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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1168324
審判番号 不服2006-3561  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-27 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 平成 8年特許願第509911号「圧縮空気等のためのスロットル弁およびエアー式織機でのスロットル弁の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月21日国際公開、WO96/08668、平成10年 6月 9日国内公表、特表平10-505893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1995年9月13日(パリ条約に基づく優先権主張1994年9月16日、ベルギー国)を国際出願日とする出願であって、平成17年11月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月29日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年3月29日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月29日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「各々の主ブローノズル(1、2)が、高圧力の圧縮空気を各々の緯糸を送り出す為の主ブローノズル(1、2)に運ぶ為の主弁(8)により、圧縮空気源(7)に連結可能であり、それぞれが該ノズルから緯糸を送り出す為の一つ以上の主ブローノズル(1、2)を備えるエアー式織機であって、前記一つ以上の主ブローノズル(1、2)のそれぞれが、高圧力の圧縮空気の代わりに、低圧力の圧縮空気を各々の該ノズル内に緯糸を保持する主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁(11)とも連結され、前記スロットル弁(11)がスロットル間隙(25)を形成する第一弁要素(17)と第二弁要素(19)を備え、前記スロットル間隙は電気駆動部により上記弁要素の少なくとも一つの位置を調整することにより調整可能で、前記電気駆動部は規定の大きさのスロットル間隙(25)を調整する為の制御ユニット(16)により制御された電気モータ(27)を含むことを特徴とするエアー式織機。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「高圧力の圧縮空気を各々の主ブローノズル(1、2)に運ぶ為の主弁(8)」を「高圧力の圧縮空気を各々の緯糸を送り出す為の主ブローノズル(1、2)に運ぶ為の主弁(8)」に限定し、以下同様に、「圧縮空気源(7)に連結可能である一つ以上の主ブローノズル(1、2)」を「圧縮空気源(7)に連結可能であり、それぞれが該ノズルから緯糸を送り出す為の一つ以上の主ブローノズル(1、2)」に、「前記一つ以上の主ブローノズル(1、2)が低圧力の圧縮空気を各々の主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁(11)とも連結され」を「前記一つ以上の主ブローノズル(1、2)のそれぞれが、高圧力の圧縮空気の代わりに、低圧力の圧縮空気を各々の該ノズル内に緯糸を保持する主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁(11)とも連結され」にそれぞれ限定している。
さらに、上記補正は、「前期スロットル間隔」を「前記スロットル間隔」に訂正し、同様に、「1つの位置」を「一つの位置」に訂正している。
したがって、上記補正は平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」および同第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に違反しているものか)について以下検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-152240号(実開平1-58678号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、「空気噴射式織機の空気供給装置」と題して、図面とともに次の事項が記載されている。
・「空気噴射式織機においては、緯入れノズル(主ノズル)からの空気の噴射を第4図に示すように行なっている。すなわち、緯入れに先き立ってまず、緯糸の先端を主ノズルの前方に引きのばすための先行噴射(A)を行い、ついで緯入れのための緯入れ用噴射(B)を行い、その後緯糸切断時に緯糸が主ノズルから抜け出さないようにするため、または多色緯入れの場合は休止中の主ノズル内にある緯糸が抜け出さないようにするための緯糸抜け防止用噴射(C)を行っている。」(明細書第1頁第16-第2頁第5行)
・「上述の問題点を解決するため本考案においては、圧力空気供給源からの圧力空気を空気タンクに導いた後、開閉弁を介して緯入れノズルに供給するようにした空気噴射式織機において、前記空気タンクと緯入れノズルとの間に絞り弁を介装した回路を前記開閉弁と並列に接続して空気噴射式織機の空気供給装置を構成する。
(作 用)
上述のように本考案においては、先行噴射(A)および緯糸抜け防止用噴射(C)とも、緯入れ用噴射Bより単位時間当りの空気噴射量が少ないこと、すなわち圧力が低いことに着目して、(A),(C)の少なくと一方の空気供給回路を(B)用の回路に設けた空気タンク5から分岐して、その分岐回路に設けた絞り弁によって噴射空気の流量を調整するようにしたから、この構成によれば、緯入れ用の空気タンクからの圧力空気を絞り弁により先行噴射(A)および緯糸抜け防止用噴射(C)に適した流量に設定して緯入れノズルに圧力空気を供給することができる。」(同書第4頁第5行-第5頁第4行)
・「第1図は本考案の第1実施例を示すもので、この実施例においては、前記配管3に介装した開閉弁6に対して配管15,16をそれぞれ並列に接続し、配管15に開閉弁17と絞り弁18を介装して先行噴射(A)用の回路を構成すると共に、配管16には絞り弁19を介装して緯糸抜け防止用噴射(C)を行うための回路を構成する。」(同書第6頁第4-10行)
・「つぎに開閉弁6が開弁すると、緯入れノズル1に配管3を介して圧力空気が導かれ、緯糸Wはその噴射空気によって緯入れされる。」(同書第7頁第13-15行)

これらの記載事項および図示内容を総合すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認めることができる。
「緯入れノズルが、圧力空気供給源からの圧力空気を緯糸を緯入れする為の緯入れノズルに供給する為の開閉弁6により、空気タンクに接続可能であり、該緯入れノズルから緯糸を緯入れする為の緯入れノズルを備える空気噴射式織機であって、前記緯入れノズルが、圧力空気供給源からの圧力空気の代わりに、圧力が低い圧力空気を緯糸が該緯入れノズルから抜け出さないようにする緯入れノズルに供給する為の絞り弁19とも接続される空気噴射式織機。」(以下「引用発明」という。)

(2-2)原査定の拒絶の理由に引用された特公平4-27470号公報(以下「引用文献2」という。)には、「電子膨張弁」と題して、図面とともに次の事項が記載されている。
・「第1図は本発明電子膨張弁の一実施例を示し、デイジタル制御器によつて制御するので、暖房および冷房の双方の冷凍サイクルを行わせる装置には最も好適なものである。ここで、1A,1Bおよび1Cは互いに螺合させて弁箱1を構成する弁箱部材である。2は、弁棒(ピントル)3の中間に設けた弁体であり、弁箱部材1Aには弁体2との間に滑らかな流線形の流路としてのオリフイス4を形成するために、紡錘型とした弁体2の最大径路が弁の閉成時に接するようにした弁座5を設けるとともに、この弁座5に続く直後の曲面5Aを弁座5から緩かに開放させた朝顔型形状に形成する。」(第4頁右欄第3-15行)
・「そこで次に、第3図に示すような2つの同一の高次曲面がその回転中心軸をある距離だけ平行にずらせて、お互いに凸の面を向け合つて対向しているものとする。お互いの相対位置が中心軸の方向に移動するとき、オリフイスのクリアランスdは、曲面の相対距離(弁の行程)xの関数として、第1図で、d1,d2,d3のように変わる。」(第5頁左欄第14-20行)
・「10は空所6側に貫通させたピントル3の端部に設けた弁駆動金具であり、弁駆動金具10にはナツト部材11を固着する。さらに弁駆動金具10は、その外周に軸方向の差12を有し(第2図参照)、この摺動溝12に弁箱部材1B側の突出させた軌条13を嵌め合わすことにより、駆動金具10を軌条13に沿つて摺動自在とする。さらにまた、ナツト部材11はステツピングモータ14の回転軸15に螺刻したねじ部16に螺合しており、ステツピングモータ14による回転軸15の回転は、このナツト部11とねじ部16との螺合により駆動金具10を軸方向に移動させるねじ運動に変換され、弁体2を同方向に移動させ弁開度を変化させる。」(第5頁右欄第41行-第6行左欄第10行)
・「また、本発明では、デイジタル制御器によりステツピングモータを駆動して膨張弁を外的条件に即応した状態で開閉するようにしたので、大幅な外的条件の変化にも自由に対応でき、広範囲でかつ精度の高い制御動作が得られる。」(第8頁左欄第5-9行)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「緯入れノズル」は本願補正発明の「主ブローノズル」に相当し、以下同様に、「圧力空気供給源からの圧力空気」は「高圧力の圧縮空気」に、「緯入れする為」は「送り出す為」に、「供給する為」は「運ぶ為」に、「開閉弁6」は「主弁」に、「空気タンク」は「圧縮空気源」に、「接続」は「連結」に、「空気噴射式織機」は「エアー式織機」に、「圧力が低い圧力空気」は「低圧力の圧縮空気」に、「緯糸が緯入れノズルから抜け出さないようにする」は「ノズル内に緯糸を保持する」に、「絞り弁19」は「スロットル弁」にそれぞれ相当する。

すると、本願補正発明と引用発明は次の点で一致する。
<一致点>
「主ブローノズルが、高圧力の圧縮空気を緯糸を送り出す為の主ブローノズルに運ぶ為の主弁により、圧縮空気源に連結可能であり、該ノズルから緯糸を送り出す為の主ブローノズルを備えるエアー式織機であって、前記主ブローノズルが、高圧力の圧縮空気の代わりに、低圧力の圧縮空気を該ノズル内に緯糸を保持する主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁とも連結されるエアー式織機。」

一方で、本願補正発明と引用発明は次の相違点1および相違点2で相違する。
<相違点1>
本願補正発明において、エアー式織機は主ブローノズルを複数備えた構成であるのに対し、引用発明においては、エアー式織機が主ブローノズルを複数備えているか否かの構成が明らかでない点。
<相違点2>
スロットルに関し、本願補正発明は、「スロットル弁がスロットル間隙を形成する第一弁要素と第二弁要素を備え、前記スロットル間隙は電気駆動部により上記弁要素の少なくとも一つの位置を調整することにより調整可能で、前記電気駆動部は規定の大きさのスロットル間隙を調整する為の制御ユニットにより制御された電気モータを含む」構成を有するのに対し、引用発明はかかる構成を有していない点。

(4)判断
上記相違点1および相違点2について検討する。

まず、相違点1について検討する。
エアー式織機の技術分野において、主ブローノズルを複数備えることは、例えば、特開平5-287641号公報および特開平5-287639号公報に開示されており、周知の技術である。エアー式織機の設計において、主ブローノズルの数を単数とするか複数とするかは当業者が通常の創作能力の範囲内で適宜選択し得る事項と認められるから、引用発明において、上記周知の技術にならい、主ブローノズルの数を複数とすることにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が格段の困難性を伴うことなくなし得たことである。

次に、相違点2について検討する。
引用文献2には、弁の間隙調整において、「スロットル弁(膨張弁)がスロットル間隙(オリフイスのクリアランス)を形成する第一弁要素(弁座)と第二弁要素(弁体)を備え、前記スロットル間隙(オリフイスのクリアランス)は電気駆動部により上記弁要素の少なくとも一つの位置を調整することにより調整可能で、前記電気駆動部は規定の大きさのスロットル間隙(オリフイスのクリアランス)を調整する為の制御ユニット(デイジタル制御器)により制御された電気モータ(ステツピングモータ)を含む」構成を採用することにより、高い制御動作精度を奏するようにしたものが開示されている。
弁の間隙調整の際の制御動作精度の向上は、当業者が考慮してしかるべき自明な課題であるから、この課題の下に、引用発明において引用文献2の上記構成を採用することにより、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が格段の困難性を伴うことなくなし得たことである。

本願補正発明の効果も、引用発明、引用文献2に記載の発明および周知の技術から当業者が予測し得た範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は引用発明、引用文献2に記載の発明および周知の技術1に基づき当業者が容易に発明し得たものである。
以上のとおりであるから、本願補正発明については、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する平成6年改正前法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
平成18年3月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は平成16年9月15日付の手続補正書で補正された明細書および図面の記載からみて、以下のとおりのものであると認める。
「各々の主ブローノズル(1、2)が、高圧力の圧縮空気を各々の主ブローノズル(1、2)に運ぶ為の主弁(8)により、圧縮空気源(7)に連結可能である一つ以上の主ブローノズル(1、2)を備えるエアー式織機であって、前記一つ以上の主ブローノズル(1、2)が低圧力の圧縮空気を各々の主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁(11)とも連結され、前記スロットル弁(11)がスロットル間隙(25)を形成する第一弁要素(17)と第二弁要素(19)を備え、前記スロットル間隙は電気駆動部により上記弁要素の少なくとも1つの位置を調整することにより調整可能で、前記電気駆動部は規定の大きさのスロットル間隙(25)を調整する為の制御ユニット(16)により制御された電気モータ(27)を含むことを特徴とするエアー式織機。」(以下「本願発明」という。)
なお、「前期スロットル間隔」は「前記スロットル間隔」の誤記であることは明らかであることから、本願発明を上記のとおり認定した。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明の「高圧力の圧縮空気を各々の緯糸を送り出す為の主ブローノズル(1、2)に運ぶ為の主弁(8)」を「高圧力の圧縮空気を各々の主ブローノズル(1、2)に運ぶ為の主弁(8)」に上位概念化し、以下同様に、「圧縮空気源(7)に連結可能であり、それぞれが該ノズルから緯糸を送り出す為の一つ以上の主ブローノズル(1、2)」を「圧縮空気源(7)に連結可能である一つ以上の主ブローノズル(1、2)」に、「前記一つ以上の主ブローノズル(1、2)のそれぞれが、高圧力の圧縮空気の代わりに、低圧力の圧縮空気を各々の該ノズル内に緯糸を保持する主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁(11)とも連結され」は「前記一つ以上の主ブローノズル(1、2)が低圧力の圧縮空気を各々の主ブローノズルに運ぶ為のスロットル弁(11)とも連結され」にそれぞれ上位概念化されている。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)および(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載の発明および周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明については、引用発明、引用文献2に記載の発明および周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-29 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願平8-509911
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16K)
P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 谷口 耕之助
渋谷 善弘
発明の名称 圧縮空気等のためのスロットル弁およびエアー式織機でのスロットル弁の使用  
代理人 狩野 彰  

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