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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1159629
審判番号 不服2004-11954  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-10 
確定日 2007-06-18 
事件の表示 平成 8年特許願第203323号「インクジェットプリント装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月17日出願公開、特開平10- 44392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成8年8月1日の出願であって、平成16年5月6日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月10日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月12日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年7月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
本件補正は、特許請求の範囲【請求項1】を補正するものであり、請求項1の補正に限っては次の補正事項からなっている(下線部が補正箇所)。
補正事項1:「プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向に搬送する手段」を「プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向にそれぞれ同じ搬送路で搬送する手段」と補正する。
補正事項2:「バックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動する手段と、を備えた」を「バックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動し、前記プリントヘッドが前記退避ポジションにある状態で、前記バックフィードを実行する手段と、を備えた」と補正する。

2.補正目的
(1)補正前請求項1には「プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジションと、プリントポジションよりプリント媒体から離れた退避ポジション」及び「バックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動」との各記載があるから、「バックフィード実行時」においてプリントヘッドが退避ポジションへ移動しないとすれば、プリントヘッドは「プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジション」にあることが明らかである。また、プリント時にはプリント媒体をプリント方向に搬送し、その際プリントヘッドが「プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジション」にあることも明らかである。すなわち、補正前の「プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向に搬送する手段」においても、プリント方向搬送時と逆方向搬送時の搬送路が同一であることは明らかであるから、補正事項1が特許請求の範囲を減縮することを目的としたものと認めることはできない。補正前においても「プリント方向およびそれとは逆の方向にそれぞれ同じ搬送路で搬送する」ことは明らかであるから、明りようでない記載の釈明にも該当しない。第一、補正前の記載が明りようでない旨の拒絶理由は通知されておらず、拒絶理由と無関係に釈明を行うことを平成18年改正前特許法17条の2第4項4号は許容していない。

(2)補正前の記載は「バックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動する手段と、を備えた」であるから、バックフィード実行時におけるプリントヘッドポジションが退避ポジションであることは明らかである。そうである以上、補正事項2が特許請求の範囲を減縮することを目的としたものと認めることはできず、明りようでない記載の釈明にも該当しない。さらに、(1)でも述べたように、拒絶理由と無関係に釈明を行うことは許されない。

(3)補正事項1,2が請求項削除や誤記の訂正に該当しないことも明らかである。したがって、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反している。

3.独立特許要件欠如
(1)補正発明の認定
2.で述べたとおり、本件補正前後の請求項1に係る発明は同一発明であるが、形式的には補正前請求項1に限定を加えるかに見える補正であるため、念のため本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「ヘッドポジションとして、少なくとも、プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジションと、プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジションと、プリントポジションよりプリント媒体から離れた退避ポジションとの3つのうちのいずれかにプリントヘッドを位置させる手段と、
プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向にそれぞれ同じ搬送路で搬送する手段と、
少なくとも前記搬送する手段により前記プリント媒体を逆の方向に搬送するバックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動し、前記プリントヘッドが前記退避ポジションにある状態で、前記バックフィードを実行する手段と、を備えたことを特徴とするインクジェットプリント装置。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-246711号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?サの記載が図示とともにある。
ア.「本発明は、プリンタ、例えばPOS,FA,物流等で広く利用されるラベルプリンタに関し、さらに詳しくは特にインクジェットプリント方式を用いるラベルプリンタに関するものである。」(段落【0001】)
イ.「ラベルプリンタとして、セパレータと称される長尺の剥離紙上に多数のラベルを連続貼付し、これをロールに形成した所謂ラベル紙を搬送する形態のものが多く、インクジェット方式をラベルプリンタに適用する場合、プリントヘッド部分での用紙の浮きや斜行等を押さえるなどの工夫を要する。」(段落【0002】)
ウ.「ロール紙204上に配置されるラベルに対してプリントを行うべく、ロール紙の幅方向にラベルの全幅以上の範囲にわたって吐出口を配列してなるインクジェットヘッド(以下ヘッドという)5を複数(例えば4色分)設けたヘッドユニット2を有している。」(段落【0035】)
エ.「図6はヘッド5およびそのホルダ8を有したヘッドブロックの正面図である。ヘッド5はヘッドホルダ8に、ロール紙搬送方向に沿って等間隔に4個配置されている。」(段落【0038】)
オ.「ヘッドホルダ8には昇降アーム13が前後左右に取付けられている。これらの昇降アーム13は、図5に示すようにPHS1の外殻を成すPHSホルダ18の外方に各々突出しており、当該突出部分は昇降板14、固定板15およびばね16を介して、ヘッドホルダ8をプリント媒体であるロール紙204に対して鉛直に移動せしめるワイヤ17に連結されている。」(段落【0039】)
カ.「図7(A)はヘッド5を下方に変位させてすのこ状部材の開口より突出させ、プリント媒体であるロール紙204にプリントを行わせる状態を、同図(B)はキャップ25によりヘッド5の吐出口形成面のキャッピングを行った状態を示している。」(段落【0047】)
キ.「図9(A)はキャッピング位置であり、ヘッド非使用時のキャッピング時および後述する加圧循環時、予備吐出時に設定される。この位置ではヘッド5の吐出口形成面5Aと吸収体26とは所定の間隔をおいて近接対向している。なお、この間隔は、約1.2mm程度に設定したときに、ワイピング時の払拭性が良好であることが確認されている。」(段落【0051】)
ク.「図9(B)はブレード24の上部がヘッドの吐出口形成面5Aより上方に所定量侵入した状態となるようにヘッド5を設定し、図中実線で示す位置から破線で示す位置まで桶部23を移動させることにより吐出口形成面5Aのワイピングを行う状態を示している。」(段落【0052】)
ケ.「図9(C)はヘッド5のワイピング終了後、予備吐出を行うためにヘッド5と対向する位置に桶部23が移動する際ブレード24がヘッド5と接触しないようにヘッド5が退避している状態、同図(D)はヘッド5が桶部23間の間隙より下方に変位してロール紙204に対向したプリント時の状態である。」(段落【0053】)
コ.「印字した最後のラベル紙を切断した後は、紙搬送ユニット202とロール紙搬送ベルト205を逆転し、印字待機位置までロール紙204を戻す。」(段落【0080】)
サ.「本実施例のプリンタにおいては、プリント中に回復要求が発生したときは、現在プリント中のラベルを最後までプリントし、次のラベルのプリントを行わずにロール紙204の搬送を停止する。この処理を白紙前処理と呼ぶ。白紙前処理の後に回復処理を行う。・・・回復処理後そのままプリントを再開すると、プリントされない無駄紙が生じる。そこでロール紙204のバックフィードにより頭出しを行う。この処理を白紙後処理と呼ぶ。・・・バックフィードは、紙搬送ユニット202の搬送ベルト212およびロール給紙ユニット201のロール紙搬送ベルトを逆転させることにより行う。」(段落【0120】?【0122】)

(3)引用例記載の発明の認定
引用例の記載コ,サによれば、引用例記載のプリンタがロール紙をプリント方向及びそれとは逆の方向に搬送する手段を有していることは明らかであり、両方向の搬送路は同一である。
引用例の記載カ?ク及び【図9】によれば、引用例記載のプリンタにおいては、ヘッドの位置として、キャッピング位置(【図9】(A)の位置)、ワイピング位置(【図9】(B)の位置)、予備吐出に備えての退避位置(【図9】(C)の位置)及びプリント時の位置(【図9】(D)の位置)が存在することは明らかである。当然、各位置にヘッドを移動させる手段が存在する。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「インクジェットヘッドによりロール紙に記録を行うラベルプリンタであって、
インクジェットヘッドとして、キャッピング位置、ワイピング位置、予備吐出に備えての退避位置及びプリント時の位置が存在し、これら各位置にヘッドを移動させる手段を有し
さらに、ロール紙をプリント方向及びそれとは逆の方向にそれぞれ同じ搬送路で搬送する手段を有するラベルプリンタ。」(以下「引用発明」という。)

(4)補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
引用発明の「インクジェットヘッド」及び「ロール紙」は、補正発明の「プリントヘッド」及び「プリント媒体」にそれぞれ相当する。また、引用発明は「インクジェットヘッド」により記録を行う「ラベルプリンタ」であるから「インクジェットプリント装置」ということができる。
引用発明の「キャッピング位置」及び「プリント時の位置」は、補正発明の「プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジション」及び「プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジション」にそれぞれ相当するから、「ヘッドポジションとして、少なくとも、プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジションと、プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジションとを含む少なくとも3つのうちのいずれかにプリントヘッドを位置させる手段」を備える点において、補正発明と引用発明とは一致する。
したがって、補正発明と引用発明とは、
「ヘッドポジションとして、少なくとも、プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジションと、プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジションとを含む3つのうちのいずれかにプリントヘッドを位置させる手段と、
プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向にそれぞれ同じ搬送路で搬送する手段とを備えたインクジェットプリント装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉補正発明がヘッドポジションとして「プリントポジションよりプリント媒体から離れた退避ポジション」を有し、「少なくとも前記搬送する手段により前記プリント媒体を逆の方向に搬送するバックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動し、前記プリントヘッドが前記退避ポジションにある状態で、前記バックフィードを実行する手段」を備えるのに対し、引用発明は「バックフィードを実行する手段」を備えるとはいえるものの、その余の補正発明の上記構成を備えるとまではいえない点。

(5)相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断
補正発明と引用発明に共通して「バックフィード実行時」にプリントを実行しないことは明らかである。そして、引用発明において、「プリント時の位置」(プリントポジション)はプリントを実行する際にヘッドが位置すべきポジションであるが、プリントを実行しない際には同位置にヘッドが位置する必要はないことも明らかである。
他方、プリントを実行せずにプリント媒体を搬送する際に、プリントヘッドとプリント媒体が近接していない状態とすることは、例えば、特開平8-169125号公報に「印刷用紙がプラテンローラ6上の印字ヘッド10と対向可能な位置まで搬送される。・・・このときキャリッジ9は待機位置HPに位置しており、図3で説明したように印刷用紙が通過する範囲外にあるので、供給された印刷用紙の先端により印字ヘッド10が攻撃されることがない。従って、印字ヘッド10の印字面の劣化や印刷用紙の汚れが防止される。・・・1頁分の印刷が済むと・・・排紙プログラムにより排紙を行う。即ち、LFモータ29が正回転して給紙ギヤ列が図6のように回転し、プラテンローラ6上の印刷済み用紙が排出される。このときキャリッジ9はS4のときと同様に待機位置HPに位置しており、印刷用紙が通過する範囲外にあるので、排出される用紙の後端により印字ヘッド10が攻撃されることがない。従って、印字ヘッド10の印字面の劣化や印刷済み用紙の汚れが防止される。」(段落【0033】?【0036】)と、特開平8-187878号公報に「印刷用紙の給排は、キャリッジ9を待機位置HPに置いて行う。待機位置HPは幅wの外側にあり印刷用紙の先後端に印字ヘッド10が攻撃され劣化するのを防止できるからである。」(段落【0016】)と、及び特開平7-17097号公報に「記録が終了すると、図4に示すように、被記録材2の後端部が未だ紙ガイド12によって抑えられている状態で、被記録材2の搬送を停止する(ステップS4)。次いで、記録ヘッド1を記録位置から図5に示す退避位置まで移動させ(ステップS5)、この退避位置に停止させる。この退避位置は、図1中に実線で示す前記記録位置と図1中に二点鎖線で示す前記待機位置(キャッピング位置)との中間に設定されている。記録ヘッド1が前記退避位置にある時に被記録材2の搬送を再開し、該被記録材2を排紙する(ステップS6)。・・・このように、被記録材2の搬送を一旦停止して記録ヘッド1を退避させた後に、搬送を再開して排紙を行なうことにより、被記録材2の後端部が紙ガイド12を離れた瞬間に曲げくせ等が解放されて吐出口面88に衝突する現象を無くすことができ、それによって、被記録材2にインクが付着して汚れが生じたり、吐出口89が傷付けられて吐出不良が生じるなどの不具合を無くすことができる。」(段落【0033】?【0034】)とそれぞれ記載されていることから、本件出願当時には周知であったと認めることができる。なお、上記各文献は「バックフィード実行時」のヘッド位置について記載したものではなく、かつ前掲特開平8-169125号公報及び特開平8-187878号公報は、引用発明のようなフルラインタイプのプリント装置について記載したものではないが、プリント媒体を搬送する際に、プリントヘッドとプリント媒体が近接していないことが好ましいことを裏付ける上では、そのようなことは関係がない。
以上によれば、引用発明において、バックフィード実行時に、プリントヘッドとプリント媒体が近接していない状態を採用することは当業者にとって想到容易といわなければならない。
そうすると、残る検討事項は、プリントヘッドとプリント媒体が近接していない状態を実現するためのヘッドポジションとして、「キャッピングポジション」以外を採用する点のみである。引用例の【図7】及び【図9】(A)から明らかなように、プリントヘッドがキャッピングポジションに位置するためには、プリントヘッドだけでなくキャップも移動しなければならず、キャッピングポジションからプリントポジションに移行する際にも、プリントヘッド及びキャップを移動しなければならない。しかし、プリントヘッドとプリント媒体が近接しない条件としてキャップ位置は関係がないから、キャップ移動を避ける方が好ましいことは自明というべきである。前掲特開平7-17097号公報に記録位置(補正発明の「プリントポジション」に相当)とキャッピング位置(補正発明の「キャッピングポジション」に相当)の中間を退避位置とすることが記載されていることからみてみても、バックフィード実行時に、プリントヘッドとプリント媒体が近接していない状態を採用することを前提とした上で(同前提の想到容易性は既に述べたとおりである。)、その際のヘッドポジションを「プリントポジションよりプリント媒体から離れ」ておりかつ「キャッピングポジション」とは異なるポジションとし(同ポジションが補正発明の「退避ポジション」となる。)、プリントヘッドが同ポジションにある状態でバックフィードを実行することは設計事項というべきである。なお、引用発明においては、ヘッドポジションとして、「プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジションと、プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジション」以外にも、「ワイピング位置」及び「予備吐出に備えての退避位置」が存在するところ、「予備吐出に備えての退避位置」(【図9】(C)においてキャップが移動する前の状態)は、プリントポジションからヘッドのみ移動した位置であるから、同位置を補正発明でいう「退避ポジション」と採用しても構わないし、前掲特開平7-17097号公報の記載に照らし、それよりもヘッド移動量が少ない位置を新たに「退避ポジション」として設けてもよい。いずれを採用しても相違点に係る補正発明の構成に至る。
以上述べたとおり、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正が平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の規定に該当するとすれば、同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定の結論]
本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反しており、仮に同項2号の規定に該当するとしても、同条5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年4月13日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「ヘッドポジションとして、少なくとも、プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジションと、プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジションと、プリントポジションよりプリント媒体から離れた退避ポジションとの3つのうちのいずれかにプリントヘッドを位置させる手段と、
プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向に搬送する手段と、
少なくとも前記搬送する手段により前記プリント媒体を逆の方向に搬送するバックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動する手段と、を備えたことを特徴とするインクジェットプリント装置。」

2.本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]3」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明とは、
「ヘッドポジションとして、少なくとも、プリントヘッドをキャッピング手段によりキャッピングするキャッピングポジションと、プリント媒体に近接しプリントを実行するプリントポジションとを含む3つのうちのいずれかにプリントヘッドを位置させる手段と、
プリント媒体をプリント方向およびそれとは逆の方向に搬送する手段とを備えたインクジェットプリント装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明がヘッドポジションとして「プリントポジションよりプリント媒体から離れた退避ポジション」を有し、「少なくとも前記搬送する手段により前記プリント媒体を逆の方向に搬送するバックフィード実行時には、前記プリントヘッドを前記退避ポジションへ移動する手段」を備えるのに対し、引用発明は「バックフィードを実行する手段」を備えるとはいえるものの、その余の本願発明の上記構成を備えるとまではいえない点。

この相違点について検討するに「第2[理由]3(5)」で述べたと同様の理由により、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-16 
結審通知日 2007-04-20 
審決日 2007-05-02 
出願番号 特願平8-203323
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 57- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 名取 乾治
島▲崎▼ 純一
発明の名称 インクジェットプリント装置  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 伊藤 勝久  

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