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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1164695
審判番号 不服2005-2909  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-18 
確定日 2007-09-18 
事件の表示 特願2001-230899「ウェハのハンドリング及び処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月24日出願公開、特開2002-151562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.本願は、平成7年6月7日に出願した特願平7-182041号の一部を平成13年7月31日に新たな特許出願としたものであって、平成16年11月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月18日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月17日付の手続補正により、特許請求の範囲は請求項1、2に補正されたものである。

II.平成17年3月17日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年3月17日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1、2は、次のとおりに補正された。
「【請求項1】ウェハが測定のために位置する測定位置を有する少なくとも一つのウェハ測定ステーションと、
一またはそれ以上のステーションと関連する複数のウェハセンサと、
複数の人工物除去処理器と、
この複数の処理器に連結したデータベースとを含み、
上記ウェハセンサの各々はウェハのパラメータを示す測定された出力データを供給し、
該測定された出力データは関係するデータ破壊を含み、
前記各々の人工物除去処理器は複数のウェハセンサの一と対応し、訂正されたウェハデータを提供するための上記測定出力データに関連するデータ破壊のモデルベース除去のために、この対応するウェハセンサから上記関係するデータ破壊を含む測定出力データを受け、
上記データベースは上記訂正されたウェハデータを保存する、
ウェハ測定装置。
【請求項2】複数のウェハセンサと、
複数の人工物除去処理器と、
複数のデータベースと、
コントローラと、
ネットワークとを含み、
上記のウェハセンサの各々はウェハのパラメータを示す測定出力データを供給し、該測定出力データは関係するデータ破壊を含み、
上記の人工物除去処理器の各々は上記ウェハセンサの各一と対応し、訂正されたウェハデータを提供するための上記出力データに関連するデータ破壊のモデルベース除去のために、各ウェハセンサから上記関係するデータ破壊を含む測定出力データを受け、
上記のデータベースの各々は訂正されたウェハデータの恒久的データベースを供給するために上記複数の人工物除去処理器のうち関連するものからのウェハ出力データを含み、
上記コントローラはウェハ情報を処理されたウェハデータの函数として供給するために、上記複数のウェハセンサの一以上からの前記データベースからの前記訂正されたウェハデータを回収し処理するために特性抽出器を作動させ、
前記ネットワークは、対応する複数の情報ハブを通して前記複数のデータベースを相関づける、
ウェハ処理システム。」

2.補正の適否について
上記補正により、請求項1においては「該測定された出力データは関係するデータ破壊を含み」、及び「訂正されたウェハデータを提供するための上記測定出力データに関連するデータ破壊のモデルベース除去のために、この対応するウェハセンサから上記関係するデータ破壊を含む測定出力データを受け、」が追加され、請求項2も同様な補正事項が追加された。この補正事項のうち「出力データは関係するデータ破壊を含み」、「測定出力データに関連するデータ破壊のモデルベース除去」、及び「関係するデータ破壊を含む測定出力データ」についての「データ破壊」について、検討する。

審判請求人は、審判請求書の平成17年4月25日付手続補正書で「請求項1及び2を補正し、出願人の請求する発明についてより明確化した。特に、補正された請求項1及び2において、「人工物データ」という要素を「出力データに関連するデータ破壊」に置き換え、「人工物除去処理器」には「データ破壊のモデルベース除去のために」と作用を表す修飾を付加した。」(第3頁17?20行)と主張しているものの、上記補正が願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである点について、何も言及していない。
上記「データ破壊」は、文字そのものの通り「データ」をうちこわすこと、うちこわされたデータ、例えば記録されたないし保存されたデータを再生ないし読取不可能にすることを意味するものであり、請求人が主張する「人工物データ」との関連について、及び当該「データ破壊」という用語自体そのものについて、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、また「人工物データ」という要素を「?データ破壊」に置き換えられることが自明の事項とすることもできない。
よって、当該補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成6年法改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.請求項1、5
平成17年3月17日付の手続補正は上記のとおり却下された。そこで、平成16年10月26日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5をみると、そのうち請求項1及び請求項5には、次のとおりの記載がある。
「【請求項1】ウェハが測定のために位置する測定位置を有する少なくとも一つのウェハ測定ステーションと、
一またはそれ以上のステーションと関連する複数のウェハセンサと、
複数の人工物除去処理器と、
この複数の処理器に連結したデータベースとを含み、
上記ウェハセンサの各々はウェハのパラメータを示す測定された出力データを供給し、
前記各々の人工物除去処理器は複数のウェハセンサの一と対応し、この対応するウェハセンサからの上記測定出力データと人工物データを受け、訂正されたウェハデータを得るために上記出力データに関連する人工物を除去し、
上記データベースは上記訂正されたウェハデータを保存する、
ウェハ測定装置。
【請求項5】複数のウェハセンサと、
複数の人工物除去処理器と、
複数のデータベースと、
コントローラと、
ネットワークとを含み、
上記のウェハセンサの各々はウェハのパラメータを示す測定出力データを供給し、
上記の人工物除去処理器の各々は上記ウェハセンサの各一と対応し、人工物データと各ウェハセンサからの上記測定出力データとを受け、訂正されたウェハデータを得るために上記出力データに関連する人工物を除去し、
上記のデータベースの各々は訂正されたウェハデータの恒久的データベースを供給するために上記複数の人工物除去処理器のうち関連するものからのウェハ出力データを含み、
上記コントローラはウェハ情報を処理されたウェハデータの函数として供給するために、上記複数のウェハセンサの一以上からの前記データベースからの前記訂正されたウェハデータを回収し処理するために特性抽出器を作動させ、
前記ネットワークは、対応する複数の情報ハブを通して前記複数のデータベースを相関づける、
ウェハ処理システム。」

2.原査定の理由
原査定の理由2は、上記請求項1、5に記載された「人工物」という用語は、「データのエラー」というような意味で一般的に用いられるものではなく、しかも、明細書中には、「人工物」という用語そのものの定義も明確になされていない(一般的エラーを指すのか、何らか特殊なエラーを指すのか等、用語が指し示す概念の範囲が明確ではない。)から、用語の意味は依然として不明確であり、本願は特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない、としている。
なお、本願は分割出願であって、その出願日は原出願の出願日である平成7年6月7日まで遡及し、特許法第36条の規定については、平成5年法が適用されるから、拒絶理由通知書に記載の「特許法第36条第6項第2号」は、「特許法第36条第5項第2号」の誤記と認められる。
したがって、以下、本願が特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしているか否かについて検討する。

3.請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の平成17年4月25日付手続補正書の第3頁第3?15行において、
「人工物は測定されたウェハデータのエラーに対応し(段落【0007】内4?6行目参照)、測定されたデータの疵の原因である(段落【0061】内5?6行目)、(段落【0062】内1?3行目)、(段落【0062】内7行目から段落【0063】全文)、(図4?5)。従って、出願人は、本願の明細書部分に照らして考慮するに、請求項1及び2に記載されている「人工物」の言葉の意味は明瞭であると考える次第である。」と主張しており、
又、同第2頁第13?26行において、
「本願において更に記載されているように、人工物は「不変の人工物」又は「可変の人工物」とに分類することができる(段落【0062】内1?3行目参照)。例えば、適当な較正またはデコンヴォルーション技術(de-convolution techniques)により、ある不変の人工物を測定されたデータから除去することができる(段落【0062】内7?最終行参照)。また、ある不変の人工物を訂正センサから得られた測定に応じてモデル化でき、次いで測定されたデータから除去することができる。例えば、このような不変の人工物はローター86の動揺により生じさせることができ、またこのローターの動揺は1つ又はそれ以上の動揺センサ120から得られた測定に応じてモデル化することができる(段落【0063】及び図4?5参照)。」と主張している。

4.当審の判断
4-1.審判請求人は、「人工物」は測定されたデータのエラーに対応し、測定されたデータの疵の原因であるとしているので、まずこの点について本願の明細書の記載を検討する。
願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1には、「ウェハセンサからの上記測定出力データと人工物データを受け、訂正されたウェハデータを得るために上記出力データに関連する人工物を除去し」と記載されているものの、本願の明細書において「人工物」が何であるかを定義するないし明確に説明する記載はない。
この用語に関連する「人工物除去処理器」に関しては、明細書段落【0007】に、「人工物除去処理器は測定されたウェハデータのエラーを除去し、・・・」と記載されている。
しかし、明細書段落【0058】には、「図示のようにウェハ802を例えば複数のセンサ804・・・及び信号処理システム812・・・で処理されたセンサの出力によって図6か7の多段測定ステーションシステムに従って処理し、下記のように測定による人工物やエラーを除去する一つ一つのウェハに対する複数の試験からのデータは恒久的データベース820に集められる。」と記載され、「人工物」と「エラー」とは区別して使用しており、「人工物」は測定されたデータのエラーに対応しとすることと矛盾している。
そもそも「人工物」とは、人手を加えたもの、人力で作り出したもので、また、「エラー」とは、一般的には「誤差」、「誤り」をいうものであって、測定した値と真の値との差異を意味するものであり、直ちに「人工物」といえるものでもない。

次に、「疵の原因」について、明細書段落【0061】には、「センサ1002の出力は、測定されたウェハデータの多くの疵の原因についてモデル-ベースとなった除去の信号処理器812、814...に対応した人工物除去処理器1004に用いられる。」、
段落【0062】には、「データの疵の原因は、全体的に可変のタイプのものと不変のタイプのものに分類される。」、
段落【0063】には、「不変人工物とは全般的にデータ疵の原因のことを言っているが、」と記載されている。
以上の記載からすると、「人工物」が不変人工物の場合、「人工物」は測定されたデータの疵の原因であるともいえる。しかし、段落【0064】には、「本システムに正確さを期することができる範囲内で全てのエラーと疵に対して訂正されたウェハデータを示すデータベース820に与えられる。」と記載され、上記のとおり「人工物」は測定されたデータのエラーに対応するものとはいえず、人工物の中身、内容が明確でないから、「人工物」が、一般的なエラーを指すのか、特定のエラーを指すのか、データ以外に係わるものか等、用語が指し示す概念の範囲が明確ではないことに変わりはない。
そうすると、「人工物」は測定されたデータのエラーに対応するものとはいえず、特許請求の範囲の「人工物」が何であるか明確であるとはいえない。

4-2.次に、人工物は「不変の人工物」又は「可変の人工物」とに分類することができ、適当な較正技術により、ある不変の人工物を測定されたデータから除去することができ、また、ある不変の人工物を訂正センサから得られた測定に応じてモデル化でき、次いで測定されたデータから除去することができる、その具体例は、ローターの動揺は動揺センサから得られた測定に応じてモデル化することができるとすることに関して検討する。
明細書段落【0062】には、「測定されたウェハのデータを測定されたウェハのパラメータの「完全」という指示からズラすデータの疵の原因は、全体的に可変のタイプのものと不変のタイプのものに分類される。」と記載され、「データの疵の原因」は「可変のタイプのもの」と「不変のタイプのもの」に分類されることは理解できる。
段落【0062】には、「一定の人工物」についての説明がなされ、段落【0063】には、「一定しない人工物」、「不定人工物」、「不変人工物」についての説明がなされ、更に「この不変人工物とは全般的にデータ疵の原因のことを言っているが、この原因は訂正センサ1003により得られた測定に応答してモデル化することができる。ローラ86の動揺は動揺センサ120が訂正センサ1003を含む場合の不定人工物の例である。」と記載され、この中で具体的に「不定人工物」の例として、「ローラ86の動揺」は動揺センサ120が訂正センサ1003を含む場合の不定人工物の例であるとしている。
ここで、人工物が「不定人工物」の場合、その例が「ローラ86の動揺」(正しくは、「ロータ86の動揺」)であるとすると、「人工物除去処理器」は、測定されたデータの疵の原因である不定人工物、すなわちロータの動揺を除去することになるが、人工物除去処理器はロータの動揺をどのようにして除去するのかということについては具体的な説明がない。
この「人工物除去処理器」は、不定人工物モデルから不定人工物に関するデータと一定人工物モデルから一定人工物に関するデータを受け、その受けたデータに従い、測定されたウェハデータ処理をするものであって、人工物除去処理器からの出力は、全てのエラーと疵に対して訂正されたウェハデータを示すデータベースに与えられる(段落【0064】)としているものの、ロータの動揺に関するデータと一定人工物に関するデータからどのような訂正されたウェハデータをデータベースに与え、どのようにしてロータの動揺を除去するのかについては明確な記載はない。
一方、段落【0062】には、人工物が「不変の人工物」の場合、不変の人工物(「一定の人工物」とも記載している。)は「較正で訂正可能なエラーが定常的な人工物の典型であり」としており、測定されたウェハのパラメータのデータを実際のウエハのパラメータを正確に指示するものとするために寸法因子情報や、プローブの配置についての測定データと実際のウェハのパラメータのもつれをほどくためのもつれの情報について縷々説明しているが、「寸法因子情報」、「もつれの情報」とは、具体的にどのような情報、又もつれを表現しているのか、またこれらの情報、又もつれはどのような機能を果たすのか、それぞれ明確な説明がない。
したがって、上記のとおり、「人工物」という用語の概念、定義がなされておらず、「人工物」という用語が意味する技術的概念が明確でなく、更にこれに関連する用語の使用においても技術的概念が明確でないから、請求項1、5の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとは認めることができない。

3.むすび
以上のとおり、本願は、明細書及び図面の記載が不備のため特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-16 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2007-05-07 
出願番号 特願2001-230899(P2001-230899)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (H01L)
P 1 8・ 532- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市川 篤  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 前田 仁志
正山 旭
発明の名称 ウェハのハンドリング及び処理システム  
代理人 高橋 清  

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