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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47G
管理番号 1165598
異議申立番号 異議2003-72617  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2007-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-28 
確定日 2007-08-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3399951号「引き伸ばし剥離接着剤を用いる物品支持体」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3399951号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 〔1〕手続の経緯
特許第3399951号の請求項1、2に係る発明についての出願は、1993年(平成5年)3月23日を国際出願日とする出願であって、平成15年2月21日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人、テサ・アクチエンゲゼルシヤフトより特許異議の申立てがされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年5月12日に訂正請求がされたものである。

〔2〕訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正内容は、以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項2に記載される「ロックするための手段を含む、」を、
「ロックするための手段を含み、かつ、前記基礎部材は前記支持部材で視覚的に隠されている、」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a.は、物品支持体を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、上記訂正事項a.は、本件特許の明細書第10頁第11?12行(特許第3399951号公報第8欄第22?23行)に「支持部材で視覚的に隠された非常に一般的な基礎部材」と記載されていることに基づくものであり、新規事項の追加に該当しない。
また、上記訂正事項a.は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

〔3〕特許異議申立についての判断
(1)本件発明
上記〔2〕で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1、2」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】「基礎部材、
前記基礎部材に取り外し可能に結合された支持部材、
前記基礎部材に接着された引き伸ばし剥離接着テープ、及び、
前記引き伸ばし剥離接着テープを引き伸ばすための手段、
を含む、基体に接着する物品支持体であって、前記基礎部材が前記引き伸ばし剥離接着テープによって基体に接着しているときに、前記基礎部材は前記基体の表面から約35°以下の角度で前記引き伸ばし剥離接着テープを引っ張ることにより基体から剥がすことができる、物品支持体。 」
【請求項2】「前記基礎部材は前記支持部材を取り付けるための手段を含み、かつ、前記取り付けるための手段は前記支持部材を前記基礎部材にロックするための手段を含み、かつ、前記基礎部材は前記支持部材で視覚的に隠されている、請求項1記載の物品支持体。」

(2)引用刊行物に記載された発明
ア.当審が平成16年11月4日に通知した取消しの理由において引用した刊行物1(国際公開第92/11333号パンフレット)には、除去可能な接着テープに関して、Fig.1?Fig.13とともに、以下の事項が記載されている。
(ア-1)「本発明は、高度に伸長性であり且つ実質的に非弾性である裏地及び感圧接着剤の層を含んで成る除去可能な接着剤テープを提供する。この裏地は高い引張り強さを有し、少なくとも約150%の長手方向の破断点伸び及び延伸後約50%未満の弾性回復を有する。接着剤は通常は粘着性の感圧接着剤であり、フイルム裏地の少なくとも1つの表面に塗布される。接着剤は好ましくは高度に伸長性であり、延伸中に裏地から分離せず、そしていかなる適当な基材への接着よりも高い凝集力を有する。基材に適用された後、本発明の接着剤テープは強く結合するが、基材の表面に対して実質的に平行、すなわち約35°未満の方向に引っ張ることにより、基材に損傷を与えることなく容易に除去され得る。」(パンフレットのアブストラクト第8?14行、訳文は、同パンフレットの日本国公表公報である特表平6-504077号公報の第1頁左欄第17行?第2頁左上欄第9行、以下同様。)
(ア-2)「図2のテープは両面テープである。図2のテープは、両主表面に接着剤層34,36を担持する裏地34を有する。接着剤層34は第一の除去可能な剥離ライナー38に接着され、そして接着剤層36は第二の除去可能な剥離ライナー40に接着される。接着剤不含タブ42は接着剤層34及び36の一部分を覆い、それが接着される基材からの容易な除去のためのつまみテープ30を提供する。」(パンフレット第11頁第20?28行、公報第5頁左下欄第8?13行)
(ア-3)「図3A及び図3Bは、取り付け用途の本発明のテープの態様を示す。フックはほとんどの家庭において、絵、タオル、衣類、台所着、道具、植物、及び他の物品をぶらさげるために一般に使用される。従来のフックはしばしば、釘、ネジ、ピン、ビョウ、及び他の機械的器具を用いてとりつけるために、キャビネット、天井、壁、木材等に穴をあけることを必要とした。穴は、それが絵によってかくされる場合には問題にならないが、絵を取り去った後には穴はうめられなければならない。従来の接着テープにより取り付けられた絵用のフックは、壁の表面をかき取ることなく、又は損傷することなく除去することが困難又は不可能であった。本発明のテープを用いる除去可能な絵用フックは、絵画、壁かけ及び他の装飾品をかたく保持するフックを取り付けるために使用することができる。取り付けのために本発明のテープを使用することにより、これらのフックは使用される間は所定位置にかたく保持され、そして望みの時に基材の表面を損傷することなく除去することができる。図3A及び3Bに示すように、取り付け具50はフック部材52及びそのための支持体54を有し、この支持体が、裏地62により担持される感圧接着剤の層58,60の1つにより両面テープ56に接着される。所望により、壁66からのテープ56の除去を容易にするために、テープ56をつまむのを可能にするようにタブ64を設けることもできる。タブ64は、接着剤なしのつまみ部を作るための任意の既知の方法により、例えば接着剤不含有材料を接着剤に適用してそれを非粘着性にすることにより形成することができる。タブ64は露出したまま残すことができ、あるいはタブ64が支持体54によりかくされる様にフックを設計してもよい。接着剤層60は壁、金属、ガラス及びセラミックの表面にかたく結合するものである。器具50の取り付けに使用するため、保護ライター(示されていない)を剥離して接着剤層60を露出させ、そして次に取り付け具50を壁60の所望の位置に押し付ける。取り付け具50を除去するためには、取り付け具50の頂部のタブ64を壁66と平行の方向に引くことができる。テープ56が延伸するに従って、それは取り付け具50を壁から徐々に離す。各フックは、15ポンド/線インチを超える負荷を保持するように、なお壁の表面にいかなる残留物も残さないで除去され得るように設計することができる。」(パンフレット第12頁第18行?第13頁第23行、公報第5頁右下欄第4行?第6頁左上欄第10行)
以上の記載及び図示内容を総合すると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)
「支持体54、前記支持体54に結合されたフック部材52、前記支持体54に接着された高度に伸長性のある両面接着剤テープ56、及び、高度に伸長性のある両面接着剤テープ56を引き伸ばすためのタブ64、を含む、壁66に接着する取り付け具50であって、前記支持体54が前記高度に伸長性のある両面接着テープ56によって壁に接着しているときに、前記支持体54は前記壁66の表面から約35°以下の角度で前記高度の伸長性のある両面接着剤テープ56を引っ張ることにより壁66から剥がすことができる、取り付け具50。」

イ.同じく取消しの理由において引用した刊行物2(仏国特許発明第2328429号明細書)には、衣服掛け、棚板の支え等のような、壁に固定されることを目的とした物品に関して、Fig.1?Fig.3とともに以下の事項が記載されている。
(イ-1)「図1および2に表された衣服掛けは、プラスチック素材の鋳造によって製造される2つの相補的な部分1および2によって構成される。これらの第1のものは、ネジ釘もしくは適当なすべての他の手段によって壁に固定されることを目的とした、固定用の台板もしくは底板を形づくる。第2のものに関しては、それはいわゆる衣服掛けの本体を構成し、そしてそのために、それは衣服や他の類似した物を受けとめることを目的とした、それぞれ突出した2つの要素3および4を有している。この部分はその後面に、それが使用の位置にあるときに一方が他方の上に配置される2つの鉤5を備えており、これら2つの鉤は従って下向きに突出している(図1を参照)。台板1に関しては、それはその前面に、これら2つの鉤を受け入れるのに適した2つの固定用のクランプもしくは輪を有する。」(異議申立書に添付された訳文第2頁第3?12行、以下同様。)
(イ-2)「壁Mにこれを固定するためには、まず、台板1を2つのネジ釘10もしくは適当なすべての他の手段によって然るべき場所に固定するのが望ましく、その後は、この衣服掛けを構成する2つの部分を結合するために、衣服掛けの鉤5をクランプ6の中に差し込むだけで足りる。」(訳文第2頁第30行?第3頁第2行)
(イ-3)「図3は、本発明に従う物品の他の実施例を表しており、ここでは、棚板(たとえば、浴室内に置かれる洗面台上のガラスの棚)の支えとして役立つことを目的とした直角体である。先の例におけるのと同様に、この直角体は2つの別の部分、すなわち、固定用の台板1aおよび、この直角体のまさに本体を構成する別の部分2aにさらに分けられている。この第2の部分の本体2aの後面には、先の実施形態において用意されていた鉤5と同様な、2つの鉤5aが備え付けられている。台板1aに関しては、それはこれら2つの鉤を受け入れることを目的とした2つの固定用クランプ6aを備えている。これら2つのクランプは枠8aによって両側面で結び付けられており、固定用ネジ釘の通り道の穴はこれら2つの枠の間に位置している。このような状況において、本直角体は前述の衣服掛けと同じ仕方で壁に固定されることができ、そしてそれは、それと同じ利点を有する。」(訳文第3頁第16?28行)
(イ-4)「鋳造された素材から成る相補的な2つの部分、すなわち、第1の部分が固定用の台板を形成し、そして、第2の部分がこの物品のまさに本体を構成し、この後者の部分の後面にはそれが使用の位置にあるときに一方が他方の上に配置される2つの鉤が備えられており、その一方、第1の部分はこれらを受け入れる余地のある2つの固定用クランプもしくは輪を有し、そしてこれらの間に、この部分を壁に固定するネジ釘もしくは他の手段の通り道が用意されている、2つの部分を含んで成る、衣服掛け、棚板の支え、浴室装備の物品、もしくは他の物のような、壁もしくは何らかの壁面に固定されることを目的とした物品。」(訳文第4頁第2?9行)

(3)対比・判断
ア.本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、その機能及び構成からみて、後者の「支持体54」、「フック部材52」、「高度に伸長性のある両面接着剤テープ56」、「タブ64」、「壁66」、「取り付け具50」は、それぞれ、前者の「基礎部材」、「支持部材」、「引き伸ばし剥離接着テープ」、「引き伸ばすための手段」、「基体」、「物品支持体」に相当するものと認められるから、
両者は、「基礎部材、
前記基礎部材に結合された支持部材、
前記基礎部材に接着された引き伸ばし剥離接着テープ、及び、
前記引き伸ばし剥離接着テープを引き伸ばすための手段、
を含む、基体に接着する物品支持体であって、前記基礎部材が前記引き伸ばし剥離接着テープによって基体に接着しているときに、前記基礎部材は前記基体の表面から約35°以下の角度で前記引き伸ばし剥離接着テープを引っ張ることにより基体から剥がすことができる、物品支持体。」の点で一致しており、以下の点で相違する。
(相違点1)
基礎部材と支持部材の結合手段において、前者は、「取り外し可能」であるのに対し、後者は、一体である点。
しかしながら、基礎部材と支持部材の結合手段において、「取り外し可能」とする点は、刊行物2に記載されており、引用発明も刊行物2も同じ技術分野に属するものといえるから、刊行物2に記載された技術を引用発明に適用して本件発明1とすることは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
そして、本件発明の奏する作用効果は、引用発明及び刊行物2に記載されたものから当業者が容易に予測できる程度のものである。

イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「前記基礎部材は前記支持部材を取り付けるための手段を含み、かつ、前記取り付けるための手段は前記支持部材を前記基礎部材にロックするための手段を含み、かつ、前記基礎部材は前記支持部材で視覚的に隠されている」点を限定するものであるから、本件発明2は、引用発明と以下の点で相違する。
(相違点1)
上記ア.の相違点1と同じ点。
(相違点2)
基礎部材と支持部材において、前者は、「ロックするための手段」を有しているのに対して、後者は、有していない点。
(相違点3)
前者は、「基礎部材は支持部材で視覚的に隠されている」のに対して、後者は、そのような構成を有していない点。
上記相違点について検討する。
相違点1については、上記ア.で検討したとおり、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
相違点2について、基礎部材と支持部材において、「ロックするための手段」を有している点は、従来周知の技術(例えば、実願昭53-157732号(実開昭55-72487号)のマイクロフィルム、実願昭55-27223号(実開昭56-130409号)のマイクロフィルム、特開平4-135933号公報)であり、引用発明に上記周知の技術を適用して、相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
相違点3について、例えば、上記刊行物2のものも、基礎部材に相当する台板1の一部は、支持部材に相当する衣服掛けによって視覚的に隠されているものであるが、基礎部材をどの程度支持部材で視覚的に隠すかといった事項は、設計的に当業者が適宜なし得る事柄であるから、相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、単なる設計的事項と認められる。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2は、上記引用発明、刊行物2に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1、2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
引き伸ばし剥離接着剤を用いる物品支持体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】基礎部材、
前記基礎部材に取り外し可能に結合された支持部材、
前記基礎部材に接着された引き伸ばし剥離接着テープ、及び、
前記引き伸ばし剥離接着テープを引き伸ばすための手段、
を含む、基体に接着する物品支持体であって、前記基礎部材が前記引き伸ばし剥離接着テープによって基体に接着しているときに、前記基礎部材は前記基体の表面から約35°以下の角度で前記引き伸ばし剥離接着テープを引っ張ることにより基体から剥がすことができる、物品支持体。
【請求項2】前記基礎部材は前記支持部材を取り付けるための手段を含み、かつ、前記取り付けるための手段は前記支持部材を前記基礎部材にロックするための手段を含み、かつ、前記基礎部材は前記支持部材で視覚的に隠されている、請求項1記載の物品支持体。
【発明の詳細な説明】
技術の分野
本発明は、物品支持体に関し、より詳しくは迅速に表面に接着させ、また剥がせるように適合された物品支持体に関する。
背景
フック及び他の物品支持体は、家庭においても、商社においても、また製造業においても、写真、タオル、衣類、道具、カレンダー、ポスター等を掛けるような種々の目的で、広く用いられている。従来のフックは、しばしばキャビネット、壁等に穴を形成する必要があった。それらを取り付けるためにネジや釘が用いられるからである。これに代えて、フックは粘着テープで接着できるが、強い保持力を有するテープは、一般に壁の表面を傷付けたり他の損傷を与えたりすること無しに壁からきれいに取り外すのが困難である。
Kreckelらの、発明の名称が“Removable Adhesive Tape”である、出願係属中の米国特許出願No.07/802061、及びPCT国際出願No.PCT/US91/09472は、引き伸ばし剥離接着テープを開示している。これらの文書をここに引用して記載に加える。
これらの文書は、非常に伸びやすい実質的に回復しない裏張りを有し、容易に取り外せる粘着テープを開示している。
このテープは基体にしっかりと接合させ、この基体の表面から約35°以下の角度で引き伸ばすことによって基体から剥がすことができる。この種のテープに付随する問題は、取り外しのためにつかむのが難しいと思う人もいることである。取り外しのためにテープをしっかりつかむためにいらいらする程に指で圧力を加える必要がある。
発明の簡単な説明
本発明は、壁、窓、キャビネットのような基体に物品支持体を接着し、後にきれいに取り除く非常に便利な方法を提供して、この技術分野を進歩させるものである。一般的にいえば、本発明は、基体に接着するように適合された物品支持体として記述できる。この物品支持体は、基礎部材、この基礎部材に接着された引き伸ばし剥離接着テープ、及びこの引き伸ばし剥離接着テープを引き伸ばすための何らかの手段を含む。これらの品目は基礎部材を引き伸ばし剥離接着テープ基体に接着するとき、引き伸ばすための手段(以下において、「つかみ手段」とも呼ぶ)をつかんで基体の表面から約35°以下の角度で引き伸ばし剥離接着テープを引き伸ばすことにより、この基礎部材を基体から剥がすことができるように組み合わされる。このつかみ手段は、好ましくは、剥離作業の間に引き伸ばし剥離接着テープから分離することに耐える。多数の実際の具体例において、前記引き伸ばし剥離接着テープは、物品支持体が使用されるまで接着剤を保護するために剥離ライナーの層で保護されるであろう(例えば、塵、埃、その他この接着剤に有害な影響を与えるものから)。
前記引き伸ばし剥離接着テープは、裏張り、及び少なくとも1層の接着剤を有するであろう。最も好ましくは、それは2層の接着剤を有するであろう。この裏張りは単一の層でありうるし、つかみ手段をつかんで引き伸ばし剥離接着テープを基体の表面から約35°以下の角度で引き伸ばすことによって基礎部材を基体から剥がすことができる限り、この裏張りは相互に積層された2又はそれ以上の層でありうる。
本発明の具体例の1つのグループにおいては、上に述べたつかみ手段は、ハンドルであり得、引き伸ばし剥離接着テープは、剥がす間にテープの少なくとも一部を押しつけるように構成されたハンドルの表面の周りに接着される。これを実現するのに多数の物理的形態があり得るが、引き伸ばし剥離接着テープが実質的に180°曲がるように、前記引き伸ばし剥離接着テープを前記ハンドルの部分の周りに巻き付けるとき、良い結果が得られる。適当なハンドルは、それを指で握り易い形状をしている。例えば、「D字型」のリングであって、引き伸ばし剥離接着テープが「D字」の形状の平たい部分を巻き付ける場合である。
最も便利な具体例の多数において、基礎部材はかなり一般的で、種々の支持部材、例えばフック、タオルラック、絵画の額縁支持体、等を取り付けるのに適しているであろう。これらの具体例において、基礎部材はそのような支持部材を取り付ける手段を含むであろう。そのような取り付け手段は、基礎部材及び支持部材の各々にある一対の相補的な蟻ほぞスライドであるのが便利である。他の手段は当業者に明らかであろう。
支持部材を取り付けるための手段を有する具体例において、取り外し可能に、又は永久的に支持部材を基礎部材にロックする手段があるのが便利であろう。取り外し可能なラッチ(latch)が固定手段として機能するのが便利である。
場合によっては、支持部材を基礎部材から外すとき、つかみ手段を指で引っ張る必要はなくて、例えば、支持部材が蟻ほぞスライドに沿ってスライドするとき、つかみ手段はこの支持部材に嵌まり込む。次いで、基礎部材を基体から除くために、支持部材が引っ張られるにつれて、引き伸ばし剥離接着テープは自動的に引き伸ばされる。
基体からの引き伸ばし剥離接着テープの取り外しの補助として、基礎部材は、前記基礎部材を基体から剥がすときに含まれる作用を明らかにするしるしを持っているのが便利である。基礎部材が支持部材を取り付けるための手段を持っている具体例においては、そのようなしるしは、支持部材が基礎部材に取り付けられているときは見えないように隠れており、支持部材が取り外されたときは見えるような場所に置かれているのが特に好ましい。
本発明の幾つかの具体例において、支持部材に実質的な量の重量を支持する--単一の基礎部材の保持力によって支持されるより多くを支持するようにさせるのが望ましい。一般に、同時に単一の平面に並べられた(oriented)複数の基礎部材にはめ込まれるようにされた支持部材を与えることにより、本発明の定義内でこれは適応させることができる。
他の具体例においては、1つより多くの平面内に並べられた基礎部材上に引き伸ばし剥離接着テープを有するように同時に複数の基礎部材に嵌め込まれた特別な支持部材が提供される。特に、そのような支持部材は、2つの安価な一般的な複数の基礎部材を背中合わせに保持し、例えば時計を壁に接着できるようにすることができる。望みのときは、引き伸ばし剥離接着テープを各基体からきれいに取り除き、接着された対象は一時的に使用のために、又はメンテナンスのために外して下ろすことができる。
本発明に予期される用途の多くにとっては、基礎部材は剛性のあるものであろうが、基礎部材が曲げ可能であるがあまり伸長性のないフィルムである物品支持体も、本発明の定義の範囲内であると考えられる。そのような構造体は、例えば剥離可能なラベルに有用であろう。
詳細な説明
図1を参照して、粘着剤21の層によってハンドル22に接着された長い引き伸ばし剥離接着テープ20の平面図が示されている。引き伸ばし剥離接着テープを引っ張り負荷の下に置くために引っ張るとき、ハンドル22は、引き伸ばし剥離接着テープ20から分離しないように耐えることができるつかみ手段として役立つ。引き伸ばし剥離接着テープ20が用いられるべき正確な機能に依存して、粘着剤23の第2の層がしばしば存在する。引き伸ばし剥離接着テープ20の部分24は、そのような引っ張り負荷の掛かっている間、引き伸ばし剥離接着テープの少なくとも一部を押しつけるように構成された表面26の周りに、ハンドル22に接着されている。
図2を参照して、テープ20がハンドル22から分離しない限り、引き伸ばし剥離接着テープはそれ自体に関してある角度を形成するように、前記引き伸ばし剥離接着テープ20は前記ハンドル22の表面26の周りに巻き付けられることが分かる。好ましくは、この角度は実質的に180°である。図3を参照して、部分24の圧縮が容易に視覚化されるように、引き伸ばし剥離接着テープ20が引っ張り負荷の下にあることが示されている。
図4及び5を参照して、ここには基礎部材30の透視図が示されている。この基礎部材30は、二重スチック(double stick)引き伸ばし剥離接着テープ(裏側に接着されていてこの図面からは容易には見えない)を備えている。この二重スチック引き伸ばし剥離接着テープも、引用文字22で示された概して「D字型」のハンドルの開口部に挿入し、この周りに巻き付けられている。テープ20はそれ自身に沿って180°折り返されていることが観察されよう。
ここに描かれた基礎部材30は、いろんな種類の支持部材を取り付けるのに適当なように非常に一般的なものを意図したものである。この目的のために、前記基礎部材30は蟻ほぞスライドの雄部分を有し、その2つの部分は32及び34で表され、従って、これらのスライドはそのような支持部材を取り付ける手段として役だてることができる。
方向矢印36は、基礎部材30を基体から剥がすのに役立つであろうつかみ手段22を引っ張る方向を示している。図示の基礎部材30は、基材から基礎部材を剥がすのに含まれる作用を説明するのに便利なように、その上に印刷されたしるし38を有する。例えば、このしるしは、ハンドルがテープ20(従って基礎30)を基体から剥がすためにほぼ直接下に引っ張られるべきことを示すために絵文字又は肖像を含んでいてもよい。図5において、蟻ほぞ32はより容易に見ることができ、矢印36の方向は、引き伸ばし剥離接着テープ20が基材から基礎部材30を剥がすために35°以下の角度で引っ張るべきことを、よりはっきりと示すことができる。
図6を参照して、図5に示した基礎部材30を再び透視図で示す。今回は物品支持体40は、基礎部材の雄蟻ほぞスライド32及び34と、支持部材の雌蟻ほぞスライド42及び44との間の滑り噛み合わせを用いて、基礎部材に取り付けられている。この支持部材40は湾曲したフック46を有するように描かれているが、これは、この代表がそれに代替して用いられるうる多数の機能を示したものと考えられるようにしたものである。支持部材の他の例としては、掛け金、フック及びループファスナー、鳩目、磁石、コルク板、吸着カップ、リブ(rib)並びに他のそのような構造体がある。図6aにおいて、基礎部材の雄蟻ほぞスライド32及び34、並びに基礎部材の雌蟻ほぞスライド42及び44の間の相互作用をより容易に見ることができる。
図7を参照して、本発明の他の具体例の透視図が描かれ、ここでは引き伸ばし剥離接着テープ20は、支持部材40が基礎部材30から取り除かれるとき、自動的に引き伸ばされ、同時に基体から基礎部材が除かれるようになっている。支持部材40は基礎部材30を部分的に滑りおりているところが示されている。この具体例においては、解除可能な掛け具48は、くぼみ49に作用して支持部材を基礎部材にロックするための手段として機能する。解除可能な掛け具を押してくぼみ49から外したとき、基礎部材30及び支持部材40は、蟻ほぞスライド32、34、42及び44を通って相互に自由にスライドする。前記ハンドル22は、この図においては、出っ張り50に引っ掛かっており、支持部材40が基礎部材30から外れるとき引き伸ばし剥離接着テープ20が引っ張られるようになっている。
図8において、図7に描かれた作用が進められ、支持部材40は基礎部材30から完全にはずれ、引き伸ばし剥離接着テープ20を引っ張るのに用いられている。図9において、この同じ場面が反対の角度から示されている。ここでは引き伸ばし剥離接着テープ20が基礎部材30から、同様に基礎部材が接着している基体が何であれそれから剥がれる様子を目立たせている。剥がれ線52に沿って、引き伸ばし剥離接着テープ20の裏張りは変形しつつあり、この物理的作用は、常にほんの少量の接着剤層21及び13が剥がれて、この剥がれによって基体が損傷される機会が減るようにする。引き伸ばし剥離接着テープ20はハンドル22の周りに曲げられて、実質的に180°曲がっていることが、特に観察されるであろう。
図10を参照して、ここには本発明の他の具体例の透視図が示されており、この場合、支持部材40は同時に複数の基礎部材がはめ込まれるように適合されている。基礎部材30の部品に類似の部品には添字「a」を付けて、第2の基礎部材30aが描かれている。この具体例における基礎部材30及び30aは単に並んで接着されており、比較的広い支持部材46がそれらの両方に同時にはめ込まれており、蟻ほぞスライド32及び34aが、この例では余分になっている。この教示に照らして他の構成が容易に明らかとなるであろう。これは、製造と在庫管理を容易にするために同じである2又はそれ以上の基礎部材が、基体の上の予め計画されたパターンに従って組み立てられ、単一の支持部材がそれらの全てに同時にはめこまれているものである。幾つかの類似の一般的な基礎部材を使用することの利点は、限定された幅のテープがいつでも剥がせ、これは基体の損傷の機会を更に減らすことであることを理解すべきである。
図11を参照して、ここには本発明の他の具体例の分解組み立て透視図が描かれている。この図において、1つの支持部材54は2つの同様な基礎部材30及び30aにはめ込まれるようになっており、2つの基礎部材上のつかみ手段22及び22aを有する引き伸ばし剥離接着テープ20及び20aは背中合わせに向いている。ここに描かれた装置を用いて、時計のような機器を、1つの基礎部材を時計に接着し、他の基礎部材を壁に接着して、壁に装備することができる。重力と物理的妨害は、両方の基礎部材を先に詳述した支持部材中に保持するに充分である。しかしながら、この時計は、巻き戻し等のために、その接着された基礎部材を支持部材から持ち上げることによって容易に取り外せる。そのような装備がもはや望まれないときは、引き伸ばし剥離接着テープは時計及び壁の両方からきれいに両基礎部材を取り外すことを可能にする。
本発明の1つの利点は、分離された基礎部材及び支持部材が用いられるときは、それぞれはその目的に従って最適化でき、異なった材料を用い、異なった製法を用いることができることであることが理解されよう。例えば、装飾的な支持部材で視覚的に隠された非常に一般的な基礎部材は、低コストと引き伸ばし剥離接着テープへの良好な接着性のバランスのとれた材料で作られているとよい。適当な蟻ほぞ断面を有する形を有する押し出されたポリエチレン又はポリプロピレンは、これらの用途に特に好ましいと考えられる。
これとは対照的に、支持部材は接着性について最適化される必要はなく、予想される用途に依存して、例えばコスト、表面の外観、装飾的メッキに対する適性、曲げ強さ、容易に射出成形される能力等についての他の望ましい性質が選択される。まさにその用途に依存して、硬質ポリ塩化ビニル、高耐衝撃性ポリスチレン、又はナイロンを有利に用いうる。
完全な紹介のために、適当な引き伸ばし剥離接着テープの具体例を示すであろう。先に引用により記載に含めた、Kreckelの発明の名称「剥離できる接着テープ」である米国特許出願No.07/802,061、PCT出願No.PCT/US91/09472は、より完全な代替物の説明をしている。本発明との関連において有用なスチレン-ブタジエンブロックコポリマー接着剤についての追加の背景は、両方ともJorgensen等の米国特許No.4699842及び4835217に見いだされる。両方の粘着剤は、広い有用な温度範囲を持つ。この両方をここに引用して記載に含める。
(例1)
90wt%のイソオクチルアクリレートモノマー及び10wt%のアクリル酸モノマー並びに100部あたり0.04部の2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(“Irgacure 651”)を含む配合物100gを部分重合し、粘度約5000cpsの被覆可能なシロップを生ぜしめることにより接着剤を作った。次いで、このシロップに追加の90wt%のイソオクチルアクリレートモノマー及び10wt%のアクリル酸モノマー並びに100部あたり0.04部の2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(“Irgacure 651”)を含む配合物0.25g、プラス0.125gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート架橋剤を加えた。この組成物を十分に混合し、接着剤の厚みが0.125mmとなるように調節したナイフコーターでシリコーンで被覆されたポリエステルフィルム上に被覆した。被覆されたシロップを窒素ガスで十分にパージしたのち、これを第2のシリコーンで被覆されたポリエステルフィルムで被覆し、全エネルギー450mJ/cm2を用いて紫外線照射により重合した。次いで、接着剤の1つの層を0.05mmのコロナ処理した線状低密度ポリエチレンフィルムの両側に積層し、二重被覆された接着テープを形成した。この線状低密度ポリエチレンフィルムは、Consolidated Thermoplastics Co.,から商業的に入手可能であり、弾性率が28968psi、50%モジュラスが4000psi、降伏応力が1743psi、降伏歪みが17.3%、引っ張り強度が7931psi、伸びが748%、及び回復(recovery)が5.4%であった。
(例2?6)
一般に例1に従って、但し、架橋剤の量をを変化させて接着テープを作った。各例は、架橋剤量が0.01、0.025、0.05、0.10及び0.18%となるように作った。そのようにして作った接着剤は、ある範囲の引き伸ばし剥離接着性を明白に示すことが見いだされた。
(例7)
スチレン-ブタジエンブロックコポリマー接着剤をシリコーン剥離ライナー上にナイフコートし、次いで強制空気乾燥炉中、175°Fで15分間乾燥した。こうして厚さ2.8ミル(0.07mm)及び4.6ミル(0.14mm)の接着フィルムを作った。
本発明のある種の具体例をここに詳細に記載し、また添付図面に示したが、本発明の範囲から離れることなく、種々のさらなる変形が可能であることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
本発明のより完全な理解とその利点は、添付の図面と共同して詳細な説明から明らかであろう。
【図1】
図1は、ハンドルに接着された長い引き伸ばし剥離接着テープの平面図である。このハンドルはつかみ手段が一方に限られたものが具体化できる。
【図2】
図2は、図1に示された道具の側面図である。
【図3】
図3は、図2において引き伸ばし剥離接着テープが引っ張り負荷が掛けられ、テープの一部が圧縮されているところを表したものである。
【図4】
図4は、テープのつかみ手段として用いられるD字型ハンドル手段に接着された二重スチック(stick)引き伸ばし剥離接着テープを備えた基礎部材の透視図である。
【図5】
図5は、図4の具体例の側面図である。
【図6】
図6は、支持部材が基礎部材に取り付けられているところを示す本発明の物品支持体の透視図である。
図6aは、図6の具体例の平面図である。
【図7】
図7は、支持部材がその基礎部材から部分的に外れている本発明の他の具体例の透視図である。この場合、基礎部材を基体から取り外すために支持部材を引っ張るとき、引き伸ばし剥離接着テープは自動的に伸びる。
【図8】
図8は、図7の具体例であり、支持部材が基礎部材から完全に外れている引き伸ばし剥離接着テープを引っ張るのに用いられてところを示している。
【図9】
図9は、図8の場面を反対の角度から示したもので、引き伸ばし剥離接着テープが基礎部材から剥がれるところを目立たせたものである。
【図10】
図10は、本発明の他の具体例の透視図であり、この場合、支持部材は単一の平面に同時に並んでいる2つの基礎部材に嵌め込まれている。
【図11】
図11は、本発明の他の具体例の分解組み立て透視図であり、この場合、支持部材は2つの基礎部材上の引き伸ばし剥離接着テープが背中合わせに向くように2つの基礎部材に嵌め込まれている。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-06 
出願番号 特願平6-520973
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A47G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山崎 勝司氏原 康宏  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 増沢 誠一
和泉 等
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3399951号(P3399951)
権利者 ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリング カンパニー
発明の名称 引き伸ばし剥離接着剤を用いる物品支持体  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 深浦 秀夫  
代理人 小田島 平吉  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  

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