• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1168629
審判番号 不服2004-14497  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-12 
確定日 2007-11-26 
事件の表示 特願2000- 15172「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月31日出願公開、特開2001-204889〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成12年1月25日の出願であって、平成16年6月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年7月12日付けで本件審判請求がされるとともに、同月29日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年7月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正は特許請求の範囲を補正するものである。本件補正前の請求項1には「前記特定導入遊技中、最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、いずれも複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、いずれか一つを抽選で選択」とあり、請求項2,3は請求項1を引用して記載した請求項であるところ、補正後の請求項1には同限定に代えて「最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、前記特定導入遊技中のメダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数との差枚数に基づいて、いずれか一つを選択」とあるから、補正後の請求項1は補正前の請求項1?3の何れをも限定して減縮したものではない。
もっとも、補正後請求項1の上記限定事項は補正前の請求項3にあり、「いずれか一つを抽選で選択」と「差枚数に基づいて、いずれか一つを選択」は両立しないから、補正前請求項1の上記記載が誤記である(補正前請求項1を引用する請求項2に、再度抽選である旨の限定がされているから、この蓋然性が高い。)か、又は補正前請求項3において請求項1を引用したことが誤記であると解さねばならず、本件補正後の請求項1はその誤記を訂正(誤記に当たる請求項1の上記記載を削除)した上で、補正前の「特別遊技中の抽選確率データが異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブル」を「抽選確率データのうち前記特定遊技の入賞に係る抽選確率データ及びその他の入賞に係る抽選確率データがそれぞれ異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブル」と補正する等の補正を施したものと解される。上記補正事項は、抽選確率データの異なり方について限定するものである(「特別遊技中の」との文言が削除されているが、「特別遊技用入賞判定テーブル」なのだから、この点は問題としない。)から、特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか、以下において検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものである。ただし、請求項1記載の「前記遊技特定遊技」は「前記特定遊技」の明らかな誤記と認められるから、訂正の上次のとおり認定する。
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備え、
前記ストップスイッチの操作により、前記回転リールの所定の図柄が有効入賞ライン上に揃うように停止すると、所定枚数のメダルが払い出される遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段は、
入賞抽選用の乱数を所定の領域内で発生させる乱数発生手段と、
前記乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段と、
前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中、各入賞項目毎に乱数全領域に対する出現回数となる抽選確率である抽選確率データを有する入賞判定テーブルと、
前記乱数抽出手段が抽出した乱数と、前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に、
前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し、当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する判定手段とを備え、
遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記特別遊技として、通常遊技よりも入賞確率の大きい特定遊技と、予め定められた回数の遊技中において前記遊技特定遊技に移行することができる特定導入遊技とを少なくとも設け、
前記特定導入遊技は、予め定めた所定の回数だけ前記特定遊技に移行可能に設定され、
前記入賞判定テーブルは、抽選確率データのうち前記特定遊技の入賞に係る抽選確率データ及びその他の入賞に係る抽選確率データがそれぞれ異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブルを備え、
前記入賞抽選手段は、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、所定の特別遊技用入賞判定テーブルを選択する入賞判定テーブル選択手段を備え、
前記入賞判定テーブル選択手段は、前記特定導入遊技へ移行した際、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、いずれか一つを抽選により選択し、前記特定導入遊技中、最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、前記特定導入遊技中のメダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数との差枚数に基づいて、いずれか一つを選択し、
前記判定手段は、前記入賞判定テーブル選択手段が選択した特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得し、次に特別遊技用入賞判定テーブルを選択するまでの間、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得していることを特徴とする遊技機。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-5381号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?トの記載が図示とともにある。なお、引用例1には、実施例を示す番号が丸付き数字で表記されているが、通常の数字表記に改めた上で摘記する。
ア.「現行のスロットマシンでは、「BAR」「BAR」「BAR」のような所定のシンボルの組合せが成立すると、レギュラーボーナスとなり、高確率で入賞が成立するボーナスゲームが、8回の入賞が得られるまで、または最大12回まで実行される。・・・また「7」「7」「7」のシンボルの組合せが成立するとビッグボーナスとなり、一般の入賞シンボルによる当たりが頻繁に生じるほか、前記したレギュラーボーナスが高い確率で当たるようになる。このビッグボーナス時のボーナスゲームは、最大30回のゲームが実行されるか、3回のレギュラーボーナスが出現するまで持続する。」(段落【0005】?【0006】)
イ.「【発明が解決しようとする課題】上記のように、スロットマシンでは、各種のボーナス成立により遊技者に利益をもたらす内容のゲームが実行されるが、ボーナスゲームの実行回数、入賞回数、入賞確率は固定化されているため、ゲーム展開が単調になりがちである。このため遊技者に意外なゲーム展開を提示することができず、遊技者の入賞への期待感や興奮を十分に喚起できないという問題がある。・・・この発明は上記問題点に着目してなされたもので、複数とおりの態様の特別ゲームを、それぞれ任意の確率で出現させることにより、ゲーム展開に意外性をもたせて、遊技機のゲーム性や遊技者のゲームへの関心を大いに高めることを技術課題とする。」(段落【0008】?【0009】)
ウ.「図1は、この発明が適用されたスロットマシンの外観を、図2は機体内部の構成を、それぞれ示す。・・・本体部2の中空内部には、上段位置にリールブロック4や、制御回路などが配置された回路基板5などが組み込まれ、下段位置には多数枚のメダルを収容するホッパー6aを有するメダル放出機6などが組み込まれている。」(段落【0020】)
エ.「前記リールブロック4は、金属フレーム7に3個のリール8a,8b,8cが一体に組み付けられて成る。各リール8a,8b,8cの外周面には、赤色、青色、白色が彩色された3種類の「7」のシンボル(以下各色毎に「赤7」「青7」「白7」と示す)のほか、「BAR」や「フルーツ(FRUIT)」の文字を配した図柄、チェリー,すいか、ベルを模した図柄など、複数種のシンボルが、所定の順序で21駒分配備されている。さらにこのリールブロック4には、各リール8a,8b,8cを個別に回転駆動するステッピングモータ9a,9b,9cが組み付けられている。」(段落【0021】)
オ.「正面パネル11と下部パネル13との間のフレーム部分には、始動レバー14,停止釦スイッチ15a,15b,15c,ベット釦スイッチ24a,24b,24c,メダル投入口16などが配備され、下部パネル13の下方には、メダル払出口17,メダル受け皿18などが設けられる。」(段落【0025】)
カ.「始動レバー14の操作により全てのリール8a,8b,8cが一斉に始動すると、後記する制御回路部25内で抽選処理が行われ、有効ライン上に入賞のシンボルの組合せを整列表示させるかどうかが決定される。そしていずれかのシンボルによる「当たり」を成立させることが決定すると、その後、制御回路部25は、停止釦スイッチ15a,15b,15cが操作される都度、対応するリール8a,8b,8cに対し、有効ライン上に決定されたシンボルを停止させる引込み制御を実行し、入賞を成立させる。」(段落【0030】)
キ.「すべてのリール8a,8b,8cが停止して、有効ライン上に同種の入賞シンボルが整列表示されると、所定枚数のメダルが払い出される。」(段落【0031】)
ク.「図5は、ボーナス入賞用のシンボル組合せを示す。この実施例では、前記「赤7」,「青7」,「白7」の各色毎の「7」のシンボル組合せを、ビッグボーナス用のシンボル組合せとして設定している。」(段落【0032】)
ケ.「「BAR」「BAR」「BAR」、または「BAR」「BAR」「赤7」の各組合せは、レギュラーボーナス用のシンボル組合せとして機能する。ただしビッグボーナス時にレギュラーボーナスの入賞が発生した場合は、これらのシンボル組合せは出現しないように制御され、代わりに「プラム」「プラム」「プラム」の組合せが成立するような引込み制御が行われる。」(段落【0033】)
コ.「前記シンボル組合せ決定用の抽選は、「1」?「16384」の範囲内の整数値による乱数を用いて実行されており、制御回路部25には、各ボーナス入賞や一般入賞の入賞確率の設定データとして、各入賞毎に特定の乱数値が割り当てられた抽選テーブルがセットされる。」(段落【0035】)
サ.「制御回路部25はマイクロコンピュータより成り、制御主体であるCPU27,プログラム,リール8a,8b,8c毎のシンボル配列テーブル、および前記した抽選テーブルなどが記憶されるROM28,データの読み書きに用いられるRAM29などを含む。」(段落【0037】)
シ.「始動レバー14が操作されると、制御部33には始動信号が入力され、これを受けて制御部33はリール駆動部31aにスタート指令を発してステッピングモータ9aを作動させる。この後、停止釦スイッチ15aが押操作されて制御部33に停止操作信号が入力されると、制御部33はリール駆動部31aへストップ指令を発してステッピングモータ9aの作動を停止させる。」(段落【0044】)
ス.「前記ROM28内には、一般ゲームモード時、ボーナスゲーム時の各種入賞に対し、それぞれ前記6段階の確率設定毎に、各種入賞毎の入賞確率に応じた数の乱数値がセットされた抽選テーブルが記憶されている。抽選部37は、遊技者によるゲーム開始操作がある毎に、内部で発生させた乱数値により、ゲームの状況や確率設定に応じた抽選テーブルを参照し、入賞を成立させるか否かを決定する。」(段落【0047】)
セ.「上記構成のスロットマシンは、ゲーム展開にバリエーションをもたせるために、ビッグ,レギュラー,シングルの3種類のボーナス入賞のうち、いずれかに複数とおりのシンボル組合せを設定するとともに、各組合せ毎に異なる態様のボーナスゲームが実行されるように設定している(以下この設定を「ボーナス入賞のパターン変動」という)。」(段落【0049】)
ソ.「以下の3つの実施例は、前記した「赤7」「青7」「白7」の各シンボル組合せ毎に、個別のビッグボーナスBB1,BB2,BB3を設定し、各ビッグボーナスBB1,BB2,BB3を、それぞれ異なる確率で出現させるとともに、ビッグボーナス毎に異なる態様のゲームが実行されるように設定したものである。なお各ビッグボーナスは、いずれも、所定回数のレギュラーボーナスが実行された時点、または30回のボーナスゲームが実行された時点で完了となる。」(段落【0050】)
タ.「「RBBB」は、ビッグボーナスにおけるレギュラーボーナスの入賞(すなわち前記図4に示した「プラム」のシンボルによる入賞)を意味する」(段落【0057】)
チ.「<実施例2>この実施例では、各ビッグボーナスBB1,BB2,BB3とも、ビッグボーナス中のレギュラーボーナスの制限回数を3回に統一し、その代わりに、レギュラーボーナスを含む各種入賞の成立する確率を、ビッグボーナス毎に変動させるようにしている。ただし各種入賞毎のメダルの払出し枚数やレギュラーボーナスの入賞内容(レギュラーボーナスの成立により実行されるボーナスゲームの回数)は、各ビッグボーナスとも同一に設定される。」(段落【0061】)
ツ.「図11は、この実施例に用いられる抽選テーブルの設定例を、各入賞毎のメダル払出し枚数とともに示す。この実施例では、各ビッグボーナスBB1,BB2,BB3毎に、個別の抽選テーブルが設定される。レギュラーボーナスにかかる当たり度数は、各ビッグボーナスとも、確率設定値、投入メダル数に関わらず、一律に設定されているが、BB1では「5000」、BB2では「3000」、BB3では「2000」というように、ビッグボーナス毎に異なる度数が設定されている。」(段落【0062】)
テ.「また一般入賞にかかる当たり度数に着目すると、最もレギュラーボーナスの当たる確率の高いBB1よりも、BB2,BB3に高い度数が設定され、特に3枚のメダルを投入した場合のフルーツ入賞の当たり度数は、BB2では「8500」、BB3では「9000」と、非常に高い度数に設定される。」(段落【0063】)
ト.「各ビッグボーナスは、いずれも、3回のレギュラーボーナスが実行された時点、または30回のボーナスゲームが実行された時点で終了となる。したがってビッグボーナスのうちBB1が成立した場合は、頻繁にレギュラーボーナスが出現し、チェリー入賞やフルーツ入賞はあまり当たらない、というゲーム展開になり、短いゲーム数で3回のレギュラーボーナスが成立して、通常ゲームモードに復帰すると予想される。・・・これに対し、BB2,BB3では、レギュラーボーナスの当たる確率が低い代わりに、チェリー入賞やフルーツ入賞の当たる確率が高くなっているので、レギュラーボーナスが1回成立するまでの間に、これらの一般入賞が高頻度で出現し、レギュラーボーナスのあいまに実行されるゲーム数が増えることが予想される。」(段落【0064】?【0065】)

4.引用例1記載の発明の認定
記載ア?トを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「外周面に複数種のシンボルを配備した3個のリール、各リールを個別に回転駆動するステッピングモータ、始動レバー,各リールに対応した停止釦スイッチ、メダル払出口、メダル受け皿及び制御回路部を備え、有効ライン上に入賞シンボルが整列表示されると、所定枚数のメダルが払い出されるスロットマシンであって、
前記制御回路部は、制御部、抽選部並びにプログラム,リール毎のシンボル配列テーブル及び各種入賞毎の入賞確率に応じた数の乱数値がセットされた抽選テーブルなどを記憶したROMを有し、
前記制御部は、始動レバーが操作されると、ステッピングモータを作動させ、停止釦スイッチが操作されるとステッピングモータの作動を停止させる機能を有し、
前記抽選部は、内部で発生させた乱数値により抽選テーブルを参照し、入賞を成立させるか否かを決定する機能を有し、
有効ライン上に赤7,青7又は白7の各シンボル組合せが整列表示されると、ビッグボーナスとなり、
ビッグボーナスは、3回のレギュラーボーナスが実行された時点、または30回のボーナスゲームが実行された時点で終了となるゲームであり、
前記レギュラーボーナスは前記ボーナスゲームにおいてプラムのシンボルによる入賞があった場合に実行されるゲームであり、
赤7のシンボル組合せによるビッグボーナス、青7のシンボル組合せによるビッグボーナス及び白7のシンボル組合せによるビッグボーナスに対して、プラムのシンボルによる入賞確率及びその他の入賞確率がそれぞれ異なる抽選テーブルを選択するようにされたスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「複数種のシンボル」は補正発明の「複数の図柄」に相当し、「周囲に・・・表示」と「外周面に・・・配備」には表現上の相違しかなく、引用発明1のリールは回転駆動されるものだから「回転リール」と称することができる。したがって、引用発明1の「3個のリール」(又はこれに「ステッピングモータ」を加えたもの)は補正発明の「リールユニット」に相当する。
引用発明1の「制御部」は「回転リールの回転及び停止を制御する」機能を有し、同じく「抽選部」は「入賞か否かの抽選を行う」機能を有する(それゆえ、補正発明の「入賞抽選手段」に相当する。)といえ、そうである以上、引用発明1の「制御回路部」は補正発明の「制御装置」に相当する。
引用発明1の「抽選部」は「内部で発生させた乱数値により抽選テーブルを参照し、入賞を成立させるか否かを決定する」のだから、補正発明でいう「入賞抽選用の乱数を所定の領域内(審決注;記載コの「「1」?「16384」の範囲」がこれに相当する。)で発生させる乱数発生手段」及び「乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段」を備えている。さらに、引用発明1の「抽選テーブル」には「各種入賞毎の入賞確率に応じた数の乱数値がセットされ」ており、このことと「各入賞項目毎に乱数全領域に対する出現回数となる抽選確率である抽選確率データを有する」ことには表現上の相違しかない。すなわち、引用発明1の「抽選テーブル」は補正発明の「入賞判定テーブル」に相当し、引用発明1においても「前記乱数抽出手段が抽出した乱数と、前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に、前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し、当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する」と解さなければならず、引用発明1は補正発明の「判定手段」を備える。
引用発明1において、「遊技として、通常遊技」を設けてあることは自明であり、引用発明1の「レギュラーボーナス」は補正発明の「特定遊技」に相当し(通常遊技よりも入賞確率が大きいことは自明である。)。
引用発明1の「ビッグボーナス」は、「有効ライン上に赤7,青7又は白7の各シンボル組合せが整列表示される」ことにより開始され(補正発明の「特定の入賞確定に基づいて開始」に相当)、「ビッグボーナス」中の30回(補正発明の「予め定められた回数」及び「予め定めた所定の回数」に該当)のボーナスゲームにおいてプラムのシンボルによる入賞があると、レギュラーボーナス(特定遊技)を実行、すなわちレギュラーボーナスに移行するのであるから、「ビッグボーナス」中の「ボーナスゲーム」は補正発明の「特定導入遊技」に相当し、「ビッグボーナス」においては、「ボーナスゲーム」と「レギュラーボーナス」が実行されるのだから、引用発明1の「ビッグボーナス」は補正発明の「特別遊技」に相当する。
引用発明1においては、シンボル組合せに応じて3種類のビッグボーナスが設けられており、異なるビッグボーナスにおいては、プラムのシンボルによる入賞確率(補正発明の「特定遊技の入賞に係る抽選確率データ」に相当)及びその他の入賞確率(同じく「その他の入賞に係る抽選確率データ」に相当)がそれぞれ異なる抽選テーブルのうちの1つを選択するのだから、「抽選確率データのうち前記特定遊技の入賞に係る抽選確率データ及びその他の入賞に係る抽選確率データがそれぞれ異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブル」及び「前記入賞抽選手段は、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、所定の特別遊技用入賞判定テーブルを選択する入賞判定テーブル選択手段」を備えることは、補正発明と引用発明1の一致点である。
当然、引用発明1においても、判定手段は選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得しているものと認める。
「スロットマシン」が「遊技機」であることはいうまでもない。
したがって、補正発明と引用発明1は、
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備え、
前記ストップスイッチの操作により、前記回転リールの所定の図柄が有効入賞ライン上に揃うように停止すると、所定枚数のメダルが払い出される遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段は、
入賞抽選用の乱数を所定の領域内で発生させる乱数発生手段と、
前記乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段と、
前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中、各入賞項目毎に乱数全領域に対する出現回数となる抽選確率である抽選確率データを有する入賞判定テーブルと、
前記乱数抽出手段が抽出した乱数と、前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に、前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し、当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する判定手段とを備え、
遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記特別遊技として、通常遊技よりも入賞確率の大きい特定遊技と、予め定められた回数の遊技中において前記遊技特定遊技に移行することができる特定導入遊技とを少なくとも設け、
前記特定導入遊技は、予め定めた所定の回数だけ前記特定遊技に移行可能に設定され、
前記入賞判定テーブルは、抽選確率データのうち前記特定遊技の入賞に係る抽選確率データ及びその他の入賞に係る抽選確率データがそれぞれ異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブルを備え、
前記入賞抽選手段は、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、所定の特別遊技用入賞判定テーブルを選択する入賞判定テーブル選択手段を備え、
前記判定手段は、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得している遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉特定導入遊技へ移行した際における入賞判定テーブルの選択につき、補正発明では「複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、いずれか一つを抽選により選択」としているのに対し、引用発明1においては、異なる3種類のうちのいずれのビッグボーナス(特別遊技)に移行する(特別遊技への移行は、特定導入遊技への移行でもある。)かに応じて、選択される特別遊技用入賞判定テーブルが定まっている点。
〈相違点2〉特定導入遊技中の入賞判定テーブルの選択につき、補正発明が「最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、前記特定導入遊技中のメダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数との差枚数に基づいて、いずれか一つを選択」としているのに対し、引用発明1では特定導入遊技中に特別遊技用入賞判定テーブルを変更しない点。なお、補正発明における「前記判定手段は、前記入賞判定テーブル選択手段が選択した特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得し、次に特別遊技用入賞判定テーブルを選択するまでの間、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得」との発明特定事項については、いったん選択された特別遊技用入賞判定テーブルを、次回の選択まで抽選確率データ取得に用いるという、極めて当然の事項を記述したにすぎないから、別途独立した相違点にはならない。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
前項で述べたとおり、引用発明1においては、いずれの特別遊技(ビッグボーナス)に移行するかに応じて、選択される特別遊技用入賞判定テーブルが定まっているのであるが、いずれの特別遊技に移行するか、すなわち、赤7,青7又は白7の各シンボル組合せのうちの何れを整列表示するかは、抽選部による抽選で定まっているから、特別遊技用入賞判定テーブルについても、抽選より選択される点では補正発明と共通している。
要するに、相違点1とは、特別遊技用入賞判定テーブルの抽選を、特定導入遊技へ移行した際に別途独立して行う(補正発明)か、それとも特定導入遊技への移行過程において行う(引用発明1)かの相違である。
スロットマシン同様、図柄表示を伴う遊技機としてはパチンコ機があるところ、パチンコ機においては、大当たり(図柄表示が特定結果になることによる。)後に確率変動を行うかどうかを、大当たり図柄の一部を確変図柄とするやり方と、大当たり後に確率変動の抽選を別途行うやり方が等しく採用されており、大当たり後に確率変動の抽選を別途行うことは周知技術と認めることができる。そのことは、例えば特開平7-613号公報(以下「周知例」という。)に「確率変動決定表示器91は特別図柄表示装置63が大当り図柄になると同時に図柄回転を開始し、特定の数字(例えば、「7」、「3」)で停止すると、大当り確率の変動が決定されるような遊技を行う。特定の数字以外(例えば、「0」)で停止すると、大当り確率の変動は決定されない。」(段落【0036】)及び「上記のように確率変動決定表示器91および確率変動回数決定表示器92を別遊技手段93として用いて大当り確率の変動を決定する場合のみならず、例えば、これとは別の態様で特別図柄表示装置63の大当り図柄(例えば、ラッキー大当り図柄)によって大当り確率を変動させるような制御を行う」(段落【0037】)と記載されているとおりである。
そして、大当たり図柄の一部を確変図柄とするやり方は、2つの抽選(大当たりにするかどうか及び確変にするかどうか)を1回の抽選で行う点で引用発明1と共通し、大当たり後に確率変動の抽選を別途行うやり方は遊技状態移行後に別途の抽選を行う点で補正発明と共通する。
そうであれば、引用発明1を出発点として、上記周知技術を採用し、ビッグボーナスの抽選と特別遊技用入賞判定テーブルの抽選を1回の抽選で行うことに代えて、ビッグボーナス移行の際(ビッグボーナスの最初のゲームは「特定導入遊技」であるから、「特定導入遊技移行の際」でもある。)に、別途抽選すること、すなわち相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-24401号公報(以下「引用例2」という。)には、「【目的】 実際に投入した遊技メダル枚数に対する入賞時に遊技者に払い出される賞メダルの枚数との算出比率が、所定の入賞確率から導き出される基準比率から著しくかけ離れないようにし、入賞の偏りによる著しい不公平が生じることのないスロットマシンを提供する。
【構成】 遊技メダル枚数に対する賞メダル枚数の比率を算出するメダル枚数対比手段122と、上記メダル枚数対比手段が算出した算出比率が、予め定められた基準比率を越えた場合には、第一入賞判定テーブル110を選択するとともに、算出比率が予め定められた基準比率に満たない場合には、第一入賞判定テーブルの入賞領域よりも広い入賞領域を有する第二入賞判定テーブル111を選択するテーブル選択手段112とを備えた。」(【要約】欄)との記載がある。
スロットマシンにあっては、ビッグボーナスにおいてどれだけのメダルを獲得できるかにより、引用例2記載の算出比率は大きく異なる。すなわち、算出比率はビッグボーナス移行率や1回のビッグボーナスにおける獲得メダル数に大きく依存する。
引用発明1においても、引用例2に記載されたように、「入賞の偏りによる著しい不公平が生じることのないスロットマシン」を目的とすることは設計事項というべきであり、上記のとおり算出比率が1回のビッグボーナスにおける獲得メダル数に大きく依存する以上、1回のビッグボーナスにおける獲得メダル数に著しい不公平が生じないことが上記目的達成に有効なことは自明である。
そして、引用発明1において、1回のビッグボーナスにおける獲得メダル数は、遊技者の技量及び選択された特別遊技用入賞判定テーブルに左右されることは明らかであり、遊技者の技量を遊技機において調整することはできないから、1回のビッグボーナスにおける獲得メダル数を調整するためには、特別遊技用入賞判定テーブルを1回のビッグボーナス中に再度選択するしかなく、そのようにすることは当業者にとって想到容易というべきである。なお、引用例2記載の「第一入賞判定テーブル」及び「第二入賞判定テーブル」は「特別遊技用入賞判定テーブル」ではないけれども、その相違は上記判断を左右するものではない。
そうすると、相違点2の判断において、残る検討事項は次の2点である。
(a)特別遊技用入賞判定テーブルを再度選択する時点を「最終回を除く前記特定遊技へ移行した際」とする点。
(b)選択基準を「特定導入遊技中のメダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数との差枚数」とする点。

(a)については次のとおりである。特別遊技用入賞判定テーブルを再度選択するに当たり、考えられるのは、特定導入遊技ごととするか適当な区切りごととするかであり、どちらにするか(補正発明は後者である。)は設計事項である。適当な区切りごととする場合、ビッグボーナス終了条件が「3回のレギュラーボーナスが実行」又は「30回のボーナスゲームが実行」であることを考慮すれば、レギュラーボーナスに着目しレギュラーボーナス移行ごととするか、ボーナスゲームに着目し適当な回数ごと(例えば10回ごと)とするかは設計事項である。以上のとおり、補正発明の(a)の構成を採用することは設計事項である。なお、「最終回を除く」との限定については、最終回のレギュラーボーナス後には特定導入遊技が実行されないのだから、特別遊技用入賞判定テーブルを再度選択することには何の意味もなく、意味のない選択をしないことは当然である。
(b)については次のとおりである。1回のビッグボーナスにおける獲得メダル数を調整することの容易性は前示のとおりであり、そのためには当該ビッグボーナス中の「メダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数」に着目することは当然である。引用例2には「算出比率」とあり、これは「差枚数」ではないけれども、「算出比率」を「差枚数」に変更することは設計事項に当たる。また、補正発明は「特定導入遊技中の」との限定を有し、特定遊技(レギュラーボーナス)における獲得メダルの多寡は考慮されていないが、レギュラーボーナスにおける獲得メダルの多寡は専ら遊技者の技量に左右され、特別遊技用入賞判定テーブルとは関係がないから、特別遊技用入賞判定テーブル選択に当たり、レギュラーボーナスにおける獲得メダルを計算外とし、同テーブル選択基準を「特定導入遊技中のメダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数との差枚数」とすることは設計事項である。
以上のとおりであるから、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり。これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1,引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1,3に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明3」とい、これらを総称して「本願発明」という。)は、平成15年12月16日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項3】に記載された事項によって特定されるものであるが、請求項3においては「第2[理由]1」で述べた誤記があるため、誤記を正した上で、独立形式に改めて以下のとおり認定する。
本願発明1:「周囲に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備えるようにした遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段は、
入賞抽選用の乱数を所定の領域内で発生させる乱数発生手段と、
前記乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段と、
前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中、各入賞項目毎に乱数全領域に対する出現回数となる抽選確率である抽選確率データを有する入賞判定テーブルと、
前記乱数抽出手段が抽出した乱数と、前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に、前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し、当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する判定手段とを備え、
遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記特別遊技として、通常遊技よりも入賞確率の大きい特定遊技と、特定遊技に移行することができる特定導入遊技とを少なくとも設け、
前記特定導入遊技は、予め定めた所定の回数だけ前記特定遊技に移行可能に設定され、
前記入賞判定テーブルは、特別遊技中の抽選確率データが異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブルを備え、
前記入賞抽選手段は、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、所定の特別遊技用入賞判定テーブルを選択する入賞判定テーブル選択手段を備え、
前記入賞判定テーブル選択手段は、前記特定導入遊技へ移行した際,及び前記特定導入遊技中、最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、いずれも複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、いずれか一つを抽選で選択し、
前記判定手段は、前記入賞判定テーブル選択手段が選択した特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得し、次に特別遊技用入賞判定テーブルを選択するまでの間、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得して入賞判定領域データを作成していることを特徴とする遊技機。」
本願発明3:「周囲に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備えるようにした遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段は、
入賞抽選用の乱数を所定の領域内で発生させる乱数発生手段と、
前記乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段と、
前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中、各入賞項目毎に乱数全領域に対する出現回数となる抽選確率である抽選確率データを有する入賞判定テーブルと、
前記乱数抽出手段が抽出した乱数と、前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に、前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し、当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する判定手段とを備え、
遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記特別遊技として、通常遊技よりも入賞確率の大きい特定遊技と、特定遊技に移行することができる特定導入遊技とを少なくとも設け、
前記特定導入遊技は、予め定めた所定の回数だけ前記特定遊技に移行可能に設定され、
前記入賞判定テーブルは、特別遊技中の抽選確率データが異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブルを備え、
前記入賞抽選手段は、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、所定の特別遊技用入賞判定テーブルを選択する入賞判定テーブル選択手段を備え、
前記入賞判定テーブル選択手段は、前記特定導入遊技へ移行した際に、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、いずれか一つを抽選で選択し、最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、前記特定導入遊技中のメダルの払い出し枚数とメダルの投入枚数との差枚数に基づいて、いずれか一つを選択し、
前記判定手段は、前記入賞判定テーブル選択手段が選択した特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得し、次に特別遊技用入賞判定テーブルを選択するまでの間、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得して入賞判定領域データを作成していることを特徴とする遊技機。」

2.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
「第2[理由]」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1は、
「周囲に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記回転リールの回転及び停止を制御するための制御装置とを備えるようにした遊技機において、
前記制御装置は、入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え、
前記入賞抽選手段は、
入賞抽選用の乱数を所定の領域内で発生させる乱数発生手段と、
前記乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段と、
前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中、各入賞項目毎に乱数全領域に対する出現回数となる抽選確率である抽選確率データを有する入賞判定テーブルと、
前記乱数抽出手段が抽出した乱数と、前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に、前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し、当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する判定手段とを備え、
遊技として、通常遊技と、特定の入賞確定或いは抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記特別遊技として、通常遊技よりも入賞確率の大きい特定遊技と、特定遊技に移行することができる特定導入遊技とを少なくとも設け、
前記特定導入遊技は、予め定めた所定の回数だけ前記特定遊技に移行可能に設定され、
前記入賞判定テーブルは、特別遊技中の抽選確率データが異なる複数の特別遊技用入賞判定テーブルを備え、
前記入賞抽選手段は、複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、所定の特別遊技用入賞判定テーブルを選択する入賞判定テーブル選択手段を備え、
前記判定手段は、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得して入賞判定領域データを作成している遊技機。」である点で一致し、本願発明1と引用発明1は「第2[理由]5」で述べた相違点1及び次の相違点3において、並びに本願発明3と引用発明1は「第2[理由]5」で述べた相違点1,2において相違する(相違点1,相違点2については、「補正発明」を「本願発明」又は「本願発明3」と読み替える。)。
〈相違点3〉特定導入遊技中の入賞判定テーブルの選択につき、本願発明1が「前記特定導入遊技中、最終回を除く前記特定遊技へ移行した際に、いずれも複数の前記特別遊技用入賞判定テーブルのうちから、いずれか一つを抽選で選択」としているのに対し、引用発明1においては、異なる3種類のうちのいずれのビッグボーナス(特別遊技)に移行する(特別遊技への移行は、特定導入遊技への移行でもある。)かに応じて、選択される特別遊技用入賞判定テーブルが定まっている点。なお、「前記判定手段は、前記入賞判定テーブル選択手段が選択した特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得し、次に特別遊技用入賞判定テーブルを選択するまでの間、選択された特別遊技用入賞判定テーブルから抽選確率データを取得」との発明特定事項については、いったん選択された特別遊技用入賞判定テーブルを、次回の選択まで抽選確率データ取得に用いるという、極めて当然の事項を記述したにすぎないから、別途独立した相違点にはならない。

3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
相違点1,2については「第2[理由]6」で述べたとおり、当業者にとって想到容易である。
相違点3については次のとおりである。引用発明1は「ゲーム展開に意外性をもたせて、遊技機のゲーム性や遊技者のゲームへの関心を大いに高めることを技術課題と」(引用例1の記載イ)したものであり、1回のビッグボーナス中における入賞確率(本願発明1の「抽選確率データ」)を変化させれば、なお一層ゲーム展開に意外性を持たせることになり、上記技術課題解決に資することは明らかである。
そればかりか、上記周知例にあるように、遊技機においては、異なるゲームに移行する際に、同異なるゲーム終了後の入賞確率を抽選等により変化可能とする技術は周知である。そして、引用発明1においては、ビッグボーナス中にレギュラーボーナスに移行することは、ビッグボーナス中において異なるゲームに移行することにほかならず、入賞確率はレギュラーボーナス時における入賞確率を意味するものではないから、上記周知技術を引用発明1のビッグボーナスに適用して、相違点3に係る本願発明1の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。
そして、相違点1?3に係る本願発明1又は本願発明3の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明1は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明3は、引用発明1,引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明1及び本願発明3が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-21 
結審通知日 2007-09-27 
審決日 2007-10-10 
出願番号 特願2000-15172(P2000-15172)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤田 年彦
渡部 葉子
発明の名称 遊技機  
代理人 黒田 博道  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ