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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1159625
審判番号 不服2004-6533  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2007-06-18 
事件の表示 特願2000-207736「橋梁の情報表示片、およびその情報管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月23日出願公開、特開2002- 23647〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成12年7月10日の出願であって、平成16年2月19日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月1日付けで本件審判請求がされるとともに、同月30日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成16年4月30日付けの手続補正を却下するとともに、拒絶の理由を通知したところ、平成19年3月15日付けで請求人は意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年3月15日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「橋梁に取り付けたセンサーからのデータを書き込み可能であり、この橋梁の現状のデータとして、その履歴、余寿命および耐力の少なくともひとつを記憶可能なメモリー部と、
このメモリー部を外部に接続可能な入出力端子と、を有するとともに、
当該橋梁に常に取り付けてあり、
この橋梁の前記現状を検査する検査者が、この橋梁の現場において前記入出力端子を介して、前記メモリー部から前記データを読み出し可能であり、また前記メモリー部に前記現状の検査結果データを書き込み可能であり、さらに、
前記橋梁の前記現状を検査した前記検査者の名称と、
この検査者を保証する保証者の名称と、
を表示してあることを特徴とする橋梁の情報表示片。」

第2 当審の判断
1.記載不備
当審において、次の『』内の理由により、本願明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由を通知した。
『請求項2,9においては、メモリー部を有する情報表示片(常識的に考えてICカードと解される。)に、「検査者の名称」、「保証者の名称」及び「橋梁の前記現状」を表示している。
橋梁の寿命は相当程度長いから、その寿命の間に何度も検査が実行されると解すべきところ、これら表示内容は当然検査のたびに更新されるはずである。どのようにして更新するのか発明の詳細な説明によっても明確でないから、特許請求の範囲の記載が不明確であるとともに、当業者にとって実施可能な程度に記載されていない。
また、「検査者の名称」、「保証者の名称」及び「橋梁の前記現状」の表示をする場合に、なぜメモリー部を有する情報表示片に表示しなければならないのか皆目見当がつかない。例えば、これら表示をしたシールを、メモリー部を有する坦体の近傍に貼付しても、情報の表示は可能であるから、それに比して情報表示片に表示することにいかなる技術的意義があるのか理解できない。』
拒絶理由には「請求項2,9」とあるが、本願発明の「前記橋梁の前記現状を検査した前記検査者の名称と、この検査者を保証する保証者の名称と、を表示してあること」との発明特定事項は、平成19年3月15日付け手続補正前の請求項2の限定事項の一部であるから、上記拒絶理由は平成19年3月15日付け手続補正後の請求項1にもあてはまる。そこで、上記拒絶理由が妥当かどうか検討する。
請求人は、平成19年3月15日付け意見書において、「表示内容の更新について言及すると、極論すれば、最初に検査した検査者Kおよび保証した保証者Hの名称が明示してあれば、更新操作自体が不要である場合もあるわけです。・・・最低限、ある時点で検査した検査者Kおよびその保証者Hについての名称を情報表示片として視認可能に表示しておく必要があるのです。」(3頁13?23行)と主張するが、「橋梁の現状のデータとして、その履歴、余寿命および耐力の少なくともひとつを記憶可能なメモリー部」を有し、「メモリー部に前記現状の検査結果データを書き込み可能」である以上、情報表示片を視認した者は、「検査者Kおよび保証した保証者Hの名称」は最新の「現状の検査結果データ」を書き込んだ検査者に対応すると信ずるであろうから、更新しなければ保証の意味がなくなるか、又は著しく薄れてしまう。したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
請求人はまた、「その表示内容についての更新が必要であれば、審判官殿がご指摘のように当該情報表示片の表面にシールを貼り付けてもよいし、表示内容に相当する情報をメモリー部23に電子的データとして記憶させておくこともできるわけです。」(同頁19?21行)とも主張するが、「表示内容に相当する情報をメモリー部23に電子的データとして記憶させておくこと」は、情報の格納であって表示には当たらない(本願明細書に「情報の表示形態としては、・・・電子的あるいは物理化学的に書き込み可能および読み取り可能なものであれば、任意の表示手段を採用可能である。」(段落【0026】)との記載があるが、単に電子的に書き込んだけでは、「表示」との文言が通常想起させる概念とはかけ離れており、読み出しかつ表示する手段を備えていない限り、「表示」に該当すると認めることはできない。仮に、単に電子的に書き込むことを「表示」に含むのであれば、請求項1の記載は著しく不明確である。)し、「情報表示片の表面にシールを貼り付け」るのであれば、拒絶理由で述べたようにメモリー部を有する坦体の近傍に貼付しても差し支えなく、情報表示片に表示する理由にはならない。
請求人はさらに、「検査者Kおよび保証者Hの名称を表示した情報表示片が橋梁2の現状についてのデータを一体のものとして保持していることは、検査ないし保証の主体とそのデータとを一体的に保存しておくことができるという技術的意義があります。・・・シールと、電子データを記憶した情報表示片とが別体であっては、主体と客体の一体性が保証されず、つぎの検査あるいは何らかの確認作業の際に不測の過ちを招きかねないという問題があります。」(同頁25?30行)とも主張するが、請求人自身、上記のとおり「情報表示片の表面にシールを貼り付けてもよい」と述べているところ、シールを貼り付けるのであれば、シールと情報表示片とが一体であるか別体であるかにかかわらず、シールの表示内容の信憑性には差がないとみるべきである。
以上のとおりであるから、当審で通知した拒絶理由は妥当であり、本願明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たしていない。

2.引用刊行物記載の発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-194275号公報(以下「引用例1」という。)には、
「構造物に取付可能なベースに、構造物が受ける負荷や環境からの影響を検出するセンサと、該センサで検出した検出信号を処理する演算制御装置と、該演算制御装置で処理された情報を記録する記録装置と、記録装置に記録された情報を外部へ送信する送受信装置とを備えたことを特徴とする構造物のモニター装置。」(【請求項1】)、
「モニター装置26のベース1部分をエポキシ樹脂系などの接着剤27を用いて、高層ビルや鉄塔や橋梁や船舶などの構造物28(特に、大型構造物)の適宜位置に適数個接着する。」8段落【0025】)及び
「電源24の寿命や記録装置17の記憶容量から予め決められた期間が経過したら、モニター装置26にデータ読取器32を近付け、データ読取器32の操作盤34を操作して指令33を制御装置37へ送り、制御装置37から送受信装置35へ制御信号36を送って、送受信装置35から無線電波信号19を発信させる。・・・すると、該無線電波信号19により、モニター装置26の送受信装置22が作動し、演算制御装置18に転送信号20を送って、記録装置17に記録された情報21を呼出させ、該情報21を無線電波信号31にのせて外部のデータ読取器32へ転送する。」(段落【0036】?【0037】)
との各記載が図示とともにある。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「ベースに、構造物が受ける負荷や環境からの影響を検出するセンサと、該センサで検出した検出信号を処理する演算制御装置と、該演算制御装置で処理された情報を記録する記録装置と、記録装置に記録された情報を外部へ送信する送受信装置とを備え、
ベースを橋梁の適宜位置に接着したモニター装置。」(以下「引用発明1」という。)

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
引用発明1の「モニター装置」は、ベースにセンサ、演算制御装置、記録装置及び送受信装置を備えたものであり、【図1】を参照すれば「片」と称することができる形態である。また、引用発明1の「記録装置」及び「処理された情報」は、本願発明の「メモリー部」及び「センサーからのデータ」にそれぞれ相当するものである。そうである以上、本願発明と引用発明1とは「情報坦持片」の限度で一致し、さらに「ベースを橋梁の適宜位置に接着した」以上、引用発明1は「橋梁に常に取り付けてあ」るといえる。
引用発明1では「センサ」(本願発明の「センサー」に相当)がモニター装置の一部であるから、当然橋梁に取り付けたものであり、「メモリー部」が「橋梁に取り付けたセンサーからのデータを書き込み可能」な点も本願発明と引用発明1との一致点となる。
引用発明1が「メモリー部を外部に接続可能な入出力端子と、を有する」とはいえない(入出力端子を有することは、有線で外部と送受信することである。)が、「メモリー部」が外部と送受信可能な限度では、本願発明と引用発明1に相違はない。
引用発明1において「記録装置に記録された情報を外部へ送信する」ことと、本願発明において「前記メモリー部から前記データを読み出し可能であ」ることにも相違はない。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「橋梁に取り付けたセンサーからのデータを書き込み可能で外部と送受信可能なメモリー部を有するとともに、
当該橋梁に常に取り付けてあり、
前記メモリー部から前記データを読み出し可能である橋梁の情報坦持片。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉メモリー部と外部を送受信可能とすることに関し、本願発明が外部に接続可能な入出力端子を有するとしているのに対し、引用発明1にはその限定がない(実施例では無線で行っている。)点。
〈相違点2〉メモリー部に関し、本願発明のそれが「橋梁の現状のデータとして、その履歴、余寿命および耐力の少なくともひとつを記憶可能」、かつ「橋梁の前記現状を検査する検査者が、・・・前記メモリー部から前記データを読み出し可能であり、また前記メモリー部に前記現状の検査結果データを書き込み可能」としているのに対し、引用発明1のそれは「前記メモリー部から前記データを読み出し可能であ」るものの、その余の本願発明の上記構成を有するとはいえない点。
〈相違点3〉本願発明が「前記橋梁の前記現状を検査した前記検査者の名称と、この検査者を保証する保証者の名称と、を表示し」た「情報表示片」であるのに対し、引用発明1は同構成を有さない点。

3.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
相違点1は、要するに外部との送受信を有線で行うか無線で行うかの相違である(送受信を有線で行うことが周知であることはいうまでもない)。引用例1の記載ウに「モニター装置26にデータ読取器32を近付け」とあるとおり、無線で行うにしても、モニター装置(情報坦持片)に接近しているから、有線で送受信することを妨げる要因はない。また、送受信を有線とすることによる格別の技術的利点があると認めることはできない。
そうであれば、外部との送受信を有線で行うこと、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-18228号公報(以下「引用例2」という。)には、「【従来の技術】従来、鉄道や道路に架設される橋梁の保守管理は、検査技術者が検査対象とする橋梁の現場に赴き、目視や特定の測定器により種々の検査を行い、得られた検査結果を通常は現場以外の場所で整理し、その後、当該橋梁の管理技術者に検査結果をレポート形式などで提出し、この検査レポートを基に管理技術者が橋梁の補修工事や新設の有無等を指示することにより、行われている。」(段落【0002】)との記載があり、「特定の測定器により種々の検査を行い、得られた検査結果」は引用発明1によって得ることが可能かもしれないが、目視による検査や検査結果をレポート形式などで作成することは、引用発明1のみでは不可能であるから、引用発明1を用いて橋梁検査を行うとしても、検査者が介在することは不可欠である。
引用例2には、「本発明においては、・・・現場での橋梁検査時点又はこれ以前に、保守管理データベースから当該橋梁についてのデータを通信検査装置に格納する。次いで、このデータを通信検査装置により現場で表示し、データに含まれている検査項目に従って検査を行い、検査結果を保守管理データベースに送信する。これに対し、保守管理データベースは検査結果と当初の当該橋梁についてのデータを対比し、更新したデータを通信検査装置に送信する。その後、更新されたデータの一部又は全部を通信検査装置により、表示・印刷することができ、印刷されたデータはそのままで検査レポートとなる。よって、検査時点において、当該橋梁についての検査レポートを作成することができることになる。」(段落【0008】)との記載があり、要するに検査者が現場において、種々の検査を行い検査レポートを作成することが記載されているから、引用発明1を用いて検査者が現場において橋梁検査を行い、検査結果を得ることは設計事項というべきであり、その検査結果に「橋梁の現状のデータとして、その履歴、余寿命および耐力の少なくともひとつ」を含めることも設計事項というよりない。もっとも、引用発明1を用いて検査者が現場において橋梁検査を行うとしても、検査結果を引用発明1の「記録装置」(メモリー部)に記録することまでは、引用例2から導くことはできないから、さらに検討をすすめる。

原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-28363号公報(以下「引用例3」という。)には、
「22は複写機21の状態データを監視する対象である各構成部品、23は前記構成部品22に接続され各構成部品22の状態を検知するセンサーを示す。センサー信号処理部24は、定期的にセンサー23からの信号を取り込み、複写機コントロール装置26に接続手段25を介して各種の信号データを転送する。また、紙づまりなどが起きた時などに発生するエラー信号等もセンサー信号処理部24を通じて転送され、複写機コントロール装置26内に備えたハードディスクなど不揮発性のメモリ手段27に記録・格納される。」(段落【0036】)、
「複写機コントロール装置26の有するメモリ手段27に定期的に記録・累積されている信号データは、複写機コントロール装置26の制御手段28により、複写機コントロール装置26が接続されるコンピューターネットワーク31上の小型コンピューター32で構成した複写機診断装置から参照することができる。」(段落【0037】)、
「点検作業を実施する利用者33は、・・・メモリ手段27に格納されている履歴データの診断を実施する。」(段落【0038】)、
「診断プログラム29は履歴データから診断した結果を、メモリ手段27に記憶する」(段落【0039】)及び
「診断プログラム29で診断されたデータおよびその結果は、複写機コントロール装置26内に備えたメモリ手段27に累積格納され、必要な時点での抽出・参照を可能とする。」(段落【0041】)
との各記載がある。
引用例3記載のメモリ手段27にはセンサー23からの信号が記録され、「小型コンピューター32で構成した複写機診断装置」から参照(読み出すことに等しい。)するのであるから、引用例3における診断又は点検(検査に相当)の対象は複写機であって橋梁ではないけれども、引用例3記載のメモリ手段と引用発明1の記録装置には、機能上の類似性があるというべきであり、引用例3において診断することは、引用発明1を用いて検査することに対応する。
そして、引用例3には診断結果をメモリ手段に格納することが記載されているのだから、引用発明1を用いて検査者が検査した検査結果を、引用発明1の記録装置(メモリー部)に書き込むことにも困難性がないというべきである。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
相違点3に係る本願発明の構成、すなわち検査者及び保証者の名称を表示することは、検査結果に対する信用性を示すという、社会的要請に基づき採用された構成であって、技術上の要請に基づき採用された構成ではない。特許法が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(法2条1項)と定め、法が定める特許要件(進歩性等)を満たす発明が特許を受けることができるとした趣旨は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」として前記特許要件を満たすことにあり、そうである以上、特許に値する価値が技術上の要請に基づき採用された構成になければならない。そして、相違点3に係る本願発明の構成は技術上の要請に基づき採用された構成ではないのだから、相違点3が存在することによって、本願発明に進歩性が生ずることはありえない。
そればかりか、相違点3に係る本願発明の構成について、技術上の要請に基づき採用された構成かどうかの点を度外視して検討しても、以下に述べるように当業者にとって想到容易である。
引用発明1を用いて検査者が現場において橋梁検査を行い、検査結果を得ることが設計事項であることは既に述べたとおりである。ところで、検査を行う場合には、検査責任を明確にするために、検査者が誰であるか等を明らかにすることは極めて普通に行われているから、引用発明1を用いて検査者が橋梁検査を行う場合にも、検査者を明らかにすることは設計事項というべきである。
検査者を明らかにするとしてもその手法はさまざまであり、請求人が主張するように「表示内容に相当する情報をメモリー部23に電子的データとして記憶させておくこと」ことも可能であるし、情報坦持片近傍にシールを貼付することも可能である。
本願発明は、情報坦持片自体に検査者名を表示するものであるが、そのようにすることに格別の技術的利点がないことは2.で述べたとおりであるから、情報坦持片自体に検査者名を表示することも設計事項というべきである。そして、情報坦持片自体に検査者名を表示すれば、その情報坦持片を「情報表示片」といえることは当然である。
残る検討項目は、検査者の名称だけでなく、「検査者を保証する保証者の名称」をも表示することの容易性である。
検査者名を表示するに当たり、検査者名だけでなく、検査者に関連した情報を併せて表示することは周知である。例えば、検査に資格を必要とする場合に、有資格者であること表示したり、検査者の所属団体を表示することは周知である。そのことは、例えば本件出願の相当以前に頒布された特開昭63-39393号公報に「宝石の鑑定結果を表示する欄3が設けられている。・・・この欄3の下部には、鑑別者を表示する欄4が設けられており、上記鑑別を行なった鑑別所名、その住所、その代表者名、この代表者の署名、この代表者の経歴を記載する欄が設けられている。」(2頁左下欄4?13行)との記載があること、特開平9-156257号公報に「図1には、本発明の第1実施例に係るダイヤモンド鑑定書の平面図が示されている。・・・鑑定者名及び鑑定機関等を表示する出所表示欄9とを設けている。」(段落【0014】)との記載があること、実願昭60-141890号(実開昭62-50981号)のマイクロフィルムに「図1において10は宝石鑑定書の用紙であって、・・・下部には鑑定者および鑑定書名等を表示した出所表示欄6を設けている。」(5頁5行?6頁1行)との記載があること、及び実願昭59-163076号(実開昭61-78675号)のマイクロフィルムに「宝石の鑑定を行っている専門機関は雑多であって、・・・鑑定書の発行者である全国宝石学協会というものを、アストラル宝石店の信用をかけて保証されたものとして安心できる。」(9頁7?14行)との記載があるとともに、第1図の鑑定書欄には「全国宝石学協会」との表示の上部に記入欄があるとともに、同記入欄と「全国宝石学協会」との表示の右側にそれぞれ印影欄が設けられたものが図示されていることによって裏付けられる。
ところで、本願発明の「この検査者を保証する保証者の名称」は、上記説示における「検査者に関連した情報」の1つであることは明らかであり、「検査者の所属団体」がこれに該当するかどうかには若干疑義があるところ、仮に該当しないとしても、「検査者に関連した情報」としてどのような情報を採用するかは技術上の問題ではなく、「検査者を保証する保証者」が存在することを前提とした上での、検査結果保証に当たっての社会的な約束事にすぎないから、「検査者に関連した情報」として「検査者を保証する保証者」を採用することはせいぜい設計事項といわなければならない。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるか、当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2,3記載の技術及び周知事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上述べたとおり、本願は明細書の記載が平成14年改正前特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たしておらず、かつ本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-02 
結審通知日 2007-04-10 
審決日 2007-04-23 
出願番号 特願2000-207736(P2000-207736)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G09F)
P 1 8・ 121- WZ (G09F)
P 1 8・ 537- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 尾崎 俊彦
長島 和子
発明の名称 橋梁の情報表示片、およびその情報管理方法  
代理人 池澤 寛  

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