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審判番号(事件番号) データベース 権利
判定200260107 審決 特許
判定2007600040 審決 特許
判定200660062 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B21J
管理番号 1168803
判定請求番号 判定2007-600042  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-01-25 
種別 判定 
判定請求日 2007-05-22 
確定日 2007-12-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第3787502号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「硬貨の製造方法」は、特許第3787502号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1.請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、「イ号図面(甲第3号証)に示す「硬貨の製造方法」は、特許第3787502号の請求項1記載の発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」というものである。

第2.本件特許発明
1.手続の経緯
先の出願 平成12年 3月 8日
本件出願 平成13年 3月 8日(優先権主張)
拒絶理由通知 平成15年11月 7日
意見書、補正書 平成16年 1月13日
拒絶査定 平成16年 8月25日
審判請求 平成16年 9月30日
補正書 平成16年10月19日
拒絶理由通知 平成17年12月15日
意見書、補正書 平成18年 2月14日
審決 平成18年 2月27日
設定登録 平成18年 3月31日
判定請求 平成19年 5月22日
答弁書 平成19年 7月10日
口頭審理、証拠調べ 平成19年 9月 5日
請求人上申書 平成19年10月 9日
被請求人上申書 平成19年11月12日

なお、証人尋問申請は、判定請求時にはなく、後日なされたものであり、特許法第71条第3項で準用する同法第131条の2第1項本文の規定に照らし、疑義があるところであるが、被請求人の同意のもと、同法第71条第3項で準用する同法第138条第2項第150条第1項の規定に基づき、職権で実施した。

2.本件特許発明
本件特許発明は、特許明細書、図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、請求項1を分説すると、以下のとおりである。

「(1)遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、
(2)硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
(3)金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い、金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ、傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き、これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること、及び、
(4)平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分を切削することによって、
(5)得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後、
(6)この金型を用いてプレスすることによって、硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と、この幾何学的地模様から浮き出る文字、図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」

第3.イ号方法
1.経緯
請求人は、甲第5号証(検甲第1号証硬貨の写真)、甲第6号証(被請求人のホームページの「コイン・メダル」を紹介したページのプリントアウト)、及び検甲第1号証(被請求人製造の硬貨)の「No.0005」の硬貨(以下「イ号硬貨」という。)が、その形状から、甲第3号証に示すイ号方法により製造されたものと「推定」されると主張する。
しかし、イ号硬貨から、直ちに製造方法が定まるとは言えず、請求人の上記主張、証拠によっては、イ号方法を明確に特定することができない。
そこで、審判長は、特許法第71条第3項で準用する同法第145条第2項ただし書きの規定により、口頭審理によるものとするとともに、同法第150条第1項の規定により、検甲第1号証の検証、中村貴志証人の証人尋問を実施し、これを踏まえた上申書が両当事者から提出された。

2.請求人の主張
請求人は、平成19年10月9日の上申書第2ページによれば、イ号方法は、以下のとおりと主張している。

ア.遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、
イ.硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
ウ.FANUC ROBODORILL(マシニングセンター)を用い、以下の加工を行うことにより原金型を作る。
ア)金型の外周縁を二次元加工により平面彫りする。
イ)自動的に刃物を交換して、文字に対応する部分以外の領域に、同時三軸NC制御により、金型を横方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動させるとともに、工具を上下方向(Z軸方向)に移動させて、傾斜面を含む繰り返し模様からなる地模様を形成する。
ウ)自動的に刃物を交換して、文字の縁部を二次元加工により平面彫りする。
エ.原金型の表面を金属製ブラシで処理する。
オ.原金型を焼き入れする。
カ.原金型の表面を回転させた金属製ブラシで処理する。
キ.原金型の表面模様をプレス加工により電極部材に転写する。
ク.この電極部材を使ってプレス金型に放電加工を施し、プレス金型の表面に原金型の表面模様を転写する。
ケ.プレス金型の表面を回転させた金属製ブラシで処理する。
コ.プレス金型の表面にダイヤモンドペーストを用いてバフ研磨を施す。
サ.このプレス金型を用いて真鍮材料をプレスすることにより真鍮製硬貨を成形する。
シ.成形した真鍮製硬貨の表面にニッケルメッキ処理を施して10μm以下のニッケル被膜を形成し、硬貨を完成する。

3.被請求人の主張
被請求人は、平成19年11月12日の上申書第2ページによれば、ウ.以外は認め、ウ.については、以下のとおりと主張している。

ウ.FANUC ROBODORILL α-T21iEによって、ワーク(金型)を横方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動させるとともに、工具を上下方向(Z軸方向)に移動させる3軸制御によって、原金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様を形成するとともに、文字、図形等の模様に対応する部分の外縁を切削する。

4.当審の判断
乙第1号証(本件特許発明と被請求人のイ号方法の対比図面)、乙第8号証(FANUC ROBODORILL α-T21iEのカタログ)、乙第9号証(イ号方法の樹脂製ブラシ及びフェルト製ブラシの写真)、乙第10号証(FANUC ROBODORILL α-T21iE用工具写真)、乙第12号証(イ号方法の説明図)、乙第15号証(イ号方法のイ号切削機による切削加工工程説明用写真)、及び中村貴志証人の「模様部分と数字部分の加工主体は、ともにファナックで、別な機械は使っていない」、「ファナックロボドリルは、XYZの3軸だけで、刃物が傾くことはない」旨の証言等によれば、ウ.の原金型の加工においては、FANUC ROBODORILL α-T21iEによる3軸加工が行われたことが認められる。
しかしながら、工具を交換して「平面彫り」がなされたとすることを認めるに足る証拠はない。
したがって、イ号方法は、被請求人の主張を採用し、以下のとおりと認められる。

ア.遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、
イ.硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
ウ.FANUC ROBODORILL α-T21iEによって、ワーク(金型)を横方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)に移動させるとともに、工具を上下方向(Z軸方向)に移動させる3軸制御によって、原金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様を形成するとともに、文字、図形等の模様に対応する部分の外縁を切削する。
エ.原金型の表面を金属製ブラシで処理する。
オ.原金型を焼き入れする。
カ.原金型の表面を回転させた金属製ブラシで処理する。
キ.原金型の表面模様をプレス加工により電極部材に転写する。
ク.この電極部材を使ってプレス金型に放電加工を施し、プレス金型の表面に原金型の表面模様を転写する。
ケ.プレス金型の表面を回転させた金属製ブラシで処理する。
コ.プレス金型の表面にダイヤモンドペーストを用いてバフ研磨を施す。
サ.このプレス金型を用いて真鍮材料をプレスすることにより真鍮製硬貨を成形する。
シ.成形した真鍮製硬貨の表面にニッケルメッキ処理を施して10μm以下のニッケル被膜を形成し、硬貨を完成する。

第4.対比・判断
イ号方法が、本件特許発明の技術的範囲に属するか否か、分説した構成要件ごとに、充足関係を検討する。

1.構成要件(1)、(2)
イ号方法の構成ア.、イ.は、それぞれ、本件特許発明の構成要件(1)、(2)を充足する。
なお、この点は、両当事者間に争いはない。

2.構成要件(3)
イ号方法の構成ウ.について検討する。
イ号方法で用いる「FANUC ROBODORILL α-T21iE」は、乙第8号証からみて、「同時三軸制御NC加工装置」であり、「フライス加工」に適したものであると認められる。
また、同時三軸制御、すなわちXYZの3方向制御が可能なものであることから、「金型の厚み方向に切削可能」であることは明らかである。
そして、この装置により「原金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様」が形成されることから、この装置が「金型に対して一定のパターンで切削深さを変えながら金型表面上を移動」し、「傾斜面を含む特定のパターン」が金型上に描かれるものである。
しかしながら、構成要件(3)の「任意の角度の斜め方向へ切削可能」、「金型に対して一定のパターンで角度を変えながら」なる点については、後述するように「工具が角度を変える」と解すべきところ、イ号方法は、工具が傾くものではないから、イ号方法の構成ウ.は、本件特許発明の構成要件(3)を充足しない。

請求人は、この点に関し、以下のとおり主張する。
「同時三軸制御NCフライス機における「同時三軸制御NCフライス機三軸制御」とは、ワークの載っているテーブルを水平方向のx軸方向、y軸方向に移動させ、主軸を垂直方向のz軸方向に移動させる制御であることは技術常識である。そして、切削工具を傾斜させるのは、前記三軸制御にさらに一軸以上を加えた四軸以上の制御をいうことになる。したがって、切削工具を傾斜させて用いることを三軸制御とはいわないのである。」(上申書第4ページ第19?24行)
「上述の明細書の記載を総合的に判断すると、「切削深さと角度を変えながら」の「角度」とは、切削工具自体の傾斜角度ではなく、金型の切削面の傾斜角度と解したほうが自然である。また、図1及び図8において、切削工具を斜めに図示しているのは、金型の傾斜面を形成する状態を概念的に分かりやすく示したものと解すべきである。」(上申書第5ページ第2?6行)
すなわち、請求人は、構成要件(3)の「角度」は、切削工具自体を傾けるものではなく、切削面が傾斜している角度と解すべきであるから、イ号方法の「FANUC ROBODORILL α-T21iE」による切削加工も、「3方向制御」により傾斜面が切削される以上、構成要件(3)を充足する旨、主張する。

しかしながら、以下の理由により、請求人の主張は採用できない。
(1)請求項1には、「角度を変えながら金型表面上を移動させ、傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き」なる記載があり、かかる動作主体は「工具」であることから、「工具」が「角度を変え」ると解することが自然である。
(2)特許明細書の段落0017には、「図1に示すように、立体彫り用の同時三軸制御NCフライス機9を用い、金型2に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら、横方向に移動させ、特定のパターンを金型2上に描く。」なる記載があり、図1には、工具が角度を変えながら傾斜するものが記載されている。
(3)特許明細書の段落0019には、「この繰り返しパターンは、同時三軸制御NCフライス機9に対し、切削の深度・角度と横方向への移動の相関関係を、プログラム等で前もって設定しておけば、自動的にかつ失敗無く所定パターンを彫り込むことができる。」なる記載があり、仮に、工具傾斜のない3軸制御で傾斜面を形成するのであれば、「切削の深度と横方向への移動の相関関係」で十分であり「角度」は不要である。
(4)特許明細書の段落0030には、「図4は、この発明の他の実施形態を示すものであり、前述の金型2の切削時に、同時三軸制御NCフライス機9を用いて、硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分を、一定の角度傾斜させて二つの方向から切削してゆき、断面V形状のV溝10を形成する。」なる記載があり、図4には、工具が角度を変えながら傾斜するものが記載されている。
(5)図面に関し、請求人は、「切削工具を斜めに図示しているのは、金型の傾斜面を形成する状態を概念的に分かりやすく示したものと解すべきである。」と主張するが、明細書、図面にその旨の注釈はなく、不自然な主張であることは否めない。

3.構成要件(4)
イ号方法の構成ウ.のうち、まず切削手段について検討する。
イ号方法は、「FANUC ROBODORILL α-T21iEによって」切削するものであり、後述のとおり「平面彫刻機により」切削するものとは認められないから、本件特許発明の構成要件(4)を充足しない。
請求人は、イ号方法で用いる「FANUC ROBODORILL α-T21iEは、平面彫刻機及び同時三軸制御NCフライス機の上位概念であり、全ての切削加工をFANUC ROBODORILL α-T21iEで行うからといって、本件特許発明と差異は無い。」と主張する。
そこで、構成要件(4)の「平面彫刻機により」について検討する。
特許明細書の段落0005?0006には、平面彫刻機に関する記載がある。
また、段落0015には、「請求項1の発明で用いる同時三軸制御NCフライス機を用いて、硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削しておけば、得られる硬貨の表面の文字等の部分は側縁部から傾斜を有して浮き出るので、平面彫刻機によって彫り込むものに比較して、模様部分の表面積が増加して光の反射面が増大し、更に浮き出た文字等の側縁部は凸部の立ち上がりによる影か生じないので輝きが増すと同時に、文字、図形等の模様により傾斜面が種々の方向を向いているので、色々な角度で光を反射する。」なる記載、段落0020には、「次に、従来と同様、平面彫刻機によって、最終的に硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の硬貨が使用される場所に応じた模様を、金型2の所定位置に彫りこむ。(図示せず)」なる記載がある。
その他、特許明細書全体を勘案するに、特許明細書上、「平面彫刻機」と「同時三軸制御NCフライス機」とが使い分けられていることは明らかである。
一般的には、請求人の主張のとおり、上位概念、下位概念の関係が妥当するとしても、特許請求の範囲の用語の意義は、特許法第70条第2項に規定されるとおり、特許明細書を考慮すべきである。
したがって、特許明細書上、「平面彫刻機」と「同時三軸制御NCフライス機」とが使い分けられていることが明らかである以上、請求人の主張は採用できない。

次に、イ号方法の構成ウ.のうち、切削部位について検討する。
構成要件(4)の「文字、図形等の模様に対応する部分」は、イ号方法の構成ウ.「文字、図形等の模様に対応する部分の外縁」に対応する。
「対応する部分の外縁」が、「対応する部分」に含まれることは、概念上、明らかである。
両者の切削部位の相違がもたらす、硬貨の模様についてみても、本件特許発明により製造される硬貨は、「文字、図形等の模様に対応する部分」が凸となり、「文字、図形等の模様」が浮き出るものであり、イ号方法により製造される硬貨は、「文字、図形等の模様に対応する部分の外縁」が凸となり、全体として「文字、図形等の模様」が浮き出るものであり、格別の差違が生じるものではない。

したがって、切削手段について、イ号方法の構成ウ.と構成要件(4)とは異なることから、イ号方法の構成ウ.は、構成要件(4)を充足しない。

4.構成要件(5)
イ号方法の構成ケ.、コ.について検討する。
請求人は、イ号方法ケ.の「金属用ブラシ」による処理は、技術常識として「磨き」作用を伴うから、構成要件(5)を充足すると主張し、被請求人は、イ号方法ケ.の「金属用ブラシ」による処理は、「スラッジ等の汚れ落とし」であり、「磨き」作用は、イ号方法コ.の「バフ研磨」によるものであると主張する。

そこで、構成要件(5)の「金属用ブラシを回転させながら磨き込んだ」について検討する。
特許明細書の段落0022?0023には、以下の記載がある。
「彫刻が済んだ金型2に対し、ダイヤモンド粒子を用いて金属製ブラシや羽ブラシを回転させながら磨き込み、金型2のバリ等を削除したり角を滑らかにし、プレス後の硬貨が角張らないようにしたり、プレス後の硬貨の金型2との剥離性を高めたりする。
更に、必要に応じて硬貨3に浮き出た凸部4(又は7)に対応する凹部を研磨し、鏡面仕上げとしても良い。」
すなわち、本件特許発明の「磨き」作用は、「金型2のバリ等を削除したり角を滑らかに」するためのものであり、「鏡面仕上げ」をも含むものである。
そこで、イ号方法における「金型のバリ等を削除したり角を滑らかに」するための「磨き」作用についてみると、乙第9号証(イ号方法における樹脂製ブラシ及びフェルト製ブラシの写真)、乙第12号証(イ号方法の説明図)等によれば、かかる「磨き」作用は、コ.の「バフ研磨」によるものであって、「金属用ブラシ」による処理は、「スラッジ等の汚れ落とし」にすぎないものと認められる。
してみると、イ号方法ケ.の「金属用ブラシ」による処理は、ブラシが金型に接触する以上、「磨き」作用が皆無ではないとしても、前記作用を奏するほどの「磨き」作用はなく、程度において大きく異なるものと言わざるを得ない。
したがって、イ号方法の構成ケ.、コ.は、構成要件(5)を充足しない。

5.構成要件(6)
イ号方法の構成サ.は、プレスにより、「硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と、この幾何学的地模様から浮き出る文字、図形等の模様」が得られるものであるから、本件特許発明の構成要件(6)を充足する。
なお、この点は、両当事者間に争いはない。

第5.均等論
請求人は、上申書第8ページ(d)で、イ号方法の構成ウ.と本件特許発明の構成要件(3)における「角度」について、均等を主張している。

最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成6年2月24日)は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、以下の5つの要件を満たす場合には、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものとするのが相当であると判示している。
「(積極的要件)
(1)相違部分が特許発明の本質的部分でなく、
(2)相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(3)右のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
(消極的要件)
(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものでなく、かつ、
(5)対象製品等が、特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もない。」

そこで、イ号方法の構成ウ.と本件特許発明の構成要件(3)における「角度」について、これらの要件を満たすか否か、以下、検討する。
乙第5号証(本件特許発明に係る平成18年2月14日付手続補正書)によれば、「角度を変え」なる事項は、平成18年2月14日の補正により、付加されている。
かかる補正の契機となった平成17年12月15日の拒絶理由通知において、引用された刊行物は以下のとおりである。なお、刊行物5は、明らかな誤記のため除外した。
刊行物1 特開平7-144233号公報(甲第10号証の1)
刊行物2 特開平3-114620号公報(甲第10号証の2)
刊行物3 特開平10-328973号公報(甲第10号証の3)
刊行物4 特開昭51-111994号公報(甲第10号証の4)

これらをみると、製品又はプレス型に傾斜面を有するものはある(刊行物1の図5(B)、刊行物2の第2図、第3図、刊行物3の図3)が、工具を傾斜させるものはない。
したがって、「角度を変え」なる事項を、補正により付加した趣旨は、上記各刊行物記載のものとの差違を明確にするためと解することが相当である。
すなわち、出願手続において、「切削工具を傾斜させて用いる」ことを特定し、切削工具を傾斜させないものを除外したものであるから、上記最高裁判決で示された要件(5)を満たさない。
したがって、均等との主張は採用することができない。

第6.むすび
以上のとおり、イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2007-11-27 
出願番号 特願2001-64809(P2001-64809)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B21J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金澤 俊郎  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 加藤 昌人
菅澤 洋二
登録日 2006-03-31 
登録番号 特許第3787502号(P3787502)
発明の名称 硬貨の製造方法  
代理人 鎌田 文二  
代理人 田川 孝由  
代理人 大島 泰甫  
代理人 東尾 正博  
代理人 小原 順子  
代理人 後藤 誠司  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 鳥居 和久  

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