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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01F |
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管理番号 | 1169895 |
審判番号 | 不服2006-24173 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-26 |
確定日 | 2008-01-04 |
事件の表示 | 特願2004- 16433「液体計量用メジャーカップ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-157136〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年10月8日に出願(優先権主張平成11年2月15日)した特願平11-323077号の一部を平成16年1月26日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年2月8日付け手続補正書及び平成19年4月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】開口部を有し、平坦面を有する傾斜した底面部を一体に形成した容器本体と、該傾斜した底面部に設けた上記開口部より読み取る目盛とを具備することを特徴とする液体計量用メジャーカップ。」 2 引用例 (1)これに対して、当審において、平成19年2月20日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭47-83900号(実開昭49-40679号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 コツプの底面をコツプの一側口縁適所に向けて傾斜底としてなることを特徴とするコツプ。」(明細書1頁3?5行) イ 「本案の実施例を図について説明すると、1はコツプ、2は一側口縁の呑み口で、コツプ1の底は底部4よりこの呑み口2まで適宜の傾斜をして形成され、3がその傾斜底である。5は傾斜底3の裏面で、・・・6は傾斜底3が形成されたためにできた底部空間を示す。なお図中呑み口2は特に呑み口としての形状に形成したが、然らざるものでもよい。」(明細書1頁11行?2頁4行) ウ 「本案では呑み口2となつているコツプの口縁に向けて底面が傾斜している傾斜底3となつているため、コツプ底部の飲み物もコツプの底をそれほど持ち上げなくとも残らず飲み干すことができる」(明細書2頁9?13行) エ 「4.図面の簡単な説明 図は実施例で、第1図はその断面図、第2図は側側面図(当審注:「側面図」の誤記)を示す。 1…コツプ、2…呑み口、3…傾斜底、4…底部。」(明細書6頁2?6行) オ 図面の第1図(断面図)には、コツプ1に対して傾斜底3が一体に描かれており、この断面図において傾斜底3は、底部4から呑み口2となっているコツプ1の口縁に向けて直線状に描かれている。 カ 上記ア?オの記載事項からみて、呑み口2のある方の口縁が開口部を形成していることが明らかであるから、コツプ1から傾斜底3を除いた部分をコツプ本体と呼ぶことにすると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 【引用発明】 「開口部を有し、傾斜底3を一体に形成したコツプ本体を具備する飲み物用コツプ1。」 (2)同じく引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である実公昭48-5699号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 ア 「本考案は扱い易く而かも用途の広い調理用ボールに係るものにして、断面が略半円状に彎曲している容体1をプラスチツク成型する時にこの容体1の内面も同じく断面半円状に彎曲形成し、この彎曲内面に底部中心から開口部に向けて計量目盛2を刻設し、容体1に把手3を一体に突設し、容体1の開口縁の一部に注水部4を形成し、・・・容体1の底部裏側に脚6を設けて成るものである。」(1欄17行?26行) イ 「3.計量目盛2が附してあるからこの容体1を計量カツプにも使用出来る。この際容体1の内面が彎曲し計量目盛2も中心まで附しているからどんな少量でも計量する事が出来る。」(2欄9?13行) (3)同じく引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭59-59453号(実開昭60-171243号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 ア 「本考案の汁杓子は、容器部1とこれに取り付けた柄2とから構成され、容器部1の内面3には醤油、・・・、味醂、・・・等を計量するための目盛4が付けられている。上記目盛4は、例えば最上の位置に200(cc)の目盛線4aを、中位の位置に100(cc)の目盛線4cを、最上の位置と中位の位置の間の位置に150(cc)の目盛線4bを、中位の位置と底との間の位置に50(cc)の目盛線4dをそれぞれ蝕刻してある。」(明細書2頁14行?3頁2行) イ 「この目盛4の単位、目盛線4a,4b・・・の付ける位置及びその間隔は、容器部1の大きさ及び使用・用途等に応じて適当に選ぶことが望ましく、また目盛4の各種4a,4b・・・は図のように環状の線であっても、あるいは部分的な線であってもよく、更には、主要部分を環状の線にし、補助的な部分を短い部分的な線にしてもよい。」(明細書3頁3?9行) ウ 「この様な汁杓子とすれば、調理する際に、汁や具を掻き混ぜながら、その汁杓子を使って醤油、・・・味醂、酢等を計量して同時に調理が可能となる」(明細書3頁10?13行) (4)同じく引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である実公昭51-29252号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 ア 「図に示したごとく、内面が半球曲面状を有する椀部に柄を附したるスプーンに於て、スプーンの椀部内表面上に、椀外縁部とスプーンの柄軸方向に平行なる線との接点であるN点とS点附近に各所定量の液面線を一致せしめ、各所定量の中心底点の椀部の中心部に移動せしめるごとくしてできた液水平面と椀部内表面上との接線を各所定量の量目線とし、該量目線を前記N点側とS点側に配分記載した計量目盛り付スプーン。」(第4欄15?23行) 3 対比 本願発明と上記引用発明とを対比する。 引用発明の「傾斜底3」、「一体に形成した」、「コツプ本体」が、それぞれ、本願発明の「傾斜した底面部」、「一体に形成した」、「容器本体」に相当する。 引用発明の「飲み物用コツプ1」と、本願発明の「液体計量用メジャーカップ」とは、共に「液体用カップ」である点で共通する。 したがって、両者は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 「開口部を有し、傾斜した底面部を一体に形成した容器本体を具備する液体用カップ。」 【相違点】 本願発明では、「平坦面を有する」傾斜した底面部であり、かつ、「傾斜した底面部に設けた開口部より読み取る目盛り」を具備する液体「計量」用「メジャー」カップであるのに対し、引用発明ではそのようなものでない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 例えば、上記引用例2(「計量目盛2」参照)、引用例3(「目盛4の目盛線4a?4d」参照)、引用例4(「量目線」参照)に記載されているごとく、いわゆる液体用カップの傾斜を有する底面を含む内面に、開口部から読み取れる目盛りを具備させて液体計量用メジャーカップに改造する点は周知である。そして、引用発明の飲み物用コツプ1もいわゆる液体用カップに属するものであるから、引用発明の飲み物用コツプ1の傾斜底3に上記周知技術を適用して、液体計量用メジャーカップに改造することに困難性はない。 その際に、引用発明の傾斜底3は、引用例1の図面の第1図によれば、傾斜底3が断面図において直線部分を有している(上記摘記事項ウ参照)から、引用発明の傾斜底3を平坦面を有する形状に変更する程度のことは当業者が適宜為し得る設計的事項にすぎない。 したがって、引用発明の傾斜底3に、上記周知技術を適用して本願発明のごとく構成することは、当業者であれば容易になし得たものである。 そして、本願発明の奏する効果についても、上記引用例1?4に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。 なお、請求人は、当審で通知した拒絶理由に応答する平成19年4月26日付け意見書において、「(E)本願発明の傾斜した底面部は、平坦面を有しており、この平坦面と液面との交線は直線であるのに対し、刊行物2?4(当審注:「引用例2?4」に同じ)に記載の発明においては、湾曲面と液面との交線は円形または円弧状のものであります。日常、使用されている計量用の目盛は、視認し易い直線で描かれていおり、円弧、円形などの曲線で描かれることはありません。刊行物2?4に記載の目盛は、度量衡における「計量用目盛」ではなく、「目安」となるものに過ぎません。・・・刊行物2?4に記載の調理用ボール、汁杓子、スプーンは、台所用品であって、液体用の計量器には当たりません。」と主張している。 しかしながら、『本願発明の傾斜した底面部は、平坦面を有して』いる点に関しては、上記説示したとおり、引用例1の図面の第1図によれば、傾斜底3が断面図において直線部分を有している(上記摘記事項ウ参照)から、引用発明の傾斜底3を平坦面を有する形状に変更する程度のことは当業者が適宜為し得る設計的事項にすぎないというべきである。そして、平坦面であれば、平坦面と液面との交線が直線状となることは幾何学上自明のことであり、この場合、目盛りは直線状のものを採用すべきことも技術常識(例えば、実願昭62-106632号(実開昭64-15922号)のマイクロフィルム(第1図、第3図、第4図に示された、平坦面からなる容器体の底部3に記された直線状の量目線4参照))である。したがって、当該技術常識を知悉する当業者であれば、上記引用例2?4記載の周知の彎曲面に附された曲線状目盛りを、彎曲面以外の平坦面に適用することに阻害要因はなく、適用に際し、直線状目盛りに変更して適用することも当業者が容易に想到し得ることというべきである。また、『調理用ボール、汁杓子、スプーンは、台所用品であって、液体用の計量器には当たりません』という点については、調理用ボール、汁杓子、スプーンであっても、液体計量用の目盛りを具備しているのであるから、液体用の計量器としての機能を有することが明らかであり、計量器に当たるというべきである。したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-16 |
結審通知日 | 2007-05-22 |
審決日 | 2007-06-04 |
出願番号 | 特願2004-16433(P2004-16433) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森口 正治 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
下中 義之 山川 雅也 |
発明の名称 | 液体計量用メジャーカップ |
代理人 | 役 学 |
代理人 | 役 昌明 |