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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1169626
審判番号 不服2004-25196  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2007-12-17 
事件の表示 平成 7年特許願第216666号「歯磨組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月10日出願公開、特開平 9- 40539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年8月2日に特許出願されたものであって、最初の拒絶理由通知に応答して平成16年5月27日付けで手続補正がなされ、その後最後の拒絶理由が通知され、それに応答してなされた平成16年8月19日付けの手続補正は平成16年10月21日付で補正の却下の決定がなされ、それとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成16年12月9日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(平成16年5月27日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】 ハイドロキシアパタイト又はリン酸8カルシウムと、過酸化カルバミドとを主成分として配合したことを特徴とした歯磨組成物。
【請求項2】 ハイドロキシアパタイト又はリン酸8カルシウムの含有量が0.1%以上90%以下である請求項1記載の歯磨組成物。
【請求項3】 過酸化カルバミドの含有量が0.05%以上10.0%以下である請求項1記載の歯磨組成物。」から、
補正後の
「【請求項1】 ハイドロキシアパタイトと、過酸化カルバミド及び添加剤とを配合した歯磨組成物であって、ハイドロキシアパタイトの含有量が1?90重量%、過酸化カルバミドの含有量が2?10.0重量%であることを特徴とした歯磨組成物。」
と補正された。

上記補正前後の発明特定事項を対比すると、上記補正は、請求項2,3を削除すると共に、請求項1に関し、発明を特定するために必要な事項である(i)「ハイドロキシアパタイト又はリン酸8カルシウム」に関し、「リン酸8カルシウム」を削除して「ハイドロキシアパタイト」に限定し、同じく(ii)ハイドロキシアパタイトと過酸化カルバミドに関し、「主成分として配合した」との特定を、含有量が「1?90重量%」と「2?10.0重量%」と限定するものであり、更に、(iii)「添加剤」との発明特定事項を追加するものと認められる。

(2)補正の適否
(2-1)補正目的の違反
本件補正は、特許法第121条第1項の拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にされたもので、平成18年改正前特許法第17条の2第1項第4号の補正に該当し、そのような補正は、同法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的にするものに限られている。

前記(i)と(ii)の補正に関しては、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項を更に限定したものと認められるが、(iii)の補正は、「添加剤」との発明特定事項を追加するものであり、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項のいずれの事項の限定でもない。
してみると、本件補正の(iii)の補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当せず、また、同条第4項の他の号に規定する請求項の削除(1号)、誤記の訂正(3号)、明りょうでない記載の釈明(4号)のいずれにも該当しないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

(2-2)独立特許要件違反
ところで、仮に本件補正が平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たす限定的減縮であると解したところで、本件補正後の前記請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることが必要である。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2-1)引用例
原査定の理由に引用された特開平5-194165号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開昭55-57514号公報(以下、「引用例2」という。)と特開昭56-73014号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ次のような技術事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した。

引用例1には、
(1-i)「【請求項1】 リン酸二カルシウム化合物と、金属イオンを含まない過酸化物化合物との組合せを含み、活性酸素レベルに関して安定であり、強化された、迅速な、歯の白化としみ除去とを示す、過酸化物含有研磨歯磨き剤組成物。
【請求項2】 金属イオンを含まない過酸化物が過酸化尿素である請求項1記載の組成物。
【請求項3】 ・・・(中略)・・・
【請求項4】 過酸化物化合物が組成物中に組成物の約1?約20重量%の濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項5】 ・・・(中略)・・・
【請求項6】 リン酸二カルシウム化合物が組成物中に組成物の約20?約60重量%の濃度で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項7】 保湿剤、界面活性剤及び増粘剤をも含む請求項1記載の組成物。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項7】参照)、及び、
(1-ii)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は一般にヒトの歯を白化する製剤に関し、さらに詳しくは、歯の表面へ塗布したときに口腔組織に害を与えることなく歯を白化及び研磨するように作用する、安定で、貯蔵可能な組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】歯は内部象牙質層と、歯の保護層である外部硬質エナメル層とから構成される。歯のエナメル層は自然には不透明な白色又はやや乳白色である。着色又は変色するのはこのエナメル層である。歯のエナメル層は多少多孔質表面を形成するヒドロキシアパタイト無機結晶から構成される。エナメル層のこの多孔質性が汚染剤及び変色性物質をエナメル層に浸透させ、歯を変色させる原因であると考えられる。
【0003】ヒトが毎日ベースで直面する又は接触する多くの物質がヒトの歯を「汚染」する、又は歯の「白色性」を減ずることがある。特に、食物、タバコ製品及びヒトが消費する茶、コーヒーのような流体はヒトの歯を汚染する傾向がある。これらの製品又は物質は歯のエナメル層の上に蓄積し、歯の上に薄膜フィルムを形成する傾向がある。次に、これらの汚染性及び変色性物質はエナメル層を浸透することができる。この問題は多年にわたって徐々に生ずるが、ヒトの歯のエナメル層に顕著な変色を与える。」(段落【0001】?【0003】参照)、
(1-iii)「【0019】ここで用いる「リン酸二カルシウム化合物」なる用語は、その意味にリン酸二カルシウム2水和物と無水リン酸二カルシウム又はピロリン酸カルシウムとの両方を含む。リン酸二カルシウム2水和物とピロリン酸カルシウムは練り歯磨きに清浄剤として長い間用いられている化合物である。これらのリン酸カルシウム化合物は再石灰化(remineralizing)特性を有し、これらのイオン成分は実際に歯のエナメル質に含まれる成分と同じであり、このことがこれらの化合物にこれらの化合物から製造される口腔用組成物に優れた清浄効果と艶出し効果とを与える性質を結合させる。
【0020】本発明の歯磨き剤組成物は白化剤としての金属イオンを含まない過酸化物化合物、研磨艶出し剤としてのリン酸二カルシウム化合物、保湿剤、界面活性剤、甘味剤及びフレーバーを用いて製造される。
【0021】本発明の歯磨き剤組成物はさらに、白化剤としての金属イオンを含まない過酸化物化合物、研磨艶出し剤としてのリン酸二カルシウム化合物、例えばナトリウムエチレンジアミン四酢酸及び酸性ピロリン酸ナトリウムのようなキレート化剤、例えばポリ(エチレンオキシド)樹脂及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー増粘剤のような増粘剤を成分として用いて製造される。」(段落【0019】?【0021】参照)、
(1-iv)「【0022】本発明の口腔用組成物の製造に用いられる、適当な金属イオンを含まない過酸化物化合物の例には、過酸化水素と、例えば過酸化尿素(ペルカルバミド)、過酸化グリセリル、過酸化ベンゾイル等のような有機過酸化物とがある。好ましい有機過酸化物は過酸化尿素である。
【0023】本発明の組成物の過酸化物成分は、組成物が例えば歯磨き中に水と接触する場合に歯を白化するために充分な酸素を放出させるために充分な量で含まれる。典型的には、過酸化物は組成物の少なくとも約1%が過酸化物であるような量で、本発明の組成物に用いることができる。過酸化物が組成物の約1?約20重量%を占めることが好ましい。過酸化物が組成物の約5?約20重量%を占めることがさらに好ましい。活性過酸化物含量(すなわち、用いる過酸化物中のH_(2)O_(2)当量)は好ましくは約0.5?約6重量%、より好ましくは約1?約3重量%である。
【0024】本発明の組成物中にその艶出し機能の他にリン酸二カルシウムが存在することは、他の研磨剤を含む組成物に比べて、組成物の過酸化物安定性を有意に高めることが判明している。例えば、40重量%のピロリン酸カルシウムをポリエチレングリコール キャリヤー中の10重量%過酸化尿素と組み合わせて用いる場合には、高温(例えば100゜F(37.8℃))において閉じた容器に入れて14日間組成物を貯蔵した後に95%の残留過酸化物レベルが検出されている。
【0025】本発明の歯磨き剤組成物の製造では、本発明の組成物中にリン酸二カルシウム化合物が、閉じた容器内での貯蔵中の組成物に含まれる過酸化物の分解を阻止し、組成物が例えば歯磨き中に水と接触するときに過酸化物から充分な酸素を放出させて歯を白化させるための有効量で、含まれる。典型的に、本発明の組成物中にリン酸二カルシウム化合物が20?約60重量%、好ましくは約35?約55重量%の量で含まれる。
【0026】水と組み合わせた、グリセリン、ソルビトール及びポリエチレングリコールが本発明の組成物のキャリア物質てして有用である。ポリエチレングリコールと水の組合せがキャリアとして好ましい。」(段落【0022】?【0026】参照)が記載されている。

引用例2には、
(2-i)「1.ハイドロキシアパタイト粉末を含み、微酸性ないし弱酸性であることを特徴とする歯磨。」(特許請求の範囲の請求項1参照)、及び、
(2-ii)「本発明によれば、ハイドロキシアパタイト粉末5?60重量%を含み、微酸性ないし弱酸性であることを特徴とする歯磨が提供される。
本発明に係る歯磨は歯牙表面の強化及び再石灰化の促進と歯に付着したプラーク(細菌塊)の除去に極めて有効であるということが見出されたのである。」(第1頁左下欄12?18行参照)、
(2-iii)「本発明者の研究過程における知見によれば、歯牙を削らないということが虫歯予防に対しては重要な要件ではなく、むしろプラーク等の効果的な除去のためには極微量ではあっても、歯牙を削ることが必要であるとされたのである。しかるに、本発明に係る歯磨においてはハイドロキシアパタイト粉末が適当量含有されていることから、歯牙表面に対して過度にならない、効果的な削磨作用を与えることができる。これは、ハイドロキシアパタイトは通常歯牙エナメルと同等の硬さを有するために歯磨きの際に歯牙エナメルに対して適度の削磨作用を与えることができるからであると考えられる。更に、驚くべきことに、ハイドロキシアパタイト粉末は歯牙エナメル表面の被覆乃至石灰化を促進して歯牙表面を強化する作用をも有するということが見出されたのである。本発明者の研究によれば、ハイドロキシアパタイト粉末による歯牙表面の摩耗試験の結果は歯牙表面を顕著に平坦にするけれども、重量については試験の前後においてほとんど変化が認められなかったのである。」(第1頁右下欄8行?第2頁左上欄8行参照)が記載されている。

引用例3には、
(3-i)「1.合成ハイドロキシアパタイト粉末を含み、中性ないし弱アルカリ性であることを特徴とする歯磨組成物。」(特許請求の範囲参照)、及び、
(3-ii)「本発明に係る歯磨組成物は歯牙表面の強化及び再石灰化の促進と歯に付着したプラーク(細菌塊)の除去に極めて有効であるということが見出されたのである。」(第1頁左下欄13?16行参照)、
(3-iii)「本発明に係る歯磨組成物においては、合成ハイドロキシアパタイト粉末が適当量含有されていることから、歯に付着した汚染物質はもちろんのこと、プラークまでも極めて効果的に除去することができる。これは、合成ハイドロキシアパタイトは通常歯牙エナメルと同等の硬さを有するために歯磨きの際に歯牙エナメルに対して適度の削磨作用を与えることができるからであると考えられる。また、合成ハイドロキシアパタイトはその表面積が大きいので、吸着能にすぐれているからであるとも考えられる。更に合成ハイドロキアパタイト粉末は歯牙エナメル表面の被覆乃至石灰化を促進して歯牙表面を強化する作用をも有するということが見出されたのである。
・・・(中略)・・・
尚、本発明の歯磨組成物は通常用いられる種々の添加剤を含んでいてもよく、また所望ならばクエン酸、乳酸、酢酸、ピロリン酸やグルタミン、プロリン、セリン、グリシンなどを含んでいてもよい。」(第1頁右下欄4行?第2頁左上欄6行参照)、
(3-iv)例1として、アパタイト粉末13.2重量部を含む練歯磨(成分合計100重量部)の例(第2頁左上欄12行?同頁右上欄4行参照)が記載されている。

(2-2-2)対比、判断
本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比する。
引用例1には、前記摘示の記載からみて、そして、保湿剤、界面活性剤及び増粘剤やキレート化剤、甘味剤、フレーバー、グリセリンなどが配合されていて(摘示(1-i)の【請求項7】、(1-iii)の段落【0020】?【0021】,(1-iv)の段落【0026】参照)、それらは添加剤といえることを勘案すると、
「リン酸二カルシウム化合物と、過酸化物化合物としての過酸化尿素との組合せを含み、添加剤を配合し、過酸化物化合物が組成物の約1?約20重量%の濃度で存在し、強化された、迅速な、歯の白化としみ除去とを示す歯磨組成物。」
の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

そして、
(a)引用例1発明の「リン酸二カルシウム化合物」は、本願補正発明の「ハイドロキシアパタイト」に対応し、いずれも「カルシウム化合物」(本願出願当初明細書に記載の表現)といえ、
(b)引用例1発明の「過酸化物化合物としての過酸化尿素」は、本願補正発明の「過酸化カルバミド」に他ならなず、
(c)引用例1発明の「過酸化物化合物が組成物の約1?約20重量%の濃度で存在し」は、本願補正発明の「過酸化カルバミドの含有量が2?10.0重量%であること」に対応し、「2?10.0重量%」の範囲で一致する。

してみると、両発明は、
「カルシウム化合物と、過酸化カルバミド及び添加剤とを配合した歯磨組成物であって、過酸化カルバミドの含有量が2?10.0重量%である歯磨組成物。」で一致するものの、次の相違点で相違する。
<相違点>
カルシウム化合物に関し、本願補正発明では、「ハイドロキシアパタイト」、「ハイドロキシアパタイトの含有量が1?90重量%、」と特定しているのに対し、引用例1発明では「リン酸二カルシウム化合物」が用いられている点。

そこで、この相違点について検討する。
ところで、ハイドロキシアパタイトは、歯牙エナメルを構成する成分であり(例えば、摘示(1-ii)参照)、また、上記引用例2,3の摘示からも明らかなように、歯磨組成物に用いられているもので、歯牙表面に適度の削磨作用を与えるとともに、歯牙エナメル表面の被覆乃至石灰化を促進するものである。
そうであるから、引用例1発明の再石灰化の目的(摘示(1-iii)の段落【0019】参照)でも用いられている「リン酸二カルシウム化合物」の代わりに、「ハイドロキシアパタイト」を用いてみる程度のことは、当業者が容易に想い到る程度のことと認められる。
そして、「ハイドロキシアパタイト」の使用量に関し、引用例1発明の「リン酸二カルシウム化合物」の使用量(約20?約60重量%;摘示(1-i)参照)や引用例2,3で使用されている量(摘示(2-ii)に5?60重量%、摘示(3-iv)に13.2重量%)からみて、「1?90重量%」の範囲内で使用することは適宜という他ない。

本願補正発明の作用効果について検討する。
本願明細書に記載された実施例2-1(ハイドロキシアパタイト5重量%、過酸化カルバミド5重量%を配合;処理後の白色度67.3;なお、処理前の白色度64.7)は、過酸化カルバミドを配合しない例2-2(処理後の白色度65.8)やハイドロキシアパタイトを配合しない例2-3(処理後の白色度68.1)に対比して、格別に白色度が向上しているとは認められない。また、ハイドロキシアパタイトを配合しない例2-3の場合に処理後のコーティング層の評価が0であるのは、引用例2,3の記載(ハイドロキシアパタイトによって再石灰化の皮膜が形成される)からみて当然に予想されることというべきである。
そうであるから、実施例1,3?5の場合において、白色度の改善に優れていると解される可能性があるとしても、実施例2-1を包含する本願補正発明は格別予想外の作用効果を奏するものであるとすることができない。
なお、本願明細書に記載された表1のデータは、色素沈着が認められる成人永久歯の浸漬処理を行い、14日後に表面を偏光顕微鏡で観察したことが記載(本願明細書段落【0017】参照)されているものの、白色度がどのように測定され、計算されたものか不明で、またコーティング層の数値が何を表すものか不明であって、評価できる状況にないが、一応数値そのものが妥当との前提で前記判断を行った。

この点に関し、審判請求人は、意見書並びに審判請求理由において反論するが、いずれも次の理由で採用できるものではない。
(イ)平成16年5月27日付け意見書において、リン酸2水素カルシウムと過酸化カルバミドを配合した練歯磨剤の白色度の測定結果の新たなデータを提示し、処理前の白色度64.6に対し、処理後に66.0であること、過酸化カルバミドを含まない場合に65.1、リン酸二水素カルシウムを含まない場合に68.3であることが示されていて、本願明細書の実施例10のリン酸8カルシウムによる場合に比べ劣ることを主張している。しかし、上記の如く本願明細書の実施例2について検討したように、本願補正発明に包含される例であっても、格別の作用効果を奏さない場合が示されているのであるから、また、実施例2-1乃至2-3は、前記新たに提示されたデータと白色度の改善において本質的な差異はないから、かかるデータでは上記判断を左右し得ないものである。
(ロ)平成16年8月19日付け意見書では、本願明細書の実施例2に関しては顕著な効果を奏するものとは認められない旨が拒絶理由(平成16年6月30日付け)として指摘されていたにもかかわらず、何らの釈明もなされていない。
(ハ)審判請求理由(平成17年1月12日付け方式補正書参照)においては、実施例2-1に関し、再石灰化によるコーティング効果について言及しているけれども、上記判断の如くハイドロキシアパタイトの石灰化被覆効果は既に知られているのであるから、格別予想外のものと解するべき理由はない。

よって、本願補正発明は、引用例1発明と引用例2,3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号の規定を満たしていないため同条第4項の規定に違反し、乃至は、同法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年12月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3にかかる発明は、平成16年5月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、前記「2.(1)」の補正前の請求項1に記載されたとおりである。

(1)引用例
拒絶査定の理由に引用される引用例、およびその記載事項は、前記「2.(2)(2-2)(2-2-1)」に記載したとおりである。

(2)対比、判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、(i)「ハイドロキシアパタイト」に関し、選択肢として「リン酸8カルシウム」を追加して、「ハイドロキシアパタイト又はリン酸8カルシウム」としたものであり、(ii)ハイドロキシアパタイトと過酸化カルバミドに関し、含有量が「1?90重量%」と「2?10.0重量%」を単に「主成分として配合した」と拡張するものであり、(iii)「添加剤」との発明特定事項を削除するものと認められる。
そうすると、「ハイドロキシアパタイト」を選択した場合の本願発明を更に限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(2-2-2)」に記載したとおり、引用例1発明と引用例2,3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明と引用例2,3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-18 
結審通知日 2007-10-22 
審決日 2007-11-05 
出願番号 特願平7-216666
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 574- Z (A61K)
P 1 8・ 572- Z (A61K)
P 1 8・ 573- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 円香星野 紹英胡田 尚則  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 歯磨組成物  
代理人 小澤 誠次  
代理人 廣田 雅紀  

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