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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61C
管理番号 1165210
審判番号 不服2004-18030  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-01 
確定日 2007-10-05 
事件の表示 平成7年特許願第63128号「1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成7年10月17日出願公開、特開平7-265336号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成7年3月22日の出願(パリ条約による優先権主張1994年3月22日、ドイツ)であって、平成15年10月2日付け拒絶理由通知に対して、平成16年4月8日付けで手続補正がなされたが、同年5月25日付けで拒絶査定され、これに対し同年9月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年9月29日付け及び同年9月30日付けで、それぞれ明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月29日付けの手続補正(以下「本件補正1」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正1により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

「収容装置(A1?A4)に保持される1つ又は複数の種々異なる構成形態の処置器具(I1?I4)と、器具に関係するスイッチング素子(107)及び表示素子(106)と、前記処置器具に共通の制御装置とを有し、前記処置器具にはセンサ(P1?P4)が対応付けて配設されており、該センサ(P1?P4)は処置器具の構成形態及び/又は格納状態を検出し、前記制御装置を用いて器具に関する機能が器具の取り出しないし格納状態に依存してディスプレイに表示され、場合によってはフットスイッチを用いて起動され得る、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置において、
処置器具(I1?I4)と、診断に用いられる別の撮影機器(I5,I6)に、キーボード(T)とディスプレイ(M)を備えた1つのパーソナルコンピュータ(PC)が共通に配され、該パーソナルコンピュータ(PC)の1つのインターフェースを介して器具に関する機能についての複数のデータが読込み及び読出し可能であり、前記パーソナルコンピュータ(PC)にインストールされたプログラムが器具の構成形態に依存して起動され、
さらに論理回路(100)が設けられており、該論理回路は一方ではパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースに接続され、他方ではスイッチング素子(107)及び表示素子(106)に接続されており、前記論理回路とパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースを介して、当該器具ないし該器具に配設されたセンサに相応した双方向性の動作データが転送され、
器具に所属する収容部(A1?A6)と、該収容部に所属する位置報知センサ(P1?P6)を有し、当該の器具に所属するプログラムをスタンバイさせるためにパーソナルコンピュータ(PC)が論理回路(100)によって、取り出された器具(I1?I6)に依存して活性化され、
複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており、この場合当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに撮影機器が割当てられており、
前記論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されていることを特徴とする、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置。」


(2)新規事項について
本件補正1は、本件補正1による補正前の請求項1に対し、「複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており、この場合当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに撮影機器が割当てられており、
前記論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されている」との構成を付加したものである。
ここで、本件補正1による補正後の請求項1に係る発明は、「複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており」との構成と、「論理回路は一方ではパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースに接続され、他方ではスイッチング素子(107)及び表示素子(106)に接続されており」との構成を備えるものとなっていることからみて、当該請求項1に係る発明の範囲には、各グループに配属された「論理回路」のそれぞれが「一方ではパーソナルコンピュータのインターフェースに接続され、他方ではスイッチング素子及び表示素子に接続されて」いる接続状態を有するものも含まれる。
しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)においては、例えば、特許請求の範囲の【請求項9】に、同【請求項8】に記載されている「複数の器具が相前後してパーソナルコンピュータのインターフェースにカスケード接続されている」構成を前提として、「複数の器具がグループに統括され、各グループに1つの論理回路が配属される」ことが記載されているおり、また、発明の詳細な説明の段落【0014】及び段落【0019】にも、それぞれ論理回路を有する第1の周辺装置G1と第2の周辺装置G2がカスケード接続されること等が記載されているに過ぎず、上記のように、各グループに配属された「論理回路」のそれぞれが「一方ではパーソナルコンピュータのインターフェースに接続され、他方ではスイッチング素子及び表示素子に接続されて」いるような接続状態については、当初明細書等には明示的に記載されておらず、かつ当初明細書等の記載から自明な事項とも認められない。

してみれば、本件補正1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものである。


(3)独立特許要件について
次に、本件補正1が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであったとして、本件補正1に関して更に検討する。

本件補正1は、本件補正1による補正前の請求項1における「器具」について、「複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており、この場合当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに撮影機器が割当てられて」いることを限定するものであり、また、同「論理回路」に関連して、「論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されている」ことを限定するものであって、かつ、本件補正1による補正後の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正1は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正1後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

(3-1)引用文献の記載事項
<引用文献1について>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前(1979年12月25日)に頒布された刊行物である米国特許第4180812号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「DENTAL TREATMENT APPARATUS(歯科用治療装置)(括弧書きは当審による翻訳文。以下同じ。)」について、図面と共に、次の事項が記載されている。

ア.「According to one aspect the invention provides a dental treatment apparatus having a dental instrument, and a control and display arrangement for controlling the operation of the dental instrument and for displaying the magnitude of an operating parameter of the dental instrument…(略)…
(一つの態様によれば、本発明は、歯科治療用器具と、当該歯科治療用器具の操作を制御するとともに当該歯科治療用器具の操作パラメータの大きさを表示するための制御・表示装置…(略)…を有する歯科用治療装置を提供する。)」(第1欄第44?49行)

イ.「A dental treatment station shown in FIG. 1 has four treatment instruments I-IV. The treatment instrument I is a turbine drill, the instrument II is an electrically driven drill, the instrument III is a tartar remover, and the instrument IV is a UV-hardener.
The four instruments I-IV are arranged in an instrument-holding device. The instruments II-IV are arranged to close associated switches 2, 3 and 4, and the instrument I is drawn-out in order to open the switch 1 associated therewith.
The four switches 1 to 4 are coupled with an instrument coder 5 which is arranged to generate an address signal at its output 6. The address signal, in the case of four instruments, is a two bit signal.
Control of the instruments is effected by a forward-backward counter 12 connected via a data line 62 with a (cadencing) pulse transmitter 61 and capable of counting from zero to 255. By means of a starter 16, the counter 12 can be set via a data line 17 in a forward-counting operation or a backward-counting operation. The state of the counter 12 is fed via an output line 15 and input lines 55 to 58 to final control elements 42 to 45 for the four instruments I-IV. A high counter state signifies a high speed for the turbine I and the drill II, whereas a high counter state for the tartar remover III signifies a high oscillation amplitude and for the UV-hardener IV it signifies a long hardening time.
(第1図に示された歯科治療用ステーションは、4つの治療用器具I-IVを有している。治療用器具Iはタービンドリル、治療用器具IIは電動ドリル、治療用器具IIIは歯石除去器、そして治療用器具IVは紫外線硬化器である。
4つの治療用器具I-IVは1つの器具保持具の中に配置される。治療用器具II-IVは関連するスイッチ2,3及び4を閉じるように配置されており、治療用器具Iは、当該治療用器具Iに関連するスイッチ1を開くように抜き取られている。
4つのスイッチ1?4は、出力6においてアドレス信号を生成するために配置された治療用器具コーダ5に接続されている。アドレス信号は、治療用器具が4つの場合には、2ビットの信号である。
治療用器具の制御は、データライン62を介してタイミングパルス発生器61と接続されており0から255までのカウントが可能なフォワードバックワードカウンタ12によって、影響を受ける。カウンタ12は、スタータ16によって、フォワードカウント操作又はバックワードカウント操作の際には、データライン17を介してセットされ得る。カウンタ12の状態は、出力ライン15と入力ライン55?58を介して、4つの治療用器具I-IVのための最終制御要素42?45に出力される。カウンタの値が高い状況は、タービンIとドリルIIについては回転速度が高いことを意味しており、歯石除去器IIIについてのカウンタの値が高い状況は振動の振幅が大きいことを意味し、紫外線硬化器IVについては長い硬化時間を意味する。)」(第4欄第25?51行)

ウ.「Stored in the control data store 7 are fixed values of the control data pre-determined for each instrument. If, as in the present case, the instrument I is withdrawn, then the first register of the control data store 7 is activated via the address line 6. Simultaneously, the data switch-point 10 and the counter 12 receive a setting pulse from the instrument coder 5 via a setting pulse line 11. Due to this setting pulse, the data switch-point 10 is switched temporarily to passage from the control data store 7 to the counter 12. Thereby, the counter 12 is set at the fixed value stored in the control data store 7 e.g. in the first register when it is the instrument I which is withdrawn.
(制御データ格納装置7内には、各治療用器具に対して予め定められた制御データの設定値が格納されている。もし、今考えているケースのように、治療用器具Iが引き抜かれているのならば、制御データ格納装置7の第1レジスタが、アドレスライン6を通じて起動される。それと同時に、データ切替ポイント10とカウンタ12が、パルス設定ライン11を介して治療用器具コーダ5からの設定パルスを受け取る。この設定パルスによって、データ切替ポイント10は、一時的に、制御データ格納装置7側からカウンタ12側への道に切り替わる。このようにして、カウンタ12は、例えば、引き抜かれたのが治療用器具Iであれば、制御データ格納装置7の第1レジスタに格納されている値にセットされる。)」(第4欄第64行?第5欄第8行)

エ.「The actual service data are indicated at a numerical display device 60 having 6 positions. Referring to FIG. 1, the display device 60 indicates, for example, 120,000 revolutions per minute for the instrument I.
(実際の運転データは、6つの表示位置を備えた数値表示装置60に表示される。第1図を参照すると、表示装置60は、例えば治療用器具Iに関して毎分120,000回転であることを表示している。)」(第5欄第48?51行)

オ.「In order to make it possible to a high degree for the dentist to effect his work economically and in medically optimum fashion, there may be connected in the circuit also a circuit element as shown in dot-dash line. What is concerned is a computer 61 into which pre-determined parameters may be fed via a data introduction arrangement 62. These parameters are, for example, the diameter and the nature of the drill …(略)… The counter state of the counter 12 is fed to the computer via a line 63. The computer 61 then calculates in accordance with a programme contained in it, an optimum value which is between zero and 250 but may deviate from the state of the counter 12. This value is fed to the line (interrupted at point 67) which normally feeds the starting value of the counter 12 to the fixed ratio converter, or passes on the final control element, via a line 64.
Such optimum values can, on feeding-in the corresponding parameters, be calculated of course for all instruments.
(歯科医が作業を経済的かつ医学的に最適な形態で行うことを相当程度に可能とするために、回路内において、一点鎖線で示されたように回路要素がさらに接続されていてもよい。関連するのは、データ導入装置62を介して、所定のパラメータが入力されるコンピュータ61である。これらのパラメータは、例えば、ドリルの直径や性質である…(略)…カウンタ12のカウンタ設定状態は、ライン63を介してコンピュータに入力される。当該コンピュータ61は、自身の記憶しているプログラムに従って、0から250までの間の値であって、しかしカウンタ12の設定状態とは異なる可能性がある最適値を計算する。当該最適値は、通常はカウンタ12の起動値を一定比変換器へと出力し又は最終制御要素へと受け渡すライン(点67において遮断されている)へ、ライン64を介して入力される。このような最適値は、関連するパラメータを入力することによって、もちろんすべての治療用器具に対して計算可能である。)」(第6欄第43?68行)

カ.「FIG. 2 shows a generalised block circuit diagram demonstrating the possibility, with the aid of a computer 161 and subsequent to feed-in of the desired service data and parameters, of circulating and generating programmed control information for the final control elements and display information for the display device. There are fed into the computer 161, according to block 162, for example information with regard to the material nature, the layer thickness and also the tool hardness. According to block 163, the computer 161 is coupled with the instrument holding device and the switches. The desired data of the operating range are adapted to be fed into the computer 161 according to the block 164. The cut velocity is fed-in via the block 165. The operating point, i.e. the operating data for initiation are fed-in via block 166. Via block 167, the instrument diameter is fed-in. 168 characterises the starter with which cutting-in and out of the instruments is possible, and also increase or reduction of the operating data. Display of the data computed by the computer 161 is effected via a display device 160. The latter displays, depending on the selected instruments, the cut velocity, the speed, the time, the intensity, etc.
(第2図は、コンピュータ161の活用によって、所望の運転データとパラメータの入力の後に、最終制御要素に対する最適化された制御情報と、表示装置に対する表示情報を計算し生成する可能性を実例として示すための、一般化したブロック回路図を示している。ブロック162によって、例えば、物質の性質、層の厚み、及び器具の硬度に関する情報が、コンピュータ161に入力される。ブロック163によって、コンピュータ161は、器具保持具とそのスイッチに接続される。操作範囲に関する所望のデータは、ブロック164によって、コンピュータ161に入力されるために変換される。切断速度はブロック165を介して入力される。操作点、すなわち開始のための操作データは、ブロック166を介して入力される。ブロック167を介しては、治療用器具の直径が入力される。168は治療用器具のオン・オフ操作や、操作データの増減が可能なスタータを示している。コンピュータ161により計算されたデータの表示は、表示装置160によって行われる。この表示装置は、選択されている治療用器具に応じて、切断速度、速さ、時間、強度等を表示する。)」(第7欄第8?30行)

キ.「FIG. 3 shows a foot-operated starter for actuating the forward-backward counter 12 shown in FIG. 1. It comprises a footrest 200 secured at the end of a lever 201. The lever 201 is pivotal by means of a first joint 202 about a horizontal pivot and by means of a second joint 203 about a vertical pivot. The first joint 202 is secured on a base plate 206. By loading the footrest 201 from above, the latter can be pressed downwardly against the action of a spring 204 bearing on the base plate 206, the lever 201 thereby actuating a microswitch 205. This serves for the cutting-in and out of the selected instrument. Due to lateral deflection of the footrest 200 against the action of springs 209, 210, bearing at elements connected to the base plate 206, microswitches 207, 208 arranged laterally adjacent the lever 201 can be actuated. With the aid of the microswitches 207, 208, the counter 12 can be set in forward-counting operation or in backward counting operations.
(第3図は、第1図に示されたフォワードバックワードカウンタ12を起動させるためのフット操作スタータを示す。当該スタータは、レバー201の端部に設けられたフットレスト200を有する。レバー201は、水平回動軸周りの第1ジョイント202と、垂直回動軸周りの第2ジョイントによって、回動可能となっている。第1ジョイント202はベースプレート206上に設置されている。上方からフットレスト200に荷重をかけることにより、フットレスト200は、ベースプレート206上に設けられたスプリング204の動作に対抗して下方に押圧され得るものであり、これにより、レバー201がマイクロスイッチ205を起動する。この動作は、選択されている治療用器具のオン・オフを行うものである。ベースプレート206に接続された要素に設けられたスプリング209,210の動作に対抗して行われる、フットレスト200の横方向の変位によって、レバー210の側方に隣接して配置されたマイクロスイッチ207,208は起動され得る。このマイクロスイッチ207,208の利用により、カウンタ12は、フォワードカウント操作又はバックワードカウント操作の際に、セットされ得るようになっている。)」(第7欄第31?48行)

これらの記載と図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「器具保持具の中に配置される4つの治療用器具I-IVと、治療用器具の操作を制御するとともに治療用器具の操作パラメータの大きさを数値表示装置60(160)に表示する制御・表示装置と、4つの治療用器具に関連して治療用器具が抜き取られると開く4つのスイッチ1?4と、選択されている治療用器具のオン・オフを行うフット操作スタータ16(168)とを有する、4つの治療用器具を備えた歯科用治療装置において、
治療用器具が制御・表示装置におけるコンピュータ61(161)と接続され、コンピュータ61(161)が自身の記憶しているプログラムに従って計算した各治療用器具に対する最適値を、4つの治療用器具のための最終制御要素42?45に出力する、
4つの治療用器具を備えた歯科用治療装置」

<引用文献2について>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前(平成5年5月7日)に頒布された刊行物である特開平5-111497号公報(以下「引用文献2」という。)には、「画像記録装置を備えた歯科用の作業ハンドピース」について、図面と共に、次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】画像導体と光導波体とから成る画像記録装置を備えた歯科用の作業ハンドピースにおいて、画像導体(3)と光導波体(4)とがハンドピース(1)に組み込まれていることを特徴とする、画像記録装置を備えた歯科用の作業ハンドピース。」(【特許請求の範囲】)

イ.「【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、このような口内画像伝送を行うハンドピースを改良して、画像記録装置が邪魔にならずかつ、寸法と形状と取扱いの点で汎用の歯科用器械に相当するようなハンドピースを提供することである」(段落【0003】)

ウ.「図6は歯科用のユニット35における本発明による組込み状態を示している。前記ユニットにはモニタ27が載設されている。画像制御装置は符号38で示されており、格納制御装置は符号39で、媒体制御兼供給装置は符号40でそれぞれ示されている。符号36は器械37のための器械格納部であり、前記器械のうちの一つが本発明に相当している。符号41は接続された器具25?29のための切断位置を示している。符号42は操作エレメント、たとえばフットスタータを示している。
図7は、モニタ27と、器械37を備えた器械格納部36とが治療椅子45に空間的にどのように配属され得るのかを示しており、この場合、モニタ27は器械格納部36に載設されている。」(段落【0012】?【0013】)

これらの記載と図面の記載を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「寸法と形状と取扱いの点で汎用の歯科用器械に相当する、画像導体と光導波体とが組み込まれた画像記録装置を備えた歯科用の作業ハンドピース。」

<引用文献3について>
本願の優先日前(1992年8月12日)に頒布された刊行物である欧州特許第0391967号明細書(以下「引用文献3」という。)には、「A MICROPROCESSOR-CONTROLLED DENTAL APPARATUS(マイクロプロセッサ制御による歯科用装置)(括弧書きは当審による翻訳文。以下同じ。)」について、図面と共に、次の事項が記載されている。

ア.「EP-patents …(略)…disclose such dental apparatuses providing for obtaining a very extensive simplification and automatization of the dentist's performance of a number of different oparational functions during a dental treatment, a single foot contact being used for the general operation of an instrument taken from the instrument carrier …(略)… the control member of said foot contact being moved in various directions and, on the other hand, actuated either to a very short duration of the movement or to a longer duration of the movement.
(各ヨーロッパ特許…(略)…は、歯科治療時における多様な操作機能を歯科医が遂行する際における、非常に広範に及ぶ単純化及び自動化を実現するために提供される歯科用装置、器具保持具から取り出された器具の一般的操作のために使用される一つのフットコンタクト、…(略)…色々な方向に動かされ、一方で、非常に短い動作時間若しくは非常に長い動作時間に対して起動される前記フットコンタクトのコントロール部材、を開示する。)」(第1欄第18?32行)

イ.「As mentioned in the latter EP patent, the foot contact 7 may be utilized, during the operation of the instrument, to activate auxiliary functions associated directly with the operation of a selected instrument, such as …(略)…by actuating the control member 8 to a movement different from the instrument operation movement, with respect to direction or duration.
(後者のヨーロッパ特許において示されているように、フットコンタクト7は、器具の操作時に、コントロール部材8が方向や時間に関して器具の操作時の動きとは異なる動きに作動されることによって、…(略)…等の、選択された器具の操作に直接関連した補助機能を起動するのに使用される。)」(第6欄第17?25行)

ウ.FIG.1(第1図)には、「foot contact 7」(フットコンタクト7)が「MODE SWITCH 10」(モードスイッチ10)を介して、「micro processor 4」(マイクロプロセッサ4)に接続されていることが図示されている。

これらの記載と図示内容を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「マイクロプロセッサ制御による歯科用装置におけるフットコンタクト7であって、器具保持具から取り出された器具の一般的操作のために使用され、また、方向や時間に関して器具の操作時の動きとは異なる動きに作動されることによって、補助機能を起動するのに使用されるフットコンタクト7。」

(3-2)対比
本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、後者における「器具保持具」は、その構成・機能からみて、前者の「収容装置」及び「収容部」に相当し、同様に「治療用器具」は「処置器具」に、「制御・表示装置」は「制御装置」に、「スイッチ」は「センサ」及び「位置報知センサ」に、「歯科用治療装置」は「歯科用装置」に、「コンピュータ」は「パーソナルコンピュータ」に、「各治療用器具に対する最適値」は「複数の動作データ」に、それぞれ相当する。

ここで、上記<引用文献1について>の「イ.」及び「カ.」における治療用器具に関する各操作パラメータの記載からみて、当該各操作パラメータは各治療用器具(処置器具)に関する機能である回転速度、振動の振幅等を意味しており、そうすると、後者の「数値表示装置60(160)」は、選択された治療用器具に関する機能の表示を行うものであるから、前者における「ディスプレイ」に相当している。そして、上記の点を踏まえれば、後者における「フット操作スタータ16(168)」は、選択された治療用器具のオン・オフを行うことにより、各治療用器具に関する機能を起動するものであるから、前者における「フットスイッチ」に相当している。

また、後者が「治療用器具が制御・表示装置におけるコンピュータ61(161)と接続され、コンピュータ61(161)が自身の記憶しているプログラムに従って計算した各治療用器具に対する最適値を、4つの治療用器具のための最終制御要素42?45に出力する」との構成を有するものであること、及び、<引用文献1について>の「イ.」、「ウ.」及び「オ.」の記載からみて、後者における「コンピュータ」が、治療用器具が抜き取られたことを示すスイッチ1?4からの信号を契機として設定されるカウンタ12の設定状態が入力されるものであることを考慮すると、「コンピュータ」と「治療用器具」は、少なくとも「各治療用器具に対する最適値」に関する情報を「コンピュータ」側から各「最終制御要素」に伝達可能なように接続されており、かつ、当該「コンピュータ」と各治療用器具に関連する「スイッチ」とは、少なくとも当該「スイッチ」からの信号に起因する情報を「スイッチ」側から「コンピュータ」に伝達可能なように接続されているといえるから、コンピュータの技術分野の情報入出力のための構成における技術常識に鑑みれば、後者が、前者の「インターフェース」や「論理回路」に相当する構成を備えていることは明らかである。さらに、前者において「論理回路」の「他方」が「スイッチング素子及び表示素子に接続され」ることは、論理回路の他方が「器具」に接続されていることも意味していることが明らかである。以上を総合勘案すると、後者において、「4つの治療用器具に関連して治療用器具が抜き取られると開く4つのスイッチ1?4」を備え、「治療用器具が制御・表示装置におけるコンピュータ61(161)と接続され、コンピュータ61(161)が自身の記憶しているプログラムに従って計算した各治療用器具に対する最適値を、4つの治療用器具のための最終制御要素42?45に出力する」ことは、前者において「処置器具にパーソナルコンピュータが共通に配され」ること、「パーソナルコンピュータのインターフェースを介して器具に関する機能についての複数のデータが読込み及び読出し可能である」こと、及び「論理回路が設けられており、論理回路は一方ではパーソナルコンピュータのインターフェースに接続され、他方では器具に接続されており、前記論理回路とパーソナルコンピュータのインターフェースを介して、当該器具ないし該器具に配設されたセンサに相応した双方向性の動作データが転送され」ることに相当する。

さらに、<引用文献1について>の「ウ.」、「オ.」及び「カ.」の記載からみて、後者における「コンピュータ」は、物質の性質や、層の厚み等の治療用器具による処置が行われる対象に関する値や治療用器具自体の値と、治療用器具が抜き取られて(選択されて)から設定されるカウンタ12の設定状態とが入力された後に、自身の記憶しているプログラムに従って最適値の計算を行い、治療用器具に対応する最終制御要素にその最適値を出力するものであることを考慮すれば、当該「コンピュータ」は、各治療用器具に所属するプログラムを記憶しており、治療用器具が抜き取られた後に当該プログラムに従って計算を行うことが明らかである。そして、コンピュータに対する入力値が各選択された治療用器具に応じた値であることから、このような入力が適宜の「論理回路」を通じて行われることも自明である。これらを併せて考慮すれば、後者において「治療用器具が制御・表示装置におけるコンピュータ61(161)と接続され、コンピュータ61(161)が自身の記憶しているプログラムに従って」「各治療用器具に対する最適値」を計算することは、前者において「パーソナルコンピュータにインストールされたプログラムが器具の構成形態に依存して起動され」ること、及び「当該の器具に所属するプログラムをスタンバイさせるためにパーソナルコンピュータが論理回路によって、取り出された器具に依存して活性化され」ることに相当する。

してみれば、両者は、
「収容装置に保持される1つ又は複数の種々異なる構成形態の処置器具と、前記処置器具に共通の制御装置とを有し、前記処置器具にはセンサが対応付けて配設されており、該センサは処置器具の構成形態及び/又は格納状態を検出し、前記制御装置を用いて器具に関する機能が器具の取り出しないし格納状態に依存してディスプレイに表示され、場合によってはフットスイッチを用いて起動され得る、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置において、
処置器具に、ディスプレイを備えた1つのパーソナルコンピュータが共通に配され、該パーソナルコンピュータのインターフェースを介して器具に関する機能についての複数のデータが読込み及び読出し可能であり、前記パーソナルコンピュータにインストールされたプログラムが器具の構成形態に依存して起動され、
さらに論理回路が設けられており、該論理回路は一方ではパーソナルコンピュータのインターフェースに接続され、他方では器具に接続されており、前記論理回路とパーソナルコンピュータのインターフェースを介して、当該器具ないし該器具に配設されたセンサに相応した双方向性の動作データが転送され、
器具に所属する収容部と、該収容部に所属する位置報知センサを有し、当該の器具に所属するプログラムをスタンバイさせるためにパーソナルコンピュータが論理回路によって、取り出された器具に依存して活性化される、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:本願補正発明1が、「処置器具に関係するスイッチング素子及び表示素子」を有し、論理回路の他方を当該「スイッチング素子及び表示素子」に接続しているのに対して、引用発明1における処置器具はスイッチング素子及び表示素子を有しておらず、論理回路が器具と接続されているに止まる点。

相違点2:本願補正発明1が、「診断に用いられる撮影機器」を有しており、「複数の器具がグループに統括され、各グループに1つの論理回路が配属され」、「当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに撮影機器が割当てられて」いるのに対して、引用発明1は「診断に用いられる撮影機器」を有しておらず、また、上記のように「複数の器具がグループに統括」されておらず、「複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに撮影機器が割当てられて」るものでもない点。

相違点3:本願補正発明1のパーソナルコンピュータが「キーボード」を備えているのに対し、引用発明1のパーソナルコンピュータは「キーボード」を備えていない点。

相違点4:本願補正発明1が「1つの」インターフェースを介しているのに対し、引用発明1のインターフェースに関する構成は不明である点。

相違点5:本願補正発明1では、「論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されている」のに対し、引用発明1は、上記のように構成されていない点。

(3-3)判断
<相違点1について>
歯科用の処置器具も含め、人が保持して操作を行う器具一般において、操作のためのスイッチング素子を備えること、及び種々の目的から適当な表示素子を当該器具に備えることは、いずれも慣用された技術であり、引用発明1の処置器具に、関係するスイッチング素子及び表示素子を設けることは、上記慣用技術を考慮して当業者が容易に想到し得たことである。その際、論理回路の他方と処置器具との接続を、当該処置器具に設けたスイッチング素子や表示素子との接続とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項に過ぎない。

<相違点2について>
引用発明2における「汎用の歯科用器械」は、本願補正発明1における「処置器具」に相当し、同様に「画像導体と光導波体とが組み込まれた画像記録装置を備えた歯科用の作業ハンドピース」は「診断に用いられる撮影機器」に相当する。
ここで、<引用文献2について>の「イ.」及び「ウ.」の記載からみて、引用発明2の「歯科用の作業ハンドピース」が、従来の「汎用の歯科用器械」と共に付加的に使用できることを意図したものであることを考慮すれば、引用発明1の複数の処置器具に対し、付加的に引用発明2の「作業ハンドピース」(撮影機器)を採用し、他の処置器具と同様の制御形態で使用可能とすることは当業者が容易に想到できたことである。その際、引用発明1のパーソナルコンピュータに対して、撮影機器を含めた複数の処置器具を具体的にどのように接続するかは、各処置器具に対して適切にデータ出力が可能な範囲において、一般に周知又は慣用のコンピュータに対する複数の周辺機器の各種接続形態から適宜選択可能であって、特に本願補正発明1の相違点2に係るような接続形態を採用することも、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。また、各処置器具に対しデータ出力を行う際に当然必要となる論理回路をどのように配置するかも、当業者にとっては、具体的に採用する接続状態に応じて適宜決定すべき単なる設計的事項に過ぎない。
したがって、本願補正発明1の相違点2に係る構成は、引用発明1及び引用発明2から、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点3について>
コンピュータに対するデータの入力手段としてキーボードを備えることは一般に慣用された技術である。ここで、上記<引用文献1について>の「カ.」の記載からみて、引用発明1においては、例えば、物質の性質、層の厚み、器具の硬度等の各種情報を何らかの形態で予め入力する必要があることは明らかであり、そのような入力のための手段として、慣用技術であるキーボードを採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点4について>
上記<相違点2について>で示したように、引用発明1の「コンピュータ」(パーソナルコンピュータ)と複数の処置器具との具体的接続形態は、当業者が適宜選択可能であって、接続に使用するインターフェースを1つとすることも、当業者が適宜採用し得た設計的事項に過ぎない。

<相違点5について>
引用発明3における「マイクロプロセッサ」は、本願補正発明1の「パーソナルコンピュータ」に相当する。
また、本願補正発明1の相違点5に係る構成における「時間的な活性化の形式」については、具体的実施例として示されている本願の明細書の段落【0024】の記載を参酌すると、当該「時間的な活性化の形式」を有する「スイッチング素子」は「フットスイッチ」を意味していることが明らかであり、そして、引用発明3における「フットコンタクト」は、「方向や時間に関して器具の操作時の動きとは異なる動きに作動されることによって、補助機能を起動するのに使用される」ものであって「時間的な活性化の形式」を有するものであることは明らかであるから、引用発明3の「フットコンタクト」は、本願補正発明1の「スイッチング素子」に相当する。
そして、引用発明3の「フットコンタクト」は「マイクロプロセッサ制御による歯科用装置」の一つの周辺機器として使用されるものであるから、「時間的な活性化の形式」を検知して「マイクロプロセッサ」(パーソナルコンピュータ)に識別可能な信号に変換するための何らかの手段が存在することも明らかである。
してみれば、引用発明3において、「マイクロプロセッサ制御による歯科用装置」に「器具保持具から取り出された器具の一般的操作のために使用され、また、方向や時間に関して器具の操作時の動きとは異なる動きに作動されることによって、補助機能を起動するのに使用されるフットコンタクト7」を備えることは、本願補正発明1における「スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送する」ことを含むものである。
ここで、引用発明1の「フット操作スタータ」(フットスイッチ)も、上記<引用文献1について>の「キ.」の記載からみて、歯科医が当該フット操作スタータのフットレストについて複数の異なった動きをさせることにより、処置器具や制御・表示装置に対して異なる操作を可能とするものであるから、同様の目的を有する引用発明3の技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、時間的な活性化の形式を検知してパーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送する手段として適宜の論理回路を採用すること、及び伝送される情報を双方向とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項に過ぎない。
したがって、本願補正発明1の相違点5に係る構成は、引用発明1及び引用発明3から、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明1の効果も、引用発明1?3及び上記周知・慣用技術から当業者が予測できる程度のものであり、格別のものではない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1?3及び上記周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない


(4)むすび
以上(2)及び(3)において示したとおり、本件補正1は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであるとともに、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.平成16年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月30日付けの手続補正(以下「本件補正2」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正2により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「収容装置(A1?A4)に保持される1つ又は複数の種々異なる構成形態の処置器具(I1?I4)と、器具に関係するスイッチング素子(107)及び表示素子(106)と、前記処置器具に共通の制御装置とを有し、前記処置器具にはセンサ(P1?P4)が対応付けて配設されており、該センサ(P1?P4)は処置器具の構成形態及び/又は格納状態を検出し、前記制御装置を用いて器具に関する機能が器具の取り出しないし格納状態に依存してディスプレイに表示され、場合によってはフットスイッチを用いて起動され得る、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置において、
処置器具(I1?I4)と、診断に用いられる別の撮影機器(I5,I6)に、キーボード(T)とディスプレイ(M)を備えた1つのパーソナルコンピュータ(PC)が共通に配され、該パーソナルコンピュータ(PC)の1つのインターフェースを介して器具に関する機能についての複数のデータが読込み及び読出し可能であり、前記パーソナルコンピュータ(PC)にインストールされたプログラムが器具の構成形態に依存して起動され、
さらに論理回路(100)が設けられており、該論理回路は一方ではパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースに接続され、他方ではスイッチング素子(107)及び表示素子(106)に接続されており、前記論理回路とパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースを介して、当該器具ないし該器具に配設されたセンサに相応した双方向性の動作データが転送され、
前記器具に所属するプログラムをスタンバイさせるためにパーソナルコンピュータ(PC)が論理回路(100)により、取り出された器具(I1?I6)に応じて活性化され、
複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており、この場合当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに、診断に用いられる撮影機器(I5,I6)が割当てられており、
前記論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されていることを特徴とする、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置。」

上記2.(4)に示したとおり、本件補正1は却下されているので、本件補正2は、平成16年4月8日付け手続補正書により補正された明細書に対する補正として以下検討する。

(2)補正の目的の適否
本件補正2は、本件補正2による補正前の請求項1に対し、以下の補正を行うものである。
補正事項1:「器具に所属する収容部(A1?A6)と、該収容部に所属する位置報知センサ(P1?P6)を有し」との構成の削除。
補正事項2:「複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており、この場合当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに診断に用いられる撮影機器が割当てられており、
前記論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されている」との構成の付加。
上記各補正事項のうち、補正事項1については、本件補正2による補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことのできない事項の一部を削除しているから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではないことが明らかであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(3)新規事項について
上記本件補正2の補正事項2の内容は、本件補正1と同様の補正内容を含むものであるが、このような補正は、前記「2.(2)」の検討において示した理由と同様の理由により、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないことが明らかであるから、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものである。

(4)独立特許要件について
仮に、本件補正2に上記目的要件違反が無く、また、本件補正2が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、特許請求の範囲の限定的減縮を行っているものとして本件補正2の独立特許要件(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)に関する検討を行ったとしても、本件補正2後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明2」という。)は以下に示す理由により、独立特許要件を満たさないものである。

上記のように、本件補正2は、本件補正2による補正前の請求項1に対し上記補正事項1のように削除を行っている点、また、上記補正事項2における下線部の事項を含む点でのみ、本件補正1と相違することを考慮した上で、本願補正発明2と引用発明1とを対比すると、両者の相違点は、前記「2.(3-2)」において示したものと実質的に同一であるところ、前記「2.(3-3)」において示したとおり、これら本願補正発明2における相違点に係る構成は、引用発明1?3及び上記周知・慣用技術に基づいて、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願補正発明2は、引用発明1?3及び上記周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない

(5)むすび
以上(2)?(4)において示したとおり、本件補正2は平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定のいずれにも違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


4.本願発明
本件補正1及び本件補正2は、いずれも上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年4月8日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲第1項に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「収容装置(A1?A4)に保持される1つ又は複数の種々異なる構成形態の処置器具(I1?I4)と、器具に関係するスイッチング素子(107)及び表示素子(106)と、前記処置器具に共通の制御装置とを有し、前記処置器具にはセンサ(P1?P4)が対応付けて配設されており、該センサ(P1?P4)は処置器具の構成形態及び/又は格納状態を検出し、前記制
御装置を用いて器具に関する機能が器具の取り出しないし格納状態に依存してディスプレイに表示され、場合によってはフットスイッチを用いて起動され得る、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置において、
処置器具(I1?I4)と、診断に用いられる別の撮影機器(I5,I6)に、キーボード(T)とディスプレイ(M)を備えた1つのパーソナルコンピュータ(PC)が共通に配され、該パーソナルコンピュータ(PC)の1つのインターフェースを介して器具に関する機能についての複数のデータが読込み及び読出し可能であり、前記パーソナルコンピュータ(PC)にインストールされたプログラムが器具の構成形態に依存して起動され、
さらに論理回路(100)が設けられており、該論理回路は一方ではパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースに接続され、他方ではスイッチング素子(107)及び表示素子(106)に接続されており、前記論理回路とパーソナルコンピュータ(PC)のインターフェースを介して、当該器具ないし該器具に配設されたセンサに相応した双方向性の動作データが転送され、
器具に所属する収容部(A1?A6)と、該収容部に所属する位置報知センサ(P1?P6)を有し、当該の器具に所属するプログラムをスタンバイさせるためにパーソナルコンピュータ(PC)が論理回路(100)によって、取り出された器具(I1?I6)に依存して活動化されることを特徴とする、1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置。」


5.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び引用文献2及びそれらの記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりである。


6.対比・判断
(1)対比
本願発明は、本願補正発明1の「複数の器具がグループ(I1?I4;I5,I6)に統括され、各グループに1つの論理回路が配属されており、この場合当該複数の器具の様々なグループのうちの所定のグループに撮影機器が割当てられており、
前記論理回路は、スイッチング素子の時間的な活性化の形式を検知して、パーソナルコンピュータに識別可能な1つのコードに変換し伝送するように構成されており、この場合情報はコード化されて双方向に伝送されるように構成されている」との事項を省いたものである。
上記の点を考慮して、本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は、前記「2.(3-2)」に記載した相違点1、3及び4と同様の点(以下「相違点1’、3’及び4’」という。)、及び以下の点で相違する。

相違点2’:本願発明が「診断に用いられる撮影機器」を有しているのに対して、引用発明1は「診断に用いられる撮影機器」を有していない点。

(2)判断
<相違点1’、3’及び4’について>
上記のとおり、相違点1’、3’及び4’は、それぞれ前記「2.(3-2)」に記載した相違点1、3及び4と同様のものであるから、前記「2.(3-3)」に記載した理由により、これらの本願発明の相違点1’、3’及び4’に係る構成は、いずれも引用発明1?2及び上記周知・慣用技術から、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2’について>
前記「2.(3-3)」の<相違点2について>における検討を考慮すれば、引用発明1の複数の処置器具に対し、付加的に引用発明2の「作業ハンドピース」(撮影機器)を採用し、他の処置器具と同様の制御形態で使用可能とすることは当業者が容易に想到できたことである。
したがって、本願発明の相違点2’に係る構成は、引用発明1及び引用発明2から、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の効果も、引用発明1?2及び上記周知・慣用技術から当業者が予測できる程度のものであり、格別のものではない。


7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1?2及び上記周知・慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-08 
結審通知日 2007-05-09 
審決日 2007-05-23 
出願番号 特願平7-63128
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61C)
P 1 8・ 561- Z (A61C)
P 1 8・ 121- Z (A61C)
P 1 8・ 572- Z (A61C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 中島 成
仲村 靖
発明の名称 1つ又は複数の種々異なる構成形態の器具を備えた歯科用装置  
代理人 久野 琢也  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  

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