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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1161802
審判番号 不服2005-21363  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-04 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 特願2003-164138「光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年1月8日出願公開、特開2004-6000〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯の概要

本願は、平成5年3月25日に出願された特願平5-89434号(以下、「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものとして、平成15年6月9日に出願されたものである。
これに対し、前置審査において平成18年4月14日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(1)本願は、適法な分割出願と認めることができないから、出願日はそ及せず、本願の各請求項に係る発明は原出願の内容を公開した公開公報に記載された発明を含むものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本願の各請求項に係る発明は、本願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)本願の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条に規定する要件を満たしていない。
(4)本願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、前記拒絶の理由に対する応答期間内の平成18年6月12日付けでされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
ディスクテーブルを回転駆動するスピンドルモータと、該スピンドルモータをシャーシへ取り付ける取付部材と、対物レンズを有する光学ピックアップを備える光ディスク装置において、
上記取付部材の非円形状に形成された外周が上記光学ピックアップの走査基準線に対して非対称となるように該取付部材は複数の固定部によって上記シャーシに固定され、かつ、該複数の固定部も上記光学ピックアップの走査基準線に対して非対称となるように配置されている
ことを特徴とする光ディスク装置。」

3.分割出願の適法性
(1)本願発明には「取付部材の非円形状に形成された外周」との技術事項が含まれるところ、発明の詳細な説明の、従来例に関する第【0006】段乃至第【0010】段の記載、第【0030】段の、実施例の説明においても従来例と同一構造部は同一の符号が使用される旨の記載、及び図面の記載からすると、前記「取付部材」は、スピンドルモータ(5)をサブシャーシ(15)にビス止めで取り付けるための取付用フランジ(54)のことであると認められる。第【0009】段等を参照すると、前記取付用フランジ(54)については、「半円弧状」に形成され、「一側部にほぼ半円状の切欠き55によって切欠かれている。」との形状が記載されており、同形状が本願発明の「非円形状」に対応するものと解される。

(2)一方、請求項1の記載からすると、前記「取付部材」には、外周が「非円形状」に形成されたすべての取付部材が包含されることが明らかである。「非円形状」とは、文言上、「円形状」でないもの、乃至は「円形」でない形状のものとの意味において明確であるから、前記第【0009】段に記載された形状に限定して解釈すべきでないことが明らかである。したがって、例えば楕円、正方形、長方形等、任意の「非円形状」で、しかも一側部の切欠を有しない形状のものも含まれると解される。

(3)これに対し、原出願の出願当初の明細書及び図面には次のような記載がある。
(i)「【0009】そして、ステータヨーク51の外周にほぼ半円弧状の取付用フランジ54を一体に形成し、この取付用フランジ54の一側部はほぼ半円形状の切欠き55によって切欠かれている。そして、この取付用フランジ54には、その円周方向の中央部と円周方向の両端との3点に3つのビス挿通穴56a、56b、56cが形成されている。
【0010】そして、図5に示すように、スピンドルモータ5がサブシャーシ15の一端側の内部に下方から挿入されて、取付用フランジ54の切欠き55を光学ピックアップ9側に向けた状態で、取付用フランジ54の3つのビス挿通穴56a、56b、56cに下方から挿通される3つのビス17a、17b、17cによってその取付用フランジ54がサブシャーシ15に下方からビス止めされている。」
(ii)「【0016】ところで、スピンドルモータ5の取付用フランジ54に形成した切欠き55は、対物レンズ10が光記録ディスク1の内周まで十分に走査できるように、キャリッジ91を光記録ディスク1の内周側の奥深い位置まで矢印a方向に侵入させるために欠くことができない構造である。
【0017】そして、この取付用フランジ54に切欠き55を形成したために、この取付用フランジ54はサブシャーシ15に3つのビス17a、17b、17cによって3点止めされることになり、スピンドルモータ5には、図6に示すように、スピンドル6の中心に対して互いに直角なX軸、Y軸及びZ軸をとった場合、Z軸が振動中心線P2 であるX軸に沿ってほぼY軸の周りに矢印c、d方向である上下方向に振動し易くなっている。」

(4)これらの記載からすると、「取付用フランジ(54)」は、スピンドルモータをサブシャーシに取り付けるために不可欠であり、又、一側部の半円弧状の切欠である「切欠き55」は、対物レンズがディスクの内周側に侵入するのに不可欠であることが明らかである。そして、切欠きを形成したために前記第【0017】段のような問題点が生じることとなり、原出願において解決しようとする課題が生ずるものである。

(5)また、原出願の出願当初の明細書及び図面には、一側部に切欠を有する形状以外の形状の「非円形状」の取付部材が具体的に示されているわけでもない。

(6)すると、原出願の出願当初明細書及び図面に記載された事項においては、半円弧状のフランジ部と、一側部の半円弧状の切欠は、それぞれ、モータの取り付けと、光学ピックアップの動作に、欠くことのできない構造であることが明らかである。
加えて、「上下方向に振動しやすくなっている」との技術課題とその解決手段に関しても、前記フランジと切欠きを前提としたものであることが明らかである。
これに対し、本願発明のように、取付部材の外周を単に「非円形状」とした場合には、前記モータの取り付けと、光学ピックアップの動作に、それぞれ欠くことのできない構造を有さないものも含み、本願発明においても共通する、前記技術課題とその解決手段にも対応しないことが明らかである。

(7)以上のことからすると、一側部に切欠を有しない、任意の「非円形状」の取付部材は、原出願の出願当初の明細書及び図面に記載されたものではない。すなわち、本願発明の「取付部材の非円形状に形成された外周」との技術事項は、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものとすることができない。
したがって、本願発明は、原出願の最初に添付した明細書又は図面に記載された発明の一部と認めることができないから、本願は、特許法第44条第1項に規定する適法な分割出願とすることができないものであって、出願日のそ及を認めることができない。

4.拒絶の理由(1)についての検討
(1)引用例
上記「3.分割出願の適法性」で検討したとおり、本願の出願日については、そ及が認められず、現実のもの(平成15年6月9日)であるから、原出願とされた特願平5-89434号の公開公報である特開平6-282981号公報(以下、「引用例」という。)は、本願出願前に頒布された刊行物である。
引用例には、上記「3.」の(3)の(i)及び(ii)に摘記した事項の他、以下の技術事項が図面とともに記載されている。

(iii)「【特許請求の範囲】
【請求項1】スピンドルによってディスクテーブルを回転駆動するスピンドルモータと、
ボイスコイルモータによって移送される対物レンズを有する光学ピックアップとを備えた光ディスク装置において、
上記スピンドルモータのスピンドルの中心を通る振動中心線を、上記スピンドルの中心と上記光学ピックアップの対物レンズの中心を通る光走査基準線に対して傾けたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】上記スピンドルモータのシャーシへの取付用フランジの外周で、上記光学ピックアップ側にほぼ半円形状の切欠きを設け、この切欠きが上記光走査基準線に対して非対称となるように上記振動中心線を傾けたことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】上記取付用フランジを円周上の3点でシャーシにビス止めしたことを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。」

(iv)「【0020】そして、取付用フランジ54をサブシャーシ15に固定する3つのビス17a、17b、17cのうち、中央のビス17aを振動中心線P2 上に配置する一方、取付用フランジ54の円周方向の両端の左右一対のビス17b、17cをスピンドル6の中心からできる限りの距離Lだけ光学ピックアップ9側に偏位させた位置で、振動中心線P2 に対して対称状に配置させて、サブシャーシ15に対するスピンドルモータ5の安定取り付けを図っていた。」

(v)「【0031】まず、本発明の光ディスク装置では、図6に示した従来のスピンドルモータ5をそのまま使用することができる。
【0032】そして、本発明では、図1?図3に示すように、スピンドルモータ5の取付用フランジ54をスピンドル6の周りに矢印e方向に回転調整して、振動中心線P2 を光走査基準線P1 に対して任意の角度Δθに傾けた状態で、この取付用フランジ54の3点を3つのビス56a、56b、56cによってサブシャーシ15に下方からビス止めしたものである。
【0033】従って、本発明の光ディスク装置によれば、スピンドルモータ5の振動中心線P2 を光走査基準線P1 に対して角度Δθに傾けたので、スピンドル5の振動中心線P2 に沿った矢印c、d方向の共振によって光記録ディスクが矢印c、d方向に振動しても、対物レンズ10から照射される光ビームの光記録ディスク1に対するフォーカスやトラッキング等の位置決め性能に与える相対的な共振の影響をΔθ相当分だけ緩和することができる。
【0034】従って、光記録ディスク1に対する光ビームのフォーカスやトラッキング等の位置決めを安定して行えて、高精度の記録及び/又は再生を行うことができる。
【0035】しかも、本発明では、図1?図3に示すように、光走査基準線P1 に対する間隔S1 が小さい側のガイド軸93の一端を固定するビス18aに対して、取付用フランジ54の一端側のビス17bを遠ざける方向である矢印e方向にスピンドルモータ5を回転して、切欠き55を光走査基準線P1 に対して非対称状にして、振動中心線P2 を光走査基準線P1 に対して角度Δθに傾けている。
【0036】従って、本発明の光ディスク装置によれば、取付用フランジ54の円周方向の両端のビス17b、17cと左右一対のガイド軸93a、93bの一端を固定する左右一対のビス18a、18bとの間にそれぞれ角度θ1 、θ2 のスペースを確保することができて、これらのビス17b、17cと18a、18bとが何れも干渉することがなく、スペースの有効利用を図ることができる。
【0037】それでいて、本発明の光ディスク装置は、従来のスピンドルモータ5をそのまま使用することができるので、構造は簡単である。」

又、引用例の図1乃至図8を参照。各図は、本願の図面と、図番も含めて共通している。
以上の引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「スピンドルによってディスクテーブルを回転駆動するスピンドルモータと、
スピンドルモータをシャーシへビス止めするための、ほぼ半円弧状の取付用フランジと、
ボイスコイルモータによって移送される対物レンズを有する光学ピックアップとを備えた光ディスク装置において、
上記取付用フランジを円周上の3点で3つのビスによってシャーシにビス止めし、
上記取付用フランジの外周に、上記光学ピックアップ側にほぼ半円形状の切欠きを設け、中央のビスを振動中心線上に配置し、
上記切欠きが上記スピンドルの中心と上記光学ピックアップの対物レンズの中心を通る光走査基準線に対して非対称となるようにして、
上記スピンドルモータのスピンドルの中心を通る振動中心線を、上記光走査基準線に対して傾けた、
光ディスク装置。」

(2)対比、判断
引用発明の「ディスクテーブル」「スピンドルモータ」「シャーシ」「対物レンズ」「光学ピックアップ」及び「光ディスク装置」は、本願発明と共通する技術事項である。
引用発明の「取付用フランジ」は、スピンドルモータをシャーシに取り付けるためのものである点において、本願発明の「取付部材」と一致する。そして、前記「取付用フランジ」が「ほぼ半円弧状」であること、及び「ほぼ半円状の切欠きを設け」たことは、本願発明において取付部材が「非円形状」であることに相当する。
引用発明には、「固定部」との直接的記載はないものの、取付用フランジが「スピンドルモータをシャーシへビス止めするため」のものであって、「上記取付用フランジを円周上の3点で3つのビスによってシャーシにビス止め」するのであるから、ビス止めされる前記3点、または前記3点をビス止めするビスが、「固定部」に相当することが明らかであって、引用発明は、本願発明の「取付部材は複数の固定部によって上記シャーシに固定され」との要件を備えるものである。
引用発明の「切欠きが上記スピンドルの中心と上記光学ピックアップの対物レンズの中心を通る光走査基準線に対して非対称となる」との要件は、本願発明の「取付部材の非円形状に形成された外周が上記光学ピックアップの走査基準線に対して非対称となるように」との要件に相当する。
また、引用発明の「中央のビスを振動中心線上に配置」した構造において、「振動中心線を、上記スピンドルの中心と上記光学ピックアップの対物レンズの中心を通る光走査基準線に対して傾けた」とする配置から、「円周上の3点」の「3つのビス」も、光走査基準線に対して傾ける配置となるのは当然のことであって(引用例の図1乃至図3も参照)、本願発明の「複数の固定部も上記光学ピックアップの走査基準線に対して非対称となるように配置されている」との構成を有することが明らかである。
以上のとおりであるから、引用発明は、本願発明の全ての発明特定事項を含むものであるという点において、本願発明とは相違点がないものである。
すなわち、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

(3)拒絶の理由についての結び
以上のとおり、本願については、前記拒絶の理由のうち、理由(1)が解消していないものであるから、前記拒絶の理由(2)乃至(4)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

なお、平成18年6月12日付けの手続補正により取付部材の外周形状を「非円形状」とする補正がされたが、「非円形状」は、本願の出願当初の明細書又は図面に記載のない事項である。理由の詳細は、前記「3.」の(2)乃至(7)での検討内容を、同検討において「原出願」とあるところを「本願」と読み替えて援用する。それらのことからすると、本願は、平成18年6月12日付けの手続補正が、本願の出願当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないとの拒絶の理由を有することとなったものであるが、これまでの検討で明らかにしたように、審判請求人に対してすでに通知した拒絶の理由(1)が解消していないのであるから、あらためて拒絶の理由を通知する必要を認めない。

よって、結論とおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-23 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願2003-164138(P2003-164138)
審決分類 P 1 8・ 03- WZ (G11B)
P 1 8・ 113- WZ (G11B)
P 1 8・ 536- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 早川 卓哉
小松 正
発明の名称 光ディスク装置  
代理人 脇 篤夫  
代理人 鈴木 伸夫  

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