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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03M |
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管理番号 | 1166431 |
審判番号 | 不服2002-23252 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-02 |
確定日 | 2007-10-25 |
事件の表示 | 特願2000-564304「通信システムのチャネル符号/復号装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年2月17日国際公開,WO00/08767,平成14年7月23日国内公表,特表2002-522943〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,1999年8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年8月6日,大韓民国)を国際出願日とする出願であって,平成14年8月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年12月26日付けで手続補正がなされたものであるが,平成17年3月23日付け補正却下の決定により上記手続補正〔審判請求時の手続補正〕が却下されるとともに,平成17年4月18日付けで当審から拒絶の理由が通知され,これに対し,同年10月19日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1及び17に係る発明は,平成14年5月30日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び17に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 フレームデータの予め設定された位置に少なくとも一つの特定ビットを挿入した後に符号化したシンボルを受信する受信器のチャネル復号装置において, 前記シンボルを受信して情報シンボル,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサと, 前記情報シンボル内の予め設定された挿入位置で特定値を有するシンボルを挿入し,他の位置では前記受信される情報シンボルをそのまま出力するシンボル挿入器と, 前記シンボル挿入器から出力される情報シンボルと前記第1パリティシンボルを復号して,第1復号シンボルを発生する第1復号器と, 前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと前記第2パリティシンボルを復号して,第2復号シンボルを発生する第2復号器と, 前記第2復号器の出力をデインタリービングするデインタリーバと,から構成されることを特徴とするチャネル復号装置。」 「【請求項17】 ターボ符号化と復号の装置において, 前記ターボ符号化装置は, 受信した情報ビットストリームの予め設定された位置に,少なくとも一つのビットを挿入するビット挿入器と, ビットが挿入された位置で情報ビットストリームを符号化し,第1パリティシンボルストリームを発生する第1符号化器と, 情報ビットストリームをインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバの出力を符号化して,第2パリティシンボルストリームを発生する第2符号化器と, 前記ビット挿入器の出力と前記第1符号化器の出力と前記第2符号化器の出力とを多重化し,チャネル符号化シンボルストリームを出力する多重化器と を備え, 前記ターボ復号装置は, 前記チャネル符号化されたシンボルを受信し,情報シンボル,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルを逆多重化するデマルチプレクサと, 前記デマルチプレクサから出力される情報シンボルと前記第1パリティシンボルを復号して第1復号シンボルを発生する第1復号器と, 前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと前記第2パリティシンボルの復号を実行して第2復号シンボルを発生する第2復号器と, 前記第2復号シンボルをデインタリービングして,復号データを生成する第1デインタリーバと を備えることを特徴とするチャネルの符号化と復号の装置。」 なお,請求項17については,デマルチプレクサに関して「チャネル符号化されたシンボルを受信し,情報シンボル,第1パリティシンボル,第1パリティシンボルを逆多重化する」と記載されているものの,前後の文脈及び各技術的手段から判断して「チャネル符号化されたシンボルを受信し,情報シンボル,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルを逆多重化する」の誤記と認められるから,本願の請求項17に係る発明を上記のように認定した。 3.引用発明及び周知技術 (1)これに対して,当審の拒絶の理由に引用された C.Berrou et al. , NEAR SHANNON LIMIT ERROR-CORRECTING CODING AND DECODING : TURBO-CODES(1) ,Proceedings of IEEE ICC'93 , May 1993 , Vol. 2 , pp.1064-1070(以下「引用例」という。)には,図面とともに,以下の旨が記載されている。 (ア)「II RSC符号の並列連結 RSC符号(再帰的組織畳込み符号)では,並列連結と呼ばれる新しい連結構成を用いることができる。並列連結している二つの同一の RSC符号の一例を,図2に示す。基本符号化器(C1 及び C2)の両者は同じ入力ビット dk を用いるが,インタリーバが存在するので,ビット dk のシーケンスは異なっている。入力ビットシーケンス{dk}について,k 時点における符号化器出力 Xk と Yk は,それぞれ dk(組織符号化器)と,符号化器 C1 の出力 Y1k 又は符号化器 C2 の出力 Y2k に等しい。符号化器 C1 と C2 の符号化された出力(Y1k,Y2k)を,それぞれ,n1 回及び n2 回使用し,またそれを継続する場合には,符号化器 C1 のレート R1 と符号化器 C2 のレート R2 は下記に等しい。」(第1065頁左欄第1?13行) (イ)図2からは「情報ビットストリームを符号化し,第1パリティシンボルストリームを発生する第1符号化器と,前記情報ビットストリームをインタリービングするインタリーバと,前記インタリーバの出力を符号化して,第2パリティシンボルストリームを発生する第2符号化器とを備え,前記情報ビットストリームと,多重化された前記第1符号化器の出力と前記第2符号化器の出力とを出力するターボ符号化装置」が読み取れる。 (ウ)図3bからは「情報シンボルと,多重化されたパリティシンボルを受信し,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサと,前記情報シンボルと前記第1パリティシンボルを復号して,第1復号シンボルを発生する第1復号器と,前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと,前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと前記第2パリティシンボルを復号して,第2復号シンボルを発生する第2復号器と,前記第2復号シンボルをデインタリービングするフィードバック用のデインタリーバ及び復号データ生成用のデインタリーバ,から構成されるターボ復号装置。」が読み取れる。 ここで,上記(イ)のターボ符号化装置から出力される「情報ビットストリームと,多重化された第1符号化器の出力と第2符号化器の出力」及び上記(ウ)のターボ復号装置で受信される「情報シンボルと,多重化されたパリティシンボル」は,「ターボ符号化されたシンボル」といえる。 したがって,上記引用例の記載及び図面,並びにこの分野における技術常識を考慮すると,上記引用例には,以下の2つの発明が記載されているものと認められる。 「ターボ符号化されたシンボルを受信する受信器のターボ復号装置において, シンボルを受信して第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサと, 情報シンボルと前記第1パリティシンボルを復号して,第1復号シンボルを発生する第1復号器と, 前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと前記第2パリティシンボルを復号して,第2復号シンボルを発生する第2復号器と, 前記第2復号器の出力をデインタリービングするフィードバック用のデインタリーバ及び復号データ生成用のデインタリーバと,から構成されるターボ復号装置。」(以下「引用発明1」という。) 「ターボ符号化と復号の装置において, 前記ターボ符号化装置は, 情報ビットストリームを符号化し,第1パリティシンボルストリームを発生する第1符号化器と, 情報ビットストリームをインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバの出力を符号化して,第2パリティシンボルストリームを発生する第2符号化器と, 前記第1符号化器の出力と前記第2符号化器の出力とを多重化し,パリティシンボルを出力する多重化器とを備え, 情報ビットストリームと前記パリティシンボルとからなるターボ符号化されたシンボルを出力し, 前記ターボ復号装置は, 前記ターボ符号化されたシンボルを受信し, 前記パリティシンボルを第1パリティシンボルと第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサと, 情報シンボルと前記デマルチプレクサから出力される前記第1パリティシンボルを復号して第1復号シンボルを発生する第1復号器と, 前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと前記第2パリティシンボルの復号を実行して第2復号シンボルを発生する第2復号器と, 前記第2復号シンボルをデインタリービングするフィードバック用のデインタリーバ及び復号データ生成用のデインタリーバと を備えることを特徴とするターボ符号化と復号の装置。」(以下「引用発明2」という。) (2)当審の拒絶の理由に引用された特開平5-55932号公報(以下「周知例1」という。)及び特開平5-183448号公報(以下「周知例2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 畳み込み誤り訂正符号化すべき情報信号系列に,1ビットまたは複数ビットの固定値(0または1)を挿入する固定ビット挿入部と,固定ビットが挿入された情報信号系列を入力とする畳み込み誤り訂正符号化回路とを有する誤り訂正符号化装置と,固定ビット挿入位置の情報を記憶した固定ビット挿入位置記憶回路と,固定ビット位置に対応する状態遷移を固定ビットの値(0または1)で決まる1通りのみに制限して送信信号の最尤復号を行う畳み込み誤り訂正復号化回路とを有する誤り訂正復号化装置とを備えた誤り訂正符復号化装置。 【請求項2】 畳み込み誤り訂正符号化すべき情報信号系列のうち,誤り感度の高い重要なビットを,畳み込み符号化の最初および最後ならびに挿入した固定ビットの前後のなるべく固定ビットに近い位置に配するようにした請求項1記載の誤り訂正符復号化装置。」(周知例1,第2頁左欄,特許請求の範囲の請求項1,2) (イ)「【0028】 【発明の効果】本発明は,上記実施例から明らかなように,誤り訂正符号化すべき情報信号系列に,1ビットまたは複数ビットの固定値(0または1)を挿入してから誤り訂正符号化するため,復号側のビタビ復号において,トレリス線図の固定ビット位置に対応する状態遷移を固定ビットの値(0または1)で決まる1通りのみの正しい分岐に絞ることができ,畳み込み符号の誤り訂正能力,特に固定ビットを挿入したビット位置の前後の情報信号に対する誤り訂正能力を高めることができる。」(周知例1,第4頁第5欄,段落28) (ウ)「【請求項1】 畳込み誤り訂正符号化手段としてフィードバック付き組織符号器を具備する誤り訂正符復号化装置において, 符号化側に, 前記符号器に入力する情報信号系列に1または複数のビットを挿入するビット挿入手段と, 前記ビットが前記符号器に入力したとき,該符号器のシフトレジスタの値が固定値になるように該ビットの値を演算する挿入ビット演算手段とを備え, 復号化側に, 前記ビットの情報信号系列への挿入位置を記憶する挿入ビット位置記憶手段と, 前記挿入位置の情報を利用して前記ビットに対応する状態遷移を制限することにより受信信号の最尤復号を行なう畳込み誤り訂正復号化手段とを備えたことを特徴とする誤り訂正符復号化装置。 【請求項2】 前記フィードバック付き組織符号器により符号化される情報信号のうち,誤り感度の高い重要ビットを情報信号系列の最初または最後もしくは前記ビット挿入手段によるビットの挿入位置の近傍に配置するビット配置手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の誤り訂正符復号化装置。」(周知例2,第2頁左欄,特許請求の範囲の請求項1,2) (エ)「【0041】 【発明の効果】以上の実施例の説明から明らかなように,本発明の誤り訂正符復号化装置では,フィードバック付き組織符号器を符号化回路として具備しながら,非組織符号器の場合と同様に,挿入ビットの挿入位置の前後の情報信号に対する誤り訂正能力を高めることができる。」(周知例2,第5頁第5欄,段落41) つまり,周知例1,2に記載されたように,畳込み誤り訂正符号化において,誤り訂正能力を高めるために,符号化する際に,情報信号系列に1又は複数のビットからなる固定ビット・挿入ビットを挿入することは,周知技術である。 (3)前審の拒絶の理由に引用された特公平1-52937号公報(以下「周知例3」という。)には,図面(図7?9)とともに,以下の事項が記載されている。 (ア)「第8図は送信回路各部の信号を示す図で,1,18,19は第7図の1,18,19に対応しており,1は伝送すべきデイジタル信号,18は同期語を挿入した信号,19は符号化送信デイジタル信号を表わしている。また,20は同期語と隣接するデイジタル信号から生成される符号化信号,21は同期語により決定される固定パターンを示している。 第9図は本発明の1実施例の復号回路を示すブロツク図であつて,22はメトリツク演算回路,23はパスメモリ,24はパスメモリ選択回路,18は入力信号,25は固定パターンを強制的に入力する信号,26は最尤判定回路,27は強制的にパスを選択する信号を表わしている。 この回路は同期語のない所では通常のビタビ復号を行ない,フレーム周期に入力される固定パターン21を受信した時のみ,受信信号ではなく既知である固定パターンを用いてメトリツク演算を行ない,また,最尤パス判定において,メトリツク演算による結果ではなく,25により検出した同期語のパターンに従つて判定を行なうごとく動作するものである。」(第2頁第4欄第17?38行) (イ)「同期語情報を誤り訂正に寄与せしめることができるので復号効率の高い通信を実現し得るから効果は大である。」(第3頁第5欄第10?13行) つまり,周知例3には,同期語情報を誤り訂正に寄与せしめ,復号効率の高い通信を実現するために,伝送すべきデイジタル信号に同期語を挿入し符号化を行い,復号回路において,同期語によって決定される固定パターンを強制的に入力し,フレーム周期に入力されている固定パターンを受信した時のみ,受信信号ではなく,既知である固定パターンを用いてメトリック演算(最尤パス判定)を行う周知技術が記載されている。 (4)周知例として提示する特開平6-261304号公報(以下「周知例4」という。)には,図面(図1?3)とともに,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0011】[発明の構成] 【課題を解決するための手段】本発明に係る誤り訂正回路は,記録系又は送信系において,入力データが有効データであるか無効データであるかを判別する判別手段と,前記入力データの無効データに代えて所定の既知データを配列したデータ列を出力する既知データ挿入手段と,この既知データ挿入手段の出力に同期信号及びアドレスデータを付加すると共に,少なくとも有効データ及び既知データに対する誤り検出符号を付加する付加手段と,前記既知データ挿入手段による既知データの挿入期間に前記同期信号,アドレスデータ及び誤り検出符号の少なくとも1つを所定の規則で変化させる変換手段と,再生系又は受信系において,前記記録系又は送信系からの再生データ又は受信データが与えられるメモリ手段と,前記再生データ又は受信データから前記変換手段による規則の変化を検出する検出手段と,この検出手段の検出結果に基づいて前記既知データの挿入期間に前記記録系又は送信系の既知データと同一の既知データを発生する既知データ発生手段と,前記既知データの再生データ又は受信データに代えて前記既知データ発生手段からの既知データを前記メモリ手段に格納させて読出すメモリ制御手段とを具備したものである。 【0012】 【作用】本発明において,判別手段は入力データの有効,無効を判別し,既知データ挿入手段は,判別手段の判別結果に基づいて,入力データの無効データに代えて所定の既知データを挿入する。変換手段は,既知データの挿入期間に同期信号,アドレスデータ及び誤り検出符号の少なくとも1つを所定の規則で変化させる。再生系又は受信系においては,この規則の変化を検出手段が検出する。既知データ発生手段は,検出手段の検出結果に基づいて記録又は送信時と同一の既知データを発生する。メモリ制御手段は,この既知データを再生データの無効部分に代えてメモリ手段に格納して読出す。これにより,無効データ部分が記録又は送信時に歪を受けた場合でも,無効データ部分は完全に再現して,誤り訂正能力の全てを有効なデータ部分に発揮させる。」(第3頁第3欄,段落11,12) (イ)「【0030】メモリ素子42は,先ず,図5に示すように,図3の既知データ領域の再生データに代えて,既知データセット回路44からの既知データ及びその内符号を既知データ領域に格納する。即ち,この領域のデータについては伝送系の歪の影響を受けることはない。次に,メモリ素子42は,アドレス出力に基づいて,図3の有効データ領域のデータの再生データを図5の有効データ領域に格納する。また,メモリ素子42は,図3の既知データ領域の再生データについては,図5の無効データ再生データ領域に格納する。」(第4頁第6欄,段落30) つまり,周知例4には,既知のデータ領域のデータについては,伝送系の歪の影響を受けることなく,誤り訂正能力の全てを有効なデータ部分に発揮させることを目的として,送信系において,入力データの無効データに代えて所定の既知データを配列したデータ列を出力する既知データ挿入手段を有し,この既知データ挿入手段の出力に誤り検出符号を付加して送信し,受信系において,送信系の既知データと同一の既知データを発生する既知データ発生手段を有し,前記送信系からの受信データに対し,前記既知データの挿入期間に,前記既知データの受信データに代えて前記既知データ発生手段からの既知データを利用(置き換え・挿入)する技術が記載されている。 4.対比・判断 (1)請求項1に係る発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「フィードバック用のデインタリーバ及び復号データ生成用のデインタリーバ」は,「デインタリーバ」であるから,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「符号化したシンボルを受信する受信器の復号装置において, シンボルを受信して逆多重化するデマルチプレクサと, 情報シンボルと第1パリティシンボルを復号して,第1復号シンボルを発生する第1復号器と, 前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと第2パリティシンボルを復号して,第2復号シンボルを発生する第2復号器と, 前記第2復号器の出力をデインタリービングするデインタリーバと,から構成されることを特徴とする復号装置。」 <相違点1> 本願発明1は「フレームデータの予め設定された位置に少なくとも一つの特定ビットを挿入した後に」符号化を行うのに対し,引用発明1は,その構成を備えていない点。 <相違点2> 復号装置に関して,本願発明1は「チャネル復号装置」であるのに対し,引用発明1は「ターボ復号装置」である点。 <相違点3> デマルチプレクサに関して,本願発明1は「情報シンボル,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサ」であるのに対し,引用発明1においては「第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサ」である点。 <相違点4> 本願発明1のチャネル復号装置は「情報シンボル内の予め設定された挿入位置で特定値を有するシンボルを挿入し,他の位置では受信される情報シンボルをそのまま出力するシンボル挿入器」を有し,第1復号器には「シンボル挿入器から出力される」情報シンボルを入力するのに対し,引用発明1にはシンボル挿入器がなく,受信した情報シンボルをそのまま第1復号器に入力する点。 そこで,上記相違点1?4について検討する。 <相違点1,4について> 誤り訂正能力を高めるために,符号化に先だって,入力データに,同期語(周知例3),既知データ(周知例4)などの特定のビットを挿入することは,上記周知例3,4に記載されたように周知技術であり,さらに,符号化に先だって挿入された,前記特定のビットを誤り訂正の復号に利用し,復号効率や誤り訂正能力を高める目的で,復号手段において,予め設定された挿入位置で特定値を有するシンボル(周知例3の「既知である固定パターン」,周知例4の「既知データ」)を挿入し,復号を行うことも,上記周知例3,4に記載されたように周知技術であり,該周知技術を引用発明1に適用する上で何ら阻害要因も見あたらないから,引用発明1において「フレームデータの予め設定された位置に少なくとも一つの特定ビットを挿入した後に」符号化を行い,復号装置において「情報シンボル内の予め設定された挿入位置で特定値を有するシンボルを挿入し,他の位置では受信される情報シンボルをそのまま出力するシンボル挿入器」を備え,「前記シンボル挿入器から出力される」情報シンボルを第1復号器に入力し,誤り訂正を行うように構成することは,当業者が容易に想到し得るものである。 <相違点2について> 1つのチャネルで符号化された複数のシンボルが送られてくるのを受信する復号装置において,チャネル復号を行うことは周知慣用技術であり,また,ターボ復号装置は,複数のシンボルを受信するものであるから,引用発明1の「ターボ復号装置」を「チャネル復号装置」とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。 <相違点3について> 1つのチャネルに多重化されて送られてくる複数のシンボルを逆多重化するためにデマルチプレクサなどを用いることは,通信における常套手段であり,また,ターボ符号において,情報シンボル,第1パリティシンボル,及び第2パリティシンボルを多重化して送信することは,当業者が普通に行い得る程度のものであるから,多重化されて送られてくる情報シンボル,第1パリティシンボル,及び第2パリティシンボルを逆多重化するためにデマルチプレクサを用いることは,当業者が容易になし得るものであり,引用発明1における「第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサ」を「情報シンボル,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサ」とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。 そして,本願発明1の作用効果も,引用発明1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明1は,引用発明1及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)請求項17に係る発明について 本願の請求項17に係る発明(以下「本願発明2」という。)と引用発明2とを対比すると, a)多重化器から出力される本願発明2の「チャネル符号化シンボルストリーム」と,引用発明2の「パリティシンボル」は,シンボルストリームである点で一致する。 b)デマルチプレクサが受信する,本願発明2の「チャネル符号化されたシンボル」と,引用発明2の「パリティシンボル」は,共にシンボルである。 c)引用発明2の「復号データ生成用のデインタリーバ」は,本願発明2の「復号データを生成する第1デインタリーバ」に相当するものと認められる。なお,本願の出願当初の明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)における「発明の詳細な説明」の欄には,「第1デインタリーバ」との記載はないものの,当初明細書等の請求項6には「反復復号時第2復号されたシンボルをデインタリービングして前記第1シンボル初期化器にフィードバック入力する第2デインタリーバ」との記載があることから,上記のとおり認定した。 したがって,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「ターボ符号化と復号の装置において, 前記ターボ符号化装置は, 情報ビットストリームを符号化し,第1パリティシンボルストリームを発生する第1符号化器と, 情報ビットストリームをインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバの出力を符号化して,第2パリティシンボルストリームを発生する第2符号化器と, シンボルストリームを出力する多重化器と, を備え, 前記ターボ復号装置は, シンボルを受信し,逆多重化するデマルチプレクサと, 情報シンボルと第1パリティシンボルを復号して第1復号シンボルを発生する第1復号器と, 前記第1復号器の出力をインタリービングするインタリーバと, 前記インタリーバから出力される第1復号シンボルと第2パリティシンボルの復号を実行して第2復号シンボルを発生する第2復号器と, 前記第2復号シンボルをデインタリービングして,復号データを生成する第1デインタリーバと を備えることを特徴とする符号化と復号の装置。」 <相違点1> 本願発明2は「受信した情報ビットストリームの予め設定された位置に,少なくとも一つのビットを挿入するビット挿入器」を備えているのに対し,引用発明2は,当該ビット挿入器を備えていない点。 <相違点2> 第1符号化器に関して,本願発明2は「ビットが挿入された位置で」情報ビットストリームを符号化しているのに対し,引用発明2では,当該ビットを挿入せずに情報ビットストリームの符号化を行う点。 <相違点3> 多重化器に関して,本願発明2は「ビット挿入器の出力と第1符号化器の出力と第2符号化器の出力とを多重化し,チャネル符号化シンボルストリームを出力する多重化器」であるのに対し,引用発明2においては,「第1符号化器の出力と第2符号化器の出力とを多重化し,パリティシンボルを出力する多重化器」である点。 <相違点4> デマルチプレクサに関して,本願発明2は「チャネル符号化されたシンボルを受信し,情報シンボル,第1パリティシンボル,第2パリティシンボルを逆多重化するデマルチプレクサ」であるのに対し,引用発明2においては「パリティシンボルを第1パリティシンボルと第2パリティシンボルに逆多重化するデマルチプレクサ」である点。 <相違点5> 本願発明2は「チャネルの符号化と復号の装置」であるのに対し,引用発明2は「ターボ符号化と復号の装置」である点。 上記相違点1?5について検討する。 <相違点1,2について> 誤り訂正能力を高めるために,符号化に先だって,情報信号系列に,固定ビット(周知例1),挿入ビット(周知例2),同期語(周知例3),既知データ(周知例4)などの特定のビットを挿入することは,上記周知例1?4に記載されたように常套手段にすぎず,引用発明2において,情報ビットストリームの予め設定された位置に,ビットを挿入する「ビット挿入器」を備え,ビット挿入器の出力を「第1符号化器」へ入力し,符号化を行う程度のことは,当業者が容易に想到し得るものである。 <相違点3について> 複数のシンボルを1つのチャネルに多重化し送信することは,通信における常套手段であり,また,ターボ符号化において,情報シンボル,第1パリティシンボル,及び第2パリティシンボルを多重化して送信することは,当業者が普通に行い得る程度のものであるから,引用発明2における「第1符号化器の出力と第2符号化器の出力とを多重化」する多重化器を,上記「相違点1,2について」で検討した「ビット挿入器の出力」及び「第1符号化器の出力と第2符号化器の出力」とを多重化する多重化器とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。 <相違点4について> 上記「(1)請求項1に係る発明について」の「相違点3について」で検討した理由と同様の理由によって,当業者が容易に想到し得るものである。 <相違点5について> 1つのチャネルで符号化された複数のシンボルをチャネル符号化装置から送信し,チャネル復号化装置で受信することは周知慣用技術であり,かつ,ターボ符号化において,複数のシンボルを1つのチャネルで送受信することは,当業者が適宜なし得ることであるから,引用発明1の「ターボ符号化と復号の装置」を「チャネルの符号化と復号の装置」とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。 そして,本願発明2の作用効果も,引用発明2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明2は,引用発明2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.結語 以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-12 |
結審通知日 | 2006-05-16 |
審決日 | 2006-05-29 |
出願番号 | 特願2000-564304(P2000-564304) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H03M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近藤 聡 |
特許庁審判長 |
廣岡 浩平 |
特許庁審判官 |
小林 紀和 浜野 友茂 |
発明の名称 | 通信システムのチャネル符号/復号装置及び方法 |
代理人 | 志賀 正武 |