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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1166723
審判番号 不服2005-4739  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-17 
確定日 2007-10-25 
事件の表示 平成 6年特許願第260285号「手術用マニピュレータ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月14日出願公開、特開平 8-117238号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月25日の出願であって、平成17年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成17年4月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年4月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成17年4月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「術者に操作される操作手段と、
術野にアクセスするように配置され、手術機器を保持するマニピュレータと、
前記手術機器の操作対象部が所定の位置の近傍以外にある場合には、前記所定の位置と前記操作対象部との位置関係に基づいて前記手術機器の姿勢が拘束され、前記手術機器の操作対象部が前記所定の位置の近傍にある場合には、前記手術機器の姿勢が固定されて、前記マニピュレータに保持されている前記手術機器が前記操作手段への操作に追従して前記所定の位置を基準として動作されるように、前記マニピュレータを前記操作手段への操作に追従して動作させる制御手段と、
を具備することを特徴とする手術用マニピュレータ。」(下線部は補正箇所を示す)
と補正された。
上記補正により、補正後の請求項1には、「前記手術機器の操作対象部が所定の位置の近傍以外にある場合には、前記所定の位置と前記操作対象部との位置関係に基づいて前記手術機器の姿勢が拘束され、前記手術機器の操作対象部が前記所定の位置の近傍にある場合には、前記手術機器の姿勢が固定されて、」という事項が付加されることとなったが、請求人が補正の根拠であると主張する明細書の段落【0030】乃至【0033】、【0035】乃至【0037】及び図6には、「手術機器の操作対象部が所定の位置の近傍以外にある場合には、前記所定の位置と前記操作対象部との位置関係に基づいて前記手術機器の姿勢が拘束され」ることや「手術機器の操作対象部が前記所定の位置の近傍にある場合には、前記手術機器の姿勢が固定され」ることは記載されておらず、これらの記載から自明な事項であるとも認められない。したがって、上記補正は願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

また、上記補正により付加された事項は、補正前の請求項1に記載された制御手段を限定しようとするものであるが、補正前の請求項1に記載された制御手段は「前記マニピュレータに保持されている手術機器が前記操作手段への操作に追従して所定の位置を基準として動作されるように前記マニピュレータを前記操作手段への操作に追従して動作させる制御手段」であり、これは、手術機器が操作手段への操作に追従して動作されることに関するものであるが、補正後に付加されたものは、操作手段への操作とは関係なく、手術機器の操作対象部が所定の位置の近傍以外にある場合や所定の位置の近傍にある場合に、手術機器の姿勢を拘束したり、手術機器の姿勢を固定したりするものであるから、補正前の請求項1に記載されていた発明の構成に欠くことができない事項を限定的に減縮するものとはいえず、上記付加された事項は、本願の発明の詳細な説明の段落【0030】?【0033】に記載されているようにマニピュレータを挿入する際、あるいは、抜去する際に生じる特異点の対策という、補正前の請求項1に係る発明とは異なる課題を解決しようとするものであるから、このような補正は平成6年改正前特許法第17条の2第3項に規定された特許請求の範囲の減縮に該当しない。
また、このような補正は誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。
なお、仮に、上記補正により付加された事項が、特許請求の範囲の限定的減縮に該当すると仮定しても、補正後の請求項1に記載された「所定位置の近傍」が所定位置に対してどのような範囲のものであるのか明確でないため「所定の位置の近傍以外にある場合」と「所定の位置の近傍にある場合」の違いが明確でなく、また、「前記所定の位置と前記操作対象部との位置関係に基づいて前記手術機器の姿勢が拘束され」では、所定の位置と操作対象部との位置関係に基づいて手術機器の姿勢がどのように拘束されるのか明確でなく、さらに、「手術機器の姿勢が拘束され」ることと、「手術機器の姿勢が固定され」ることとの違いも明確でない。そうすると、上記補正により付加された事項が、特許請求の範囲の減縮に該当するとしても、補正後の請求項1に記載された事項が明確でないから発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとはいえないから、平成6年改正前特許法第36条第5項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条第2項の規定、及び平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年12月27日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「術者に操作される操作手段と、
術野にアクセスするように配置され、手術機器を保持するマニピュレータと、
前記マニピュレータに保持されている手術機器が前記操作手段への操作に追従して所定の位置を基準として動作されるように前記マニピュレータを前記操作手段への操作に追従して動作させる制御手段と、
を具備することを特徴とする手術用マニピュレータ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-76482号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、生体や配管等の管内に処置具を導入して、その腔部内で手術、検査や補修等の処置を行う管内処置装置に関する。」(【0001】)
(イ)「内視鏡3の挿入部6は患者の腹部に穿刺したトラカール等を通じて体内に導入されている。図2はその内視鏡3の挿入部6が刺し込まれている状態を示している。内視鏡3の挿入部6の先端には対物レンズ7や照明窓8の他、2つのチャンネル9,10の先端が開口している。一方のチャンネル9には後述する体内処置装置11が挿通されている。・・・(中略)・・・操作制御盤12の内部には後述する電子制御回路16が組み込まれている。さらに、操作制御盤12には前述した管内処置装置11の処置用アーム17と1対1または比例する相似な動きをするマスタアーム18が付設されている。
管内処置装置11の導入部19の先端には、処置用アーム17が連結されている。そして、この処置用アーム17は3つの関節20a,20b,20cを介して導入部19の先端、第1のリンク21、第2のリンク22、処置具23とを順次連結してなるものである。処置具23の先端には、その処置具23が生体組織に当たる状態と、その接触圧力の強さを検出する接触センサ24が設けられている。」(段落【0007】?【0009】)
(ウ)「次に、この管内処置装置の使用方法を説明する。まず、術者は図1および図3で示すようにマスタアーム18の把持部29を手に持ち、TVモニタ15を見ながらマスタースレーブ方式で体内の処置用アーム17を駆動する。前記電子制御回路16によりマスタアーム18の動きが、縮小されて比例した処置用アーム17の動きとなる。」(段落【0023】)

これらの記載事項を総合すると、引用例1には、
「術者に操作されるマスタアーム18と、
患者の体内に導入され、処置具23が連結された処置用アーム17と、
前記マスタアーム18の動きが縮小されて比例した処置用アーム17の動きとなるようにする電子制御回路16と、
を具備する管内処置装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-261911号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(エ)「【課題を解決するための手段】本発明による装置には、ピボットもしくは回転式ジョイントで接続された、複数の剛性リンクがある。この剛性リンクは、ピボットを中心に回転するだけである。そのために、マニピュレータ機構は、外科器具のワーク・ポイントでの動作が、装置から一定の距離を保つように制限を加えることができる。これらのリンクが作用しあって、マニピュレータに保持された外科器具を、マニピュレータのRCM点(即ち動作点)の周りで動作させ、その点において互いに直交する方向への移動の自由度を与えている。」(段落【0012】)
(オ)「【実施例】図1に本発明の1つの実施例を示す。この図では、調節可能なマニピュレーション・システムは、患者が乗る手術台の上に設置されている。このマニピュレーション・システムには、内視鏡カメラが、その運動の中心点が患者体内への挿入点に来るように、取り付けられている。」(段落【0014】)

(2)対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「マスタアーム18」が、その機能・構造等からみて前者における「操作手段」に相当し、以下同様に、「患者の体内に導入され」が「術野にアクセスするように配置され」に、「処置具23」が「手術機器」に、「連結された」が「保持する」に、「処置用アーム17」が「マニピュレータ」に、「電子制御回路16」が「制御手段」に、「管内処置装置」が「手術用マニピュレータ」に、それぞれ相当する。
また、後者の「前記マスタアーム18の動きが縮小されて比例した処置用アーム17の動きとなるようにする」ということは、マスターアーム18の操作に追従して処置用アーム17が動作されるといえ、処置用アーム17には処置具23が連結されているのであるから、処置具23もマスターアーム18の操作に追従して動作されるといえる。そうすると、前者の「前記マニピュレータに保持されている手術機器が前記操作手段への操作に追従して所定の位置を基準として動作されるように前記マニピュレータを前記操作手段への操作に追従して動作させる」こととは「前記マニピュレータに保持されている手術機器が前記操作手段への操作に追従して動作させる」という概念で共通している。

したがって、両者は、
「術者に操作される操作手段と、
術野にアクセスするように配置され、手術機器を保持するマニピュレータと、
前記マニピュレータに保持されている手術機器が前記操作手段への操作に追従して動作させる制御手段と、
を具備する手術用マニピュレータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]本願発明では、マニピュレータに保持されている手術機器が操作手段への操作に追従して動作させるのが、所定の位置を基準として動作されるようにしているのに対し、引用発明では、所定の位置を基準として動作させているか否かが明確でない点。

そこで上記相違点について検討する。
マニピュレータに保持されている外科器具(「手術機器」に相当)が動作点(「所定の位置」に相当)を基準として動作されることが、引用例2に記載されており、これを引用発明に適用して上記相違点に係る発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願発明の効果についても、引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-27 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願平6-260285
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 572- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 秀明中田 誠二郎  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 蓮井 雅之
川本 真裕
発明の名称 手術用マニピュレータ  
代理人 中村 誠  
代理人 橋本 良郎  
代理人 河野 哲  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 村松 貞男  

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