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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166694
審判番号 不服2004-6988  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-08 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 平成 9年特許願第323806号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月13日出願公開、特開平11-188134〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成9年11月10日の出願(国内優先権主張 同年10月24日)であって、平成16年3月1日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月8日付けで本件審判請求がされるとともに、同月30日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年4月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正前後において請求項数は1であり、補正前後の【請求項1】の記載は次のとおりである。
(本件補正前の請求項1)
「種々の図柄を可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、
前記可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段と、
一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じた入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された入賞態様および遊技者の前記可変表示停止手段の操作に基づいて前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、この停止制御手段によって複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、その入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後の請求項1)
「種々の図柄を可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、
前記可変表示装置は、種々の図柄を可変表示する複数の図柄列からなり、この図柄列のうちの1つの図柄列には特定図柄が可変表示方向に連続して配置され、残りの前記各図柄列には前記特定図柄が少なくとも1つ配置され、1つの前記図柄列に連続して配置された前記特定図柄と残りの前記図柄列のうちの1つの前記図柄列に配置された前記特定図柄とがいずれかの前記入賞ライン上に揃うと前記所定の図柄の組合せの一部を構成し、
前記可変表示装置の可変表示を停止させる信号を遊技者の操作に応じて発生させる可変表示停止手段と、一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じた入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された入賞態様および前記可変表示停止手段によって発生させられた前記信号に基づいて前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、この停止制御手段によって複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される前記特定図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、その入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」

2.補正目的違反又は新規事項追加その1
本件補正により、入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する条件が「複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していること」から「複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される前記特定図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していること」に補正された。
他方、入賞発生については、本件補正前後を通じて「可変表示装置に表示される図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生」であり、変更されていない。
そうすると、本件補正前においては、「複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していること」、すなわち残る可変表示装置の停止図柄によっては入賞となる場合に、入賞期待音を発生するとされていたのに対し、本件補正後においては「複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していること」だけでは入賞期待音発生条件としては不十分であり、それに加えて「複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄」が「特定図柄」であることが条件として付されている。すなわち、複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される特定図柄以外の図柄が所定の図柄の組合せの一部を構成している場合、本件補正前では入賞期待音を発生するのに対し、本件補正後では入賞期待音を発生するとはいえないのだから、補正後の請求項1は補正前請求項1を減縮したものではない(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号非該当)。本件補正が、請求項削除、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明を目的しないことも明らかである。
したがって、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反している。
なお、入賞期待音発生条件を厳しくしたことに伴い、入賞発生条件についても、特別図柄を含む旨厳しくしたと解するならば、かかる厳しい入賞発生条件は願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)に記載されていないし、自明の事項でもないから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。

3.新規事項追加その2
「種々の図柄を可変表示する複数の図柄列からなり、この図柄列のうちの1つの図柄列には特定図柄が可変表示方向に連続して配置され、残りの前記各図柄列には前記特定図柄が少なくとも1つ配置され」た「可変表示装置」が、当初明細書に記載されていることは認める。【図16】、【図17】の「サンダーV」が「特定図柄」に該当する。
しかし、「停止制御手段によって複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される前記特定図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、その入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」が当初明細書に記載されているとも、当初明細書の記載から自明であるとも認めることができない。なぜなら、「複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される前記特定図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に」との文言によれば、「入賞ラインの本数に応じた入賞期待音」は、特定図柄が「所定の図柄の組合せの一部を構成」していることが条件とされており、特定図柄以外の図柄のみでは、それらが入賞ライン上に揃っていても「入賞ラインの本数に応じた入賞期待音」を発生しないことになるからである。
より詳細に述べると、【図16】、【図17】は、第3の実施形態(段落【0070】?【0088】がその説明に当てられている。)の説明図であって、当初明細書には、「いずれか2つのリールについて停止制御が行われると、前述したヒットフラグ発生テーブルが作成され、どの入賞ラインにどのような入賞が発生するかが調べられる。ここで、ある入賞ラインに入賞が発生する期待があることが分かると、次に、入賞が発生する期待のある入賞ラインの本数が1本であるか否かが判断される(ステップ145)。入賞期待のある入賞ラインの本数が1本である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aがスピーカ39から発生させられる(ステップ146)。」(段落【0073】)、「入賞期待のある入賞ラインの本数が1本でない場合には、次に、入賞期待のある入賞ラインの本数が2本であるか否かが判断される(ステップ147)。この入賞ラインの本数が2本である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aと異なる入賞期待音Bがスピーカ39から発生させられる(ステップ148)。」(段落【0075】)及び「入賞期待のある入賞ラインの本数が2本でない場合には、次に、入賞期待のある入賞ラインの本数が3本であるか否かが判断される(図14,ステップ149参照)。この入賞ラインの本数が3本である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音A,Bと異なる入賞期待音Cがスピーカ39から発生させられる(ステップ150)。」(段落【0077】)と記載されているところ、特定図柄と入賞期待音の関係はこれら段落には一切記載されていない。
段落【0074】、段落【0076】及び段落【0078】には、「シンボル「サンダーV」が揃う入賞期待がある場合」の記述があるけれども、これは1つの図柄列の可変表示方向に連続配置された図柄(特定図柄)であれば、入賞期待のある入賞ラインの本数が複数となる場合を説明しやすいために例示された記載であって、特定図柄以外であっても、所定の図柄の組合せの一部を構成しておれば入賞期待音を発生すると解さねばならず、特定図柄以外の場合に入賞期待のある入賞ラインの本数が複数となりえないと解することもできない。
以上のとおり、「入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する」条件として、「特定図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成している」ことは、当初明細書に記載されているとも、当初明細書の記載から自明であるとも認めることができないから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第3項及び4項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年12月25日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものであり、同請求項は「第2[理由]」において、本件補正前の請求項1として示したとおりであるから、再掲しない。

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-318033号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。
ア.「図1、図4、及び図5に示すように、所定のパターン20a?20cで複数種類の識別情報を可変表示可能な識別情報表示部14a?14gが複数配設された可変表示装置13を有し、その複数の識別情報表示部に表示される表示結果が特定組合せとなった場合に所定の遊技価値を付与可能な弾球遊技機1において、前記複数の識別情報表示部に表示される識別情報の組合せに対して前記特定組合せとなる有効ラインを中央の水平ラインと対角線の斜めラインとの合計3つ設定すると共に、その3つの有効ラインのうちの少なくとも2以上の有効ライン上で前記特定組合せとなる可能性が出現するように前記識別情報の配列パターンを構成した(配列パターンAとA′、BとB′)ことを特徴とするものである。」(段落【0004】)
イ.「可変表示装置13の前面には、図4に示すように、その上部には、通常の入賞口18が形成され、その入賞口18の下方には、可変入賞球装置30の開閉板32の開成回数を表示する開成回数表示器17が設けられるとともに、その開成回数表示器17の左右に後述する始動入賞口37a?37cに入賞した入賞玉数を最高4個まで記憶した旨を報知する始動入賞記憶表示器16a?16dが設けられている。また、下方部分には、正方形状の開口が開設され、該開口に透明のカバー部材19(図3参照)が円弧状に取り付けられている。このカバー部材19は、識別情報表示部14の表面に描かれた識別情報(図柄)が3つ分見えるような大きさに選ばれるとともに図柄がより大きく見えるような拡大レンズ部19a?19cが形成されている。ところで、識別情報表示部14は、後述するように3つの回転ドラム20a?20cの側面外周にそれぞれ所定個数(実施形態の場合には、16個)の識別情報が描かれており、図示左右の回転ドラム20a,20cに描かれた識別情報が3つ表示されるように、中央の回転ドラム20bに描かれた識別情報は、中央の1つの識別情報だけしか表示されないようにカバー部材19にブラインドが施されている。このため、識別情報表示部14は、図4に示すように7つの表示部14a?14gに区画されることになる。」(段落【0010】)
ウ.「カバー部材19の左右には、有効ラインを表示するライン表示器15a?15fが配置されている。すなわち、この可変表示装置13においては、カバー部材19から見える3つの識別情報の中央の1つの横方向(ライン表示器15aー15bとを結ぶライン)及び2つの斜め方向(ライン表示器15cー15d、15eー15fとを結ぶライン)において有効ラインが設定されており、このため、3つの有効ラインのうち、どの有効ラインに大当り(特定組合せ)が出現したか否かを遊技者に報知する必要があるため、ライン表示器15a?15fが設けられている。また、このライン表示器15a?15fは、大当りが成立したときだけでなく、大当りが出現する可能性があるときにも点滅してその旨を報知するようになっている。」(段落【0011】)
エ.「ランダムデータRD1?RD3からデータD1?D3を選出する(ステップS6)。このデータD1?D3は、SP1?SP3にそれぞれ対応させる。また、データD1?D3は、識別情報表示部14a?14gのいずれかの有効ライン上に表示される識別情報を特定するためのデータでもある。」(段落【0035】)
オ.「ステップS22でTM1が終了したと判別された場合には、終了した時点でのCT1?CT3の値に対応する識別情報(以下、図柄という)からD1?D3に対応する図柄までの送りステップ数に応じてSP1?SP3の減速パターンデータを選択する(ステップS23)。」(段落【0039】)
カ.「左右のドラムが停止すると、前記ステップS10において呼び出されたデータD1、D3が大当り条件を満たしているか否か、すなわち、3つの有効ラインのいずれかに前記した「1」「3」「5」「7」「9」「F」の六種類の図柄のうち1つの図柄が揃って表示されているか否かが判別される(ステップS30)。」(段落【0040】)
キ.「データD1、D3が大当り条件を満たしていると判別された場合には、大当りの可能性がある旨をスピーカー7から報知するとともに、ライン表示器15a?15fでその旨を報知する(ステップS32)。なお、このとき前記した図5で示すように「A」と「A′」又は「B」と「B′」の位置で停止して大当りの可能性が2つ以上の有効ライン上にある場合には、遊技者の期待感を高揚させることができる。また、大当りの可能性が成立している有効ラインの数によって音又は光による報知を異ならせるようにしてもよい。」(段落【0041】)
ク.「左ドラムと右ドラムに表示される図柄が、複数ある有効ラインのいずれかの有効ライン上に大当りとなる図柄である場合には、他の有効ライン上にも大当りとなる図柄が表示される場合があるので、そのような場合には、大当りとなる期待感がより一層高まり、遊技者の興趣を極めて強烈に引き付けることができる。」(段落【0061】)

2.引用例記載の発明の認定
記載ア?クを含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「所定のパターンで複数種類の識別情報を可変表示可能な識別情報表示部が複数配設された可変表示装置を有し、その複数の識別情報表示部に表示される表示結果が特定組合せとなった場合に所定の遊技価値を付与可能な弾球遊技機であって、
複数種類の識別情報は、左、中央及び右の回転ドラムに描かれており、
前記複数の識別情報表示部に表示される識別情報の組合せに対して前記特定組合せとなる有効ラインを中央の水平ラインと対角線の斜めラインとの合計3つ設定すると共に、その3つの有効ラインのうちの少なくとも2以上の有効ライン上で前記特定組合せとなる可能性が出現するように前記識別情報の配列パターンが構成され、
左、中央及び右の回転ドラム停止時における、識別情報表示部のいずれかの有効ライン上に表示される識別情報は、ランダムデータRD1?RD3から選出されたデータD1?D3によって特定され、
左右の回転ドラムが停止した際、データD1、D3が大当り条件を満たしておれば、大当りの可能性が成立している有効ラインの数によって音による異なる報知をする弾球遊技機。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「識別情報」は本願発明の「図柄」に相当し、「複数種類」と「種々」には表現上の相違しかない。引用発明の「有効ライン」及び「特定組合せとなった場合に所定の遊技価値を付与」は、本願発明の「入賞ライン」及び「所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生」にそれぞれ相当する。
引用発明の「弾球遊技機」は、「前記可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段」を有するとはいえないけれども、「遊技機」である点では本願発明と相違しない。
引用発明では、データD1?D3により「表示結果が特定組合せ」となるかどうかが定まるのであるが、データD1?D3はランダムデータRD1?RD3から選出されたものであるから、「入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する」とまではいえないとしても、「一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じ」て入賞を決定する手段を有するといえ、同手段はその限度で本願発明の「入賞態様決定手段」と共通する。
そして、引用発明においても、左、中央及び右の回転ドラムは停止するのだから、「停止制御手段」と称し得る手段は引用発明にも備わっている。引用発明において「左右の回転ドラムが停止した際、データD1、D3が大当り条件を満たして」いるとは、左右の回転ドラムによって表示される識別情報が特定組合せの一部を構成することにほかならず、「大当りの可能性が成立している有効ラインの数によって音による異なる報知をする」以上、「停止制御手段によって複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、その入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」は引用発明にも備わっている。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「種々の図柄を可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、
一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じて入賞を決定する入賞決定手段と、前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、この停止制御手段によって複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、その入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段とを備えた遊技機。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉「入賞決定手段」につき、本願発明のそれが「入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段」であるのに対し、引用発明のそれは「表示結果が特定組合せ」となるかどうかを決定するものの、複数の入賞態様が存するかどうか不明な点。
〈相違点2〉本願発明が「可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段」を備え、「停止制御手段」は「入賞態様決定手段で決定された入賞態様および遊技者の前記可変表示停止手段の操作に基づいて前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する」のに対し、引用発明は「可変表示停止手段」を備えず、入賞決定手段で決定されたデータD1?D3に従って可変表示装置に停止表示する図柄を制御する点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例の記載カによれば、実施例において大当り(「表示結果が特定組合せ」)に該当するのは、3つの有効ラインのいずれかに「1」「3」「5」「7」「9」「F」の六種類の図柄のうち1つの図柄が揃って表示される場合であるが、揃って表示される図柄によって入賞態様が異なる旨の記載はない。
しかし、表示される図柄によって、入賞にランクをつけることは周知であるから、六種類の図柄のどれが揃うかに応じて入賞態様を異ならせることは設計事項というべきであり、そのようにすれば、データD1?D3を選出することは「入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する」ことに通じ、入賞決定手段は「入賞態様決定手段」となる。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(2)相違点2について
「種々の図柄を可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機」としては、引用発明の「弾球遊技機」だけでなくスロットマシンも周知であり、多くのスロットマシンが、相違点2に係る本願発明の構成を備えることは技術常識に属する。
引用発明が「大当りとなる期待感がより一層高まり、遊技者の興趣を極めて強烈に引き付けることができる。」との作用効果を奏することは、引用例の記載クにあるとおりである。引用例には「有効ラインの数によって音又は光による報知を異ならせる」ことの目的は直接には記載されていないけれども、同構成により同作用効果をさらに高められることは明らかである。そして、同作用効果は弾球遊技機だけでなくスロットマシンにも当てはまる。
加えて、スロットマシンにあっても、停止表示される図柄が所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件として、その旨を遊技者に報知することは、例えば特開平6-114140号公報、実願昭58-128412号(実開昭60-37379号)のマイクロフィルム、実願平3-66501号(実開平5-11981号)のCD-ROM又は実願平2-81073号(実開平3-29178号)のマイクロフィルムに見られるように周知である。
そうであれば、「可変表示装置」を備える遊技機を引用発明の「弾球遊技機」から、相違点2に係る本願発明の構成を備えたスロットマシンに変更することは当業者にとって想到容易といわなければならない。
なお請求人は、「本願請求項1に記載の発明では、リール(3),(4),(5)は遊技者が停止ボタン(16),(17),(18)を操作することによって発生させられた信号によって停止するのに対し、引用文献1(審決注;審決の引用例)に記載の発明では、識別情報表示部(14a)?(14g)はマイクロコンピュータ(80)の制御によって遊技者の意志とは関係なく自動的に停止します。この相違は、本願請求項1に記載の発明が、遊技機の興趣向上ばかりではなく、遊技機の操作性向上をも発明の解決すべき技術的課題とするのに対し、引用文献1に記載の発明では、「遊技者の興趣を極めて強烈に引き付ける」ということのみを技術的課題としている点に、起因しています。」(平成16年4月30日付け手続補正書(方式)3頁32?38行)と主張しており、相違点2の構成を備えることにより、遊技機の操作性向上をも発明の解決すべき技術的課題とするとしても、上記のとおり相違点2の構成を備えたスロットマシンにおいて、停止表示される図柄が所定の図柄の組合せの一部を構成していることを報知することが周知であり、そのことが遊技機の操作性向上に寄与することは明らかであるから、入賞ラインの本数に応じた入賞期待音を発生すれば、より一層遊技機の操作性向上に寄与すること容易に予測できることである。したがって、請求人の上記主張を採用し、本願発明に進歩性があると結論することはできない。

(3)本願発明の進歩性の判断
以上のとおり、相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるか、当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-22 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願平9-323806
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤田 年彦
小田倉 直人
発明の名称 遊技機  
代理人 峯岸 武司  

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