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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1166988
審判番号 不服2005-2277  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-10 
確定日 2007-11-02 
事件の表示 平成6年特許願第292383号「プリント基板」拒絶査定不服審判事件〔平成8年5月21日出願公開、特開平8-130362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年10月31日の出願であって、平成16年12月22日付で拒絶査定され、これに対して、平成17年2月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月11日付で特許法第17条の2第1項第5号の規定による手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1、2に係る発明は、上記手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】パッド部分の形状をパターン部分側に向けて先細り状に形成するとともに、その先細り状に形成されているパッド部分の周縁部の形状を角のないなめらかな曲率に形成してなり、さらに、前記周縁部がパッド部分内側に湾曲しているとともに、パターン部分におけるパッド近傍部分をレジスト抜きしてあることを特徴とするプリント基板。」

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に国内において頒布された
実願昭56-52930号(実開昭57-166377号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、及び特開平4-114493号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)引用例1:実願昭56-52930号(実開昭57-166377号)のマイクロフィルム
(1a)「2電極型チップ部品の1対の電極に対応する銅箔パターンの形状を、半田付前にチップ部品に位置ずれが生じた場合にその電極の角部が銅箔パターンよりその位置ずれ方向にはみ出し得るような形状に形成してなり、半田付に際して溶融半田の表面張力の働きによつて、チップ部品の中心が銅箔パターン間の中心にほぼ一致する位置までチップ部品が矯正移動させられるようにしたことを特徴とするチップ部品半田付用の銅箔パターン形状。」(実用新案登録請求の範囲)
(1b)「この考案は、プリント基板の銅箔パターン形状の改良に関するもので、その目的とするところは、銅箔パターンの形状を特定化して、2電極型チップ部品の半田付工程における位置ずれを防止し、かつ、半田付の信頼性を向上させることなどにある。」(1頁16行?2頁1行)
(1c)「第4図はこの考案になる第1の実施例の銅箔パターン上のチップ部品に位置ずれを生じた状態を、第5図はその位置ずれが矯正された状態を示し・・・この実施例の銅箔パターン5aおよび5bの形状はほぼ半円形をなす・・・ものであるが、この場合のパターン形状はレジスト塗布部分すなわち他の回路部品などとの接続部5a´および5b´(鎖線で示す)を除いたランド部を対象とするものである。」(4頁10行?5頁4行)
(1d)「この実施例においては、第4図に示すように、銅箔パターン5aおよび5bの上に置かれたチップ部品1´に右方向の位置ずれを生じ、チップ部品1の電極1bの角部6aおよび6bが銅箔パターン5bよりはみ出している。
周知のように、半田が溶融している場合に半田自体には表面積を最小にしようとする表面張力が働き、半田と銅箔パターン5bの間ならびに半田と電極1bとの間にはそれぞれ付着力が働くので、銅箔パターン5bよりはみ出した電極1bの角部6aと6bには矢印A方向の力が作用する。
このような力は、第5図に示すように、銅箔パターン間の中心とチップ部品の中心とが一致するまで引続き働くので、位置ずれの矯正作用が行なわれることになり、・・・
従つて、半田付の完了後には、第6図に示すように、銅箔パターン5a側の半田7aと銅箔パターン5b側の半田7bの量がほぼ等しくなり、電極1aおよび1bの側面にも充分に行きわたるので、従来より大きい半田付面積が得られることになる。」(5頁5行?6頁10行)
(1e)「第7図(A),(B),(C)は、この考案になる第2,第3,および第4の実施例の銅箔パターン5a,5b上のチップ部品1の位置ずれを生じた状態を示したものである。
すなわち、・・・第7図(B)に示す第3の実施例の銅箔パターン5a,5bの形状は二等辺三角形、第7図(C)に示す第4の実施例の銅箔パターン5a,5bの形状は半楕円形であり、銅箔パターン5a,5bをこのような形状にしてもほぼ第1の実施例と同様な作用効果が得られる。」(6頁11行?7頁2行)
(1f)第4、5図には、対向する半円形の銅箔パターン5a、5bは、円弧部分が接続部5a’、5b’に接続していること、第7図(c)には、銅箔パターン5a、5bの形状は半楕円形であることが図示されている。

(2)引用例2:特開平4-114493号公報
(2a)「〔実施例〕 以下に本発明を具体化した一実施例を第1?4図に基づいて説明する。・・・配線パターン2a、2bの端部(第1図上端部)には平面正方形状・・・の一対のパッド3a、3bが一体的に形成されている。・・・これら一対のパッド3a、3b間以外の外周部には・・・ソルダーレジスト部4が形成されている。・・・これらパッド3a、3bの外周縁とソルダーレジスト部4の内周縁との隙間は約0.2mmに設定されている。このソルダーレジスト部4は・・・半田が必要以外の部分に付着されないようにするためのものである。」(2頁右上欄8行?左下欄13行)
(2b)「本発明においては、チップ部品6を載置するパッド3a、3bは上記実施例では2つとしたが、トランジスタ部品のように3つ以上であってもよい。従って、例えば第5図に示すように、基板l上において3つの配線パターン2a、2b、2cの端部にそれぞれパッド3a、3b、3cを形成し、これらパッド3a、3b、3c上にチップ部品6を載置する場合、各パッド3a、3b、3c間にはソルダーレジスト部4を形成することなく、それ以外の各パッド3a、3b、3cの外周部にソルダーレジスト部4を設けることができる。」(3頁右上欄10行?左下欄1行)
(2c)第5図には、配線パターン2a、2bの端部にそれぞれ形成されたパッド3a、3bと、配線パターン2cの端部に形成されたパッド3cとが対向して設けられ、各パッド3a、3b、3c間にはソルダーレジスト部4を形成することなく、各パッド3a、3b、3cの外周縁とソルダーレジスト部4の内周縁とに隙間を設けてソルダーレジスト部4が形成された構造が図示されている。

3.当審の判断
3-1.引用例記載の発明
引用例1の摘記(1a)によれば、半田付前にチップ部品に位置ずれが生じた場合にその電極の角部が銅箔パターンよりその位置ずれ方向にはみ出し得るような形状に形成してなり、半田付に際して溶融半田の表面張力の働きによつて、チップ部品の中心が銅箔パターン間の中心にほぼ一致する位置までチップ部品が矯正移動させられるようにしたチップ部品半田付用の銅箔パターンが記載され、摘記(1b)によれば、プリント基板の銅箔パターン形状の改良に関すると記載されているから、このような銅箔パターンは、プリント基板に用いられることは明らかである。
また、摘記(1c)、(1f)によれば、実施例の具体的な銅箔パターンの形状は、円弧部分を接続部5a´、5b´に向けた半円形であることが理解でき、摘記(1e)、(1f)によれば、第4の実施例の銅箔パターン5a,5bの形状は半楕円形であることが記載され、このような半円形、半楕円形の銅箔パターンの形状は、接続部5a´、5b´側に向けて先細り状に形成するとともに、その先細り状に形成されている銅箔パターン部分の周縁部の形状を角のないなめらかな曲率に形成してなり、さらに、前記周縁部が銅箔パターン部分外側に湾曲している形状であるといえる。
さらに、摘記(1c)によれば、接続部5a´、5b´はレジスト塗布部分であることが記載されている。
そこで、引用例1の摘記(1a)?(1f)の記載を総合すれば、引用例1には、「銅箔パターン部分の形状を接続部側に向けて先細り状に形成するとともに、その先細り状に形成されている銅箔パターン部分の周縁部の形状を角のないなめらかな曲率に形成してなり、さらに、前記周縁部が銅箔パターン部分外側に湾曲しているとともに、接続部はレジスト塗布部分であるプリント基板。」(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていることになる。

3-2.対比・判断
本願発明1と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「銅箔パターン」、「接続部」は、本願発明1の「パッド」、「パターン」にそれぞれ相当し、本願発明1のパターン部分は、パッド近傍部分をレジスト抜きしてあるものの、パッド近傍部分以外は「レジスト塗布部分である点」で引用例1発明の接続部部分と共通するから、両者は、
「パッド部分の形状をパターン部分側に向けて先細り状に形成するとともに、その先細り状に形成されているパッド部分の周縁部の形状を角のないなめらかな曲率に形成してなるプリント基板。」で一致し、次の点で相違する。

相違点:
(イ)先細り状に形成されているパッド部分の周縁部について、本願発明1は、パッド部分内側に湾曲しているのに対し、引用例1発明は、パッド部分外側に湾曲している点。
(ロ)本願発明1は、パターン部分におけるパッド近傍部分をレジスト抜きしてあるのに対し、引用例1発明は、この点が記載されていない点。

次に、上記相違点(イ)、(ロ)について検討する。
相違点(イ)について
先細り状に形成された、あるいは、角部を面取りして先細り状に形成されたパッドにおいて、先細り状に形成されたパッド部分の周縁部がパッド部分内側に湾曲している形状のものは、例えば、次のとおり周知である。

周知例1:特開平2-65293号公報
(周1a)「(1)・・・一対の矩形の電極パターンを有したプリント板において、前記一対の電極パターンの対向し合う各辺の角部を面取りしたことを特徴とする表面実装用プリント板のパターン。
(3)前記面取り部が非直線状の湾曲形状であることを特徴とする表面実装用プリント板のパターン。」(特許請求の範囲の請求項1、3)
(周1b)「第4図は・・・電極パターン10a,10bの対向し合う辺の各角部を凹面状に湾曲して面取りした構成・・・」(3頁右上欄7?9行)と記載されており、
(周1c)第4図には、電極パターン10a、10bの面取り部は、電極パターン内側に湾曲した形状であることが図示されている。
上記「電極パターン」は、本願発明1の「パッド」に相当している。

周知例2:実願昭60-176027号(実開昭62-84967号)のマイクロフィルム
(周2a)「チップ部品実装用基板に、チップ部品としてミニパワーパッケージ40を搭載する場合、各導体パッド41a・41b・41cのパターンは、同図(c)に示す・・・形状を成している。」(7頁7?11行)と記載され、
(周2b)第4図(c)には、導体パッド41aは、パッド部分の周縁部の先細り状に形成された部分が、パッド部分内側に湾曲している構造であることが図示されている。

そうであれば、引用例1発明において、先細り状に形成されているパッド部分の周縁部を、パッド部分外側に湾曲した形状に代えて、パッド部分内側に湾曲した形状とすることは当業者が適宜なし得る設計事項である。

なお、本願発明1において、先細り状に形成されているパッド部分の周縁部について、パッド部分「内側に」湾曲しているとする点は、平成16年8月11日付手続補正書により補正されたものであるが、その補正の根拠は図1に記載された技術事項に基づくものであって、出願当初の明細書には、この点及びこの点による作用効果は何ら記載されていないものである。
それゆえ、この点は図面から読み取れる技術事項、即ち上記周知例2の摘記(周2b)と軌を一にしており、かつ当業者が通常なし得る設計事項であることも明らかである。

相違点(ロ)について
引用例2の摘記(2a)によれば、実施例として、配線パターン2a、2bの端部には平面正方形状の一対のパッド3a、3bが一体的に形成され、これら一対のパッド3a、3bの外周部とソルダーレジスト部4の内周縁との隙間は約0.2mmに設定されていると記載されているから、この実施例においては、配線パターン部分における端部近傍の上記約0.2mmの隙間部分にはソルダーレジストが形成されていないといえる。
さらに、摘記(2b)によれば、上記実施例ではパッドを2つとしたが、パッドが3つ以上であってもよく、例えば第5図に示すように、3つの配線パターン2a、2b、2cの端部にそれぞれパッド3a、3b、3cを形成し、各パッド3a、3b、3c間にはソルダーレジスト部4を形成することなく、それ以外の各パッド3a、3b、3cの外周部にソルダーレジスト部4を設けることができると記載され、摘記(2c)によれば、配線パターン2a、2bの端部にそれぞれ形成されたパッド3a、3bと、配線パターン2cの端部に形成されたパッド3cとが対向して設けられ、各パッド3a、3b、3c間にはソルダーレジスト部4を形成することなく、各パッド3a、3b、3cの外周縁とソルダーレジスト部4の内周縁とに隙間を設けてソルダーレジスト部4が形成された構造が記載されている。
そうすると、第5図に示されるパッドが3つの実施例においても、各配線パターンの端部に形成された各パッド3a、3b、3cの外周縁とソルダーレジスト4との間の隙間は約0.2mmとなり、配線パターン部分における端部近傍の上記約0.2mmの隙間部分にはソルダーレジストが形成されていないこと、すなわち、パターン部分におけるパッド近傍部分をレジスト抜きしてあることが理解できる。そして、該レジスト抜きしてあるパターン部分には半田が付着できることは自明なことである。
一方、引用例1発明は、半田付に際して溶融半田の表面張力の働きによつて、チップ部品の中心が銅箔パターン間の中心にほぼ一致する位置までチップ部品が矯正移動させられるようにした(摘記(1a))、即ちセルフアライメント効果を活用する発明であって、該銅箔パターンを二等辺三角形、半楕円形としたもの(第7図(B)、(C))も記載されており(摘記(1e))、それらの先端部分は引用例2の配線パターン部分のパッド近傍部分と同様にレジスト抜きしてあるものとも解し得るので、引用例1発明における接続部のレジスト塗布部分を、上記引用例2記載のパターン部分のレジスト抜きの構造として銅箔パターンの延長部を形成することは、当業者ならば容易に想到し得ることである。

そして、本願発明1の奏する効果も引用例1、2の記載、及び上記周知の事項から予測される範囲内のものであって、格別顕著なものとは認められない。

よって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明、及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よて、上記のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-22 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-11 
出願番号 特願平6-292383
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 小川 武
市川 裕司
発明の名称 プリント基板  
代理人 藤本 英夫  

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