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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1166707
審判番号 不服2004-19031  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-15 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 平成10年特許願第189817号「遊技場に用いられる音響システム及び遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月11日出願公開、特開2000- 5385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成10年6月19日の出願であって、平成16年8月16日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月15日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年6月16日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の遊技機が設置される遊技場に用いられる音響システムにおいて、前記遊技機又は遊技機の周辺には、一方向に指向性の強い音波を生成するスピーカ及び各方向に均一に広がるような音波を生成するスピーカを、前記複数の遊技機ごとに夫々設け、前記一方向に指向性の強い音波を生成するスピーカにより前記複数の遊技機の各々の遊技機を使用する遊戯者ごとに、異なる音を聞き取らせることが可能なように構成することを特徴とする遊技場に用いられる音響システム。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-42358号(実開平4-886号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、以下のア?オの記載が図示とともにある。
ア.「従来のパチンコ遊技機にあっては、スピーカより発せられる効果音が、効果音を発しているパチンコ遊技機で遊技している遊技者のみならず、そのパチンコ遊技機の近くのパチンコ遊技機で遊技している他の遊技者にも聞こえるようになっており、種々の問題があった。」(2頁13?18行)
イ.「効果音の役割の一つに「パチンコ球の入賞を遊技者に知らせる」ことがある」(3頁1?2行)
ウ.「効果音の役割の一つに「遊技者の遊技意欲をそそる」ことがある・・・パチンコ遊技機から発せられる効果音は、そのパチンコ遊技機で遊技している他の遊技者の遊技意欲をそそる反面、近くのパチンコ遊技機で遊技している他の遊技者の遊技意欲を減退させる虞があった。」(3頁9?18行)
エ.「以上のような課題を解決するために、本考案の採った手段は
「パチンコ球が入賞したときに、遊技状態に応じて効果音を発するパチンコ遊技機であって、
遊技状態に対応する遊技モードを決定するモード決定手段と、モード決定手段により決定された遊技モードに対応する音声信号を発生する効果音発生手段と、効果音発生手段からの音声信号によって遊技者のみに向けて効果音を発する指向性スピーカとを備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。」
である。」(4頁9行?5頁2行)
オ.「第1図は、本考案の一実施例であるパチンコ遊技機を示す斜視図である。(1)はパチンコ遊技機であり、(2)は指向性スピーカである。指向性スピーカ(2)は、イス(3)のほぼ真上の図示しない遊技場の天井から吊り下げられており、イス(3)を中心にほぼ直径60cmの円で囲まれた範囲でしか聞きとれないよう、効果音を発する。」(5頁13行?6頁1行)

2.引用例記載の発明の認定
記載オの「遊技場」に複数のパチンコ遊技機が設置されること、及び指向性スピーカ(2)が個々のパチンコ遊技機ごとに設けられていることは明らかである。
引用例からは、遊技場全体における音響システムとしての発明を把握することができ、それは次のようなものである。
「複数のパチンコ遊技機が設置される遊技場に用いられる音響システムにおいて、
パチンコ遊技機ごとに、効果音発生手段からの音声信号によって当該パチンコ遊技機の遊技者のみに向けて効果音を発する指向性スピーカを設けた音響システム。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「パチンコ遊技機」は本願発明の「遊技機」の一種であり、引用発明の「指向性スピーカ」は本願発明の「一方向に指向性の強い音波を生成するスピーカ」に相当し、引用発明においては同スピーカが「当該パチンコ遊技機の遊技者のみに向けて効果音を発する」のだから、「前記一方向に指向性の強い音波を生成するスピーカにより前記複数の遊技機の各々の遊技機を使用する遊戯者ごとに、異なる音を聞き取らせることが可能」である。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「複数の遊技機が設置される遊技場に用いられる音響システムにおいて、前記遊技機又は遊技機の周辺には、一方向に指向性の強い音波を生成するスピーカを、前記複数の遊技機ごとに設け、前記一方向に指向性の強い音波を生成するスピーカにより前記複数の遊技機の各々の遊技機を使用する遊戯者ごとに、異なる音を聞き取らせることが可能なように構成する遊技場に用いられる音響システム。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明が「各方向に均一に広がるような音波を生成するスピーカ」をも複数の遊技機ごとに設けているのに対し、引用発明が同発明特定事項を採用しているとはいえない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
引用例の記載ウにあるように、引用発明は「パチンコ遊技機から発せられる効果音」が「近くのパチンコ遊技機で遊技している他の遊技者の遊技意欲を減退させる虞」を重視したものである。
しかし、すべての効果音が他の遊技者の遊技意欲を減退させると一概にいえるものではない。例えば、本件出願前に頒布された特開平8-24404号公報(以下「周知例」という。)に、「大当り等が発生した場合、スピーカユニット20を駆動する駆動回路のアンプのゲインを上げることで周囲に大当りの発生を知らせるようにしている」(段落【0005】)と記載されているように、大当たり発生の場合には、その効果音を他の遊技者に聞かせることが有利なこともある。上記周知例には、大当たり発生を他の遊技者に知らせることの意義は直接的には記載されていないが、周辺の遊技機での大当たり発生を知ることで、大当たり発生を目指す意欲をかき立てることや、遊技場全体の雰囲気を盛り上げることが狙いであることは明らかである。
そして、上記周知例に、「パチンコ台の所定の入賞口へのパチンコ玉の入賞が検出されたとき、スピーカユニットの駆動位置を切り換えるようにしたので、パチンコ台上部の中程に配設されているスピーカユニットが駆動されている状態では指向性が高められているが、パチンコ台上部の両端に配設されているスピーカユニットが駆動されると音が拡散されることから、音の指向性と拡散性とを切り換えることができる。」(段落【0013】)と記載されているように、効果音を発する遊技機を使用している遊技者だけに効果音を聞きとらせるべきか、その周辺の遊技者にも効果音を聞きとらせるべきかは、効果音の種類に依存し、すべてが前者であると断じることはできない。
そうである以上、周辺の遊技者にも聞きとらせるべき効果音の発生に際し、同効果音を周辺の遊技者が聞きとることができるように、「各方向に均一に広がるような音波を生成するスピーカ」をも複数の遊技機ごとに設けること、すなわち相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。また、同発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-28 
結審通知日 2007-08-29 
審決日 2007-09-11 
出願番号 特願平10-189817
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠澤田 真治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 渡部 葉子
土屋 保光
発明の名称 遊技場に用いられる音響システム及び遊技機  

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