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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K
管理番号 1166246
審判番号 不服2003-10562  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-11 
確定日 2007-11-06 
事件の表示 平成10年特許願第534831号「鉛を含まないはんだ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月13日国際公開、WO98/34755、平成13年 4月10日国内公表、特表2001-504760〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年2月3日〔パリ条約による優先権主張、外国庁受理平成9年2月10日(以下、「本願の優先日」という)、米国〕に国際出願されたものであって、その請求項1?23に係る発明は、平成18年2月10日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項21、22に係る発明は、それぞれ次のとおりである(以下、本願請求項21、22に係る発明をそれぞれ「本願発明21」、「本願発明22」といい、各請求項に係る発明をまとめて「本願発明」という)。
「21.鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.5ないし7.7重量%の範囲のAg、
1.0ないし4.0重量%の範囲のCu、
0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素、
並びに、残部の重量%がSnからなることを特徴とする鉛を含まないはんだ。」
「22.鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.0ないし4.0重量%の範囲のAg、
0.5ないし4.0重量%の範囲のCu、
0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素、
並びに、残部の重量%がSnからなることを特徴とする鉛を含まないはんだ。」

2.当審における拒絶理由の概要
当審において通知した特許法第29条第2項違反についての拒絶理由の概要は、本願の請求項1乃至23に係る発明は、本願出願前に国内において頒布された刊行物1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、前記拒絶理由通知では、刊行物1?6の頒布について、米国特許明細書を含んでいるにも拘わらず、誤って「国内において」としたが、請求人が提出した平成18年2月10日付け意見書の「2.拒絶理由の要点 この出願は、・・・の拒絶理由通知書において、『・・・ 本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された特開平5-50286号公報(以下「引用文献1」という)、・・・、米国特許第5527628号明細書(以下「引用文献3」という)、・・・、特開平2-179385号公報(以下「引用文献6」という)、に記載された発明に基いて、・・・容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。・・・』旨の通知を受けたものであります。」との記載からみて、これらの刊行物1?6については、「日本国内又は外国において」頒布されたものとして請求人に正しく通知されたものと認められる。
また、前記刊行物1?6は、優先権主張を伴う本願に対する前記拒絶理由に対応して、頒布が本願の優先日前になされたものである。

3.引用刊行物とその主な記載事項
[1]刊行物1:特開平5-50286号公報
[1a]「Ag 3.0%超5.0重量%以下、Cu 0.5?3.0重量%、および残部Snの組成を有する合金から成る、耐熱疲労特性に優れたはんだ付け部を形成する高温はんだ。」(特許請求の範囲の請求項1)
[2]刊行物2:特開平8-215880号公報
[2a]「はんだ組成が、Sn残部、Ag0.5?3.5重量%、Cu0.5?2.0重量%からなる無鉛はんだ。」(特許請求の範囲の請求項1)
[3]刊行物3:米国特許第5527628号明細書(発行日1996年6月18日)
[3a]「A Pb-free electrical conductor solder consisting essentially of about 3.5 to about 7.7 weight % Ag, about 1.0 to about 4.0 weight % Cu and the balance essentially Sn wherein Sn is present in an amount of at least about 89 weight % Sn to promote formation of intermetallic compounds that improve solder strength and fatigue resistance.」(第7欄第43?48行、クレーム第1項)
[4]刊行物4:特開平6-269983号公報
[4a]「Agを重量比で5?20%、Snを重量比で70?90%、Cuを重量比で0.05?10%、Pdを重量比で0.05?2%さらにFe,Co,Niの少なくとも一種を重量比で0.05?1%からなることを特徴とするAg系はんだ。」(特許請求の範囲)
[4b]「Fe,Co,Niを重量比で0.05?1%とした理由は、0.05%未満では、濡れ性および機械的強度の向上が期待できないためであり、1%を超えると、固溶し難いことに加えて偏析の原因となって諸特性の低下を招くことになる。」(段落【0007】)
[4c]「引張り強度および伸びについては、厚さ×幅×長さが0.1×5×200mmの試験片にて測定を行い、剪断強度は図1に示すように厚さ×幅×長さが0.1×6×200mmの二枚の銅板の間に厚さ0.1mmで5mm四方の試験片を挟み、半田付けを施したものを用いて測定した。」(段落【0010】)
[5]刊行物5:特開平2-179388号公報
[5a]「Agを重量比で10?30%、Snを重量比で70?90%、Cu、In、Gaの一種以上を重量比で0.05?5%さらにFe、Niの一種以上を重量比で0.05?1%からなることを特徴とする低融点Agはんだ。」(特許請求の範囲)
[5b]「Fe、Niの一種以上を重量比で0.05?1%に限定した理由は、0.05%未満では機械的強度の向上が期待できないためであり、1%を超える添加では固溶し難くなり、むしろ諸特性の低下を招くことになる。」(第2頁左上欄第12?16行)
[5c]「第2実施例
Ag50g、Sn425g、Cu24g、In0.25g、Ni0.5g、Fe0.25gを合計した500gをタンマン炉で溶解し、インゴットを鍛造・切削後、圧延と焼鈍を繰り返し、厚さ0.1mmの薄板の加工した。
この薄板を幅5mm、長さ200mmに切断し、焼鈍を行って引張強度と伸びおよび硬さの測定用試料とした。
剪断強度も・・・、厚さ0.5mm、幅6mm、長さ200mmの二枚のCu条材の間に、厚さ0.1mmで5mm角のろう材を挟み、ろう付け後測定して表に示した。
また、拡り性(ぬれ性)も・・・、Ni板、Cu板を用いてN2+H2の混合ガス中で溶融点(液相)より40℃高い温度で5分保持してその状態を観察した。」(第2頁右上欄左下欄第10行)
[6]刊行物6:特開平2-179385号公報
[6a]「Agを重量比で10?30%、Snを重量比で70?90%さらにFe、Ni、Coの一種以上を重量比で0.05?1%からなることを特徴とする低融点Agはんだ。」(特許請求の範囲)
[6b]「Fe、Ni、Coの一種以上を重量比で0.05?1%に限定した理由は、0.05%未満では機械的強度の向上が期待できないためであり、1%を超えると固溶し難いことに加えて偏析の原因になってむしろ諸特性の低下を招くことになる。」(第2頁左上欄第4?8行)
[6c]「第2実施例
Ag50g、Sn445g、Fe0.25g、Ni0.75g、Co4gを合計した500gをタンマン炉で溶解し、インゴットを鍛造・切削後、圧延と焼鈍を繰り返し、厚さ0.1mmの薄板の加工した。
この薄板を幅5mm、長さ200mmに切断し、焼鈍を行って引張強度と伸びおよび硬さの測定用試料とした。
剪断強度も・・・、厚さ0.5mm、幅6mm、長さ200mmの二枚のCu条材の間に、厚さ0.1mmで5mm角のろう材を挟み、ろう付け後測定して表に示した。
また、拡り性(ぬれ性)も・・・、Ni板、Cu板を用いてN2+H2の混合ガス中で溶融点(液相)より40℃高い温度で5分保持してその状態を観察した。」(第2頁右上欄第6行?左下欄第1行)

4.当審の判断
4-1.刊行物1を主引例として
刊行物1には、上記[1a]のとおりの「Ag 3.0%超5.0重量%以下、Cu 0.5?3.0重量%、および残部Snの組成を有する合金から成る、耐熱疲労特性に優れたはんだ付け部を形成する高温はんだ。」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

(1)本願発明21と刊行物1発明との対比・判断
本願発明21と刊行物1発明を対比すると、刊行物1発明のはんだは、合金成分としての鉛を含まないものであることが明らかであるから、両者は、
「鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.5ないし5.0重量%の範囲のAg、
1.0ないし3.0重量%の範囲のCu、
並びに、残部の重量%がSnからなる鉛を含まないはんだ。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
本願発明21では、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するのに対し、刊行物1発明では、鉛を含まないはんだがFe、Coを含有することについて規定されていない点。

以下、上記相違点について検討する。
本願明細書の下記摘示A?E等の記載によれば、本願発明のはんだは、Cu母材に適用された場合、高Sn含量の鉛を含まないはんだに共通してみられる高温のエージングでのCuの拡散的移動による金属間界面の成長がFe、Coの添加元素により抑制され、はんだ継手の耐クリープ破壊性、耐疲労破壊性等の機械的強度が向上するとされている。
摘示A:「Sn-Ag-Cu共晶はんだの唯一の重大な欠陥は、はんだ/Cu母材界面で、特に高温のエージングで金属間層成長をしやすい傾向があることが判っており、この特徴は、実質的に全ての高含量Snの、Pbを含まないはんだに共通している。」(本願明細書第4頁第19?22行)
摘示B:「添加元素は、はんだ付け性を低下することなく、ミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を改良する方法で形態構造を有利に改良するおよび/または特に高温エージングからの金属間界面の成長を抑えることが出来る、Ni、Fe及び同様な作用をする元素から成る群から選ばれる。ニッケル及び鉄に加えて、この目的のため、別の同様な作用をする添加元素には、比較的高コストであり入手が不確実なため、比較的好ましくないコバルト(Co)が挙げられる。各添加元素は、少なくとも約0.01重量%の量で単独で加えてもよく、はんだ合金組成物の約0.5重量%を超えないのが好ましい。」(同第6頁第23行?第7頁第1行)
摘示C:「1種以上の添加元素を加えると、はんだ付けされる母材又は部材が一般的にCuの場合、Cu6Sn5の薄い層を一般的に含む凝固したままの金属間界面の形態構造が改良され、特に凝固したままの金属間界面の厚さが薄くなる。更に重要なことは、1種以上の添加元素を加えると、母材又は部材が一般的にCuである場合、形態構造が改良され、そして一般的にCu6Sn5とCu3SnのCu基の層を含む高温でエージングされた金属間界面の成長速度が抑えられる。・・・形態構造の改良は、優先的な成長ファセット又は金属間界面の表面を壊し、その代わりファセットのない、平坦でない界面成長表面を作る作用をするメカニズムによって達成されるようである。・・・置換的な元素添加物により金属間相に発生する余分の歪のために、母材又は部材から、成長中の金属間界面へCuが拡散的に移動するのを抑制するように作用するメカニズムによって、成長の抑制が行なわれるようである。また、1種以上の添加元素を加えることによって、母材又は部材から、はんだ本体へのCuの拡散的移動が抑制されることは、はんだミクロ組織の中の界面に近い金属間相、特にCu6Sn5の形成や過剰の成長を抑える役目をする。」(同第7頁第2?19行)
摘示D:「本発明のはんだを高温でエージングした金属間界面は、界面層の厚さを最小限に抑えて、はんだミクロ組織の本体の界面に近い溶質減損ゾーンの程度を減らす穏やかな速度で成長する。溶質減損ゾーンは、強度が大幅に落ちた純粋なSnから実質的に成っている。これらの2つの特徴、即ち所与のエージング曝露に対する薄くなった金属間界面、及び減少した溶質減損ゾーンによって、前記のはんだ継手の耐クリープ破壊性及び耐疲労破壊性が向上する。」(同第9頁第22?27行)
摘示E:「本発明のはんだ合金によって促進されると思われる金属間界面を通るCu拡散が最小に抑えられると、はんだミクロ組織の界面の近くの金属間の大きい析出相が大幅に減る。エージング後の大抵のSn基はんだに、このような大きい鋭い縁部の金属間粒子、一般的にCu6Sn5、があると、疲労き裂の核生成を促進することがある。前記の析出物の著しい減少、又は或る場合には消失によって、本発明のはんだ合金の大きくなった耐疲労性が更に増加する。」(同第9頁第28行?第10頁第5行)

これに対し、刊行物4の上記[4a]には、「Agを重量比で5?20%、Snを重量比で70?90%、Cuを重量比で0.05?10%、Pdを重量比で0.05?2%さらにFe,Co,Niの少なくとも一種を重量比で0.05?1%からなることを特徴とするAg系はんだ。」が記載され、また、この高Sn含量の鉛を含まないはんだにおけるFe、Co成分に関し、上記[4b]には、「Fe,Co,Niを重量比で0.05?1%とした理由は、0.05%未満では、濡れ性および機械的強度の向上が期待できないためであり、1%を超えると、固溶し難いことに加えて偏析の原因となって諸特性の低下を招くことになる。」と記載されており、Ag、Cu等を含有する高Sn含量の鉛を含まないはんだにおいて、機械的強度の向上等のために、Fe、Co等の1種以上を0.05?1重量%添加することが開示されているといえる。
また、刊行物5の上記[5a]には、「Agを重量比で10?30%、Snを重量比で70?90%、Cu、In、Gaの一種以上を重量比で0.05?5%さらにFe、Niの一種以上を重量比で0.05?1%からなることを特徴とする低融点Agはんだ。」が記載され、また、この高Sn含量の鉛を含まないはんだにおけるFe成分に関し、上記[5b]には、「Fe、Niの一種以上を重量比で0.05?1%に限定した理由は、0.05%未満では機械的強度の向上が期待できないためであり、1%を超える添加では固溶し難くなり、むしろ諸特性の低下を招くことになる。」と記載されており、Ag、Cu等を含有する高Sn含量の鉛を含まないはんだにおいて、機械的強度の向上等のために、Fe等を0.05?1重量%添加することが開示されているといえる。
さらに、刊行物6の上記[6a]には、「Agを重量比で10?30%、Snを重量比で70?90%さらにFe、Ni、Coの一種以上を重量比で0.05?1%からなることを特徴とする低融点Agはんだ。」が記載され、また、この高Sn含量の鉛を含まないはんだにおけるFe、Co成分に関し、上記[6b]には、「Fe、Ni、Coの一種以上を重量比で0.05?1%に限定した理由は、0.05%未満では機械的強度の向上が期待できないためであり、1%を超えると固溶し難いことに加えて偏析の原因になってむしろ諸特性の低下を招くことになる。」と記載されており、Ag等を含有する高Sn含量の鉛を含まないはんだにおいて、機械的強度の向上等のために、Fe、Co等の1種以上を0.05?1重量%添加することが開示されているといえる。
以上の刊行物4?6の開示に見られるように、Ag、Cu等を含有する高Sn含量の鉛を含まないはんだにおいて、機械的強度の向上等のために、Fe、Coの1種以上を0.05?1重量%添加することは、本願の優先日前において周知の技術といえる。
してみれば、刊行物1発明のAg、Cu等を含有する高Sn含量の鉛を含まないはんだにおいて、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するように構成することは、前示の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
しかも、本願明細書に記載された、Cu母材に適用された場合、高Sn含量の鉛を含まないはんだに共通してみられる高温のエージングでのCuの拡散的移動による金属間界面の成長がFe、Coの添加元素により抑制され、はんだ継手の耐クリープ破壊性、耐疲労破壊性等の機械的強度が向上する等の効果は、はんだをCu母材に適用し、高温でエージングした場合に得られるものであると認められるところ、本願発明21(乃至本願発明22)は、そのようなCu母材への適用や高温でのエージングについて限定されていないから、そのような効果は、本願発明21(乃至本願発明22)が必ず奏する効果とはいえない。また、上記[4c]、[5c]、[6c]の記載に見られるように、Fe、Coの1種以上が添加された高Sn含量の鉛を含まないはんだをCu母材に適用することは周知のことであるし、また、はんだ付け後に高温でエージングすることも周知であることを考慮すると、前記効果は、前示の周知技術において既に得られていた効果を確認したものとするのが相当であって、格別に顕著なものともいえない。
したがって、本願発明21は、本願の優先日前に国内において頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明22と刊行物1発明との対比・判断
本願発明22と刊行物1発明を対比すると、両者は、
「鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.0超ないし4.0重量%の範囲のAg、
0.5ないし3.0重量%の範囲のCu、
並びに、残部の重量%がSnからなる鉛を含まないはんだ。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
本願発明22では、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するのに対し、刊行物1発明では、鉛を含まないはんだがFe、Coを含有することについて規定されていない点。

上記相違点について検討するに、上記相違点は、上記(1)で述べたと同様に、前示の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
したがって、本願発明22は、本願発明21と同様に、本願の優先日前に国内において頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4-2.刊行物2を主引例として
刊行物2には、上記[2a]のとおりの「はんだ組成が、Sn残部、Ag0.5?3.5重量%、Cu0.5?2.0重量%からなる無鉛はんだ。」という発明(以下、「刊行物2発明」という)が記載されていると認められる。

(1)本願発明21と刊行物2発明との対比・判断
本願発明21と刊行物2発明を対比すると、刊行物2発明の「無鉛はんだ」は、「鉛を含まないはんだ」といえるから、両者は、
「鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.5重量%のAg、
1.0ないし2.0重量%の範囲のCu、
並びに、残部の重量%がSnからなる鉛を含まないはんだ。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
本願発明21では、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するのに対し、刊行物2発明では、鉛を含まないはんだがFe、Coを含有することについて規定されていない点。

上記相違点について検討するに、上記相違点は、上記4-1.の(1)で述べたと同様に、前示の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
したがって、本願発明21は、本願の優先日前に国内において頒布された刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明22と刊行物2発明との対比・判断
本願発明22と刊行物1発明を対比すると、両者は、
「鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.0ないし3.5重量%の範囲のAg、
0.5ないし2.0重量%の範囲のCu、
並びに、残部の重量%がSnからなる鉛を含まないはんだ。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
本願発明22では、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するのに対し、刊行物2発明では、鉛を含まないはんだがFe、Coを含有することについて規定されていない点。

上記相違点について検討するに、上記相違点は、上記上記4-1.の(1)等で述べたと同様に、前示の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
したがって、本願発明22は、本願発明21と同様に、本願の優先日前に国内において頒布された刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4-3.刊行物3を主引例として
刊行物3のクレーム第1項についての上記[3a]の記載からみて、刊行物3には、
「鉛を含まない電気伝導性のはんだであって、約3.5ないし約7.7重量%のAg、約1.0ないし約4.0重量%のCu、並びにSnから実質的になる残部、から実質的になり、Snは、はんだ強度と耐疲労性を向上する金属間化合物の形成を促進するため少なくとも約89重量%の量で存在することを特徴とする鉛を含まないはんだ。」という発明(以下、「刊行物3発明」という)が記載されていると認められる。

(1)本願発明21と刊行物3発明との対比・判断
本願発明21と刊行物3発明を対比すると、両者は、
「鉛を含まないはんだは、重量%で、
3.5ないし7.7重量%の範囲のAg、
1.0ないし4.0重量%の範囲のCu、
並びに、残部の重量%がSnからなる鉛を含まないはんだ。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
本願発明21では、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するのに対し、刊行物3発明では、鉛を含まないはんだがFe、Coを含有することについて規定されていない点。

上記相違点について検討するに、上記相違点は、上記4-1.の(1)等で述べたと同様に、前示の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
したがって、本願発明21は、本願の優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明22と刊行物3発明との対比・判断
本願発明22と刊行物3発明を対比すると、両者は、
「鉛を含まないはんだは、重量%で、
約3.5ないし4.0重量%の範囲のAg、
約1.0ないし4.0重量%の範囲のCu、
並びに、残部の重量%がSnからなる鉛を含まないはんだ。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
本願発明22では、鉛を含まないはんだが「0.5重量%を超えない範囲でFeとCoとの少なくとも1種の添加元素又は合計が1.0重量%を超えない範囲で前記FeとCoとの双方の添加元素」を含有するのに対し、刊行物3発明では、鉛を含まないはんだがFe、Coを含有することについて規定されていない点。

上記相違点について検討するに、上記相違点は、上記4-1.の(1)等で述べたと同様に、前示の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
したがって、本願発明22は、本願発明21と同様に、本願の優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
本願発明21乃至本願発明22は、以上のとおり、本願の優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明21乃至本願発明22は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-25 
結審通知日 2006-05-26 
審決日 2006-06-06 
出願番号 特願平10-534831
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 平塚 義三
吉水 純子
発明の名称 鉛を含まないはんだ  
代理人 西郷 義美  

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