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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200728889 審決 特許
不服200728891 審決 特許
不服20061739 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1169198
審判番号 不服2005-15563  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-12 
確定日 2007-12-04 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2002-700062「抗菌剤」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件特許及び本件特許発明

特許第2694361号(以下,「本件特許」という。)は,平成1年2月9日に出願され(特願平1-30311号),平成9年9月12日に特許権の設定登録がされたものであって,その特許発明は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

【請求項1】 5-メトキシ-2-(((4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル)スルフィニル)-1H-ベンズイミダゾールまたはその塩を含有することを特徴とする抗菌剤。(以下,これを「本件特許発明」という。)

2.本件特許権存続期間の延長登録出願

本件特許権存続期間の延長登録出願(以下,「本件出願」という。)は,平成14年7月5日に出願され,平成17年5月2日付けで拒絶査定がされ,平成17年8月12日に審判請求がされたものである。

本件出願は,特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったとして,4年6月29日の特許権存続期間の延長を求めるものであり,その政令で定める処分として,以下の内容を特定している(以下,「本件処分」という)。

(1)延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同条第7項の承認

(2)処分を特定する番号
承認番号 21300AMZ00054000

(3)処分を受けた日
平成14年4月11日

(4)処分の対象となった物
一般的名称:オメプラゾール
化 学 名:5-メトキシ-2-[[(4-メトキシ-3,5-ジメチル -2-ピリジニル)メチル]スルフィニル]-1H-ベンズ イミダゾール
化学構造式:略

(5)処分の対象となった物について特定された用途
胃潰瘍,十二指腸潰瘍,吻合部潰瘍,逆流性食道炎,Zollinger-Ellison症候群,胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
(添付資料cによれば,本件処分で,新たに追加された用途は,胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助である。)

添付資料
a.特許第2694361号公報写し
b.承認番号21200AMZ00641000(医薬品製造承認事項一部変更承認書)該当部分写し
c.承認番号21300AMZ00054000(医薬品製造承認事項一部変更承認書)該当部分写し
d.治験計画届書写し
e.閉鎖登記簿謄本写し及び履歴事項全部証明書写し
f.特許原簿写し
g.THE MERCK INDEX 第13版 1224?1225頁写し

3.原審の拒絶理由の概要

原審の拒絶の理由は,「この出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから,この出願は,特許法第67条の3第1項第1号に該当する。」というものであり,より具体的には,本件処分の対象となったオメプラゾールについて新たに追加された「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ(以下,「Hp」という。)の除菌の補助」という用途は,本件特許発明の「抗菌剤」という用途と相違するから,本件処分を受けた医薬品を製造することは本件特許発明の実施に該当せず,本件特許発明を実施するために本件処分を受けることが必要であったとは認められないというものである。


4.当審の判断

(4-1)特許法第68条の2は,「特許権の存続期間が延長された場合・・・の当該特許権の効力は,その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては,当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には,及ばない。」と規定しており,この規定に照らすと,延長登録が認められるためには,政令で定める当該処分の範囲(物と用途)と延長登録出願の対象である特許発明の範囲(物と用途)とが重複していることが必要である。

(4-2)これを本件についてみるに,本件出願の添付資料である,平成14年1月21日付け医薬品製造承認事項一部変更承認申請書(販売名オメプラール錠20)(添付資料c)及び「THE MERCK INDEX 第13版 1224?1225頁」(添付資料g)によれば,本件処分の対象となった物は「オメプラゾール」であって,本件特許発明の化合物である 5-メトキシ-2-(((4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル)スルフィニル)-1H-ベンズイミダゾールと一致するから,本件処分の対象となった物と本件特許発明の物とは重複している。

(4-3)一方,本件処分においてオメプラゾールに追加された用途は,上記添付資料によれば,「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHpの除菌の補助」であり,本件特許発明の用途である「抗菌(剤)」とは文言上一致していない。

(4-4)そこで,本件処分で追加された「・・・Hpの除菌の補助」という用途が,「抗菌(剤)」という本件特許発明の用途と,文言は相違しても実質的に重複するか否かについて,本件処分がなされるにつき考慮されたオメプラゾールの薬理効果(作用機序)に基づき,以下に検討する。(平成17年(行ケ)第10587号及び10588号判決 知的財産高等裁判所 平成19年3月27日判決参照)
平成16年12月14日付け意見書で請求人(出願人)も引用しているオメプラゾールの承認申請の審査結果に係る国立医薬品食品衛生研究所の「審査報告書」(衛研発第2129号)の第13頁「(ホ)薬理効果に関する資料」の項目の1?10行には,「H.pylori(審決注:Hpのこと)は酸性条件では多くが定常期にあるが胃内pHが5以上に維持されると増殖期に移行する。今回の申請は,細菌の細胞壁合成酵素活性中心への結合により細胞壁合成を阻害するため増殖期の細菌に高い抗菌作用を有するAMPC(審決注:アモキシシリンのこと)と,細菌の70Sリボソームの50Sサブユニットに結合しタンパク合成を阻害するため増殖期及び定常期の菌に対して抗菌作用を発揮するCAM(審決注:クラリスロマイシンのこと)に,胃壁細胞内のプロトンポンプ(H^(+)/K^(-)ATPsae)阻害による胃酸分泌抑制作用により胃内pHを高く保持するOPZ(審決注:オメプラゾールのこと)を併用することによりH.pylori の除菌を行うものである。すなわち,OPZの作用で胃内pHが上昇することによりH.pylori が増殖期に移行し,AMPCに対して感受性となり,また,胃内でのCAMの非解離型(活性分子型)の増加及び非解離型となったことでの胃粘液層への移行の増加によるCAM濃度上昇により(ヘ項参照)抗菌活性が増強されるものと考えられる。」と記載されている。
この記載によれば,本件処分の審査過程において,アモキシシリン,クラリスロマイシン,オメプラゾールの3剤併用療法におけるオメプラゾールの薬理作用(作用機序)は,胃壁細胞内のプロトンポンプ(H^(+)/K^(-)ATPsae)阻害による胃酸分泌抑制作用により胃内pHを高く保持するものとして認識されていたと認められる。

一方,上記審査報告書の第4?7頁の「審査結果」の[効能・効果]の項においては,オメプラゾールでは,3剤併用療法において新たに追加された効能・効果として「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHpの除菌の補助」と記載されているのに対し,アモキシシリン及びクラリスロマイシンでは,「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHp感染」と記載され異なる表記がされている。また,[用法・用量]の項においても,3剤併用療法において新たに追加された用法・用量は,オメプラゾールでは,「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHpの除菌の補助」との表題のもとに記載されているのに対し,アモキシシリン及びクラリスロマイシンでは,「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるHp感染(の場合)」との表題のもとに記載されている。
このことからも,本件処分の審査過程においては,オメプラゾールの効能・効果が,アモキシシリン及びクラリスロマイシンの効能・効果と相違するものとして認識されていたことは明らかである。

上記審査報告書の第14頁「In vivo 抗菌活性」の項には,MGS/Seaスナネズミを用いた感染モデルでの試験において,オメプラゾール,アモキシシリン,クラリスロマイシン各々単独では除菌効果が認められないが,オメプラゾールとアモキシシリン,オメプラゾールとクラリスロマイシンの2剤併用では明らかな除菌効果が認められたとの報告があり,また,BALB/cマウスを用いた感染モデルでの試験で,オメプラゾールの併用により除菌率は明らかに上昇している,但し,オメプラゾールはマウスの胃酸分泌をほぼ完全に抑制する用量を使用しているとの記載がある。しかし,これらの記載は,オメプラゾールそのものが生体内におけるHpに対する有効な除菌(抗菌)効果を持つことを示唆するものではない。

そうすると,本件処分で3剤併用療法において新たに追加されたオメプラゾールの「・・・Hpの除菌の補助」という用途は,胃酸分泌抑制作用により胃内pHを高く保持することにより,他の2剤の除菌を補助するものとして認識されていたものであり,オメプラゾールが持つとされる抗菌作用は,本件処分の審査過程では何等考慮されておらず,また,本件処分では「・・・Hpの除菌の補助」は,「抗菌」,「除菌」等とは区別して用いられていたことからすると,「・・・Hpの除菌の補助」が「抗菌」,「除菌」の一形態ということはできないものであり,当該用途が,本件特許の「抗菌剤」という用途と実質的に重複するということはできない。


5.むすび

したがって,本件処分は,本件出願に係る特許発明の実施に必要な処分であったとは認められないから,本件出願は特許法第67条の3第1項第1号の規定に該当し,本件特許権存続期間の延長登録を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-15 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-13 
出願番号 特願2002-700062(P2002-700062)
審決分類 P 1 8・ 71- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 穴吹 智子
福井 悟
発明の名称 抗菌剤  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  

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