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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1165589
審判番号 不服2005-9243  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-18 
確定日 2007-10-09 
事件の表示 平成11年特許願第364560号「学習支援システム、及びその記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-183970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年12月22日に出願したものであって、平成17年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月18日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月17日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成17年6月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年6月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
試験の成績、個人識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段と、
前記各種情報を表示するための表示手段と、
前記各種情報を入力するための入力手段と、
前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験・復習問題を作成するための試験問題作成手段と、
前記各種情報を用いて試験の得点等を計算するための計算手段とを備えた電子計算機を用いた学習支援システムにおいて、
前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価手段と、
前記最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算を行って、前記予測値を求める予測手段と、
前記最新の試験の得点と前記予測値を比較するための比較手段と、
前記最新の試験の得点が前記予測値より大きいか小さいかを決めることで、生徒が頑張った度合いを成績の上がり方、下り方で少なくとも
(a)成績が上がっているが、今後とも上がる傾向にある
(b)成績が上がっているが、今後は上がり方に上限がある傾向にある
(c)成績は下がって いるが、今後も下降する傾向にある
(d)成績は下がっているが、今後は下降に下限がある傾向にある、
4つの区分に分けて分類するための成績処理演算手段と
からなることを特徴とする学習支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記予測手段は、
前記予測値を、
S^(T+1)=α^(T)+β^(T)
α^(T)=λ0×S(T)+(1-λ0)×(α^(T-1)+β^(T-1))
β^(T)=λ1×(α^(T)-α^(T-1))+(1-λ1)×β^(T-1)
但し、
S^(T+1):T+1期における予測関数(最新の試験の予測値)
S(T):実現値(過去の試験の成績)
λ1、λ0:各科目によって決定される定数
式によって求める
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項3】
試験の成績、個人 識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段と、
前記各種情報を表示するための表示手段と、
前記各種情報を入力するための入力手段と、
前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験・復習問題を作成するための試験問題作成手段と、
前記各種情報を用いて試験の得点等を計算する計算手段とを備えた電子計算機を用いた学習支援システムに用いるためのプログラムを記憶又は記録した記録媒体であって、
前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価ステップと、
前記試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求める予測ステップと、
前記最新の試験の得点と前記予測値を比較する比較ステップと、
前記最新の試験の得点が前記予測値より大きいか小さいかを決めることで、生徒が頑張った度合いを
(a)成績が上がっているが、今後とも上がる傾向にある
(b)成績が上がっているが、今後は上がり方に上限がある傾向にある
(c)成績は下がっているが、今後も下降する傾向にある
(d)成績は下がっているが、今後は下降に下限がある傾向にある
との4つ(削除:からなる)の区分に分けて分類するための成績処理演算ステップと
を前記電子計算機に実行させるプログラムを記憶又は記録した前記学習支援システムが読み取り可能な記録媒体。
【請求項4】
請求項3において、
前記予測値は下記の式を用いて計算する処理を前記学習支援システムに実行させるプログラムを記憶又は記録したものであり、
S^(T+1)=α^(T)+β^(T)
α^(T)=λ0×S(T)+(1-λ0)×(α^(T-1)+β^(T-1))
β^(T)=λ1×(α^(T)-α^(T-1))+(1-λ1)×β^(T-1)
但し、
S^(T+1):T+1期における予測関数(最新の試験の予測値)
S(T):実現値(過去の試験の成績)
λ1、λ0:各科目によって決定される定数
であることを特徴とする前記学習支援システムが読み取り可能な記録媒体。」から、
「 【請求項1】
試験の成績、個人識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段と、
前記各種情報を表示するための表示手段と、
前記各種情報を入力するための入力手段と、
前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験・復習問題を作成するための試験問題作成手段と、
前記各種情報を用いて試験の得点等を計算するための計算手段とを備えた電子計算機を用いた学習支援システムにおいて、
最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記試験の得点から前記試験の平均値を求め、前記平均値から前記試験の得点の偏差値を求め、毎回の前記過去の試験の前記偏差値を用いて、前記最新の試験の前記偏差値の予測である前記予測値を求めるための予測手段と、
前記最新の試験の前記偏差値と前記予測値を比較するための比較手段と、
前記最新の試験の前記偏差値が前記予測値より大きいか小さいかを決めることで、生徒が頑張った度合いを成績の上がり方、又は、下り方で少なくとも
(a)成績が上がっているが、今後とも上がる傾向にある
(b)成績が上がっているが、今後は上がり方に上限がある傾向にある
(c)成績は下がって いるが、今後も下降する傾向にある
(d)成績は下がっているが、今後は下降に下限がある傾向にある、
4つの区分に分けて分類するための成績処理演算手段と
からなることを特徴とする学習支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記予測手段は、
前記予測値を、
S^(T+1)=α^(T)+β^(T)
α^(T)=λ0×S(T)+(1-λ0)×(α^(T-1)+β^(T-1))
β^(T)=λ1×(α^(T)-α^(T-1))+(1-λ1)×β^(T-1)
但し、
S^(T+1):T+1期における予測関数(最新の試験の予測値)
S(T):実現値(過去の試験の成績)
λ1、λ0:各科目によって決定される
式によって求める
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項3】
試験の成績、個人識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段と、
前記各種情報を表示するための表示手段と、
前記各種情報を入力するための入力手段と、
前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験・復習問題を作成するための試験問題作成手段と、
前記各種情報を用いて試験の得点等を計算する計算手段とを備えた電子計算機を用いた学習支援システムに用いるためのプログラムを記憶又は記録した記録媒体であって、
前記試験の得点から前記試験の平均値を求め、前記平均値から前記試験の得点の偏差値を求め、毎回の過去の試験の前記偏差値を用いて、前記最新の試験の前記偏差値を予測して予測値を求める予測ステップと、
前記最新の試験の前記偏差値と前記予測値を比較する比較ステップと、
前記最新の試験の前記偏差値が前記予測値より大きいか小さいかを決めることで、生徒が頑張った度合いを
(a)成績が上がっているが、今後とも上がる傾向にある
(b)成績が上がっているが、今後は上がり方に上限がある傾向にある
(c)成績は下がっているが、今後も下降する傾向にある
(d)成績は下がっているが、今後は下降に下限がある傾向にある
との4つの区分に分けて分類するための成績処理演算ステップと
を前記電子計算機に実行させるプログラムを記憶又は記録した前記学習支援システムが読み取り可能な記録媒体。
【請求項4】
請求項3において、
前記予測値は下記の式を用いて計算する処理を前記学習支援システムに実行させるプログラムを記憶又は記録したものであり、
S^(T+1)=α^(T)+β^(T)
α^(T)=λ0×S(T)+(1-λ0)×(α^(T-1)+β^(T-1))
β^(T)=λ1×(α^(T)-α^(T-1))+(1-λ1)×β^(T-1)
但し、
S^(T+1):T+1期における予測関数(最新の試験の予測値)
S(T):実現値(過去の試験の成績)
λ1、λ0:各科目によって決定される
であることを特徴とする前記学習支援システムが読み取り可能な記録媒体。」と補正された。

2.本件補正の補正目的の適否について
本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第1項第3号に係る審判請求に伴うものであり、同法第17条の2第4項各号に規定されるように補正目的が制限されているので、以下、本件補正が、この補正目的を満たすものかについて検討する。
前記のように、本件補正においては、補正前の請求項1及び3について補正がなされるも、補正前の請求項2及び4と補正後の請求項2及び4とでは表現上の差異はない。
そして、補正後の請求項1では、
補正前の請求項1における
「前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価手段」を削除すると共に、
補正前の請求項1における
「前記最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算を行って、前記予測値を求める予測手段」を、
「最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記試験の得点から前記試験の平均値を求め、前記平均値から前記試験の得点の偏差値を求め、毎回の前記過去の試験の前記偏差値を用いて、前記最新の試験の前記偏差値の予測である前記予測値を求めるための予測手段」とする補正事項を含み、
補正後の請求項3では、
補正前の請求項3における
「前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価ステップ」を削除すると共に、
補正前の請求項3における
「前記試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求める予測ステップ」を、
「前記試験の得点から前記試験の平均値を求め、前記平均値から前記試験の得点の偏差値を求め、毎回の過去の試験の前記偏差値を用いて、前記最新の試験の前記偏差値を予測して予測値を求める予測ステップ」とする補正事項を含むものである。

すると、前記のように本件補正における補正後の請求項1では、補正前の請求項1から「前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価手段」が削除され、同補正後の請求項3では、補正前の請求項3から「前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価ステップ」が削除されている。
ここで、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定される補正の目的は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、及び明りようでない記載の釈明(第4号)に制限されており、補正前の請求項に記載された事項を削除することを目的とする補正は上げられていない。
請求人は、平成17年6月17日付け審判請求の理由に係る手続補正書において、前記箇所の補正を、補正の内容に合わせて削除したとするが、削除した「評価手段」或いは「評価ステップ」と補正後の他のいずれかの手段或いは他のいずれかのステップとの関連を明らかにするところはなく、まさに、「評価手段」或いは「評価ステップ」は単に削除されたものと解さざるを得ない。
してみれば、この削除は、前記平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定されるいずれの補正目的にも適合しない。
なお、本件補正には、前記のように、補正前の「予測手段」或いは「予測ステップ」に関する補正事項も含まれており、請求人の前記平成17年6月17日付け審判請求の理由に係る手続補正書における釈明では、これらが当初明細書の記載に根拠のあるもので、特許請求の範囲の減縮に相当するものであると主張されている。
しかしながら、前記のように補正目的に適合しない補正事項が含まれている以上は、本件補正を総体として適正なものとすることはできない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反しているから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1?4に係る発明は、平成17年3月9日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。
なお、本願請求項1?4の記載は、前記「第2 平成17年6月17日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「[理由]1.本件補正の内容」に上げた補正前のものをもって代え、以下、本願の請求項1?4に係る発明を請求項順に、「本願発明1」?「本願発明4」という。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された各刊行物には、以下の記載がある。

(2-1)刊行物1:特開平10-288941号公報
段落【0001】「【発明の属する技術分野】本発明は、主としてインターネットの仕組みとCD-ROM等による通信ソフトを使用して例えば模擬試験、資格取得試験等その他特定の試験をパソコン上で行なわせるようにしたインターネット試験システムに関するものである。」

段落【0006】「本発明に係るインターネット試験システムにおいて、ユーザー側からある試験システムを利用したい旨の情報をセンター側に送信させると、該センター側からユーザー側にそのシステムを利用するために必要なプログラムがダウンロードされ、ユーザーが通信ソフト1上で動く試験クライアント5を通してある特定の試験を受けたい旨の情報を試験主催者側の試験サーバ3に送信することにより、該サーバ3から試験問題をダウンロードさせ、ダウンロード完了後通信接続を切断する。そして、試験の開始と同時にプラグインプログラム5にて時間の計測を開始させ、制限時間経過時あるいはユーザーが回答完了の意志表示をした際に、試験クライアントが自動的に試験問題を隠蔽させ、試験を終了させると同時に試験主催者側の試験サーバ3との通信接続を開始し、ユーザーの回答情報を送信させた後に接続を切断する。送信された回答は試験主催者側の試験サーバ3で採点および分析され、その結果はユーザー側がアクセスした際に表示される。このとき、ユーザー側は試験を受験している間は通信費用がかからない仕組みを構成することとなる。また、予め資格取得試験の問題のデータを試験主催者の監督者あるいは教育機関の教師等にダウンロードあるいはフロッピーディスク等の手段を用いて配布し、受験者を一同に集めてその監督者のもとに各受験者に対して試験を実施する。試験終了後、監督者が受験者の回答を集め、まとめてインターネットを経由して試験主催者の試験サーバ3へ送信させ、その解答および分析結果が公開される。このようにして、試験問題の配布や、採点の手間等がかかることなく資格取得試験等が実施される。さらに、本システムでは試験を主催する事業者毎に異なる暗号化規約に基づいた個別のプラグインプログラムとすることにより、暗号解読の危険性を分散させる。」

段落【0007】「【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明すれば、インターネット試験システムを構成する通称ネットビレッジは、ユーザーのアイデアを受けて共同して構築される仮想都市国家であり、ユーザー同士のリアルタイムの情報交換を行なう通信サービスシステムでもある。予めサービス提供者により供給される各種サービスをパソコン上で受けられるようにした通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)としてインストールされ、該通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)によりユーザーのパソコン端末2の操作を介してセンター内サーバ9にアクセスされ、該センター内サーバ9から試験を受けるに必要なプラグインプログラム5をダウンロードする。その初回アクセス時処理後はユーザーが受けたい試験問題をダウンロードする際と試験が終了して回答をアップロードする時にのみ、試験主催者側の試験サーバ3へ通信接続を行ない、それ以外は全てユーザー側のプラグインプログラム5が試験情報処理と受験情報処理を制御するものである。このようにして、試験主催者側の試験サーバ3により各ユーザーの通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)を介してのアクセスに応じた試験情報が予め記録管理され、該データのリアルタイムでの動的情報に応じた各試験情報が試験サーバ3からユーザー側へ随時提供されるものとされている。この試験サーバ3と試験クライアント5との交信はインターネットを経由して行なわせる。」

段落【0008】「具体的なシステム全体像としては、図1に示すように、ユーザーのパソコン端末2には、インストールされる通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)と、該通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)により対象URL、ユーザーID等の操作で起動されるWWWブラウザ4と、通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)を介して試験ボタンにより起動される試験クライアント(プラグインプログラム)5を備えている。すなわち、この試験クライアント5とは通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)上で動く試験専用のプラグインソフトがある。また、センター側のサーバ9とWWWブラウザ4との間では、インターネット上の初回アクセス時処理手段6として、プラグインプログラム5のダウンロードを行なったり、ユーザー認証情報を送ったりするようにしている。そして、前記試験主催者側の試験サーバ3と試験クライアント5の間では、インターネット経由の試験プラグイン起動時処理手段7として、試験問題のダウンロードや回答のアップロードを行なったりする。さらに、センター側にはユーザー認証システム8があり、センター内サーバ9からユーザー認証情報をもとにユーザー認証を行なった後、ユーザーが会員であることが確認された場合に限りプラグインプログラム5をダウンロードされるようにしてある。また、プラグインプログラム5をダウンロードした際に、ユーザー情報もそのプログラムに内包するため、試験問題の複製や再利用を防ぐことができるようにされている。」

段落【0009】「すなわち、具体的なシステムフローとしては、図2に示すように、試験サイトへの初回アクセス処理の場合、ユーザー側のパソコン端末2において、パソコンへ通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)のインストールが実行されれば、通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)を起動させ、WWWブラウザ4を立ち上げることにより初回アクセス時処理が可能となる。このとき、ユーザー側ではパソコン端末2において、例えばビル表示形式による「試験サイト」をクリックして受験情報を要求すれば、WWWブラウザ4に試験情報が表示され、これに納得したユーザーにプラグインプログラムダウンロードボタンをクリックさせる。このとき、センター側のユーザー認証システム8にてユーザー認証を行ない、ユーザーが適正なる会員であることが確認された場合に限りプラグインプログラム5のダウンロードを行なわせ、ユーザー側の通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)上に試験クライアント5として組み込まれ、「試験ボタン」が通信ソフト1(ネットビレッジブラウザ)上に追加されるのである。また、適正な会員でないでない場合にはダウンロード不可能のメッセージを表示させる説明文表示処理が実行される。」

前記段落【0007】?【0009】を参照するに、刊行物1に記載されるインターネット試験システムは、アクセス時にユーザー認証システム8にてユーザー認証が行なわれ、センター内サーバ9及び試験サーバ3とユーザーの端末2とがインターネットを介して接続され、所定の試験を実施可能なものであって、ユーザー認証を行う以上は、個人識別可能な情報がユーザー認証システム8あるいはセンター内サーバ9に記憶手段により記憶保持されていることが推察される。
そして、前記段落【0006】によれば、試験サーバー3は、問題の配信とその結果収集も行い、採点及び分析も行うものとされていることから、当該試験サーバー3では、試験の成績を記憶しており、少なくとも分析を行い得る成績処理手段を有しているものと推察される。
また、このようなサーバーにおいては、記憶されているデータを表示する手段、データを記憶する手段、新しい試験問題や問題の修正、加工、各種情報を入力するための入力手段のそれぞれを備えていることが通常である。
してみれば、当該刊行物1には、ユーザー個々人を識別して試験を行い、採点及び分析を行う試験支援システムが記載されているといえ、
図1を参照するに、主催者側が備えるセンター内サーバ、ユーザ認証システム及び試験サーバを総体としてセンター側サーバーシステムと認定した場合、以下のシステムを把握できる。
「試験の成績、個人識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段と、
前記各種情報を表示するための表示手段と、
前記各種情報を入力するための入力手段と、
前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験を配信するための試験問題配信手段と、
前記各種情報を用いて試験の得点等を計算するための計算手段とを備えた電子計算機を用いた試験支援システムにおいて、
試験結果に係る採点及び分析を行う手段を備えた試験支援システム。」
(以下、「刊行物1記載発明」という。)

(2-2)刊行物2:特開平11-296062号公報
段落【0001】「【発明の属する技術分野】本発明は、学習者の成績データを処理して、その処理結果を出力する学習評価システムの技術分野に属する。」

段落【0003】「【発明が解決しようとする課題】このような従来の学習評価ソフトウェアは、学習者を「A」「B」「C」などにランク付けすることを目的としていたため、通信簿への記入が行われる学期ごとに成績データを集計するものであったが、教育現場では学期ごとに学習者をランク付けする評価方法のみでは一元的な評価は可能であるけれども個別の学習者の事情に応じた多面的な評価を行うものとしては不十分であるという指摘もあった。本発明の第一の課題は、ランク付けすることに傾斜していた従来型の学習評価方法からの転換を図り、多面的な評価資料を提供できる学習評価ソフトウェアを提供することである。」

段落【0005】「【課題を解決するための手段】本発明によれば、上述の課題は以下の手段により達成される。すなわち、第一の手段は、学習者の成績データを処理して、その処理結果を出力する学習評価システムにおいて、学習者のある学期における成績データの処理結果と、他の学期における成績データの処理結果とをひとつのグラフ又はチャートに出力する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、第二の手段は、学習者の評価を字句により与える所見データを登録するデータ構造を有するデータと、各学習者について得点データと共に所見データを蓄積する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、第三の手段は、複数の学習者についての成績データの処理結果を所定の形式で表示する画面における学習者の名前の表示領域に当該学習者個人の成績データの処理結果を表示する画面へのリンクを張る機能と、前記学習者の名前の表示領域に対する指定に応答して当該学習者個人の成績データの処理結果を表示する画面を表示する機能とをコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、第四の手段は、学習者の成績データを処理して、その処理結果を出力する学習評価システムにおいて、点数により学習評価の基準値を設定させる機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、第五の手段は、学習者の成績データを処理して、その処理結果を出力する学習評価システムにおいて、学習者の成績データを年度別に管理する機能と、年度の選択に応答して選択された年度の成績データを読み書きする機能とをコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。」

段落【0010】「図4は、資料の作成の画面構成を説明する図であり、一例として観点別の得点集計の画面を示している。図4の資料作成の画面では資料ツールバーの[観点集計]ボタンがオン状態になり、集計表の欄外には選択されたクラスと共に観点名が表示される。集計表には、児童の出席番号及び名前に対応してその児童が獲得した点数がテスト回数別に集計表示され、欠席があった児童は評価・総評価欄の「A」「B」「C」の前に「”」をつけて区別する。図4において、氏名欄に表示されている各児童の名前には、その児童の個人診断チャートへのリンクが張ってあり、いずれかの児童の名前を指定すると、その児童の個人診断チャートが表示される。同様に、不図示の得点分布表、単元集計や順位グラフの画面に表示された児童の名前を指定してもその児童の個人診断チャートが表示される。なお、指定方法はマウスによるダブルクリックとしている。」

段落【0011】「図5に、「A」「B」「C」評価の基準値を設定するダイアログボックスを、図6に評価基準値を記憶するテーブル構造を示す。評価基準値は、教科書別、学期別、教科別かつ観点別に細かく設定できるが、必要がない場合には設定を行わずにデフォルトの基準値を使用してもよい。設定する基準値は満点を表す合計点を参照しながら一点単位で増減させることができ、システムは点数の増減に応じて表示中の点数と合計点との割合をパーセント表示してくる。登録された評価基準値は該当する年度別フォルダの評価基準値設定ファイルに格納される。評価基準値設定ファイルは、全学年共通で年度ごとに一つ存在し、図6に示すように、学年、組、学期、教科、各観点別の評価基準値のフィールドが定義されている。「C」評価の基準値を設定しないのは「B」評価の基準値に達しないものを「C」評価にするためである。」

段落【0012】「図1は、資料の作成の他の画面構成を説明する図であり、個人診断チャートの作成画面を示している。図1では資料ツールバーの[個人診断]ボタンがオン状態になり、評価データの欄外には、選択された学期、教科、全国版、児童の出席番号、氏名が表示される。図1において、横長に広がった順位グラフは、テスト回数ごとの児童の順位をプロットし、折れ線グラフとして当該児童の成績の推移を表示したものであり、前学期の順位の推移のグラフと今学期の順位の推移のグラフとを繋げて表示しているが、左側にスクロールすれば過去の順位グラフが表示され、右側にスクロールすれば最近の順位グラフが表示される。同様にレーダーチャートも、過去の学期のチャートと今学期のチャートとを併せて表示することができ、その表示制御はレーダーチャート表示領域上にある「1」「2」「3」「総合」の4つのボタンで行う。例えば「3」ボタンを押下状態にすると3学期のチャートが表示され、さらに「2」ボタンも押下状態にすると3学期のチャートと2学期のチャートとが重ねて表示され、加えて「総合」ボタンも押下状態にすると3学期及び2学期のチャートに年間のチャートが重ねて表示される。以上の順位グラフ及びレーダーチャートは、各学期末に通信簿に記入する「A」「B」「C」の評価を与える資料とは異なり、児童に対する多面的な個別指導に資するものとして期待される。例えば、その学期に同じ「A」評価を受けた児童であっても、前学期より「A」評価を維持した児童と、前学期の「C」評価から伸びた児童とでは異なる評価データを提供しようとするものである。」

前記段落【0001】によれば、当該刊行物2に記載されるものは、学習評価システムに係るものであって、同段落【0003】、【0005】によれば、これが学習評価システムで用いられる多面的な評価資料を提供できる学習評価ソフトウェアであることが理解される。
そして、前記段落【0003】によれば学習者を「A」「B」「C」などにランク付けすること自体は、従来と同様であるものの、段落【0005】を参照すれば、当該学習評価ソフトウェアでは、
・ある学習者のある学期における成績データの処理結果と、他の学期における成績データの処理結果とをひとつのグラフ又はチャートに出力したり、
・複数の学習者についての成績データの処理結果を所定の形式で表示したり、
する機能を備えるとされる。
また、段落【0010】?【0012】によれば、図6に示されるように、評価基準値設定ファイルに、全学年共通で年度ごとに一つ存在し、学年、組、学期、教科、各観点別の評価基準値のフィールドが定義されており、特定の学習者である児童の個人診断チャートとしては、得点分布表、単元集計や順位グラフが表示されると共に各学期のチャートを重ねて表示することも可能とされる。
そして、段落【0012】の後半部分では、順位グラフ及びレーダーチャートを用いることで、単に学期末の「A」「B」「C」の評価を前学期の評価と対比して、評価が上がったのか、維持しているのかを判別するのに供し得ることが指摘されている。

3.本願発明1と刊行物1記載発明との対比
刊行物1記載発明は、試験支援システムである一方、本願発明1は、学習支援システムであるが、両者はいわば教育技術分野に属するシステムであって、細部構成はともかく、教育支援システムとして共通するものといえる。
そして、いずれも、実施した試験の成績、個人識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段を備え、また、前記各種情報を表示するための表示手段及び前記各種情報を入力するための入力手段とを備えている点で共通している。
さらに、刊行物1記載発明においては、前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験を配信するための試験問題配信手段を備えているのに対して、本願発明1では、前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験・復習問題を作成するための試験問題作成手段を備えているが、これら「試験問題配信手段」と「試験問題作成手段」とは、いずれも試験問題を扱う手段としては共通するものである。
また、刊行物1記載発明における「試験結果に係る採点及び分析を行う手段」は、当然に「各種情報を用いて試験の得点等を計算するための計算手段」といえる。
してみれば、刊行物1記載発明と、本願発明1とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。

<一致点>
試験の成績、個人識別するための情報等の各種情報を記憶するための記憶手段と、
前記各種情報を表示するための表示手段と、
前記各種情報を入力するための入力手段と、
前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験問題を扱う手段と、
前記各種情報を用いて試験の得点等を計算するための計算手段とを備えた電子計算機を用いた教育支援システム。

<相違点1>
「前記各種情報の中から必要な情報を検索し選択して試験問題を扱う手段」に関し、
本願発明1においては、「試験・復習問題を作成するための試験問題作成手段」であると特定されているのに対して、
刊行物1記載発明においては、「試験問題を配信するための試験問題配信手段」であって、上記特定を有しない点。

<相違点2>
本願発明1においては、
「前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価手段と、
前記最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算を行って、前記予測値を求める予測手段と、
前記最新の試験の得点と前記予測値を比較するための比較手段と、
前記最新の試験の得点が前記予測値より大きいか小さいかを決めることで、生徒が頑張った度合いを成績の上がり方、下り方で少なくとも
(a)成績が上がっているが、今後とも上がる傾向にある
(b)成績が上がっているが、今後は上がり方に上限がある傾向にある
(c)成績は下がって いるが、今後も下降する傾向にある
(d)成績は下がっているが、今後は下降に下限がある傾向にある、
4つの区分に分けて分類するための成績処理演算手段と
からなる」ことが特定されているのに対して、
刊行物1記載発明においては、上記特定を有しない点。

4.判断
(4-1)相違点1について
なるほど、相違点1として抽出した本願発明1における「試験問題作成手段」では、「試験の成績、個人識別するための情報等」からなる「各種情報」の中から必要な情報を検索して試験問題自体を作成すること、また作成する問題として復習問題が存在することが特定されている。
しかし、ここでいう「試験問題」と「復習問題」とは試験のカテゴリーが異なることは理解できるものの、具体的にこれらを作成するにあたってどのような差異があるのか、当該請求項記載からは明らかでなく、また、特段に試験問題作成の内容が特定されていない本願発明1における「試験問題作成手段」は、具体的に何を行うかが把握できないので、以下、本願明細書の記載を参照する。

本願明細書段落【0009】には、サーバー3が印刷プログラムを有し、必要に応じて試験問題や各種管理情報等を接続されたプリンタで印刷するとあるが、これのみでは詳細を把握できない。次に、同段落【0013】を参照するに、ユーザ-はクライアント端末4からサーバー3にアクセスして、このユーザーの処理要求の受付、返信、試験問題の作成、データの参照・更新等がすべてサーバー3により処理されることが記載されている。
よって、少なくともユーザーの要求に応えて、サーバー3が試験問題を提供していることが把握できる。
次に、同段落【0029】を参照するに、[生徒の学習の流れ]と称して、図4を参照した説明がある。ここでは、管理者が単元確認プリント150を印刷して(S101),生徒に配り試験を行い、これを採点し(S102)、試験結果を登録する(S103)こととされ、更に、生徒が試験で間違ったことを判定した場合(S104)には、弱点対策課題(S105)に移り、個別学習プリント151を印刷して再度テストを行い(S106)、採点し(S107)、採点結果の入力(S108)を行い、次の単元確認プリントに移る(S101)こと、また、前記判定(S104)で間違いが無い場合においては、強化対策問題に移るか否かを選び(S109)、選ぶ場合には、強化対策問題について試験を行うこととされる。
当該段落を参酌するに、本願発明1における「試験問題作成手段」は、その詳細が請求項記載から明らかではないものの、サーバー3に保持している各種試験問題から、生徒の学習に応じて、単元確認プリント、弱点対策課題とされる個別学習プリント、及び強化対策問題等を印刷することが可能で、これを生徒に配り試験を実行することを可能とする手段であると解され、生徒に配り得る試験問題をプリントしていることから、試験問題配信手段とも解し得るものである。

ここで、既に、一致点として認定したように、電子計算機を用いた教育支援システムとしてみた場合には、刊行物1記載発明と本願発明1とは共通しており、刊行物1記載発明を、本願明細書の段落【0001】【発明の属する技術分野】であげられる「学校教育、学校教育以外の学習塾教育等において、各種学習・復習問題の作成・印刷と成績処理を行い生徒の成績を評価する学習支援システム」として機能させることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、試験を実行するに際して、端末画面を介して問題配信を行い実行するか、実際に印刷したプリントを生徒に配って実行するかは、当業者であれば必要に応じて適宜選択可能なことであって、本願発明1に係る請求項記載では、これらのいずれを選択するかが明らかにされていないのであるから、このような点において差異があるものと解することはできない。
また、当該相違点1には、本願請求項1記載の文言とおりに「問題作成手段」として認定したものの、本願請求項1の記載には、問題作成のための格別な特徴を特定しているところはなく、サーバに記憶されていると解される試験問題あるいは復習問題の別が如何なるものであるかを明らかに把握することもできないことから、刊行物1記載発明の「試験問題配信手段」を前記「学習支援システム」として機能させた際に、格別な差異を形成するものとは解し得ない。

(4-2)相違点2について
(4-2-1)「評価手段」について
前記のように、刊行物2には、その段落【0001】の記載にあるように、学習者の成績データを処理して、その処理結果を出力する学習評価システムの技術分野に属する学習支援ソフトウェアが記載されており、当該刊行物2の段落【0010】では、図4を参照して、テスト毎に評価結果を表示するものとして記載されている。
すると、当該刊行物2には、学習評価システムとして「前記試験の最新の試験の得点で成績を評価する評価手段」を備えることの開示があり、前記刊行物1記載発明を学習支援システムとする際に当該「評価手段」を備えることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(4-2-2)「予測手段」について
次に、前記相違点2としては、前記「評価手段」に加えて、
「前記最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算を行って、前記予測値を求める予測手段」、
「前記最新の試験の得点と前記予測値を比較するための比較手段」、
「前記最新の試験の得点が前記予測値より大きいか小さいかを決めることで、生徒が頑張った度合いを成績の上がり方、下り方で少なくとも
(a)成績が上がっているが、今後とも上がる傾向にある
(b)成績が上がっているが、今後は上がり方に上限がある傾向にある
(c)成績は下がって いるが、今後も下降する傾向にある
(d)成績は下がっているが、今後は下降に下限がある傾向にある、
4つの区分に分けて分類するための成績処理演算手段」が備えられていることを抽出した。
ここで、前記刊行物2では、前記「評価手段」は存在するものの、本願発明1における「予測手段」に該当する手段を備えてはいない。
しかしながら、学習支援を行うに際しては、個人が全体に対してどの程度の成績にあるかを1回の試験で単純に評価するにとどまらず、誤った問題について復習を行い次回の試験に備えることの重要性が指摘され、この場合、個人毎にこれから受ける試験の得点を予測することが求められていることは、よく認識されていることである。
また、個人としての努力を評価する重要性も常々指摘されていることであり、この点、刊行物2の前記段落【0012】に、同じ成績であっても前学期よりも成績が伸びた生徒を評価するためのデータを作成していることからも明らかである。
してみるに、過去の試験結果を用いて、次回試験の結果を予測することは、従来から周知のことであって、このようにすることに進歩性新規性があるものとはいえない。
また、相違点2に抽出した「予測手段」では、予測するに際して、「前記最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算を行」うと特定されているが、この統計計算の具体的内容がいかなるものであるかは、本願請求項1の記載に明らかにはされていない。
ここで、本願明細書段落【0005】或いは同段落【0034】?【0037】においては、予測を行うに際して、「ホルト=ウィンターズ法」なる手法によって計算を行うものと記載されている。
しかし、当該「ホルト=ウィンターズ法」自体は、在庫管理、時系列データ解析等によく用いられている統計学的な手法であって、公知のものであり、本願明細書においても、これの数学的意味が説明されているわけではない。
すると、相違点2に抽出した「予測手段」において行われる「予測」とは、「前記最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算」することであって、その統計計算自体は新規なものではないと解される。
そして、このような在庫管理、時系列データ解析等によく用いられている統計学的な手法としては、「移動平均法」、「指数平滑法」、「回帰分析法」等々が各種提言され、現象に応じて適宜のものを取捨選択すべきことは、統計分野においては常識に属する。
現に、「ホルト=ウィンターズ法」なる手法が属すると推察される「回帰分析法」が、予測手法として用いられていることについては、特開平7-164267号公報、特開平9-230910号公報或いは特開平10-228312号公報等が上げられる。
なお、本願明細書の段落【0040】には[その他の実施の形態]と題して、予測を行うに際して、「生徒の成績は過去の成績を直線で外挿して成績を予測する方法、又は過去のデータからパターン化された習熟曲線を予め決め、このいずれかの習熟曲線を生徒毎の個性に応じて習熟曲線を選択し、この習熟曲線でその生徒の成績を外挿して予測点数を計算する方法であっても良い。」と記載されていることからして、本願請求項1に記載される統計計算手法を前記「ホルト=ウィンターズ法」のみに制限して解釈することは妥当でない。
以上の検討から、前記刊行物1記載発明を学習支援システムとする際に、相違点2に係る統計計算を行う「予測手段」を備えることは、当業者であれば容易になし得ることといわざるを得ない。
また、相違点2には、最新の試験の得点を当該「予測手段」により得られた予測値と比較するための「比較手段」を備えることも抽出しているが、予測値との対比を行う上で、「比較手段」を要することは常識といえ、「予測手段」を設けたことによる当然の要請であるから、「比較手段」を設けることは設計事項に属することである。

(4-2-3)「成績処理演算手段」について
相違点2においては、最後に、「成績処理演算手段」を備えることを抽出した。
本願発明1では、当該「成績処理演算手段」では前記(a)?(d)の4つの区分に分けて分類するとされる。
しかしながら、当該4つの区分は、成績の傾向を評価するに際して、通常よく用いられる区分であると共に、4つに分けること自体は評価の便宜から決定されることであって、学習支援システムとしての格別な技術上の特徴をなすものとはいえない。
また、「前記最新の試験の得点が前記予測値より大きいか小さいかを決めること」とあるが、少なくとも、直前の試験の得点と最新の試験の得点を比較した場合においては、学習者の成績傾向全体を把握できるものではなく、予測値を導出するに際して、成績傾向がどこまで反映されているかに負うところが大きく、それ故に、前記したように、予測対象に適合した統計手法を採用できるように、各種の統計手法が案出されているといえる。
なるほど、相違点2に抽出した本願発明1においては、「最新の試験の直前の試験の得点と、前記直前の試験の得点を予測するときに利用された各種パラメータとを用いて統計計算を行って」との特定がなされているものの、前記各種の統計手法のうちいずれを採用しているかの特定はないのであるから、前記4つの区分が表現するとされる成績の傾向を把握する際に、格別な統計手法を採用したものとまでは解し得ない。
してみれば、刊行物2の前記段落【0012】に図1を参照しながら記載されているように、成績の推移を把握して学習する児童の成績を評価することが従来から行われており、また、前記「予測手段」は、この成績の推移をみるに際して適宜の統計手法を用いている程度のことでしかないのであってみれば、当該「成績処理演算手段」により行われている内容は、得られた結果を、よく用いられている分類に適宜に分けていることをいうに過ぎず、当業者であれば容易想到のものといわざるを得ない。
以上に検討してきたように、相違点2に係る構成を備えることは、当業者であれば必要に応じて適宜に採用し得た程度のことであって、容易想到といわざるを得ない。

(4-2-4)仮に本件補正の「予測手段」である場合について
なお、平成17年6月17日付けの手続補正では、前記「予測手段」に関して、補正後の請求項1として「最新の試験より前に行われた過去の試験の得点を用いて、前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段で、前記試験の得点から前記試験の平均値を求め、前記平均値から前記試験の得点の偏差値を求め、毎回の前記過去の試験の前記偏差値を用いて、前記最新の試験の前記偏差値の予測である前記予測値を求めるための予測手段」とする補正がなされていたので、当該補正された「予測手段」である場合についても予備的に検討しておく。

当該補正された請求項1に係る「予測手段」では、「前記試験の得点から前記試験の平均値を求め」ること、「前記平均値から前記試験の得点の偏差値を求め」ること、及び、「毎回の前記過去の試験の前記偏差値を用いて、前記最新の試験の前記偏差値の予測である前記予測値を求める」ことが特定されている。
ここで、「平均値」が何を意味するかを把握する上で、生徒の頑張り度合いを客観的に評価する上でどのようにすべきかを「平均点」と関係について記載した、本願明細書の段落【0035】、【0036】、及び、生徒の「努力ポイント」が如何なるものかについて記載した同【0037】が参考になると推察される。

これらの段落には、以下の記載がある。

段落【0035】「また、習熟曲線グラフは平行線グラフ(頑張り度合いが時間経過に対して一定又はほぼ一定のグラフ)と比べると、生徒の頑張り度合いは後者の方が頑張っており、より努力していると言える。以上のことからは、生徒の頑張り度合いの評価は瞬間的に表される微分値より時間的な積分値で評価する方が、生徒の頑張り努力をもっと客観的に評価することができると言える。
試験を受けた生徒を相対評価した場合は、相対的な順位が下位の者はいつまでも下位であり、その生徒の頑張りは評価されない。この相対的な評価は生徒の頑張りの評価するのではなく、単なる成績順位の選別にすぎない。したがって、頑張り度合いによる評価は、生徒個人ごとに設定された到達水準に対して、生徒がその到達水準に到達したかではかり評価する。到達水準は、生徒の成績により違う。例えば、成績が優秀な生徒の場合は到達水準は高く、そうではない生徒には、過去の成績にもとづいた適切な水準を設定する。成績が上がると、その到達水準を上げる必要がある。」

段落【0036】「到達水準を設定するときは、毎回の平均点からの差をとり(偏差値を求め)、平均点に対する相対的な位置をその生徒のレベルだと考える。このレベルを元に次回の試験の成績を予測して、生徒の到達水準の予測値を計算する。つまり、過去の試験の成績を用いて、最新の試験の成績を計算して予測し、その予測値を最新の試験の成績と比較して生徒の頑張り、努力を評価する。」

段落【0037】「上記の予測値S^(T+1)が実現値(試験の成績)S(T+1)を上回ったかを個人の到達水準とし、Ai(Achievmentの略)とすると、次の様に表される。
Ai=(Pi-μi)-S^(T+1)
ここで、試験iの場合は、Piは個人の素点であり、μiは平均値である。このとき、S^(T+1)は試験の平均値からの偏差値の予測値を表し、S(T+1)その実現値を表している。
Aiは0以上なら、到達水準を上回ったことになる。このAiの正の値を足し合わせた値をもって生徒個人の「努力ポイント」とする。」

前記段落【0035】においては、生徒の頑張り度合いを評価するに際して、瞬間的な微分値よりも時間的な積分値で評価する方が、客観的であると指摘されている。
ここの説明からは、生徒個人の成績を積分値として評価することが指摘されていると解され、他人の成績とは無関係に積分値を検討することが指摘されていると推察される。
他方、段落【0036】では、生徒の到達水準を設定するに際して、毎回の平均点からの差をとることとされ、平均点に対する相対的な位置をもってその生徒のレベルと考えるとされる。
確かに、試験問題の難易度を常に一定とすることには困難さが伴い、試験結果の平均点を参考にして、その難易度を加味した傾向を把握し得ることは理解できる。
しかしながら、この場合、当該平均点は、他の生徒の成績をも加味したものと解され、前記段落【0035】における生徒個人の成績を積分値として評価することとの関係は不明である。
そして、段落【0037】においては、「試験i」において、「Pi」なる「個人の素点」から、「μi」なる「平均値」を減じ、さらに、「S^(T+1)」なる「試験の平均値からの偏差値の予測値」を減ずることで、「Ai(Achievement)」がえられ、この「Ai」が0以上であれば、到達水準を上回ったとすることが記載されている。
また、当該「Ai」の正の値を足し合わせた値を生徒の「努力ポイント」とすることの記載もある。
しかしながら、前記のように段落【0035】或いは【0036】に記載される内容は整合しておらず、「平均値」なるものが果たしていずれの段落における記載内容を前提とすべきか、すなわち、対象としている生徒自身の成績の平均値なのか、その他の生徒の成績を含む全体の平均点であるのか、は定かではない。

ここで、平成19年5月18日付けの審尋において、補正後の請求項1に係る「前記最新の試験の得点を予測して予測値を求めるための手段」に関し、ここでの「得点」は実得点ではなく、実得点から平均点を減じた偏差値(通常の日本語における「偏差値」ではない。)と理解してよいかを問うたところ、請求人は、「得点は「実得点から平均点を減じた偏差値」であるとのご指摘は正しい」と平成19年6月20日付け上申書において回答している。

そして、請求人は、前記上申書で、前記審尋の「生徒の頑張り度合いの分類」をどのように行っているかについての質問に対する回答において、以下のようにも回答している。

「貴審判官は、この分類について
「最新の試験の偏差値(実得点-実平均点)から予測値を減じた値が正でかつ所定値以上の場合が評価(a)、正でかつ所定値未満の場合が評価(b)、負でかつ所定値以上の場合が評価(d)、負で絶対値が所定値未満の場合が評価(c)に分類される」
と認識されています。
僭越ながら、この認識は、誤りです。
最新の試験の偏差値(実得点-実平均点)から予測値を減じた値と「所定値」とを比較するものではないので、貴審判官の認識は誤りです。
正しくは、貴審判官の上記の単語(定義)を借りて述べると、
「最新の試験の偏差値(実得点-実平均点)から予測値を減じた値」は、個人の到達水準になります。この到達水準は、Aiと表されています(段落【0037】を参照。)。
ここで、Ai=(Pi-μi)-S^(T+1)となります。
Piは、個人の素点で、貴審判官の言う「実得点」となります。
μiは、個人の素点の平均値で、貴審判官の言う「実平均点」となります。
S^(T+1)は、予測値で、審判官の言う「予測値」となります。予測値は、試験の素点(実現値S(T))と、科目によって決定される定数λ1、λ0によってのみ計算される値です。」

当該回答を参照するに、「予測値」とは、少なくとも「試験の素点(実現値S(T))と、科目によって決定される定数λ1、λ0によってのみ計算される値」であって、「定数λ1、λ0」をもって計算することを必須とするものとされる。
しかしながら、補正後の請求項1には、これら「定数λ1、λ0」は何ら特定されていないし、前記で指摘した本願明細書の段落【0005】或いは同段落【0034】?【0037】において予測を行うに際して採用しているとされる「ホルト=ウィンターズ法」なる手法自体を用いていることの特定もないのであるから、前記回答は特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえない。
してみれば、補正後の請求項1に係る前記「予測手段」に係る追加特定は、偏差値(実得点-平均点)なる値を前提とすることを加えているものの、予測値を如何にして算出するかまでを明らかにしているものではなく、むしろ、統計計算を行うことを削除していることからして、その特定内容が不明となっているともいえるものである。
したがって、そうであれば、平成17年6月17日付け手続補正書に係る追加特定を加味したとしても、成績を予測する上では、時系列データ解析を行う上で統計計算を行う通常の範疇を出るものとは解し得ない。

(4-3)まとめ
以上のとおりであるから、相違点1及び相違点2に係る差異は、いずれも当業者であれば想到容易なものであって、それらを寄せ集めたとしても、それらにより得られる作用効果も、当業者であれば、容易に推察可能なものでしかない。

5.むすび
したがって、本願発明1は、その出願前に頒布された刊行物1及び2の記載及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-15 
結審通知日 2007-08-17 
審決日 2007-08-28 
出願番号 特願平11-364560
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
P 1 8・ 573- Z (G09B)
P 1 8・ 574- Z (G09B)
P 1 8・ 572- Z (G09B)
P 1 8・ 571- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古川 直樹宮本 昭彦  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 名取 乾治
尾崎 俊彦
発明の名称 学習支援システム、及びその記録媒体  
代理人 富崎 元成  

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