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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1163238
審判番号 不服2004-16774  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-11 
確定日 2007-08-20 
事件の表示 特願2001-113215「看板表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月25日出願公開、特開2002-311868〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年4月11日の出願であって、平成16年7月8日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成16年8月11日付けで本件審判請求がされるとともに、同年9月10日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。


第2 平成16年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年9月10付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正前後の【請求項1】の記載は次のとおりである。なお補正前とは平成15年7月28日付け手続補正による補正後を意味する。

(補正前の請求項1)
「通信ネットワーク上に設けられた看板データ保持サーバと、
前記通信ネットワーク上に設けられ、看板を備えた複数の看板表示装置とを具備し、
前記複数の看板表示装置のそれぞれは複数の固有アドレスのそれぞれを有し、
前記看板データ保持サーバは、
広告主から依頼された広告を表す看板データと前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレスとが格納された広告用データベースと、
前記広告用データベースを参照して、前記格納された固有アドレスを読み出す読出部と、
前記看板データを予め決められた時間に前記複数の看板表示装置のうちの前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する看板データ送信部と、
前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記広告主に広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部と、
前記請求データを前記広告主に指定された出力用装置に前記通信ネットワークを介して送信する請求データ送信部とを備えた
看板表示システム。」

(補正後の請求項1)
「通信ネットワーク上に設けられた看板データ保持サーバと、
前記通信ネットワーク上に設けられ、看板を備えた複数の看板表示装置とを具備し、
前記複数の看板表示装置のそれぞれは複数の固有アドレスのそれぞれを有し、
前記看板データ保持サーバは、
広告主から依頼された広告を表す看板データと、前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレスと、前記広告主を識別する広告主識別子と、予め決められた時間とが格納された広告用データベースと、
前記広告主識別子が格納された広告請求データベースと、 前記広告用データベースを参照して、前記看板データと前記少なくとも1つの固有アドレスと前記広告主識別子と前記予め決められた時間とを読み出す読出部と、
前記看板データを前記予め決められた時間に前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する看板データ送信部と、
前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記予め決められた時間と、前記予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数とを前記広告主識別子に対応付けて前記広告請求データベースに格納する広告請求蓄積部と、 前記広告請求データベースを参照して、前記予め決められた時間と前記利用数とに応じて広告料金を決定し、前記広告主に前記広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部と、
前記請求データを前記広告主に指定された出力用装置に前記通信ネットワークを介して送信する請求データ送信部とを備えた
看板表示システム。」(以下、「補正発明」という。また下線部が本件補正により追加記載された箇所)

2.補正目的違反
本件補正は、補正前の請求項1の「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記広告主に広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部」を、「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記予め決められた時間と、前記予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数とを前記広告主識別子に対応付けて前記広告請求データベースに格納する広告請求蓄積部と、前記広告請求データベースを参照して、前記予め決められた時間と前記利用数とに応じて広告料金を決定し、前記広告主に前記広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部」と補正すること(以下、「補正事項」という。)を含むものであるが、この補正事項により、「請求データ作成部」が、「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき」というタイミングで「請求データを生成」していたものが、「請求データ作成部」については、「請求データを生成」するタイミングが限定されないものとなった。
そうすると上記補正事項は、補正前の請求項1の「請求データ作成部」で「請求データを生成」するタイミングについて、「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき」という限定をなくするものである。
したがって、本件補正は「請求データ作成部」を限定するものとは認められず、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない。
また、上記補正事項が、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれにも該当しないことも明らかである。

3.独立特許要件欠如
上記2.で説示したとおり、本件補正は補正目的違反であるが、上記2.で指摘した補正事項以外の補正事項について検討してみるに、補正前の請求項1の「広告用データベース」に格納されるデータとして、「広告主を識別する広告主識別子」と「予め決められた時間」とを加えることで、「広告用データベース」を限定し、補正前の請求項1の「読出部」が読み出すデータとして、「看板データ」と「広告主識別子」と「予め決められた時間」とを加えることで、「読出部」を限定し、さらに補正前の請求項1の「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記広告主に広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部」における「広告料金」を、「前記広告請求データベースを参照して、前記予め決められた時間と前記利用数とに応じて広告料金を決定し」と限定し、かつ当該限定事項に含まれる「広告請求データベース」について「前記広告主識別子が格納された広告請求データベース」と限定しており、上記2.で指摘した補正事項以外の補正事項については補正前の請求項1に係る発明を限定するものとなっているから、本件補正が特許請求の範囲の限定的減縮に該当するとした場合の検討を以下において行う。

(1)補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は1.に示したとおりであるので再掲しない。

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日の前である平成10年9月11日に頒布された特開平10-240205号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「広告、イベント情報、お知らせなどのコンテンツデータと前記コンテンツを表示制御する制御データを記憶し、前記コンテンツデータより表示画面および音声信号を生成し表示出力する手段と、必要に応じてコンテンツデータを請求する手段と、前記コンテンツデータの受信、コンテンツデータの請求、前記制御データの受信などの通信手段とを有する電子看板装置と、
前記電子看板装置に送出する前記コンテンツデータと制御データとを記憶し、前記記憶したコンテンツデータと制御データから指定の該データを配信する手段と、前記電子看板装置よりコンテンツデータの請求を受けた時には、前記要求に対応した該コンテンツデータを送出する手段と、前記コンテンツデータと制御データの配信、コンテンツデータの請求などを通信回線を経由して通信制御する手段とを有するサーバー装置、および、通信回線で接続された複数の前記電子看板装置、前記サーバー装置、前記コンテンツ編集装置など一括管理する手段と、前記サーバー装置内のコンテンツデータと制御データをスケジュール管理データに基づいて定時的に配信指令を行う手段と、前記電子看板装置とサーバー装置間の通信データを中継する手段と、前記電子看板装置、前記サーバー装置などを通信回線を経由して制御する手段とを有するセンター管理装置とからなるセンターシステムとで構成され、
予め作成編集されたコンテンツデータおよび制御データを前記サーバー装置内に記憶し、前記センター管理装置からの指令制御により前記サーバー装置は所定の電子看板装置に向けてコンテンツデータおよび制御データなどを配信し、前記電子看板装置は配信された該データに基づきコンテンツを表示出力および音声出力すると共に、追加のコンテンツデータが必要な場合、コンテンツデータの請求を出し、前記サーバー装置より必要なコンテンツデータを受信することを特徴とする電子看板システム。」(【請求項1】)

イ.「【本発明の技術分野】センターのサーバー装置と公衆通信回線および専用通信回線とうで結ばれた電子看板装置により、マルチメディアコンテンツを表示出力する電子看板システムに関わる。」(【0001】)

ウ.「【発明が解決しようとする課題】コンテンツデータを表示出力する電子看板装置とコンテンツを記憶したサーバー装置とを通信回線で結び、定時的且つ任意にコンテンツデータを配信するシステムの提案を目的とする。」(【0003】)

エ.「【発明の実施の形態】請求項1、2および3において、基本の実施形態を述べる。予め作成・編集されたコンテンツデータおよび制御データを前記サーバー装置200内に記憶し、前記センター管理装置220からの指令制御により前記サーバー装置は所定の電子看板装置に向けてコンテンツおよび制御データなどを配信する。 電子看板装置1は配信された該データに基づきコンテンツを表示出力すると共に、追加のコンテンツデータが必要な場合、コンテンツデータの請求を出し、センターシステム2より必要なコンテンツデータを受信する。」(【0016】)

オ.「図1において、1は通信回線でセンターシステムと接続された複数の電子看板装置、2はコンテンツデータおよび制御データを配信するセンターシステム、200はコンテンツデータおよび制御データなどを記憶し、定時的もしくは電子看板装置よりの請求に基づき該データを配信するサーバー装置、220は電子看板装置などの端末装置を管理するセンター管理装置、240は映像、音声、テキスト、CGなどの素材からコンテンツを生成するコンテンツ編集装置、5はセンターシステム内のLANなどの通信回線、4はセンターシステムと電子看板装置とを結ぶ外部の公衆通信回線もしくは専用通信回線である。 」(【0017】)

カ.「図2において、10はコンテンツデータを記憶しているコンテツデータメモリ、11は制御データを記憶してしる制御データメモリ、12はコンテンツデータを再生するコンテンツ再生装置、13はコンテンツデータより画像信号を生成する画像生成部、14は画像信号を表示出力する表示部、15はコンテンツデータより音声信号を生成する音声生成部、16は音声信号を音声出力する音声出力部である。 17は追加のコンテンツデータが必要となった場合、該データの請求を送出するコンテンツ請求部、18は表示タイミングを制御するためのカレンダおよび時刻などを生成する時計部、19は通信回線を経由した通信制御を行う通信制御部、20は利用者が操作入力する操作部と、21はコンテンツデータ、制御データなどの看板データを入力する看板データ入力部」(【0018】)

キ.「図3において、201はコンテンツデータを記憶させているコンテンツデータメモリ、202は前記コンテンツの組合わせ、表示出力手順などの制御データを記憶させている制御データメモリ、203はコンテンツデータメモリに記憶しているコンテンツを指定の電子看板装置に配信するコンテンツデータ配信部、204は制御データメモリに記憶している制御データを指定の電子看板装置に配信する制御データ配信部、・・・215はコンテンツ配信部が配信したコンテンツデータの種類、配信先の電子看板装置番号などの配信履歴を記憶させる配信履歴メモリ」(【0019】)

ク.「図4において、220はセンター管理装置、221はサーバー装置に記憶しているコンテンツデータの配送指示、電子看板装置よりのコンテンツデータ請求に対応したコンテンツデータの配送指示などの制御を行うコンテンツデータ制御部、222はサーバー装置に記憶している制御データの配送指示、緊急情報に対応した制御データの配送指示などの制御を行う制御データ制御部、223はカレンダおよび時刻データを生成する時計部、224は電子看板装置などの端末装置の動作状態を管理する端末管理部である。 225は前記端末装置の動作管理に必要な管理データを記憶させている管理データメモリ、226はコンテンツデータおよび制御データなどの配信スケジュールを記憶しているスケジュールメモリ、227は配信スケジュールに沿ってコンテンツデータ制御部および制御データ制御部などを管理制御するスケジュール管理制御部、228はセンターシステム内の通信回線を経由しての通信および通信制御を行う通信制御部、229は外部の通信回線を経由しての通信および通信制御を行う外部通信制御部、・・・240はコンテンツ編集装置、241は映像、音声、テキスト、CGなどの素材データからコンテンツを作成するコンテンツ作成部、242はコンテンツデータの記憶および再生を行うコンテンツデータファイル、243はコンテンツデータファイルのコンテンツを編集するコンテンツ編集部、244は制御データの記憶および再生を行う制御データファイル、245は制御データを作成する制御データ作成部、246は作成されたコンテンツデータおよび制御データを組合わせプレビューするコンテンツプレビュー部である。 247はコンテンツ画面を表示出力する表示部、248はコンテンツを音声出力する音声出力部、249は緊急情報のデータに基づき緊急の情報用コンテンツデータと制御データを自動生成する緊急情報データ作成部、250は通信回線を経由した通信と通信制御を行う通信制御部」(【0020】)

ケ.「図2に示す電子看板装置1は、縦方向約100cm・横方向約60cmの縦型プラズマディスプレイパネルを内蔵した表示部14、左右のスピーカによる音声出力部16、装置の上部に小型カメラ装置29、表示画面の一部にタッチパネル式の操作部20および内部には装置の制御部とが一体構造で作られており、大型店舗、コンビニエンスストア、および駅構内とうに設置されている。明け方になると看板制御部23は時計部18のデータにより電子看板装置の始動時間であることを認知し、装置全体を起動状態にする。 次に制御データメモリ11のデータによりコンテンツデータメモリ10およびコンテンツ再生装置12のデータを読出し、画像生成部13および音声生成部15に出力する。 画像生成部13は制御データに基づき表示画像信号を生成する。 前記表示画像信号は、本装置が縦長の表示部で有るため、縦横変換部25で変換され、表示部14に表示出力される。音声は音声生成部で音声信号を生成し、スピーカ(音声出力部)16より音声出力される。」(【0022】)

コ.「図3に示すセンターシステム2内のサーバー装置200では、コンテンツデータと同データを表示制御する制御データとを、コンテンツデータメモリ201と制御データメモリ202とに予め記憶させておく。 両データは、後述のセンター管理装置220からの制御指令により、コンテンツデータ配信部203および制御データ配信部204が制御指令で指定された部分データを指定された電子看板装置に、サーバー通信制御部207を経由して配信される。 両データは、定時的な配信のほか、コンテンツ請求受付部206が電子看板装置1または構内サーバー装置300よりコンテンツ請求データを受付けた時、請求のあった装置に請求データを配信する。」(【0025】)

サ.「図4に示すセンター管理装置220では、端末管理部224は、センターシステム2内部のLAN(Local Area Network)などの通信回線5 および通信制御部228、もしくはISDNなどの外部通信回線4ならびに外部通信制御部229で接続された複数の電子看板装置1を、装置毎の起動および動作停止、各種データの送信指令などの動作管理データを記憶している管理データメモリ244の管理データに基づき、リモート管理する。スジュール管理制御部227は、配信スケジュールを記憶しているスケジュールメモリ226のデータと時計部223のデータに基づき、コンテンツデータ制御部221および制御データ制御部222に、サーバー装置200内のコンテンツデータ配信部203と制御データ配信部204とに所定データの配信指令をだすよう制御する。」(【0027】)

シ.「図4に示すコンテンツ編集装置240では、コンテンツの映像、音声、テキスト、CGなどの素材データはコンテンツデータファイル243に予め記憶させている。 コンテンツ作成部241は、前記コンテンツデータファイル243のデータから商品案内、お知らせ、イベント案内、広告などのコンテンツデータを作成し、該コンテンツデータファイル243内の別のデータ区画に記憶させる。またコンテンツ編集部242は、既に部分的に出来上がっているコンテンツデータを編集して完全なコンテンツデータを作成する。 制御データ作成部245は、前記編集時の制御データおよび電子看板装置での表現効果を加えた制御データを生成し、制御データファイルに記憶させる。出来上がったコンテンツデータは、サーバー装置200に送る前にコンテンツプレビュー部246でプレビューし、表示部247に表示出力して内容確認し、音声については音声出力部248で確認される。」(【0028】)

(3)引用例1記載の発明の認定

記載ア?シからみて、引用例1には、
「センター管理装置220、サーバー装置200、コンテンツ編集装置240及びこれらの装置を接続するLANなどの通信回線5とからなるセンターシステム2が、外部の公衆通信回線若しくは専用通信回線で複数の電子看板装置1と接続された電子看板システムであって、

センター管理装置220は、サーバー装置200に記憶しているコンテンツデータの配送指示などの制御を行うコンテンツデータ制御部221、サーバー装置200に記憶している制御データの配送指示などの制御を行う制御データ制御部222、配信スケジュールに沿ってコンテンツデータ制御部221及び制御データ制御部222などを管理制御するスケジュール管理制御部227を備え、
サーバー装置200は、コンテンツデータを記憶させているコンテンツデータメモリ201、前記コンテンツデータの組合わせ、表示出力手順などの制御データを記憶させている制御データメモリ202、コンテンツデータメモリに記憶しているコンテンツデータを指定の電子看板装置に配信するコンテンツデータ配信部203、制御データメモリに記憶している制御データを指定の電子看板装置に配信する制御データ配信部204を備え、
コンテンツ編集装置240は、広告のコンテンツデータを作成するコンテンツ作成部241、コンテンツデータの記憶を行うコンテンツデータファイル243、制御データの記憶を行う制御データファイル244、制御データを作成する制御データ作成部245を備え、
電子看板装置1は、コンテンツデータを記憶しているコンテツデータメモリ10、制御データを記憶してしる制御データメモリ11、コンテンツデータより画像信号を生成する画像生成部13、画像信号を表示出力する表示部14、表示タイミングを制御するためのカレンダ及び時刻などを生成する時計部18を備え、

予め作成編集されたコンテンツデータ及び制御データを、前記サーバー装置200内のコンテンツデータメモリ201及び制御データメモリ202に記憶し、センター管理装置220のスケジュール管理制御部227によって管理されるコンテンツデータ制御部221及び制御データ制御部222が、サーバー装置200内のコンテンツデータ配信部203及び制御データ配信部204に、前記記憶された所定のコンテンツデータ及び制御データを指定された電子看板装置1に向けて配信指令を出すよう制御し、前記電子看板装置1は、配信され制御データメモリ11に記憶されたの制御データにより、同じく配信されコンテンツデータメモリ10に記憶されたコンテンツデータを読出し、表示タイミングを制御してコンテンツデータを表示出力する電子看板システム。」(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

(4)補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。

引用発明1の「外部の公衆通信回線もしくは専用通信回線」、「配信」は、それぞれ補正発明の「通信ネットワーク」、「送信」に相当する。
また、一般的にデータをメモリに、保持すること、記憶すること、格納することはいずれも同じことを意味する。
また、引用発明1の「複数の電子看板装置1」は、通信ネットワークを介して送られてきた看板データを表示する点において、補正発明の「看板を備えた複数の看板表示装置」と共通する。
また、引用発明1の「広告のコンテンツデータ」は、通信ネットワークに接続された看板表示装置によって表示される広告を表す看板データである。
また、引用発明1の「コンテンツデータの組合わせ、表示出力手順などの制御データ」は、看板データを表示させるために必要な制御データである限度において、補正発明の「予め決められた時間」と共通する(なお、「予め決められた時間」という表現だけではデータであるか否か不明ではあるが、補正発明において「広告用データベース」に格納されていることが特定されていることからみて、補正発明においてはデータとして取り扱われていると解することができる)。
また、引用発明1においては、「センターシステム2が、外部の公衆通信回線もしくは専用通信回線で複数の電子看板装置1と接続され」ているのだから、「センターシステム2」及び「複数の電子看板装置1」が通信ネットワーク上に設けられていることは明らかである。
また、引用発明1の「センターシステム2」の一構成要素である「サーバ装置200」が備える「コンテンツデータ配信部203」は、広告のコンテンツデータを指定の「電子看板装置1」に配信するのだから、広告を表す看板データを指定の「電子看板装置1」に通信ネットワークを介して送信する点において、補正発明の「看板データ送信部」と共通する。
また、複数種類のデータを複数の記憶手段に区分けして記憶させるか、1つの記憶手段の異なる領域に区分けして記憶させるかは、記憶手段の記憶容量に応じて適宜設計されることであるところ、引用発明1の「サーバ装置200」が備える「コンテンツデータメモリ201」、「制御データメモリ202」が、それぞれ電子看板装置に供給するデータである「広告を表す看板データ」、「広告を表す看板データを表示させるために必要な制御データ」を記憶するとの記載は、実体としては引用発明1の「サーバ装置200」が備える1つの記憶手段の異なる記憶領域に、前記したそれぞれのデータが記憶されていると解するのが自然である。そしてこの場合、当該1つの記憶手段は、広告を表す看板データ及び広告を表す看板データを表示させるために必要な制御データを記憶しているデータベースである限度において、補正発明の「広告用データベース」と共通する。
また、前記広告のコンテンツデータは上述のごとく「センターシステム2」の外部にある「電子表示装置1」に送信されるのだから、「サーバ装置200」が広告のコンテンツデータを読み出す読出部を有することも明らかである。
そしてこれらのことより、引用発明1の「センターシステム2」と補正発明の「看板データ保持サーバ」とはいずれも、看板表示装置とネットワークを介して接続された看板表示システムの中では、看板表示装置に対して看板データを供給する看板データ供給源として機能しているといえる。

したがって、補正発明と引用発明1とは、
「 通信ネットワーク上に設けられ、看板を備えた複数の看板表示装置と、
前記通信ネットワーク上に設けられ、前記看板表示装置に対して看板データを供給する看板データ供給源とを具備し、
前記看板データ供給源は、
広告を表す看板データと、該看板データを表示させるために必要な制御データとが格納された広告用データベースと、
前記広告用データベースを参照して、前記看板データと前記制御データとを読み出す読出部と、
前記看板データを指定された看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する看板データ送信部とを備えた
看板表示システム。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

<相違点1>
補正発明では、「複数の看板表示装置のそれぞれは複数の固有アドレスのそれぞれを有し」ているのに対し、引用発明1では、看板表示装置が固有アドレスを有することを特定していない点。

<相違点2>
広告を表す看板データが、補正発明では、「広告主から依頼された」データであるのに対して、引用発明1ではこのような構成を備えていない点。

<相違点3>
広告用データベースが格納し、当該広告用データベースを参照して読出部が読み出すデータが、補正発明では、「広告主から依頼された広告を表す看板データと、前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレスと、前記広告主を識別する広告主識別子と、予め決められた時間と」であるのに対して、引用発明1では「看板データである広告のコンテンツデータと、当該看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データ」である点。

<相違点4>
看板データ送信部が、補正発明では「前記看板データを前記予め決められた時間に前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する」のに対し、引用発明1では、看板データである広告のコンテンツデータと、当該看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データとを、指定の看板表示装置に送信する点。

<相違点5>
看板データ供給源が、補正発明では「前記広告主識別子が格納された広告請求データベース」と「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記予め決められた時間と、前記予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数とを前記広告主識別子に対応付けて前記広告請求データベースに格納する広告請求蓄積部と、
前記広告請求データベースを参照して、前記予め決められた時間と前記利用数とに応じて広告料金を決定し、前記広告主に前記広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部と、
前記請求データを前記広告主に指定された出力用装置に前記通信ネットワークを介して送信する請求データ送信部」とを備えているのに対して、引用発明1では、そのような構成を備えていない点。

(5)相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断
<相違点1について>
引用発明1では、サーバー装置200が、広告を指定の電子看板装置に配信すること、及び複数の電子看板装置が通信ネットワーク上に設けられることが特定されており、サーバー装置200が、通信ネットワーク上に設けられた複数の電子看板装置の中から、特定の電子看板装置を指定する構成となっているが、通信ネットワーク上において、特定の通信相手を指定するには、一般的には固有アドレスを使って指定するのであり、このように固有アドレスを使わずに指定することは想定し難い。
したがって引用発明1においても、特定の電子看板装置をその固有アドレスで指定しているはずであり、相違点1は設計事項である。

<相違点4について>
引用発明1では、看板データである広告のコンテンツデータと、当該看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データとを、指定の電子看板装置に配信スケジュールに従って配信し、当該電子看板装置では前記制御データに基づいて表示タイミングを制御する構成となっている。そしてこの表示タイミングの制御では、当然表示時間を制御しているはずである。
補正発明では、「予め決められた時間に表示されたとき」とあるように、「予め決められた時間」は表示されるタイミングをも示すものと解され、看板データ保持サーバが看板データを送信する「予め決められた時間」のタイミングで、看板表示装置で看板データが表示されることとなっている。
そうすると、相違点4は、表示装置を備えた端末装置で、外部のデータベースに格納された表示データを通信ネットワークを介して受信して表示するに際し、表示データとその表示制御データとをまとめてダウンロードした後、前記端末装置で前記表示制御データに基づいた表示制御をする引用発明1の表示態様と、表示データをダウンロードと並行して表示する所謂ストリーミング表示のごとき補正発明1の表示態様との差異に基づいたものであるといえる。
例えばインターネットを介して外部のデータベースから取得した動画データをパソコン等の端末で表示する態様としては、ストリーミング表示が周知であるところ、上述のごとく引用発明1の看板データが、看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データに基づいて、その表示タイミングが制御されることからみて、複数の看板データをそれぞれ表示タイミングを制御して表示する場合が普通に想起され、この場合、複数の表示データを所定のタイミングで表示制御するという意味において上記動画データと同質なのだから、引用発明1の看板データを上記ストリーミング表示のごとき表示態様とすることは、技術的に可能である。
してみるに、引用発明1において、看板データ供給源から通信ネットワークを介して受信された看板データを電子看板装置で表示させる表示態様としては、上記引用発明1に係る表示態様も、上記ストリーミング表示のごとき表示態様も技術的に選択可能である以上、いずれの表示態様を選択するかは、看板表示システムを設計する上で当業者が必要に応じて決定し得る程度のことであると認められ、相違点4は想到容易である。

<相違点2、3、5について>
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-67036号公報(以下「引用例2」という。)には、「図1(イ)は実施の形態(1)に係る情報端末広告システムの概略構成を示すブロック図であり、インターネットを利用して端末側に情報提供のサービスをするWWWの情報提供システムに本発明を適用した例を示している。」(【0025】)、「図1(イ)に示す情報端末広告システム10は、情報提供側であるサーバ11が提供サービスするコンテンツを、通信網の一つであるインターネット(ネットワーク)12を利用して端末13側が取得し表示する際に、端末13側の利用者に向けて広告を行うものである。」(【0026】)、「また上記サーバ11には、音声広告の広告主に対して行う端末13との接続状況についての報告(接続報告)を蓄積するメモリ14が接続されている。メモリ14に蓄積された接続報告は、広告主に対して広告料金を請求するためのデータとして使用されるものとなる。」(【0027】)、「しかも、情報提供側のメモリ14に蓄積された接続報告を広告主に対する広告料金請求データとして使用でき、広告主から広告料金を徴収できるため、端末13側の利用者から直接料金を徴収することなく広告料金を確実に回収することができる利点がある。」(【0032】)、「このような情報端末広告システムによれば、端末側の利用者が音声広告を聞かないと情報を読み出して表示することができないので、広告主側にとってより好ましい広告システムが実現されることになる。」(【0034】)と記載されている。
この記載事項によると、「端末側の利用者が音声広告を聞かないと情報を読み出して表示することができない」のだから、「端末13との接続状況についての報告(接続報告)」は「広告の提供状況についての報告」と等価であり、引用例2には、「通信ネットワークを介して広告を提供するシステムにおいて、広告の提供状況についての報告に基づいて、広告主に対する広告料金を請求する」点が記載されている。
また顧客から広告表示の注文を受けて、複数の看板表示装置に広告を表示させるシステムは周知である(特開平07-168544号公報(以下、「周知文献1」という。)、国際公開第00/65576号パンフレット(以下、「周知文献2」という。)を参照されたい)。
よって、引用例2に記載の事項によれば、広告主に対する広告料金を請求するのだから、広告主は広告を提供するシステムの外部の顧客であることは明らかであるし、また周知文献1,2に記載の事項によれば、顧客から広告表示の注文を受けるのだから、ここにおいても広告主は広告を提供するシステムの外部の顧客であることは明らかである。

そうしてみると、引用発明1では、大型店舗、コンビニエンスストア、および駅構内等に設置された電子看板装置で広告を表示させている([第2[理由]3.(2)記載ケ])のだから、このようなインフラを商業的に利用しようと考えることは普通に想起する程度のことであり、この場合に上記引用例2や周知文献1,2に開示されたように、外部の顧客から広告の注文を受けることができるように引用発明1の看板表示システムを設計することは設計事項である。
したがって、相違点2は、普通に想起しうる商業的な発想に起因した設計事項にすぎない。

さて、外部の顧客である広告主が広告の注文を出すにあたっては、広告に期待される効果を考慮して、具体的な広告の出し方を注文内容に含ませるはずである。
そこでまず引用発明1のような複数の電子看板装置を備えた電子看板システムにおいて広告がどのように表示されるのかを考察する。例えば特定の日に新商品が発売されるという内容の広告を行う場合を想定すると、同一内容の広告ポスターを複数部刷り、特定の期間だけ複数の場所に当該広告ポスターを貼ることで、広告内容を適時に広く世間に知らしめるようにするというのが一般的である。そうであれば、引用発明1の電子看板システムであっても、何らかの予め決められた時間に複数の電子看板装置で同一内容の広告を表示させるように設定することは、当業者が適宜行いうる設計事項といえる。
そうすると、引用発明1に係る電子看板システムにおける広告表示に期待される効果は、広告の内容を別にすれば、広告が表示される時間的要素と空間的要素の両方で量ることができるから、広告を注文する場合、上記注文内容に、電子看板装置での広告を表す看板データの表示時間、同一内容の広告を表す看板データが表示される電子看板装置の数、及びこれら電子看板装置を指定する情報を含ませておくことは普通に想起される。
してみるに、上記のごとく引用発明1の広告用データベースに格納されている「広告を表す看板データ」が、広告主から依頼されたデータであれば、当該「広告を表す看板データ」は、広告の注文内容の一部を構成するのだから、広告用データベースに共に格納されている「看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データ」の「表示出力手順」に、同じく広告の注文内容として「広告を表す看板データの表示時間」を含ませておく程度のことは設計事項である。
同じ理由により、「電子看板装置を指定する情報」を、「広告を表す看板データ」と共に広告用データベースに格納させておくことも設計事項である。ここで<相違点1について>において述べたように、電子看板装置は固有アドレスを使って指定されるのだから、上記「電子看板装置を指定する情報」は、看板データを表示させる電子看板装置を複数指定する場合には、これら指定した電子看板装置の全ての固有アドレスということになる。つまり電子看板装置を1つしか指定しない場合も含めて、「複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」ということになる。

さて上記周知文献1,2には、いずれにも「通信回線を介して複数の広告主から広告表示の注文を受ける」ことが記載されており(周知文献1:「子局1は、同図(C)ないし(D)に示すように、電話回線などモデムを介した通信回路網によって親局2を経て端末装置3と接続し、親局2に表示内容作成支援ソフト(以下、作成ソフトという)4と表示内容掲示支援ソフト(以下、掲示ソフトという)5を配設して、端末装置3からの利用を可能にしている。」(【0015】)、「図2において、特定子局1に広告等をしたい表示予約利用者は、システム10に登録し、ソフト5によってシステム10運用者に納入した予納金の確認をして表示予約の経済的裏付けを示す。その後、作成控えを作る自己の記録媒体nを用意し、端末装置3から表示予約情報mを入力する。」(【0018】)、【図1】、周知文献2:「A customer of system 20,for example an in-house or agency representative of a consumer products company,may access a central information processing station of the system via the Internet through a Customer Interface Web Server40.」(第6頁第21行?第24行)(当審訳:例えば、顧客製品に関する社内または代理店の代表者のようなシステム20の顧客は、顧客インターフェースウェブサーバー40を通してインターネットを介して、該システムの中央情報処理局にアクセスすることができる。)、「Next,the customer transmits the advertising content on-line through the Internet,・・・ for receipt by the system's Video & Still Image Review and Input module 70.」(第6頁第32行?第7頁第3行)(当審訳:次に、顧客は、システムのビデオおよび静止画像再検討および入力モジュール(Video & Still Image Review and Input module)70による受信のために、インターネット、直通の電話回線、または高速接続線(例えば、ISDN、または、他の適切な高速情報転送回線)を通して、広告コンテンツをオンラインで送信する。))、この点も周知である。
また「広告表示の注文」である以上、当然広告主には広告表示料金を請求するのであるが(周知文献1には、「なお利用者が負担するコストcは、上記したソフト使用料、広告等表示料および通信回線使用料である。」(【0023】)、周知文献2には、「Advertising Cost:$X」(第8頁最下行)と記載されている。)、ここにおいて、複数のユーザに対するサービスの提供状況を各ユーザ単位で逐次記録しておき、各ユーザに対して請求書を発行する時点で、前記記録されている各ユーザ単位でのサービスの提供状況を抽出して請求書の発行に利用することは、商取引における請求書発行形態としては周知(特開平09-007020号公報(「一方、ホストコンピュータ20側では、定期的に(たとえば、毎月末ごとに)、手順として、請求書の発行処理や銀行口座からの引落処理を行う。すなわち、その月内に行われた精算処理での利用料金を累積し、その総額について、個々の利用者に対して請求書を発行して送付する処理を行ったり、口座引落契約を行っている利用者に対しては、口座引落処理を行ったりすることになる。」(【0049】)、「すなわち、本システムでは、図3の手順において、通信路21を介して、各端末装置10内に記録されている利用履歴がホストコンピュータ20へ送信される。そこで、ホストコンピュータ20内において、各端末装置ごとの利用履歴を蓄積しておくようにすれば、利用者から、特定のソフトウエアに対する購入要求があったときに、ホストコンピュータ20内に蓄積されている利用履歴に基く所定の演算により販売価格を決定する処理を行い、この販売価格を利用者に対して提示することができる。」(【0068】))、特開平10-214130号公報(「利用識別子は、サービス(番組)を利用する毎に設定され、利用者情報と共に、情報案内装置40に蓄積される。」(【0036】)、「情報案内装置40において、処理された課金結果を利用者毎に蓄積しておき、利用者に対して任意のタイミングで請求処理を行う。この方法は、予め予見可能な課金について有効である。」(【0041】))、特開平11-066182号公報(「課金情報を利用者毎に蓄積する課金情報データベース(DB)112を有している。課金情報DB112に蓄積された課金情報は、後述の請求処理サーバ11において利用される。」(【0026】)、「次に、請求処理サーバ11について説明する。請求処理サーバ11は、課金処理サーバ10において決定された利用者毎の課金額の累計額を当該利用者の公衆通信回線使用額と統合して請求処理を行う。」(【0032】))等参照)である。

そうすると、引用発明1において上記周知例に示されているように「複数の広告主から広告表示の注文を受ける」場合、上記商取引における周知の請求書発行形態を参照して、請求書の明細を構成する情報を広告主毎に分けて管理すること、つまり広告主毎にその注文内容である広告情報を明確に区分けして記憶しておくこと、及び広告主毎に広告料金を算出するために、上述した広告料金の決定に寄与するデータを広告主毎に記憶しておくことは設計事項といえる。
具体的には、上述した広告用データベースに格納される「広告を表す看板データ」、「広告を表す看板データの表示時間」、「複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」からなる広告の注文内容を広告主毎に整理するために、これらのデータに付随させて広告主を識別する識別情報を格納することは設計事項である。
そしてこのとき広告主毎に請求書を発行するために、これら格納されたデータを読み出したり、通信ネットワーク上に設けられた電子看板装置に対して送信するために、「広告を表す看板データ」、「広告を表す看板データの表示時間」、「複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」を読み出すことも設計事項である。
したがって以上のことより、相違点3は設計事項といえる。
また一方、ここで広告表示の注文の対価として当然に生じる広告主に請求する広告料金は、様々な要因に基づく商業上の取り決めにより決定されるのであり、一意的に特定することはできないが、上記広告表示に期待される効果の程度がその決定要因の1つであることは明らかであり、上述したように、表示に使用する看板表示装置の数、表示時間は、広告表示に期待される効果の程度を量る指標となるから、「広告主への請求書の一部をなす広告料金」を決定するために必要とされるデータということがいえ、これらのデータは広告請求データベースに格納されているということができる。そしてこれらのデータから広告料金を算出するための具体的手法として、上述したように特定の期間だけ同一内容の広告を表す看板データを複数の電子看板装置に表示させる場合に、当該広告を表す看板データが、「同じ表示時間にどれだけの数の電子看板装置で表示されたか」という観点でデータを整理することはたやすく、広告請求データベースに「表示時間」及び「同じ表示時間に看板データが表示された電子看板装置の数」を格納することは設計事項である。
してみるに上述したように、広告主毎に広告料金を算出するために、広告料金の決定に寄与するデータを広告主毎に記憶しておくことは設計事項であるから、上記「広告請求データベース」に、広告主を識別する識別情報に対応させて「予め決められた時間」、「予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数」を格納することは設計事項である。

このとき、補正発明の「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記予め決められた時間と、前記予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数とを前記広告主識別子に対応付けて前記広告請求データベースに格納する広告請求蓄積部」からは、看板データが表示される都度、「前記予め決められた時間と、前記予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数とを前記広告主識別子に対応付けて前記広告請求データベースに格納する」ものと解されるが、引用発明1において「広告主から広告表示の注文を受ける」場合、広告料金は広告を表す看板データが表示されることによって発生するということがいえるから、広告を表す看板データが表示されたときに「表示時間」及び「同じ表示時間に看板データが表示された電子看板装置の数」を「広告請求データベース」に格納するように構成する程度のことは設計事項である。
そして、このように「広告請求データベース」に「広告料金の決定に寄与するデータ」が格納されれば、その後適切なタイミングで当該データを参照して広告主への請求書を作成するはずである。
また上記周知文献1,2に開示された広告表示料金の請求手段に関しては、広告主が通信回線によりデータを送受信できるようになっているのだから、所謂インターネット商取引と同様に、通信回線を介して広告主に請求書を送信する態様も普通に想起される(例えば周知文献2にも、「Module 190 also produces bills that may be transmitted by phone lines for a debit payment such as a direct bank draft,or other suitable payment mode.」(第9頁第11行?第13行)(当審訳:モジュール190は、さらに、直接的な銀行為替手形のようなデビット支払いまたは他の適切な支払い様式のために電話回線により送信することができる請求書を発生させる。)と記載されている。)。
つまり以上のことより、相違点5は設計事項である。

したがって、上述のごとく相違点2、3、5は、上記引用例2並びに周知文献1,2に記載された周知の事項からみて想到容易である。

<補正発明の独立特許要件の判断>
相違点1-5に係る補正発明の構成は、設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできないから、補正発明は引用発明1及び引用例2記載の技術、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の規定に違反しているか、または同法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定にも違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定
本件補正は当審において却下されたから、平成15年7月28日付け手続補正により補正された明細書及び図面に基づいて審理する。

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記平成15年7月28日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は「第2[理由]1.」において「(補正前の請求項1)」として示したとおりであるから、ここでは再掲しない。

2.本願発明の進歩性の判断
[第2[理由]2.]で示したように、補正発明では、「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき」というタイミングで、「広告請求蓄積部」が「前記予め決められた時間と、前記予め決められた時間に前記看板データが表示された看板表示装置の数に応じた利用数とを前記広告主識別子に対応付けて前記広告請求データベースに格納する」ものであったのが、本願発明は、上記タイミングで、「請求データ作成部」が「前記広告主に広告料金を請求するための請求データを生成する」ものとなっており、この点につき両者は相違するので本願発明の進歩性につき以下に検討する。

まず本願発明と引用発明1とを対比するに、両者は、
「 通信ネットワーク上に設けられた看板を備えた複数の看板表示装置と、
前記通信ネットワーク上に設けられ、前記看板表示装置に対して看板データを供給する看板データ供給源とを具備し、
前記看板データ供給源は、
広告を表す看板データが格納された広告用データベースと、
前記広告用データベースを参照して、前記看板データを読み出す読出部と、
前記看板データを指定された看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する看板データ送信部とを備えた
看板表示システム。」
である点で一致し、「第2[理由]3.(4)」で述べた相違点1、2及び次の相違点3’-5’において相違する(相違点1、2については「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。

<相違点3’>
本願発明では、広告用データベースに「広告主から依頼された広告を表す看板データ」と共に「前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」をも格納し、かつ読出部によって「前記格納された固有アドレス」を読み出しているのに対して、引用発明1では、広告用データベースが格納し、当該広告用データベースを参照して読出部が読み出すデータが「看板データである広告のコンテンツデータと、当該看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データ」である点。

<相違点4’>
看板データ送信部が、本願発明では「前記看板データを予め決められた時間に前記複数の看板表示装置のうちの前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する」のに対し、引用発明1では、看板データである広告のコンテンツデータと、当該看板データの組み合わせ、表示出力手順などの制御データとを、指定の看板表示装置に送信する点。

<相違点5’>
看板データ供給源が、本願発明では「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記広告主に広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部と、
前記請求データを前記広告主に指定された出力用装置に前記通信ネットワークを介して送信する請求データ送信部」を備えているのに対して、引用発明1では、そのような構成を備えていない点。

相違点1、2については「第2[理由]3.(5)」で述べた理由により、当業者にとって想到容易である。

相違点3’において、広告用データベースに「広告主から依頼された広告を表す看板データ」と共に「前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」をも格納する点については、「第2[理由]3.(5)」の<相違点2、3,5について>の部分においてした『「広告を表す看板データ」、「広告を表す看板データの表示時間」、「複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」を広告用データベースに格納するように構成することは設計事項である。』という趣旨の判断が当てはまる。
また、広告用データベースを参照して、「前記格納された固有アドレス」を読み出す点については、「第2[理由]3.(5)」の<相違点2、3,5について>の部分においてした『通信ネットワーク上に設けられた電子看板装置に対して送信するために、「広告を表す看板データ」、「広告を表す看板データの表示時間」、「複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」を読み出すことも設計事項である。』という趣旨の判断が当てはまる。
したがって、相違点3’に係る本願発明の構成は、当業者にとって想到容易である。

相違点4’については、「第2[理由]3.(4)」における相違点4と比較して、「看板データ送信部」が、前記相違点4においては「前記看板データを前記予め決められた時間に前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する」としているのに対して、前記相違点4’においては、「前記看板データを予め決められた時間に前記複数の看板表示装置のうちの前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置に前記通信ネットワークを介して送信する」としている点で名目上相違するが、前記相違点4の「前記読み出された固有アドレス」は、「読出部」で読み出される「前記少なくとも1つの固有アドレス」を受けており、かつ当該「前記複数の少なくとも1つの固有アドレス」は、「広告用データベース」に格納される「前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」を受けており、かつ当該「前記複数の固有アドレスのうちの少なくとも1つの固有アドレス」は、「前記複数の看板表示装置のそれぞれは複数の固有アドレスのそれぞれを有し」という前提の下で規定された表現であるから、前記相違点4の「前記読み出された固有アドレス」と、前記相違点4’の「前記複数の看板表示装置のうちの前記読み出された固有アドレス」との記載が実質的に同じことを示すことは明らかであり、前記相違点4と前記相違点4’とは実質的には相違しない。
したがって、相違点4’については、「第2[理由]3.(5)」の<相違点4について>の部分における判断が当てはまり、当業者にとって想到容易である。

相違点5’について以下に検討する。
本願発明の「前記読み出された固有アドレスに対応する看板表示装置の看板に前記看板データが前記予め決められた時間に表示されたとき、前記広告主に広告料金を請求するための請求データを生成する請求データ作成部」(以下、本願発明の発明特定事項1という。)からみて、本願発明は、看板データが予め決められた時間に表示される都度、「請求データを生成する」ものと解されるが、広告主への請求書の生成は、当該請求書を広告主に送付することを前提としてなされるものであるところ、広告主に対してどのタイミングで請求書を送付するかは、商取引上の取り決めに過ぎないのだから、上記本願発明の発明特定事項1が示す「請求データを生成する」タイミングは、商取引上の請求データの送付タイミングの取り決めに基づいて設定される程度のことである。
また、本願発明の「前記請求データを前記広告主に指定された出力用装置に前記通信ネットワークを介して送信する請求データ送信部」については、「第2[理由]3(5)」における<相違点2、3,5について>の部分で示した『上記周知文献1,2に開示された広告表示料金の請求手段に関しては、広告主が通信回線によりデータを送受信できるようになっているのだから、所謂インターネット商取引と同様に、通信回線を介して広告主に請求書を送信する態様も普通に想起される。』という判断が当てはまり、当業者にとって想到容易である。
したがって、相違点5’については、当業者にとって想到容易である。

また、相違点1、2、3’-5’に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-22 
結審通知日 2007-06-25 
審決日 2007-07-06 
出願番号 特願2001-113215(P2001-113215)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 572- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 名取 乾治
島▲崎▼ 純一
発明の名称 看板表示システム  
代理人 工藤 実  

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