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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16M
管理番号 1163681
審判番号 不服2004-15280  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-22 
確定日 2007-09-06 
事件の表示 平成 6年特許願第338112号「三脚」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月 5日出願公開、特開平 7-233898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成6年12月26日(優先権主張平成5年12月27日)の出願であって、平成16年6月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年7月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成16年8月18日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年8月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成16年8月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 少なくとも周方向の領域に球面部を有すると共に、機器を取付けるための取付部位を有する球面体と、この球面体を前記球面部において傾斜変位可能に収容するリング状収容部材と、前記球面体を前記収容部材に固定するための固定手段と、前記収容部材を支持する脚部とを備えている三脚であって、前記取付部位が、筒部を介して球面体の頭部に形成されており、収容部材が、球面体に対する受面を有するリング体で形成されており、3点支持により球面体をリング状収容部材に固定するための手段が、下記(1)又は(2)のいずれかである三脚。
(1)収容部材の周方向に略等間隔に設けられた固定手段であり、この固定手段が、前記リング状収容部材の内壁に形成された三対のガイドの間に配設され、かつ球面体の球面部に対応する曲面又は湾曲面が形成されているとともに、前記ガイドに沿って収容部材の内方へ進退可能な固定部材と、前記収容部材に設けられ、押圧により前記固定部材を球面体に押圧するための押圧手段とで構成されている。
(2)球面体に対する受面が形成された2つの固定受部と、1つの固定手段とで構成されており、この固定手段が、前記リング状収容部材の内壁に形成された一対のガイドの間に配設され、かつ球面体の球面部に対応する曲面又は湾曲面が形成されているとともに、前記ガイドに沿って収容部材の内方へ進退可能な固定部材と、前記収容部材に設けられ、押圧により前記固定部材を球面体に押圧するための押圧手段とで構成されている。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「収容部材」を「リング状収容部材」とすると共に、「球面体に対する受面を有するリング体で形成されており」との限定を付加して特定し、「取付部位」について「筒部を介して球面体の頭部に形成されており」との限定を付加して特定し、「固定手段」について「リング状収容部材の内壁に形成された三対のガイドの間に配設され、かつ球面体の球面部に対応する曲面又は湾曲面が形成されているとともに、前記ガイドに沿って収容部材の内方へ進退可能」との限定を付加して特定したものであって、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法(以下「旧法」という。)第17条の2第5項において準用する旧法第126条第5項の規定に適合するか)について以下で検討する。

2.引用例とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭57-98292号(実開昭59-3308号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、「測量用三脚」に関して、図面とともに次のイ?ニの事項が記載されている。
イ 「脚支持体1の上面中央部にはねじ筒10が起立し、このねじ筒の内周下部は球面部11に形成され、この球面部11に連続する上部は上拡がりのテーパ孔部12になっている。
球面部11には球受13が嵌め合わされ、一方テーパ孔部12には加圧リング14が嵌め合わされ、この加圧リング14の外周はテーパ孔部12の内周に接触するテーパ面になり、その上部はねじ筒10の上端より上方に突出している。」(第3頁第19行?第4頁第7行)
ロ 「球受13および加圧リング14の内側には器具支持板15の下面に形成した球状突起16が嵌め合わされ、その球状突起16の外周が球受13および加圧リング14の内周に接触している。」(第4頁第11行?同第14行)
ハ 「脚支持体1のねじ筒10にねじ合わせた締付リング20の内周には押圧用フランジ21が形成してあり、上記締付リング20を回動してこの締付リング20を下方向に移動させると、上記のフランジ21が加圧リング14の上端を加圧するようになっている。」(第4頁第20行?第5頁第5行)
ニ 「実施例で示す三脚は上記の構造から成り、この三脚は、各脚体3を開脚して地面より起立させたのち、器具支持板15の上面に測量機器を載置し、・・・測量の準備とするものである。
上記のような準備作業ののち、測量を開始するが、その測量前に測量機器を水平に保持する必要がある。
上記測量機器の水平調整は、・・・器具支持板15を脚支持体1ら対して傾動させるようにし、・・・器具支持板15を傾動調整した位置で固定することができる。」(第5頁第6行?第6頁第2行)
また、第2図において、球状突起16は、球面形状部分を有するとともに、該球面形状部分の上端には、器具支持板15に係合する突起が上方に向かって延設されているのが見て取れる。
よって、上記各記載事項を総合すると、引用例には、
「少なくとも周方向の領域に球面部を有すると共に、機器を取付けるための器具支持板15を有する球状突起16と、この球状突起16を前記球面部において傾斜変位可能に収容する脚支持体1と、前記球状突起16を前記脚支持体1に固定するための締付リング20と、前記脚支持体1を支持する脚体3とを備えている三脚であって、前記器具支持板15が、突起を介して球状突起16の頭部に形成されており、脚支持体1が、球状突起16に対する球面部11を有する脚支持体1で形成されている三脚。」の発明が記載されていると認められる。

3.発明の対比
(1)本願補正発明の構成事項と引用例に記載の発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「器具支持板15」は本願補正発明の「取付部位」に相当し、以下同様に、「球状突起16」、「脚体3」、「締付リング20」は、それぞれ「球面体」、「脚部」、「固定手段」に相当する。
そして、引用発明の「脚支持体1」は、その上面中央部にはねじ筒10が起立し、このねじ筒10の内周にはテーパ孔部12が形成され、該テーパ孔部12には加圧リング14が嵌め合わされるものである(記載事項イ)上、ねじ筒10の外側には締付リング20がねじ合わされている(記載事項ハ)。よって、脚支持体1のうち、少なくともねじ筒10の部分においては、内外からリングが接触していることから、リング状の形状であるといえる。また、ねじ筒10には、球状突起16が収容されていることもあわせて勘案すると、引用発明の「脚支持体1」は、本願補正発明の「リング状収容部材(リング体)」に相当するといえる。
また、引用発明における、球状突起16の球面形状部分の上端に延設された、器具支持板15に係合する突起は、器具支持板15と球状突起16とを連接するものであることが明白であるので、本願補正発明の「筒部」に相当するといえる。
また、引用発明における「球面部11」は、球受13を介して球状突起16を受けるものである(記載事項イ、ロ)ので、本願補正発明の「受面」に相当するものであるといえる。
(2)以上の対比から、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
[一致点]「少なくとも周方向の領域に球面部を有すると共に、機器を取付けるための取付部位を有する球面体と、この球面体を前記球面部において傾斜変位可能に収容するリング状収容部材と、前記球面体を前記収容部材に固定するための固定手段と、前記収容部材を支持する脚部とを備えている三脚であって、前記取付部位が、筒部を介して球面体の頭部に形成されており、収容部材が、球面体に対する受面を有するリング体で形成されている三脚。」である点。
[相違点]球面体の固定に関して、本願補正発明では、3点支持により固定し、その固定手段の選択事項の1つとして「(2)球面体に対する受面が形成された2つの固定受部と、1つの固定手段とで構成されており、この固定手段が、リング状収容部材の内壁に形成された一対のガイドの間に配設され、かつ球面体の球面部に対応する曲面又は湾曲面が形成されているとともに、前記ガイドに沿って収容部材の内方へ進退可能な固定部材と、前記収容部材に設けられ、押圧により前記固定部材を球面体に押圧するための押圧手段とで構成されている」との限定事項があるのに対して、引用発明の固定手段は締付リングである点。

4.当審の判断
(1)相違点について
球状の可動部材を固定するに当たって3点支持すること、および、該3点の支持箇所を、2つの固定受部と、1つの固定手段とで構成することは、周知の事項である(周知例:実公昭27-659号公報)。また、固定手段を、一対のガイドの間に配設され、かつ球面体の球面部に対応する曲面又は湾曲面が形成されているとともに、前記ガイドに沿って収容部材の内方へ進退可能な固定部材と、押圧により前記固定部材を球面体に押圧するための押圧手段とで構成することも、周知の事項である(周知例:実願平2-2043号(実開平3-93616号)のマイクロフィルム、実願昭58-159559号(実開昭60-67418号)のマイクロフィルム、実願平4-40178号(実開平5-94600号)のCD-ROM)。そして、引用発明において該周知の事項を採用することに、格別の創意を要するとは言えないので、引用発明の固定手段を、上記相違点において指摘した本願補正発明の構成とすることに、困難性は認められない。
(2)作用効果等について
上記の相違点に係る構成を併せ備える本願補正発明の作用効果についてみても(平成19年2月19日付けの回答書第11頁第23行?第12頁第8行に記載された、「・・・球面体を安定に支持できるとともに、・・・球面体に対して取付部位を円滑に傾斜変位させることができ」る、および「・・・取付部位の変位角度(可動域)を大きくでき」る、および「・・・三脚や脚部に捻り力を作用させることなく、急斜面又は軟弱な斜面であっても、取付部位を水平に維持しつつ、簡単な操作で球面体を円滑かつ精度よく固定でき」る、および「球面体の表面を損傷させることなく、長期間に亘り安定かつ高い精度で球面体を固定できるとともに、取付部位や脚部に捻り力を作用させることなく、円滑かつ確実に高い精度で球面体を固定でき」るという、本願補正発明の作用効果に関する記載も参照)、上記引用発明及び各周知例に記載された事項から、当業者が容易に予測しうる域を超えるものがあるとは認められない。
したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、旧法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成16年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成16年4月21日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下に記載されたとおりのものである。
「【請求項1】 少なくとも周方向の領域に球面部を有すると共に、機器を取付けるための取付部位を有する球面体と、この球面体を前記球面部において傾斜変位可能に収容する収容部材と、前記球面体を前記収容部材に固定するための固定手段と、前記収容部材を支持する脚部とを備えている三脚であって、3点支持により球面体を収容部材に固定するための手段が、下記(1)又は(2)のいずれかである三脚。
(1)収容部材の周方向に略等間隔に設けられた固定手段であり、この固定手段が、収容部材の内壁部に配設され、収容部材の内方へ進退可能な固定部材と、前記収容部材に設けられ、押圧により前記固定部材を球面体に押圧するための押圧手段とで構成されている。
(2)球面体に対する受面が形成された2つの固定受部と、前記固定部材および押圧手段で構成された1つの固定手段で構成されている。」(以下「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記「【2】2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、「収容部材」に関する限定事項である「リング状」とすること、および「球面体に対する受面を有するリング体で形成」すること、「取付部位」に関する限定事項である「筒部を介して球面体の頭部に形成」すること、「固定手段」に関する限定事項である「リング状収容部材の内壁に形成された三対のガイドの間に配設され、かつ球面体の球面部に対応する曲面又は湾曲面が形成されているとともに、前記ガイドに沿って収容部材の内方へ進退可能」とすることとする構成を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「【2】4.」に記載したとおり、上記引用発明及び各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用発明及び各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、上記引用発明及び各周知例の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、そのような本願発明を含む本願は、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-05 
結審通知日 2007-07-10 
審決日 2007-07-25 
出願番号 特願平6-338112
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16M)
P 1 8・ 121- Z (F16M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 成彦  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 柴沼 雅樹
佐藤 正浩
発明の名称 三脚  
代理人 鍬田 充生  

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