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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1167981
審判番号 不服2004-19268  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2007-11-15 
事件の表示 特願2001-287354「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 8日出願公開、特開2002-126266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年2月22日に出願された特願平11-42982号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願とした特願平11-314703号の一部をさらに同法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成16年8月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月16日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月14日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年10月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、「図柄変動表示手段21」が「前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示可能な表示部位(39)?(41)を上下方向及び左右方向に複数個備え」る旨限定することを補正事項に含んでおり、これは特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の第4項2号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「図柄始動手段(14)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換駆動可能な可変入賞手段(15)と、複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)を有し且つ前記図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に前記複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)の図柄が所定時間変動して停止する図柄変動表示手段(21)と、該図柄変動表示手段(21)の判定用図柄表示部(22)?(24)の変動後の停止図柄が所定の組み合わせとなったときに、前記可変入賞手段(15)を第1状態に変換駆動する等、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(38)とを備えた弾球遊技機において、前記図柄変動表示手段(21)は前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示可能な表示部位(39)?(41)を上下方向及び左右方向に複数個備え、該図柄変動表示手段(21)は、前記停止図柄が所定の組み合わせとなることを条件に乱数により、前記判定用図柄表示部(22)?(24)を複数個配列した複数種類の表示部配列パターンの内の1つを選択する機能を有する図柄表示部制御手段(32)の制御によって、その選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)に複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示するようにしたことを特徴とする弾球遊技機。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-19302号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?シの記載が図示とともにある。
ア.「マトリックス状に並べられた複数個の表示領域を含む表示部と、
前記表示部に含まれる表示領域の列のうちから、一又は複数の列を特定する表示領域列特定手段と、
前記表示部に対して、前記表示領域列特定手段によって特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示を行わしめる第1表示部制御手段と、
前記表示領域列特定手段によって特定された表示領域の数に対応する数の参照値を設定する参照値設定手段と、
予め定められた範囲から無作為に選んだ一の数値を出力する第1数値出力手段と、
夫々前記表示領域の列と一対一対応する複数個の数値のうちから無作為に選んだ一の数値を出力する第2数値出力手段と、
前記第1数値出力手段から出力された数値と前記参照値設定手段によって設定された各参照値とを比較する比較手段と、
前記表示部に対して、前記第1数値出力手段から出力された数値と何れかの前記参照値とが一致した場合には、前記第2数値出力手段によって出力された数値に対応する列をなす表示領域上に特別な識別表示を行わせ、前記第1数値出力手段から出力された数値が何れの前記参照値とも一致しなかった場合には、各表示領域上に前記特別な識別表示以外の識別表示を行わせる第2表示部制御手段と、
前記第1数値出力手段から出力された数値と何れかの前記参照値とが一致した場合に、前記第2数値出力手段から出力された数値が前記表示領域列特定手段によって特定された何れかの列に対応するか否かを判定する判定手段と、
前記第2数値出力手段から出力された数値が前記表示領域列特定手段によって特定された何れかの列に対応すると前記判定手段によって判定された場合に、遊戯形態を変更する遊戯形態変更手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」(【請求項8】)
イ.「遊技領域2の中央には、9個の表示領域4a?4iを3×3のマトリックス状に並べてなる液晶表示部4(表示部に相当)が、設けられている。これらの各表示領域4a?4iは、図2に示すCPU10の画像制御部18によって夫々別個に制御され、夫々独自の表示を行う。具体的には、その時点において設定されている「有効ライン」をなす表示領域4a?4iは、図4に示すように、「有効ライン」の方向を示す指示線L(図4参照)を表示する(特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示する事に相当。)。・・・具体的には、この指示線Lには、「有効ライン」の方向が横方向であることを示すもの(図4における指示線L(1),L(0),L(2)),並びに、「有効ライン」の方向が斜め方向であることを示すもの(図4における指示線L(3),L(4))がある。なお、その時点において「有効ライン」として設定されていない表示領域4a?4iは、何れの指示線Lをも表示しない。そして、各表示領域4a?4iは、指示線Lを表示する場合には、背景を明るく表示し、指示線Lを表示しない場合には、背景を暗く表示する(特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示する事に相当。)。」(段落【0023】?【0024】)
ウ.「液晶表示部4の真上には、7個のセグメントを選択的に点灯させることによって“0”から“9”まで数字を表示するLED7が、設けられている。このLED7は、図2に示すCPU10の第1カウンタ参照部14から通知されて来るカウント値(0?9)に対応する数字を表示する。」(段落【0026】)
エ.「液晶表示部4の真下には、液晶表示始動口5が設けられており、この液晶表示始動口5の真下には、可変入賞球部6が設けられている。一方、液晶表示部4の左右には、LED始動口8a,8bが設けられている。」(段落【0027】)
オ.「液晶表示始動口5の内部には、入賞した玉Bを検出するためのセンサ(図示せず)が設けられている。この図示せぬセンサは、図2に示す液晶表示始動口入賞検出部24の一部をなしている。そして、液晶表示始動口5に入賞した玉Bがこのセンサによって検出された時には、液晶表示始動口入賞検出部24は、CPU10の比較部27及びラインカウンタ19に対して、その旨を通知するのである。」(段落【0030】)
カ.「第1カウンタ参照部14は、有効ライン・参照値特定部15に対して通知を行う。この有効ライン・参照値特定部15は、比較部27,画像制御部18,及び大当り判定部20に対して通知を行う。一方、第1カウンタ13は、第1カウンタ参照部14及び第2カウンタ16に対して通知を行う。この第2カウンタ16は、比較部27に対して通知を行う。この比較部27は、パターン選択部17及び大当り判定部20に対して通知を行う。また、ラインカウンタ19は、パターン選択部17及び大当たり判定部20に対して通知を行う。このパターン選択部17は、画像制御部18に対して通知を行う。また、パターン選択部17は、テーブル21の検索を行う。」(段落【0036】)
キ.「第1カウンタ13は、CPUが制御プログラムを実行している間中0.001秒毎に0?9の範囲でカウントアップするカウンタ」(段落【0037】)
ク.「タイマ12は、所定時間(通常は30秒)の経過を計測するソフトウェアタイマである。このタイマ12は、この所定時間が経過すると、第1カウンタ参照部14に対して、その旨を通知する。・・・LED始動口入賞検出部22から玉Bの入賞の通知があった場合に、タイマ12がその経過を計測する所定時間を、30秒から15秒へ変更させる。・・・第1カウンタ参照部14は、タイマ12から上記通知がなされた時には、その通知の時点で第1カウンタ13から通知されたカウント値を抽出し、この抽出したカウント値を有効ライン・参照値特定部15に通知する」(段落【0038】?【0040】)
ケ.「有効ライン・参照値特定部15は、第1カウンタ参照部14から通知された抽出カウント値に基づいて、有効ラインの番号(有効ライン番号)及び参照値の特定を行う(表示領域列特定手段及び参照値特定手段に相当)。具体的には、有効ライン・参照値特定部15は、第1カウンタ参照部14から通知された抽出カウント値が3である場合には、有効ライン番号として0,1,2を特定し、大当たり参照値として0,5,10,50,150を特定する。また、第1カウンタ参照部14から通知された抽出カウント値が5である場合には、有効ライン番号として0,3,4を特定し、大当たり参照値として0,5,10,50,150を特定する。また、第1カウンタ参照部14から通知された抽出カウント値が7である場合には、有効ライン番号として0,1,2,3,4を特定し、大当たり参照値として0,5,10を特定する。また、第1カウンタ参照部14から通知された抽出カウント値が0,1,2,4,6,8,9である場合には、有効ライン番号として0を特定し、大当たり参照値として0,5,10,15,25,35,50,100,105,150,193,200,205,250,255を特定する。」(段落【0041】)
コ.「有効ライン・参照値特定部15は、特定した有効ライン番号を大当り判定部20及び画像制御部18に通知するとともに、参照値を比較部27に通知する。・・・比較部27(比較手段に相当)は、液晶表示始動口入賞検出部24から玉Bを検出した旨の通知を受けた時に、その通知の時点において有効ライン・参照値特定部15から通知されている参照値と第2カウンタ16から通知されたカウント値とを比較する。そして、第2カウンタ16から通知されたカウント値が何れかの参照値と一致していた場合には、「一致した」旨の情報をパターン選択部17及び大当り判定部20に通知し、第2カウンタ16から通知されたカウント値が何の参照値とも一致しない場合には、「一致しない」旨の情報をパターン選択部17に通知する。」(段落【0043】?【0044】)
サ.「大当り判定部20(判定手段に相当)は、比較部27から「一致した」旨の情報の通知を受けた時に、その通知の時点においてラインカウンタ19から通知されたカウント値(パターン選択部17にて参照されたカウント値と一致)を有効ライン・参照値特定部15から通知された有効ライン番号と比較する。この比較は、有効ラインとして設定されている表示領域4a?4iの列(有効ライン番号に対応)と、“7”が3個並べられて表示される表示領域4a?4iの列(カウント値に対応)とが一致するか否かを判定する意味を持つ。そして、大当り判定部20は、ラインカウンタ19から通知されたカウント値と有効ライン・参照値特定部15から通知された有効ライン番号とが一致した場合(即ち、有効ラインとして設定されている表示領域4a?4iの列と“7”が3個並べられて表示される表示領域4a?4iの列とが一致する場合)には、第2開閉板制御部25に対して、所定時間後に第2開閉板6aを開ける旨を命令する(遊戯形態変更手段に相当)。ここでの「所定時間」とは、画像制御部18が液晶表示部4の全表示領域4a?4iにおける数字の移動表示を停止させるまでの時間に対応する。その結果、液晶表示部4上において有効ラインとして設定されている全表示領域4a?4i上に数字“7”が停止した時点で、第2開閉板6aが開く結果となる。」(段落【0047】)
シ.「本実施形態によれば、大当り状態となる確率を実際には一定に保ちつつ、液晶表示部4上に表示される有効ラインの数及び位置を変化させることができるので、遊戯者に対して、見かけ上、大当り状態になる確率が変化したような視覚的効果を与えることができる。その結果、遊戯者は、飽きることなくこのパチンコ遊技機Pに惹き付けられるのである。」(段落【0069】)

4.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載ケは、記載アの「表示領域列特定手段」の実施例を記載したものであり、「第1カウンタ参照部14から通知された抽出カウント値」により、「一又は複数の列を特定する表示領域列」が特定される。ここでいう「抽出カウント値」は記載アの「第1数値」又は「第2数値」の何れとも異なる数値であり、以下では「第0数値」ということにする。
引用例1の記載オ,コ及び【図6】によれば、記載アの「第1数値出力」(記載コの「第2カウンタ16から通知されたカウント値」がその具体例)及びそれに関連する一連のことがらは、液晶表示始動口に入賞することを契機として発生するものであり、「前記第2数値出力手段から出力された数値が前記表示領域列特定手段によって特定された何れかの列に対応すると前記判定手段によって判定された場合」には、所定時間数字が移動表示された後、1つの有効ライン(記載アの「表示領域列」)に数字“7”が並んで停止し、そうでない場合には、どの有効ラインにも数字“7”が並んで停止しない。
記載アの「遊戯形態を変更」の具体例は、記載サの「第2開閉板6aを開ける」ことであり、それは液晶表示部に表示される数字が停止した後実行される。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「マトリックス状に並べられた複数個の表示領域を含む液晶表示部と、
第0数値出力手段と、前記第0数値出力手段から出力された数値に基づいて、前記液晶表示部に含まれる表示領域の列のうちから、一又は複数の列を特定する表示領域列特定手段と、
前記液晶表示部に対して、前記表示領域列特定手段によって特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示を行わしめる第1表示部制御手段と、
前記表示領域列特定手段によって特定された表示領域の数に対応する数の参照値を設定する参照値設定手段と、
液晶表示始動口に入賞することを契機として、予め定められた範囲から無作為に選んだ一の数値を出力する第1数値出力手段と、
夫々前記表示領域の列と一対一対応する複数個の数値のうちから無作為に選んだ一の数値を出力する第2数値出力手段と、
前記第1数値出力手段から出力された数値と前記参照値設定手段によって設定された各参照値とを比較する比較手段と、
前記液晶表示部に対して、前記第1数値出力手段から出力された数値と何れかの前記参照値とが一致した場合には、前記第2数値出力手段によって出力された数値に対応する列をなす表示領域上に特別な識別表示を行わせ、前記第1数値出力手段から出力された数値が何れの前記参照値とも一致しなかった場合には、各表示領域上に前記特別な識別表示以外の識別表示を行わせる第2表示部制御手段と、
前記第1数値出力手段から出力された数値と何れかの前記参照値とが一致した場合に、前記第2数値出力手段から出力された数値が前記表示領域列特定手段によって特定された何れかの列に対応するか否かを判定する判定手段と、
前記第2数値出力手段から出力された数値が前記表示領域列特定手段によって特定された何れかの列に対応すると前記判定手段によって判定された場合に、前記液晶表示部に表示される数字が停止した後第2開閉板を開ける遊戯形態変更手段とを備えたパチンコ遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「液晶表示始動口」は補正発明の「図柄始動手段(14)」に相当する。引用発明1の「第2開閉板」は、それが開平している場合が「遊技者に有利な第1状態」であり、閉鎖している場合が「不利な第2状態」であるから、引用発明1は「遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換駆動可能な可変入賞手段(15)」を備える。
引用発明1の「表示領域」は、補正発明の「表示部位(39)?(41)」に相当し、引用発明1において、複数個の表示領域がマトリックス状に並べられていることと、補正発明において「表示部位(39)?(41)を上下方向及び左右方向に複数個備え」ることに相違はない。引用発明1の「表示領域列」は、補正発明の「判定用図柄表示部(22)?(24)を複数個配列した」ものに相当し、それゆえ引用発明1の「表示領域」のうち「表示領域列」内に存するものが補正発明の「判定用図柄表示部(22)?(24)」に相当する。さらに、引用発明1における「液晶表示始動口に入賞することを契機として」と、補正発明における「前記図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に」にも相違はなく、引用発明1において第2開閉板が開けられるのは、液晶表示部に表示される数字が停止した後であり、停止時において、特定された「表示領域列」に「特別な識別表示」(補正発明の「判定用図柄表示部(22)?(24)の変動後の停止図柄が所定の組み合わせ」に相当)がされ、その結果「第2開閉板を開ける」だから、「図柄変動表示手段(21)の判定用図柄表示部(22)?(24)の変動後の停止図柄が所定の組み合わせとなったときに、前記可変入賞手段(15)を第1状態に変換駆動する等、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(38)とを備えた」ことは、補正発明と引用発明1との一致点となる。以上によれば、引用発明1の「液晶表示部」が補正発明の「図柄変動表示手段(21)」に相当することも明らかである。
引用発明1の「表示領域列特定手段」は複数の列を特定することもあり、同時に特定される「表示領域列」全体は補正発明の「表示部配列パターン」に相当する。そして、引用発明1においても、特定される「表示領域列」全体は、「第0数値出力手段から出力された数値に基づいて」複数種類の中からその1つが選択されるのだから、「複数種類の表示部配列パターンの中の1つを選択する機能」は引用発明1の「表示領域列特定手段」に備わっているから、引用発明1の「表示領域列特定手段」は「複数種類の表示部配列パターンの中の1つを選択する機能」を有するといえる。また、補正発明では「選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)に複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示する」としているところ、複数個の判定用図柄を表示するとの限度では、補正発明の「第1表示部制御手段」にも備わった表示制御機能であるから、同手段と「表示領域列特定手段」を併せたものを1つの手段とみて、それを「図柄表示部制御手段(32)」と称することは単なる表現の問題である。
そして、引用発明1の「パチンコ遊技機」を「弾球遊技機」と称することには何の問題もない。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「図柄始動手段(14)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換駆動可能な可変入賞手段(15)と、複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)を有し且つ前記図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に前記複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)の図柄が所定時間変動して停止する図柄変動表示手段(21)と、該図柄変動表示手段(21)の判定用図柄表示部(22)?(24)の変動後の停止図柄が所定の組み合わせとなったときに、前記可変入賞手段(15)を第1状態に変換駆動する等、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(38)とを備えた弾球遊技機において、前記図柄変動表示手段(21)は前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示可能な表示部位(39)?(41)を上下方向及び左右方向に複数個備え、該図柄変動表示手段(21)は、前記判定用図柄表示部(22)?(24)を複数個配列した複数種類の表示部配列パターンの内の1つを選択する機能を有する図柄表示部制御手段(32)の制御によって、その選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)に複数個の前記判定用図柄を表示するようにした弾球遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉「複数種類の表示部配列パターンの内の1つを選択する」に当たり、補正発明が「前記停止図柄が所定の組み合わせとなることを条件に乱数により」選択する旨特定しているのに対し、引用発明1には同特定がない点。
〈相違点2〉補正発明が「選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)に複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示するように」しているのに対し、引用発明1では「表示領域列特定手段によって特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示を行わしめる」としている点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-98382号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のス?ソの記載がある。
ス.「有効ライン表示器69a?69eは、ドラム状可変表示部材70a?70cの停止時の図柄の組み合せが有効となるラインを指定するもので、中央に停止した横方向の組み合せだけを有効(1ラインという)とする表示は、有効ライン表示器69aが点灯することによってなされ、中央に加えて上下に停止した横方向の組み合せを有効(3ラインという)とする表示は、有効ライン表示器69a、69b、69Cが点灯することによってなされ、中央及び左右に加えて停止した図柄の横方向及び斜め方向の組み合せを有効(5ラインという)とする表示は、すべての有効ライン表示器69a?69eが点灯することによりなされる。そして、上記した有効ラインの切換は、前記有効ライン選択操作ボタン10を遊技者が押圧したときに成される。」(6頁右上欄5?20行)
セ.「有効ライン選択操作ボタン10を押圧操作したときに、特定表示態様となる種類を設定することができる」(6頁左下欄5?7行)
ソ.「特定表示態様の種類を設定する条件として自動設定を選択した場合には、遊技に関係するいろいろな要因を選択することができる。例えば、特定表示態様の回数が所定数に達したとき、可変表示装置が所定回数作動したとき、始動入賞口に所定個数の入賞玉が入賞したとき、アウト玉の数が所定個数に達したとき、等である。」(17頁右上欄4?10行)

記載ス,セによれば、記載ソの「特定表示態様の種類を設定」とは、有効ライン選択にほかならない。そして、記載ソには、有効ライン選択(「複数種類の表示部配列パターンの中の1つを選択」に相当)の条件として「遊技に関係するいろいろな要因を選択することができる」旨記載されている。
そして、「停止図柄が所定の組み合わせとなる」との要因のもとに遊技状態を変更することは、例えば確率変動等に見られるように周知である。そうであれば、引用発明1を出発点として、「前記停止図柄が所定の組み合わせとなることを条件」として「複数種類の表示部配列パターンの内の1つを選択する」ことは当業者にとって想到容易である。
ところで、引用例1の記載カ?ク及び【図5】によれば、引用発明1の実施例では、S05において第1カウンタ値(引用発明1の「第0数値」)を抽出するのであるが、そのタイミングは、LED始動口に入賞し15秒経過後、又はLED始動口に入賞せず30秒経過後である。前者の場合、LED始動口に入賞する時期はランダムであるから、「第0数値」を乱数ということができるが、後者の場合はそうはいえない(記載キによれば、0.01秒毎に元の数値に戻り、30秒は0.01秒の整数倍であるから。)。
しかし、「複数種類の表示部配列パターンの内の1つを選択する」条件を「前記停止図柄が所定の組み合わせとなること」とした場合には、図柄停止時期はランダムと考えられるし、偶然性を持たせる関係上、乱数による選択とすることは設計事項といわなければならない。
以上のとおりであるから、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
本願明細書には「各表示部位39?41の内、判定用図柄表示部22?24を表示しない箇所の表示部位は、他の余白部分と一緒に背景画像等を表示し、その箇所が判らないようにしても良い。また各表示部位39?41に図柄表示部22?24を常時表示しておき、判定用図柄表示部22?24とそれ以外の図柄表示部とで明度差を付けて区別するようにしても良い。或いは大きさの変化で区別するようにしても良い。」(段落【0043】)との記載が出願当初からある。他方、本件補正後の請求項1には、「選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)に複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示する」ことは明記されているものの、補正発明は、それ以外の表示部位をどのようにするのかについて特段限定していない。
すなわち、すべての表示部位に図柄表示部22?24を常時表示し、「判定用図柄表示部22?24」(選択された表示部配列パターンに対応する複数個の表示部位(39)?(41)における判定用図柄表示部)と「それ以外の図柄表示部」(選択された表示部配列パターンに対応する複数個の表示部位(39)?(41)以外の判定用図柄表示部)を遊技者が識別可能なように表示する表示態様を含んでいる。
そして、引用発明1では「表示領域列特定手段によって特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示を行わしめる」のであって、これはすべての表示部位に図柄表示部22?24を常時表示し、判定用図柄表示部22?24とそれ以外の図柄表示部を遊技者が識別可能なように表示することにほかならない。すなわち、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
百歩譲って、相違点2に係る補正発明の構成が「選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)のみに複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示する」との趣旨であるとしても、設計事項というべきである。なぜなら、特定の表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示を行わしめる手法として、最も単純なのは、他の表示領域に何も表示しないことであり、それが特定の表示領域を他の表示領域から最も際立たせることになるからである。
そればかりか、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-213711号公報には有効ライン上に位置する数字のみを表示すること(【図4】等参照)が、同じく特開平7-313689号公報には、画像表示装置50内の中央表示部42の位置を変化させ、有効ラインに合致しない部分にシンボルマークを表示しないこと(【図1】及び【図2】を参照)がそれぞれ記載されているから、選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)のみに表示することは周知技術であり、同周知技術に従い「選択された前記表示部配列パターンに対応する複数個の前記表示部位(39)?(41)のみに複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示する」ことが設計事項であることは明らかである。
以上のとおり、相違点2は実質的相違点でないか、設計事項である。

(5)補正発明の独立特許要件の判断
以上述べたとおり、相違点1,2は実質的相違点でないか、設計事項程度の相違点であるか、又は当業者にとって想到容易な相違点であり、これら相違点に係る補正発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年5月27日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「図柄始動手段(14)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換駆動可能な可変入賞手段(15)と、複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)を有し且つ前記図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に前記複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)の図柄が所定時間変動して停止する図柄変動表示手段(21)と、該図柄変動表示手段(21)の判定用図柄表示部(22)?(24)の変動後の停止図柄が所定の組み合わせとなったときに、前記可変入賞手段(15)を第1状態に変換駆動する等、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(38)とを備えた弾球遊技機において、前記判定用図柄表示部(22)?(24)を複数個配列した表示部配列パターンが複数種類あり、前記図柄変動表示手段(21)は、前記停止図柄が所定の組み合わせとなることを条件に、複数種類の前記表示部配列パターンの内の1つを選択して、該表示部配列パターンに対応する複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示するようにしたことを特徴とする弾球遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]5」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1は、
「図柄始動手段(14)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換駆動可能な可変入賞手段(15)と、複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)を有し且つ前記図柄始動手段(14)が遊技球を検出することを条件に前記複数個の判定用図柄表示部(22)?(24)の図柄が所定時間変動して停止する図柄変動表示手段(21)と、該図柄変動表示手段(21)の判定用図柄表示部(22)?(24)の変動後の停止図柄が所定の組み合わせとなったときに、前記可変入賞手段(15)を第1状態に変換駆動する等、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(38)とを備えた弾球遊技機において、前記判定用図柄表示部(22)?(24)を複数個配列した表示部配列パターンが複数種類あり、前記図柄変動表示手段(21)は、複数種類の前記表示部配列パターンの内の1つを選択して、該表示部配列パターンに対応する複数個の前記判定用図柄を表示するようにした弾球遊技機。」である点で一致し、
〈相違点1’〉「複数種類の表示部配列パターンの内の1つを選択」するに当たり、本願発明が「前記停止図柄が所定の組み合わせとなることを条件に」選択する旨特定しているのに対し、引用発明1には同特定がない点。
〈相違点2’〉本願発明が「該表示部配列パターンに対応する複数個の前記判定用図柄表示部(22)?(24)を表示するようにし」ているのに対し、引用発明1では「表示領域列特定手段によって特定された列をなす表示領域を他の表示領域から際立たせた態様で表示を行わしめる」としている点。

そこで検討するに、「第2[理由]6(1),(2)」で述べたと同様の理由により、相違点1’に係る本願発明の構成は当業者にとって想到容易であり、相違点2’は実質的相違点でないか又は設計事項程度の相違点であって、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができないから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-11 
結審通知日 2007-09-18 
審決日 2007-10-01 
出願番号 特願2001-287354(P2001-287354)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 中槙 利明
小林 俊久
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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