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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04S
管理番号 1161926
審判番号 不服2004-3928  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2007-07-26 
事件の表示 平成 7年特許願第513715号「角度検出装置とそれを用いたオーディオ再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 5月18日国際公開、WO95/13690〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続きの経緯

[1]手続き
本願は、平成6年11月8日(優先権主張:平成5年11月8日、平成5年11月9日、平成5年11月17日、平成6年1月31日、いずれも日本国)を国際出願日とする出願であり、手続きの概要は以下のとおりである。

補正書提出 :平成12年6月27日
拒絶理由の通知 :平成14年10月16日(起案日)
意見書および補正書提出:平成14年12月25日
拒絶理由の通知 :平成15年 4月11日(起案日)
意見書および補正書提出:平成15年 6月20日
拒絶理由(最後)の通知:平成15年 8月28日(起案日)
意見書および補正書提出:平成15年11月 6日

拒絶査定 :平成16年 1月16日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成16年 2月26日
補正書提出 :平成16年 3月22日
前置報告 :平成16年 5月14日(起案日)

[2]査定

原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

なお、平成15年11月6日付け手続補正により、請求項4?11が削除され同補正前の請求項12?28が同補正後は請求項4?20に繰り上がったので、請求項番号は、同補正後の請求項番号(平成16年3月22日付け補正後現在の請求項番号に同じ)で示し、同補正前の請求項番号を()内に示した。

[査定の理由]
本願の下記請求項に係る発明は、各請求項について掲げる刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1(1),4(12),9(17)について、引用文献1および2。
請求項10(18)、11(19)について、引用文献2または3。
請求項12(20)について、引用文献2および4。
請求項13(21)について、引用文献2および5、または、引用文献3および5。
請求項14(22)について、引用文献2および6、または、引用文献3および6。
請求項15(23)、16(24)について、引用文献2および7。
請求項20(28)について、引用文献8および2。

引 用 文 献 等 一 覧

引用文献1:特開平3-296400号公報
引用文献2:特開平3-92728号公報
引用文献3:特開昭61-217718号公報
引用文献4:特開平3-90863号公報
引用文献5:特開平5-288555号公報
引用文献6:実願平2-40232号(実開平3-130509号)のマイクロフィルム
引用文献7:特開平3-32226号公報
引用文献8:特開平1-112900号公報


【第2】上記平成16年3月22日付けの手続補正(以下、本件補正という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年3月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]本件補正の内容

本件補正は、本件補正前、平成15年11月6日付け手続補正書記載の特許請求の範囲の請求項に関する下記の補正事項を含んでいる。
補正前請求項1,4?10,13?15,18?20の各々における「角速度センサ」を「振動ジャイロ」とする補正。

[2]本件補正の適合性1 補正の範囲(第17条の2第2項)
本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

[3]本件補正の適合性2 補正の目的(第17条の2第3項)
上記補正事項は、補正前請求項の「角速度センサ」を限定し減縮するものであって、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

[4]本件補正の適合性3 独立特許要件(第17条の2第5項)
そこで、本件補正後の請求項1から20に記載される発明が独立特許要件(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定)を満たすか否かについて以下に検討する。

[4.1]補正後発明
補正後の請求項1から請求項20までに係る発明のうち請求項10(以下、補正後発明10という。)および請求項15に係る発明(以下、補正後発明15という。)は、下記のとおりである。


(補正後発明10)
回転体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転体の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロと、
ゲイン切り換え回路を有し、上記振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅器と、
上記増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、
上記アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて上記増幅器のゲインを切り換えるとともに、上記ディジタル出力信号に対して上記増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段とを備えることを特徴とする角度検出装置。

(補正後発明15)
回転体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転体の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロと、
上記振動ジャイロの検出信号を増幅する第1の増幅器と、
上記第1の増幅器の出力信号をディジタル信号に変換する第1のアナログ/ディジタル変換器と、
上記第1の増幅器のゲインと異なるゲインを有し、上記振動ジャイロの検出信号を増幅する第2の増幅器と、
上記第2の増幅器の出力信号をディジタル信号に変換する第2のアナログ/ディジタル変換器と、
上記第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込み、上記第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段とを備えることを特徴とする角度検出装置。

[4.2]引用刊行物の記載

[4.2.1]引用文献2:特開平3-92728号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献2:特開平3-92728号公報には、次に掲げる事項が記載されている。

〈産業上の利用分野〉
(K2.1)「本発明は、車両、航空機、船舶等の移動体の方位を検出する方位検出装置に関し、さらに詳しくは、ジャイロの出力をA/D変換し、ディジタル値を積算して、車両、航空機、船舶等の移動体の方位を検出するディジタル方式の方位検出装置に関するものである。」(1頁右下欄6行?11行)

〈従来の技術と、発明が解決しようとする課題〉
(K2.2)「従来の方位検出装置として、移動体の角速度を検出するジャイロと、このジャイロの出力をディジタル値に変換するA/D変換器と、ディジタル値を積分しこれに基づいて移動方位角度を検出するコンピュータとを有する方位検出装置がある。
上記方位検出装置によれば、ジャイロの出力角速度をA/D変換器によりA/D変換して、コンピュータに供給し、コンピュータによりディジタル値を積分して旋回角度を求め、さらに、旋回角度を従前検出しておいた方位に対して加算することにより、移動体の現在の方位を検出することかできる。すなわち、求めた旋回角度を順次加算することにより、初期位置からの移動量すなわち現在の絶対方位を検出することができる。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄6行)

(K2.3)「しかしながら、A/D変換器はジャイロの出力電圧を8?16ビットの固定されたディジタル値に変換するものであり、A/D変換器の種類、及び測定すべき最大角速度(測定すべき最大出力電圧)を決定すると、検出できる最低電圧レベルは一義的に決まってしまい、それ以下の電圧レベルは検出できない。よって、角速度の検出精度(分解能)ひいては方位検出精度を向上させることができないという問題がある。・・・(中略)・・・大きな角速度入力に対しては、A/D変換器30のレンジを越えてしまうことになり、検出できる最大角速度が制限されてしまう。」(2頁左上欄7行?同頁右上欄2行)

(K2.4)「また、小さい角速度をディジタル変換するためのA/D変換器と、大きい角速度をディジタル変換するためのA/D変換器を設けることも考えられるが、A/D変換器が二つ設けることにより、装置が複雑化し、また、A/D変換器は高価であるため、コスト高になる。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、移動体の角速度の検出精度ひいては方位検出精度を向上させることを可能にする方位検出装置を提供することを目的とする。」(2頁右上欄3行?12行)

〈問題点を解決するための手段〉
(K2.5)「上記目的を達戊するための本発明の方位検出装置は、A/D変換手段により、ジャイロの出力をA/D変換し、この変換されたディジタル値に基づいて方位演算手段により移動体の方位を算出するようにした装置であって、以下の特徴を有する。
すなわち、ジャイロの出力をそれぞれ異なる増幅率で増幅する複数の増幅手段と、複数の増幅手段とA/D変換手段との間に介在接続され、これらの増幅手段のうち何れか一つをA/D変換手段に接続する入力切替手段と、A/D変換手段からのディジタル値が飽和すると、現在A/D変換手段に接続している増幅手段から次に低い増幅率を有する増幅手段に切替えるための切替制御信号を入力切替手段に供給する切替制御手段とを有するものである。」(2頁右上欄4行?同頁左下欄8行)

〈実施例〉
(K2.6)「第1図は、方位検出装置の一実施例を示すブロック図であり、この方位検出装置は、車両の角速度に比例した電圧を出力するジャイロ1と、アンプ21,22,・・・2Nと、アンプ21,22,・・・2NとA/D変換器4との間に介在接続される入力切替器3と、入力切替器3を介して供給されるアンプ21,22,・・・2Nの出力をディジタル値に変換するA/D変換器4と、入力切替器3を制御する切替制御部5a、及びA/D変換器4からのディジタル値に基づいて方位を検出する方位検出部5bからなるコンピュータ5とを有する。(3頁左上欄3行?14行)

(K2.7)「上記ジャイロ1としては、例えば光ファイバジャイロ、振動ジャイロ、・・・(中略)・・・等があるが、いずれのものを使用することか可能である。」(3頁左上欄15行?18行)

(K2.8)「上記アンプ21,22,・・・2Nは、ジャイロ1の出力をそれぞれ異なる増幅率gl,g2,・・・gN(gl>g2>,・・・>gN)で増幅する。」(3頁左上欄19行?同頁右上欄1行)

(K2.9)「入力切替器3は上記アンプ21,22,・・・2NにチヤネルC1,C2,・・・CNが接続され、コンピュータ5の切替制御部5aからの切替制御信号に応じて、チャネルC1,C2,・・・CNを切替えてコンピュータ5が所望するアンプ21,22,・・・2NとA/D変換器4に接続するものである。」(3頁左下欄20行?同頁右下欄5行)

(K2.10)「コンピュータ5の方位検出部5bは、それぞれの入力レンジの単位を統一するために、A/D変換器4からのディジタル値を現在使用中のアンプの増幅率で割り、この値を一定時間毎に積分して旋回角度を求め、この旋回角度を順次加算して方位を検出する。」(3頁右下欄6行?11行)

(K2.11)「また、切替制御部5aは、上記ディジタル値をモニタし、ディジタル値が上記A/D変換器4のフルレンジ電圧VFに達すると、チャネル切替制御信号(現在A/D変換器4に接続されているチャネルから、次に低い増幅率を有するアンプに接続されているチャネルに切替えるための信号)を入力切替器3に供給する。」(3頁右下欄11行?17行)

[4.2.2]引用文献3:特開昭61-217718号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献3:特開昭61-217718号公報には、次に掲げる事項が記載されている。

〈発明の利用分野〉
(K3.1)「本発明は、方位検出用の光ファイバジャイロに係り、特に自動車への搭載に好適な光ファイバジャイロの信号処理方式に関する。」(1頁右欄16行?18行)

〈発明の概要〉
(K3.2)「この目的を達成するため、本発明は、光ファイバジャイロの出力信号の取込みに際して、この出力信号の取込ゲインを検出された角速度の大小に応じて変化させるようにした点を特徴とする。」(2頁右上欄5行?8行)

〈発明の実施例〉
(K3.3)「一方、入出力インターフェース回路20からアンプ14に向いている線は、アンプ14のゲインをマイクロコンピュータ17によって制御するものである。これは、角速度Ωの大小に応じて、アンプ14のゲインを切換えることによって、角速度を精度よく求めるようにしたものである。
ここで、アンプ14のゲインの切換え方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、ただ1台の負帰還アンプを用い、その負帰還抵抗の抵抗値をアナログスイッチで切換える方法や、複数台の順次、ゲインを異にするアンプをアナログスイッチを用いて切換える方法などがある。」(3頁左上欄15行?同頁右上欄6行)

[4.2.3]引用文献7:特開平3-32226号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献7:特開平3-32226号公報には、次に掲げる事項が記載されている。

〈発明が解決しようとする課題〉
(K7.1)「従来装置の構成では、単一のA/D変換器を時間的に切り換えて使用するため、アナログ段での信号経路切り換えが必要となる。一般に、アナログ信号切り換え回路は切り換え時、大なり小なりアナログ歪を生じてしまう。」(2頁左下欄20行?同頁右上欄4行)

〈課題を解決するための手段〉
(K7.2)「この発明は、同一のアナログ信号にそれぞれ異なるゲインを付与した異なるレベルのアナログ信号をそれぞれA/D変換したディジタル信号のうち、前記A/D変換の際に適正な動作範囲にあるディジタル信号を選択し、これに基づいて単一のリニアな出力ディジタル信号を合成出力するようにしたA/D変換装置において、A/D変換の処理手段の後段に、ディジタル信号処理手段を接続し、A/D変換の際に適正な動作範囲にあるディジタル信号を選択する処理、及び、前記単一のリニアなディジタル信号を合成出力する処理を、全てこのディジタル信号処理回路で行なうことを特徴とする。」(2頁右下欄6行?3頁左上欄8行)

〈実施例〉
(K7.3)「第6図は、この発明の第2の実施例を表わしている。・・・(中略)・・・レベル調整器11A、11Bは、同一アナログ入力信号から分岐させた2系統の信号のそれぞれに、係数ゲインG1、G2(Gl>G2)を付与して出力し、このレベル調整された信号は、A/D変換器12A、12BによりそれぞれA/D変換される。・・・(中略)・・・
レベル判断回路25A、25Bは、第1図のレベル判断部に相当するもので、A/D変換器12A、12Bがそれぞれ出力するディジタル信号のレベルが所定の適正範囲にあるか否かをディジタル演算により判断しその結果を出力するものである。レベル判断回路25Aは、A/D変換器12Aの出力するディジタル信号のレベルをD1とするとき、このD1が上限レベルVTH1以下で下限レベルVTH2より大きければ出力係数を1とし、それ以外は0を出力するものである。また、レベル判断回路25Bは、A/D変換器12Bの出力するディジタル信号のレベルをD2とするとき、このD2が上限レベルVTH3以下で下限レベルVTH4より大きければ出力係数を1とし、それ以外は0を出力するものである。・・・(中略)・・・
乗算器26A、26Bは、レベル判断回路25A、25Bの出力係数(1または0)をそれぞれ乗算器21A、21Bの出力に乗算するものであり、これら両出力を加算する加算器27とともに、第5図におけるセレクタ23と実質的に同様の機能を果たす。・・・(中略)・・・出力合成演算後のディジタル信号はレベル連続性が確保された単一のリニアな信号となる。」(4頁右上欄19行?5頁左上欄20行)

[4.3]補正後発明10について

[4.3.1]対比
補正後発明10と引用文献2に記載された発明(以下、引用発明という)とを対比すると、次のことが認められる。

(a)目的
本願明細書の「従来の角速度センサを用いた電子機器においては、・・・機器の回転運動を検出する場合に、その検出出力の広いダイナミックレンジを確保することができず、また、これをディジタル化して使用する際
に必要となる、高精度のA/D変換器が存在しないという不都合があった。」(6頁12行?16行)、「増幅器303の出力信号をA/D変換器3
04のダイナミックレンジ内に入るようにすることにより、ビット数の少ないA/D変換器304を用いても広いダイナミックレンジを確保することができる。」(65頁14行?17行)によれば、
補正後発明10は、回転運動の検出を精度とダイナミックレンジを確保して行うことを目的とするところ、
前掲(K2.3)(K2.4)によれば、引用発明もこれと同様な目的のものである。

(b)「回転体」、「回転運動」、「回転中心」、「角速度を検出する振動ジャイロ」、「角度検出装置」
補正後発明10では、構成要件として「回転体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転体の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロ」を特定するところ、
「聴取者の頭部の回転中心でない位置に設けられ、当該頭部の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロ」(請求項1)、「上記振動ジャイロは、上記頭部装着体に取り付けられ、当該頭部装着体が聴取者の頭部に装着されるとき上記振動ジャイロは聴取者の頭部の回転中心でない位置に配置されている」(請求項4)、「必ずしも頭部の回転中心に取り付ける必要がなく、音響再生手段の頭部装着体に取り付けることができ」(明細書12頁12行?14行)等の記載からすれば、
上記特定は、頭部が回転運動するときの頭部の角速度を検出するのに、頭部の回転中心でない位置に振動ジャイロを設けることを含む意味であり、「回転体」とは「聴取者の頭部」を含む意味と解される。一般に、「回転体」とは、平面図形をそれと同平面に位置する直線(軸)の周りに回転することにより得られる立体図形をいうから、厳密には「頭部」は回転体といえないまでも、略回転体とはいい得るものである。

他方、引用発明は、前掲(K2.1)(K2.2)(K2.7)によれば、
車両、航空機、船舶等の移動体の旋回時の角速度を検出する「振動ジャイロ」{(K2.7)}を用いて、振動ジャイロの出力角速度を積分して、移動体の移動方位角度(初期位置からの移動量である移動体の絶対方位、旋回角度)を検出するものであるところ{(K2.1)(K2.2)}、
車両、航空機、船舶等の移動体は、その形状からして、一般にいうところの上記意味の「回転体」ということはできないが、その運動(「旋回」運動)態様からみれば、「回転運動」する「物体」といいえるものである。
なぜなら、車両、航空機、船舶等の「旋回」とは、一定の向きに直線的に進行するのではなく、向き(方位)を変えつつ円弧等の曲線を描いて進行する運動の態様をいうから、その運動は、その曲線の曲率中心・円弧の中心を中心とする回転運動とみることができるからである。
そして、その「振動ジャイロ」の位置についてみれば、同「振動ジャイロ」は、車両、航空機、船舶等の移動体に設けられていることは明らかであるから、車両、航空機、船舶等の移動体が「旋回」運動(これが「回転運動」とみることができることは上記のとおりである。)するとき、その設置位置は、通常、その移動体(車両、航空機、船舶等)の「回転運動」の曲率中心・円弧の中心、すなわち「回転中心」でない位置に設けられているといえる。

また、引用発明の「振動ジャイロ」は、車両、航空機、船舶等の移動体の角速度を検出するするものであって、検出した角速度を積分して旋回角度を求めるのであるから、引用発明は、全体として補正後発明10と同じく「角度検出装置」といえるものである。

以上のことから、引用発明も、補正後発明10と同じく、「回転運動する物体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転運動する物体の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロを備える角度検出装置」といい得るものであるが、引用発明は、検出対象である「回転運動する物体」が「回転体」ではない点では補正後発明10と相違している。

(c)「増幅器」,「アナログ/ディジタル変換器」,「ゲイン切り換え回路」
補正後発明10では、構成要件として「ゲイン切り換え回路を有し、上記振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅器と、上記増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と」を備えるとするところ、
引用発明では、前掲(K2.5)(K2.6)(K2.8)によれば、振動ジャイロの検出信号をそれぞれ異なる増幅率(ゲイン)で増幅する複数のアンプ21,22,・・・2N、これら複数のアンプの出力信号を入力切替器3を介してA/D変換器4(アナログ/ディジタル変換器)でディジタル信号に変換するとしていて、これら、複数のアンプ21,22,・・・2Nと入力切替器3を合わせたものは、「増幅部」なる用語を用いて「ゲイン切り換え機能を有し、振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅部」といっても支障はなく、補正後発明10の「増幅器」もそのような増幅部といいえるものである。
したがって、引用発明も、補正後発明10も、「ゲイン切り換え機能を有し、振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅部」と「上記増幅部の出力信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と」を備えるといえる。
もっとも、補正後発明10では、上記「ゲイン切り換え機能を有し、振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅部」を、ゲイン切り換え回路を有する(1つの)増幅器で構成したところ、引用発明では、ゲインの異なる複数の増幅器とこれら複数の増幅器の出力信号を切り替えする入力切替器で構成した点で相違が認められるとともに、
この相違に伴い、上記アナログ/ディジタル変換器の入力信号が、
補正後発明10では、上記増幅器の出力信号であるのに対して、
引用発明では、上記増幅部の出力信号(入力切替器3の出力信号)である点においても相違が認められる。

(d)「演算手段」
補正後発明10では、構成要件として、「上記アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて上記増幅器のゲインを切り換えるとともに、上記ディジタル出力信号に対して上記増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段」を備えるとするところ、
これに対応するものとして、引用発明も「コンピュータ5」を備えている。

(d1) 増幅器のゲイン切り換え
前掲(K2.11)(K2.9)によれば、コンピュータ5の切替制御部5aは、A/D変換器4より出力されたディジタル値をモニタし、ディジタル値が上記A/D変換器4のフルレンジ電圧VFに達すると、チャネル切替制御信号(現在A/D変換器4に接続されているチャネルから、次に低い増幅率を有するアンプに接続されているチャネルに切替えるための信号)を入力切替器3に供給して、異なるゲインのアンプに切り換える。
したがって、引用発明のコンピュータ(演算手段)は、「上記アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて」上記「ゲイン切り換え機能を有し、振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅部」のゲインを切り換えるものといい得る。

(d2) ゲインに応じたレベル補正、積分演算、回転角度の演算
前掲(K2.10)によれば、コンピュータ5の方位検出部5bは、A/D変換器4からのディジタル値を現在使用中のアンプの増幅率で割ってそれぞれの入力レンジの単位を統一し、この値を一定時間毎に積分して旋回角度を求め、この旋回角度を順次加算して方位を検出する。
したがって、引用発明のコンピュータ5(演算手段)は、A/D変換器4からのディジタル出力信号に対して上記増幅部のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算するものといえる。

(d3)以上のことから、引用発明も、「アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて上記増幅部のゲインを切り換えるとともに、上記ディジタル出力信号に対して上記増幅部のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段」を備えているといえ、この点では補正後発明10と変わりがない。
もっとも、補正後発明10では、上記「増幅部」が、ゲイン切り換え回路を有する(1つの)増幅器とした点で相違していることは、前記のとおりであり、この相違に伴い、
上記演算手段による上記ディジタル出力信号のレベルに応じた増幅部のゲイン切り換えが、
補正後発明10では、上記増幅器のゲインを切り換えるのに対して、
引用発明では、上記増幅部のゲインを切り換える(入力切替器3を切り換える)であり、
上記演算手段による上記増幅部のゲインに応じたレベル補正が、
補正後発明10では、上記増幅器のゲインに応じた補正であるのに対して、
引用発明では、上記増幅部のゲインに応じた補正である点
で相違が認められる。


[4.3.2]一致点、相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明10と引用発明との一致点、相違点は次のとおりということができる。

[一致点]両者はいずれも、
回転運動する物体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転運動する物体の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロと、
ゲイン切り換え機能を有し、上記振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅部と、
上記増幅部の出力信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、
上記アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて上記増幅部のゲインを切り換えるとともに、上記ディジタル出力信号に対して上記増幅部のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段とを備える角度検出装置。
であるといえる点。

[相違点1]
上記回転運動する物体が、
補正後発明10では、回転体とするのに対して、
引用発明では、回転体ではない点

[相違点2]
ゲイン切り換え機能を有し、振動ジャイロの検出信号を増幅する増幅部が、
補正後発明10では、ゲイン切り換え回路を有する(1つの)増幅器で構成したのに対して、
引用発明では、ゲインの異なる複数の増幅器とこれら複数の増幅器の出力信号を切り替える入力切替器とから構成し、

この相違に伴い、
上記アナログ/ディジタル変換器の入力信号が
補正後発明10では、上記増幅器の出力信号であるのに対して、
引用発明では、上記増幅部の出力信号(入力切替器3の出力信号)であり、
上記演算手段によるレベルに応じた増幅部のゲイン切り換えが、
補正後発明10では、上記増幅器のゲインを切り換えるのに対して、
引用発明では、上記増幅部のゲインを切り換える(入力切替器3を切り換える)であり、
上記演算手段による上記増幅部のゲインに応じたレベル補正が、
補正後発明10では、上記増幅器のゲインに応じたレベル補正であるのに対して、
引用発明では、上記増幅部のゲインに応じたレベル補正である点


[4.3.3]相違点の判断

[4.3.3.1]相違点1について
引用発明の振動ジャイロは、「回転体ではない物体」に設けて「回転体ではない物体」の回転運動の角速度検出に用いられているが、補正後発明10と同じく角速度を検出するものである以上、特に何の限定も付さない「回転体」に設けて「回転体」の角速度検出に適用し得ることは自明というべきであり、上記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得るである。

また、一般に、「回転体」を対象として、「回転体」に設けたジャイロ等の角度検出装置により回転角度を検出することは、
例えば、本願明細書に従来の背景技術例として挙げられた、
特公昭42-227号公報,
特公昭54-19242号公報,
特開平1-112900号公報(平成15年8月28日付け拒絶理由通知で提示済み),
特開平3-214897号公報(従来例の記載)や、
にみられるようにごく普通の周知慣用のことにすぎず、引用発明の振動ジャイロで検出した角速度を積分すれば回転角度が求まるのであるから、このような周知慣用の回転体の角度検出に引用発明の振動ジャイロを用いることは当業者が容易に想到し得ることというべきであり、この点からみても、上記相違点1に係る構成が格別のこととはいえない。

さらに、振動ジャイロを、「回転体」の回転中心でない位置に設けて回転体の回転運動の角速度を検出することは、例えば、拒絶査定時に示された下記周知例1?3にみられるように周知技術にすぎず、このことからみても、上記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得ることである。

[4.3.3.2]相違点2について
一般に、アナログ信号をA/D変換器に入力する時、精度とダイナミックレンジ確保の観点から、ゲインを切り換えて増幅してからA/D変換器に入力すること、その際の増幅部として、帰還抵抗の抵抗値を切り換えてゲインを切り換える1つの増幅器を用いることは、周知慣用にすぎない{例えば、上記引用文献3([4.2.2]前掲(K3.1)?(K3.3)等)、下記周知例4等参照のこと}。
したがって、引用発明の上記「増幅部」に、上記周知慣用技術を適用して、「ゲイン切り換え回路を有する(1つの)増幅器」とすることは、これを妨げる特段の事情もなく当業者が容易に想到し得ることである。
そして、そのように適用すれば、
上記アナログ/ディジタル変換器の入力信号がそのような増幅器の出力信号となること、
上記演算手段によるレベルに応じた増幅部のゲイン切り換えが、そのような増幅器のゲインを切り換えることとなること、
上記演算手段による上記増幅部のゲインに応じたレベル補正が、そのような増幅器のゲインに応じたレベル補正となること、
以上のことは、その適用に伴う当然のことにすぎない。

[4.3.3.3]効果等
以上のように、上記相違点1および2に係る補正後発明10の構成は、当業者に想到容易ではない格別のものであるとはいえず、また、補正後発明10の構成を全体としてみても格別のものはなく、その技術的効果も、上記引用文献2、周知事項から当業者に予測できる範囲のものである。

[4.3.3.4]請求人の主張についての検討
請求人は、補正後発明10は、ゲインの切り替えを複数の増幅器の切り替えではなく、1つの増幅器のゲイン切り替えにより実現しているから、ゲインの異なる増幅器の出力信号を切り替える場合に比べ、各ゲインでの出力信号間のDCオフセットレベルの誤差を少なくすることが可能となり、このような同じ一つの増幅器のゲイン切り替えは、「振動ジャイロ」と組み合わせた場合有効である旨、主張している。
ゲインの切り替えを、1つの増幅器のゲイン切り替えで行った方が、複数の増幅器の切り替えで行うより、DCオフセットレベル誤差を少なくする点で有利であるとしても、それは、「振動ジャイロ」と組み合わせた場合に限る効果ではなく、ゲインを切り替えて増幅する際の一般的効果にすぎないし、それが、当業者が「振動ジャイロ」と1つの増幅器のゲイン切り替えを組み合わせる着想を妨げる特段の事情となるわけでもない。
そして、上述したように、精度とダイナミックレンジ確保という、補正後発明10と同じ目的で、ゲインを切り換えて増幅してからA/D変換器に入力する際に用いる増幅部として、帰還抵抗の抵抗値を切り換えてゲインを切り換える1つの増幅器を用いることが周知慣用にすぎないのであるから、上記請求人の主張する理由により補正後発明10が当業者容易想到でない発明とすることはできず、上記請求人の主張は採用できない。

[4.3.3.5] 記(周知例1?4)
周知例1:特開平5-172832号公報(拒絶査定時に提示済み){段落0011,0023、図1等参照}
周知例2:特開昭61-44315号公報(拒絶査定時に提示済み){2頁左上欄2行?同頁右上欄5行,2頁左下欄8行?15行,3頁右上欄9行?17行、第1図,第4図等参照}
周知例3:特開昭61-200428号公報(拒絶査定時に提示済み){1頁左下欄17行?2頁左上欄8行,2頁左下欄8行?18行,4頁左上欄14行?同頁右上欄2行、第1図,第3図等参照}

周知例4:長橋芳行著、「A-D/D-A変換回路の設計」第8版、昭和61年2月10日、CQ出版(株)発行、p97-98



[4.4]補正後発明15について

[4.4.1]対比
補正後発明15と引用文献2に記載された発明(以下、引用発明という)とを対比すると、次のことが認められる。なお、補正後発明10との対比と同じ事項については上記[4.3.1]を援用する。

(a)目的
本願明細書の「従来の角速度センサを用いた電子機器においては、・・・機器の回転運動を検出する場合に、その検出出力の広いダイナミックレンジを確保することができず、また、これをディジタル化して使用する際
に必要となる、高精度のA/D変換器が存在しないという不都合があった。」(6頁12行?16行)、「ビット数の少ないA/D変換器を用いても広いダイナミックレンジを確保することができる。」(67頁16行?18行)によれば、
補正後発明15は、回転運動の検出を精度とダイナミックレンジを確保して行うことを目的とするところ、
前掲(K2.3)(K2.4)によれば、引用発明もこれと同様な目的のものである。

(b)「回転体」、「角速度を検出する振動ジャイロ」、「角度検出装置」
これらについては、上記[4.3.1](b)を援用する。

(c)「第1、第2の増幅器」
引用発明は、前掲(K2.5)(K2.6)(K2.8)によれば、振動ジャイロの検出信号をそれぞれ異なる増幅率(ゲイン)で増幅する複数のアンプ21,22,・・・2N、これら複数のアンプの出力信号を入力切替器3を介してA/D変換器4(アナログ/ディジタル変換器)でディジタル信号に変換するとしていて、複数のアンプが2つのアンプである場合には、
これらアンプ21,22は、それぞれ、補正後発明15の「上記振動ジャイロの検出信号を増幅する第1の増幅器」、「上記第1の増幅器のゲインと異なるゲインを有し、上記振動ジャイロの検出信号を増幅する第2の増幅器」に相当する。

(d)「第1、第2のアナログ/ディジタル変換器」、「演算手段」

(d1)補正後発明15の「第1および第2のアナログ/ディジタル変換器」と「演算手段」を合わせたものは、
「第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号から、レベル補正および積分演算に供する演算用の1つのディジタル信号を作成する機能(「以下、短く『演算用ディジタル信号作成機能』という)と、
作成した1つのディジタル信号に対して上記第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する機能(以下、短く『回転角度演算機能』という)
を実現する構成」と捉えることができるところ、
引用発明でも、上記(c)でみたように、アンプ21,22(補正後発明15の「第1、第2の増幅器」に相当する)の出力は入力切替器3を介して選択的にA/D変換器4(1つのアナログ/ディジタル変換器)に入力されここでディジタル信号に変換し、
上記[4.3.1](d2)でみたように、コンピュータ5(補正後発明15の「演算手段」に対応する)は、A/D変換器4からのディジタル出力信号に対してアンプ21またはアンプ22のゲイン(上記第1もしくは第2の増幅器のゲイン)に応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算するのであるから、
引用発明の「入力切替器3」と「A/D変換器4」(1つのアナログ/ディジタル変換器)を合わせたものは、補正後発明15の上記『演算用ディジタル信号作成機能』の実現部といえ、引用発明の「コンピュータ5」は、補正後発明15の上記『回転角度演算機能』の実現部といい得るものであり、
上記『回転角度演算機能』の実現部といい得る補正後発明15の「上記第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段」については、引用発明も変わるところはない。

(d2)もっとも、補正後発明15と引用発明は、上記『演算用ディジタル信号作成機能』実現部においては以下の相違がある。
補正後発明15では、
上記『演算用ディジタル信号作成機能』実現部における演算用の1つのディジタル信号の作成が、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、2つのアナログ/ディジタル変換器(第1及び第2のアナログ/ディジタル変換器)を用いて、それぞれアナログ/ディジタル変換し、
上記「演算手段」が行う「上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込」む動作でなされ、
その選択的に取り込む動作は、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」行われるとするのに対して、
引用発明では、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、「入力切替器3」により上記アナログ/ディジタル変換器に選択的に取り込み、1つのアナログ/ディジタル変換器を用いディジタル信号に変換して出力する動作でなされ、
その選択的取り込みは、コンピュータ(演算手段)が上記アナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて出力する切替制御信号によって、「入力切替器3」により行う{(K2.11)(K2.9)}点。

[4.4.2]一致点、相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明15と引用発明との一致点、相違点は次のとおりということができる。

[一致点]両者はいずれも、
回転運動する物体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転運動する物体の回転運動の角速度を検出する振動ジャイロと、
上記振動ジャイロの検出信号を増幅する第1の増幅器と、
上記第1の増幅器のゲインと異なるゲインを有し、上記振動ジャイロの検出信号を増幅する第2の増幅器と、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号から、レベル補正および積分演算に供する1つの演算用ディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』と、
上記レベル補正および積分演算に供する1つの演算用ディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』で作成された1つの演算用ディジタル信号に対して、第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段
とを備える角度検出装置。
であるといえる点。

[相違点1]
上記回転運動する物体が、
補正後発明15では、回転体とするのに対して、
引用発明では、回転体ではない点

[相違点2]
上記『演算用ディジタル信号作成部』における1つの演算用ディジタル信号の作成が、
補正後発明15では、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、2つのアナログ/ディジタル変換器(第1及び第2のアナログ/ディジタル変換器)を用いて、それぞれアナログ/ディジタル変換し、
上記「演算手段」が行う、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」「上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込」む動作でなされるとするのに対して、

引用発明では、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、「入力切替器3」により上記アナログ/ディジタル変換器に選択的に取り込み、1つのアナログ/ディジタル変換器を用いディジタル信号に変換して出力する動作でなされ、
その選択的取り込みは、演算手段が上記アナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて出力する切替制御信号によって、入力切替器により行う点。

[4.4.3]相違点の判断

[4.4.3.1]相違点1について
上記[4.3.3.1]と同じである。

[4.4.3.2]相違点2について

上記相違点2のうち、『演算用ディジタル信号作成部』における1つの演算用ディジタル信号の作成が、
〔S1〕第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、2つのアナログ/ディジタル変換器(第1及び第2のアナログ/ディジタル変換器)を用いて、それぞれアナログ/ディジタル変換し、
〔S2〕上記「演算手段」が行う、「上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込」む動作でなされるとする点について、まず先に検討し、
〔S3〕その選択的に取り込む動作が、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」なされる点については、その後検討する。

(a)引用文献2の示唆、A/D変換の周知技術
上記引用文献2には、「小さい角速度をディジタル変換するためのA/D変換器と、大きい角速度をディジタル変換するためのA/D変換器を設けることも考えられるが、A/D変換器が二つ設けることにより、装置が複雑化し、また、A/D変換器は高価であるため、コスト高になる。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、・・・」{前掲(K2.4)}なる記載がある。
同記載は、「角速度の検出精度(分解能)ひいては方位検出精度を向上させることができないという問題」{前掲(K2.3)}を解決するための一案として、小さい角速度をディジタル変換するためのA/D変換器と、大きい角速度をディジタル変換するためのA/D変換器を設ける(A/D変換器を二つ設ける)改良技術を提示し、
同改良技術では、装置が複雑化する、A/D変換器は高価であるためコスト高になることから、同改良技術ではなく、「異なるゲインを有する2つの増幅器と1つのA/D変換器を用いる構成」(引用発明)としたことを説示するものである。
しかしながら、上記のようにA/D変換器を二つ設ける上記改良技術は、引用発明(異なるゲインを有する2つの増幅器と1つのA/D変換器を用いる構成)の代替技術の開示または示唆としても理解し得るものといえ、
上記記載に接した当業者は、その代替技術として、2つのA/D変換器を、異なるゲインを有する2つの増幅器それぞれの後段に設け、A/D変換器の後段でA/D変換された2つのディジタル信号をディジタル処理で選択的に取り込むものを普通に想定するのである。
この想定される代替技術は、上記[一致点]の構成として捉えた上記『演算用ディジタル信号作成部』(第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号から、レベル補正および積分演算に供する1つの演算用ディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』)についてみれば、
これを、第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、2つのアナログ/ディジタル変換器(第1及び第2のアナログ/ディジタル変換器)を用いて、それぞれアナログ/ディジタル変換し、
その後段で「上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込」んでレベル補正および積分演算に供する1つのディジタル信号とするもの
である。

また、上記改良技術にみられるような、複数の増幅手段の(アナログ)出力信号を、複数のA/D変換器を用いて、それぞれA/D変換し、その後段のディジタル処理で、複数のA/D変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込んでレベル補正する技術は、一般に、A/D変換のダイナミックレンジを拡大する技術として、例えば、
上記引用文献7{上記[4.2.3]前掲(K7.1)?(K7.3)}や
特開平2-246943号公報{2頁右上欄6行?同頁左下欄6行、3頁右上欄1行?同頁右下欄1行等参照}
にみられるように周知の技術にすぎないものである。

したがって、上記相違点2のうちの上記〔S1〕の点に係る補正後発明15の構成は、引用文献2の上記示唆に基づき、引用文献2の上記改良技術または上記周知技術を、引用発明の「第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号から、レベル補正および積分演算に供する1つのディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』」に適用することにより、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、そのように適用するとき、2つのアナログ/ディジタル変換器の後段でなされる上記の「上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込」む動作がディジタル処理であることを考慮すれば、
この選択的に取り込む動作を、引用発明のコンピュータ5、すなわち、「上記第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段」が行う動作とすること、
すなわち、上記相違点2のうちの上記〔S2〕の点に係る補正後発明15の構成とすること、
は当業者が適宜容易になすことであって格別なこととはいえない。

(b)上記〔S3〕の点(その選択的に取り込む動作が、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」なされる点)について
上記引用文献7には、複数のA/D変換器の後段に接続したディジタル信号処理回路13が、その複数のA/D変換器の出力ディジタルから1つのディジタル信号を選択的に取り込むこと{(K7.2)}、および、
その選択的に取り込む動作が、第1のアナログ/ディジタル変換器12Aが出力するディジタル信号D1のレベルをディジタル信号処理回路13に内蔵されるレベル判断回路25Aにより判断するとともに、第2のアナログ/ディジタル変換器12Bが出力するディジタル信号D2のレベルをディジタル信号処理回路13に内蔵されるレベル判断回路25Bにより判断し、これらの判断結果により、ディジタル信号D1かディジタルD2かが実質的に選択されることによりなされること{特に、第6図記載の第2の実施例に関する前掲(K7.3)}
が記載されていて、
第1のアナログ/ディジタル変換器(12A)、および第2のアナログ/ディジタル変換器(12B)の後段に接続したディジタル信号処理回路(13)が、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号(D1)と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号(D2)の信号レベルに基づいて」、1つのディジタル信号を選択的に取り込む技術が開示されており、同技術は、上記相違点2のうちの上記〔S3〕の点に係る補正後発明15の構成と同じである。

(c)容易性の判断
そうすると、上記相違点2に係る補正後発明15の構成は、引用文献2の前掲(K2.4)記載の示唆に基づき、引用文献2の上記改良技術または上記周知技術、および引用文献7記載の技術を、引用発明の「第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号から、レベル補正および積分演算に供する1つのディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』」に適用することにより、当業者が容易に想到し得ることである。

[4.4.3.3]効果等
以上のように、上記相違点1および2に係る補正後発明15の構成は、当業者に想到容易ではない格別のものであるとはいえず、また、補正後発明15の構成を全体としてみても格別のものはなく、その技術的効果も、上記引用文献2、引用文献7、周知事項から予測できる程度のものにすぎない。

[4.4.3.4]請求人の主張についての検討

請求人は、補正後発明15は、2系統のうちの一方すなわちゲインの低い系統の入力レベルだけを監視すればよいから、切り替え制御を簡単な処理で構成できる旨、主張している。
しかしながら、請求項15には、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込み」と記載されていて、1系統ではなく2系統のレベルを共に監視することが特定されているから、上記主張は、請求項15の記載に基づかない主張であって採用できない。

なお、本願明細書には、請求項15に対応する実施例としては、1系統のみを監視するもののみ記載されていて{明細書65?67頁,図32,33}、2系統を共に監視するものについての記載はない。
このことから、仮に、上記請求項15の
「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」が、
「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号または上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」と
解釈し得たとしても、
例えば、上記引用文献7に、2系統のうちの1系統のみを監視するものも記載されている{例えば、第5図,第7図記載の実施例}ように、2系統のうちのいずれか一方の系統のみを監視することが、容易想到でない格別であるとすることはできない。

いずれにせよ、上記出願人の主張は採用できない。

[4.5]まとめ(独立特許要件)
以上によれば、本件補正(補正後発明10および15)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、
補正後発明10は、引用文献2に記載された発明および周知技術に基づいて、
補正後発明15は、引用文献2に記載された発明および引用文献7に記載された発明および周知技術に基づいて、
それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

[5]むすび(補正却下)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


【第3】本願発明

平成16年3月22日付けの手続補正は上記のとおり却下した。
本願の特許請求の範囲に係る発明は、平成15年11月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?請求項20に記載された事項によりそれぞれ特定されるとおりの発明であるところ、これらの発明のうち、請求項10、および請求項15に係る発明(以下、「本願発明10」、「本願発明15」ともいう)は、下記のとおりのものであり、それぞれ、上記補正後発明10、補正後発明15における「振動ジャイロ」を「角速度センサ」と読み替えたものと同じである。


(本願発明10)
回転体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転体の回転運動の角速度を検出する角速度センサと、
ゲイン切り換え回路を有し、上記角速度センサの検出信号を増幅する増幅器と、
上記増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、
上記アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて上記増幅器のゲインを切り換えるとともに、上記ディジタル出力信号に対して上記増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段とを備えることを特徴とする角度検出装置。
(本願発明15)
回転体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転体の回転運動の角速度を検出する角速度センサと、
上記角速度センサの検出信号を増幅する第1の増幅器と、
上記第1の増幅器の出力信号をディジタル信号に変換する第1のアナログ/ディジタル変換器と、
上記第1の増幅器のゲインと異なるゲインを有し、上記角速度センサの検出信号を増幅する第2の増幅器と、
上記第2の増幅器の出力信号をディジタル信号に変換する第2のアナログ/ディジタル変換器と、
上記第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込み、上記第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段とを備えることを特徴とする角度検出装置。

【第4】査定の検討
本願発明10および本願発明15は、それぞれ、前記補正後発明10、補正後発明15における「振動ジャイロ」を「角速度センサ」としたものであり、その他は全く補正後発明10および補正後発明15と同じであるので、査定の検討にあたり、補正後発明10および15についての独立特許要件について検討した前記「【第2】[4]」を援用する。

[1]引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、
引用文献2:特開平3-92728号公報、
引用文献3:特開昭61-217718号公報、
引用文献7:特開平3-32226号公報
には、それぞれ、前記【第2】の[4.2.1]?[4.2.3]に掲げたとおりの記載がある。

[2]本願発明10について

[2.1]対比
本願発明10と引用文献2に記載された発明(以下、引用発明という)との対応関係については、前記【第2】の[4.3.1]に記載したとおりであるところ、これを援用する。

[2.2]一致点、相違点

本願発明10と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである

[一致点]
回転運動する物体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転運動する物体の回転運動の角速度を検出する角速度センサと、
ゲイン切り換え機能を有し、上記角速度センサの検出信号を増幅する増幅部と、
上記増幅部の出力信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、
上記アナログ/ディジタル変換器より出力されたディジタル出力信号のレベルに応じて上記増幅部のゲインを切り換えるとともに、上記ディジタル出力信号に対して上記増幅部のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段
とを備える角度検出装置。

[相違点1]
上記回転運動する物体が、
本願発明10では、回転体とするのに対して、
引用発明では、回転体ではない点。

[相違点2]
ゲイン切り換え機能を有し、角速度センサの検出信号を増幅する増幅部が、
本願発明10では、ゲイン切り換え回路を有する(1つの)増幅器で構成したのに対して、
引用発明では、ゲインの異なる複数の増幅器とこれら複数の増幅器の出力信号を切り替える入力切替器とから構成し、

この相違に伴い、
上記アナログ/ディジタル変換器の入力信号が
本願発明10では、上記増幅器の出力信号であるのに対して、
引用発明では、上記増幅部の出力信号(入力切替器3の出力信号)であり、
上記演算手段によるレベルに応じた増幅部のゲイン切り換えが、
本願発明10では、上記増幅器のゲインを切り換えるのに対して、
引用発明では、上記増幅部のゲインを切り換える(入力切替器3を切り換える)であり、
上記演算手段による上記増幅部のゲインに応じたレベル補正が、
本願発明10では、上記増幅器のゲインに応じたレベル補正であるのに対して、
引用発明では、上記増幅部のゲインに応じたレベル補正である点。

[2.3]相違点の判断

[2.3.1]相違点1および相違点2について
上記補正後発明10に係る相違点1および相違点2についてしたそれぞれの判断と同じである。

[2.3.2]効果等
本願発明10の効果も、上記引用文献2、周知事項から予測できる程度のものにすぎない。

[2.3.3]まとめ(本願発明10)
したがって、本願発明10は、引用文献2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3]本願発明15について

[3.1]対比
本願発明15と引用文献2に記載された発明(以下、引用発明という)との対応関係については、前記【第2】の[4.4.1]に記載したとおりであるところ、これを援用する。

[3.2]一致点、相違点

本願発明15と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである

[一致点]
回転運動する物体の回転中心でない位置に設けられ、当該回転運動する物体の回転運動の角速度を検出する角速度センサと、
上記角速度センサの検出信号を増幅する第1の増幅器と、
上記第1の増幅器のゲインと異なるゲインを有し、上記角速度センサの検出信号を増幅する第2の増幅器と、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号から、レベル補正および積分演算に供する1つの演算用ディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』と、
上記レベル補正および積分演算に供する1つの演算用ディジタル信号を作成する『演算用ディジタル信号作成部』で作成された1つの演算用ディジタル信号に対して、第1もしくは第2の増幅器のゲインに応じたレベル補正および積分演算することにより回転角度を演算する演算手段
とを備える角度検出装置。

[相違点1]
上記回転運動する物体が、
本願発明15では、回転体とするのに対して、
引用発明では、回転体ではない点。

[相違点2]
上記『演算用ディジタル信号作成部』における1つの演算用ディジタル信号の作成が、
本願発明15では、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、2つのアナログ/ディジタル変換器(第1及び第2のアナログ/ディジタル変換器)を用いて、それぞれアナログ/ディジタル変換し、
上記「演算手段」が行う、「第1のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号と上記第2のアナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて」「上記第1もしくは第2のアナログ/ディジタル変換器により変換されたディジタル信号を選択的に取り込」む動作でなされるとするのに対して、

引用発明では、
第1の増幅器と第2の増幅器の2つの(アナログ)出力信号を、「入力切替器3」により上記アナログ/ディジタル変換器に選択的に取り込み、1つのアナログ/ディジタル変換器を用いディジタル信号に変換して出力する動作でなされ、
その選択的取り込みは、演算手段が上記アナログ/ディジタル変換器のディジタル信号の信号レベルに基づいて出力する切替制御信号によって、入力切替器により行う点。

[3.3]相違点の判断

[3.3.1]相違点1および相違点2について
上記補正後発明15に係る相違点1および相違点2についてしたそれぞれの判断と同じである。

[3.3.2]効果等
本願発明15の効果も、上記引用文献2、引用文献7、周知技術から予測できる程度のものにすぎない。

[3.3.3]まとめ(本願発明15)
したがって、本願発明15は、引用文献2に記載された発明および引用文献7に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第5】むすび
以上のとおりであるから、
本願の請求項10に係る発明は、前記引用文献2に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本願の請求項15に係る発明は、前記引用文献2に記載された発明および引用文献7に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-24 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-11 
出願番号 特願平7-513715
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04S)
P 1 8・ 575- Z (H04S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 裕司  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 南 義明
新宮 佳典
発明の名称 角度検出装置とそれを用いたオーディオ再生装置  
代理人 角田 芳末  

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