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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1159839
審判番号 無効2005-80132  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-26 
確定日 2007-07-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第2662538号発明「生海苔の異物分離除去装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2662538号の請求項2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明
本件特許第2662538号に係る出願は、平成6年11月24日に出願され、平成9年6月20日にその発明について特許の設定登録がなされ(請求項の数4)、その後、平成17年4月26日に、本件特許を請求項2に係る発明について無効にすることについての審判が請求されたものである。被請求人は、平成17年7月21日付で本件特許について訂正請求書を提出したが、これは、不適法な手続であるため、特許法第133条の2第1項の規定により、平成18年6月21日付で却下された。
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、
「【請求項1】 筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし、この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。
【請求項2】 前記第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にしたことを特徴とする請求項1の生海苔の異物分離除去装置。」
というものであり、本件特許の請求項2に係る発明は、特許された明細書及び図面の記載からみて、その請求項2に記載されたとおりのものと認められる(以下単に「本件発明」という)。
なお、本件の請求項1に係る発明の特許については、無効2003-35247号として無効審判が請求され、平成16年4月6日付けで請求不成立の第一次審決がなされ、それに対して審決取消訴訟(平成16年(行ケ)第214号)が提起され、平成17年2月28日に審決取消の判決がなされ、平成17年3月16日に該判決が確定し、再審理の後、平成17年5月12日付けで請求項1に係る発明の特許を無効とするとの第二次審決がなされ、それに対して審決取消訴訟(平成17年(行ケ)10530号)が提起され、平成17年11月9日に原告の請求を棄却するとの判決がなされ、該判決について最高裁に上告受理申立がなされ、平成18年4月4日に上告却下の決定がなされて上記第二次審決が確定し、平成18年4月11日に特許登録原簿に請求項1に係る発明の特許を無効にする旨の登録がされている。

第2 請求人の主張
請求人は、証拠方法として以下のものを提出し、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいはそれと異物分離除去装置に関する周知技術(例えば甲第7?12号証に記載のもの)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2に係る発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきであると主張している。

甲第1号証 :特許第2662538号公報(本件特許公報)
甲第2号証 :特開昭51-82458号公報
甲第3号証 :特開平6-121660号公報(本件特許公報中に記載された従来技術)
甲第4号証 :無効2003-35247号審決(平成16年4月6日付)
甲第5号証 :平成16年(行ケ)第214号判決(平成17年2月28日判決言渡)
甲第6号証 :判決確定証明書(平成16年(行ケ)第214号判決)
甲第7号証 :特開昭48-25968号公報
甲第8号証 :特開昭61-278308号公報
甲第9号証 :実公平6-32201号公報
甲第10号証 :実開昭61-4787号公報(実願昭59-88234号のマイクロフィルム)
甲第11号証 :特開昭53-130570号公報
甲第12号証 :特開昭52-67068号公報
甲第13号証 :無効2003-35247号審決(平成17年5月12日付)
甲第14号証 :特開昭57-181675号公報
甲第15号証 :特開平2-195863号公報
甲第16号証 :実公昭63-5500号公報
甲第17号証 :特公昭62-2789号公報
甲第18号証 :特開昭55-111812号公報
参考資料 :甲第2号証の要部清書

第3 被請求人の主張
これに対して、被請求人は、証拠方法として以下の乙1?3号証を提出し、本件発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から容易に発明することが出来たものではないと主張している。

乙第1号証 : 平成13年(ワ)第14954号判決(平成14年4月25日言渡)
乙第2号証 : 平成16年(行ケ)第51号判決(平成16年11月11日言渡)
乙第3号証 : 株式会社親和製作所 自社品事業部技術顧問 窪前孝一による陳述書

第4 甲第2号証の記載事項
請求人が提出した甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(A)「(1)密接したほぼ円形の間隙又は同心円状に配置されたいくつかの間隙によって特に高濃度の繊維物質から望ましくない不純物を分離する方法において、スクリーンへの注入物が各スクリーン間隙に到着した瞬間に流れ中に取り付けられた静止部材又は可動部材によって適度の強さ及び構造の攪乱が与えられて、みぞの中を通過する繊維に高度の流動性が付与されることを特徴とする方法。(2)特許請求の範囲第(1)項に記載の方法に従って、粒子濃度の高い材料から望ましくない不純物を分離する篩い分け装置であって、供給入口に続く少なくとも一つの円形スクリーン間隙を有し、前記の少なくとも一つの間隙が2つの回転壁部によって形成され、前記壁部が回転時に相互に位置を変え、篩い分けを行うべき材料のための第一室の中間部にスクリーン間隙が設けられ、入口部は前記第一室に向けられており、第一室はスクリーン間隙が受容しない物質を受け取ってこれを廃棄物出口から排出し、前記スクリーン間隙の後方に位置し前記間隙を通り抜けた物質を受け入れて合格品出口を介して取り出すよう構成した第二室を有することを特徴とする装置。」(特許請求の範囲第1、2項)
(B)「(6)第一室の側部が円形周縁部を有し、この延伸部によって間隙の一方境界部分が形成されていることを特徴とする前記特許請求の範囲の何れかに記載の篩い分け装置。(7)前記側部の延伸部と回転環状部材全体又はその一部を構成する側部によって間隙が形成されることを特徴とする特許請求の範囲第(6)項に記載の篩い分け装置」(特許請求の範囲第6、7項)
(C)「本発明はパルプ等の繊維懸濁液のような異なる物質を連続的に篩い分けることができる装置に関する。この種の篩い分けを行う目的は、例えば懸濁液を連続的に処理するに好適な粒径より大きな粒径の粒子の如き夾雑物を懸濁液から分離することである。」(2頁右下欄2?7行)
(D)「例えば製紙技術において篩い分けを行うために通常用いられている方法は、篩い分けプレートや篩い分けシリンダー等の形のスクリーンを用いる方法である。用いる懸濁液の濃度が高すぎる場合には、異なる大きさの障害物に遭遇した後においてはこれらのスクリーンは容易に完全な目詰まりを起こす性質がある。そうなった後においては、最早篩い分け機能を発揮しない。」(2頁右下欄11?18行)
(E)「上記の公知の装置は、単に懸濁液よりも重い粒子又は夾雑物を遠心分離するものに過ぎず、篩い分けを行う機能はない。更に、スウェーデン特許第343,093号明細書は、中間部に篩い分け間隙を有する同心円リングから成る篩い分け装置を開示している。回転リングと静止リングとが交互に配設されている。斯くして、篩い分け間隙を画定する面が相対的に動くことになり、従って篩い分け間隙が詰まる危険性が減少する。然し乍ら、先行技術による篩い分け装置の欠点を取り除くよう設計されたこの装置の場合、回転リングは相互に固定連結されているから格間隙毎に回転速度を設定することが困難であり、従って好ましくない篩い分け状態になる。本発明の目的は、混濁液の篩い分けを行なって所定粒径の粒子の分離を行なうことができる装置及び方法を提供することである。」(3頁左上欄8行?右上欄4行)
(F)「本発明による篩い分け装置は、直接に作用する唯一つの篩い分け手段即ち篩い分け間隙を有する。この間隙は繊維フロックの形成による目詰まりを起こさない。高濃度の繊維懸濁液中では、繊維は大きさと密度の異なった凝集性のフロックを形成する。このような懸濁液に攪乱エネルギーを与えると攪乱の強さ及び拡がりに応じて繊維フロックは崩壊し、或る速度に達すると再びフロック化する。より大きな攪乱エネルギーを与えると、崩壊と再形成サイクルの速度が増し且つフロックの寸法は小さくなる。この現象はパルプの流動化と呼ばれ、動的状態が形成され、攪乱エネルギーを絶えず供給することにより保持されるものである。攪乱エネルギーの供給を中断すると流動度は速やかに低下し、繊維濃度が高ければ高いほど流動度の低下は著しい。入り口から間隙にゆくに従って、篩い分け装置に供給される懸濁液は漸次流動化される。攪乱を生じさせるスクリーン・ディスク上の翼によって、流動化が最も必要な実際の篩い分け領域の直前で最も大きな流動化効果が得られる。粒子が流動化されるから、通常は強い相互作用を及ぼし合う懸濁液中の粒子が相互に無関係に受け入れられるか或いは受け入れを拒絶される。従って、この篩い分け装置は、ほぼ円形の干渉間隔又は同心円状に配列した数カ所の間隙を利用することにより、スクリーンに流入する懸濁液が各スクリーン間隙に達した瞬間に高度に流動化されて繊維が間隙を通過できる程度にまで流動化させ、特に繊維濃度が高い物質から好ましくない不純物を分離するために用いることができる。静止部材又は可動によって流体中に適当な強度及び形状を持つ攪乱を供給することにより流動化を起こすことができる。」(3頁右上欄7行?右下欄1行)
(G)「第1図において、参照符号1及び2は夫々、適宜な方法によって相互に結合され、図示した配置におかれているハウジング部分である。ハウジング部分1の上部には入口3が設けられ、本明細書において注入物と呼ぶ篩い分けを施されるべき物資は上記の入口3を介して供給される。上記のハウジング1には更に、入口3と連通している円形室4が設けられている。室4の下部は、篩い分け間隙a、b及びcを形成する部材5、6、7及び8によって画定されている(第1図参照)。部材5は基本的には軸9上に置いたディスクである。このディスク状部材5の周りには環状部材6、7及び8が同心円状に配置されており、これらの部材はアーム10、11及び12を介して互いに独立に軸9上に支持されている。この軸並びに各環状部材6、7及び8の軸受けスリーブには、例えば第1図及び第2図の場合にはモータに連結されたベルト・プーリーの形で示す或る種の駆動手段を設ける。室4は出口13を有し、この出口を介してスクリーンを通過しなかった物質即ち本明細書においては廃棄物と呼ぶ物質が排出又は廃棄される。本明細書中には記載しないけれども、入口を通る供給及び出口を介する廃棄物排出を適宜に行なう。ハウジング部分2は部材5、6、7及び8とともに第2の室15を形成し、この室には出口14が設けられており、この出口14を介してスクリーンを通過した本明細書中で合格品と呼ぶ物質が排出又は廃棄される。第1図に示すように、外側部材8は室4の周縁境界部分ともなっている。従って、この部材8は適当な部材(図示せず)によってハウジング部分1及び2を密閉している。」(3頁右下欄19行?4頁右上欄11行)
(H)「第2図に、本発明のもう一つの実施例を示す。この篩い分け装置は、上述の実施例と同様に、端部にベルト・プーリーを設けた軸9上に固定された中央ディスク型部材を有する。環状部材16がアーム17を介して軸9の上方延伸部及びディスク5に固着されている。環状部材18がアーム19を介して軸9の周りに回転自在に支持された軸受部材20に連結されている。ハウジング部分20の外方に延伸している前記軸受部材20の端部にはベルト・プーリーが配設されている。従って、ディスク6と環状部材16との中間及び各環状部材16及び18の中間には篩い分け間隔が形成される。第3図にも示す如く、この実施例の場合には入口3は室4の接線方向に位置している。第3図は、第二の実施例の場合のアーム17がどのように延伸しているのかを説明する図である。勿論、この実施例の場合にも、最も外側の環状部材は室の周壁の一部になっており、第1図の場合と同様に回転自在な部材にしてアーム19に連結することもできる。」(4頁右上欄12行?左下欄11行)
(I)「次に、上記の実施例に例示した篩い分け装置の機能について簡単に説明する。注入方法についての詳細な説明は省略するが、注入物は入口3を介して篩い分け装置内に供給される。回転部材5乃至8又は回転部材5、16及び18によって、環流されつつある注入物は室4の周縁部から回転部材と共に室4の他の部分に進む。スクリーンの間隙よりも寸法が小さな粒子は間隙を通り抜けて第二の室15に入る。連続的に環流を続けると、間隙を通り抜けることができない大きな粒子は第一の室4に集められて、廃棄物として出口13から排出される。密度の高い粒子も遠心作用によって同様に室4内で凝縮されて、廃棄物出口13から排出される。間隙を通って室15に流入した物質は慣性力によって回転運動を続けながら合格品として出口14から流出する。…例えば懸濁液が高濃度の繊維パルプである場合に、篩い分けを行うべきこの懸濁液は回転部材から供給されるエネルギー及び回転部材に取り付けられたアームによって篩い分け時に流動化する。勿論、これらのアームはシャベル、翼等の形状にすることができ、或いは個々の回転部材に別の翼を取り付けることもできる。」(4頁左下欄末行?5頁左上欄4行)
(J)「懸濁液中の粒子と繊維間で起こる相互作用及びフロック化が減少する機構になっているから、機械的又はその他の相互作用に及ぼす粒子を高濃度で含有する懸濁液の場合においても粒子は1個ずつ通過を許されるか或いは拒絶されることになる。容易に理解できるように,粒子間の相互作用がない場合にも本発明によるスクリーンを用いることができ,その場合には公知のスクリーン・プレートの場合には例えば孔の間又はスロット間の架橋に起因して起こる実効篩い分け手段(即ち間隙)が詰まる危険性を取り除くことができるとともに,最適流動化を保持し篩い分け効率を高めることができる。第一回目の試行によって実効間隙を通過できなかった粒子は幾つかの間隙の上を通り越して,最終的に拒絶されて廃棄物出口13に移動するまでに何回かの試行を繰り返すことになる。この繰り返し試行は,回転部材によって懸濁液中に惹き起こされる攪乱によるものである。これを考え合わせ,廃棄物流が小ないことをも考えると,本来通過すべき粒子が拒絶されてしまう可能性が 極めて小さいという利益がある。スクリーンの実効間隙は任意に設定することができ、この間隙の幅以上の寸法の粒子の通過を妨げる手段が画定されるから、全く自由に任意の寸法の粒子を除去することができる。」(5頁左上欄14行?5頁右上欄18行)
(K)「第14図に示す実施例は、ハウジング部分201を注入物入口と組み合わせたものである。リング形状のスクリーン・ディスク202が、第二のハウジング部分203上に付設されている。両ハウジング部分の中間に回転ディスク204が取り付けられている。ディスクは、軸206上に支持されたシリンダー205内に固定されている。」(8頁左上欄1行?右上欄1行)
(L)最初の「スクリーンの一実施例の軸方向断面図」(第1図)、上記(H)の「第二の実施例の軸方向断面図」(第2図)、その「III-III線に沿って切断した断面図」(第3図)、「スクリーンの一部断面図及びその他の形状の実施例」(第4?6図)、「本発明の一実施例全体の鉛直断面図」(第8図)、「更に別の実施例の断面図」(第14図)。

第5 一致点及び相違点
まず、本件発明と甲第2号証に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを比較すると、後者の「円形周縁部」、「ディスク5、環状部材16、18からなる回転部材」、「スクリーン(篩い分け)間隙」、「廃棄物出口13」、「廃棄物(夾雑物)」及び「篩い分け装置」は、各々、前者の「環状枠板部」、「第一回転板」、「クリアランス」、「異物排出口」、「異物」及び「分離除去装置」に相当すると認められる。
また、後者の「室4(ハウジング部分1)」及び「パルプ等の繊維混濁液のような異なる物質」と、前者の「混合液タンク」及び「生海苔の混合液」とは、いずれも、各々「本体」及び「混合液」に相当すると認められる。
したがって、本件発明と引用発明とは、本体の底部周端縁に環状枠板部を設け、この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし、この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記本体に異物排出口を設けたことを特徴とする混合液の異物分離除去装置である点で一致するが、以下の(a)?(c)の点で一応相違している。

(a)本体が、前者では、筒状混合液タンクであり、異物排出口がその底隅部に設けられているのに対し、後者では、室(ハウジング)であり、異物排出口はその側部に設けられている点
(b)異物分離除去の対象となる混合液が、前者では「生海苔の混合液」であるのに対し、後者では「パルプ等の繊維懸濁液のような異なる物質」である点
(c)第一回転板が、その表面を回転中心から周縁に向かうに従って、前者では下がり傾斜にしているのに対し、後者では、その形状は特定されておらず、図面を見る限り平面状である点

第6 当審の判断
次に、上記の相違点(a)?(c)について検討する。
なお、以下に述べる相違点(a)及び(b)についての判断は、請求項1に係る発明についての特許に係る無効審判事件2003-35247号の平成16年4月6日付審決(甲第4号証)についての審決取消訴訟である平成16年(行ケ)第214号の確定判決(甲第5号証。平成17年2月28日言渡、平成17年3月15日確定(甲第6号証参照)。以下、単に「第一確定判決」という。)の拘束力に従ったものである(甲第5号証の特に9頁6行?17頁4行参照)。

1 相違点(a)について
一般に「タンク」とは、「液体や気体をたくわえておく容器。水槽、油槽(オイルタンク)、ガスタンクなど。」(「日本国語大辞典」第2版、小学館、2001.8.20の「タンク」の欄)や「液体や気体を貯蔵するための容器」(「世界科学大事典」講談社、昭52.3.20の「タンク」の欄)と解される。
そして、本件特許明細書には、「この発明に係る生海苔の異物分離除去装置は上記のように構成されているため、第一回転板を回転させると混合液に渦が形成されるため生海苔よりも比重の大きい異物は遠心力によって第一回転板と前記環状枠板部とのクリアランスよりも環状枠板部側、即ち、タンクの底隅部に集積する結果、生海苔のみが水とともに前記クリアランスを通過して下方に流れるものである。」(段落【0009】)という記載がある。
本件特許明細書の上記記載及び「タンク」についての一般的な意味からすれば、本件発明の「筒状混合液タンク」は、混合液を貯蔵するための筒状の容器であり、その中に混合液を充たせば、回転板の回転により生じる遠心力により、混合液中の異物が液中を外方へ移動して底隅部に集積し得ること(その程度の液位の液を保持し得るものであること)、及び、貯蔵し得る混合液の液位の上限ないし下限については特に規定されていないことに照らすと、それは、混合液を貯蔵し得る空間があるものであればよいものと認めることができる。
これに対し、甲第2号証の第1図、第2図、第4ないし第6図、第14図に図示された室4等及び第8図に図示された注入室104は、その図面自体からみて、液体を貯蔵することができる程度の深さをもった筒状のタンクであることは否定し得ないところである。
また、甲第2号証には、次のとおりの記載がある。
(1)「本発明による篩い分け装置は、直接に作用する唯一つの篩い分け手段即ち篩い分け間隙を有する。この間隙は繊維フロックの形成による目詰まりを起こさない。高濃度の繊維懸濁液中では、繊維は大きさと密度の異なった凝集性のフロックを形成する。このような懸濁液に攪乱エネルギーを与えると攪乱の強さ及び拡がりに応じて繊維フロックは崩壊し、或る速度に達すると再びフロック化する。」(前記記載事項(F)のうち3頁右上欄7?15行)
(2)「入口から間隙にゆくに従って、篩い分け装置に供給される懸濁液は漸次流動化される。攪乱を生じさせるスクリーン・ディスク上の翼によって、流動化が最も必要な実際の篩い分け領域の直前で最も大きな流動化効果が得られる。粒子が流動化されるから、通常は強い相互作用を及ぼし合う懸濁液中の粒子が相互に無関係に受け入れられるか或いは受け入れを拒絶される。従って、この篩い分け装置は、ほぼ円形の干渉間隙又は同心円状に配列した数個所の間隙を利用することにより、スクリーンに流入する懸濁液が各スクリーン間隙に達した瞬間に高度に流動化されて繊維が間隙を通過できる程度にまで流動化させ、特に繊維濃度が高い物質から好ましくない不純物を分離するために用いることができる。」(前記記載事項(F)のうち3頁左下欄4?18行)
(3)「室4は出口13を有し、この出口を介してスクリーンを通過しなかった物質即ち本明細書においては廃棄物と呼ぶ物質が排出又は廃棄される。」(前記記載事項(G)のうち4頁左上欄18?20行)
(4)「容易に理解できるように、粒子間の相互作用がない場合にも本発明によるスクリーンを用いることができ、その場合には公知のスクリーン・プレートの場合には例えば孔の間又はスロット間の架橋に起因して起こる実効篩い分け手段(即ち間隙)が詰まる危険性を取り除くことができるとともに、最適流動化を保持し篩い分け効率を高めることができる。第一回目の試行によって実効間隙を通過できなかった粒子は幾つかの間隙の上を通り越して、最終的に拒絶されて廃棄物出口13に移動するまでに何回かの試行を繰り返すことになる。この繰り返し試行は、回転部材によって懸濁液中に惹き起こされる攪乱によるものである。これを考え合わせ、廃棄物流が小ないことをも考えると、本来通過すべき粒子が拒絶されてしまう可能性が 極めて小さいという利益がある。」(前記記載事項(J)のうち5頁左上欄19行?右上欄14行)

これらの記載によれば、引用発明は、粒子間の相互作用のある高濃度の繊維懸濁液と相互作用のない繊維懸濁液の2種類の懸濁液のいずれについても有効な異物分離装置であること、引用発明においては、第一回目の試行によって実効間隙を通過できなかった粒子は、回転部材によって懸濁液中に惹き起こされる撹乱により、幾つかの間隙の上を通り越して、最終的に拒絶されて廃棄物の出口13に移動するまでに何回かの試行を繰り返すこと、及び、このように、実効間隙を通過できなかった粒子は、最終的に出口13に移動するまでは、懸濁液中に惹き起こされる撹乱による影響を受けながら、室4内に存在し続けるものであり、その間、当該室内に懸濁液が実質的に貯留されていることが認められる。
以上からすれば、甲第2号証においては、引用発明の室4(注入室104)に投入される懸濁液については、深い液位のものを投入するとの明示的な記載はないものの、極めて浅い液位のものに限定されるとの明示的な記載もなく、むしろ室4内に投入される懸濁液は、その濃度や種類に応じて適宜の量が投入されるものであることが窺われるところである。
このことと、引用発明の室4は、上記のとおり、甲第2号証の図面自体から理解し得る構造として、液体を貯蔵することができる程度の深さをもった筒状の空間であることからすれば、本件発明の「混合液タンク」に相当することを否定すべき理由はないというべきである。
また、「異物排出口」が設けられる位置については、本件発明と引用発明のいずれにおいても、タンク外周部に「異物排出口」が配されているのであり(甲第2号証の第3図参照)、この点において実質的な差異があるものとはいえない。
したがって、(a)の点は、本件発明と引用発明との実質的な相違点とは認められない。

2 相違点(b)について
請求人は、引用発明の「パルプ等の繊維混濁液のような異なる物質」と、本件発明の「生海苔混合液」とは、繊維懸濁液という点で同一であり、更に、異物分離除去という点で同じ技術分野に属し、その転用はきわめて容易であると主張している。(審判請求書第16頁16行?21頁24行)。
それに対し、被請求人は、引用発明の対象物である「繊維」は線状であるが、本件発明の対象物である生海苔は平面的であり、隙間を通過する際に、生海苔の場合はそのままの形でも塞いでしまうが、「繊維」の場合はそれが絡み合うか否かが問題となるという点で相違し、技術内容が異なるから、「繊維」の場合の知見は、本件発明に達するのに参考にならないと主張する(答弁書2頁左欄10?22行)。
そこでこの点について検討する。
引用発明は、混合液から異物を分離する装置であるという点で、本件発明の生海苔混合液から異物を分離する装置と共通性を有するものである。また、引用発明は、パルプ等の繊維懸濁液を対象とするものであるが、前記のとおり粒子間の相互作用のある高濃度の繊維懸濁液と相互作用のない繊維懸濁液の2種類の懸濁液のいずれについても有効な異物分離装置である。そして、海苔の異物分離装置における本件出願時の技術水準を示すものとして甲第2号証に示された技術があり、同号証においては、生海苔を細かく切断して、これを水と混合させて生海苔混合液とすることが従来から行われていること、及び、生海苔の厚みより僅かに大きい孔幅の多数の細長い分離孔21(スリット)を設け、生海苔混合液中の生海苔のみを同分離孔を通過させて、異物を分離する異物分離装置が開示されているのであって(甲第2号証の段落【0002】、【0004】、【0005】、図1、図4、図5及び図7参照)、生海苔混合液中の細かく切断された生海苔が狭いスリットを通過し得ることは、本件出願時において当業者に周知の技術事項であるということができる(甲第2号証のほかに、生海苔混合液がスリット(濾流部240)を通過し、ゴミを分離するとの技術を開示するものとして、特開平5-41965号公報(第一確定判決中の甲第8号証)がある)。したがって、パルプ等の繊維懸濁液と生海苔混合液とは、請求人が主張するように、前者のパルプの繊維の形状は線状又は紐状であり、後者の生海苔の形状は平面的であるとしても、後者は、上記のとおり、細かく切断されて生海苔混合液となるものであり、いずれも狭いスリットを通過し得るという点でその懸濁液(混合液)の性状には共通性がみられるところである。
また、甲第2号証においては、「スクリーンの実効間隙は任意に設定することができ、この間隙の幅以上の寸法の粒子の通過を妨げる手段が画定されるから、全く自由に任意の寸法の粒子を除去することができる。」(甲第3号証5頁右上欄15?18行)と記載されていることから明らかなように、引用発明を海苔の異物分離機として使用しようとすれば、生海苔に合わせて実効間隙を設定することになることは、当業者が容易に想到し得るところである。
以上からすれば、生海苔混合液の異物分離装置の当業者は、繊維懸濁液からスリットを利用して繊維を通過させ異物を分離する装置である引用発明を、生海苔混合液の異物分離装置に使用することを容易に想到し得るものであって、これを阻害する理由も見当たらない。

3 相違点(c)について
(1)請求人の主張
請求人のこの点についての主張は、以下のようなものである。
ア このような限定をしても、本件明細書又は図面においては、第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にすれば、異物を遠心力によってタンクの底隅部に集積しやすいという記載はあるものの、具体的な傾斜については、図面において5度程度下がり傾斜にしたものが記載されているのみであり、最適の角度や、水平の場合との比較については記載がなく、請求項1に係る発明とその作用、効果においてほとんど差がなく(その実施態様に該当し、技術思想としてはほとんど無意味な限定をしている)、請求項1に係る発明と実質的に同一発明である。(審判請求書3頁19行?4頁7行、17頁15?20行)
イ この点は、遠心分離装置や異物除去装置において、周知慣用技術であり、そのことは甲第7?12号証の記載から明らかである。(審判請求書17頁21行?18頁23行)

(2)被請求人の主張
被請求人は、甲第2号証に記載された回転板の形状を下がり傾斜にすることについて、以下のように主張し、本件の無効審判の請求は成り立たないとしている。
ア 「甲2自体の回転板をこうした構造にするのは考えられない。その上の空間が、平らで狭いから、そういう変形は出来ないし、回転板自身の形状としても考えにくい。本件発明の装置の構造としては、『下がり傾斜』も単に自然な構成であり得るが、甲2を前提とするならそうではない。」(平成17年7月21日付答弁書4頁下から2行?5頁2行)
イ 「本件発明のこの形状の装置は、実際に生海苔用として極めて有用なものである。画期的に高効率な異物除去機として、いまや海苔生産者の大多数が同型の装置を使用している。この有用性と商業的成功は、本件発明の価値を実証している。…」(平成17年7月21日付答弁書5頁3行?5頁7行)
ウ 「こうした装置をそのまま規定した請求項2であるから、これが甲2を根拠として無効であるということはあり得ない。請求人フルタも、むしろそれを元々認めていたからこそ、第三次請求(…)で請求項2を請求対象としていなかったはずである(請求項1だけを対象としていたもので、そのために本件の請求が別途になされる経緯となっている)。」(平成17年7月21日付答弁書5頁8行?12行)、及び「2.5各当事者の判断 各当事者も、請求項2の特許性を認めている。…特許権者と渡邊機開との間での侵害訴訟では、控訴審において、無効審判請求を取り下げて10億円を支払う条件で和解した。渡邊機開は、本件特許全体を甲2との関係でも特許性あるものと理解した結果であろうが、それにしても請求項2についてももちろん特許性が認められるとの判断だったはずである。」(平成18年4月28日付答弁書3頁左欄下から10行?右欄2行)
エ 「…本件発明や甲2の装置は、それぞれ単なる遠心分離機等とは違うもので、甲7以下の装置とは基本的な違いがあり、これらから本件発明は発想され得ない。…甲7について言えば、これは液体を貯める構造ではないので、まったく違う。…甲8は、回転部分のある濾過装置ではあるが、図面を見れば明白なように、本件発明や甲2の装置とはおよそ違う構造である。…甲9から甲12の各装置も、まして無関係の構造である。」(平成17年7月21日付答弁書5頁13行?5頁下から2行)
オ 「下がり傾斜により、次のような利点が得られる。…こうした働き方は、甲2の装置では全く見られない。これは、対象物の違いに由来するものと思われる。甲2では、対象物にパルプを想定しているから、パルプ繊維の絡み合ったものに対しては無理にもそれを解きほぐして隙間を通過させることが望ましいのだと見られるこれに対して本件発明の対象物である海苔では、そんな乱暴なことをしたのでは良い製品は得られない。むしろ、隙間を通らないような海苔片は、そのまま破棄するのが望ましいのである。そこで、甲2に比べればずっと穏やかな回転と流れを使うことになる。その前提で、円周部のクリアランス箇所に海苔の全てを近づけて通過の機会を与えるためには、下がり傾斜の構成によって添付別紙の説明図で示したような流れを伴わせることが良い結果をもたらす。このような構成及び働きは、甲2とは全く相違しており、甲2から容易に発想されるものではない。」(平成18年4月28日付答弁書1頁右欄下から5行?2頁左欄下から9行)
カ 「また、洗滌時においてゴミ(異物)が残るのを最小限にできる。…この洗滌の際に、回転板が平らな形状であっては、その上に未処理混合液と異物が残ってしまいやすい。これは運転を効率的にするために不都合である。下がり傾斜の形状により、上手に洗滌ができる。甲2がどのような運転をするものなのか、また洗滌をどうするのかは、いずれも不明であるが、なんにしても、下がり傾斜の形状により適切に洗滌をする考えを有していないことだけは確かである。」(平成18年4月28日付答弁書2頁左欄下から8行?右欄16行)

(3)本相違点(c)についての検討
ア タンク又は槽の底部に設けられた、内部の液体を撹拌する作用を有する回転体において、その形状をその表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜としたものは、例えば洗濯機等の分野において周知である[例えば、特開昭57-136490号公報(参考資料1)、実願昭60-171302号(実開昭62-81292号)のマイクロフィルム(参考資料2)を参照。なお、参考資料1には、パルセータの真上から真上から沈降する異物がパルセータの上面に案内される旨の記載があり(3頁右上欄14行?左下欄1行)、また、参考文献2には、パルセータ上面の円すい面に関連して、撹拌効率の向上と原料かす等の付着残留の防止という効果についての記載がある(明細書6頁下から2行?7頁3行)]ばかりでなく、海苔の処理装置においても周知である[例えば、実願昭62-74046号(実開昭63-181296号)のマイクロフィルム(参考資料3)、特開平1-181779号公報(参考資料4)、実開平3-41596号公報(参考資料5)、実開平5-91384号公報(参考資料6)を参照]。したがって、このような回転板の形状については、当業者であれば液体の撹拌作用を有する装置の回転板の形状として想起しうる程度のものに過ぎない。

イ また、本件発明において、第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って、下がり傾斜にしたことによる効果として、本件明細書の発明の詳細な説明には、以下のような記載がある。
(ア)「なお、前記第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にすれば、前記異物を遠心力によってタンクの底隅部に集積しやすいものである。」(段落【0010】)
(イ)「なお、前記第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にすれば、前記異物を遠心力によってタンクの底隅部に集積しやすいものである。」(段落【0030】)
このような異物の底隅部への集積のしやすさという効果の点からは、第一回転板の傾斜が僅かであればその効果もごく僅かであり、傾斜が大きければ効果も大きいものであることが予想される。しかし、このような効果がどの程度のものであるのか、及びどの程度の傾斜にすればそのような効果が奏されるのかについては本件明細書には記載がなく、図面を見る限り、第一回転板の表面をわずかに傾斜させたものが記載されているのみである。また、傾斜の程度については、本件特許の請求項2には何ら特定されていない。
したがって、回転板を傾斜させたことにより奏される本件発明の効果が、格別のものということはできない。

ウ とすれば、本件発明の第一回転板の形状は、当業者であれば撹拌用の回転体の形状として想起しうる程度のものであり、そのような変更により本件発明の目的及び効果に格別の相違が生じるものではないから、この点は単なる形状の変更に過ぎない。また、この形状の相違は、異物を分離するという課題を解決する手段における微差というべきものでもある。
したがって、引用発明を海苔の異物分離に転用する際に、回転板の形状をこのようなものとすることは、実質的な相違とは認められないか、少なくとも、当業者であれば容易に想到しうることに過ぎない。

エ また、請求人の提出した甲第8号証には、「濾過装置」と題して、以下のような記載がある。
(ア)「槽1内には吐出口4の上部に環状のフランジ10を内周に取付け、同じく環状のパッキン11を介して中央部に穴12があり周囲より高くしたラッパ状の底板13を嵌着する。」(2頁右上欄2?5行)
(イ)「図示しない水源より給水弁3を経由して槽内に流れ込んだ水はノズル2により槽1の内周に沿って吹き出し、矢印に示すように回転水流を形成する。この回転水流により流入した水中に混入した比重の大きい異物は周囲に流されて底板13の外周部に溜まる。」(2頁右上欄10?16行)
(ウ)「底板13は中央部分が外周より高くなっているので異物は外周上部に溜まり易く、…」(2頁左下欄8?10行)
(エ)底板が中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜になっていること(第1図)
これらの記載から、甲第8号証には、濾過装置に関して、その中で回転水流が形成される円筒状の槽の底部に設けた底板を、中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にすること、比重の大きい異物が周囲に流されて底板の外周部に溜まること、及び、底板の外周が中央部分より低くなっていることにより異物が外周に溜まりやすいことが記載されていると認められる。

オ 同じく請求人の提出した甲第9号証には、「遠心分離機を利用した固形物分離装置」と題して、以下のような記載がある。
(ア)「次に本考案の作用を説明すると、遠心分離機を構成するケーシング内に、回転自在に架承されたハウジングの回転軸承部には、ペアリングディスクの中空軸が挿設され、このペアリングディスクの中空軸の下端部はフレームの軸受部に軸承されている。このように構成された遠心分離機のハウジングはプーリーを介して高速回転されるとともに、その中央部に臨んでいる原液導入筒を介して分離室内に原液が供給される。この原液には前記ハウジングの高速回転に伴う遠心力が付与され、加工液中の清澄液と固形物とを比重分離する。
即ち、先ず清澄液はハウジング内の分離室を上昇していき、かつその上昇過程でハウジング内に設けた多数の分離体で、更に沈降分離されていき、その上澄液のみがこのハウジングとケーシングとの間に形成された清澄液流路を経由し、清澄液貯留室→清澄液排出口→清澄液槽へと搬送され、その後再使用される。
一方比重の重い固形物は放射方向へと拡散され、究極的にはハウジングの最大内径で、かつその内壁面に沈降堆積される。その後ポンプ機能の原理を利用するとともに、爪片の掻き取り作用とを介して、ペアリングディスクの吸い込み口→吸い込み流路→中空軸の流路を経由して、高濃度固液共有液となり遠心分離機外に排出され配管へと達した後、自動連続的又は自動間欠的に作動する動力操作弁を介して固液分離装置へと搬送される。」(2頁4欄33行?3頁5欄6行)
(イ)ペアリングディスク13の上面が中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜になっていること(第1図)
これらの記載から、甲第9号証には、ハウジングに原液が供給され、原液の回転により遠心力が付与される固形物分離装置において、そのハウジングの底部に設けたペアリングディスクを、中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にすること、及び、比重の重い固形物が放射方向へ拡散され、ハウジングの内壁面(すなわちペアリングディスクの外周側)に沈降滞積することが記載されていると認められる

カ 同じく請求人の提出した甲第12号証には、「混合液分離器」と題して、以下のような記載がある。
(ア)「容器自体を回転させながら、この回転容器に連続的に比重の異なる数種類の混合液、または液体と固体の混合物等を注入し、比重の小さい方の液体や液体と固体の混合液等は回転の中心側部から、大きい方のそれらは回転の外側部から連続的に取出せるようにした混合液分離器。」(2頁左下欄4?9行)
(イ)「本発明は、…液体中の比重の異なった固体同志を比重別に分離したり、液体と固体の混合物を液体と固体に分離するものであり、比重差と回転半径が円心力と重力とに影響することを利用したものであり、…」(2頁左下欄11?17行)
(ウ)「また、本発明を実施するにあたっては…容器に関しては、円筒や角筒を横にしたものを基にして、回転の中心側や外側方向に側部や底部や上部に勾配を持たせたものや…」(2頁右下欄6?15行)
(エ)回転容器本体の底部が、中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜になっていること(4頁の第5図、第7図、第9図、第11図)
これらの記載から、甲第12号証には、回転容器を備えた混合液分離器において、液体の回転による遠心力により、液体中の比重の大きい固形物が、底部が中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜になっている容器の外側に移動することが記載されているものと認められる。

キ これらの甲第8、9及び12号証に記載されたものは、底部に回転板を設けたものではないが、槽又は容器内の液体が回転し、比重の大きい固形物が遠心力を受けて外側に移動して分離される装置において、槽の底部の形状を、中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜としたものであり、そのようなものが周知であったことを示すものである。
そして、甲第8号証には、このような底部の形状により、異物が外周上部に溜まり易いことが記載され(前記エ(ウ))、また、甲第9及び12号証には、傾斜の意義について明記はされていないものの、当業者であれば、このような遠心力を利用した分離においては、このような底部の形状により、比重の大きい固形物が外周側に移動し易くなるであろうことは容易に予想し得ることである。
とすれば、同様に、室(タンク)内の液が回転し、比重の大きい固形物が遠心力を受けて分離される引用発明(前記記載事項(I)の「密度の高い粒子も遠心作用によって室4内で凝縮されて、廃棄物出口13から排出される」との記載を参照)において、上記周知技術と同様に、底部の形状、すなわち底部に設けた回転板の形状を、その表面を中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

ク また、海苔に関する装置においても、例えば、前述の参考資料3には、「海苔調合装置」と題して、撹拌槽の底部に設けられた回転する掻込車10の上面を、その回転中心から周縁に向かうに従って、下がり傾斜にしたものが記載されており(特に第1図参照)、また、前述の参考資料4には、「海苔原藻の洗滌方法及び洗滌機」と題して、槽の底部に設けられた回転する撹拌翼3の上面を、その回転中心から周縁に向かうに従って、下がり傾斜にしたものが記載されており(第1図及び第7図)、その他、前述の参考資料5及び参考資料6にも回転板の表面を周縁に向かうに従って下がり傾斜にしたものが記載されており、海苔処理装置において撹拌用の回転部材の形状を、その表面を中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜としたものは周知である。
このような海苔関連装置に関する周知技術に基づいても、引用発明を生海苔の異物分離装置に転用する際に、その底部の回転板の形状を、海苔の処理装置の底部に設けた撹拌用回転部材の形状を、その表面が回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜になっているものとすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

ケ さらに、回転板の形状を周縁方向に下がり傾斜としたことによる効果についてみても、前記イで述べたように、本件発明は特にその傾斜の程度を特定するものではなく、異物の底隅部への集積のしやすさという効果の点で、引用発明と顕著に相違するものとはいえない。また、この点が周知の技術を適用したことにより容易に想到可能であると認められる以上,それから奏される効果も当業者であれば当然予測し得る程度のものでもある。
しかも、容易に想到し得ると認められる発明に対し,その効果を根拠に特許性を認める場合,その根拠となる効果は,予測あるいは発見することの困難なものであり,かつ予測あるいは発見される効果と比較して,よほど顕著なものでなければならないというべきである。このような観点に立ってみた場合,被請求人主張の効果は,本件発明に特許権を認める根拠とはなり得ないものというべきである。
以上のことから、この相違点に基づく本件発明の効果が、予想を超えて格別顕著なものであるということはできない。

(4)前記の被請求人の主張(2)について
被請求人の前記主張(2)ア?カについては、以下に示す理由によって採用することができない。

ア及びオについて
前述の、相違点(a)についての判断で述べた通り、引用発明の「室」は、液体を貯蔵することができる程度の深さをもった筒状の空間であって、本件発明の「混合液タンク」に相当すると認定される(前記記載事項(K)で言及されている図14の実施例では、さらにその上方にホッパー状のタンクと認められるものを備えている)以上、そういう変形が出来ないとか、回転板自身の形状としても考えにくいとはいえない。
また、本件発明が引用発明と比較して、ずっと緩やかな回転と流れを使うという前提は、本件特許の請求項2の記載に基づかないものであり、本件発明が、必然的にそのようなものに限定されるという合理的根拠もない。
さらに、引用発明を海苔の異物分離に転用することが容易である以上、その転用に際して、さらに適宜、その部材の形状を変更したり、あるいは周知技術を適用する等の変更を加えることは当業者が通常行う程度のことであるから、引用発明(甲第2号証)を前提とすると本件発明が困難であるという被請求人の主張は採用できない。

イについて
商業的成功が販売技術や宣伝等の様々な要因によって決まる事柄であることは明らかであり、実際の製品は、本件発明を特定する事項以外の種々の構成をも備えたものであるから、被請求人が主張する商業的成功の事実が直ちに本件発明の進歩性に結び付くわけではないし,本願発明が商業的に成功した理由がその進歩性以外にないとの事情を認めるに足りる証拠もない。

ウについて
本件発明の進歩性については、本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かという観点によって判断されるべきものであり、当事者の特許性に関する認識によって左右されるものではない。

エについて
前記キで述べたように、甲第8,9及び12号証に記載された装置は、いずれも、槽又は容器内の液体が回転し、比重の大きい固形物が遠心力を受けて外側に移動して分離されるものである点で引用発明と共通しており、引用発明を海苔の異物分離に転用する際に、底部の回転板の形状を、甲第8,9及び12号証に記載された装置の底部の形状と同様のものとすることが、発想され得ないとはいえない。

カについて
甲第2号証が、下がり傾斜の形状により適切に洗滌をする考えを開示するものでないとしても、上記のように、タンクの底部の形状を下がり傾斜とすることが周知技術である以上、引用発明を海苔の異物分離に転用する際に、さらに本相違点(c)のような変更を加えることが困難であるということはできない。
また、そもそも下がり傾斜の形状により適切に洗滌できるという効果は、本件の明細書には記載がなく、それに基づく進歩性の主張は、これを認めることはできない。仮に、そのような効果が本件明細書の記載から自明ということであれば、そのような効果が周知技術の適用により容易に予測しうるということに他ならない。

4 小括
そして、乙第1?3号証の内容を参酌しても、上記した相違点(a)?(c)についての判断から明らかなように、本件発明は、引用発明から容易に想到しうるものであり、先行技術からは予想し得ない顕著な効果を奏するものであるということもできないから、本件発明は、請求人の提出した甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-04 
結審通知日 2006-07-07 
審決日 2006-07-19 
出願番号 特願平6-315896
審決分類 P 1 123・ 121- Z (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河野 直樹  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 種村 慈樹
田中 久直
登録日 1997-06-20 
登録番号 特許第2662538号(P2662538)
発明の名称 生海苔の異物分離除去装置  
代理人 松本 直樹  
代理人 小南 明也  
代理人 竹中 一宣  
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