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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1162806
審判番号 不服2006-15849  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-24 
確定日 2007-08-15 
事件の表示 特願2003-294341「発光ダイオード層と接合されたウェーハとの間の反射性境界面」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 6986〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年3月8日に出願された特願平6-64528号(パリ条約による優先権主張:1993年3月19日、米国)の一部を平成15年8月18日に分割して新たな特許出願としたものであって、原審において、平成17年9月9日付で拒絶理由が通知され、平成18年3月20日に手続補正がなされたところ、同年4月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月23日に手続補正がなされたものである。

2.平成18年8月23日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年8月23日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正
平成18年8月23日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)のうち、請求項6についての補正は、当該補正前の請求項6が、
「【請求項6】 成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層であって、この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があり、前記成長基板が前記LED層の一方の側面から除去されてなるものと、
前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされたガリウム砒素(GaAs)を含む第2の基板と、
反射性の材料とからなり、
前記第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造。」
であったものを、
「【請求項6】 成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層と、この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があり、前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされた第2の基板と、
反射性の材料とからなり、
前記第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造。」
と補正するものである(下線は当審が引いた。以下同じ。)。

(2)判断
本件補正は、上記のうち下線を付した事項、すなわち、「前記成長基板が前記LED層の一方の側面から除去されてなるものと」および「ガリウム砒素(GaAs)を含む」を削除したものであり、これにより請求項6に係る発明は、「第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造」において、成長基板が除去されずに残置されたものを含むとともに、第2の基板の材料が何ら限定されないこととなった。
(ア)そこで、先ず、上記成長基板が除去されずに残置されたものを含む補正が、平成6年改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項に規定する、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてする補正であるか否かについて以下に検討する。

当初明細書には、「第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造」に関し、以下の事項が記載されている。
a.「【0019】 別の実施例では、LED構造を形成するLED層に導電性ミラーをウェーハ接合することができる。次にミラーの方向に放射された光線がLED構造に反射して、装置の効率が高められる。この実施例では、ミラーは吸収性の基板でも透光性基板でもよい基板によって支持される。何故ならば、光線は基板自体には到達しないからである。」
b.「【0034】 更に、図1の素子は導電率が低く、装置の電流拡散力が限定される従来形の透光性層の成長基板30を有しているものでもよい。この場合は、導電率がより高い透光性基板をウェーハ接合することが望ましい。導電率が高まると、装置の性能が向上しよう。置き換えの透光性基板が導電率の低い露出したLED層にウェーハ接合される。導電率がより高い置き換えの透光性基板を、導電率が低い透光性層の除去の前又は後にLED構造にウェーハ接合することができよう。」
c.「【0039】 さて図8を参照すると、前述のLED構造40はミラー60にウェーハ接合することができる。ミラー60はそこで下方に放射された光線、又は先に反射された内部光線を反射する。反射によって装置の光線出力が高められる。ミラー60は基板62によって好適に支持される。光線は基板に到達する前に反射されるので、基板の光学特性は関係がない。
【0040】 ミラー60と基板62はLED構造40にバイアスを加えるために電極を基板に接合できるように、導電性材料から成る必要がある。更にミラーはエピタキシャル成長又は溶着されたブラッグ・リフレクタから成っているものでもよいことに留意されたい。基板62を形成するためにシリコン、GaAs又は同様のある種の材料を使用できる。装置が高温下で、又は高電流下で動作される場合、これらの材料の幾つか、例えばSiは熱伝導率が比較的高いので、これらの材料によって装置を更に向上させることができる。」
d.さらに、上記b,c、図1,2および図8からは、「吸収性の成長基板30を除去した後、基板62がLED層にウェーハ接合される。」ことが見て取れる。

これら当初明細書および図面の記載事項には、吸収性の成長基板を残置しておくことについて明示の記載はない。さらに、上記記載事項によれば、「第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造」において、反射性の材料を第2の基板とLED層の間に置くことの趣旨が、吸収性の成長基板を残置することにより素子の発光が吸収されるのを防ぐことにあるのは明らかであるから、当該素子において吸収性の成長基板を残置しておくことは、想定の範囲外であることが分かる。
それゆえ、当初明細書には、成長基板を残置しておくことは記載されてなく、また、上記事項が、当初明細書に記載された事項から自明であるともいえないから、当該補正事項が、当初明細書に開示されていない事項をも含むものであることは明らかである。

よって、本件補正の請求項6についてした「前記成長基板が前記LED層の一方の側面から除去されてなるものと」を削除する補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、平成6年改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反するものである。

(イ)次いで、第2の基板の材料が何ら限定されないこととなった補正が、平成6年改正前特許法第17条の2第3項各号に規定する事項を目的とするものであるかについて検討すると、上記補正が、請求項の削除であるとも、限定的減縮であるとも、誤記の訂正であるとも、または明りょうでない記載の釈明に当たるともいえないから、本件補正の請求項6についてした「ガリウム砒素(GaAs)を含む」を削除する補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項および同法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)平成18年8月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成18年3月20日付手続補正の特許請求の範囲の請求項1?19に記載されたとおりのものであるところ、請求項6に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のものである。

「【請求項6】 成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層であって、この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があり、前記成長基板が前記LED層の一方の側面から除去されてなるものと、
前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされたガリウム砒素(GaAs)を含む第2の基板と、
反射性の材料とからなり、
前記第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-29374号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「この発明は面出射型半導体発光素子およびその作製方法に関する。・・・面出射型半導体発光素子では発光した多くの光が成長用基板で吸収されてしまうので、その光出力を向上させるために、・・・成長用基板をエッチング等で取り去る方法が一般的にとられている。」(1頁右下欄13行?2頁左上欄1行)

ロ.「この発明による面出射型半導体発光素子は、成長用基板上に結晶成長した発光領域を含みかつ成長用基板が除去された結晶成長層が新たなSi基板に接合されてなることを特徴とする。
好ましくは、結晶成長層とSi基板との接合面がSiとAuとの合金で形成されている。
・・・中略・・・
さらにSi基板を用いているため熱伝導性が向上し発熱の影響が少なくなる。
Si基板の接合のためにAuを用いると、 AuとSiの共晶部分が光の反射層として働くため光の取出し効率が優れたものとなる。」(3頁左上欄2?19行)

ハ.「第1図はこの発明による面出射型半導体発光素子の作製方法の一例を示しており、第2図は作製された面出射型半導体発光素子の構造および動作状態を示している。
GaAs基板1上にn-Ga0.3Al0.7Asクラッド層2、Ga0.6Al0.4As活性層3およびp-Ga0.3Al0.7Asクラッド層4を順次成長させる(第1図(A))。この構造はDH構造であるから内部発光効率が高い。
p-Ga0.3Al0.7Asクラッド層4上にオーミック電極を形成し、その最上層にはAuが露出するようにしておく。
そして、このオーミック電極上にp-Si基板5を置き、加熱することにより、Si基板5とp-Ga0.3Al0.7Asクラッド層4とを接着させる(第1図(B))。SiとAuは第2図に示すような状態図に従って合金化するからAuとSiを直接接触させながら熱処理することによりp-Ga0.3Al0.7Asクラッド層4とSi基板5を接着することができる。クラッド層4とSi基板5との接合面はAuとSiの合金化領域6となる。
最後にGaAs基板1をエッチング等により除去する(第1図(C))。」(3頁右上欄1行?同頁左下欄3行)

ニ.さらに、GaAlAs層などからなる発光領域が成長用基板であるGaAs基板1上でエピタキシャル成長されること、および上記基板と発光領域とが格子整合に適応性があることは、上記イ?ハに照らして自明の事項であり、明細書に記載されているに等しい事項である。

これらイ?ニの記載によれば、引用例1には、
「成長用基板であるGaAs基板1上にエピタキシャル成長されたGaAlAs層などからなる発光領域であって、この成長用基板が上記発光領域を製造するための格子整合と適応性があり、上記成長用基板が上記発光領域の一方の側面から除去されてなるものと、上記発光領域の一方の側面に接合されたSi基板と、反射性のAuとSiの合金化領域6とからなり、上記Si基板が、上記合金化領域6を間に置いて、上記発光領域に接合されている、面出射型半導体発光素子。」
との事項が開示されていると認めることができる(以下、「引用例1発明」という。)。

(3)対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。
a)引用例1発明の「成長用基板」は、本願発明の「成長基板」に相当し、同様に「反射性のAuとSiの合金化領域6」、「面出射型半導体発光素子」は、それぞれ「反射性の材料」、「発光ダイオード構造」に相当する。
b)引用例1発明の「GaAlAs層などからなる発光領域」は、LED層であるという意味において本願発明の「アルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層」に一致する。
c)引用例1発明の「接合」は、発光領域とSi基板とを合金化領域6を介して一体化するものであるから、本願発明の「ウェーハ・ボンディング」に相当する。
d)引用例1発明の「Si基板」は、LED層にウェーハ・ボンディングされる他の基板(第2の基板)であるという意味において本願発明の「ガリウム砒素(GaAs)を含む第2の基板」に一致する。

したがって、両者は、
「成長基板上にエピタキシャル成長されたLED層であって、この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があり、前記成長基板が前記LED層の一方の側面から除去されてなるものと、前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされた第2の基板と、反射性の材料とからなり、前記第2の基板が、前記反射性の材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造。」
である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
本願発明のLED層は「アルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)」からなるのに対し、引用例1発明のLED層は「GaAlAs層などからなる」ものであって、両者の組成が異なる点。

[相違点2]
本願発明の第2の基板は「ガリウム砒素(GaAs)を含む」基板であるのに対し、引用例1発明の第2の基板は「Si基板」である点。

(4)判断
[相違点1]について
本願明細書の記載に照らせば、アルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)からなるLED層をエピタキシャル成長せしめる成長基板はGaAs基板である(本願明細書の段落【0058】参照)であるところ、このようなGaAs基板上にアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)層をエピタキシャル成長させたLED層は本願出願前に周知である。
例えば、平成16年1月20日付拒絶の理由に引用した特開平4-212479号公報(特に段落【0023】)、特開平4-361572号公報(特に段落【0003】)などを参照されたい。

そして、引用例1発明のGaAlAs層もGaAs基板上にエピタキシャル成長されたLED層である点で本願発明のLED層と共通するのであるから、引用例1発明のGaAlAs層に代えて上記周知のAlGaInP層からなるLED層を採用することに格別困難な理由があるとはいえず、それゆえ、相違点1に係る本願発明の事項は当業者が容易になし得たことである。

[相違点2]について
引用例1発明が、成長基板にGaAs基板を用いていることからみて、GaAs基板がSi基板よりも熱伝導性が悪く、かつ、コストが高いことを無視しさえすれば、引用例1発明において、Si基板に代えて成長基板と同じGaAs基板を第2の基板として採用することに特段の阻害要因があるとはいえない。
その場合、GaAs基板が吸収性であるとしても、第2の基板とLED層の間には反射性の材料が介在されるから、これにより第2の基板としての適性に問題が生じることがないことは当業者に自明であるといえる。
よって、GaAs基板を採用することは、第2の基板として使用可能な材料の中から当業者が適宜選択し得た程度のことにすぎず、それゆえ、相違点2に係る本願発明の事項は当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の効果も、引用例1に記載された発明から予測し得ることである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-14 
結審通知日 2007-03-20 
審決日 2007-04-02 
出願番号 特願2003-294341(P2003-294341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛居島 一仁門田 かづよ  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 小牧 修
井上 博之
発明の名称 発光ダイオード層と接合されたウェーハとの間の反射性境界面  
代理人 古谷 聡  
代理人 溝部 孝彦  
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