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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1160179 |
審判番号 | 不服2005-801 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-13 |
確定日 | 2007-07-05 |
事件の表示 | 特願2000-324806「文書入出力システム及びそれに用いる設定情報登録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月10日出願公開、特開2002-132913〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年10月25日の出願であって、平成16年12月8日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成17年1月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年2月14日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、 「コピー機能とファクシミリ機能とプリンタ機能とスキャナ機能とを統合した文書入出力装置を少なくとも含む文書入出力システムであって、 前記コピー機能と前記ファクシミリ機能と前記プリンタ機能と前記スキャナ機能とをそれぞれ実現するために必要な登録情報を管理する管理サーバと、 前記文書入出力装置及び前記管理サーバ各々に設けられかつ前記登録情報をネットワーク経由で相互に通信する通信手段とを有し、 前記管理サーバは、初期登録時に前記通信手段を介して前記文書入出力装置に登録情報を転送し、 前記登録情報を記憶する記憶手段を前記文書入出力装置に含み、 前記登録情報を蓄積する蓄積手段を前記管理サーバに含み、 前記管理サーバは、前記初期登録時に前記蓄積手段の前記登録情報を前記通信手段を介して前記記憶手段に転送し、 前記文書入出力装置に前記管理サーバと接続するために必要な設定を事前に登録しておき、前記管理サーバに前記文書入出力装置を利用するユーザの情報を少なくとも事前に登録しておくことで、 前記文書入出力装置の設置時点で前記文書入出力装置と前記管理サーバとの間の通信によって前記管理サーバに登録された情報を前記文書入出力装置に転送して初期登録することを特徴とする文書入出力システム。」と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1ないし2を削除し、補正前の請求項3を独立項として記載したものであるから、特許法17条の2第4項1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 3.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-194986号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が開示されている。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、設定データ管理システムに関し、特に、各資源デバイスの設定データを一括して管理し、ネットワークシステムの効率化を図る設定データ管理システムに関する。」 イ.「【0014】本発明は、同図に示すように、ネットワークN上に接続された第1複合機3、第2複合機4等の資源デバイスの設定データを設定データファイル10として設定データ管理サーバ2で管理することにより、前述した課題を解決するものである。 【0015】以下、本発明の内容をさらに詳細に説明する。 【0016】図1に示す設定データ管理システムは、クライアント・サーバ型ネットワークで構成され、資源デバイスとなる第1複合機3、第2複合機4、スキャナ、第1プリンタ6および第2プリンタと、当該各資源デバイスの設定データを設定データファイル10として記憶し管理する設定データ管理サーバ2と、設定データ管理サーバ2に記憶された設定データファイル10を編集する設定データ編集用クライアント1がネットワークN上で接続されて構成される。 【0017】ここで、第1複合機3および第2複合機4は、ファックス機能やコピー機能を有しており、」 ウ.「【0019】図2は、図1に示す各資源デバイスの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、各資源デバイス20は、当該デバイス内に設けられた各機能を制御する資源デバイス制御部21と、ネットワークNとの通信を制御する資源デバイス通信制御部22と、設定データ管理サーバが管理する設定データファイルを処理する設定データファイル処理部23と、資源デバイス20の設定データを記憶する設定データ記憶部24と、資源デバイス制御部21の命令および設定データ記憶部24に記憶された設定データに基づいて、資源デバイス20の機能を実行する資源デバイス機能部25と、ユーザに対するインターフェースとなる操作パネル26とから構成される。 <略> 【0021】一般に、ネットワークIDやパスワード等のデバイスが稼動するために必要な設定は、上記不揮発性のデータとして記憶され、複写枚数の設定等のユーザ操作に関する情報は揮発性のデータとして記憶される。 <略> 【0023】設定データファイル処理部23は、設定データファイルの生成以外に、生成した設定データファイルを資源デバイス通信制御部22を介して他の資源デバイスや設定データ管理サーバに送信する処理や、他の資源デバイスから送られてきた設定データファイルから設定データを抽出する処理や、設定データ記憶部24に格納したり、設定データファイルにファイル作成日付や保護パスワード等を設定する処理を実行する。」 エ.「【0025】図3は、図1に示す設定データ管理サーバ2の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、設定データ管理サーバ2は、サーバ内の各機能ブロックを制御するサーバ制御部30と、ネットワークNとの通信を制御するサーバ通信制御部31と、イベント発生時に設定データを更新する対象を記憶する更新対象記憶部32と、設定データファイルを記憶する設定データファイル記憶部33とから構成される。」 オ.「【0028】例えば、第1複合機は、イベント発生時に揮発性の設定データを集めた「ID=5、6、10」の設定データファイルを更新する。」 カ.「【0038】例えば、第1複合機3の電源が落ち、揮発性の設定データが消滅した場合には、第2複合機4の設定データファイル処理部23が設定データファイルを生成し、第1複合機3に転送する。リカバリ処理を実行する。このリカバリ処理は、設定データ管理サーバ2が該当する設定ファイルを、第1複合機3に送信することにより行うこともできる。」 キ.「【0040】次に、資源デバイスの設定データを更新する場合の動作例を図7を使用して説明する。 <略> 【0047】更新要求受付信号を受信した設定データ管理サーバ2は、当該更新対象デバイスに設定データファイルを送信する(ステップS207)。更新対象デバイスは、この設定データファイルを受信し、設定データファイル処理部23にて当該設定データファイルから設定データを抽出し、設定データ記憶部24に格納する。その結果、当該更新対象デバイスの設定データは更新される(ステップS208)。 上述した設定データ更新処理は、ユーザの指示や他の資源デバイスからの要求信号によっても実行される。この場合には、同図の点線で示すように、ステップS204から処理を開始する。」 (2)してみると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ファックス機能やコピー機能を有している複合機等の資源デバイスを含む設定データ管理システムであって、 各資源デバイスの設定データを設定データファイル10として記憶し管理する設定データ管理サーバ2と、 各資源デバイスは、ネットワークNとの通信を制御する資源デバイス通信制御部22を有し、 設定データ管理サーバは、ネットワークNとの通信を制御するサーバ通信制御部31を有し、 設定データ管理サーバ2は、更新対象デバイスに設定データファイルを送信し、 各資源デバイスは、資源デバイス20の設定データを記憶する設定データ記憶部24を構成に含み、 設定データ管理サーバは、設定データファイルを記憶する設定データファイル記憶部33を構成に含み、 設定データ管理サーバ2は、更新対象デバイスに設定データファイルを送信するものであって、 各資源デバイスは、ネットワークIDやパスワード等のデバイスが稼動するために必要な設定は、上記不揮発性のデータとして記憶されるものであって、 設定データ管理サーバは、設定データファイルを記憶する設定データファイル記憶部33を有し、 イベント発生時や、ユーザの指示や他の資源デバイスからの要求信号によって、設定データ管理サーバ2は、当該更新対象デバイスに設定データファイルを送信し、更新対象デバイスは、この設定データファイルを受信し、更新対象デバイスの設定データは更新される 設定データ管理システム」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「資源デバイス」は、ファックス機能やコピー機能を有している複合機等であり、複合機においてプリンタ機能やスキャナ機能を含むものは一般的であることから、本願発明の「文書入出力装置」に相当する。 引用発明の「設定データ」は、設定データに基づいて資源デバイスの機能を実行するものであり、これは各機能を実現するために必要な情報であることから、本願発明の「登録情報」に相当し、引用発明において、当該データを記憶する「設定データ記憶部24」および「設定データファイル記憶部33」は、本願発明の「記憶手段」及び「蓄積手段」に相当し、引用発明の「設定データ管理サーバ」は、接続された各資源デバイスの設定データを記憶し管理するであることから、本願発明の「管理サーバ」に相当する。 引用発明の資源デバイスと設定データ管理サーバの「通信制御部」は、ネットワーク用いたものであって通信を制御するものであり、資源デバイスと設定データ管理サーバは設定データを送受信しているものであるから、本願発明の「通信手段」に相当する。 引用発明の「通信」は、本願発明の「転送」に相当し、引用発明の「更新」は記憶装置に設定データを受信したデータで更新すなわち、受信したなデータを記憶するものであることから、本願発明の「登録」に相当する。 引用発明の「管理システム」は、複合機を含むものであることから、本願発明の「文書入出力システム。」に相当する。 以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] コピー機能とファクシミリ機能とプリンタ機能とスキャナ機能とを統合した文書入出力装置を少なくとも含む文書入出力システムであって、 前記コピー機能と前記ファクシミリ機能と前記プリンタ機能と前記スキャナ機能とをそれぞれ実現するために必要な登録情報を管理する管理サーバと、 前記文書入出力装置及び前記管理サーバ各々に設けられかつ前記登録情報をネットワーク経由で相互に通信する通信手段とを有し、 前記管理サーバは、前記通信手段を介して前記文書入出力装置に登録情報を転送し、 前記登録情報を記憶する記憶手段を前記文書入出力装置に含み、 前記登録情報を蓄積する蓄積手段を前記管理サーバに含み、 前記管理サーバは、前記蓄積手段の前記登録情報を前記通信手段を介して前記記憶手段に転送し、 前記文書入出力装置と前記管理サーバとの間の通信によって前記管理サーバに登録された情報を前記文書入出力装置に転送して登録することを特徴とする文書入出力システム [相違点] (1)相違点1 本願発明が、登録情報を「初期登録時に」転送し、「文書入出力装置の設置時点で」、「初期登録」するものであるのに対し、 引用発明は、登録情報をイベント発生時やユーザ指示等により、転送し、イベント発生時やユーザ指示等により登録するものである点。 (2)相違点2 本願発明が、「前記文書入出力装置に前記管理サーバと接続するために必要な設定を事前に登録しておき、前記管理サーバに前記文書入出力装置を利用するユーザの情報を少なくとも事前に登録しておくことで、」サーバの登録情報を転送し、登録するものであるのに対し、引用発明においてはその旨の記載が無い点。 5.当審の判断 (1)相違点1について 装置等の設定等を行う時点として、納入され設置された時に最初に必要な各種の設定を登録する、すなわち初期登録することは一般的な処理である。 そして、装置等の設定等を行うに際し、設定に係る情報を集中管理している集中管理先から、必要なデータを受信(ダウンロード)して設定を行うシステムにおいて、設置時に初期登録を行うことは、例えば前置審尋時に示した特開平06-237330号公報(初期納入時(設置時の初期登録時に相当)に初期モードデータを管理装置からダウンロードし、初期モード設定(初期登録に相当)動作を行うことが記載。以下「引用例2」という。)に記載されるように、周知の事項である。 してみれば、引用発明においても上記周知事項を用いて、「初期登録時に」登録情報を転送し、「文書入出力装置の設置時点で」、「初期登録」することは当業者であれば容易になし得る事項である。 (2)相違点2について コンピュータシステムなどにおいて通信を行う際に、当該通信を行うより前に、すなわち事前に、接続するために必要な設定や必要なユーザ情報等を登録しておくことは、当然に行われるべき事項であって、一般的に行われている周知の事項にすぎない。 そして、コンピュータシステムにおいて、サーバとの間で通信を行うために、「サーバと接続するために必要な設定」を当該通信より前に登録することは、サーバと通信するためには必要なことであるから当然に普通に行われている事項である。 また、コンピュータシステムにおいて通信を行うに際し、ユーザの情報等をユーザ側からアクセスされる側に事前に登録しておくことも、例えば引用例2にも記載されるように周知の事項である。(図25と同図に係る【0180】「・・・管理装置141において管理されるユーザを登録するメニューであり、複写機1をユーザ先に納入する前に複写機1の機種と製造番号等が登録される。・・・」等、及び、【0186】「・・・納入時に・・・複写機1を接続し、・・・管理装置141に送信する」等と記載されるように、通信を行う時点である納入時より前に、ユーザ側からアクセスされる側である管理装置にユーザに係る情報を登録している。) してみれば、引用発明においても、当該周知の事項を用いて、「前記文書入出力装置に前記管理サーバと接続するために必要な設定を事前に登録しておき、前記管理サーバに前記文書入出力装置を利用するユーザの情報を少なくとも事前に登録しておくことで、」転送し、登録するとすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。 (3)作用効果について 本願発明の奏する作用効果は当業者が引用例及び周知技術から予測しうるものであり、格別顕著な作用効果は認められない。 (4)付言 平成19年3月2日付け回答書に「【請求項1】・・・ 前記文書入出力装置は、設置時に前記通信情報入力手段により前記第二の通信情報を入力した後、当該第二の通信情報および前記第一の通信情報に基づいて、前記第一の通信情報で特定されるサーバを経由して前記管理サーバに接続し、前記管理サーバが前記蓄積手段から読み込んで転送した前記登録情報を、前記記憶装置に 前記コピー機能と前記ファクシミリ機能と前記プリンタ機能と前記スキャナ機能とをそれぞれ実現するために必要な登録情報を管理する管理サーバと、・・・」という「補正案」が示されているので、この「補正案」について検討してみると、「・・・転送した前記登録情報を、前期記憶装置に 前記コピー機能と・・・」の記載は何のどのような構成を定義しているものか不明確であり、また、「・・・接続し」の各記載が文書入出力装置、又は管理サーバのどちらに係る記載であるか不明確であり、構成が明確ではないので、特許法第36条第6号の要件を満たしていないといえる。 また、仮に、記載不備がないとしても、当該「補正案」により追加されると一応考えられる、通信情報で特定されるサーバを経由して前記管理サーバに接続することは、インターネット等を用いて接続する際に、一般的に用いられる構成であり、さらに、通信に係る情報を記憶し入力すること、記憶した情報及び入力した情報を用いること、通信のための情報を入力する手段を有することも、コンピュータシステムにおいて一般的な周知な事項であり、してみれば、引用発明においても、当該周知の事項を用いた構成とすることは当業者が容易になし得る事項にすぎない。そして、当該周知事項を用いた補正案の発明が奏する作用効果は当業者が引用例及び周知技術から予測しうるものであり、格別顕著な作用効果は認められないといえる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-25 |
結審通知日 | 2007-05-08 |
審決日 | 2007-05-22 |
出願番号 | 特願2000-324806(P2000-324806) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 猪瀬 隆広 |
特許庁審判長 |
立川 功 |
特許庁審判官 |
長 由紀子 青柳 光代 |
発明の名称 | 文書入出力システム及びそれに用いる設定情報登録方法 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 谷澤 靖久 |