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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1160319 |
審判番号 | 不服2004-15817 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-29 |
確定日 | 2007-07-12 |
事件の表示 | 特願2000-193289「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月30日出願公開、特開2001- 25539〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年7月8日に出願された実願平5-37390号の実用新案登録出願を特許法第46条第1項の規定により特許出願に変更(特願平9-174119号)し、さらに特願平9-174119号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成16年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成16年8月30日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる。(以下、「本願発明」という。) 「図柄表示装置の表示窓に顕示される特定図柄の変動表示を開始した後、その変動表示の表示結果が予め定めた表示結果になると入賞装置を開放する大当り制御を行うように構成された遊技機において、 前記図柄表示装置は、複数個の特定図柄からなる図柄群が表示される前表示体と、複数個の特定図柄からなる図柄群が表示される後表示体とを前後に離隔した重複位置でステッピングモータによって駆動することにより、図柄表示装置の表示窓に顕示される特定図柄の変動表示を行う前後表示体対を複数備え、 前記複数の前後表示体対のすべての前表示体と後表示体の駆動を停止させて前記表示窓から見える前側の特定図柄と後側の特定図柄とが同一の特定図柄であるとき、前記入賞装置を開放する大当り制御を行うことを特徴とする遊技機。」 2.原査定の拒絶の理由 原査定には、拒絶の理由として次の記載がある。 「この出願については、平成16年2月4日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって、拒絶をすべきものである。 ・・・ 備考 ・請求項1?4について 出願人は意見書において『b)第1に・・・ c)第2に、・・・引用文献4の図1にも記載されていますように・・・』と主張している。 しかしながら、上記拒絶理由通知書で指摘した引用文献4に記載の外側回転部材と・・・」(下線付加) これに対して、審判請求人は、その審判請求書の補充書(第1-2頁)において、次のように主張している。 「【拒絶査定の要点】 (イ)本件出願については、平成16年2月4日(発送日;平成16年2月10日)付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2(拒絶査定謄本の備考の記載に鑑みると、『理由3』の誤記ではないかと考えられますので、以下、理由3と解釈して記載します。)によって、拒絶査定する。即ち、『本件出願の請求項1?3に係る発明は、本件出願前に日本国内において頒布された特開平04-193283号公報(注)(以下、「引用文献4」という)に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』 というものであります。・・・」(下線付加) 当審注:特開平04-193283号公報は、原審の拒絶理由の「理由3」において、「引用文献5」として引用されたものであり、審判請求書及び同補充書における審判請求人の主張の全趣旨を勘案すれば、特開平04-341288号公報(引用文献4)の誤記であることが明らかである。 そこで検討するに、原査定の拒絶の理由となった平成16年2月4日付け拒絶理由通知書における「理由2」は、「この出願の請求項1、3は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。」というものであるが、拒絶査定における「備考」欄には、出願人(審判請求人)が平成16年4月12日付け意見書において、特許法第29条第2項についての拒絶の理由に対して、特に本願発明と引用文献4に記載された発明との相違について述べた意見・主張を引用することにより、実質的に特許法第29条第2項についての拒絶理由に関する言及がなされて、拒絶査定がなされている。 また、審判請求人も、その審判請求書において、「理由2は理由3の誤記」として、特許法第29条第2項についての拒絶の理由に対して実質的な反論・主張をしている。 以上を総合勘案すると、原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1?3に係る発明は、本願出願前に日本国内において頒布された特開平4-341288号公報(引用文献4)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とする「理由3」を、実質的に含むものと認める。 3.引用発明 原査定の拒絶の理由に「引用文献4」として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-341288号公報(以下、「引用文献」という。)には以下の記載がある。 a.「複数の表示要素が表面に形成された回転部材を備えた可変表示装置において、前記回転部材を独立して回転する外側回転部材と内側回転部材とから構成し、該外側回転部材及び内側回転部材にそれぞれ複数の表示要素を形成すると共に、それぞれの回転部材が停止したときに外側回転部材に形成された表示要素と内側回転部材に形成された表示要素とで所定の識別情報を形成することが可能な可変表示装置。」(特許請求の範囲) b.「可変表示装置10は・・・遊技盤1の前面に取り付けられる取付装飾基板11と、・・・遊技盤1の後面側に取り付けられ且つ・・・回転ドラム機構16、17等を収納するドラム収納箱15とから構成されている。・・・また、取付装飾基板11のほぼ中央には、長方形状の透視レンズ部14が取り付けられ、後述する左ドラム機構16、ディジタル表示器18、及び右ドラム機構17が透視し得るようになっている。」(段落【0007】) c.「・・・左ドラム機構16と右ドラム機構17の中間にディジタル表示器18によって1つの図柄が表示されるようになっている。しかして、左ドラム機構16、ディジタル表示器18、及び右ドラム機構17に表示される図柄の組合せのうち、いずれかの対角線上に表示される図柄が予め定めた図柄の組合せとなったときに、大当り遊技状態となるように設定されている。・・・」(段落【0008】) d.「ところで、左ドラム機構16及び右ドラム機構17は、外側回転ドラム30、30aと内側回転ドラム31、31aとの2つの回転ドラムを同心状に回転する構成を有する。・・・ドラム機構16は、筒状の外側回転ドラム30と該外側回転ドラム30と同心状に配置される内側回転ドラム31とを有する。外側回転ドラム30は、前記ドラム収納箱15の所定の位置に位置決めして装着されるモータ取付板32に止着される駆動モータ33(ステッピングモータ)のモータ軸34に固着されている。・・・」(段落【0010】) e.「また、内側回転ドラム31は、前記ドラム収納箱15の所定の位置に位置決めして装着されるモータ取付板36に止着される駆動モータ37(ステッピングモータ)のモータ軸38に固着されている。・・・このように外側回転ドラム30と内側回転ドラム31とは、異なる駆動モータ33、37によって独立して回転駆動されるようになっている。更に、モータ取付板36の前方には、照射ランプ装置40が取り付けられている。この照射ランプ装置40は、前面が開放し且つ上下2つに区画されたランプ収容室41a,41bに照射ランプ42a,42bを収納する構造となっている。しかして、ランプ42a,42bは、・・・2つの図柄の後面を照射するように構成され、可変表示装置10が可変表示しているときに点灯するようになっている。・・・更に、回転ドラム30、31は、少なくとも外周面が透過性のある材料で形成されている。」(段落【0011】) f.「・・・右ドラム機構17の構成もこれと全く同じであり・・・左ドラム機構16と線対称となるように右ドラム機構17の外側回転ドラム30aを回転駆動する駆動モータがドラム収容箱15の右側部に位置し、内側回転ドラム31aを回転駆動する駆動モータがドラム収容箱15の中央部寄りに位置しているだけである。・・・」(段落【0013】) g.「・・・外側回転ドラム30に貼付されるドラム表示情報52は、表示要素として透明生地52aに数値情報の一部を構成する数値部分情報52bが描かれている。また、内側回転ドラム31に貼付されるドラム表示情報53は、表示要素として透明生地53aに数値情報の一部を構成する数値部分情報53bが描かれている。しかして、外側回転ドラム30と内側回転ドラム31とが停止したときに左ドラム機構16に表示される識別情報は、数値部分情報52bと数値部分情報53bとの組合せ(合成)によって数値として認識できる識別情報又は数値として認識できない識別情報となる。つまり、・・・回転ドラム30、31の停止時における外側回転ドラム30の数値部分情報52bと内側回転ドラム31の数値部分情報53bとによって識別情報の形態に各種の組合せが発生するため、外側回転ドラム30と内側回転ドラム31の両方が停止しない限りどのような識別情報が構成されるのかが分からず、遊技者の可変表示動作に対する興趣を強く引き付けることとなる。」(段落【0015】) h.「なお、上記した実施例では、外側回転ドラムと内側回転ドラムとからなるドラム機構(以下、Wドラム機構という)を2つ有し、ディジタル表示器を1つ有する可変表示装置10を例示したが、すべてをWドラム機構とした可変表示装置であっても良い・・・」(段落【0017】) 上記の記載より、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数の表示要素が表面に形成された回転部材を備えた可変表示装置において、前記回転部材を独立して回転する外側回転部材と内側回転部材とから構成し、該外側回転部材及び内側回転部材にそれぞれ複数の表示要素を形成すると共に、それぞれの回転部材が停止したときに外側回転部材に形成された表示要素と内側回転部材に形成された表示要素とで所定の識別情報を形成することが可能な可変表示装置であって、該可変表示装置10は遊技盤1の前面に取り付けられる取付装飾基板11と、遊技盤1の後面側に取り付けられ且つ回転ドラム機構16、17等を収納するドラム収納箱15とから構成され、取付装飾基板11のほぼ中央には、長方形状の透視レンズ部14が取り付けられ、後述する左ドラム機構16、ディジタル表示器18、及び右ドラム機構17が透視し得るようになっており、左ドラム機構16と右ドラム機構17の中間にディジタル表示器18によって1つの図柄が表示され、左ドラム機構16、ディジタル表示器18、及び右ドラム機構17に表示される図柄の組合せのうち、いずれかの対角線上に表示される図柄が予め定めた図柄の組合せとなったときに、大当り遊技状態となるように設定されているが、すべてを外側回転ドラムと内側回転ドラムとからなるドラム機構とした可変表示装置であっても良く、左ドラム機構16及び右ドラム機構17は、外側回転ドラム30、30aと内側回転ドラム31、31aとの2つの回転ドラムを同心状に回転する構成を有し、外側回転ドラム30と内側回転ドラム31とは、異なる駆動モータ33、37によって独立して回転駆動されるようになっており、更に、回転ドラム30、31は、少なくとも外周面が透過性のある材料で形成され、外側回転ドラム30に貼付されるドラム表示情報52は、表示要素として透明生地52aに数値情報の一部を構成する数値部分情報52bが描かれ、また、内側回転ドラム31に貼付されるドラム表示情報53は、表示要素として透明生地53aに数値情報の一部を構成する数値部分情報53bが描かれており、外側回転ドラム30と内側回転ドラム31とが停止したときに左ドラム機構16に表示される識別情報は、数値部分情報52bと数値部分情報53bとの組合せ(合成)によって数値として認識できる識別情報又は数値として認識できない識別情報となるもので、回転ドラム30、31の停止時における外側回転ドラム30の数値部分情報52bと内側回転ドラム31の数値部分情報53bとによって識別情報の形態に各種の組合せが発生するため、外側回転ドラム30と内側回転ドラム31の両方が停止しない限りどのような識別情報が構成されるのかが分からず、遊技者の可変表示動作に対する興趣を強く引き付けることとなる、弾球遊技機の可変表示装置。」 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「可変表示装置」は本願発明における「図柄表示装置」に対応しており、同様に、「透視レンズ部14」はその機能に照らすと「表示窓」に、「(透視レンズ部14に)表示される」は「(表示窓に)顕示される」に、「可変表示」は「変動表示」に、「外側回転ドラム30」は「前表示体」に、「内側回転ドラム31」は「後表示体」に、「駆動モータ33、37」は「ステッピングモータ」に、それぞれ対応しているとともに、引用発明における「弾球遊技機」は本願発明における「遊技機」に包含されるものであり、さらに引用発明について次のことがいえる。 (i) 引用発明は、「外側回転ドラム30と内側回転ドラム31」の「回転駆動」(摘示e.)に伴って、「可変表示装置」(本願発明における「図柄表示装置」に対応する。)の「透視レンズ部14」(本願発明における「表示窓」に対応する。)に「表示」(本願発明における「顕示」に対応する。)される、「外側回転ドラム30」の「数値部分情報52b」及び「内側回転ドラム31」の「数値部分情報53b」が「可変表示」(本願発明における「変動表示」に対応する。)を開始するものであり、これらの「可変表示」される「数値部分情報52b」及び「数値部分情報53b」を包括して「図柄情報」と表現することができる。 また引用発明は、「ドラム機構」(摘示h.)に「表示される図柄の組合せのうち、いずれかの対角線上に表示される図柄が予め定めた図柄の組合せとなったときに、大当り遊技状態となるように設定」(摘示c.)されており、当該構成は、本願発明における、「その変動表示(引用発明における「可変表示」が対応する。)の表示結果が予め定めた表示結果になると」の構成に対応するものといえる。 さらに、この種の弾球遊技機(遊技機)は入賞装置を備えており、「大当り遊技状態となる」と、該入賞装置を開放する大当り制御を行うことは自明な事項であることから、同引用発明は「可変表示装置」(「図柄表示装置」)の「透視レンズ部14」(「表示窓」)に「表示」(「顕示」)される「図柄情報」の「可変表示」(「変動表示」)を開始した後、その「可変表示」(「変動表示」)の表示結果が予め定めた表示結果になると入賞装置を開放する大当り制御を行うように構成された弾球遊技機(遊技機)であると包括的に表現することができる。 一方、本願発明は、「図柄表示装置の表示窓に顕示される特定図柄の変動表示を開始した後、その変動表示の表示結果が予め定めた表示結果になると入賞装置を開放する大当り制御を行うように構成された遊技機」であり、上記の「変動表示」される「特定図柄」を「図柄情報」と包括的に表現することができる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「図柄表示装置の表示窓に顕示される図柄情報の変動表示を開始した後、その変動表示の表示結果が予め定めた表示結果になると入賞装置を開放する大当り制御を行うように構成された遊技機」である点で共通しているということができる。 (ii) 引用発明における「可変表示装置」(「図柄表示装置」)は、「外側回転ドラム30」(本願発明における「前表示体」に対応する。)と「内側回転ドラム31」(本願発明における「後表示体」に対応する。)とから構成されており、上記「外側回転ドラム30」(「前表示体」)と「内側回転ドラム31」(「後表示体」)とは、「同心状に配置され」(摘示d.)ることで前後に離隔した重複位置で「駆動モータ33、37(本願発明における「ステッピングモータ」に対応する。)によって駆動され」(摘示e.)、「可変表示」(「変動表示」)を行うものであり、上記の「外側回転ドラム30」(「前表示体」)と「内側回転ドラム31」(「後表示体」)とは、本願発明における「前後表示体対」に対応するものであるということができ、同引用発明は、実質上、「前後表示体対」に対応するものを複数備えているということができる。 また、上記「外側回転ドラム3」(「前表示体」)と「内側回転ドラム31」(「後表示体」)には、それぞれ複数個の「数値部分情報52b」及び「数値部分情報53b」が表示されており、上記(i)に記載したように、「可変表示」される「数値部分情報52b」及び「数値部分情報53b」を包括して「図柄情報」と表現することができ、さらに、複数個の「数値部分情報52b」及び「数値部分情報53b」を包括して、「複数個の図柄情報からなる図柄情報群」と表現することができることから、上記「可変表示装置」(「図柄表示装置」)の「透視レンズ部14」(「表示窓」)には、「図柄情報」の「可変表示」(「変動表示」)が表示(「顕示」)されるものである。 一方、本願発明は、「前記図柄表示装置は、複数個の特定図柄からなる図柄群が表示される前表示体と、複数個の特定図柄からなる図柄群が表示される後表示体とを前後に離隔した重複位置でステッピングモータによって駆動することにより、図柄表示装置の表示窓に顕示される特定図柄の変動表示を行う前後表示体対を複数備え」るものであり、上記(i)に記載したように、「変動表示」される「特定図柄」を「図柄情報」と包括的に表現することができ、さらに、「(複数個の特定図柄からなる)図柄群」を包括して「(複数個の図柄情報からなる)図柄情報群」と表現することができる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記図柄表示装置は、複数個の図柄情報からなる図柄情報群が表示される前表示体と、複数個の図柄情報からなる図柄情報群が表示される後表示体とを前後に離隔した重複位置でステッピングモータによって駆動することにより、図柄表示装置の表示窓に顕示される図柄情報の変動表示を行う前後表示体対を複数備え」ている点で共通しているということができる。 (iii) 引用発明は、「外側回転ドラム30と内側回転ドラム31とが停止したとき」に「透視レンズ部14」(「表示窓」)から見える前側の「数値部分情報52b」と、後側の「数値部分情報53b」との「組合せ(合成)によって数値として認識できる識別情報とな」(摘示g.)れば、「大当り遊技状態となる」(摘示c.)ものである。 ここで、上記した前側の「数値部分情報52b」は「前側の図柄情報」と、同じく後側の「数値部分情報53b」は「後側の図柄情報」と、それぞれ包括的に表現することができるとともに、上記した「大当り遊技状態」となる「識別情報」を「大当り図柄」と表現することができ、「前側の図柄情報」と、「後側の図柄情報」とが「大当り図柄」を形成したとき、「大当り遊技状態とな」って、上記(i)に記載したように、「入賞装置を開放する大当り制御を行う」ものであるといえる。 一方、本願発明は、「前記複数の前後表示体対のすべての前表示体と後表示体の駆動を停止させて前記表示窓から見える前側の特定図柄と後側の特定図柄とが同一の特定図柄であるとき、前記入賞装置を開放する大当り制御を行う」ものであり、「変動表示」される「特定図柄」を「図柄情報」と包括的に表現することができるとともに、「前側の特定図柄と後側の特定図柄とが同一の特定図柄であるとき」の当該「特定図柄」を包括して「大当り図柄」と表現することができ、「前側の図柄情報」と、「後側の図柄情報」とが「大当り図柄」を形成したとき、「大当り遊技状態とな」って、「入賞装置を開放する大当り制御を行う」ものであるといえる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記複数の前後表示体対のすべての前表示体と、後表示体の駆動を停止させて前記表示窓から見える前側の図柄情報と後側の図柄情報とが大当り図柄を形成したとき、前記入賞装置を開放する大当り制御を行う」点で共通しているということができる。 以上の事項より、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。 一致点; 図柄表示装置の表示窓に顕示される図柄情報の変動表示を開始した後、その変動表示の表示結果が予め定めた表示結果になると入賞装置を開放する大当り制御を行うように構成された遊技機において、前記図柄表示装置は、複数個の図柄情報からなる図柄情報群が表示される前表示体と、複数個の図柄情報からなる図柄情報群が表示される後表示体とを前後に離隔した重複位置でステッピングモータによって駆動することにより、図柄表示装置の表示窓に顕示される図柄情報の変動表示を行う前後表示体対を複数備え、前記複数の前後表示体対のすべての前表示体と後表示体の駆動を停止させて前記表示窓から見える前側の図柄情報と後側の図柄情報とが大当り図柄を形成したとき、前記入賞装置を開放する大当り制御を行う遊技機、である点。 相違点; (A) 本願発明では、図柄情報が特定図柄であり、図柄情報群が複数個の特定図柄からなる図柄群であるのに対して、引用発明では、図柄情報が数値部分情報であり、図柄情報群が複数個の数値部分情報からなるものである点。 (B) 大当り図柄を形成するのが、本願発明では、前側の特定図柄と後側の特定図柄とが同一の特定図柄であるとき、であるのに対して、引用発明では、前側の数値部分情報52bと後側の数値部分情報53bとの組合せ(合成)によって数値として認識できる識別情報であるとき、である点。 上記の相違点について検討する。 相違点(A)について 相違点(A)における、前表示体と後表示体に表示する図柄情報についてさらにみると、本願発明では、それ自体で個々の図柄として意味を表す図柄(「特定図柄」)であるのに対して、引用発明では「数値部分情報」であって、個々の「数値」を完全な形体で表すものではないが、完全な形体を成す特定の「数値」の「部分情報」であり、該「部分情報」と特定の「数値」とは対応関係にある。 ところで、前表示体と後表示体とを前後に離隔した位置でステッピングモータによってそれぞれ駆動する、遊技機の図柄表示装置において、上記前表示体と後表示体のそれぞれに、それ自体で個々の図柄として意味を表している、完全な形体を成す図柄を表示し、これらを変動表示することは、例えば周知例1ないし3として下記に例示するように従来よりよく知られており、特に周知例1及び2は、前表示体と後表示体とが停止したとき、前表示体に表示された図柄と後表示体に表示された図柄とが重複して表示窓から観察される停止の態様を含むものである。 そうすると、上記の周知技術を参酌し、引用発明において、特定の「数値」の一部を表す「部分情報」を表示するという表示手段に代えて、該「部分情報」と対応関係にある、それ自体で意味を表している、完全な形体を成す特定の「数値」(すなわち、本願発明における、「特定図柄」に相当するもの。)を表示することは、当業者にとって格別困難なことではなく、上記特定の「数値」(「特定図柄」)を引用発明における「外側回転ドラム3」(「前表示体」)と「内側回転ドラム31」(「後表示体」)に複数個表示すると、これらの各「ドラム」(「表示体」)には、複数の特定の「数値」(すなわち、本願発明における、「特定図柄からなる図柄群」に相当するもの。)が表示されることとなる。 したがって、相違点(A)に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到することができたものである。 相違点(B)について 「相違点(A)について」に記載したように、引用発明における「数値部分情報」に代えて、完全な形体を成す、特定の「数値」(すなわち、本願発明における、「特定図柄」に相当するもの。)を表示することは、当業者が容易に想到することができたものである。 そうすると、同引用発明において、大当りが成立したときに「前側の数値部分情報52bと後側の数値部分情報53bとの組合せ(合成)」により、「透視レンズ部14」(「表示窓」)から見える、「数値として認識できる識別情報」は、必然的に、前側の「数値」(「特定図柄」)と後側の「数値」(「特定図柄」)とが同一の「数値」(「特定図柄」)として見えるものとなる。 したがって、相違点(B)に係る本願発明の構成は、上記相違点(A)に係る改変に伴って必然的に得られる構成であり、格別な技術的意義を有するものではない。 ここで、本願発明の効果として本願の明細書(段落【0032】)には以下の記載がある。 「【発明の効果】 本発明によれば、二つの図柄群を前後に重ね合わせた状態で変動するという新規な表示態様を実現することができると共に、複数の前後表示体対が停止したときに前側の特定図柄と後側の特定図柄とが同一図柄である場合に大当りとなるため、大当たりのための条件設定を特異化してゲームへの興味を引き起こすことができる。」 よって検討するに、引用発明において、可変表示する「数値部分情報」は、遊技者がその完全な形体の「数値」として認識し得るか、あるいは認識し得ないかに関係なく、当該「数値」の一部を取り出して表示したものであり、「数値部分情報」と「数値」とは対応関係にある。しかも、完全な形体として意味を表している二つの図柄群を前後に重ね合わせた状態で可変表示するという表示態様は、周知例1ないし3として下記に例示したとおりよく知られている周知技術であるから、引用発明に接した当業者は、引用発明における「数値部分情報」を完全な形体の「数値」として前後の「リール」に表示し、可変表示すれば、前後の「リール」が停止したときに、両者の「数値」が同一である場合に大当りとなるため、大当りのための相応した条件設定が成され、ゲームへの興味を引き起こすことができるであろうと予測するものである。 すなわち、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願発明は、周知技術を参酌し、引用発明に基いて当業者が容易に想到することができたものである。 【周知例】 周知例1:特開平4-49988号公報 シンボル表示窓に複数のシンボル列を順次に移動表示し、シンボル列の移動表示が停止したときに入賞ラインで停止しているシンボルの組み合わせによって入賞の有無を表示するスロットマシンにおいて、リール3?5の各々を、外リール3a?5aと内リール3b?5bの二重構成にするとともに、外リール3a?5a及び内リール3b?5bには、「ブランク(空白)」、「スター」、「1BAR」、「2BAR」、「3BAR」、「チェリー」等のシンボルを配列し、外リールの「ブランク」を通して内リールのシンボルが現れたり、また、外リールのシンボルと内リールのシンボルとを重ね合わせることによってシンボルの種類が変わったりするようになる、スロットマシン。(特許請求の範囲、第2頁右下欄第5-9行、第5頁左上欄第7-14行、第1図) 周知例2:特開平4-114676号公報 透明な樹脂材からなるリール体15の外周に、「lBAR」、「3BAR」、「スター」、「7」、「チェリー」等の複数のシンボルを配列した外リールと、この外リールの内側で回転され、その外周に設けられたシンボルが外リールを通して観察される内リールとから構成され、リール5?7の各々を、外リール5a?7aと内リール5b?7bの二重構成にすることにより、外リールの「ブランク」を通して内リールのシンボルが現れたり、また、外リールのシンボルと内リールのシンボルとを重ね合わせることによってシンボルの種類が変わったりするようになる、スロットマシン。(特許請求の範囲、第2頁右下欄第6-14行、第5頁左上欄第3-9行、第1図) 周知例3:特開平3-60681号公報 外周に複数のシンボルが配列された回転自在な内リールと、この内リールの外周を包むように配置され、その外周に複数のシンボルが配列されるとともに少なくとも1シンボル分の透明部が設けられた回転自在な外リールと、これらの内リール及び外リールを別個に回転並びに停止制御するリール制御手段とを備えたゲームマシン。(特許請求の範囲、第1図) 5.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-02 |
結審通知日 | 2007-05-08 |
審決日 | 2007-05-28 |
出願番号 | 特願2000-193289(P2000-193289) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
中槙 利明 渡部 葉子 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 今崎 一司 |