品の製作後の平成13年5月23日にまとめられた「先行手摺提案書」中の図面である「図-1-(1)?(4)」(注;( )内の数字は丸数字を示す。))及び同年11月9日に試作図として作成された「姿・納り図(図番STN-TSR01)」が「図-2」として、併せて添付されているところ、これらの図面には、上記写真「Photo-3」に示された旧試作品の外観からは知り得ない内部構造が示されている点及び例えば、「図-1-(2)」に「連動クランプハンドル」や「クランプハンドル」として示された部分と把持用のコ字型の取っ手との配置構成が上記写真「Photo-3」に示された旧試作品の配置構成とは若干異なる点が存在するものの、これらの異なる点を除くその余の構成については、相違がない。 そこで、上記写真「Photo-3」に示された旧試作品である先行手摺支柱の構成を、「図-1-(1)?(4)」(注;( )内の数字は丸数字を示す。)の記載用語等を参照して記載すると、旧試作品は、次の構成(以下、「旧試作品の構成」という。)を備えているということができる。 (旧試作品の構成) 「断面が方形状であって縦方向に長尺な一対の柱状体から成る支柱を備えており、当該一対の柱状体の間が、足場用の柱パイプをスライド自在に案内するために挟持可能に構成された先行手摺支柱であって、当該一対の柱状体が、柱状体の略中央位置と下方位置の、それぞれ左右の外側面に設けられた把持用のコ字型の取っ手と、柱状体の下方位置の対向する面側に突出するように設けられた「クランプ&ブレーキ」とこれを操作するための「クランプハンドル」と「連動クランプハンドル」と、柱状体の略中央位置の対向する面側に突出するように設けられた足場用の横パイプの上面側に係合する逆八字状・開脚状の一対の「ストッパー」と当該一対のストッパーの係合を解除するための「ストッパー解除レバー」と、当該柱状体の一対のストッパーより下方位置の対向する面側の2箇所に設けられた「ガイド兼外れ止め」用の二対のローラとを備えるように構成された先行手摺支柱。」 (5-2)甲第1号証の「図-3」の図面に示された構成 同甲第1号証の報告書によれば、平成13年5月30日に被請求人の諸戸より有限会社イワタテクニカルサポートの岩田勝之へ渡されたところの甲第1号証に添付された「図-3-(1)?(3)」の図面(注;( )内の数字は丸数字を示す。以下、「甲第1号証の図-3」という。)に示された構造を、当該図面に示された構造の理解を容易とした「構造イラスト図」として同じく添付された「図-4」の記載用語等を参照して記載すると、被請求人作成の甲第1号証の図-3には、次の構成(以下、「甲第1号証の図-3の構成」という。)が、記載されているということができる。 (なお、後記「6.」の「(6-1)」に記載したように、被請求人は、甲第1号証の図-3を被請求人が作成したものであることを認めており、また、答弁書に添付された「発明経緯書」によれば、甲第1号証の図-3が、多層型高所作業足場装置に装着される「作業用安全柵装置の基本構造」を示す基本構造図として作成されたものであると説明している。) (甲第1号証の図-3の構成) 「断面が略方形状であって縦方向に長尺な一対の柱状体から成る支柱を備えており、当該一対の柱状体の間が、足場用の柱パイプをスライド自在に案内するために挟持可能に構成された「シャフトクランプ治具」と称するところの多層型高所作業足場装置に装着される作業用安全柵装置であって、当該一対の柱状体が、柱状体の下方位置の対向する面側に突出するように設けられた「クランプ」とこれを操作するための「クランプレバー」と「連動レバー」と、柱状体の略中央位置の対向する面側に突出するように設けられた足場用の横パイプの上面側に係合する逆八字状・開脚状の一対の「ストッパー」と当該一対のストッパーの係合を解除するための「ストッパー作動ピース」とを備えるように構成された作業用安全柵装置。」 6.当審の判断 そこで、本件発明1及び2の特許が、特許法123条第1項第6号に規定する「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき」に該当するものといえるか否かについて、以下検討する。 (6-1)本件発明の特許出願日前の旧試作品に関する当事者間に争いのない事実について 平成18年10月27日の口頭審尋において、旧試作品に関する当事者間の経緯につき、次のことが確認された。 「1 旧試作品の貸出し及び回収について 「(有)テクニカルサポート」の岩田氏が旧試作品(半製品見本)を、桑立工業へ持参し、その後返却したことにつき、両者の間に争いはない。 2 本日、請求人が持参した旧試作品の見本は、外観的に見て、被請求人が借りたものと相違しない。 3 甲第1号証の「図-3」の図面は、被請求人が作成したものである。 4 同上作成した甲第1号証の「図-3」の図面を、被請求人が、請求人に送付したことにつき、両者の間に争いはない。」 (6-2)旧試作品の構成と甲第1号証の「図-3」に示された構成及び本件発明1及び2との各共通点について (イ)旧試作品の構成と甲第1号証の「図-3」に示された構成との共通点 旧試作品の構成と甲第1号証の「図-3」に示された構成とを対比すると、両者は、 「断面が方形状であって縦方向に長尺な一対の柱状体から成る支柱を備えており、当該一対の柱状体の間が、足場用の柱パイプをスライド自在に案内するために挟持可能に構成された先行手摺支柱であって、当該一対の柱状体が、柱状体の下方位置の対向する面側に突出するように設けられた「クランプ&ブレーキ」とこれを操作するための「クランプハンドル」と「連動クランプハンドル」と、柱状体の略中央位置の対向する面側に突出するように設けられた足場用の横パイプの上面側に係合する逆八字状・開脚状の一対の「ストッパー」と当該一対のストッパーの係合を解除するための「ストッパー解除レバー」とを備えるように構成された先行手摺支柱。」である点で、一致する。 (ロ)旧試作品の構成と本件発明1及び2との共通点 本件発明1と旧試作品の構成とを対比すると、その機能ないし構造から見て、両者は、 「縦枠バーを支柱バーに成す方形枠体のフレーム体を並設して該支柱バーを上方へ継ぎ足し連結すると共に、該並設フレーム体の上端間に足場板を渡設敷設する多層型高所作業足場装置に装着する安全柵装置にして、前記多層型高所作業足場装置の外側の前記支柱バーに着脱自在に装着する支承脚部と、該支承脚部は支柱バーを中間空所に収容する対称一対の脚管から成り、前記継ぎ足し連結の前記支柱バーに沿ってせり上げスライド自在にして、さらに操作レバーを有する挟着係止片を該脚管に設け、該挟着係止片によって前記中間空所内の支柱バーを挟着係止自在にした固定係止手段を備えて成る構造を特徴とする多層型高所作業足場装置の安全柵装置。」(以下、「一致点1」という。)である点で一致する。 同様に、本件発明2と旧試作品の構成とを対比すると、その機能ないし構造から見て、両者は、上記一致点1で一致すると共に、 「支承脚部が支柱バーを中間空所に収容する対称一対の脚管から成り、該脚管のそれぞれに手動操作によって逆八字状・開脚状を呈するレバー形状の落下防止用係止片を備え、該逆八字状の該落下防止用係止片をフレーム体の横桟の上側に係合させて前記支承脚部をフレーム体に係止し、かつ、該落下防止用係止片を前記開脚状にして該支承脚部の前記支柱バーのせり上げ移動自在にした固定係止手段を備えた多層型高所作業足場装置の安全柵装置。」(以下、「一致点2」という。) である点で一致する。 (ハ)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び2と旧試作品の構成とは、上記一致点1及び一致点2(以下、両者を「基本的構成」という。)で一致するということができ、本件発明1及び2が「足場板の手摺部を一体に備えて」いるのに対して、旧試作品の構成はこのような手摺部を備えていない点で、両者に一応の相違がある(以下、「相違点」という。)といえる。 しかしながら、基本的構成以外の上記相違点に係る本件発明1及び2の構成は、旧試作品がそもそも手摺を固定することを前提として使用されるものであることが(当業者にとって)自明な事項であるといえるから、これを予め設けたものとするか否かの相違は単なる設計上の微差にすぎないものであるというべきであり、当該相違点に係る構成は、両者の安全柵装置の(技術思想としての両発明の)同一性を否定し得るまでの構成上の相違であるということもできない。 そして、旧試作品がこのような手摺を固定することを前提として使用されるものである多層型高所作業足場装置の安全柵装置であることも、被請求人が有限会社イワタテクニカルサポートから旧試作品を借り受ける際に知り得ていたということができる(ちなみに、同上答弁書に添付された「発明経緯書」には、「1.平成13年2月頃に本件安全装置の製作の話がでまして、その時に未完成の見本があるから、それを持って行くとの事から平成13年3月頃 イワタテクニカルサポートの岩田氏がその半製品見本を私共桑立工業へ持参して・・・」と説明されている。)から、旧試作品の構成に上記相違点の構成を付加した構成も、被請求人が旧試作品を借り受ける際に同時に知り得ていた事項であったというべきである。 以上のことから、本件発明1及び2は、多層型高所作業足場装置の安全柵装置として、旧試作品の構成と実質的に同一の構成を備えた発明であるということができる。 (6-3)本件発明1及び2の真の発明者について 上記「(6-2)」で検討したとおり、本件発明1及び2は、多層型高所作業足場装置の安全柵装置として、旧試作品の構成と実質的に同一の構成を備えた発明であるということができる、言い換えれば、本件発明1及び2と旧試作品の構成とは、多層型高所作業足場装置の安全柵装置の基本的構成において完全に一致するものであるといえる。 また、上記「(6-1)」に記載したとおり、被請求人が、旧試作品を借り受け、その後返却した事実にも当事者間に争いがない。 ところで、被請求人が旧試作品を借り受けた時期については、答弁書に依れば平成13年3月頃であり、他方、請求人に依れば、平成13年5月15日頃とされている点で両者に若干の相違があるといえるものの、被請求人による甲第1号証の「図-3」の作成時期(答弁書に添付された「発明経緯書」によれば、平成13年6月末頃)は、被請求人が当該旧試作品を借り受けた後であることが明らかである。 そして、被請求人が甲第1号証の「図-3」を作成(平成13年6月末頃)してから、本件発明1及び2の特許出願(7月6日)をするまでの期間は、きわめて短期間にすぎないものであることから、被請求人が、本件発明1及び2を具体的に創案し、完成させた時期は、上記図面「図-3」の作成をした時期(H13.06月頃)とほぼ同時期頃であったと推認することができる。 そうすると、被請求人が旧試作品の構成と実質的に同一の構成を備える本件発明1及び2を、独自に、具体的に創案し、完成させたといえる時期は、旧試作品が被請求人の手許に存在したのと同時期頃であった、言い換えれば、被請求人が旧試作品を借り受けた時期と主張するところの平成13年3月頃から数えても、旧試作品を借り受けてから数ヶ月程度の近接した期間内であったということができる。 してみると、このような同時期頃ないし近接した期間内に、被請求人が、旧試作品に依ることなく、本件発明1及び2を独自に具体的に創案し、完成させたということは極めて不自然なことであるから、被請求人が旧試作品の構成と実質的に同一の構成を備える本件発明1及び2を創案できたのは、旧試作品が被請求人の手許に存在したことに起因するものと理解するのが自然である。 ところで、「冒認出願を理由とする無効審判における主張立証責任の分配について」は、「特許法123条1項は特許無効審判を請求できる場合を列挙しており,同項6号は,「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。」と規定するものであるが,特許法が上記のように「発明者主義」を採用していることに照らせば,同号を理由として請求された特許無効審判においても,出願人ないしその承継者である特許権者は,特許出願が当該特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたことについての主張立証責任を負担するものと解するのが相当である。」(H18. 1.19言渡し、 知財高裁 平成17(行ケ)10193 号・特許権 行政訴訟事件)といえる。 そこで、被請求人の答弁書を見ると、被請求人は、答弁書の添付書類として提出した「多層型高所作業足場装置」の購入を証する書面である「請求書」が本件発明の特許出願前に既に存在していたことを前提として、本件に係る「安全柵装置を具体的に構成模索して独自発明として完成させた」旨を主張しているに止まり、本件発明1及び2を、被請求人が旧試作品を借り受けていた事実にも関わらず、これとは独自に発明することができたことを認定し得るための十分な証拠等を何ら提出していない。 さらに、上記被請求人の主張も、「多層型高所作業足場装置の購入を証明する書面」として答弁書に添付された「請求書」の作成時期は、その「UFJ」等の表記から見ても、本件発明1及び2の特許出願前に作成されたものでない、すなわち、本件発明1及び2の特許出願後に作成されたものであることが明らかであるから、その前提とする事実において誤りがあり、信用することができない。 以上のことを総合すると、本件発明1及び2が備える構成は、旧試作品が実質的に備えていた構成をそのまま採用したものといえるから、本件発明1及び2の真の発明者は、旧試作品の発明者らであるというべきであり、そして、少なくとも、被請求人が当該旧試作品の発明者でないことが明らかであるから、結局、被請求人が本件発明1及び2の真の発明者でないことは明らかである。 そして、上記「2.」の(2-2)に記載した事実から、本件発明1及び2に係る特許は、真の発明者というべきところの旧試作品の発明者らを発明者とすることなく、かつまた、旧試作品の発明者らからその発明について特許を受ける権利を承継することなく、当該被請求人のみを発明者として特許出願され、既に設定登録がなされたものであることが明らかである。 したがって、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項に規定する「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき」に該当するものというべきである。 なお、審判請求人は、平成18年6月12日付けで証人岩田勝之の「証人尋問申出書」を提出しているが、上記説示したように、被請求人が本件発明の真の発明者でないことは他の証拠らによって明らかであるから、当該証人の証拠調べをすべき必要性がないので、当該証拠調べの申出は採用しない。 (ちなみに、本件発明1及び2における旧試作品が備えていない基本的構成以外の構成部分が、仮に、当業者により旧試作品の構造から自明な事項であるといえない部分が含まれるとした場合にも、このような旧試作品の基本的構成とその余の部分を併せたものであるところの本件発明1及び2は、結局のところ、旧試作品の発明者らと被請求人とによる共同発明であるということになるのであるから、本件発明1及び2の備える構成内の旧試作品の部分につき特許を受ける権利を共有するところの旧試作品の発明者らをその発明者として含まないばかりでなく、共同出願人としても含まない出願として特許出願された、すなわち、被請求人のみをその発明者及び出願人として特許出願され、既に設定登録がなされた本件発明1及び2に係る特許は、特許法第38条(共同出願)の規定にも違反して特許出願されたものということになり、結局、この場合にも、特許法第123条第1項第2号に規定する無効理由を有することになることが明らかである。) 7.むすび 以上のとおり、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第6号に該当するものであるから、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-19 |
結審通知日 | 2006-12-25 |
審決日 | 2007-01-09 |
出願番号 | 特願2001-205540(P2001-205540) |
審決分類 |
P
1
113・
152-
Z
(E04G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 星野 聡志 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
柴田 和雄 西田 秀彦 |
登録日 | 2005-04-28 |
登録番号 | 特許第3672848号(P3672848) |
発明の名称 | 多層型高所作業足場装置の安全柵装置 |
代理人 | 久門 享 |
代理人 | 櫻井 彰人 |
代理人 | 岡 賢美 |