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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1162122
審判番号 不服2004-21609  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-19 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 特願2002-266064「被記録体上の画素」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004- 98577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・特許請求の範囲の記載
本願は平成14年9月11日の出願であって、平成16年9月15日付けで拒絶の査定がされたため、同年10月19日付けで本件審判請求がされるとともに、同年11月1日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成16年11月1日付けの手続補正を却下するとともに、新たな拒絶理由を通知したところ、請求人は平成19年5月11日付けで意見書及び手続補正書を提出した。そこで、平成19年5月11日付けで補正された明細書及び図面に基づいて審理する。
補正された特許請求の範囲は次のとおりである。
【請求項1】 開口の大きさがФ10μm?Ф25μmである、もしくは該開口が丸ではない場合は面積換算でその範囲内としたものであるような微細な開口から顔料微粒子を分散させた記録液体を吐出させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する顔料微粒子を分散させた記録液体で形成された被記録体上の画素において、前記記録液体は、溶媒中に比重が1より大である着色剤としての顔料微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは顔料微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させ、前記顔料微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、Dp/Do≦0.02となるようにして前記顔料微粒子の大きさDpの上限を決めるとともに、前記顔料微粒子の大きさDpの下限を0.005μmとした記録液体であり、該記録液体を用いて、該記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる被記録体に前記記録液体の液滴を付着させて形成することを特徴とする被記録体上の画素。
【請求項2】 前記被記録体は、植物繊維を絡み合わせてなるとともにその内部および表面に粒子を配した紙であって、前記繊維の絡み合うことによって形成される各繊維間の間隙あるいは前記繊維の太さ、さらには前記粒子の大きさによって、その表面が凹凸形状になっているとともに、前記顔料微粒子は、前記紙の繊維の太さより小さくするとともに、該繊維が絡み合うことによって形成される間隙以下の大きさにしたことを特徴とする請求項1に記載の被記録体上の画素。

第2 当審の判断
1.拒絶理由の骨子
(1)原査定の拒絶理由
ア.進歩性欠如
イ.実施可能要件違反
ウ.特許請求の範囲の明確性(これは原審における拒絶理由において<理由3>として指摘されたことで、拒絶査定では採用されていないが、当審における拒絶理由で、この問題を再度指摘した。)。
(2)当審で通知した拒絶理由(拒絶理由通知時において「記録液体」の請求項に対して指摘した事項の一部)
エ.液体噴射記録ヘッド及び被記録体に関する限定事項に関する不明確性
オ.顔料微粒子の大きさについての不明確性
カ.接触角についてのサポート要件違反及び実施可能要件違反

2.理由エ,オについての判断
請求項1,2に係る発明(以下、総称して「本願発明」という。)は「被記録体上の画素」の発明であり、「画素」の正体は「記録液体」であるから、「被記録体上の」との修飾語が付されたことにより、拒絶理由で指摘したことが当てはまらなくなる場合と、依然として当てはまる場合がある。これを本件についてみると「被記録体に関する限定事項が、どのように「記録液体」を特定することになるのか著しく不明確である」との部分は当てはまらなくなるが、「液体噴射記録ヘッドに関する限定事項が、どのように「記録液体」を特定することになるのか著しく不明確である。」との部分は依然として当てはまる。
問題となるのは、上記請求項1の「前記顔料微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、Dp/Do≦0.02となるようにして前記顔料微粒子の大きさDpの上限を決める」との記載部分である。「微細な開口の大きさをDo」は、「液体噴射記録ヘッド」の限定事項であり、微細な開口が定まってもそれだけでは、液体吐出量等は定まらないから、「被記録体上の画素」がどのようなサイズの「微細な開口」から吐出されたのかは定まらない。
ところで、「Dp/Do≦0.02」を書き換えると「Dp≦0.02Do」となるから、これは、顔料微粒子の大きさDpの上限が「0.02Do」であるとの特定である。ところが、Doは「Ф10μm?Ф25μm」とされているから、上限値は0.2μm?0.5μmの範囲で変動する。微粒子の大きさDpが0.2μm以下であれば「Dp/Do≦0.02」を満たし、0.5μmを超えれば「Dp/Do≦0.02」を満たさないといえるかもしれないが、Dpが0.2μm?0.5μmの範囲にあった場合、Dp/Do≦0.02を満たすのか満たさないのかが定まらない。そして、上記のとおり「被記録体上の画素」が同一であっても、異なる大きさの開口から吐出されることは十分あるのだから、「被記録体上の画素」における顔料微粒子の大きさの上限が明確に定められていないといわざるを得ない。
すなわち、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
また、請求項1は顔料微粒子の大きさについて「0.005μm以上かつ0.02Do以下」と特定している。ところで、顔料微粒子の大きさは均一サイズではなく、分布していることは技術常識である。そうすると、上記のように、上限及び下限を定めた場合、0.005μm未満及び0.02Do以上の微粒子が1つもないという趣旨であるのか、それとも分布を代表する値の上限及び下限を定めた趣旨であるのかの二様に解釈可能である。分布を代表する値としても、平均値、最頻値、中央値等種々の代表値があり、どれなのか不明である。拒絶理由では「「顔料微粒子の大きさDp」が、顔料微粒子の代表サイズ(典型的には平均粒径であり、そうであるならば平均粒径と記載しなければならない。)の趣旨だとすると、上記記載は著しく不明確である。」と指摘したにもかかわらず、何らの手だても講じられていないのだから、記載不備の誹りは免れない。
特許請求の範囲はそれ自体で明確でなければならないから、明細書の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないといわざるを得ない。

3.理由イ,ウ,カについての判断
(1)発明の詳細な説明の段落【0123】?【0126】には、A?Fまでの6種類の被記録体を用いた実験結果が記載されており、【図7】にはA?Fについての接触角の時間変化グラフが図示されている。ここで、「Dは樹脂部材?ポリエチレンフィルムに粒子径1μmの炭酸カルシウムを塗工したもの」(段落【0123】)であり、それ以外がいわゆる紙であって、A及びBが画素形状不良、それ以外が良好である旨記載されている。そして、Dを除く被記録体については、「各紙の繊維太さは5?10μm、繊維が重なりあってできる間隙は1?2μm、紙もしくは樹脂部材の表面平滑度は1?2sである。」(段落【0123】)点が共通で、密度(秤量(1m2あたりの重さ(グラム数))を厚さで除して算出したもの)が、「A 0.96g/cm3」、「B 0.41g/cm3」、「C 0.78g/cm3」、「E 0.58g/cm3」及び「F 0.62g/cm3」とされている。さらに、【図7】からは、A及びBは経過時間300msまで接触角が増減すること、C?Fは初期接触角から急激に接触角が減少し、単調に減少した後100ms以降は安定すること、いかなる経過時間においてもA及びBの接触角はC?Fの接触角よりも大きいことが読み取れる。
そうすると、A,BとC?Fの区別(画素形状良好性を左右する原因)が、初期接触角を含む接触角の大きさにあるのか、接触角の単調減少性にあるのか、相当時間経過後の接触角変動性にあるのか、それとも100ms以降の接触角変動性にあるのかは【図7】からは判明しない。
加えて、紙以外の被記録体(以下「樹脂被記録体」という。)については、比較例が存在せず、樹脂被記録体であればすべて画素形状良好であるのか、樹脂被記録体であっても画素形状不良となる場合があるのかすら実験結果からはわからない。被記録体を紙に限ったとしても、画素形状不良とされているA及びBの密度は、C?Dの密度よりも相当程度大きいか又は小さいから、画素形状良好性を左右する原因は密度にあるのかもしれない。
「記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる被記録体」(以下「本件被記録体」という。)が画素形状良好性を左右する原因であるといえるためには、100ms以降の接触角変動性以外の要因を同一とした実験結果が示されていなければならないところ、本願明細書及び図面の記載は到底その水準に到達していない。
この点請求人は「記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる被記録体に前記記録液体の液滴を付着させて形成」した場合に、良好な画素が得られたという事実をそのまま、特許請求の範囲としたにすぎず、本発明は、それ以上の科学的知見に踏み込むものではありませんし、またそれ以下のものでもありません。」(平成19年5月11日付け意見書5頁23?27行)と主張するが、適当な実験をし、その実験範囲内で良好な数値範囲を選択したとしても、実験条件を変更した際にも、同じ数値範囲で良好か結果が得られるとは限らないから、実験条件に関係なくその数値範囲が有用であることを裏付ける実験結果等が必要とされるのである。すなわち、実験事実をそのまま特許請求の範囲に記載するだけでは、特許請求の範囲に記載された発明の裏付けがあることにはならない。

(2)請求項2に係る発明の被記録体は、「植物繊維を絡み合わせてなるとともにその内部および表面に粒子を配した紙であって、前記繊維の絡み合うことによって形成される各繊維間の間隙あるいは前記繊維の太さ、さらには前記粒子の大きさによって、その表面が凹凸形状になっている」ものである。
(1)で述べたとおり、段落【0123】にはA?C,E,Fの被記録体について「各紙の繊維太さは5?10μm、繊維が重なりあってできる間隙は1?2μm、紙もしくは樹脂部材の表面平滑度は1?2s」とされており、「植物繊維を絡み合わせてなる」こと、「繊維の絡み合うことによって形成される各繊維間の間隙」を有すること及び「表面が凹凸形状になっている」ことは認めることができるが、A?C,E,Fの被記録体が「内部および表面に粒子を配した紙」であることまでは認めることができない。
すなわち、請求項2の被記録体については、その実施例の裏付けがあるとすら認めることができず、請求項2の被記録体上の画素につき「記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる」ことの有用性が明細書において裏付けられているとは到底認めることができない。

(3)「接触角の変動がほぼなくなる」とあるけれども、その定量的評価について、特許請求の範囲はいうまでもなく、明細書全体においても明確にされていない。

(4)A?Fの被記録体については、上記のとおり段落【0123】?【0126】の説明があるだけであり、C?Fの被記録体をどのようにして入手したのかは一切記載がない。C?Fの被記録体が市販されているありきたりの被記録体であるならば、実施可能性については容認できるかもしれないが、そうでないならば「記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる被記録体」の入手容易性が問題となり、請求項1,2に係る発明につき、当業者が容易に実施できる程度に記載されていないことになる。

(5)以上のとおりであるから、明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項並びに6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない。

4.理由ア(進歩性)についての判断
(1)本願発明の認定
本願発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は第1に記したとおりである。

(2)引用刊行物記載の発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-211124号公報(以下「引用例」という。)には、「液体に微粒子を分散させて記録液体とし、該記録液体を微細な開口から吐出させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録装置において、前記開口は樹脂材により形成されているとともにその開口径がΦ25μm以下であり、該樹脂材の硬さはロックウェルMスケールで65?120であることを特徴とする液体噴射記録装置。」(【請求項7】)及び
「前記微粒子は、その粒径が0.02μm?0.2μmの顔料であることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射記録装置。」(【請求項8】)等の記載がある。
引用例の【請求項8】記載の液体噴射記録装置により、被記録体に吐出された液滴(画素)は次のようなものである。
「開口径がΦ25μm以下の開口を有し、液体に粒径が0.02μm?0.2μmの顔料微粒子を分散させた記録液体を吐出する液体噴射記録装置により吐出され、被記録体に付着させた被記録体上の画素。」(以下「引用発明」という。)

(3)本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「粒径」は本願発明の「顔料微粒子の大きさDp」に相当し(これらの定義は不明確であるが、ここでは、本願発明及び引用発明に共通して、平均値等の代表値の意味に解している。)、2.でも述べたようにDpが0.2m以下であれば「Dp/Do≦0.02」との条件を満たすから、Dpの上限は本願発明と引用発明との一致点となる。
引用発明におけるDpの下限は0.02μmであり、これは本願発明の下限0.005μmよりも大きいから、0.005μm以上であることも一致点となる。
引用発明は液体噴射記録装置により吐出された「被記録体上の画素」であり、「記録液体」が「液体噴射記録ヘッドに使用する」ものであることは自明である。
「開口の大きさがФ10μm?Ф25μmである」点については、これが「被記録体上の画素」を特定できるかどうかについては、2.で述べたとおり相当な疑義がある。仮に特定できるとしても、上限は一致する。下限について引用発明は特定していないけれども、引用例に「吐出口径をH1=Φ25μm,H2=Φ20μm,H3=Φ15μm,H4=Φ10μmとした」(段落【0079】)との記載があるばかりか、開口径(本願発明の「開口の大きさ」に相当)を著しく小さくすれば、顔料微粒子による目詰まりが生じることは自明であるから、Ф10μm以上とすることは設計事項である。以下では、一致点として扱うが、相違点としても進歩性の判断には影響しない。
顔料微粒子の比重について引用例に明記はないけれども、「比重が1より大である」ことが仮に相違点としても、設計事項程度の微差にとどまるため、以下では一致点として扱うが、相違点としても進歩性の判断には影響しない。また、顔料微粒子を分散させる関係上、引用発明の「記録液体」が「顔料微粒子を分散剤とともに分散させた」ことは、引用例の「顔料を、カルボキシル基あるいはスルホン基を水溶性基として有するアニオン系高分子分散剤を用いて分散処理してなるものである。」(段落【0047】)等の記載から明らかであり、これも一致点に含める。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「開口の大きさがФ10μm?Ф25μmである、もしくは該開口が丸ではない場合は面積換算でその範囲内としたものであるような微細な開口から顔料微粒子を分散させた記録液体を吐出させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドに使用する顔料微粒子を分散させた記録液体で形成された被記録体上の画素において、前記記録液体は、溶媒中に比重が1より大である着色剤としての顔料微粒子を分散剤とともに分散させた、もしくは顔料微粒子の表面を処理して前記記録液体の溶媒中に分散させ、前記顔料微粒子の大きさをDp、微細な開口の大きさをDoとするとき、Dp/Do≦0.02となるようにして前記顔料微粒子の大きさDpの上限を決めるとともに、前記顔料微粒子の大きさDpの下限を0.005μmとした記録液体であり、該記録液体を用いて、被記録体に前記記録液体の液滴を付着させて形成する被記録体上の画素。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明が「該記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる被記録体に前記記録液体の液滴を付着させて形成する」と限定しているのに対し、引用発明はそのような限定がない点。

(4)相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
3.で述べたように、本願明細書においては、「該記録液体の液滴が付着してから100ms以内で前記記録液体の液滴の接触角の変動がほぼなくなるとともにその接触角がほぼ一定の値となる被記録体」(以下「本件被記録体」という。)であれば、画素形状が良好であり、そうでなければ不良であるとされており、また本件被記録体の実施例であるC?Fをいかにして入手するかについて記載はない。C?Fを含む本件被記録体が入手困難であるとすれば、進歩性の議論をする余地は皆無であり、記載不備の理由で問題なく拒絶されることとなるので、ここでは市販されている等の理由により入手容易であるものとして扱う。
ところで、種々の被記録体に対して現実に記録を行い、良好に記録できる被記録体を決定することは、当業者が通常試みる創作活動である。実際、接触角変動性又は画素形状良好性に着目したとはいえないかもしれないが、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-166643号公報においても、そのような実験をし、適切な被記録体を決定することが記載されている。
そして、画素形状が良好であることが、良好な記録を行う上で、当業者が通常期待する事項であることは明らかであるから、上記創作活動(実験)に当たり、評価基準を画素形状良好性とすることは設計事項というよりない。本願明細書の記載に誤りがないとすれば、画素形状が良好となる被記録体は本件被記録体であるから、実験により画素形状良好なものとして選択された被記録体に記録を行い、相違点に係る本願発明の発明特定事項に至ることは当業者にとって想到容易である。
そればかりか、前掲特開2002-166643号公報には「測定時間については、滴下直後が好ましいが、着弾による水滴の揺れが落ち着つく、0.1秒後以降が適当であるため、0.1秒後の測定とした。」(段落【0020】。下線は当審で付加した。)との記載があり、多くの被記録体において、0.1秒後(=100ms後)には水滴の揺れが落ち着くと解すべきであり、水滴の揺れが落ち着くというからには、接触角も安定していると見るべきであるから、相違点1は、単に多くの被記録体が有する特性を記述したにすぎず、そのような特性を有する被記録体を選ぶことに困難性があるわけがない。
以上のとおり、相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易であり、同発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおり、本願明細書の記載は平成14年改正前特許法36条4項並びに6項1号及び2号に規定する要件を満たしておらず、本願明細書に記載不備がないとしても本願発明が特許を受けることができないのだから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-07 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願2002-266064(P2002-266064)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
P 1 8・ 537- WZ (B41J)
P 1 8・ 536- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 尾崎 俊彦
島▲崎▼ 純一
発明の名称 被記録体上の画素  
代理人 高野 明近  

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