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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1161166
審判番号 不服2006-521  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-06 
確定日 2007-06-06 
事件の表示 平成 7年特許願第528704号「トルク制限サーボ機構」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月16日国際公開、WO95/30852、平成10年10月 6日国内公表、特表平10-510349〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【一】 手続の経緯
本願は、1995年5月5日(パリ条約による優先権主張;1994年5月6日、スペイン国)を国際出願日とする出願であって、平成17年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成18年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月6日付けで特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合に該当する明細書についての手続補正がなされたものである。

【二】平成18年2月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】 トルク又は応力の入力と、
トルク又は応力の出力と、
前記入力から前記出力へトルク又は応力を伝達する伝達手段と、
前記出力へ伝達された前記トルク又は応力が所定のレベルを超えないように前記伝達手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記伝達されたトルク又は応力に反応することができる、状況に応じて動く部品と、
トルク及び/又は応力制限群とを有し、
前記トルク又は応力は、前記状況に応じて動く部品を通じて伝達され、
前記状況に応じて動く部品は、
動いているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達せず、
動かないように保持されているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達する、ように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、
前記状況に応じて動く部品と密接に関連して作用するように構成されると共に、
少なくとも1つの機械的接触素子と少なくとも1つの弾性素子とを有し、
前記状況に応じて動く部品によって、前記入力に掛けられたトルク又は応力は、前記出力に掛かるトルク又は応力と、過剰なトルク又は応力とに分割され、
前記状況に応じて動く部品は、動いているときに、その構成によって、後に使用される少なくとも1つの信号を生成すると共に、前記過剰なトルク又は応力が前記出力に達しないように該過剰なトルク又は応力の全部又は一部を弱める、ように構成され、
前記状況に応じて動く部品は、前記伝達されたトルク又は応力が所定の閾値に達したときに動き始めるように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を下回ったときに前記状況に応じて動く部品が動かないようにすると共に、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を越えたときには前記状況に応じて動く部品の自由な相対的動きを許容する、ように構成され、
機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルク又は応力を制限し、保持するサーボ機構であって、 前記トルク及び/又は応力制限群は、前記トルク又は応力が前記閾値を超えたときに、前記状況に応じて動く部品が、該状況に応じて動く部品が応力又はトルクを前記出力へ伝達する状態で動かないように維持された状態から、該状況に応じて動く部品が応力又はトルクを前記出力へ伝達しない状態で自由に相対的に動く状態へと直ちに且つ直接的に移行するように、構成され、 前記トルク及び/又は応力制限群は、前記所定の閾値を調節する閾値調節手段を有し、
前記閾値調節手段は、
前記少なくとも1つの弾性素子と、
前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける圧力を調節する手段とを有する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項2】 請求項1記載のサーボ機構であって、
前記トルク制限群は、該トルク制限群が前記状況に応じて動く部品の相対的な動きを許容するか否かの基準となる前記トルク又は応力閾値を調整するように構成された調整・調節素子を有し、
前記調整・調節素子は、前記少なくとも1つの弾性素子に作用して、前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける力を調節するように構成される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項3】 請求項1又は2記載のサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、遊星歯車機構の外側遊動輪であり、
前記遊動輪は、固有のシャフトの周りを回転可能であり、
前記遊星歯車機構は、少なくとも、
フレームと、
入力シャフトと、
センターピニオン又はセンター歯車と、
遊星素子ホルダと、
1又は複数の、好ましくは3つの、遊星ピニオン又は遊星歯車とを有し、
前記センター歯車は、
前記入力シャフトに固定され、
前記遊星歯車と直接噛合するように構成され、
前記遊星素子ホルダは、
前記1又は複数の遊星歯車を支持し、
前記遊星歯車機構からのトルク用の出力を構成し、
1以上のアームを備えることが可能であり、
前記遊星歯車は、
前記遊星素子ホルダに取り付けられ、
前記センター歯車及び前記外側遊動輪と噛合するように構成され、
前記遊動輪は、
その内側で、前記遊星歯車と噛合するように構成され、
普段は、前記トルク制限群の前記少なくとも1つの機械的接触素子によって制動され、
前記少なくとも1つの機械的接触素子は、
前記遊動輪に設けられた溝に収容され、
前記トルクが予め設定されたトルク閾値を越えたときに前記遊動輪が解放され、自転し始めるように、該遊動輪の回転を制御・制限し、
前記遊動輪が自転することにより、前記入力におけるモータの駆動動力が遮断され、
この前記遊動輪の動きにより、前記入力におけるトルクのうち制限された一部分のみが前記遊星素子ホルダを通じて前記出力へ伝達される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項4】 請求項1又は2記載のサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、遊星歯車機構の遊星素子ホルダであり、
前記遊星素子ホルダは、固有のシャフトの周りを回転できるように構成され、
前記遊星歯車機構は、少なくとも、
フレームと、
入力シャフトと、
センターピニオン又はセンター歯車と、
1又は複数の、好ましくは3つの、遊星ピニオン又は遊星歯車と、
外側遊動輪と、
前記遊星素子ホルダとを有し、
前記センター歯車は、
前記入力シャフトに固定され、
前記遊星歯車と直接噛合するように構成され、
前記遊星歯車は、
前記遊星素子ホルダに取り付けられ、
前記センター歯車及び前記外側遊動輪と噛合するように構成され、
前記外側遊動輪は、自由に動けるように又は静止しているように構成され、
前記遊星素子ホルダには、前記遊星歯車が取り付けられ、
前記遊星素子ホルダの動きは回転のみ可能であり、その回転動きは、前記トルク制限群の前記少なくとも1つの機械的接触素子によって制限・調整され、
前記少なくとも1つの機械的接触素子は、前記遊星素子ホルダに設けられた溝に収容される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項5】 請求項4記載のサーボ機構であって、
前記外側遊動輪は、その外側で、伝達歯車と噛合するように構成され、
前記伝達歯車は、前記遊動輪へ動き及びトルクを伝達するか、或いは、前記遊動輪を静止し制動された状態に保つ、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項6】 請求項4又は5記載のサーボ機構であって、
好ましくは円錐状である第一の遊星歯車機構と、好ましくは直線状である第二の遊星歯車機構とを有し、
前記第二の遊星歯車機構の入力シャフトは、前記第一の遊星歯車機構の遊動輪と一体となっており、
前記第一及び第二の遊星歯車機構は、少なくとも、
入力シャフトと、
好ましくは円錐状の入力ピニオンと、
遊星素子ホルダと、
1又は複数の好ましくは円錐状の遊星ピニオン又は遊星歯車とを有し、
前記好ましくは円錐状の入力ピニオンは、
前記入力シャフトに固定され、
前記好ましくは円錐状の遊星歯車と直接噛合し、
前記好ましくは円錐状の遊星歯車は、前記遊星素子ホルダに取り付けられ、
好ましくは円錐状の前記遊動輪が静止しているとき、前記第一の遊星歯車機構から生じた動き及びトルクは前記遊星素子ホルダを通じて出力され、
前記好ましくは円錐状の遊星歯車は、前記好ましくは円錐状の入力ピニオン及び前記好ましくは円錐状の遊動輪と噛合するように構成され、
前記第二の遊星歯車機構の外側遊動輪が静止位置にある間、
1)前記第一の遊星歯車機構によって伝達されたトルクが前記予め設定されたトルク閾値を下回るとき、前記動き及びトルクは該第一の遊星歯車機構の遊星素子ホルダを通じて出力され、
2)前記トルクが前記閾値を越えるとき、前記トルクは、前記第一の遊星歯車機構の前記遊星素子ホルダを通じて部分的に出力されると共に、前記第二の遊星歯車機構の前記遊星素子ホルダを通じて部分的に出力され、前記第二の遊星歯車機構の前記遊星素子ホルダを解放する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項7】 請求項1又は2記載のサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、縦方向にのみ動き、回転できないように構成され、
前記サーボ機構は、
フレームと、
一端にリバーシブル機能ネジが形成された入力シャフトと、
内部にネジが形成され、前記入力シャフトを収容するように構成された中空シャフトと、
前記中空シャフト内に配置され、滑りキーによって該中空シャフトに固定された出力
シャフトと、
少なくとも1つの弾性素子と、
前記状況に応じて動く部品とを有し、
前記滑りキーは、前記出力シャフトの縦方向の移動を可能にしつつ、前記中空シャフト及び前記出力シャフトの双方を自転可能とするように構成され、
前記少なくとも1つの弾性素子は、前記状況に応じて動く部品を初期位置へ向けて押して、1回のオペレーションサイクルが終わったときに前記状況に応じて動く部品を前記初期位置へ戻し、
前記状況に応じて動く部品は、
前記中空シャフトの外側に取り付けられ、
前記中空シャフトに沿って縦方向にのみ動くことができ、
前記状況に応じて動く部品は、
その縦方向の動きが前記トルク制限群の前記機械的接触素子によって制限・制御されるような形状であると共に、
前記トルク制限群の前記弾性素子によって規定された前記予め設定されたトルク閾値を越えたときに、前記状況に応じて動く部品のプロファイル面が前記接触素子に対して縦方向に移動して該状況に応じて動く部品の動きに制動を掛け、前記過剰動力を吸収し、よって入力動力の供給を遮断することができるように、前記中空シャフトの前記縦方向の動きを制限する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項8】 請求項1又は2記載のサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、縦方向にのみ動き、回転できないように構成され、
前記サーボ機構は、
フレームと、
入力機構として機能する電気モータ、空気モータ、又は、油圧モータと、
リバーシブル機能ネジを備えた出力シャフトと、
内部に前記出力シャフトを収容するためのネジが形成された中空シャフトと、
前記中空シャフトの一端において該中空シャフトと前記出力シャフトの間に設けられた出力ブッシュと、
状況に応じて動く部品と、
少なくとも1つの弾性素子とを有し、
前記中空シャフトの外側は前記モータと一体となっており、
前記出力ブッシュは、滑りキーによって前記出力シャフトに結合され、
前記滑りキーは、前記中空シャフトの回転を前記出力シャフトの回転と一体化させると共に、前記出力シャフトが縦方向に動くようにし、
前記状況に応じて動く部品は、
前記出力シャフトの外側に取り付けられ、
前記出力シャフトに沿って縦方向にのみ動くことができ、
前記状況に応じて動く部品は、
その縦方向の動きが前記トルク制限群の前記機械的接触素子によって制限・制御されるような形状であると共に、
前記トルク制限群の前記弾性素子によって規定された前記予め設定されたトルク閾値を越えたときに、前記状況に応じて動く部品のプロファイル面が前記接触素子に対して縦方向に移動して該状況に応じて動く部品の動きに制動を掛け、前記過剰動力を吸収し、よって入力動力の供給を遮断することができるように、前記出力シャフトの前記縦方向の動きを制限し、
前記少なくとも1つの弾性素子は、前記状況に応じて動く部品を初期位置へ向けて押して、1回のオペレーションサイクルが終わったときに前記状況に応じて動く部品を前記初期位置へ戻し、
前記少なくとも1つの弾性素子は、摩擦を乗り越えて前記機構をその初期位置へ戻すことができる程度に大きいと共に、前記機構の作動を妨げない又は妨害しない程度に小さい、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項9】 請求項7又は8記載のサーボ機構であって、
ロック調整装置を更に有し、
前記ロック調整装置は、
弾性素子と、
前記弾性素子上に載った複数の接触素子と、
前記状況に応じて動く部品のすぐ内側の前記シャフトの外側に設けられた溝とを有し、
前記弾性素子によって、
前記接触素子の1つは、前記機械的接触素子と接触した状態に保たれ、
前記接触素子の別の1つは、前記シャフトの前記溝と接触した状態に保たれ、
始動時に前記機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける力が大きくなり、よって前記調整された最大トルクも大きくなる、ことを特徴とするサーボ装置。
【請求項10】 請求項1又は2記載のサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、縦方向に動くと共に、固有のシャフトに対して回転可能であり、
前記サーボ機構は、
フレームと、
入力機構又は入力シャフトと、
ネジ部を備えた出力シャフトと、
前記入力機構又は入力シャフトに固定された外側中空部品と、
中間中空部品と、
内部にネジ山が形成された中空素子と、
状況に応じて動く部品と、
少なくとも1つの弾性素子とを有し、
前記中間中空部品は、
前記外側中空部品と一体となって回転するが、
前記中間中空部品と前記外側中空部品とを結合する滑りキーによって、該外側中空部品に対して縦方向に動くことができ、
前記中空素子は、前記中間中空部品と一体となって回転し、
前記中空素子内部のネジ山は、前記出力シャフトのネジ山と結合され、
前記状況に応じて動く部品は、
前記外側中空部品と一体となって自転するが、
前記状況に応じて動く部品と前記外側中空部品とを結合する滑りキーによって、該外側中空部品に対して縦方向に動くことができるように構成され、
前記状況に応じて動く部品は、
前記出力シャフト及び前記中間中空部品の外側に取り付けられ、
前記中間中空部品に対して縦方向に動くことができ、
前記状況に応じて動く部品は、その前記縦方向の動きが、前記中間中空部品の前記縦方向の動きを制限することなく、前記トルク制限群の前記機械的接触素子によって制限・制御されるような形状又は構成を有し、
前記少なくとも1つの弾性素子は、前記入力機構又は入力シャフトの作動が終了すると、前記状況に応じて動く部品を初期位置へ戻すように構成される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項11】 請求項1乃至10のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
供給エネルギが予め設定されていることを利用して、前記状況に応じて動く部品が解放されたときの該状況に応じて動く部品の角運動又は縦方向運動と前記過剰なエネルギとの間の1対1の対応関係を明らかにして、前記状況に応じて動く部品の角運動又は縦方向運動の変動による受動エネルギの変動を測定できるようにする手段を備えた装置を更に有する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項12】 請求項1乃至11のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
前記機構及び該機構によって作動される装備の一般的なチェックを実行する手段を更に有し、
前記手段は、前記状況に応じて動く部品の角運動又は縦方向の動きを継続的に又は離散的に測定して信号を出力する任意のセンサ装置を含み、
前記信号は、前記状況に応じて動く部品の角運動又は縦方向の動きが設定値より小さいとき、受動力の増加及び前記機構又は作動装備の故障を意味し、前記設定値以上のとき、受動力の低下を意味し、
前記信号は、例えばパッキンの再締結を命じるなどの特定の場合に、電気クラッチ機構又は補助アクチュエータ機構によってピックアップされ、利用されることができる、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項13】 請求項1、2、3、11、又は12のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、その歯付き内周と同心でない外周を有し、
前記弾性素子は、前記外周上の半径方向において前記内周に最も近い点に形成されたノッチに作用する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項14】 請求項1乃至13のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
前記トルク制限群を動かないようにすることによって、又は、少なくとも1つのボール又は先端が形成された円筒形のピンである剛体素子を前記状況に応じて動く部品内へ挿入することによって、該状況に応じて動く部品を状況に応じて動かないようにする装置を更に有する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項15】 請求項1乃至14のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
前記トルク制限群が吸収できる最大エネルギよりも多くの過剰エネルギを前記状況に応じて動く部品の相対的動きにおいて吸収するために前記状況に応じて動く部品に適用される1以上の補助減衰装置を更に有し、
前記エネルギは、前記状況に応じて動く部品の外形形状及び前記補助減衰装置の調整に依存して吸収される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項16】 請求項1乃至15のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
運動エネルギを増加させるために慣性フライホイールを更に有し、
前記慣性フライホイールは、前記センターシャフトに結合される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項17】 請求項1乃至16のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
前記モータに接続され、予め設定された回転速度に達したときに該モータを前記サーボ機構へ接続する自動遠心クラッチを更に有する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項18】 請求項17記載のサーボ機構であって、
前記センターシャフトに結合された慣性フライホイールを更に有し、
前記慣性フライホイールは、
手動で作動させて手動動力を前記出力へ掛けることができ、
前記遠心クラッチに接続され、
前記モータが所定の速度を超えたとき、前記遠心クラッチから離れる、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項19】 請求項17又は18記載のサーボ機構であって、
前記遠心クラッチは、前記モータの回転速度が低下したときに、該モータが、分離され、停止することなく回転速度を増加でき、そして再度接続されて、前記モータが加熱によって停止するまで継続的な圧力の急上昇を蓄積できるように、構成される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項20】 請求項1記載のサーボ機構であって、
前記機構の前記入力シャフトから前記出力シャフトへ前記トルクを伝達するように構成された不可逆素子を更に有し、
前記不可逆素子は、
前記トルクの伝達中、前記出力シャフトが該トルク伝達と逆方向へ動くのを阻止すると共に、
前記トルクの伝達が終了すると、前記出力シャフトの動きを2つの回転方向の双方について阻止する、ように構成される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項21】 請求項1記載のサーボ機構であって、
前記機械的接触素子の固定化を調整する装置を更に有し、
前記調整装置は、
遠心機構と、
少なくとも1つの中間弾性素子と、
前記中間弾性素子上に載った任意的な複数の接触素子とを有し、
前記遠心機構の外表面は、前記複数の接触素子に対して継続的に押圧され、
前記複数の接触素子は、前記調整装置に対して継続的に押圧され、
前記状況に応じて動く部品を解放するのに必要な力は、前記遠心機構の外形形状及び弾性に依存する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項22】 請求項1記載のサーボ機構であって、
1又は複数の電流遮断素子を更に有し、
前記電流遮断素子の各々は、
電流を直接的に又は間接的に妨害する少なくとも1つの電気マイクロスイッチと、
少なくとも1つの弾性素子と、
前記状況に応じて動く部品と接触している滑り素子とを有し、
前記滑り素子は、少なくとも1つの溝を備え、
前記少なくとも1つの溝は、少なくとも1つの対応する接触素子と対応するように構成され、
前記少なくとも1つの接触素子は、前記滑り素子の摺動に応答して、対応するマイクロスイッチを作動させ、
前記状況に応じて動く部品の外表面は、所定角度の角運動により前記滑り素子がいずれかの方向に動くように構成された幾何学的形状を有する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項23】 請求項1記載のサーボ機構であって、
ブッシュを備えた群を更に有し、
前記群は、リバーシブルなネジ山を備えた2つの同心のブッシュを用いて、前記出力トルクのチェックと信号の捕捉とを可能にして螺旋状キー溝として機能し、
前記ブッシュの内側は1以上の弾性素子上に載り、
前記1以上の弾性素子は、前記ブッシュの動きを許容し、
前記ブッシュの動きにより、受動力の変動を示す信号が生成されるように構成され、
前記ブッシュの移動距離が比較的短い場合、前記受動力は増加し、これは前記伝達機構又は該伝達機構によって作動される装備の異常を示し、
前記ブッシュの移動距離が比較的長い場合、前記受動力は低下し、
電気クラッチ又は補助アクチュエータは、前記信号を利用して、パッキンの再締結を命じることができる、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項24】 請求項1記載のサーボ機構であって、
浮動ナット群を更に有し、
前記浮動ナット群は、ナット上のスピンドルによって縦方向に掛けられた圧力の押圧力を必要に応じてチェックすることができ、
前記ナットは、一端又は両端において、1つ又は2つの弾性素子上に浮いており、
前記弾性素子によって、前記ナットは動くことができ、
前記機構は、前記ナットの動きを利用して、受動力の変動を示す信号を生成するように構成され、
前記ブッシュの移動距離が比較的短い場合、前記受動力は増加し、これは前記伝達機構又は該伝達機構によって作動される装備の異常を示し、
前記ブッシュの移動距離が比較的長い場合、前記受動力は低下し、
電気クラッチ又は補助アクチュエータは、前記信号を利用して、パッキンの再締結を命じることができる、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項25】 請求項1記載のサーボ機構であって、
倍率器群を更に有し、
前記倍率器群は、二重ネジ構造のスリーブによって、同じ出力トルク及び回転で、主ナットの円運動を直線運動へ変換することができ、
前記スリーブは、大径の外側ネジと、該外側ネジより小径の内側ネジとを有し、
前記スリーブの雄ネジは、前記主ナットと係合し、
前記スリーブの雌ネジは、前記スピンドルの端と係合し、
前記スリーブは、自転はできないが、縦方向に動くことはでき、
前記スリープが縦方向に動く際、前記雄ねじ及び雌ねじは、剛体素子又は可撓素子並びに何らかの障害物に応じて、交互に、ネジ又は螺旋状キー溝として作動し、
前記小径ネジが螺旋状キー溝として機能し、前記大径ネジがネジとして機能するときは、該大径ネジが螺旋状キー溝として機能し、該小径ネジがネジとして機能するときに比して、前記スピンドルの直線運動の速度が大きく、且つ、該運動の力が弱く、
前記主ナットの回転を逆転させると、前記スピンドルが前記小径ネジから外れる方向へ後退し、
前記小径ネジから外れると、前記スピンドルの動く速度は、該スピンドルがその予め設定された位置に到達するまで、前記大径ネジによって増加される、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項26】 請求項25記載のサーボ機構であって、
前記機構の一部を構成する複数のネジはボールネジである、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項27】 請求項7乃至10のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
縦方向前後への動きを可能にするように構成されたウォームホイール減速機構を更に有する、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項28】 請求項1乃至27のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
様々な速度並びに応力又はトルクを実現可能にする任意の既知の減速素子又は増速素子を前記出力に備える、ことを特徴とするサーボ機構。
【請求項29】 請求項4乃至28のいずれか一項記載のサーボ機構であって、
前記トルク制限群が前記状況に応じて動く部品の相対的動きを許容するか否かの基準となる前記トルク閾値を自動的に変える機構を更に有する、ことを特徴とするサーボ機構。」
と補正された。(なお、下線は、請求人が附したものであって、補正箇所を示すものである。)

上記補正は、
(1) 請求項1において、「サーボ機構」についての「機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルク又は応力を瞬時に制限し、保持する」との事項を、「機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルク又は応力を制限し、保持する」と補正するとともに、「トルク及び/又は応力制限群」について「前記トルク又は応力が前記閾値を超えたときに、前記状況に応じて動く部品が、該状況に応じて動く部品が応力又はトルクを前記出力へ伝達する状態で動かないように維持された状態から、該状況に応じて動く部品が応力又はトルクを前記出力へ伝達しない状態で自由に相対的に動く状態へと直ちに且つ直接的に移行するように、構成され、」と限定し、更に、「トルク及び/又は応力制限群」が有する「圧力を調節する手段」についての「前記出力シャフトにおける過剰な動力が瞬時に且つ急に遮断されるように、前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける圧力を調節する」との事項を、「前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける圧力を調節する」と補正し、
(2) 請求項20?25において、引用する請求項を「請求項1」に限定し、
(3) 請求項23において、「リバーシブルネジ」を「リバーシブルなネジ山」と、「コッタ」を「キー溝」と、「力の増加は、ランが比較的小さい前記信号に対応し」を「前記ブッシュの移動距離が比較的短い場合、前記受動力は増加し」と、「ランが比較的長い前記信号は、受動力の低下に対応し」を「前記ブッシュの移動距離が比較的長い場合、前記受動力は低下し」と、それぞれ補正し、
(4) 請求項24において、「スラスト」を「押圧力」と、「力の上昇は、ランが比較的小さい前記信号に対応し、これは前記エネルギ伝達機構又は該エネルギ伝達機構」を「前記ブッシュの移動距離が比較的短い場合、前記受動力は増加し、これは前記伝達機構又は該伝達機構」と、「ランが比較的長い前記信号は、受動力の低下に対応し」を「前記ブッシュの移動距離が比較的長い場合、前記受動力は低下し」と、それぞれ補正し、
(5) 請求項25において、「コッタ」を「キー溝」と補正し、「本サイクルを全部又は部分的に繰り返す準備ができている状態のまま」の記載を削除する、
ものと認める。

したがって、本件補正は、少なくとも請求項1においては、不明瞭な記載を明瞭にすると共に、「トルク及び/又は応力制限群」に限定事項を付加するものであるから、平成6年法律第116号による改正前特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という)第17条の2第3項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正を行うものと認められる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項の規定により準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である「特開昭58-28045号公報」(以下、「引用刊行物」という。)には、
〔あ〕「本発明は、トルクリミッタ付遊星歯車減速装置に関し、より詳しくはコンパクトで制御性に優れ、過負荷空転を防止したトルクリミッタ付遊星歯車減速装置に関する。」(1頁左下欄19行?右下欄2行参照)
〔い〕「コンパクトネスは特に……外形寸法を制限されるバルブ開閉装置等の用途には不可欠である」(1頁右下欄12?14行参照)
〔う〕「第1図,第2図に示す如くフレーム1に電気モータ2がボルト21で固着されている。また電気モータ2の出力軸2Aの先端には第1太陽歯車3が固着されている。」(2頁右上欄4?7行参照)
〔え〕「第1図において、前記第1太陽歯車3の外側に複数箇の遊星歯車4が放射状に噛合しており、これらの遊星歯車4は遊星キャリア5によって一体で枢着支持されている。また遊星キャリア5は一対の玉軸受8A,8Bによって片側は受板10に、他方は第2太陽歯車7に枢着されている。そして遊星キャリア5の左方受板10側軸部は遊星歯車減速装置の出力軸をなしており、動力取り出し用の六角ナット穴5Aが穿たれている。前記第2太陽歯車7は、内径に歯車7Gを有する内歯歯車の一種であって、その内径には複数箇の遊星歯車4が噛合しており、外径はフレーム1によって摺動回転可能に嵌合支持されている。」(2頁右上欄8?20行参照)
〔お〕「加えて第2太陽歯車7の左端にはフランジが付けられており、ディスクブレーキのディスク7Bとして機能する。ディスク7Bには一対のブレーキパッド11,11が両面より挾圧するように配置されており、ブレ-キパッド11のディスク7Bに対する加圧力は皿バネ12を介して調節ネジ13によって調節可能である。」(2頁左下欄3?9行参照)
〔か〕「更に第1図及び第2図に示すように第2太陽歯車7の右より頸部は偏心カム7Nを構成しており、フレーム1に穿った穴を貫通した従節(カムフォロア)16がバネ15によって偏心カム7Nの外周に摺接している。従節16の外端はリミットスイッチ14のアクチュエータ14Aに接触している。」(2頁左下欄9?15行参照)
〔き〕「リミットスイッチ14は電気モータ2のそれ自体電源スイッチもしくは電源スイッチの励磁電源スイッチである。」(2頁左下欄17?19行参照)
〔く〕「通常運転時において、第2太陽歯車7は制動されており、トルク反力がブレーキパッド11とディスク7Bとの間の最大摩擦力に達する迄は第2太陽歯車7は静止している。従って電気モータの出力軸2Aのトルクは複数の遊星歯車4に伝えられるが、第2太陽歯車7の内径歯車7Gは前述のように静止しているので、遊星歯車4は第1太陽歯車3と反対方向に回転し、結果的に遊星キャリア5は減速されて第1太陽歯車3と同じ方向に回転する。これが通常の動力伝達状態であり、伝達機械効率はウォームギア機構等に比して高い。」(2頁右下欄4?14行参照)
〔け〕「しかるに負荷が急激に高まって前記第2太陽歯車7に伝えられるトルク反力がディスクブレーキ制動力の最大摩擦力に打ち勝つようになると、第2太陽歯車7は第1太陽歯車3と反対方向にズレて回転を始める。第2太陽歯車7がほぼ1/2回転すると偏心カム7Nも同期回転し、一方のリミットスイッチ14を開路もしくは閉路し、他方のリミットスイッチ14を逆に閉路もしくは開路する。
前述のとおりリミットスイッチ14は電気モータ2のリレーに繋がれているので、この時点で電気モータ2の電源が切られ、電気モータ2は停止する。従って電気モータ及び減速機構に過負荷が継続してかかる事はない。」(2頁右下欄15行?3頁左上欄7行参照)
〔こ〕「また逆に二次出力軸(動力取出し部)5Aから見ると一定以上のトルクを超える回転力が加えられる事がない。しかもその設定トルクは調節ネジ13によって容易に調節可能である。」(3頁左上欄7?11行参照)
〔さ〕「従って用途としては可搬式のトルクドライバもしくはバルブ開閉器等に適合する。」(3頁右上欄2?3行参照)
等の記載があり、併せて図面を参照すると、
“電気モータ2の出力軸2Aからトルクが入力される第1太陽歯車3と、
出力軸をなす軸部が形成された遊星キャリア5と、
前記第1太陽歯車3から前記遊星キャリア5へトルクを伝達する遊星歯車4と、
前記遊星キャリア5へ伝達された前記トルクが所定のレベルを超えないように前記遊星歯車4を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記伝達されたトルクに反応することができる、第2太陽歯車7と、
第2太陽歯車7に対する制動装置とを有し、
前記トルクは、前記第2太陽歯車7を通じて伝達され、
前記第2太陽歯車7は、
動いているときには、前記第1太陽歯車3における前記トルクのすべてを前記遊星キャリア5へ伝達せず、
制動装置により動かないように保持されているときには、前記第1太陽歯車3における前記トルクのすべてを前記遊星キャリア5へ伝達する、ように構成され、
前記第2太陽歯車7に対する制動装置は、
前記第2太陽歯車7のディスク7Bと密接に関連して作用するように構成されると共に、
ブレーキパッド11と皿バネ12とを有し、
前記第2太陽歯車7によって、前記第1太陽歯車3に掛けられたトルクは、前記遊星キャリア5に掛かるトルクと、過剰なトルクとに分割され、
前記第2太陽歯車7は、動いているときに、その偏心カム7N及び従節(カムフォロア)16介してリミットスイッチ14によって、後に使用される信号を生成すると共に、前記過剰なトルクが前記遊星キャリア5に達しないように該過剰なトルクの全部又は一部を弱める、ように構成され、
前記第2太陽歯車7は、前記伝達されたトルクがブレーキパッド11とディスク7Bとの間の制動力の最大値に達したときに動き始めるように構成され、
前記第2太陽歯車7に対する制動装置は、前記トルクが前記所定のブレーキパッド11とディスク7Bとの間の制動力の最大値を下回ったときに前記第2太陽歯車7が動かないようにすると共に、前記トルクが前記所定の制動力の最大値を越えたときには前記第2太陽歯車7の相対的動きを許容する、ように構成され、
機械的な動きにより、第1太陽歯車3から遊星キャリア5へ伝達されるトルクを制限し、保持するトルクリミッタ付遊星歯車減速装置であって、
前記第2太陽歯車7に対する制動装置は、前記トルクが前記制動力の最大値を超えたときに、前記第2太陽歯車7が、該第2太陽歯車7がトルクを前記遊星キャリア5へ伝達する状態で動かないように維持された状態から、相対的に動く状態へと移行するように、構成され、
前記第2太陽歯車7に対する制動装置は、前記所定の制動力の最大値を調節する加圧力調節手段を有し、
前記加圧力調節手段は、
前記皿バネ12と、
前記ブレーキパッド11が前記第2太陽歯車7のディスク7Bに掛ける圧力を調節する調節ネジ13とを有するトルクリミッタ付遊星歯車減速装置”
の発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)本願補正発明の「サーボ機構」も上記引用刊行物に記載された発明の「トルクリミッタ付遊星歯車減速装置」も、「トルク伝達装置」であり、本願補正発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「第1太陽歯車3」が前者の「入力」及び「入力シャフト又は入力機構」に相当し、以下同様に、後者の「遊星キャリア5」が前者の「出力」及び「出力シャフト又は出力機構」に、後者の「遊星歯車4」が前者の「伝達手段」に、後者の「第2太陽歯車7」が前者の「状況に応じて動く部品」に、後者の「第2太陽歯車7に対する制動装置」が前者の「トルク及び/又は応力制限群」に、後者の「ブレーキパッド11」が前者の「機械的接触素子」に、後者の「皿バネ12」が前者の「弾性素子」に、後者の「ブレーキパッド11とディスク7Bとの間の制動力の最大値」が前者の「閾値」に、後者の「加圧力調節手段」が前者の「閾値調節手段」に、後者の「調節ネジ13」が前者の「圧力を調節する手段」に、それぞれ相当すると認められる。
したがって、両者は、
「トルク又は応力の入力と、
トルク又は応力の出力と、
前記入力から前記出力へトルク又は応力を伝達する伝達手段と、
前記出力へ伝達された前記トルク又は応力が所定のレベルを超えないように前記伝達手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記伝達されたトルク又は応力に反応することができる、状況に応じて動く部品と、
トルク及び/又は応力制限群とを有し、
前記トルク又は応力は、前記状況に応じて動く部品を通じて伝達され、
前記状況に応じて動く部品は、
動いているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達せず、
動かないように保持されているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達する、ように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、
前記状況に応じて動く部品と密接に関連して作用するように構成されると共に、
少なくとも1つの機械的接触素子と少なくとも1つの弾性素子とを有し、
前記状況に応じて動く部品によって、前記入力に掛けられたトルク又は応力は、前記出力に掛かるトルク又は応力と、過剰なトルク又は応力とに分割され、
前記状況に応じて動く部品は、動いているときに、その構成によって、後に使用される少なくとも1つの信号を生成すると共に、前記過剰なトルク又は応力が前記出力に達しないように該過剰なトルク又は応力の全部又は一部を弱める、ように構成され、
前記状況に応じて動く部品は、前記伝達されたトルク又は応力が所定の閾値に達したときに動き始めるように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を下回ったときに前記状況に応じて動く部品が動かないようにすると共に、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を越えたときには前記状況に応じて動く部品の相対的動きを許容する、ように構成され、
機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルク又は応力を制限し、保持するトルク伝達装置であって、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記トルク又は応力が前記閾値を超えたときに、前記状況に応じて動く部品が、該状況に応じて動く部品が応力又はトルクを前記出力へ伝達する状態で動かないように維持された状態から、相対的に動く状態へと移行するように、構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記所定の閾値を調節する閾値調節手段を有し、
前記閾値調節手段は、
前記少なくとも1つの弾性素子と、
前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける圧力を調節する手段とを有する、トルク伝達装置」
で一致し、次の点で相違するものと認められる。
[相違点A]
前記トルク伝達装置が、本願補正発明では「サーボ機構」であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「サーボ機構」か否か不明である点
[相違点B]
本願補正発明では、前記状況に応じて動く部品の相対的動きが「自由な」相対的動きであり、前記閾値を超えたとき、前記状況に応じて動く部品が「応力又はトルクを前記出力へ伝達しない状態で自由に」相対的に動くのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、前記状況に応じて動く部品の相対的動きが、機械的接触素子からある程度の制動力が加えられる状態での相対的動きであり、前記閾値を超えたとき、前記状況に応じて動く部品が、機械的接触素子からある程度の制動力が加えられて、該制動力に対応するトルクを前記出力へ伝達する状態で相対的に動く点
[相違点C]
前記相対的に動く状態の移行が、本願補正発明では「直ちに且つ直接的」であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では「直ちに且つ直接的」か否か不明な点

(2)次に、上記各相違点について検討する。
(2-1)相違点Aについて
上記引用刊行物には、上記〔い〕に「コンパクトネスは特に……外形寸法を制限されるバルブ開閉装置等の用途には不可欠である」、〔さ〕に「従って用途としては可搬式のトルクドライバもしくはバルブ開閉器等に適合する。」とあるように、上記「トルク伝達装置」(トルクリミッタ付遊星歯車減速装置)をバルブ開閉装置に使用することの示唆があり、バルブ開閉装置をサーボ機構とすることは、例示するまでもなく本願優先日前周知の事項であるから、引用刊行物に記載された発明を「サーボ機構」に構成することは、用途に応じて適宜なし得ることであり、当業者が容易に想到し得ることである。

(2-2)相違点Bについて
本願補正発明においても、「トルク及び/又は応力制限群」は、「機械的接触素子」が「状況に応じて動く部品」に「圧力」を掛ける構成であるから、前記「状況に応じて動く部品」は、「相対的に動く状態」で「機械的接触素子」から前記「圧力」に応じたある程度の制動力が加えられているものと認められ、この「相対的に動く状態」では、前記制動力に対応するトルクを出力へ伝達するものと認められる。このことは、本願補正発明を引用する請求項3に係る発明が「前記遊動輪の動きにより、前記入力におけるトルクのうち制限された一部分のみが前記遊星素子ホルダを通じて前記出力へ伝達される」ものであることからも明らかである。
したがって、本願補正発明の、前記状況に応じて動く部品の相対的動きが「自由な」相対的動きであり、また、前記閾値を超えたときの前記状況に応じて動く部品の相対的に動く状態が「応力又はトルクを前記出力へ伝達しない状態で自由に」相対的に動く状態であることは、上記引用刊行物に記載された発明と対比して、前記制動力の大きさの程度の差に過ぎないか、或いは、実質上は相違しない事項というべきである。
よって、前記状況に応じて動く部品の相対的動きを「自由な」相対的動きとして、前記閾値を超えたとき、前記状況に応じて動く部品が「応力又はトルクを前記出力へ伝達しない状態で自由に」相対的に動くものとすることは、当業者が適宜選択し得る程度のものとすべき事項、或いは、実質上は相違しない事項というべきである。
(2-3)相違点Cについて
この相違点に関連して、審判請求人は、請求書の手続補正書において、本願発明によれば、「「状況に応じて動く部品」は、入力に掛けられたトルクが増加する初期段階においてほとんど動かないように保持され、当該トルクが「所定の閾値」に達したときに初めて回転を開始できるようになります。これは、本願の図1aに示した実施形態においては、機械的接触素子5が遊動輪2のノッチ内部に保持されなくなるまで弾性素子6が圧縮されたときに生じます。」、「「状況に応じて動く部品」が(当該「状況に応じて動く部品」の解放に先立つ一切の中間動きなしで)直ちに且つ直接的に解放される」旨主張しており、この主張は、「状況に応じて動く部品」の相対的に動く状態への「直ちに且つ直接的」移行が、本願の図1aに示された実施形態のような、機械的接触素子5が遊動輪2のノッチ内部に弾性素子6によって圧力を掛けられた構成によるものと主張していると認められるが、機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルクを制限し、保持するトルク伝達装置において、ノッチ内部に機械的接触素子を弾性素子によって押圧する構成によって、「状況に応じて動く部品」の「相対的に動く状態」への「移行」を司ることは、本願優先日前周知の事項(実願昭63-56110号(実開平1-166161号)のマイクロフィルム、実願平2-40942号(実開平3-130944号)のマイクロフィルム、特公昭62-50692号公報、実公昭48-43587号公報、実公昭48-44523号公報等参照)であり、「相対的に動く状態」への「移行」が「直ちに且つ直接的」であるものとすることは、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(3)このように、本願補正発明は、その発明の構成に欠くことができない事項が、上記引用刊行物に記載された事項及び上記本願優先日前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記引用刊行物に記載された事項及び上記本願優先日前周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願補正発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【三】本願発明について
1.本願発明
平成18年2月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年7月8日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「1.トルク又は応力の入力と、
トルク又は応力の出力と、
前記入力から前記出力へトルク又は応力を伝達する伝達手段と、
前記出力へ伝達された前記トルク又は応力が所定のレベルを超えないように前記伝達手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記伝達されたトルク又は応力に反応することができる、状況に応じて動く部品と、
トルク及び/又は応力制限群とを有し、
前記トルク又は応力は、前記状況に応じて動く部品を通じて伝達され、
前記状況に応じて動く部品は、
動いているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達せず、
動かないように保持されているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達する、ように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、
前記状況に応じて動く部品と密接に関連して作用するように構成されると共に、
少なくとも1つの機械的接触素子と少なくとも1つの弾性素子とを有し、
前記状況に応じて動く部品によって、前記入力に掛けられたトルク又は応力は、前記出力に掛かるトルク又は応力と、過剰なトルク又は応力とに分割され、
前記状況に応じて動く部品は、動いているときに、その構成によって、後に使用される少なくとも1つの信号を生成すると共に、前記過剰なトルク又は応力が前記出力に達しないように該過剰なトルク又は応力の全部又は一部を弱める、ように構成され、
機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルク又は応力を瞬時に制限し、保持するサーボ機構であって、
前記状況に応じて動く部品は、前記伝達されたトルク又は応力が所定の閾値に達したときに動き始めるように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を下回ったときに前記状況に応じて動く部品が動かないようにすると共に、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を越えたときには前記状況に応じて動く部品の自由な相対的動きを直ちに許容する、ように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記所定の閾値を調節する閾値調節手段を有し、
前記閾値調節手段は、
前記少なくとも1つの弾性素子と、
前記出力シャフトにおける過剰な動力が瞬時に且つ急に遮断されるように、前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける圧力を調節する手段とを有する、ことを特徴とするサーボ機構。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である「特開昭58-28045号公報」(以下、「引用刊行物」という。)には、前記「【二】平成18年2月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.引用例」に記載したとおりの事項が記載されているものと認める。

3.対比・判断
(1)本願発明の「サーボ機構」も上記引用刊行物に記載された発明の「トルクリミッタ付遊星歯車減速装置」も、「トルク伝達装置」であり、本願発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「第1太陽歯車3」が前者の「入力」及び「入力シャフト又は入力機構」に相当し、以下同様に、後者の「遊星キャリア5」が前者の「出力」及び「出力シャフト又は出力機構」に、後者の「遊星歯車4」が前者の「伝達手段」に、後者の「第2太陽歯車7」が前者の「状況に応じて動く部品」に、後者の「第2太陽歯車7に対する制動装置」が前者の「トルク及び/又は応力制限群」に、後者の「ブレーキパッド11」が前者の「機械的接触素子」に、後者の「皿バネ12」が前者の「弾性素子」に、後者の「ブレーキパッド11とディスク7Bとの間の制動力の最大値」が前者の「閾値」に、後者の「加圧力調節手段」が前者の「閾値調節手段」に、後者の「調節ネジ13」が前者の「圧力を調節する手段」に、それぞれ相当すると認められる。
したがって、両者は、
「トルク又は応力の入力と、
トルク又は応力の出力と、
前記入力から前記出力へトルク又は応力を伝達する伝達手段と、
前記出力へ伝達された前記トルク又は応力が所定のレベルを超えないように前記伝達手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記伝達されたトルク又は応力に反応することができる、状況に応じて動く部品と、
トルク及び/又は応力制限群とを有し、
前記トルク又は応力は、前記状況に応じて動く部品を通じて伝達され、
前記状況に応じて動く部品は、
動いているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達せず、
動かないように保持されているときには、前記入力における前記トルク又は応力のすべてを前記出力へ伝達する、ように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、
前記状況に応じて動く部品と密接に関連して作用するように構成されると共に、
少なくとも1つの機械的接触素子と少なくとも1つの弾性素子とを有し、
前記状況に応じて動く部品によって、前記入力に掛けられたトルク又は応力は、前記出力に掛かるトルク又は応力と、過剰なトルク又は応力とに分割され、
前記状況に応じて動く部品は、動いているときに、その構成によって、後に使用される少なくとも1つの信号を生成すると共に、前記過剰なトルク又は応力が前記出力に達しないように該過剰なトルク又は応力の全部又は一部を弱める、ように構成され、
機械的な動きにより、入力シャフト又は入力機構から出力シャフト又は出力機構へ伝達されるトルク又は応力を制限し、保持するトルク伝達装置であって、
前記状況に応じて動く部品は、前記伝達されたトルク又は応力が所定の閾値に達したときに動き始めるように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を下回ったときに前記状況に応じて動く部品が動かないようにすると共に、前記トルク又は応力が前記所定の閾値を越えたときには前記状況に応じて動く部品の相対的動きを許容する、ように構成され、
前記トルク及び/又は応力制限群は、前記所定の閾値を調節する閾値調節手段を有し、
前記閾値調節手段は、
前記少なくとも1つの弾性素子と、
前記出力シャフトにおける過剰な動力が遮断されるように、前記少なくとも1つの機械的接触素子が前記状況に応じて動く部品に掛ける圧力を調節する手段とを有する、トルク伝達装置」
で一致し、次の点で相違するものと認められる。
[相違点D]
前記トルク伝達装置が、本願発明では「サーボ機構」であるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、「サーボ機構」か否か不明である点
[相違点E]
本願発明は、前記トルク又は応力の制限が「瞬時に」なされ、前記状況に応じて動く部品の相対的動きが所定の閾値を越えたとき「直ち」に許容され、過剰な動力の遮断が「瞬時に且つ急に」行われるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、このようなものか否か不明な点
[相違点F]
前記トルク又は応力が前記所定の閾値を越えたとき許容される前記状況に応じて動く部品の相対的動きが、本願発明では「自由な」相対的動きであるのに対して、上記引用刊行物に記載された発明では、このようなものか否か不明な点

(2)次に、上記各相違点について検討する。
(2-1)相違点D及びFについて
相違点Dにおける本願発明を特定するための事項は、前記「(2-1)相違点Aについて」に記載した理由と同様の理由によって、当業者が容易に想到し得たとすべき事項である。
また、相違点Fにおける本願発明を特定するための事項は、前記「(2-2)相違点Bについて」に記載した理由と同様の理由によって、当業者が適宜選択し得る程度のものとすべき事項、或いは、実質上は相違しない事項というべきである。
(2-2)相違点Eについて
前記トルク又は応力が「瞬時に」制限され、過剰な動力が「瞬時に且つ急に」遮断されるのは、前記状況に応じて動く部品の相対的動きが所定の閾値を越えたとき「直ち」に許容される結果として生じるものであるから、本願発明の、前記トルク又は応力の制限が「瞬時に」なされ、前記状況に応じて動く部品の相対的動きが所定の閾値を越えたとき「直ち」に許容され、過剰な動力の遮断が「瞬時に且つ急に」行われるとの事項は、前記相対的動きが「直ちに且つ直接的」に生じることと、技術的に実質上相違しないものと認められる。
したがって、相違点Eは、実質上前記[相違点C]と同内容であって、相違点Eにおける本願発明を特定するための事項は、前記「(2-3)相違点Cについて」に記載した理由と同様の理由によって、当業者が容易に想到し得たとすべき事項である。
(3)このように、本願発明は、その発明の構成に欠くことができない事項が、上記引用刊行物に記載された事項及び上記本願優先日前周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また、作用効果も、上記引用刊行物に記載された事項及び上記本願優先日前周知の事項から予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願の請求項2?29に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-21 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-22 
出願番号 特願平7-528704
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16H)
P 1 8・ 121- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谿花 正由輝平瀬 知明  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 山岸 利治
藤村 泰智
発明の名称 トルク制限サーボ機構  
代理人 伊東 忠彦  

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