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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05G 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G05G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05G |
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管理番号 | 1167048 |
審判番号 | 不服2005-23692 |
総通号数 | 96 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-08 |
確定日 | 2007-10-29 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 34566号「コンバインの運転操作部」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月20日出願公開、特開平 8-211956〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年1月31日の出願であって、平成17年11月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年1月7日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年1月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年1月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (I)本件補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲は、 「 【請求項1】 内部にスイッチ機構(7)を設けたケース部(8)と、ケース部(8)の上面側に複数のスイッチ押圧部(9a,9b)とを設けてなる操作グリップ(6)を、平面視で前後方向に長い楕円形状に一体形成するとともに、上記スイッチ押圧部(9a,9b)をケース部(8)より突出した凸状に形成したことを特徴とする作業車輛の操作グリップ。」 から、 「 【請求項1】 運転席(2)の前方に配設したフロント操作パネル(3)に、サイドクラッチの操作と刈取部の上下操作をするマルチステアリングレバー(5)を設けたコンバインの運転操作部において、マルチステアリングレバー(5)の先端部に操作グリップ(6)を設け、内部にスイッチ機構(7)を設けたケース部(8)と、ケース部(8)の上面側に複数のスイッチ押圧部(9a,9b)とを設けてなる操作グリップ(6)を、平面視で前後方向に長い楕円形状に形成するとともに、上記スイッチ押圧部(9a,9b)をケース部(8)上面の直径の短い左右方向に並べて設け、スイッチ押圧部(9a,9b)の操作により、左右サイドクラッチを作用させて機体を方向修正することを特徴とするコンバインの運転操作部。」 へと補正された。(なお、下線は、請求人が附したものであって、補正箇所を示すものである。) (II)本件補正の適否についての判断 (i)まず、本件補正が、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に適合するかについて検討する。 本件補正により、補正前の「操作グリップ(6)を、平面視で前後方向に長い楕円形状に一体形成する」構成のうちの「一体」が削除され、補正前の「スイッチ押圧部(9a,9b)をケース部(8)より突出した凸状に形成した」構成のうちの「より突出した凸状に形成した」が削除された。 そして、これらの削除された補正は、特許請求の範囲の限定的減縮に該当せず、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれの目的にも該当しない。 したがって、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に適合しないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (ii)次に、仮に本件補正が、特許請求の範囲の限定的減縮に該当し、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号の規定に適合するとした場合、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)補正後の本願発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は上記したとおりのものである。 (2)刊行物に記載された発明 (刊行物1) 本願出願前に頒布された刊行物である実願昭57-105844号(実開昭59-8535号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、「コンバイン」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。(なお、大文字を小文字で表記した箇所がある。) (ア)「第1図,第2図で示すように、左右一対のクローラ走行装置(1),(1)及び脱穀装置(2)を備えた本機(A)の前部に、複数条の植立穀稈を引起して刈取ったのちこれを前記脱穀装置(2)に搬送供給する刈取部(B)を駆動昇降自在に連設して、コンバインを構成している。 前記刈取部(B)の駆動昇降機構(3)を構成するに、前記刈取部(B)の昇降フレーム(4)と本機(A)の機体フレーム(5)との間に腰折れリンク(6)及び油圧シリンダ(7)を介在するとともに、本機(A)側の操縦ボックス(8)には、前記油圧シリンダ(7)の制御バルブ(9)に連係された昇降操作レバー(10)を設けている。 また、クローラ走行装置(1),(1)への伝動系の途中で、かつ、走行ミッションケース(11)内に左右のサイドクラッチ(12A),(12B)を設け、これら両サイドクラッチ(12A),(12B)を各別に入切作動可能な油圧シリンダ(13A),(13B)を前記走行ミッションケース(11)に取付けるとともに、前記両油圧シリンダ(13A),(13B)の伸縮作動を司る電磁式制御バルブ(14)の右旋回用ソレノイド(14a)及び左旋回用ソレノイド(14b)に対する手動操作用ボタンスイッチ(手動操作具の一例)(15),(15’)を設けている。 而して、第3図で示すように、前記昇降操作レバー(10)の握り部(10a)の頂部に前記サイドクラッチ(12A),(12B)の手動操作用ボタンスイッチ(15),(15’)を取り付けて、これら両ボタンスイッチ(15),(15’)を、昇降操作レバー(10)の握り部(10a)を握持した側の手指で自由に操作することができるように構成している。」(3頁19行?5頁9行) (イ)第1図の記載からみて、運転席の前方に昇降操作レバー(10)を設けた操縦ボックス(8)が配設されていることが理解できる。 以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明1) 運転席の前方に配設した操縦ボックス(8)に、サイドクラッチの操作と刈取部(B)の駆動昇降操作をする昇降操作レバー(10)を設けたコンバインにおいて、昇降操作レバー(10)の先端部に握り部(10a)を設け、握り部(10a)の頂部に左右のサイドクラッチ(12A),(12B)の手動操作用ボタンスイッチ(15),(15’)を取り付けたコンバイン。 (刊行物2) 本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-20478号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「作業車の操向装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (ウ)「1はコンバインの運転席前方に設置された操縦部で、この操作パネル2上には所定間隔をおいてハンドル3が横架されている。 4は操作パネル2上において左右に操作可能に設置された操向レバーであって、この操向レバー4には左右方向の操作に起因して左右走行装置のサイドクラッチ断続用ソレノイドSL,SRを作動させる。スイッチ5が設けられている。」(2頁右上欄9行?16行) (刊行物3) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平1-128395号(実開平3-66408号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、「操作レバー」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (エ)「作業車の作動を制御する操作レバーにおいて、・・・」(実用新案登録請求の範囲参照) (オ)「第3図に示すように、長円形のノブを長形の先端がその操作レバー(31?34)により切換えられるアウトリガの方向に傾斜して取付けられたものでも可能である。」(5頁11行?14行) (3)対比・判断 本願補正発明と引用発明1とを対比すると、それぞれの有する機能に照らして、引用発明1の「操縦ボックス(8)」は本願補正発明の「運転操作部」に相当し、以下同様に「昇降操作レバー(10)」は「マルチステアリングレバー」に、「握り部(10a)」は「ケース部」に、「手動操作用ボタンスイッチ(15),(15’)」は「複数のスイッチ押圧部」に、「握り部(10a)」と「手動操作用ボタンスイッチ(15),(15’)」とを合わせたものは「操作グリップ」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明1の「握り部(10a)」の内部にスイッチ機構を設けることは通常であるし、第3図からも推認できる。 また、引用発明1の「手動操作用ボタンスイッチ(15),(15’)」も、左右のサイドクラッチ(12A),(12B)を操作するものであること及び第1図と第3図の記載からみて、左右方向に並べて設けられていると理解できるものであり、左右サイドクラッチを作用させて機体を方向修正できるものである。 したがって、本願補正発明と引用発明1とは、本願補正発明の用語を用いて記載すると下記の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 運転席の前方に配設され、サイドクラッチの操作と刈取部の上下操作をするマルチステアリングレバーを設けたコンバインの運転操作部において、マルチステアリングレバーの先端部に操作グリップを設け、内部にスイッチ機構を設けたケース部と、ケース部の上面側に複数のスイッチ押圧部とを設けてなる操作グリップを形成するとともに、上記スイッチ押圧部をケース部上面の左右方向に並べて設け、スイッチ押圧部の操作により、左右サイドクラッチを作用させて機体を方向修正することを特徴とするコンバインの運転操作部。 (相違点1) 本願補正発明においては、運転操作部の「フロント操作パネル」にマルチステアリングレバーを設けているのに対し、引用発明1においては、「フロント操作パネル」を備えているかどうか明らかでない点。 (相違点2) 本願補正発明においては、操作グリップを、「平面視で前後方向に長い楕円形状に」形成し、スイッチ押圧部をケース部上面の「直径の短い」左右方向に並べて設けているのに対し、引用発明1においては、そのような構成を備えていない点。 以下、上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物2には、上記摘記事項(ウ)からみて、引用発明1と同じくコンバインの操縦部に関して、操作パネル2上に操向レバーを設ける点が記載されている。そして刊行物2に記載された技術事項を引用発明1に適用する点に何らの困難性はないから、引用発明1に刊行物2に記載された操作パネル2上に操向レバーを設ける点を適用し、運転操作部の「フロント操作パネル」にマルチステアリングレバーを設ける構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。 (相違点2について) 刊行物3には、上記摘記事項(エ)、(オ)からみて、作業車の作動を制御する操作レバーのノブを長円形とする点が記載されている。そして、そもそも握りやすさ等の観点から操作グリップの形状を変更する程度のことは設計的事項にすぎないし、作業車の操作レバーのノブ形状を引用発明1の操作グリップの設計変更に際し参考とする点に格別の困難性もないから、刊行物3に記載された技術事項を参酌して、引用発明1の操作グリップを「平面視で前後方向に長い楕円形状に」形成することは当業者が容易に想到できたことである。 また、操作グリップを「平面視で前後方向に長い楕円形状に」形成すれば、スイッチ押圧部をケース部上面の「直径の短い」左右方向に並べて設けることになるのは必然である。 したがって、引用発明1及び刊行物3に記載された技術事項に基づいて、相違点2に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。 また、本願補正発明の効果を検討しても、引用発明1並びに刊行物2及び3に記載された発明から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明1)及び刊行物2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (iii)上記(i)、(ii)により、いずれにしても、本件補正は却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成18年1月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 内部にスイッチ機構(7)を設けたケース部(8)と、ケース部(8)の上面側に複数のスイッチ押圧部(9a,9b)とを設けてなる操作グリップ(6)を、平面視で前後方向に長い楕円形状に一体形成するとともに、上記スイッチ押圧部(9a,9b)をケース部(8)より突出した凸状に形成したことを特徴とする作業車輛の操作グリップ。」 (2)刊行物に記載された発明 (刊行物4) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭56-136088号(実開昭58-44619号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物4」という。)には、「操作レバー用押釦スイッチ付グリップ」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (カ)「この考案は、建設機械などの操作レバーの上部に取付ける押釦スイッチ付グリップに関するものである。」(1頁19行?2頁1行) (キ)「操作レバー100のねじ棒部100aには、グリップ軸12のねじ穴12aがはめこまれており、グリップ軸12の上がわ部の外周には、外周面を球面状に形成したグリップ芯体11がはめこまれており、グリップ軸12の上端部には押釦スイッチ2が取付けられている。グリップ芯体11、グリップ軸12の下がわ部、押釦スイッチ2は、可撓性の高分子材料、たとえば軟質合成樹脂からなるグリップ表皮10で被覆されている。」(4頁18行?5頁6行) (ク)図面(特に第3図)の記載からみて、グリップ表皮10の上面側に押釦2b部に対応するグリップ表皮の薄い部分を設けていること、及びグリップは一体形成されていることが理解できる。 以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物4には、下記の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明2) 内部に押釦スイッチ2を設けたグリップ表皮10とグリップ表皮10の上面側に押釦2b部に対応するグリップ表皮の薄い部分とを設けたグリップを一体形成した、建設機械などの操作レバー用押釦スイッチ付グリップ。 (刊行物3) 刊行物3の記載事項は、上記2.(II)(ii)(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明と引用発明2とを対比すると、それぞれの有する機能に照らして、引用発明2の「押釦スイッチ2」は本願発明の「スイッチ機構」に相当し、以下同様に「グリップ表皮10」は「ケース部」に、「押釦2b部に対応するグリップ表皮の薄い部分」は「スイッチ押圧部」に、「グリップ」は「操作グリップ」に、「操作レバー用押釦スイッチ付グリップ」は「作業車両の操作グリップ」に、それぞれ相当する。 したがって、本願発明と引用発明2とは、本願発明の用語を用いて記載すると下記の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 内部にスイッチ機構を設けたケース部と、ケース部の上面側にスイッチ押圧部とを設けてなる操作グリップを、一体形成したことを特徴とする作業車輛の操作グリップ。 (相違点3) 本願発明においては、操作グリップを、「平面視で前後方向に長い楕円形状に」形成しているのに対し、引用発明2においては、そのような構成を備えていない点。 (相違点4) 本願発明においては、スイッチ押圧部を、「複数」とし、「ケース部(8)より突出した凸状に形成」しているのに対し、引用発明2においては、そのような構成を備えていない点。 以下、上記相違点について検討する。 (相違点3について) 刊行物3には、上記摘記事項(エ)、(オ)からみて、作業車の作動を制御する操作レバーのノブを長円形とする点が記載されている。そして、そもそも握りやすさ等の観点から操作グリップの形状を変更する程度のことは設計的事項にすぎないし、引用発明2と同じく作業車の操作レバーに関するものである刊行物3に記載されたノブ形状を、引用発明2の操作グリップの設計変更の際に参考とする点に格別の困難性もないから、刊行物3に記載された発明を参酌して、引用発明2の操作グリップを「平面視で前後方向に長い楕円形状に」形成することは当業者が容易に想到できたことである。 (相違点4について) 一般に、ケース部に相当する部材に設けたスイッチ押圧部を「複数」とし、「突出した凸状に形成」することは本願出願前周知の技術事項(例、登録実用新案第3001530号公報、特開平5-62560号公報、特開平4-163816号公報参照)である。そうすると引用発明に該周知の技術事項を適用し、引用発明2における「スイッチ押圧部」を「複数」とし、「ケース部より突出した凸状に形成」することは当業者が容易に想到できたことである。 なお、請求人は平成17年5月6日付けの意見書において、これらの相違点に基づく格別の効果を主張しているが、本願発明の効果を検討しても、引用発明2、刊行物3に記載された発明、周知の技術事項の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 (4)むすび したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物3及び4に記載された発明並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-16 |
結審通知日 | 2007-08-21 |
審決日 | 2007-09-03 |
出願番号 | 特願平7-34566 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G05G)
P 1 8・ 575- Z (G05G) P 1 8・ 121- Z (G05G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡▲さき▼ 潤、岡野 卓也 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
町田 隆志 水野 治彦 |
発明の名称 | コンバインの運転操作部 |