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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1166363
審判番号 不服2005-21331  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-04 
確定日 2007-10-18 
事件の表示 特願2002-269826「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-179062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月26日に出願した特願平7-158835号の一部を平成14年9月17日に新たな特許出願としたものであって、平成16年12月3日付け拒絶理由通知に対して、平成17年2月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月5日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成17年12月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項3を補正するものであって、補正後の請求項3に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項3】 請求項1または請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記溝パターンを形成する工程において、前記複数の島パターンのうち、前記溝パターンが定義される前記絶縁層の側壁と該側壁に隣り合って配置する島パターンは、1μm以下の範囲で該側壁から離間させて形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

本件補正は、補正前の請求項3の「前記溝パターンが定義される前記絶縁層の側壁と該側壁に隣り合って配置する島パターンは、1μm以下の範囲で該側壁から離間させて改正する」を補正後の請求項3の「前記溝パターンが定義される前記絶縁層の側壁と該側壁に隣り合って配置する島パターンは、1μm以下の範囲で該側壁から離間させて形成する」と補正するものであって、「改正する」との記載を「形成する」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものであるから、平成6年改正前特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
また、本願の願書に最初に添付された明細書の【0019】段落に「島パターン14と溝パターン13の側壁との間がd1=1μm以下の間隔に保たれるように配置される。」と記載されており、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、平成6年改正前特許法第17条の2第2項で準用する特許法第17条第2項に規定する要件を満たしている。

3.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年12月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 酸化膜からなる絶縁層を設ける工程と、
前記絶縁層とほぼ同じ高さに達し、互いに1μm以下の範囲で離間した絶縁性の複数の島パターンを伴う溝パターンを前記絶縁層に形成する工程と、
前記絶縁層上及び前記溝パターン内に銅からなる導電層を設けて、前記溝パターン内を該導電層で埋め込む工程と、
前記絶縁層が露出するまで前記導電層を化学的機械研磨によって研磨し、前記溝パターン内に前記導電層からなる埋め込み配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。」

4.刊行物に記載された発明
(1)特開平6-318590号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-318590号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図1とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 半導体基板上に設けた第1の絶縁膜の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜を選択的にエッチングして内部に柱状又はスリット状にパターニングされた前記第2の絶縁膜を配列して残した格子状の配線形成用溝を形成する工程と、前記溝を含む表面に金属膜を堆積して前記溝内を充填する工程と、前記金属膜および第2の絶縁膜の上面を化学機械研磨法により研磨して前記溝内に前記金属膜を埋込んで上面を平坦化し埋込配線を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
「【0011】まず、図1(a),(b)に示すように、半導体基板1の上に形成した絶縁膜2の上にBPSG膜3を0.7μmの厚さに形成してパターニングし、内部に柱状(又はスリット状)絶縁膜6を配列して残したボンディングパッド形成用の開口部4および配線形成用の溝5のそれぞれを形成する。
【0012】次に、図1(c)に示すように、開口部4および溝5を含む表面に高温スパッタ法又はスパッタリフロー法によりAlSiCu膜7を堆積して開口部4および溝5内に充填する。
【0013】次に、図1(d)に示すように、化学機械研磨法を用いてAlSiCu膜7およびBPSG膜3の上面を研磨し、BPSG膜3の厚さが0.5μm程度になるように研磨して開口部4および溝5内にAlSiCu膜7を埋込み表面を平坦化する。」
「【0016】このように、開口面積の広いパッド形成用開口部や配線形成用溝内に予め柱状(又はスリット状)絶縁膜を設けて開口部を細分化することにより化学機械研磨による過剰な研削を防止することができる。」
また、図1(c)にはAlSiCu膜がBPSG膜上及び溝内に堆積されることが図示されている。

ここで、刊行物1の請求項1の記載と【0011】段落の記載とを対応させると、「ボンディングパッド形成用の開口部4および配線形成用の溝5」は、「格子状の配線形成用溝」であるといえる。
したがって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「半導体基板の上に形成した絶縁膜の上にBPSG膜を形成する工程と、
前記BPSG膜をパターニングし、内部に柱状絶縁膜を配列して残した格子状の配線形成用溝を形成する工程と、
前記溝を含む表面にAlSiCu膜を堆積して、前記溝内に充填する工程と、
前記AlSiCu膜および前記BPSG膜の上面を化学機械研磨法を用いて研磨し、前記溝内に前記AlSiCu膜を埋込み表面を平坦化し埋込配線を形成する工程と、
を有する、半導体装置の製造方法。」

(2)特開平7-86282号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平7-86282号公報(平成7年3月31日公開。以下、「刊行物2」という。)には、図1ないし図2、図5とともに以下の事項が記載されている。
「【0024】配線を形成したい下地31としてこの実施例では半導体基板33上に中間絶縁膜35を具えたものを用いる。この下地31の中間絶縁膜35に、形成したい配線のパターンに応じた配置で溝37を、公知のリソグラフィ技術及びエッチング技術により形成する。・・・
【0025】溝37の形成が済んだ下地31に、後の配線形成材料の凝集を促進するための凝集促進膜39としてこの実施例では、Mo、W及びTiNから選ばれた1種の材料の薄膜で厚さが100nmの薄膜を、形成する(図1(B))。・・・
【0026】凝集促進膜39の形成が済んだ下地上に、スパッタ装置の成膜室(図示せず)の真空を破壊することなく、配線形成材料の薄膜41としてCuの薄膜を連続的に形成する(図2(A))。・・・
【0027】Cu薄膜41の形成が済んだ下地に対し、それをスパッタ装置の成膜室から出すことなく(大気にさらすことなく)、該薄膜41を前記溝37内に凝集させるための熱処理をする。この熱処理の温度はCuの凝集が生じる温度以上とする。・・・上記熱処理において下地31の溝37内がCuにより完全に埋められる。」
「【0033】ここでは、第1実施例の手順で下地31に溝37を形成しさらに凝集促進膜39を形成した試料に膜厚が700nm(第1実施例の場合の2倍強)の配線形成材料の薄膜41が形成された場合を考える(図5(A))。この試料に配線形成材料を凝集させるための熱処理を第1実施例と同様な条件で実施すると、配線形成材料の薄膜の膜厚が厚すぎるため、溝外の下地部分上にも配線形成材料は残る(図5(B))。そこで、溝外の下地部分上に残存している配線形成材料とさらに溝外の下地部分上に残存している凝集促進膜双方を研磨により除去する。この研磨は、この実施例では化学的機械研磨(CMP)法により、中間絶縁膜33の表面が露出されるまで行う。これにより、溝37内にのみ配線形成材料が残存するので、所望の配線41xが得られる(図5(C))。」

(3)特開平7-99196号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平7-99196号公報(平成7年4月11日公開。以下、「刊行物3」という。)には、図2とともに以下の事項が記載されている。
「【0022】まず図2(a)では、チタンタングステンバリヤメタル24を堆積したシリコン酸化膜28に形成した溝及び、コンタクトホール27を有する半導体素子形成用ウエハー21を半導体素子形成表面を表にし、スピンコーター12上にセットした。・・・
【0023】次に図2(b)はこのように前処理したウエハー21をホルマリン150ml/L、エチレンジアミン10g/L、チオ尿素少量、硫酸銅29g/L、水酸化ナトリウム40g/Lの割合で調合した無電解銅めっき浴23中に空気撹はんを行いながら、ウエハー21を静かに揺動させながら1時間浸積させると、約1μmの膜厚で半導体素子形成表面全面に銅膜25をめっきすることができた(図2(c))。
【0024】そして図2(d)では、化学機械的研磨(CMP)を行ない、埋め込み溝以外の余分な部分の銅25を除去することで、銅の埋め込み配線を形成できた。」

(4)特開平7-122642号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平7-122642号公報(平成7年5月12日公開。以下、「刊行物4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0023】かかる問題を解決する一手段として銅(Cu)を配線材料として用いることが提案されている。しかしながら、Cuの適切なエッチング方法が無くCuの加工性が良くないこと、非常に酸化され易く酸素を数%含む炉内での熱処理を行うことができないこと等、種々の問題を有している。加工性の問題は、絶縁層に溝部を形成し、かかる溝部を含む絶縁層上にCuを堆積させた後、絶縁層上のCuをケミカルメカニカルポリッシュ法にて化学的・機械的に研磨することによって回避することができる。」

(5)特開平6-120219号公報
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-120219号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図1とともに以下の事項が記載されている。
「【0020】まず、図1(a)に示すように、半導体基板1の上に酸化シリコン膜2を形成した後、酸化シリコン膜2の表面にリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、深さ0.5μmの配線形成用パターンを有する溝を形成する。
【0021】次に、図1(b)に示すように、溝を含む酸化シリコン膜2の上にスパッタ法により厚さ0.1μmのCr膜3及び厚さ0.7μmのCu膜4を順次堆積して形成する。
【0022】次に、図1(c)に示すように、Cu膜4の表面を約1.5J/cm2 のエネルギーを持つエキシマレーザビームで照射し、Cu膜4を流動せしめ、溝の内部に埋め込み表面を平坦化する。
【0023】次に、図1(d)に示すように、Cu膜4の上面を化学-機械研磨法により研磨し、溝部以外のCu膜4及びCr膜3を順次除去して酸化シリコン膜2の上面を露出させ、表面を平坦化する。」

5.対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。
(a)刊行物発明の「BPSG膜」がボロン及びリンを含んだシリコン酸化膜からなる絶縁層であることは技術常識である。よって、刊行物発明の「半導体基板の上に形成した絶縁膜の上にBPSG膜を形成する工程」は、本願発明の「酸化膜からなる絶縁層を設ける工程」に相当する。
(b)刊行物発明では「BPSG膜をパターニングし、内部に柱状絶縁膜を配列して残した格子状の配線形成用溝を形成」しており、膜をパターニングしたときに残される部分は膜の高さが変更されないことが通常であるから、刊行物発明において柱状絶縁膜はBPSG膜とほぼ同じ高さに達していることは明らかである。また、「柱状絶縁膜を配列して」いるから、刊行物発明において柱状絶縁膜が複数存在し、互いに離間していることは明らかである。さらに、刊行物発明の「柱状絶縁膜」は「BPSG膜をパターニングし」て形成されており、パターニングされてそれぞれ独立した柱状絶縁膜は島であるといえるから、刊行物発明の「柱状絶縁膜」は、本願発明の「絶縁性の」「島パターン」に相当する。そして、「柱状絶縁膜」は「格子状の配線形成用溝」の「内部に」「配列」されているのであるから、刊行物発明において格子状の配線形成用溝は柱状絶縁膜を伴うことは明らかである。また、「格子状の配線形成用溝」は「BPSG膜をパターニングし」て形成されているのであるから、刊行物発明の「格子状の配線形成用溝」は、本願発明の「溝パターン」に相当し、BPSG膜に形成されていることは明らかである。よって、刊行物発明の「前記BPSG膜をパターニングし、内部に柱状絶縁膜を配列して残した格子状の配線形成用溝を形成する工程」は、本願発明の「前記絶縁層とほぼ同じ高さに達し、互いに」「離間した絶縁性の複数の島パターンを伴う溝パターンを前記絶縁層に形成する工程」に相当する。
(c)刊行物発明の「AlSiCu膜」は本願発明の「導電層」に相当する。
(d)刊行物1の図1(c)にはAlSiCu膜がBPSG膜上及び溝内に堆積されることが図示されているから、刊行物発明の「溝を含む表面」は、溝内及びBPSG膜上を意味することは明らかである。よって、上記(a)及び(c)を参照すると、刊行物発明の「前記溝を含む表面にAlSiCu膜を堆積して、」は本願発明の「前記絶縁層上及び前記溝パターン内に」「導電層を設けて、」に相当する。
(e)刊行物発明では「AlSiCu膜を堆積して、前記溝内に充填」しており、これは溝内をAlSiCu膜で埋め込むことに他ならないから、上記(b)及び(c)を参照して、刊行物発明の「前記溝内に充填する」ことは、本願発明の「前記溝パターン内を該導電層で埋め込む」ことに相当する。
(f)刊行物発明において「前記AlSiCu膜および前記BPSG膜の上面を」「研磨」するときには、刊行物1の【0011】段落及び【0013】段落の記載から、0.7μmの厚さに形成されたBPSG膜の厚さが0.5μm程度に減少するまで研磨している。そして、上記(d)を参照すると、BPSG膜上にはAlSiCu膜が堆積されており、BPSG膜の厚さが減少するまで研磨したときにはBPSG膜上のAlSiCu膜は全て除去されることは当然であるから、刊行物発明において研磨はBPSG膜の表面が露出するまで行われていることは明らかである。また、刊行物発明の「化学機械研磨法を用いて研磨」することと本願発明の「化学的機械研磨によって研磨」することとは、表現上の差異であって同一の研磨工程である。よって、上記(a)及び(c)を参照すると、刊行物発明の「前記AlSiCu膜および前記BPSG膜の上面を化学機械研磨法を用いて研磨し、」は本願発明の「前記絶縁層が露出するまで前記導電層を化学的機械研磨によって研磨し、」に相当する。
(g)刊行物発明の「前記AlSiCu膜を埋込み表面を平坦化し埋込配線を形成する」ことによって、AlSiCu膜からなる埋込配線が形成されることは明らかであり、刊行物発明の「埋込配線」は本願発明の「埋め込み配線」に相当するから、上記(c)を参照すると、刊行物発明の「前記AlSiCu膜を埋込み表面を平坦化し埋込配線を形成する」ことは本願発明の「前記導電層からなる埋め込み配線を形成する」ことに相当する。
よって、本願発明と刊行物発明とは、以下の点で一致する。
「酸化膜からなる絶縁層を設ける工程と、
前記絶縁層とほぼ同じ高さに達し、互いに離間した絶縁性の複数の島パターンを伴う溝パターンを前記絶縁層に形成する工程と、
前記絶縁層上及び前記溝パターン内に導電層を設けて、前記溝パターン内を該導電層で埋め込む工程と、
前記絶縁層が露出するまで前記導電層を化学的機械研磨によって研磨し、前記溝パターン内に前記導電層からなる埋め込み配線を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。」

一方で、両者は以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は「前記絶縁層とほぼ同じ高さに達し、互いに1μm以下の範囲で離間した絶縁性の複数の島パターンを伴う溝パターンを前記絶縁層に形成する工程」を有しているのに対し、刊行物発明は「前記BPSG膜をパターニングし、内部に柱状絶縁膜を配列して残した格子状の配線形成用溝を形成する工程」を有するものの、柱状絶縁膜の間隔については明らかでない点。
[相違点2]
本願発明は「銅からなる導電層を設けて、前記溝パターン内を該導電層で埋め込む工程」を有しているのに対し、刊行物発明はAlSiCu膜を堆積して、溝内に充填している点。

6.判断
以下、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
刊行物1には「このように、開口面積の広いパッド形成用開口部や配線形成用溝内に予め柱状(又はスリット状)絶縁膜を設けて開口部を細分化することにより化学機械研磨による過剰な研削を防止することができる。」(【0016】段落)と記載されていることから、刊行物発明の柱状絶縁膜は、開口部を細分化することにより、化学機械研磨による過剰な研削を防止する効果を発揮するものである。そして、開口部を細分化することは、側壁及び柱状絶縁膜からなる格子状の配線形成用溝を規定する絶縁物間の間隔を、側壁間の間隔よりも小さくすることであるといえる。よって、刊行物には側壁及び柱状絶縁膜からなる格子状の配線形成用溝を規定する絶縁物間の間隔を小さくすることにより、化学機械研磨による過剰な研削を防止するという技術思想が開示されている。また、刊行物発明は、柱状絶縁膜を設けて開口部を細分化することにより、化学機械研磨による過剰な研削を防止する効果を発揮するものであるから、細分化の程度を大きくすることにより大きな効果が期待できることは、当業者が直ちに想到し得ることである。してみれば、刊行物1に記載の技術思想に基づいて、刊行物発明において柱状絶縁膜からなる格子状の配線形成用溝を規定する絶縁物間の間隔が小さいことを規定するとともに、その数値範囲を好適化することは、当業者にとって格別困難であるとはいえない。
一方、本願発明において「1μm以下」との記載の根拠としている図2について検討すると、本願の発明の詳細な説明には、図2の関係を得た際の化学的機械研磨の具体的な条件、例えば、研磨液、研磨粒子の種類、研磨粒子の粒径、研磨パッドの種類、研磨パッドの圧力、研磨時間、配線数、配線密度、配線長さ、配線パターン形状などが記載されていないため、いかなる条件で化学的機械研磨を行えば、ディッシングの生じないパターン間隔である「1μm以下」という値が得られるのかが明確ではない。また、ディッシングの生じないパターン間隔は、化学的機械研磨の上記各条件によって、変わり得る蓋然性が高いと判断されるから、上記相違点における「1μm以下」という数値限定は臨界的意義を有するとはいえない。
よって、刊行物発明において、柱状絶縁膜からなる溝を規定する絶縁物間の間隔が小さいことを規定し、その上限値の1μmと規定すること、すなわち本願発明のように「前記絶縁層とほぼ同じ高さに達し、互いに1μm以下の範囲で離間した絶縁性の複数の島パターンを伴う溝パターンを前記絶縁層に形成する工程」とすることは、当業者が容易になしえたものである。
[相違点2について]
刊行物2ないし刊行物5に記載されるように、絶縁層上及び絶縁層に形成された溝パターン内に導電層を設けて、溝パターン内を埋め込んだ後、絶縁層が露出するまで導電層を化学的機械研磨によって研磨して埋め込み配線を形成する際に、導電層として銅からなるものを用いる技術は周知のものである。また、配線を構成する金属材料として、AlSiCuも銅も、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものであり、刊行物発明の金属膜の材料としてAlSiCu以外の金属材料を用いることに何ら阻害要因はない。
よって、刊行物発明において、AlSiCu膜に代えて、周知の銅からなる導電層を採用し、本願発明のように「銅からなる導電層を設けて、前記溝パターン内を該導電層で埋め込む工程」とすることは当業者が容易になしえたものである。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願は、請求項2ないし請求項4に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-15 
結審通知日 2007-08-21 
審決日 2007-09-03 
出願番号 特願2002-269826(P2002-269826)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次長谷山 健  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 齋藤 恭一
井原 純
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 船橋 國則  

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