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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1160379
審判番号 不服2004-6186  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-26 
確定日 2007-07-13 
事件の表示 平成 7年特許願第101580号「経皮吸収促進剤および経皮吸収型製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月22日出願公開、特開平 8-277229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成7年4月4日の出願であって、平成16年2月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月26日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月26日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成16年4月26日付の手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の
「ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類から選択される薬効成分と2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを0.1?20重量%の経皮吸収促進剤を含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。」

「ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類から選択される0.001?20重量%の薬効成分と2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを0.1?20重量%の経皮吸収促進剤を含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。」
と補正するものである。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「薬効成分」についてその濃度を「0.001?20重量%」とする限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献の記載の概要
原審で引用された国際公開第94/10117号パンフレット(以下「引用例」という。)には以下の事項が記載されている。

a.本発明は、口腔内粘膜や皮膚等を対象とした化粧品、口腔製剤および医薬品等の各種製剤を開発するうえで有用な、1.十分な清涼作用を有する、2.ハッカ臭がない、3.常温で昇華しない、4.基剤中で結晶化しない、5.各種基剤との相溶性が良い等の優れた特性を有する化合物、並びにその化合物を用いた冷感剤および冷感性組成物の開発を目的とするものである。(第2頁第16?20行)
b.本発明のシクロヘキサノール誘導体は、下記一般式(1)(構造式は省略する)で表されるものである。・・・(1R,2S,5R,8R)-2-(2-アルコキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールが好ましい。(第2頁末行?第3頁13行))
c.本発明のシクロヘキサノール誘導体は冷感剤として医薬品、医薬部外品、食品、化粧品等への多くの応用が考えられ・・・上記シクロヘキサノール誘導体を冷感剤として配合して清涼作用を付与した、(1)軟膏、クリーム、ゲル、ローション、成形パップ剤、テープ剤、内服剤などの医薬品、・・・・等が挙げられる。・・・さらに本発明の冷感性組成物が医薬品、化粧品等の各種製剤の場合、薬効成分として公知の薬剤を適宜配合できる。(第4頁8?23行)
d.本発明の冷感組成物中の前記シクロヘキサノール誘導体の含有量は特に制限されないが、使用時に0.001?10重量%となる範囲が好ましい。(第4頁24?25行)
e.配合例17
ゼラチン5.0、ソルビトール10.0、カルボキシメチルセルロース3.5、グリセリン25.0、カオリン7.0、ポリアクリル酸ソーダ3.0、(1R,2S,5R,8R)-2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノール0.5、精製水46.0(重量%)を配合したパップ剤(第25頁1?10行)

他に配合例6,7,8,10,15,16として(1R,2S,5R,8R)-2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを配合したローション、クリーム、軟膏、パップ剤の処方が記載されている。(第19?25頁)

(3)独立特許要件についての判断

ア.本願補正発明と引用例の発明との同一性について

引用例には薬効成分を配合した2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを含む具体的例は記載されていないものの、実施例に配合例が示されているローション、クリーム、軟膏、パップ剤等が薬効成分を含有させ医薬品製剤となしうるものであることは周知であり、引用例中においても「本発明の冷感性組成物が医薬品、化粧品などの各製剤の場合、薬効成分として公知の薬剤を適宜配合できる。」(記載c)「含有量は特に制限されないが、使用時に0.001?10重量%となる範囲が好ましい。」(記載d)と明記されている。
したがって、引用例には「公知の薬剤を適宜配合した2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを0.001?10重量%含むローション、クリーム、軟膏、パップ剤等の医薬製剤の発明」が開示されているものと認められる。
そこで、本願補正発明と上記の引用例の発明とを比較すると、ローション、クリーム、軟膏、パップ剤は「経皮吸収型製剤」に該当するから、両者は、「薬効成分と2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを0.1?10重量%含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では薬効成分を「ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類から選択される」ものとし、その濃度を0.001?20重量%としているが、引用例には公知の薬剤を適宜配合したものである点

[相違点2]
本願補正発明では2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを経皮吸収促進剤と特定しているが、引用例では冷感剤として使用されている点。

以下相違点につき検討する。

[相違点1]について
経皮吸収型製剤に配合することのできる薬効成分としてステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類等は周知であり、その配合量として0.001?20重量%も通常の範囲内のものである。したがって、相違点1は公知の薬剤を適宜配合することを単に具体的に記載したにすぎず、実質的な相違点となるものではない。

[相違点2]について
引用例の製剤においては2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールは冷感剤として配合されており、経皮吸収促進剤であることの記載はないが、引用例においても本願補正発明においてもその配合量は重複しており、経皮吸収型製剤として使用される以上、製剤に対する冷感付与と同時に薬効成分の経皮吸収促進作用も当然に奏されるはずのものである。したがって、相違点2はこの化合物の冷感作用を認識して冷感剤と表現したか経皮吸収促進作用を認識して経皮吸収促進剤と表現したかの相違であって、製剤自体の相違をもたらすものではない。

以上のとおり、相違点1,2は何れも実質的なものではないから、本願発明は引用例に記載された発明ということができ、本願補正発明は特許法第29条第1項3号に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができない。

イ.引用例からの容易性について

引用例の配合例17(記載e)のハップ剤と本願補正発明を対比すると、両者は
「2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを0.1?20重量%含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明ではステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類から選択される薬効成分を0.001?20重量%含有しているが、引用例の処方には薬効成分が配合されていない点
[相違点2]
本願補正発明では2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを経皮吸収促進剤と特定しているが、引用例では冷感剤として使用している点。
以下相違点につき検討する。

[相違点1]について
引用例には、「本発明の冷感性組成物が医薬品、化粧品などの各製剤の場合、薬効成分として公知の薬剤を適宜配合できる。」(記載c)と明記されている。
一方、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類などの薬効成分は0.001?20重量%の範囲でパップ剤に配合可能であることは周知であるから、引用例のパップ剤にこれらを上記範囲の割合で配合することは引用例の記載から当業者が容易に想到しうる範囲のことである。

[相違点2]について
パップ剤などの経皮吸収製剤について薬剤の吸収を促進するために経皮吸収促進剤を添加することは当業界ではよく知られており、メントール、メントン、テルビネオール、リモネン、サイメンなどモノテルペン化合物に経皮吸収促進作用があることも周知である(国際公開第92/16237号パンフレット第4頁、特開平4-217920号公報の段落【0010】、特開平1-186824号公報第2頁等を参照)。そして、引用例の 2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールはモノテルペンに属し、メントール(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールともいう。)の類縁化合物であることはその構造から自明であるから、この化合物の経皮吸収促進作用については当業者が十分に予測し、容易に確認しうる範囲のものであって、この作用を明らかにした点に格別の創意を認めることはできない。
そして本願明細書に記載された本願補正発明の効果にしても当業者が容易に予測しうる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年4月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年11月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗アレルギ-剤、抗ヒスタミン剤、中枢神経作用薬、ホルモン剤、抗高血圧症剤、強心剤、抗不整脈用剤、冠血管拡張剤、局所麻酔剤、鎮痛剤、骨格筋弛緩剤、抗真菌剤、抗悪性腫瘍剤、排尿障害剤、抗パーキンソン病剤、禁煙補助剤、ビタミン類またはプロスタグランジン類から選択される薬効成分と2-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールを0.1?20重量%の経皮吸収促進剤を含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(3)で検討した本願補正発明から「薬効成分」についての「0.001?20重量%」という特定を省いたものであるから本願補正発明を包含する。
そうすると、本願補正発明が、前記2.(3)のア.またはイ.に記載したとおりの理由により特許を受けることができるものでない以上、本願発明も同様の理由により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明であるから特許法第29条第1項3号に該当し、または、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-10 
結審通知日 2007-05-16 
審決日 2007-05-29 
出願番号 特願平7-101580
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長部 喜幸渡辺 仁  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 穴吹 智子
川上 美秀
発明の名称 経皮吸収促進剤および経皮吸収型製剤  
代理人 伊東 哲也  

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