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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1170620 |
審判番号 | 不服2007-8695 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-27 |
確定日 | 2008-01-07 |
事件の表示 | 特願2005-145812「ビデオカメラとモニタ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-278219〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一 経緯 1.手続 本願は,先の出願に基づく優先権主張(優先日:平成5年3月31日,特願平5-74269号)を伴う平成6年3月3日の出願(特願平6-33808号)の一部を新たな特許出願とした平成14年10月1日の出願(特願2002-288485号)の一部を新たな特許出願とした平成16年7月6日の出願(特願2004-199786号)の一部を,さらに新たな特許出願とした平成17年5月18日の出願である。 平成17年11月28日付けで拒絶の理由が通知され,これに対し,平成18年1月30日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが,平成19年2月22日付けで拒絶査定がなされた。 平成19年3月27日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成19年4月26日付けで手続補正(明細書,特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)がなされた。 2.査定 原査定の理由は,概略,下記のとおりである。 記 出願の請求項1及び請求項2に係る発明は,いずれも,その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 記 引用例1:特開平1-305782号公報 引用例2:特開平3-9320号公報 引用例3:特開平5-27731号公報 引用例4:特開平4-20077号公報 引用例5:特開平2-7776号公報 引用例6:特開平5-14977号公報 第二 補正の却下の決定 平成19年4月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という)について,以下のとおり決定する。 [結論] 平成19年4月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は,下記の補正事項を含むものである。 記(補正事項) 請求項1及び請求項2について, 「【請求項1】 映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力する第1の端子とを含む第1のマルチコネクタを有するカメラ本体と, 前記第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,前記カメラ本体から映像信号及び識別信号を入力するための映像入力端子及び第2の端子を含む第2のマルチコネクタと,該第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段と,前記第2のマルチコネクタの第2の端子から入力する識別信号に基づいてカメラ電源のON/OFFに対応してモニタ電源のON/OFFを制御する電源制御手段とを有するモニタと,からなり, 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を示す信号を出力するコントロール信号用入出力端子であり, 前記モニタは,前記カメラ本体を操作するための操作スイッチと,該操作スイッチの操作に対応したコントロール信号を前記コントロール信号用入出力端子に出力するコントロール信号出力手段と,前記コントロール信号用入出力端子から入力するカメラ動作状態を示す信号に基づいてカメラ動作状態を表示するカメラ動作状態表示手段と,を有することを特徴とするビデオカメラとモニタ。 【請求項2】 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,カメラ電源のON/OFFを示す電源識別信号を出力する電源識別出力端子である請求項1のビデオカメラとモニタ。」(補正前)とあるのを, 「【請求項1】 映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力する第1の端子とを含む第1のマルチコネクタを有するカメラ本体と, 前記第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,前記カメラ本体から映像信号及び識別信号を入力するための映像入力端子及び第2の端子を含む第2のマルチコネクタと,該第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段と,前記第2のマルチコネクタの第2の端子から入力する識別信号に基づいてカメラ電源のON/OFFに対応してモニタ電源のON/OFFを制御する電源制御手段とを有するモニタと,からなり, 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を示す信号を出力するコントロール信号用入出力端子であり, 前記モニタは,前記カメラ本体を操作するための操作スイッチと,該操作スイッチの操作に対応したコントロール信号を前記コントロール信号用入出力端子に出力するコントロール信号出力手段と,前記コントロール信号用入出力端子から入力するカメラ動作状態を示す信号に基づいてカメラ動作状態を,前記表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させるカメラ動作状態表示手段と,を有することを特徴とするビデオカメラとモニタ。 【請求項2】 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,カメラ電源のON/OFFを示す電源識別信号を出力する電源識別出力端子である請求項1のビデオカメラとモニタ。」(補正後)と補正する。 2.本件補正の適合性 (1)補正の範囲(平成6年改正前特許法第17条の2第2項) 本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 (2)補正の目的(平成6年改正前特許法第17条の2第3項第1号-第4号) 本件補正は,旧請求項1における「カメラ動作状態を表示するカメラ動作情報表示手段」という発明特定事項を,「カメラ動作状態を,前記表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させるカメラ動作状態表示手段」と限定するものであり,補正の前後において産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 本件補正は,平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件(特許法第17条の2第5項) 本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで,独立特許要件について検討する。 (a)補正後の本願発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という)は,以下のとおりである(再掲)。 記(補正後発明) 「映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力する第1の端子とを含む第1のマルチコネクタを有するカメラ本体と, 前記第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,前記カメラ本体から映像信号及び識別信号を入力するための映像入力端子及び第2の端子を含む第2のマルチコネクタと,該第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段と,前記第2のマルチコネクタの第2の端子から入力する識別信号に基づいてカメラ電源のON/OFFに対応してモニタ電源のON/OFFを制御する電源制御手段とを有するモニタと,からなり, 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を示す信号を出力するコントロール信号用入出力端子であり, 前記モニタは,前記カメラ本体を操作するための操作スイッチと,該操作スイッチの操作に対応したコントロール信号を前記コントロール信号用入出力端子に出力するコントロール信号出力手段と,前記コントロール信号用入出力端子から入力するカメラ動作状態を示す信号に基づいてカメラ動作状態を,前記表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させるカメラ動作状態表示手段と,を有することを特徴とするビデオカメラとモニタ。」 (b)引用刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平4-20077号公報(以下「刊行物1」という)には,図面と共に以下の事項が記載されている。 (ア)「また,再生時にモニタを接続する必要がある場合,映像信号をワイヤレスで送信すると機器が大掛かりとなるため,特に携帯時にはワイヤードを用いることになる。この時にリモコンがワイヤード方式の場合には,ケーブル本数が増えて配線が煩雑になる。また,携帯時に用いるモニタは小型のものであり,自然手元で使用するのでリモコンの操作部と一体化していると便利である。 本発明は上記の事情に鑑み,ワイヤレスとワイヤードを必要に応じて切換えることが可能で,また,モニタをリモートコントローラに内蔵させ携帯時にケーブルの本数も少なく簡単にモニタの接続が行えるビデオカメラを提供することを目的とする。」(2ページ左上欄14行-右上欄7行) (イ)「本発明の第1実施例を第1図?第6図に基づいて説明する。 本実施例のカメラの外観を示す第2図及び第3図において,カメラ本体1の前面側には,中央部に撮影レンズ2が設けられ,右端部にグリップ3が設けられている。 …(中略)… 11は,第4図及び第5図に示す後述するワイヤードリモートコントローラ20を接続するためのリモコン接続端子である。 …(中略)… 前記リモコン接続端子11には,第1図に示すように,リモコン信号アース端子部A1,システムを駆動するCPU16に接続するリモコン信号入力端子部A2,映像信号出力端子部A3,映像信号アース端子部A4,更に,リモコン非接続時は互いに接続状態にあって電源電圧をリモコン受光IC17に供給するための電源出力端子部A5,とリモコンIC電源入力端子部A6が設けられている。」(2ページ右下欄6行-3ページ左上欄17行) (ウ)「次にワイヤードリモートコントローラ20を第4図及び第5図に示し説明する。 図において,コントローラ本体21には,画像再生用の液晶モニタ22が内蔵されている。操作部は,早送りや巻戻し用のシャトルダイヤル23.コマ送り用のジョグダイヤル24及び多数のラバースイッチ25からなり,ランダムアクセス再生,プログラム再生等の様々な再生や,撮影モードの設定,シャツタレリーズ操作等が遠隔操作できるようになっている。尚,26は電源電池,27はDC/DCコンバータ,28は回路基板を示す。 そして,コントローラ本体21から延びる同軸ケーブルからなる信号伝送ケーブル29の先端には第6図に示すようなプラグ30が設けられて,カメラ本体1後面の接続端子11に挿入することによりリモートコントローラ20とカメラ本体1とが接続される。前記プラグ30には,前述のカメラ本体1後面の接続端子11のそれぞれ対応する端子部と接続する端子部,即ちリモコン信号アース端子部A1と接続するリモコン信号アース端子部B1,リモコン信号入力端子部A2と接続するリモコン信号出力端子部B2,映像信号出力端子部A3と接続する映像信号入力端子部B3及び映像信号アース端子部A4と接続する映像信号アース端子部B4が設けられている。」(3ページ右上欄3行-左下欄7行) (エ)「かかる構成において,カメラ本体1の接続端子11にワイヤードリモートコントローラ20のプラグ30を挿入した場合の電気接続状態を第1図を参照しながら説明する。 接続端子11にプラグ30が接続されると,前述した互いに対応する端子部が電気的に接続する。即ち,カメラ本体1側のリモコン信号アース端子部A1とプラグ30側のリモコン信号アース端子部B1が接続し,カメラ本体1側のリモコン信号入力端子部A2とプラグ30例のリモコン信号出力端子部B2が接続し,カメラ本体1側の映像信号出力端子部A3とプラグ30例の映像信号入力端子部B3が接続し,カメラ本体1例の映像信号アース端子部A4とプラグ側30の映像信号アース端子部B4が接続する。 …(中略)… プラグ30の接続によってワイヤードリモートコントローラ20が接続されると,リモートコントローラ20から出力されるリモコン信号は,リモコン信号出力端子部B2及びリモコン信号入力端子部A2を介してCPU16に入力してワイヤードリモコン操作が可能となる。また,映像信号も同様に映像信号出力端子部A3及び映像信号入力端子部B3を介してリモートコントローラ20側に送信されリモートコントローラ20の液晶モニタ22で再生することができる。」(3ページ左下欄8行-4ページ左上欄5行) (c)対比(対応関係) (c1)ビデオカメラ(カメラ本体)とモニタ 記載(ア)によれば,刊行物1に記載の発明も,補正後発明と同様の「モニタ」と,それに接続できる「ビデオカメラ」に関するものである。 また,この「ビデオカメラ」は,補正後発明における「カメラ本体」に対応するものでもある。 (c2)第1のマルチコネクタ (c2-1)第1の映像出力端子 記載(イ),図1によれば,刊行物1のビデオカメラのリモコン接続端子11には,映像信号出力端子部A3,及び,映像信号アース端子部A4が設けられている。これらを合わせたものは,補正後発明における「映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子」に相当している。 (c2-2)第1の端子(コントロール信号用入出力端子) 記載(イ),図1によれば,刊行物1のビデオカメラのリモコン接続端子11には,リモコン信号アース端子部A1,及び,システムを駆動するCPU16に接続するリモコン信号入力端子部A2が設けられている。これらを合わせたものは,補正後発明の「第1の端子」に対応するものである。 また,上記刊行物1の「リモコン信号」は,補正後発明の「コントロール信号」に相当するものであるから,刊行物1に記載の発明は「コントロール信号を入力するコントロール信号用入力端子」を備えるものといえる。 (c2-3)第1のマルチコネクタ 上述したように,刊行物1に記載の「リモコン接続端子11」には「第1の映像出力端子」と「コントロール信号用入力端子」という複数の端子が設けられているのであるから,この刊行物1に記載の「リモコン接続端子11」を「第1のマルチコネクタ」と呼称することに何ら支障はない。 以上のことから,刊行物1に記載の「カメラ本体(ビデオカメラ)」は,「映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,第1の端子とを含む第1のマルチコネクタ」を有するといえる。 もっとも,補正後発明の「第1の端子」は,「カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力」する端子であるとともに,「コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を出力するコントロール信号用入出力端子」であるのに対し,刊行物1には「識別信号」についての記載はなく,「第1の端子」は,「コントロール信号を入力するコントロール信号用入力端子」とするのみである。相違がみられる。 (c3)第2のマルチコネクタ (c3-1)映像入力端子 記載(ウ),図6によれば,刊行物1のワイヤードリモートコントローラ20(補正後発明の「モニタ」に対応)の「プラグ30」は,カメラ本体の「リモコン接続端子11」に接続される端子であって,映像信号入力端子部B3,及び,映像信号アース端子部B4を備えている。これら「映像信号入力端子部B3,及び,映像信号アース端子部B4」を合わせたものは,補正後発明における「カメラ本体から映像信号を入力するための映像入力端子」に相当している。 (c3-2)第2の端子 記載(ウ),図6によれば,刊行物1の「プラグ30」は,カメラ本体の「リモコン接続端子11」に接続される端子であって,リモコン信号アース端子部B1,及び,リモコン信号出力端子部B2を備えている。これら「リモコン信号アース端子部B1,及び,リモコン信号出力端子部B2」を合わせたものは,補正後発明の「第2の端子」に対応する。 もっとも,補正後発明の「第2の端子」は,「識別信号」を入力する端子であるのに対し,刊行物1には,「識別信号」についての記載はない。相違がみられる。 (c3-3)第2のマルチコネクタ 上述したように,刊行物1の「プラグ30」は,カメラ本体の「リモコン接続端子11」(補正後発明の「第1のマルチコネクタ」に対応)に接続される端子であって,「映像入力端子」と「第2の端子」という複数の端子が設けられているのであるから,この刊行物1に記載の「プラグ30」を「第1のマルチコネクタと接続される第2マルチコネクタ」と呼称することに何ら支障はない。 以上のことから,刊行物1に記載の「モニタ」は,「第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,カメラ本体から映像信号を入力するための映像入力端子及び第2の端子を含む第2のマルチコネクタ」を有するものといえる。 (c4)表示手段 記載(エ)によれば,映像信号は,映像信号出力端子部A3及び映像入力信号入力部B3を介してリモートコントローラ20側に送信され,リモートコントローラ20が内蔵する液晶モニタ22で再生される。 刊行物1の「リモートコントローラ20」(補正後発明の「モニタ」)には,補正後発明における「第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段」の存在がみられる。 (c5)操作スイッチ 記載(ウ)によれば,刊行物1にの「リモートコントローラ20」は,遠隔操作を可能とする「操作部」を備えており,この「操作部」は,補正後発明の「カメラ本体を操作するための操作スイッチ」に相当している。 (c6)コントロール信号出力手段 記載(エ)によれば,刊行物1の「リモートコントローラ20」からは「リモートコントロール信号」が出力され,リモコン信号入力端子部A2を介してCPU16に入力し,カメラ本体のワイヤードリモコン操作を可能としている。 よって,「リモートコントローラ20」(補正後発明の「モニタ」)には,リモートコントロール信号,即ち,補正後発明の「コントロール信号」を出力する何らかの手段を備えるものといえ,「操作スイッチの操作に対応したコントロール信号をコントロール信号用入力端子に出力するコントロール信号出力手段」を備えるものといえる。 (d)一致点・相違点 補正後発明と刊行物1に記載された発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 記(一致点) 「映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,第1の端子とを含む第1のマルチコネクタを有するカメラ本体と, 前記第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,前記カメラ本体から映像信号を入力するための映像入力端子及び第2の端子を含む第2のマルチコネクタと,該第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段とを有するモニタと,からなり, 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,コントロール信号を入力するコントロール信号用入力端子であり, 前記モニタは,前記カメラ本体を操作するための操作スイッチと,該操作スイッチの操作に対応したコントロール信号を前記コントロール信号用入力端子に出力するコントロール信号出力手段と,を有することを特徴とするビデオカメラとモニタ。」 記(相違点) [相違点1] 補正後発明の「第1の端子」は,「カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力」し,「第2の端子」は,「識別信号」を入力する端子であって,「第2のマルチコネクタの第2の端子から入力する識別信号に基づいてカメラ電源のON/OFFに対応してモニタ電源のON/OFFを制御する電源制御手段」を有しているのに対し,刊行物1には,「識別信号」及び「電源制御手段」についての記載はない点。 [相違点2] 補正後発明の「第1の端子」は,「コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を出力するコントロール信号用入出力端子」であるのに対し,刊行物1の「第1の端子」は,「コントロール信号を入力するコントロール信号用入力端子」とするのみであって「カメラ動作状態を出力する」出力端子とはなっておらず, 補正後発明が「コントロール信号用入出力端子から入力するカメラ動作状態を示す信号に基づいてカメラ動作状態を,表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させるカメラ動作状態表示手段」を有するのに対し,刊行物1には,その記載はない点。 (e)判断 [相違点1] (e1-1)刊行物2(特開平5-27731号公報)の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2には,以下の記載がみられる。 「この発明は,パーソナルコンピュータとモニタ装置との間を所定規格のケーブルで中継するとともに,所定映像信号を発生し,この発生した映像信号とそのパーソナルコンピュータからの映像信号とを切り替えてそのモニタ装置に出力し,かつ当該装置の電源オン/オフにより電源モードのモニタ装置の電源を自動的にオン/オフとする中継装置であって,上記パーソナルコンピュータからの電源オン/オフ制御信号により上記モニタ装置の電源をオン/オフする制御手段を備え,上記パーソナルコンピュータによる映像をそのモニタ装置に表示する際,そのパーソナルコンピュータの電源により上記モニタ装置の電源を自動的にオンするようにしたことを要旨とする。」(0010段落) 「パーソナルコンピュータ2の電源がオンにされると,そのパーソナルコンピュータ2からはオン制御信号がD-SUB15PRGBケーブル4の予備ラインを介して出力される。なお,モニタ装置3の電源コード8は中継装置10の連動OUT LET端子に接続し,プラグ6,7はACコンセントにそれぞれ差し込まれている。 すると,中継装置10においてはそのオン制御信号により内部リレーが作動し,つまり電源オンモードのモニタ装置3の電源をオンするとする制御が行われることから,そのモニタ装置は表示可能状態になる。なお,当該中継装置10内の映像信号発生部10a等のチューナの電源はオンにされない。 このとき,パーソナルコンピュータ2から映像信号が出力されていると,この映像信号が映像切替部10cで切り替えられ,この切り替えられた映像信号がD-SUB15PRGBケーブル5を介してモニタ装置3に出力される。この場合,中継装置10の電源のオン操作なしに,モニタ装置3にはその入力映像信号による映像が表示される。」(0021-0023段落) 「なお,従来同様に,中継装置10の電源がオンにされた場合,映像信号発生部10b等のチューナの電源がオンにされ,内部リレーが作動し,つまり電源オンモードのモニタ装置3の電源がオンにされる。 このように,中継装置10の電源,つまりチューナの電源がオンになっていなくとも,パーソナルコンピュータ2の電源がオンにされると,モニタ装置3の電源が自動的にオンにされることから,電源オン操作が楽になり,つまり操作性の向上を図ることができる。 また,パーソナルコンピュータ2による映像をモニタ装置3に表示する際,中継装置10の映像信号発生部10b等のチューナの電源をオンしないことから,当該装置の電力消費を少なくすることができるという効果もある。」(0025,0026段落) 以上によれば,刊行物2には,パーソナルコンピュータ2からの電源オン/オフ制御信号により,パーソナルコンピュータ2からの映像信号を表示するモニタ装置3の電源をオン/オフする中継装置10が記載されている。(特に0010段落) (e1-2)周知例1 特開平2-238779号公報には,以下の記載がみられる。 「この発明は,上記した従来の欠点に鑑み,普段使用しないときには無駄に電力が消費されないようにしたテレビカメラ用レンズの給電装置に関するものである。 [解決しようとする課題] 即ち,この発明は,レンズの絞り等を駆動するための小駆動回路に給電する第1電源をカメラ本体側に有すると共に,前記レンズにズーミング及びフォーカシング等のサーボ回路に給電する第2電源を前記レンズ側に有するテレビカメラ用レンズの給電装置において,前記小駆動回路が第1電源と導通・給電されると,これを検知して第2電源とサーボ回路との間を通電する導通手段を設けたものである。」(2ページ右上欄12行-左下欄5行) 「次に,この実施例の動作について説明する。 まず,スイッチ2をオンすると,第1電源3からそのスイッチ2を介して小駆動回路9に所定の電力が供給される。このため,この小駆動回路9が動作し,例えば絞り用の操作つまみを操作すると,絞り駆動機構が作動して,絞りを自由に調節できる。 また,このとき,第1電源3側から入力する所定の信号(例えば所定電圧)により,制御部5が作動してリレースイッチ7へ制御信号が出力され,そのリレースイッチ7がオンする。このため,第2電源6とサーボ回路10とが導通状態になり,所定の電力が第2電源6からサーボ回路10へ供給されてこのサーボ回路10が動作する。」(3ページ右上欄13行-左下欄6行) 以上によれば,特開平2-238779号公報には,テレビカメラ本体の小駆動回路が第1電源と導通・給電されると,これを検知してテレビカメラ用レンズの第2電源とサーボ回路との間が導通されることで,消費電力の無駄を省く旨の記載されている。 (e1-3)周知例2 特開昭57-157229号公報には,以下の記載がみられる。 「本発明は,電子閃光装置に係り特にカメラに装着された電子閃光装置の給電装置に関する。 近年,電子閃光装置を用いた閃光撮影が広く行われている。ところが,電子閃光撮影装置をカメラに装着した後電子閃光装置の電源をオンすることを忘れてしまうと,シャッタチャンスを逃したり,閃光撮影すべき所を非閃光撮影を行ってしまい不適正な露出となるといった失敗があった。また閃光撮影の終了後,電子閃光装置の電源をオフにすることを忘れてしまい,無駄に電池を消耗させてしまうことも往々起こっていた。 本発明の目的は,カメラが給電しているとか否かを検出し,カメラが給電しているときに電子閃光装置の給電を行う電子閃光装置を提供することである。 そのため本発明による電子閃光装置は,カメラが給電しているか否かを検出する手段と, 前記検出手段がカメラが給電していることを検出したときに閃光装置への給電を行う給電制御手段とを備えた。」(1ページ左下欄10-右下欄14行) 「第2図において,電子閃光装置は端子T1’?T5’を有する取付部10を具備し,この取付部10はカメラのアクセサリシュー8に係合し電子閃光装置をカメラに装着すると共に端子T1’?T5’を対応するカメラ側端子T1?T5に夫々接続する。第2図の右端に示した閃光装置電源15に直列接続された電源スイッチSW12は,接点,f,g,Aを有する。電源スイッチSW12が接点fを選択したとき,電子閃光装置への給電がカメラ側の給電状態に連動するカメラ連動電源モードとなる。接点gを選択した時は電源オフとなる。接点Aを選択したときはカメラと無関係に常に給電を行うカメラ非連動モードとなる。トランジスタQ33?Q35,抵抗R31,R32,コンデンサC17は,給電制御回路を構成する。 この給電制御回路は,電源スイッチSW12がカメラ連動電源モード接点fを選択したとき,端子T2,T2’を介してカメラ側が給電状態にあるか否かを検出してカメラ側が給電状態のとき電子閃光装置を給電状態とし,カメラ側が非給電状態であるとき,電子閃光装置への給電を絶つ。」(9ページ右下欄14行-10ページ左上欄16行) 以上によれば,特開昭57-157229号公報には,カメラが給電状態にあるか否かを検出し,カメラが給電していることを検出したときに閃光装置への給電を行う給電制御手段とを備えた電子閃光装置が記載されている。 (e1-4)相違点1の判断 刊行物2には,パーソナルコンピュータ2からの電源オン/オフ制御信号により,パーソナルコンピュータ2からの映像信号を表示するモニタ装置3の電源をオン/オフする中継装置10が記載されている。 ここで,刊行物1に記載の発明におけるカメラ本体とモニタの表示手段の映像信号入出力関係は,刊行物2に記載されるパーソナルコンピュータ2とモニタ装置3と同様の映像信号入出力関係にあるから,刊行物1に記載の発明においても,刊行物2と同様に,「電源オン/オフ制御信号」を利用してモニタの表示手段の電源オン/オフを行うことは当業者であれば容易になし得る事項である。 その際,「電源オン/オフ制御信号」を,補正後発明のように「カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号」と呼称することに何等支障はなく,また,「識別信号」を「第1の端子」から出力し,「第2の端子」が入力するように構成することは,当業者であれば適宜なし得る設計的事項である。 なお,出願人は,平成19年6月13日付けで提出した審判請求時の手続補正書において,この刊行物2(引用例3)について, 「引用例3に記載の中継装置10は,その電源がONのときにPC2がONされると,中継装置10(モニタ装置3)も自動的にONになるように構成されていますが,中継装置10(モニタ装置3)がONのときに,PC2をOFFにしても中継装置10(モニタ装置3)はOFFにはなりません。 なぜならば,中継装置10(モニタ装置3)がON時に中継装置10内のチューナをONにしてモニタ装置3に映像を表示している時にPC2をOFFにすると,チューナからのビデオ信号をモニタ装置に出力して映像を見ることができなくなるからです。 また,引用例3には,PC2をOFFした時の中継装置10(モニタ装置3)の動作に関する記載は一切ありません。 即ち,引用例3には,PC2から中継装置10(モニタ装置3)をON/OFFさせるON/OFF制御信号を出力する記載がありますが,実際にはOFF制御信号は出力されていません。」と主張している。 この主張は,中継装置10がON時で,従ってモニタ装置3も電源ON時において,パーソナルコンピュータ2をOFFしたとしてもモニタ装置3をOFFするオフ制御信号は出力されないことを主張するものと思われる。 しかしながら,刊行物2には「パーソナルコンピュータからの電源オン/オフ制御信号により上記モニタ装置の電源をオン/オフする制御手段を備え」(0010段落)ることが明記されているから,その字面どおり,「制御手段」は,「パーソナルコンピュータからの電源オン制御信号により上記モニタ装置の電源をオン」し,「パーソナルコンピュータからの電源オフ制御信号により上記モニタ装置の電源をオフする」ものと解釈するのが相当である。 そして,中継装置10の電源,つまりチューナの電源がオンになっていない場合においては,出願人が主張するような,チューナからのビデオ信号をモニタ装置に出力して映像を出力しているという前提によって生ずる不都合もないのであるから,「パーソナルコンピュータからの電源オン/オフ制御信号により上記モニタ装置の電源をオン/オフする制御手段を備え」(0010段落)という刊行物2の記載に接した当業者であれば,この記載に基づいて,少なくとも,パーソナルコンピュータ2からの電源オン/オフ制御信号によりモニタ装置3の電源をオン/オフするものと普通に解釈すること,即ち,パーソナルコンピュータ2からの電源オン制御信号によりモニタ装置3の電源をオンするものと普通に解釈することはもちろんのこと,パーソナルコンピュータ2からの電源オフ制御信号によりモニタ装置3の電源をオフするものと普通に解釈するものである。 更に,上記周知例1,2(特開平2-238779号公報,特開昭57-157229号公報)にもみられるような,主側装置の電源がオンであることを前提として用いられる従側装置の関係において,両者の電源のオン/オフを連動させることが周知技術であることからみても,刊行物2に接した当業者は,そこに,パーソナルコンピュータ2からの電源オフ制御信号によりモニタ装置3の電源をオフする技術思想を認めるものである。 以上のことから,刊行物2のパーソナルコンピュータ2は,電源オフ制御信号を出力することでモニタ装置3の電源をオフするものと認定することは相当であり,「引用例3(刊行物2)においてOFF制御信号は出力されていません」とする出願人の主張を採用することはできない。 [相違点2] (e2-1)刊行物3(特開平5-14977号公報)の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3には,以下の記載がみられる。 「本例においては,コマンダ30及び被制御器機間の通信を,図7に示すいわゆるランク(LANC)と称されるフォーマットに従って行う。」(0027段落) 「本例においては,コマンダスイッチ61及びモードスイッチ62の切り換え操作によって,このコマンダ30をフルコマンダとしてのノーマルモード,設定モード及びサービスコマンダのモードにしている。そして,ノーマルモードの時は,予めコマンドが割り当てられている釦0?F並びに設定モードにおいて形成されたコマンドが割り当てられている釦10?27を押圧することにより,被制御機器50にコマンドを送って,この被制御機器50を操作するようにし, …(中略)… 更に,こららの各モードのときに,被制御機器50の状態を状態LCDディスプレイ36に表示するようにしているので,例えばチェックや調整のために制御する種々の機器特有のコマンド等を登録することができ,これにより,チェックや調整等におけるリモートコントロールを種々の機器に対応させることができると共に,リモートコントロールを行ったとき等の機器の状態を認識することができる。」(0066段落) 以上の記載によれば,特開平5-14977号公報には,被制御機器50をリモートコントロールするコマンダ30において,被制御機器50の状態を状態LCDディスプレイ36に表示させて,被制御機器50の状態を認識させること,及び,コマンダ30と被制御機器50間の通信は,ランク(LANC)と称されるフォーマットに従って行われることが記載されている。 (e2-2)周知例3 特開平1-115298号公報には,以下の記載がみられる。 「少なくとも画像と音声のどちらか一方を記録あるいは再生する機能を備えた機器本体からの動作情報を示す信号に基づいて当該情報を表示する表示部と,該動作情報および該機器本体に所望の動作を指定するための指令情報,並びに該表示部の表示動作を管理する手段とを備えたことを特徴とするリモートコントロール装置」(特許請求の範囲) 「以上述べた実施例中の記録再生機8は,例えばVTRやオーディオレコーダー,電子スチルカメラ,スチルビデオレコーダー等の画像や音声を記録再生する装置である。」(2ページ右下欄13-16行) 「リモートコントロール装置と機器本体とは,ワイヤレスであってもワイヤードで接続されていてもよい。」(3ページ左上欄4-6行) 「本発明のリモートコントロール装置によれば,機器本体の動作内容を表示する表示部を備えていることにより,機器本体から離れた場所からでもその動作情報が確認でき,また指令内容も手元でいち早く確認できるという効果がある。」(3ページ左上欄8-13行) 以上の記載によれば,特開平1-115298号公報には,画像や音声を記録再生する記録再生装置にワイヤードで接続されるリモートコントロール装置に,記録再生装置の動作状態を表示することで,記録再生装置から離れた場所でもその動作状態を確認できることが記載されている。 (e2-3)周知例4 特開平4-167768号公報には,以下の記載がみられる。 「この発明は,光学像を映像信号に変換するカメラ部を内蔵したカメラ一体型信号記録装置に関し,特にビューファインダをリモートコントロール装置として使用できるようにしたものである。」(1ページ右下欄4-7行) 「本体部からビューファインダ部を取外して制御手段を操作することにより,操作者は本体部から離れてカメラ部及び信号記録部を操作できる。この操作の際にビューファインダにはカメラ部が受光した映像とカメラ部及び前記信号記録部の動作状態を示す表示とが映出され,撮影者はこれらの映出結果に対応した適切な操作をビューファインダ部のみを用いて行える。」(2ページ左下欄12-20行) 「第3図はこのようにしてカメラ一体型VTRを使用した場合のビューファインダ部の映像表示状態を示す説明図である。 上記の操作を行ったことにより被写体が液晶パネル41の中心に捉えられている。 液晶パネル41の左側上方にはバッテリの残量を示す記号42が表示され,液晶パネルの右側上方には記録中を示す“REC”の記号43及びシャッタースピードを示す記号44が,さらに,液晶パネルの左側下方には日時を示す記号45とテープの種類を示す記号46が表示されている。」(3ページ右下欄8-18行) 「ビューファインダ部63において,イヤホン21とリモコンキー入力パッド22は第1図の実施例と同様の構成になっている。この実施例においては,リモコンキー入力パッド22により入力されたキー入力信号を有線ケーブル64を介して,制御部16に直接供給している。また,カメラ部14は,受光状態の情報を動作表示信号cとしてビューファインダ70に直接供給している。信号記録部15は,映像信号aと音声信号bと,映像信号a及び音声信号bの記録状態を示す動作表示信号dを有線ケーブル64を介して,ビューファインダ70に直接供給しているとともに,音声信号を有線ケーブルを介してイヤホン21に直接供給している。ビューファインダ70は,映像信号aと動作表示信号c,dとを合成して,液晶パネルに表示している。」(4ページ左下欄3-17行,図6) 以上の記載によれば,特開平4-167768号公報には,本体部と有線ケーブル64を介して接続され,液晶パネルとリモコンキー入力パッド22が設けられるビューファインダ部において,リモコンキー入力パッド22により入力されたキー入力信号を有線ケーブルを介して本体部に供給するとともに,有線ケーブルを介して供給される映像信号aと動作表示信号c,dを合成して液晶パネルに表示させることが記載されている。 (e2-4)相違点2の判断 刊行物3,上記特開平1-115298号公報(周知例3),特開平4-167768号公報(周知例4)にみられるように,被制御機器と,それを遠隔操作する制御機器(リモートコントローラ)との関係において,制御機器にて,被制御機器の動作状態を表示することは周知である。 刊行物1に記載される「ワイヤードリモートコントローラ20」もカメラ本体(被制御機器)を制御する制御機器といえるものであるから,この制御機器たる「ワイヤードリモートコントローラ20」に被制御機器の動作状態を表示することは当業者であれば容易になし得る事項である。 その際,刊行物3にも記載されているような,制御機器の制御と,被制御機器の動作状態を1つ通信ケーブルで通信できる「LANC」は周知のフォーマットであるから,刊行物1に記載の発明において,カメラ動作状態とコントロール信号を同じ通信ケーブルで扱うようにすることで,「第1の端子」を,「コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を出力するコントロール信号用入出力端子」とすることは設計的事項である。 そして,特開平4-167768号公報(周知例4)に記載されているように,映像信号aと動作表示信号c,dを合成して表示することも周知であるから,「カメラ動作状態を,表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させる」ことも当業者にとっての設計的事項にすぎない。 (f)まとめ(独立特許要件) 以上,補正後発明は,刊行物1乃至刊行物3,及び,周知技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 (4)むすび(補正却下) 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合せず,特許法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第三 本願発明 平成19年4月26日付けの補正は上記のとおり却下する。 本願の請求項1及び請求項2に係る発明は,本願明細書,特許請求の範囲及び図面(平成18年1月30日付けの手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面)の記載からみて,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は,下記のとおりである。 記(本願発明) 「映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力する第1の端子とを含む第1のマルチコネクタを有するカメラ本体と, 前記第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,前記カメラ本体から映像信号及び識別信号を入力するための映像入力端子及び第2の端子を含む第2のマルチコネクタと,該第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段と,前記第2のマルチコネクタの第2の端子から入力する識別信号に基づいてカメラ電源のON/OFFに対応してモニタ電源のON/OFFを制御する電源制御手段とを有するモニタと,からなり, 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を示す信号を出力するコントロール信号用入出力端子であり, 前記モニタは,前記カメラ本体を操作するための操作スイッチと,該操作スイッチの操作に対応したコントロール信号を前記コントロール信号用入出力端子に出力するコントロール信号出力手段と,前記コントロール信号用入出力端子から入力するカメラ動作状態を示す信号に基づいてカメラ動作状態を表示するカメラ動作状態表示手段と, を有することを特徴とするビデオカメラとモニタ。」 第四 査定の検討 1.引用刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には,前記のとおりの記載がある。 2.対比(対応関係) 本願発明(旧請求項1)は,補正後発明の「カメラ動作状態を,前記表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させるカメラ動作状態表示手段」から「前記表示手段の画面にスーパー・インポーズして」なる限定事項を削除したものである。 よって,本願発明と刊行物1記載の発明の対比について,前記補正後発明と刊行物1に記載の発明との対応関係がそのまま援用できる。 3.一致点・相違点 本願発明と刊行物1(特開平4-20077号公報)に記載の発明との一致点及び相違点は,下記のとおりである。 記(一致点) 「映像信号を外部機器に出力するための第1の映像出力端子と,第1の端子とを含む第1のマルチコネクタを有するカメラ本体と, 前記第1のマルチコネクタと接続される第2のマルチコネクタであって,前記カメラ本体から映像信号を入力するための映像入力端子と第2の端子を含む第2のマルチコネクタと,該第2のマルチコネクタの映像入力端子から入力する映像信号に基づいて映像を表示する表示手段とを有するモニタと,からなり, 前記第1のマルチコネクタの第1の端子は,コントロール信号を入力するコントロール信号用入力端子であり, 前記モニタは,前記カメラ本体を操作するための操作スイッチと,該操作スイッチの操作に対応したコントロール信号を前記コントロール信号用入力端子に出力するコントロール信号出力手段と,を有することを特徴とするビデオカメラとモニタ。」 記(相違点) [相違点1] 本願発明の「第1の端子」は,「カメラ電源のON/OFF状態に対応した識別信号を出力」し,「第2の端子」は,「識別信号」を入力する端子であって,「第2のマルチコネクタの第2の端子から入力する識別信号に基づいてカメラ電源のON/OFFに対応してモニタ電源のON/OFFを制御する電源制御手段」を有しているのに対し,刊行物1には,「識別信号」及び「電源制御手段」についての記載はない点。 [相違点2] 本願発明の「第1の端子」は,「コントロール信号を入力するとともにカメラ動作状態を出力するコントロール信号用入出力端子」であるのに対し,刊行物1の「第1の端子」は,「コントロール信号を入力するコントロール信号用入力端子」とするのみであり, 本願発明が「コントロール信号用入出力端子から入力するカメラ動作状態を示す信号に基づいてカメラ動作状態を表示するカメラ動作状態表示手段」を有するのに対し,刊行物1には,その記載はない点。 4.相違点の判断等 [相違点1] 相違点1は,補正後発明の相違点1と同一であるから,補正後発明の相違点1の判断が援用できるものであり,相違点1は,補正後発明の相違点1と同じ理由で当業者が容易になし得たものである。 [相違点2] 相違点2は,補正後発明の発明特定事項である,カメラ動作状態を「表示手段の画面にスーパー・インポーズして表示させる」点が除かれたものであるから,補正後発明の相違点2についての判断を援用できるものであり,相違点2は,補正後発明の相違点2と同じ理由で当業者が容易になし得たものである。 <効果等について> 本願発明の効果も,刊行物1乃至刊行物3の記載の発明,及び,周知技術から予測することができる程度のものにすぎない。 5.まとめ(査定の検討) したがって,本願発明は,刊行物1乃至刊行物3に記載された発明,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第五 むすび 以上,本願の請求項1に係る発明は,刊行物1乃至刊行物3に記載された発明,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,残る請求項2に係る発明について特に検討をするまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-14 |
結審通知日 | 2007-11-15 |
審決日 | 2007-11-27 |
出願番号 | 特願2005-145812(P2005-145812) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 健一 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
乾 雅浩 南 義明 |
発明の名称 | ビデオカメラとモニタ |
代理人 | 松浦 憲三 |