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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1168226
審判番号 不服2005-14465  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-28 
確定日 2007-11-22 
事件の表示 平成10年特許願第256528号「電子部品実装装置における電子部品認識装置および電子部品認識方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月31日出願公開、特開2000-91800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年9月10日の出願であって、平成17年6月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月28日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年8月19日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成17年8月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】
平成17年8月19日付けの手続補正を却下する。

【決定の理由】
[1]本件手続補正の内容
本件手続補正は、特許法第121条第1項の規定に基づく審判請求における平成17年8月19日付けでされた平成14年改正前特許法第17条の2第1項第3号の規定による補正である。そして、その請求項1に係る補正の内容は、補正前の「照明反射板」を、「第1の照明反射板と第2の照明反射板」とし、さらに補正前の「照明光の照射方向を変えて」を、「照明光の照射方向を前記第1の照明反射板と第2の照明反射板を集中的に照射するように変えて」と補正するものである。

[2]本件手続補正の適否
上記補正は、照明反射板及び照明光の照射方向に関する事項を限定するものであって、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第4項に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

〈独立特許要件について〉
[2-1]本願補正発明
本件補正後の発明は、補正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】移載ヘッドに装着されたノズルに保持された電子部品を照明手段によって照明し、撮像手段によって撮像して前記電子部品の画像認識を行う電子部品実装装置における電子部品認識装置であって、前記電子部品の背後に位置し前記照明手段の照明光を吸収して励起されて発光する発光体を有する第1の照明反射板と第2の照明反射板と、前記照明手段の前面に装着され照明光の照射方向を前記第1の照明反射板と第2の照明反射板を集中的に照射するように変えて前記発光体を照射し前記電子部品への照明光の照射を制限するルーバ状の断面を有するフィルタを備えたことを特徴とする電子部品実装装置における電子部品認識装置。」

[2-2]引用例及び引用例の主な記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-340200号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)引用例1:特開平8-340200号公報
(1a)「【請求項1】 電子部品を吸着保持する吸着ノズルの吸着部を除く部分に取り付けられた光を反射、あるいは散乱させる散乱体と、上記吸着ノズルに吸着保持された電子部品に向けて光線を照射する第1の光源と、吸着ノズルに吸着保持された電子部品の背景となる上記散乱体に向けて光線を照射する第2の光源と、上記第1の光源と第2の光源を切り換える制御部と、上記第1の光源を使用する場合には電子部品に照射された光線の反射光像を使用し、また第2の光源を使用する場合には上記散乱体に照射された光線の散乱光を背景光とした陰影像によりそれぞれ上記吸着ノズルに吸着保持された電子部品の保持状態を検査する認識部からなり、かつ上記散乱体は上記第1の光源の光線色の補色となる色の材料で形成すると共に装着ヘッドの表面に黒色塗装をした電子部品姿勢認識装置。」
(1b)「【請求項2】 吸着ノズルに吸着保持された電子部品に向けて光線を照射する第1の光源として赤色発光ダイオードを、吸着ノズルに取り付けられた散乱体に向けて光線を照射する第2の光源としてハロゲン光源を、散乱体として緑色の蛍光を発する材料にて形成したものをそれぞれ用いた請求項1記載の電子部品姿勢認識装置。」
(1c)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子部品を基板に実装する電子部品実装装置に付随して使用され、吸着ヘッドに吸着保持された電子部品の回転角度と位置を認識するための電子部品姿勢装置に関するものである。」
(1d)「【0008】
図10に示すように吸着ノズル2に小型電子部品1Aが吸着されている場合には、レンズユニット10からの照射光が散乱体3で散乱し、小型電子部品1Aの透過光像である陰影像を小視野用画像取り込みカメラ20にて取り込み、画像処理を行うことにより小型電子部品1Aの外形が認識される。」
(1e)「【0017】
図1において1は電子部品、2はこの電子部品1を吸着保持する吸着ノズル、3はこの吸着ノズル2の上方に取り付けられた散乱体であり、その下面には図2に示すように赤色光線と補色の関係となる緑色の蛍光テープ4が貼り付けられている。5は上記吸着ノズル2を5本有した装着ヘッドであり、その下面の周縁部に吸着ノズル2が均等に割付け配置され、更に装着ヘッド5の表面は光を吸収し、反射しない黒色塗装を施してある。
【0018】
6はハロゲンランプ、7はハロゲン光源、8はこのハロゲン光源7が発する光線を射出する光線照射口、9は上記光線の減衰を抑えて上記散乱体3の下方に配置されたレンズユニット10まで伝送する光ファイバ、10は上記光線を集光して散乱体3に照射するレンズユニット、11は上記ハロゲン光源7の光線照射口8とハロゲンランプ6との間に位置し、ソレノイド12とこれに取り付けられた遮光板13で構成される遮光機構であり、外部装置からの入力信号がオン状態の場合は上記ソレノイド12を駆動してハロゲンランプ6が発する光線を遮光し、オフ状態の場合はソレノイド12を駆動せずにハロゲンランプ6が発する光線を照射するように構成されている。」

[2-3]当審の判断
(1)引用例1に記載された発明
引用例1の(1a)には、請求項1として、「電子部品を吸着保持する吸着ノズルの吸着部を除く部分に取り付けられた光を反射、あるいは散乱させる散乱体と、上記吸着ノズルに吸着保持された電子部品に向けて光線を照射する第1の光源と、吸着ノズルに吸着保持された電子部品の背景となる上記散乱体に向けて光線を照射する第2の光源と、上記第1の光源と第2の光源を切り換える制御部と、上記第1の光源を使用する場合には電子部品に照射された光線の反射光像を使用し、また第2の光源を使用する場合には上記散乱体に照射された光線の散乱光を背景光とした陰影像によりそれぞれ上記吸着ノズルに吸着保持された電子部品の保持状態を検査する認識部からなり、かつ上記散乱体は上記第1の光源の光線色の補色となる色の材料で形成すると共に装着ヘッドの表面に黒色塗装をした電子部品姿勢認識装置。」が記載されている。
ここで、(1b)の「・・・散乱体として緑色の蛍光を発する材料にて形成したものをそれぞれ用いた請求項1記載の電子部品姿勢認識装置。」という記載によれば、上記散乱体は、緑色の蛍光を発する材料にて形成されたものであり、(1e)の「・・・5は上記吸着ノズル2を5本有した装着ヘッドであり、・・・」によれば、上記吸着ノズルは装着ヘッドに装着されているものであるから、上記記載及び認定事項を、本願補正発明1の記載ぶりに従って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「装着ヘッドに装着された吸着ノズルに吸着保持された電子部品に向けて第1の光源によって光線を照射し、電子部品に照射された光線の反射光像を使用し、認識部によって上記吸着ノズルに吸着保持された電子部品の保持状態を検査する電子部品姿勢認識装置であって、装着ヘッドに電子部品を吸着保持する吸着ノズルの吸着部を除く部分に取り付けられ、緑色の蛍光を発する材料にて形成され、光を反射あるいは散乱させる散乱体と、上記電子部品の背景となる散乱体に向けて光線を照射する第2の光源を備えた電子部品姿勢認識装置。」

(2)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「装着ヘッド」、「吸着ノズル」、「光源」及び「光線」は、それぞれ本願補正発明の「移載ヘッド」、「ノズル」、「照明手段」及び「照明光」に相当し、引用発明の「散乱体」は、装着ヘッドに電子部品を吸着保持する吸着ノズルの吸着部を除く部分に取り付けられるのであるから、電子部品の背後に位置しているといえるし、また、緑色の蛍光を発する材料、すなわち、照明手段の照明光を吸収して励起されて発光する発光体にて形成されており、光を反射あるいは散乱させるものであるから、本願補正発明1の「照明反射板」と同等のものといえる。
また、引用発明の「認識部」は、電子部品に照射された光線の反射光像を使用し、吸着ノズルに吸着保持された電子部品の保持状態を検査するものであるから、撮像手段によって撮像して電子部品の画像認識を行うものであることは明らかである。
一方、引用発明は、電子部品の背景となる散乱体に向けて光線を照射する第2の光源を備えているが、(1d)の「図10に示すように吸着ノズル2に小型電子部品1Aが吸着されている場合には、レンズユニット10からの照射光が散乱体3で散乱し、小型電子部品1Aの透過光像である陰影像を小視野用画像取り込みカメラ20にて取り込み、画像処理を行うことにより小型電子部品1Aの外形が認識される。」という記載によれば、このように散乱体に向けて光線を照射する目的は、光が照射されない電子部品と、光が照射される散乱体が形成する陰影像を形成するためであるから、引用発明の「電子部品の背景となる散乱体に向けて光線を照射する」とは、光線、すなわち、照明光の照射方向を、散乱体、すなわち、照明反射板を集中的に照射するように照射し、電子部品への照射光の照射を制限することを意味していると解される。
そして、引用発明の電子部品姿勢認識装置は、(1c)の記載「本発明は電子部品を基板に実装する電子部品実装装置に付随して使用され、吸着ヘッドに吸着保持された電子部品の回転角度と位置を認識するための電子部品姿勢装置に関するものである。」によれば、電子部品実装装置における電子部品認識装置であるといえる。
してみると、両者は、「移載ヘッドに装着されたノズルに保持された電子部品を照明手段によって照明し、撮像手段によって撮像して前記電子部品の画像認識を行う電子部品実装装置における電子部品認識装置であって、前記電子部品の背後に位置し前記照明手段の照明光を吸収して励起されて発光する発光体を有する照明反射板と、照明反射板を集中的に照射するように照射し、電子部品への照射光の照射を制限する照明手段を備えた電子部品実装装置における電子部品認識装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点;
(イ)本願補正発明は、第1の照明反射板と第2の照明反射板を備えるのものであるのに対して、引用発明は、単に、照明反射板を備えるものである点
(ロ)本願補正発明では、照明光の照射方向を第1の照明反射板と第2の照明反射板を集中的に照射するように変えて発光体を照射し電子部品への照明光の照射を制限するための照明手段が、ルーバ状の断面を有するフィルタを備えるものであるのに対して、引用発明では、照明手段がそのようなフィルタを備えるものではない点

(3)相違点についての判断
以下、相違点について検討する。
相違点(イ)について
本出願当時の技術水準を示すと認められる特開平3-155699号公報には、取出ヘッド(移載ヘッド、装着ヘッド又はノズルヘッドともいう。)に複数の取出ノズル(ノズル又は吸着ノズルともいう。)を配設した電子部品自動装着装置において、各ノズルに第1の拡散板(反射板又は照明反射板ともいう。)を設けるとともに、移載ヘッドに第2の拡散板を設けることによって、確実にノズルに吸着されている電子部品に拡散(反射)光を照射することができることが記載されている。さらに、この公報のほかに、特開平4-188700号公報や特開平9-331195号公報にも、同様に第1の反射板と第2の反射板を設けることが記載されている。
このように、ノズル及び移載ヘッドそれぞれに、第1の照明反射板と第2の照明反射板を備えることによって、確実にノズルに吸着されている電子部品に反射光を照射することは、本出願当時に当業者間において周知の技術事項であったと認められるから、引用発明において、上記周知の技術事項を採用し、確実にノズルに吸着されている電子部品に反射光を照射するために、吸着ノズルに取り付けられた第1の照明反射板のほかに、さらに移載ヘッドに第2の照明反射板を設けることにより、照明反射板を、第1の照明反射板と第2の照明反射板を備えるものに変更する程度のことは、当業者であれば容易に想到することができたことである。
したがって、相違点(イ)は当業者が容易になし得たことである。

相違点(ロ)について
原査定で引用された特開平6-164199号公報には、「・・・図4において、光透過板3の下部にはフィルター26が装着されている。このフィルター26は垂直なルーバ26aを有しており、光透過板3の下面から漏光した光のうち、斜め方向の光は吸収し、カメラ8の光軸OAと平行な垂直光イのみを下方へ透過させる。」(【0016】参照)ことが記載されており、照明手段の前面にルーバ状の断面を有するフィルターを装着することによって、照明光の照射の範囲を所望の範囲に集中させ、範囲をこえる照射光の照射を制限することが記載されていると認められる。また、この他に、例えば特開平7-312108号公報にも、同様の記載が認められる。
このように、照明技術において、照明手段の前面にルーバ状の断面を有するフィルターを装着することによって、照明光の照射の範囲を制限することは、本出願前に周知の技術手段であるといえる。
してみると、引用発明において、照明光の照射方向を照明反射板を集中的に照射するように変えて発光体を照射し電子部品への照明光の照射を制限するために、照明手段として、周知の前面にルーバ状の断面を有するフィルタを装着したものを用いる程度のことは、当業者であれば容易に想到することができたことといえる。
したがって、相違点(ロ)は当業者が容易になし得たことである。

(4)小活
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[2-4]
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明についての審決
[1]本願発明
平成17年8月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年6月1日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】移載ヘッドに装着されたノズルに保持された電子部品を照明手段によって照明し、撮像手段によって撮像して前記電子部品の画像認識を行う電子部品実装装置における電子部品認識装置であって、前記電子部品の背後に位置し前記照明手段の照明光を吸収して励起されて発光する発光体を有する照明反射板と、前記照明手段の前面に装着され照明光の照射方向を変えて前記発光体を照射し前記電子部品への照明光の照射を制限するルーバ状の断面を有するフィルタを備えたことを特徴とする電子部品実装装置における電子部品認識装置。」

[2]原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


1.特開平8-340200号公報
2.特開平8-5335号公報
3.特開平5-326660号公報
4.特開平6-164199号公報

[3]引用例及び引用例の主な記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物のうち、特開平8-340200号公報(引用例1)及び特開平6-164199号公報(引用例2)の主な記載事項は、上記第2の[2-2]に記載したとおりである。

[4]当審の判断
上記第2の[2-1]の本願補正発明1は、本願発明1の「照明反射板」を、「第1の照明反射板と第2の照明反射板」と補正し、さらに、本願発明1の「照明光の照射方向を変えて」を、「照明光の照射方向を前記第1の照明反射板と第2の照明反射板を集中的に照射するように変えて」と補正して、発明の特定に必要な事項をより具体的な狭い範囲に限定したものである。
このように発明を特定するために必要な事項をより狭い範囲に限定した本願補正発明1が、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる以上、本願発明1も、上記第2の[2-3]に記したと同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-18 
結審通知日 2007-09-25 
審決日 2007-10-09 
出願番号 特願平10-256528
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 長者 義久
特許庁審判官 近野 光知
坂本 薫昭
発明の名称 電子部品実装装置における電子部品認識装置および電子部品認識方法  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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