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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B32B 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない B32B 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない B32B 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない B32B |
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管理番号 | 1161408 |
審判番号 | 訂正2005-39038 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2005-03-01 |
確定日 | 2007-07-17 |
事件の表示 | 特許第3155924号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.審判請求の要旨、手続の経緯 本件訂正審判の請求の要旨は、特許第3155924号発明(平成8年4月26日出願、平成13年2月2日設定登録)の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものである。 当審において、平成17年3月16日付けで手続補正指令を通知したところ、その指定期間内である平成17年3月30日付けで手続補正書(方式)が提出され、また、平成17年4月18日付けで訂正拒絶理由を通知をしたところ、その指定期間内である平成17年6月9日付けで意見書と共に審判請求書及び訂正明細書を補正する手続補正書が提出された。 2.平成17年3月30日付け手続補正の適否 平成17年3月30日付け手続補正は、審判請求書の「6.請求の理由」における「(3)訂正の要旨」に、a?kとして記載した訂正事項について、以下のように補正することをその内容とするものである。 (1)訂正請求書第1ページ下から第4行から第3行の 「「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み」」を 「「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、」」と補正する。(2)訂正請求書第1ページ下から第1行から第2ページ第1行の 「「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのコポリマー」を削除する。」を 「「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー」を「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマー」と訂正する。」と補正する。 (3)訂正請求書第2ページ第13?14行の 「「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み」」を 「「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、」」と補正する。(4)訂正請求書第2ページ第20?21行の 「「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのコポリマー」を削除する。」を 「「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー」を「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマー」と訂正する。」と補正する。 ここで、この補正は、審判請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものとはいえず、特許法第131条の2第1項本文の規定に適合するものであるから、これを認める。 3.訂正拒絶理由の概要 平成17年4月18日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。 (1)本件訂正審判は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものとはいえない訂正事項、すなわち特許法第126条第1項ただし書の要件に適合しない訂正事項を含むものである。 (2)訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、9及び11の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないので、これらの請求項に係る発明は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。 4.平成17年6月9日付け手続補正の適否 平成17年6月9日付けでなされた手続補正は、審判請求書の「6.請求の理由」における「(3)訂正の要旨」に、a?kとして記載した訂正事項について、以下のように補正することをその内容として有するものである。 (1)訂正事項eについて、 「特許請求の範囲の請求項9の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」とあるのを 「特許請求の範囲の請求項9の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「および/または低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」と補正する。 (2)訂正事項jについて、 「段落「0023」の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」とあるのを 「段落「0023」の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「および/または低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」と補正する。 (3)訂正事項kについて、 「段落「0050」の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」とあるのを 「段落「0050」の「低から中くらいのエチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「および/または低から中くらいのエチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」と補正する。 これらの補正について検討する。これらの補正によって、訂正事項e、j、kは補正されたが、この補正された訂正事項e、j、kは、審判請求書に訂正事項として記載されていたものではないから、この補正は、審判請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものである。 したがって、平成17年6月9日付け手続補正は、特許法第131条の2第1項本文の規定に違反するものであるから、これを認めることはできない。 5.訂正の適否 本件訂正審判の請求は、平成17年3月30日付けで補正された本件審判請求書の記載からして、以下の訂正事項を有するものと認める。 a.特許請求の範囲の請求項1の「外層(2)と少なくとも1つの介在中央層(3)を備える支持層(4)を含む非PVC多層フィルムにおいて、」を「外層(2)と少なくとも1つの中央層(3)と支持層(4)とを含む非PVC多層フィルムにおいて、」と訂正する。 b.特許請求の範囲の請求項1の「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、」を「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、さらに前記層(2)、(4)は121℃より高温で溶融し、」と訂正する。 c.特許請求の範囲の請求項1の「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー」を「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマー」と訂正する。 d.特許請求の範囲の請求項1の「低軟化温度を示す少なくとも1つの中央層(3)はポリエチレンコポリマー」を「低軟化温度を示す少なくとも1つの中央層(3)はポリエチレンコポリマー(エチレン-酢酸ビニル共重合体を除く)」と訂正する。 e.特許請求の範囲の請求項9の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。 f.段落0015の「外層(2)と少なくとも1つの介在中央層(3)を備える支持層(4)を含む非PVC多層フィルムにおいて、」を「外層(2)と少なくとも1つの中央層(3)と支持層(4)とを含む非PVC多層フィルムにおいて、」と訂正する。 g.段落0015の「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、」を「121℃を越える軟化温度を有するポリマーを含み、さらに前記層(2)、(4)は121℃より高温で溶融し、」と訂正する。 h.段落0015の「低軟化温度を示す少なくとも1つの中央層(3)はポリエチレンコポリマー」を「低軟化温度を示す少なくとも1つの中央層(3)はポリエチレンコポリマー(エチレン-酢酸ビニル共重合体を除く)」と訂正する。 i.段落0015の「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー」を「ρ<0.9g/cm3を有するポリプロピレンのホモポリマー」と訂正する。 j.段落0023の「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。 k.段落0050の「低から中くらいのエチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低から中くらいのエチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。 なお、訂正事項kについては、本件審判請求書の「6.請求の理由」の「(3)訂正の要旨」には、「「低エチレン含有量および/または高密度ポリエチレン(HDPE)を有するポリプロピレンランダムコポリマー」を「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と訂正する。」と記載されるが、特許明細書の段落0050には訂正の対象となる記載はない。しかしながら、特許明細書及び審判請求書に添付した訂正明細書の記載並びに審判請求書における上記訂正事項kの記載に徴すれば、上で認定したとおりの訂正事項を意図していたことは明らかであると認められるので、上記のとおり訂正事項kを認定した。 (1)特許法第126条第1項ただし書の要件適合性について 上記訂正事項aは、請求項1の「外層(2)と少なくとも1つの介在中央層(3)を備える支持層(4)を含む非PVC多層フィルムにおいて、」という記載を「外層(2)と少なくとも1つの中央層(3)と支持層(4)とを含む非PVC多層フィルムにおいて、」と訂正するものである。 これにより、「介在中央層(3)」なる語が「中央層(3)」と訂正されることとなるが、訂正前の「介在中央層(3)」も訂正後の「中央層(3)」も、非PVC多層フィルムを構成する層であるとともに、その用語からして、何らかの二つの層の間に存在するものといえ、また、特許明細書の発明の詳細な説明においては、主として「中央層」の語が用いられていることを勘案すると、「介在中央層(3)」を「中央層(3)」と訂正することは、明りょうでない記載の釈明ないし誤記の訂正を目的とするものと認められるから、なんら違法性はない。 他方、「支持層(4)」と「(介在)中央層(3)」との関係については、訂正前においては、「支持層(4)」は「介在中央層(3)を備える」ものであるから、「介在中央層(3)」は「支持層(4)」の付属層としての意味合いのものであったのに対し、訂正後においては、これらの二つの層の間には、付属層・被付属層の関係はないものとなった。また、これに関連して、訂正後においては、「支持層(4)」と「中央層(3)」の相対的な位置関係も明らかではなくなった。 この点に関して、特許権者は、平成17年6月9日付けの意見書で、外層(2)及び支持層(4)は相対的に高軟化温度を示し、一方、中央層(3)は相対的に低軟化温度を示すことから、中央層(3)は、熱に対して支持及び安定化することが必要であり、それが支持層(4)であることは明らかであるから、「中央層(3)」と「支持層(4)」との相対的な位置関係は明らかである旨主張している。 しかしながら、支持層(4)が中央層(3)の支持及び安定化の機能を担うとしても、そのことは、必ずしも支持層(4)と中央層(3)の相対的な位置関係を意味するものではなく、上記主張を参酌しても、訂正後においては、非PVC多層フィルムにおける「支持層(4)」と「中央層(3)」との相対的な位置関係が特定されるとは認められない。 してみると、訂正事項aに係る訂正によって、「(介在)中央層(3)」と「支持層(4)」の関係について、訂正前においては、前者は後者の付属層としての意味合いのものとして記載されていたものが、訂正後においてはそのような要件が欠落したものとなり、また、これら二つの層の相対的な位置関係に係る特定もなくなるものであるから、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものとはいえず、特許法第126条第1項ただし書の要件に適合しないものである。 なお、仮に、平成17年6月9日付け手続補正が認められたとしても、訂正事項aだけについてみても、本件訂正は認められない。 (2)特許法第126条第5項の要件適合性について 特許請求の範囲についての訂正事項b?eは、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 そこで、訂正後の明細書及び図面の記載を検討すると、請求項9の記載は、以下の点で、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、少なくとも、訂正後の請求項9に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件訂正は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。以下に詳述する。 ここで、訂正後の請求項9の記載は以下のとおりである。 「【請求項9】前記外層(2)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー、好ましくはポリプロピレンランダムコポリマーを含む請求項1?8のいずれか1項に記載のフィルム。」 a.請求項9における「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」とは、どの程度のエチレン単位を含有するものなのかが不明である。 これに対し、特許権者は、平成17年6月9日付けの意見書で、「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」とは、エチレン単位の含有量がプロピレン単位の含有量よりも低いものを意味することは明らかである旨主張している。 なるほど、「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と記載した場合、該ポリマーにおけるエチレン単位の含有量はプロピレン単位の含有量より少ないことは、明らかであるとしても、明細書の段落【0050】における「低から中くらいのエチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」との記載からみて、該ポリマーにおけるエチレン単位の含有量には「低から中くらい」といった幅があるといえるから、結局「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」とは、どの程度のエチレン単位を含有するものを意味するのかは、不明といわざるを得ない。 したがって、この点において、請求項9の記載は明確でない。 b.請求項9の記載によれば、外層(2)は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマーの、全てを含むものであることが窺える。 一方、好ましくは含むとされている「ポリプロピレンランダムコポリマー」については、前記三つのポリマーに加えてさらに含まれることとなるのか、それとも、前記三つのポリマーを含む外層(2)に代えて、「ポリプロピレンランダムコポリマー」を含む外層(2)とすることが好ましいという趣旨であるのか、請求項9の記載からは直ちに明らかではない。さらに、それが前者の意味であるとした場合には、「ポリプロピレンランダムコポリマー」は「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」を包含する概念であると一応認められるから、「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」を含む外層(2)が更にその上位概念に相当する「ポリプロピレンランダムコポリマー」を好ましくは含むと記載する技術的意味が不明確となっている。これは、請求項9において、「低エチレン含有量のポリプロピレンランダムコポリマー」と、好ましくは含むとされている「ポリプロピレンランダムコポリマー」との関係が不明であることにも関連した不明確さといえるものである。 したがって、この点において、請求項9の記載は明確でない。 c.してみると、上記a.及びb.の点において、請求項9に係る発明は、明確でない。 したがって、訂正後の特許請求の範囲の請求項9の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、少なくとも、この請求項に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとは認められないから、本件訂正は、特許法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。 6.むすび 以上のとおりであり、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-28 |
結審通知日 | 2005-07-01 |
審決日 | 2005-07-12 |
出願番号 | 特願平8-107207 |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Z
(B32B)
P 1 41・ 851- Z (B32B) P 1 41・ 856- Z (B32B) P 1 41・ 853- Z (B32B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
野村 康秀 滝口 尚良 |
登録日 | 2001-02-02 |
登録番号 | 特許第3155924号(P3155924) |
発明の名称 | 非PVC多層フィルム |
代理人 | 八田 幹雄 |