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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1168264 |
審判番号 | 不服2006-22323 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-04 |
確定日 | 2007-11-19 |
事件の表示 | 平成6年特許願第217198号「重合性液晶組成物及びこれを用いた光学異方体」拒絶査定不服審判事件〔平成8年1月9日出願公開、特開平8-3111〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成6年9月12日(優先権主張 平成5年12月24日、平成6年4月22日)の出願であって、拒絶理由通知に対し、平成17年8月11日付け、同年10月24日付け、及び平成18年5月22日付けで、それぞれ意見書とともに手続補正書が提出され、同年8月30日付けで拒絶査定がされ、同年10月4日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年11月6日付けで手続補正がされたものである。 第2 平成18年11月6日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年11月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成18年11月6日付けの手続補正 平成18年11月6日付け手続補正(以下「本願補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりとする補正事項を含むものである。 「2つ又は3つの6員環を有する液晶性骨格を部分構造として有する環状アルコール、又はフェノールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルである単官能アクリレート又は単官能メタクリレートを含有しその含有量が50から100重量%であり、該単官能アクリレート又は単官能メタクリレートが、一般式(I) 【化1】 ![]() (式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、6員環A、B及びCはそれぞれ独立的に、【化2】 ![]() を表わし、nは0又は1の整数を表わし、mは1から4の整数を表わし、Y1及びY2はそれぞれ独立的に、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH2)4-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH2=CHCH2CH2-又は-CH2CH2CH=CH-を表わし、Y3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1?20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わす。)で表わされる化合物であり、重合性官能基を有さない液晶化合物の含有量が10重量%以下であり、室温で液晶相を示すことを特徴とする重合性液晶組成物。」 2 新規事項及び目的要件について 上記請求項1についての補正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、本願補正前の請求項1における特定の「単官能アクリレート又は単官能メタクリレート」を本願補正前の請求項2に規定された「単官能アクリレート又は単官能メタクリレート」に限定した上で、本願補正前の請求項2を削除するものであるから、請求項の削除、及び特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件について そこで、本願補正の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1)特許法36条4項の要件について (ア)液晶に関する当業者の技術水準について 本願明細書の記載が特許法36条4項に規定する要件を満たしているかどうかを検討するに先立ち、液晶に関する当業者の技術水準を明らかにしておくことにする。 (以下、特許法36条に関する特許法の条文は、平成6年法律第116号による改正前のものをいう。また、この「第2」の項における「本願明細書」とは、平成18年11月6日付けで手続補正されたものをいう。) 本願の優先権主張日における、液晶に関する当業者の認識は、分子構造と液晶性との関係については、経験的な、大まかな知見はあるものの、一般的に分子構造と液晶性との関係を明確にしたり、予測することは困難であるし、具体的な液晶化合物の実験結果を理論的に解明することも困難である、というものである。 [必要なら、例えば、季刊化学総説「液晶の化学」(1994年4月25日発行),No.22,1994,10頁本文10?13行、12頁本文8行?13頁2行、14頁下から2?1行;「共立化学ライブラリー1 液晶」(昭和55年5月20日,初版9刷発行)共立出版,第66頁、本文第3?6行;特開平1-104056号公報1頁右下欄15?19行;特開平3-149290号公報右上欄1?2行、参照。] 例えば、液晶化合物に結合する分岐の有無、置換基の種類、置換基の結合位置等の(化学構造上の)微妙な違いにより、液晶性を示したり、示さなかったりする場合があるし、転移温度が著しく変化する場合がある[必要なら、例えば、「液晶の最新技術」(1983年9月15日,2版発行)工業調査会,65?66頁,「2.4分岐と置換基の効果」の項参照。]。 (イ)実施可能要件について 特許法36条4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない。」と規定している。この規定によれば、明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて、当業者が発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを発見するために、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤を行う必要があるときには、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないこととなり、同36条4項の要件を満たさないことになる。 これを本願についてみると、以下のようになる。 (a)まず、本願明細書には「本発明に係わる重合性化合物は、その化合物自体が液晶性を示しても、示さなくてもよく、また特に室温で液晶性を示す必要もない。この重合性化合物を含有する重合性組成物が室温で液晶性を示せばよい。」(段落【0044】)と記載されているものの、本願明細書には、本願補正発明における一般式(I)に包含される式(a)の化合物以外の化合物について、それをどのようにすれば「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得ることができるのかについての指針が全く示されていない。 そして、最初に「(ア)液晶に関する当業者の技術水準について」で指摘しておいたように、当技術分野においては、分子構造と液晶性との関係については、経験的な、大まかな知見はあるものの、一般的に分子構造と液晶性との関係を明確にしたり、予測することは困難であるし、具体的な液晶化合物の実験結果を理論的に解明することも困難であるところ、更に複数の化合物が混じり合った形態である組成物となればなおさらである。 しかも、本願補正発明には、それ自体新規な化合物(段落【0036】)を含有する重合性液晶組成物を包含するものであるし、また、本願補正発明の一般式(I)に包含される化合物は広範な種類のものを包含している。更に、本願明細書に例示されている重合性化合物の液晶性も広範に及んでおり(段落【0046】?【0047】)、本願補正発明における一般式(I)で示される重合性化合物が液晶性に関して共通する特性を有しているわけでもない。 してみると、本願明細書においては、本願補正発明における一般式(I)に包含される式(a)の化合物以外の化合物について、それをどのようにすれば、すなわち、式(a)の化合物以外のどのような化合物を用いて、どのような成分割合とすれば、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得ることができるのか、についての指針が全く示されていない以上、当業者は、本願補正発明における一般式(I)に包含される式(a)の化合物以外の化合物については、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るために、ただひたすら試行錯誤を繰り返す他はないのである。 してみると、本願補正発明については、本願明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて、当業者が発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを発見するためには、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤を行う必要があるというべきである。 (b)上記の点を、念のため、以下、具体例に即して述べておく。 本願明細書における発明の詳細な説明に記載された実施例において室温で液晶相を示す重合性液晶組成物として記載されているものは、全て段落【0046】に記載された式(a)の化合物を含有するもののみである。これに対し、本願補正発明は、式(a)の化合物を含有する重合性液晶組成物のみに止まらず、一般式(I)において、(アクリレート又はメタクリレート部分は特定されているものの)六員環A、B、C、二価の基Y1、Y2、一価の基Y3が全て可変基とされた広範で、かつ、それ自体新規な化合物(段落【0036】)を含有する重合性液晶組成物を包含するものである。そして、 (i)前述のように、一般式(I)においては、(アクリレート又はメタクリレート部分は特定されているものの)六員環A、B、C、二価の基Y1、Y2、一価の基Y3が全て可変基とされた広範な化合物を含有する重合性液晶組成物を包含するものであるとともに、式(a)の化合物は、(N-I相転移温度が31℃であることからみて)それ自体、「室温で液晶相を示す」化合物であると解されるところ、本願明細書の段落【0046】、及び【0047】から明らかなように、本願補正発明における一般式(I)に包含される化合物の中には、式(b)、(k)の化合物のような、そもそも液晶相を示さない化合物が包含されているし、しかも、先に(ア)で指摘した液晶に関する当業者の技術水準を勘案すると、「室温で液晶相を示す」化合物であると解される式(a)の化合物の例からは、式(b)、(k)の化合物のような、そもそも液晶相を示さない化合物を含有する組成物について、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るための指針を得ることはできないから、当業者は、式(b)、(k)の化合物のような、そもそも液晶相を示さない化合物を含有する組成物について、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るためには、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤を繰り返す他はないのである。また、 (ii)式(a)の化合物のC-I及びN-I相転移温度が39℃、31℃であるのに対し、本願補正発明における一般式(I)に包含される式(g)、(h)、(j)の化合物は、何れも結晶相(C)から液晶相への相転移温度が100℃を超えるものであって、式(a)の化合物とは異なり、室温では液晶性を示さないから、式(a)の化合物を含有する組成物とは大きく性状を異にするし、しかも、先に(ア)で指摘した液晶に関する当業者の技術水準を勘案すると、式(a)の化合物を含有する組成物の例に基づいて、本願補正発明における一般式(I)に包含される、式(g)、(h)、(j)の化合物のような、室温では液晶性を示さない化合物を用いて、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るための指針を得ることはできない。そのため、当業者は、式(g)、(h)、(j)の化合物のような、室温では液晶性を示さない化合物を含有する組成物についても、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るために、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤を繰り返す他はないのである。更に、 (iii)式(a)の化合物を構成する六員環A、Bは全て炭素原子からなるものであるところ、【化2】で示される一般式(I)の六員環A、B、Cには、窒素原子、又は酸素原子を含む六員環のものが包含されている。してみると、かかる窒素原子、又は酸素原子を含む六員環と、式(a)の化合物を構成する全て炭素原子からなる六員環A、Bとは、化学構造上、全く異なるし、しかも、先に(ア)で指摘した液晶に関する当業者の技術水準を勘案すると、式(a)の化合物を含有する組成物の例からは、窒素原子、又は酸素原子を含む六員環を含む化合物を含有する組成物について、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るための指針を得ることはできない。そのため、当業者は、窒素原子、又は酸素原子を含む六員環を含む化合物を含有する組成物について、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得るために、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤を繰り返す他はないのである。 (c)したがって、本願は、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないので、特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。 (2)特許法36条5項1号の要件について 特許法36条5項1号は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 これを本願についてみるに、先に「(1)特許法36条4項の要件について」で指摘したように、本願明細書には、本願補正発明における一般式(I)に包含される式(a)の化合物以外の化合物について、それをどのようにすれば「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得ることができるのかについての指針が全く示されていないし、しかも、当業者が出願時の技術常識に基づいて、かかる問題を解決できるものでもないのであるから、本願補正発明については、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないのであり、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないから、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」ということはできない。 また、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超えるものである場合には、その特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、そのような場合にも、特許請求の範囲の記載は、特許法36条5項1号に規定する要件を満足しないものと解するのが相当である。そして、先に「(1)特許法36条4項について」で指摘した理由の裏返しとして、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超えるものである。 したがって、何れにしても、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条5項1号に規定する要件を満たしていない。 (3)特許法36条5項2号の要件について 特許法36条5項2号は、特許請求の範囲の記載について、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項・・・に区分してあること。」という要件に適合するものであることを求めている。 ところで、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超えるものである場合には、その特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであるともいえないから、(特許法36条5項1号に規定する要件を満足しないのみならず)特許法36条5項2号に規定する要件をも満足しないものと解するのが相当である。 すなわち、本願補正発明は、「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物に関するものであるが、先に「(1)特許法36条4項の要件について」で指摘したように、本願明細書には、本願補正発明における一般式(I)に包含される式(a)の化合物以外の化合物について、それをどのようにすれば「室温で液晶相を示す」重合性液晶組成物を得ることができるのかについての指針が全く示されていないし、しかも、当業者が出願時の技術常識に基づいて、かかる問題を解決できるものでもないのであるから、本願補正発明の重合性液晶組成物にはどのようなものが包含されるのかが不明確であり、結局、本願補正発明の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであるともいえないので、特許法36条5項2号に規定する要件を満足しないものである。 したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条5項2号に規定する要件を満たしていない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、特許法36条4項、同5項1号、及び同5項2号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、上記補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本願補正は上記のとおり却下されたから、この出願の請求項1に係る発明は、平成18年5月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「2つ又は3つの6員環を有する液晶性骨格を部分構造として有する環状アルコール、又はフェノールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルである単官能アクリレート又は単官能メタクリレートを含有し、その含有量が50から100重量%であり、重合性官能基を有さない液晶化合物の含有量が10重量%以下であり、室温で液晶相を示すことを特徴とする重合性液晶組成物。」 2 原査定の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、本願は、特許請求の範囲、及び明細書の記載が、特許法36条4項、同5項1号、及び同5項2号に規定する要件を満たしていない、というものである。 3 当審の判断 本願発明の重合性液晶組成物においては、前記「第2」で検討した、本願補正発明の一般式(I)で規定される化合物を含有する重合性液晶組成物を包含することは明らかである。 そして、補正の却下の決定がされた平成18年11月6日付け手続補正は、特許請求の範囲のみを補正するものであって、発明の詳細な説明を補正するものではない。 してみると、本願補正発明に対して、前記「第2 3」の(1)?(3)で指摘したのと同様の理由で、本願は、特許法36条4項、同5項1号、及び同5項2号に規定する要件を満たしていないから、原査定の拒絶理由は解消されていない。 第4 結語 以上のとおりであるから、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-19 |
結審通知日 | 2007-09-20 |
審決日 | 2007-10-04 |
出願番号 | 特願平6-217198 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
Z
(C07C)
P 1 8・ 534- Z (C07C) P 1 8・ 575- Z (C07C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉住 和之、冨永 保 |
特許庁審判長 |
西川和子 |
特許庁審判官 |
唐木以知良 岩瀬眞紀子 |
発明の名称 | 重合性液晶組成物及びこれを用いた光学異方体 |
代理人 | 河野 通洋 |