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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B24B
審判 全部申し立て 特29条の2  B24B
管理番号 1170633
異議申立番号 異議2003-72977  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2008-02-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-05 
確定日 2007-09-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3431599号「化学的機械的研磨用の多層の止め輪を有するキャリア・ヘッド」の請求項1?25に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3431599号の請求項1、4?25に係る発明についての特許を取り消す。 同請求項2?3に係る発明についての特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3431599号の請求項1?25に係る発明についての出願は、1999年5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年6月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年5月23日にその発明について特許権の設定登録がされ、平成15年12月5日に異議申立人金子しのより全請求項に係る発明についての特許に対して、また、平成15年12月26日に異議申立人波津久寛史より請求項1、4、6?25に係る発明についての特許に対して、それぞれ特許異議の申立てがなされ、平成16年8月17日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月28日に意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
〈訂正事項a〉
本件特許の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載される、
「【請求項1】 化学的機械的研磨のためのキャリア・ヘッドの止め輪であって、
研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、
前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、上部の部分と、を有する、
ボルトによってキャリア・ヘッドのベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。」を、
「【請求項1】 化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、
研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、
前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、上部の部分と、を有し、
前記上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。」と訂正する。
〈訂正事項b〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載される、
「【請求項2】 化学的機械的研磨のためのキャリア・ヘッドの止め輪であって、
前記キャリヤヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、
前記基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、
前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、
前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、
前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられており、
前記止め輪が、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する環状の下部の部分と、
前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、キャリア・ヘッドのベースに接続される環状の上部の部分と、
を有する止め輪。」を、
「【請求項2】 化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、
前記キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、
前記基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、
前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、
前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、
前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられており、
前記止め輪が、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する環状の下部の部分と、
前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、キャリア・ヘッドのベースに接続される環状の上部の部分と、を有し、 前記上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、本件特許明細書の段落【0021】、【0022】、【0028】及び図2の記載に基づいて、キャリア・ヘッドを、「ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有」し、「前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される」ものに限定するとともに、本件特許明細書の段落【0033】、【0040】及び図2の記載に基づいて、止め輪がボルトによって固定される部分を、止め輪の「上部の部分」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
また、上記訂正事項bは、本件特許明細書の段落【0021】、【0022】、【0028】及び図2の記載に基づいて、キャリア・ヘッドを、「ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有」し、「前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される」ものに限定するとともに、本件特許明細書の段落【0033】、【0040】及び図2の記載に基づいて、止め輪を、「上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の」ものに限定し、さらに、用語の整合性を図るために、「キャリヤヘッド」を「キャリア・ヘッド」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記訂正事項a、bは、ともに実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1?25に係る発明(以下それぞれを、「本件発明1」等という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】 化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、
研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、
前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、上部の部分と、を有し、
前記上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。
【請求項2】 化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、
前記キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、
前記基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、
前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、
前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、
前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられており、
前記止め輪が、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する環状の下部の部分と、
前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、キャリア・ヘッドのベースに接続される環状の上部の部分と、を有し、
前記上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。
【請求項3】 キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、
前記基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、
前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、
前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、
前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられている、請求項1記載の止め輪。
【請求項4】 該底部表面に複数のチャネルを有する、請求項1?3の何れか1項記載の止め輪。
【請求項5】 前記止め輪の上部の部分の外周部に、前記ベース下部と相補的関係にある、断面形状にしたときに段差状になる部分が設けられ、前記止め輪とベースとが嵌合するようになっている請求項1?4の何れか1項記載の止め輪。
【請求項6】 前記第一の材料が、化学的機械的研磨プロセスに対して不活性である請求項1?5の何れか1項記載の止め輪。
【請求項7】 前記第一の材料が、プラスチックである請求項1?6の何れか1項記載の止め輪。
【請求項8】 前記第一の材料が、硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタート、ポリエーテル・エーテル・ケトン及びポリブチレン・テレフタートからなる群から選択される請求項1?7の何れか1項記載の止め輪。
【請求項9】 前記第一の材料が、硫化ポリフェニレンである請求項1?8の何れか1項記載の止め輪。
【請求項10】 前記第一の材料が、ショアーDスケールで約80から95の間のデュロメータ測定値を与える請求項1?9の何れか1項記載の止め輪。
【請求項11】 第一の材料は、0.3?1.6×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する請求項1?10の何れか1項載の止め輪。
【請求項12】 前記下部の部分は、厚さが研磨される基板より厚い請求項1?11の何れか1項記載の止め輪。
【請求項13】 前記下部の部分は、厚さが約100ミルから400ミルの間である請求項1?12の何れか1項記載の止め輪。
【請求項14】 前記第二の材料は、金属である請求項1?13の何れか1項記載の止め輪。
【請求項15】 前記第二の材料は、ステンレス、アルミニウム、モリブデンからなる群から選択される金属である請求項1?14の何れか1項記載の止め輪。
【請求項16】 前記第二の材料は、セラミックスである請求項1?13の何れか1項記載の止め輪。
【請求項17】 前記第二の材料は、10?50×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する請求項1?16の何れか1項記載の止め輪。
【請求項18】 前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約10倍から100倍の弾性率を有する請求項1?17の何れか1項記載の止め輪。
【請求項19】 前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約50倍の弾性率を有する請求項1?18の何れか1項記載の止め輪。
【請求項20】 前記上部の部分は、厚さが約300ミルから500ミルの間である請求項1?19の何れか1項記載の止め輪。
【請求項21】 前記下部の部分は第一の弾性率を有し、前記上部の部分は第二の弾性率を有し、前記第二の弾性率は前記第一の弾性率より十分に大きいように選択されている請求項1?20の何れか1項記載の止め輪。
【請求項22】 前記下部の部分は、前記上部の部分に接着して取り付けられている請求項1?21の何れか1項記載の止め輪。
【請求項23】 前記接着は、緩硬性(slow curing)エポキシである接着剤でなされている請求項22記載の止め輪。
【請求項24】 前記下部の部分は、前記上部の部分に圧入されている請求項1?23の何れか1項記載の止め輪。
【請求項25】 前記下部の部分は、前記上部の部分にねじを使用して接着して取り付けられている請求項1?24の何れか1項記載の止め輪。

(2)異議申立ての理由及び取消しの理由の概要
(i)異議申立人金子しのは、証拠方法として甲第1?6号証を提示し、本件発明1?25は甲第1号証記載の発明と同一であるから、本件発明1?25についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消すべき旨主張している。
[証拠方法]
甲第1号証:特開平11-291162号公報(下記先願明細書と同一)
甲第2号証:実願昭60-144047号(実開昭62-50047号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開平8-150558号公報
甲第4号証:特開平8-229804号公報
甲第5号証:特開平8-257893号公報
甲第6号証:特開平6-79618号公報
(ii)異議申立人波津久寛史は、証拠方法として甲第1?10号証を提示し、本件発明1、4、6?25は、甲第2号証記載の発明と同一であるとともに、甲第3?6号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、4、6?25についての特許は、特許法第29条の2及び第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべき旨主張している。
[証拠方法]
甲第1号証:本件特許公報
甲第2号証:特開平11-291162号公報(下記先願明細書と同一)
甲第3号証:米国特許第5908530号明細書(下記刊行物1と実質上同一)
甲第4号証:特開平9-19863号公報
甲第5号証:特開平6-39705号公報(下記刊行物2と同一)
甲第6号証:特開平10-58309号公報(下記刊行物3と同一)
甲第7号証:特許・実用新案 審査基準
甲第8号証:特開平8-264627号公報(下記刊行物4と同一)
甲第9号証:特開平10-34530号公報(下記刊行物5と同一)
甲第10号証:特開平10-94959号公報(下記刊行物6と同一)
(iii)当審の通知した取消しの理由は、本件発明1、4?25は、先願明細書記載の発明と同一であるとともに、本件発明1?25は、刊行物1記載の発明及び刊行物2?6に示される従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、4?25についての特許は、特許法第29条の2及び第29条第2項の規定に、本件発明2、3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に、それぞれ違反してされたものであり、いずれも取り消すべきとのものである。
[先願明細書及び刊行物]
先願明細書:特開平11-291162号公報
刊行物1:国際公開96/36459号公報
刊行物2:特開平6-39705号公報
刊行物3:特開平10-58309号公報
刊行物4:特開平8-264627号公報
刊行物5:特開平10-34530号公報
刊行物6:特開平10-94959号公報

(3)先願明細書及び刊行物1?6記載の発明(事項)
(i)先願明細書には、以下の事項が記載されている。
(イ)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】この発明は、化学的機械的研磨法などに用いられる研磨装置に関する。」
(ロ)段落【0013】
「また、基板105の外周に研磨中の基板105の横ずれを防止するリテーナーリング101が設けられている。そして、この実施の形態では、リテーナーリング101を、ポリエチレンテレフタレートなどの硬質プラスチックからなる樹脂部分101aと、たとえばSUS316(ステンレス鋼)などの金属部分101bとから構成するようにした。なお、樹脂部分101aと金属部分101bとは、所定の接着剤などにより強固に密着させている。・・・」
(ハ)段落【0017】
「なお、上述では、金属部分としてステンレス鋼を用い、樹脂部分としてポリエチレンテレフタレートを用いるようにしたが、これに限るものではなく、次に示すようなエンジニアリングプラスチックを用いるようにしてもよい。すなわち、・・・ポリブチレンテレフタレート,・・・ポリエーテルエーテルケトン・・・などである。また、金属部分としては、ステンレス鋼に限るものではなく、耐腐食性を有して高い機械的強度を有した他の金属およびその合金を用いるようにしてもよい。」
(ニ)段落【0018】
「【発明の効果】・・・したがって、このリテーナーリングは、研磨パッドに接触する面が樹脂としたうえで、リテーナーリングを樹脂のみで形成するより機械的強度が向上する。する。この結果、この発明によれば、研磨の処理数が増加しても、リテーナーリングがあまり変形しないので、研磨対象の基板外周部における研磨量異常の発生を抑制できるという効果がある。」
上記の摘記事項及び【図1】(a)、(b)からみて、先願明細書には、
「化学的機械的研磨のためのキャリア・ヘッドのリテーナーリング101であって、
前記キャリア・ヘッドが基板保持部109とリテーナーリング101とインサートパッド103とを含み、
研磨の間に研磨パッド102と接触し、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックで作られている、底部表面を有する樹脂部分101aと、
ステンレス鋼などの耐腐食性を有して高い機械的強度を有した金属およびその合金で作られている、金属部分101bとを有し、
エアクッション107を介して基板保持部下部の外縁に取付けられている全体として環状のリテーナーリング101」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

(ii)刊行物1には、以下の事項が記載されている。なお、刊行物1とパテントファミリーの関係にある特表平11-505181号公報(以下、「刊行物1’」という。)を翻訳文として使用する。
(イ)明細書第1頁7行?11行(刊行物1’第10頁5行?8行を参照)
「本発明は、集積回路などのチップがそこから作られるタイプの半導体ウエハの研磨に関する。詳細には、化学的、機械的処理(CMP)において、半導体ウエハを、ツーリングヘッドで固定し、制御された化学的に活性な環境の下で研磨材料と接触させることによって研磨する。」
(ロ)明細書第5頁1行?5行(刊行物1’第13頁25行?28行)
「例えば、入手可能な多くのCMP機器において、ウエハの端部付近において材料の除去率が高いことがわかっている。(研磨媒体に対してウエハを固定する)プラテンの形状、およびプラテンと(ウエハをプラテンの中心に保つ)保定リングとの関係は、最終的なウエハの平坦性に決定的に重大である。」
(ハ)明細書第6頁23行?26行(刊行物1’第15頁15行?18行)
「ウエハは、円形プラテンおよびプラテンの外端部の周りに周縁的に方向付けられた保定リングを備えるツーリングヘッドによって研磨パッドと接触して配置場所に固定される。ウエハの面と研磨面との係合によって生じるウエハへの横方向の力に抵抗するために、保定リングが取り付けられて配置される。」
(ニ)明細書第15頁19行?25行(刊行物1’第24頁20行?26行)
「ショルダ260はまた、その中に、ショルダ260とプラテン266との間で機能する圧縮バネ270が固定される円形のノッチ(notch)268を備える。好ましい実施態様において、バネ270は、円形のベルビル(Bellville)バネを積み重ねたものを含む。バネ270は、プラテン266をウエハおよびテーブルに対して偏らせ、Z方向への力、従ってウエハの圧力が変化し得ることを確実にする。従って、ショルダ260およびポスト204の位置をZ方向に変化させることによって、ウエハ200と研磨パッドとの間の圧力が正確に制御され得る。」
(ホ)明細書第16頁7行?第18頁11行(刊行物1’第25頁11行?第26頁18行を参照)
「図10は、本発明の他の実施態様によるツーリングヘッドの断面図である。ウエハ200がツーリングヘッド202によって固定されて示されている。ウエハ200の裏面は、可撓性プラテン277とウエハ200との間でバネとして機能し、Z方向への力で圧縮可能な、好ましくは弾性材料を含む弾性パッド298と接触している。可撓性プラテン277は、厚い壁部276および薄い面部279を含む。プラテン277は、好ましくは、鉄のような金属材料からなる。プラテン277の壁部は、上部プレート274に取り付けられ、プラテン277の壁部および面部、ならびに上部プレート274によってキャビティ278が規定されている。ダイアフラムとして機能するプラテン277の面部に正または負の圧力をかけるために、キャビティ278は気体または液体を充填され得る。キャビティ278から気体または液体を供給および排出するために、ポート280が設けられる。好ましい実施態様によれば、キャビティ278内の圧力がプログラム可能かつ正確に制御され得るように、コンピュータによって制御される電気圧力レギュレータ281が設けられる。キャビティ278内の流体または気体の量を制御することによって、プラテン277の面を、凹凸形状にたわますことができ、研磨の間ウエハ200の形状を有利に変化させ得る。
図11は、ウエハの端部付近の領域を示す、図10を参照しながら説明した実施態様によるツーリングヘッドの部分断面図である。図示されるように、ウエハ200は、ウエハ200の円周を囲む、磨耗リング291を備える保定リング282によって位置に固定されている。保定リング282およびプラスチック磨耗リング291は、曲線の反った外端部を有し、これにより、研磨の間、研磨パッドの平坦化が補助され、ウエハからのより均一な材料の除去をもたらす。好ましくは、磨耗リング291は、研磨パッドによる研磨に耐える高い耐研磨性、および歪みに耐える良好な寸法安定性の両方を備えたプラスチック材料を含む。保定リング282は、保定リング可撓性部材284によって、可動性を有するように上部プレート274に取り付けられる。保定リング可撓性部284は、平坦な円形鉄バンドからなり、上部プレート274に留められるクランプリング275(図10に図示)によって上部プレート274に留められる。可撓性部材284は、保定リング282が、ウエハ200の面と実質的に直交する垂直方向に移動することを可能にする。保定リング282の正確な垂直位置は、ツーリングヘッドの周縁に沿って間隔を開けられたいくつかのサーボ操作されるネジ288およびセンサ290によって制御される。センサ290は、上部プレート274に対する保定リング282の垂直の高さを測定し、好ましくは、コンピュータコントローラに情報を伝達する。コンピュータもまた、操作の間、保定リング282の垂直位置をセットするサーボ操作されるネジ288を制御する。
保定リング282の垂直位置が調節可能である一方で、ネジ288および可撓性部材284は、リングを配置位置に固く固定する・・・」
そうすると、上記の摘記事項及び【図9】?【図11】からみて、刊行物1には、
「化学的機械的研磨のために、ショルダ260、上部プレート274、断面視ショルダと上部プレートと可撓性リング272とで囲まれる空間を有するツーリングヘッド202において、前記ショルダと前記上部プレートの間に前記空間が配置され、前記上部プレート274に対するZ方向への力が、ショルダ260と上部プレート274との間で固定される圧縮バネ270により変化され得る、前記ツーリングヘッド202の、摩耗リング291を備える保定リング282であって、
前記ツーリングヘッド202が、上部プレート274と、摩耗リング291を備える保定リング282と、可撓性プラテン277及び弾性パッド298とを含み、
前記可撓性プラテン277が、厚い段部276とダイヤフラムとして機能する薄い面部279とを含み、
前記上部プレート274と可撓性プラテン277との間にキャビティ278が形成され、該キャビティ278の加圧が、ウェハ200を研磨パッド206に対して押し付けるように、弾性パッド298を下向きに押すようになっており、
前記摩耗リング291を備える保定リング282が、研磨の間に研磨パッド206と接触し、プラスチックで作られている、底部表面を有する環状の摩耗リング291と、
環状の保定リング282と、を有し、
前記保定リング282は、保定リング可撓性部材284によって、可動性を有するように上部プレート274に取り付けられ、その正確な垂直位置は、ツーリングヘッドの周縁に沿って間隔を開けられたいくつかのサーボ操作されるネジ288およびセンサ290によって制御される、全体として環状の摩耗リング291を備える保定リング282」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

(iii)特開平6-39705号公報(以下、「刊行物2」という。異議申立人波津久寛史提示の甲第5号証)の段落【0022】には、
「上記保持具3における小径部3aの外周には、固定基板保持リング4が設けられており、保持具3の大径部3bの下面に保持リングボルト5にて固定されている。この固定基板保持リング4は、下端が上記保持具3の下端よりも下側に突出して設けられており、研磨加工をする際に、固定基板2が横方向にずれるのを防止するようになっている。」と記載され、【図1】には、研磨装置において、固定基板保持リング4が保持具3の外縁に保持リングボルト5で固定されることが示されている。
また、特開平10-58309号公報(以下、「刊行物3」という。異議申立人波津久寛史提示の甲第6号証)の段落【0045】には、
「図10はトップリングの変形例を示す図である。トップリング51は、トップリング本体52と、トップリング本体52の下部外周部にボルト53によって着脱可能に固定されたリング状部材54とからなり、半導体ウエハ4を収容する凹部51aはトップリング本体52の下面とリング状部材54によって形成されている。・・・」と記載され、【図10】には、半導体ウェハ等のポリッシング装置において、リング状部材54がトップリング本体52の下部外周部にボルト53で固定されることが示されている。
上記刊行物2、3の記載からみて、
「止め輪がキャリア・ヘッドのベースの外縁にボルトで固定されること」が、本件出願の優先権主張の日前に、半導体ウェハ等の研磨技術分野において周知であったということができる。

(iv)特開平8-264627号公報(以下、「刊行物4」という。異議申立人波津久寛史提示の甲第8号証)の段落【0022】には、
「図3Aは、この問題を取上げたこの発明の実施例の支持体16の正面図を示す。・・・この実施例では、支持体16が、ウェーハ保持面52を取囲む外縁部分56を含む。外縁部分56が複数個のウェーハ流路58を含む。ウェーハ流路58が回転して、スラリ24を半導体ウェーハ14と条件づけパッド22の間の界面に送込む。」と記載され、
特開平10-34530号公報(以下、「刊行物5」という。異議申立人波津久寛史提示の甲第9号証)の段落【0014】には、
「・・・図6及び7で分かるように、保持リング200の底面212には複数の流れ増大用チャンネル210が形成されている。・・・」と記載され、
特開平10-94959号公報(以下、「刊行物6」という。異議申立人波津久寛史提示の甲第10号証)の【請求項3】には、
「・・・リテーナリングの前記研磨体に接触する面に、内側から外側に向けた研磨液排出溝を形成し、・・・」と記載されている。
上記刊行物4?6の記載からみて、
「止め輪底部表面に複数のチャネルを有すること」が、本件出願の優先権主張の日前に、半導体ウェハの研磨技術分野において周知であったということができる。

(4)特許法第29の2違反について
1)本件発明1について
本件発明1と先願発明とを対比すると、後者の「リテーナーリング101」は前者の「止め輪」に、後者の「基板保持部109」は前者の「ベース」に、後者の「研磨パッド102」は前者の「ポリシング・パッド」に、後者の「ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックで作られている、底部表面を有する樹脂部分101a」は前者の「第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分」に、後者の「ステンレス鋼などの耐腐食性を有して高い機械的強度を有した金属およびその合金で作られている、金属部分101b」は前者の「前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、上部の部分」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ベースを有するキャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、上部の部分と、を有し、キャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪」の点で一致するものの、前者が、「ハウジング、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッド」であって、「前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御され」、止め輪の「上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている」のに対して、後者が、そのような事項を備えていない点で相違する。
したがって、本件発明1は先願発明と同一ではない。

2)本件発明2について
本件発明2と先願発明とを対比すると、後者の「インサートパッド103」は前者の「基板裏当て組立体」に相当する。
そうすると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ベースを有するキャリア・ヘッドの止め輪であって、前記キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、前記止め輪が、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する環状の下部の部分と、前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、キャリア・ヘッドのベースに接続される環状の上部の部分と、を有し、キャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪」の点で一致するものの、前者が、「ハウジング、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッド」であって、「前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御され」、「基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられており」、止め輪の「上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている」のに対して、後者が、そのような事項を備えていない点で相違する。
したがって、本件発明2は先願発明と同一ではない。

3)本件発明3?25について
本件発明3?25は、本件発明1及び/又は本件発明2を直接的に又は間接的に引用するものである。
したがって、本件発明3?25と先願発明とは、少なくとも上記の本件発明1又は2の相違点で相違するから、本件発明3?25も先願発明と同一ではない。

(5)特許法第29条第2項違反について
1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「ショルダ260」は前者の「ハウジング」に、後者の「上部プレート274」は前者の「ベース」に、後者の「ツーリングヘッド202」は前者の「キャリア・ヘッド」に、後者の「摩耗リング291を備える保定リング282」は前者の「止め輪」に、後者の「研磨パッド206」は前者の「ポリシング・パッド」に、後者の「プラスチック」は前者の「第一の材料」に、後者の「摩耗リング291」は前者の「下部の部分」に、後者の「保定リング282」は前者の「上部の部分」に、それぞれ相当する。そして、後者の「断面視ショルダと上部プレートと可撓性リング272とで囲まれる空間」と前者の「ローディングチャンバ」とは、ハウジングとベースの間に配置される空間の限りで一致する。なお、特許権者は、刊行物1記載の発明において、「ベース」に対応するのは、「上部プレート274」ではなく、「保定リング282」であり、したがって、刊行物1記載の発明は、止め輪の「上部の部分」を備えていない旨主張する(特許異議意見書第15頁2行?9行)。しかしながら、訂正明細書の段落【0006】の「基板マウンティング面および研磨の間にマウンティング面の下に基板を維持するための止め輪」との記載、及び、段落【0033】の「止め輪110の内部表面188は、可撓膜118のマウンティング面120と連係して、基板収容陥凹部192を定める。止め輪110は、基板が基板収容陥凹部から逃れるのを防止する。」との記載からみて、本件各発明における「止め輪」の技術的意義は、基板を維持することにあり、一方、刊行物1記載の発明の「保定リング282」も、上記摘記事項(ロ)の「(ウエハをプラテンの中心に保つ)保定リング」との記載、及び、上記摘記事項(ハ)の「ウエハの面と研磨面との係合によって生じるウエハへの横方向の力に抵抗するために、保定リングが取り付けられて配置される。」との記載からみて、上記「止め輪」と同等の機能を有していることが明らかであるから、「保定リング282」は「止め輪」に相当するというべきであって、「ベース」に相当するとする特許権者の主張は採用できない。
そうすると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉前者は、ハウジングとベースの間に配置される空間がローディングチャンバであって、該ローディングチャンバ内の圧力がポンプにより制御されるのに対して、後者は、ハウジングとベースとの間で固定される圧縮バネ270により、前記ベースに対するZ方向への力が変化され得る点。
〈相違点2〉前者は、上部の部分が「第一の材料より剛性である第二の材料で作られている」のに対して、後者は、上部の部分の材料を特定していない点。
〈相違点3〉前者は、止め輪の「上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている」のに対して、後者は、止め輪の上部の部分は、ベースである上部プレート274に固定されるのではなく、「保定リング可撓性部材284によって、可動性を有するようにベースである上部プレート274に取り付けられ、その正確な垂直位置は、ツーリングヘッドの周縁に沿って間隔を開けられたいくつかのサーボ操作されるネジ288およびセンサ290によって制御される」点。
そこで、上記相違点について検討する。
〈相違点1について〉
本件発明1において、相違点1に係る構成、すなわち、「ハウジングとベースの間に配置される空間がローディングチャンバであって、該ローディングチャンバ内の圧力がポンプにより制御される」ことの技術的意義は、訂正明細書の段落【0028】に、「第二のポンプ(図示せず)は、ローディングチャンバ内の圧力とベース104に印加される負荷を制御するために・・・」と記載され、一方、刊行物1記載の発明における「ハウジングとベースとの間で固定される圧縮バネ270」は、ベースに対するZ方向への力を変化されるためのものである。そうすると、相違点1に係る、本件発明1の上記構成及び刊行物1記載の発明の上記構成とは、ベースに印加する負荷を調整する点で同等のものということができる。
ところで、ローディングチャンバを設け、該ローディングチャンバ内の圧力を気体、液体の量で制御して、当該ローディングチャンバ下方への負荷を制御することは、刊行物1のキャビティ278内の圧力調整に見られるように(刊行物1の摘記事項(ホ)を参照)、従来周知であり、また、気体、液体の量をポンプで制御することも従来周知である。
そうすると、刊行物1記載の発明における相違点1に係る構成を本件発明1のそれとすることは、従来周知の技術から当業者が容易になし得ることである。
〈相違点2について〉
刊行物1記載の発明における「保定リング282」は、「摩耗リング291」を保定するものであるから、保定される「摩耗リング291」より高剛性の材料であることは、明らかである。したがって、刊行物1記載の発明における止め輪の「上部の部分」を、下部の部分を構成する「第一の材料より剛性である第二の材料」で作ることは、当業者が容易になし得ることである。
〈相違点3について〉
環状の止め輪をキャリア・ヘッドのベースの外縁にボルトで固定することは、半導体ウェハ等の研磨技術分野において従来周知である(上記(3)(iii)を参照)。
そして、刊行物1記載の発明は、上部部分を含めた止め輪全体が、ベースに相当する上部プレートに対して可動性を有するものであって、当該上部プレートに固定されていないが、止め輪をベースに対して可動性を有することを要しない場合(上述周知例)も存在する。
そうすると、刊行物1記載の発明における止め輪の上部の部分をベースに保持させる方式を、止め輪をベースに対して可動性を有することを要しないものとし、キャリア・ヘッドのベースの外縁にボルトで固定するとの周知技術を適用することは、当業者が容易になし得ることである。
なお、特許権者は、止め輪がベースに相当する上部プレートに対して可動性を有する刊行物1記載の発明は、止め輪をキャリア・ヘッドのベースの外縁にボルトで固定する周知技術の適用を妨げる要因があると主張するが(特許異議意見書第16頁?17行参照)、上述したように、止め輪をベースに対して可動性を有することを要しない場合も存在することを勘案すると、阻害要因が存在するとまでは認め得ない。
そして、本件発明1の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2)本件発明2について
本件発明2と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「可撓性プラテン277及び弾性パッド298」は前者の「基板裏当て組立体」に、後者の「厚い段部276と薄い面部279とを含む可撓性プラテン」は前者の「支持構造」に、後者の「弾性パッド298」は前者の「可撓膜」に、後者の「キャビティ278」は前者の「チャンバ」に、後者の「ウェハ200」は前者の「基板」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、前記キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、前記基板裏当て組立体が、支持構造、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、前記止め輪が、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する環状の下部の部分と、キャリア・ヘッドのベースに接続される環状の上部の部分と、を有する、全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記相違点1?3に加えて以下の点で相違する。
〈相違点4〉前者は、基板裏当て組立体が「支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム」を有し、「撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ」、「前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられて」いるのに対して、後者は、そのような事項を備えていない点。
そこで、相違点4について検討するに、基板裏当て組立体が「支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム」を有し、「撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ」、「前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられて」いるとの事項は、当審が通知した取消しの理由で引用した他の刊行物及び異議申立人の提出した各甲号証にも記載されておらず、しかも、周知慣用の事項であるとは認め得ない。
したがって、本件発明2は、刊行物1記載の発明、並びに、当審が通知した取消しの理由で引用した他の刊行物及び異議申立人の提出した各甲号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

3)本件発明3について
本件発明3と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点、及び、「キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、前記基板裏当て組立体が、支持構造及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになって」いる点で一致し、上記の相違点1?3及び相違点4で相違する。
相違点4については、上述したとおりである。
したがって、本件発明3も、刊行物1記載の発明、並びに、当審が通知した取消しの理由で引用した他の刊行物及び異議申立人の提出した各甲号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を「該底部表面に複数のチャネルを有する」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明4’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明4’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、止め輪が「底部表面に複数のチャネルを有する」ものであるのに対して、後者は、そのように限定されていない点。
ところで、「止め輪の底部表面に複数のチャネルを有すること」は、本件出願の優先権主張の日前に、半導体ウェハの研磨技術分野において周知であるから(上記(3)(iv)を参照)、当該周知技術を同一技術分野に属する刊行物1記載の発明に組み合わせて、上記相違点に係る本件発明4’の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明4’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明4’を含む本件発明4は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を「前記止め輪の上部の部分の外周部に、前記ベース下部と相補的関係にある、断面形状にしたときに段差状になる部分が設けられ、前記止め輪とベースとが嵌合するようになっている」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明5’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明5’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記止め輪の上部の部分の外周部に、前記ベース下部と相補的関係にある、断面形状にしたときに段差状になる部分が設けられ、前記止め輪とベースとが嵌合するようになっている」のに対して、後者は、そのように限定されていない点。
ところで、本件発明5’の発明特定事項は、2部材を固定する際の周知手段である。
そして、本件発明5’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明5’を含む本件発明5は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1を「前記第一の材料が、化学的機械的研磨プロセスに対して不活性である」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明6’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明6’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第一の材料が、化学的機械的研磨プロセスに対して不活性である」のに対して、後者は、そのように限定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明は、「半導体ウエハを・・・化学的に活性な環境の下で・・・研磨する」ものであるから(刊行物1の摘記事項(イ)を参照)、刊行物1記載の発明においても、CMPスラリーと接触する止め輪の下部の部分を構成する第一の材料が、化学的機械的研磨プロセスに対して不活性であることを要することは、明らかである。
してみると、刊行物1記載の発明において、上記相違点に係る本件発明6’の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明6’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明6’を含む本件発明6は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1を「前記第一の材料が、プラスチックである」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明7’」という。)を含んでいる。
ところで、刊行物1記載の発明も、当該事項を備えている。
したがって、本件発明7’を含む本件発明7は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

8)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1を「前記第一の材料が、硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタート、ポリエーテル・エーテル・ケトン及びポリブチレン・テレフタートからなる群から選択される」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明8’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明8’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第一の材料が、硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタート、ポリエーテル・エーテル・ケトン及びポリブチレン・テレフタートからなる群から選択される」のに対して、後者は、第一の材料がプラスチックであるものの、どのようなプラスチックか特定されていない点。
ところで、硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタート、ポリエーテル・エーテル・ケトン及びポリブチレン・テレフタートはエンジニアリングプラスチックとして周知のものであり、また、刊行物1記載の発明の第一の材料が、止め輪の下部の部分を構成することを勘案すると、それを硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタート、ポリエーテル・エーテル・ケトン及びポリブチレン・テレフタート等のエンジニアリングプラスチックとすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明8’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明8’を含む本件発明8は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1を「前記第一の材料が、硫化ポリフェニレンである」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明9’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明9’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第一の材料が、硫化ポリフェニレンである」のに対して、後者は、第一の材料がプラスチックであるものの、どのようなプラスチックか特定されていない点。
ところで、硫化ポリフェニレンはエンジニアリングプラスチックとして周知のものであり、また、刊行物1記載の発明の第一の材料が、止め輪の下部の部分を構成することを勘案すると、それを硫化ポリフェニレン等のエンジニアリングプラスチックとすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明9’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明9’を含む本件発明9は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

10)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1を「前記第一の材料が、ショアーDスケールで約80から95の間のデュロメータ測定値を与える」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明10’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明10’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第一の材料が、ショアーDスケールで約80から95の間のデュロメータ測定値を与える」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における第一の材料を、止め輪の下部の部分として機能するに好ましい機械的特性を特定すること、また、当該機械的特性としてショアーDスケールの硬度を選ぶことは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明10’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明10’を含む本件発明10は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

11)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1を「第一の材料は、0.3?1.6×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明11’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明11’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「第一の材料は、0.3?1.6×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における第一の材料を、止め輪の下部の部分として機能するに好ましい機械的特性を特定すること、また、当該機械的特性として弾性率を選ぶことは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明11’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明11’を含む本件発明11は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

12)本件発明12について
本件発明12は、本件発明1を「前記下部の部分は、厚さが研磨される基板より厚い」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明12’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明12’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は、厚さが研磨される基板より厚い」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における止め輪の下部の部分の必要な厚さを特定することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明12’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明12’を含む本件発明12は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

13)本件発明13について
本件発明13は、本件発明1を「前記下部の部分は、厚さが約100ミルから400ミルの間である」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明13’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明13’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は、厚さが約100ミルから400ミルの間である」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における止め輪の下部の部分の必要な厚さを特定することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明13’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明13’を含む本件発明13は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

14)本件発明14について
本件発明14は、本件発明1を「前記第二の材料は、金属である」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明14’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明14’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第二の材料は、金属である」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における止め輪の上部の部分の構成する第二の材料は、止め輪の下部の部分を十分に保定するものであるから、金属等高い剛性を有する材料とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明14’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明14’を含む本件発明14は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

15)本件発明15について
本件発明15は、本件発明1を「前記第二の材料は、ステンレス、アルミニウム、モリブデンからなる群から選択される金属である」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明15’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明15’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第二の材料は、ステンレス、アルミニウム、モリブデンからなる群から選択される金属である」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における止め輪の上部の部分の構成する第二の材料は、止め輪の下部の部分を十分に保定するものであるから、ステンレス、アルミニウム、モリブデン等高い剛性を有する材料とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明15’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明15’を含む本件発明15は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

16)本件発明16について
本件発明16は、本件発明1を「前記第二の材料は、セラミックスである」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明16’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明16’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第二の材料は、セラミックスである」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における止め輪の上部の部分の構成する第二の材料は、止め輪の下部の部分を十分に保定するものであるから、セラミックス等高い剛性を有する材料とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明16’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明16’を含む本件発明16は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

17)本件発明17について
本件発明17は、本件発明1を「前記第二の材料は、10?50×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明17’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明17’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第二の材料は、10?50×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における第二の材料を、止め輪の上部の部分として機能するに好ましい機械的特性を特定すること、また、当該機械的特性として弾性率を選ぶことは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明17’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明17’を含む本件発明17は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

18)本件発明18について
本件発明18は、本件発明1を「前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約10倍から100倍の弾性率を有する」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明18’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明18’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約10倍から100倍の弾性率を有する」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における第二の材料を、止め輪の上部の部分として機能するに好ましい機械的特性を特定すること、また、当該機械的特性を第一の材料の弾性率に対する比とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明18’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明18’を含む本件発明18は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

19)本件発明19について
本件発明19は、本件発明1を「前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約50倍の弾性率を有する」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明19’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明19’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約50倍の弾性率を有する」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における第二の材料を、止め輪の上部の部分として機能するに好ましい機械的特性を特定すること、また、当該機械的特性を第一の材料の弾性率に対する比とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明19’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明19’を含む本件発明19は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

20)本件発明20について
本件発明20は、本件発明1を「前記上部の部分は、厚さが約300ミルから500ミルの間である」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明20’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明20’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記上部の部分は、厚さが約300ミルから500ミルの間である」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における止め輪の上部の部分の必要な厚さを特定することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明20’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明20’を含む本件発明20は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

21)本件発明21について
本件発明21は、本件発明1を「前記下部の部分は第一の弾性率を有し、前記上部の部分は第二の弾性率を有し、前記第二の弾性率は前記第一の弾性率より十分に大きいように選択されている」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明21’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明21’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は第一の弾性率を有し、前記上部の部分は第二の弾性率を有し、前記第二の弾性率は前記第一の弾性率より十分に大きいように選択されている」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、刊行物1記載の発明における第二の材料を、止め輪の上部の部分として機能するに好ましい機械的特性を特定すること、また、当該機械的特性を第一の材料の弾性率に対する比とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明21’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明21’を含む本件発明21は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

22)本件発明22について
本件発明22は、本件発明1を「前記下部の部分は、前記上部の部分に接着して取り付けられている」との事項を加えて限定した発明(以下、「本件発明22’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明22’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は、前記上部の部分に接着して取り付けられている」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、2つの部材を結合する手段として「接着」は従来周知であるから、刊行物1記載の発明において下部の部分を上部の部分に取り付ける手段を「接着」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明22’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明22’を含む本件発明22は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

23)本件発明23について
本件発明23は、本件発明22を「前記接着は、緩硬性(slow curing)エポキシである接着剤でなされている」との事項を加えて限定したものであるから、本件発明1を「前記下部の部分は、前記上部の部分に緩硬性(slow curing)エポキシである接着剤で接着して取り付けられている」との事項を加えて限定した発明発明(以下、「本件発明23’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明23’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は、前記上部の部分に緩硬性(slow curing)エポキシである接着剤で接着して取り付けられている」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、2つの部材を結合する手段としての「接着」、及び、接着剤としての「緩硬性(slow curing)エポキシ」は従来周知であるから、刊行物1記載の発明において、下部の部分を上部の部分に緩硬性(slow curing)エポキシである接着剤で接着して取り付けることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明23’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明23’を含む本件発明23は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

24)本件発明24について
本件発明24は、本件発明1を「前記下部の部分は、前記上部の部分に圧入されている」との事項を加えて限定した発明発明(以下、「本件発明24’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明24’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は、前記上部の部分に圧入されている」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、2つの部材を結合する手段として「圧入」することは従来周知であるから、刊行物1記載の発明において、下部の部分を上部の部分に圧入して取り付けることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明24’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明24’を含む本件発明24は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

25)本件発明25について
本件発明25は、本件発明1を「前記下部の部分は、前記上部の部分にねじを使用して接着して取り付けられている」との事項を加えて限定した発明発明(以下、「本件発明25’」という。)を含んでいる。
そこで、本件発明25’と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ハウジングとベースの間に配置される空間を有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記空間が配置される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、上部の部分と、を有する全体として環状の止め輪」の点で一致し、上記の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
前者は、「前記下部の部分は、前記上部の部分にねじを使用して接着して取り付けられている」のに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、2つの部材を結合する手段として「ねじ」及び「接着」は従来周知であるから、刊行物1記載の発明において、下部の部分を上部の部分にねじを使用して接着して取り付けることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明25’の作用効果は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本件発明25’を含む本件発明25は、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、4?25についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明2、3についての特許は、取消しの理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
化学的機械的研磨用の多層の止め輪を有するキャリア・ヘッド
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、
研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する下部の部分と、前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、上部の部分と、を有し、
前記上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。
【請求項2】化学的機械的研磨のために、ハウジング、ベース、ローディングチャンバを有するキャリア・ヘッドにおいて、前記ハウジングと前記ベースの間に前記ローディングチャンバが配置され、前記ローディングチャンバ内の圧力はポンプにより制御される、前記キャリア・ヘッドの止め輪であって、
前記キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、前記基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられており、前記止め輪が、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている、底部表面を有する環状の下部の部分と、前記第一の材料より剛性である第二の材料で作られている、キャリア・ヘッドのベースに接続される環状の上部の部分と、を有し、
前記上部の部分は、ボルトによってキャリア・ヘッドの前記ベースの外縁に固定されるようになっている全体として環状の止め輪。
【請求項3】キャリア・ヘッドが、ベースと、止め輪と、基板裏当て組立体とを含み、前記基板裏当て組立体が、支持構造、該支持構造をベースに接続している撓みダイアフラム、及び該支持構造に接続された可撓膜を有し、前記撓みダイアフラムの外縁が前記ベースと前記止め輪との間にクランプされ、前記撓みダイアフラムの内縁が前記支持構造の上部クランプと下部クランプとの間にクランプされ、前記ベースと、前記基板裏当て組立体との間にチャンバが形成され、該チャンバの加圧が、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜を下向きに押すようになっており、前記撓みダイアフラムを前記ベースと前記止め輪との間に加圧可能に封止してクランプするために、前記止め輪の前記上部の部分に、断面形状にして凹凸になっている部分が設けられている、請求項1記載の止め輪。
【請求項4】該底部表面に複数のチャネルを有する、請求項1?3の何れか1項記載の止め輪。
【請求項5】前記止め輪の上部の部分の外周部に、前記ベース下部と相補的関係にある、断面形状にしたときに段差状になる部分が設けられ、前記止め輪とベースとが嵌合するようになっている請求項1?4の何れか1項記載の止め輪。
【請求項6】前記第一の材料が、化学的機械的研磨プロセスに対して不活性である請求項1?5の何れか1項記載の止め輪。
【請求項7】前記第一の材料が、プラスチックである請求項1?6の何れか1項記載の止め輪。
【請求項8】前記第一の材料が、硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタート、ポリエーテル・エーテル・ケトン及びポリブチレン・テレフタートからなる群から選択される請求項1?7の何れか1項記載の止め輪。
【請求項9】前記第一の材料が、硫化ポリフェニレンである請求項1?8の何れか1項記載の止め輪。
【請求項10】前記第一の材料が、ショアーDスケールで約80から95の間のデュロメータ測定値を与える請求項1?9の何れか1項記載の止め輪。
【請求項11】第一の材料は、0.3?1.6×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する請求項1?10の何れか1項載の止め輪。
【請求項12】前記下部の部分は、厚さが研磨される基板より厚い請求項1?11の何れか1項記載の止め輪。
【請求項13】前記下部の部分は、厚さが約100ミルから400ミルの間である請求項1?12の何れか1項記載の止め輪。
【請求項14】前記第二の材料は、金属である請求項1?13の何れか1項記載の止め輪。
【請求項15】前記第二の材料は、ステンレス、アルミニウム、モリブデンからなる群から選択される金属である請求項1?14の何れか1項記載の止め輪。
【請求項16】前記第二の材料は、セラミックスである請求項1?13の何れか1項記載の止め輪。
【請求項17】前記第二の材料は、10?50×10^(6)ポンド/インチ^(2)の弾性率を有する請求項1?16の何れか1項記載の止め輪。
【請求項18】前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約10倍から100倍の弾性率を有する請求項1?17の何れか1項記載の止め輪。
【請求項19】前記第二の材料は、前記第一の材料の弾性率の約50倍の弾性率を有する請求項1?18の何れか1項記載の止め輪。
【請求項20】前記上部の部分は、厚さが約300ミルから500ミルの間である請求項1?19の何れか1項記載の止め輪。
【請求項21】前記下部の部分は第一の弾性率を有し、前記上部の部分は第二の弾性率を有し、前記第二の弾性率は前記第一の弾性率より十分に大きいように選択されている請求項1?20の何れか1項記載の止め輪。
【請求項22】前記下部の部分は、前記上部の部分に接着して取り付けられている請求項1?21の何れか1項記載の止め輪。
【請求項23】前記接着は、緩硬性(slow curing)エポキシである接着剤でなされている請求項22記載の止め輪。
【請求項24】前記下部の部分は、前記上部の部分に圧入されている請求項1?23の何れか1項記載の止め輪。
【請求項25】前記下部の部分は、前記上部の部分にねじを使用して接着して取り付けられている請求項1?24の何れか1項記載の止め輪。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【背景】
本発明は、全体として基板の化学的機械的研磨に関し、特に化学的機械的研磨装置用のキャリア・ヘッドに関する。
【0002】
集積回路は、導電層、半導電層あるいは絶縁層の連続的な堆積により基板、特にシリコンウェーハ、の上に通常形成される。各層が堆積された後に、各層は回路フィーチャーを作るためにエッチングされる。一連の層が順次堆積されエッチングされるにつれて、基板の外部すなわち最上部の表面、すなわち基板の露出した表面は、ますます非平坦になる。この非平坦な表面は、集積回路製造プロセスの光露光段階で問題を生ずる。したがって、周期的に基板の表面を平坦化する必要がある。
【0003】
化学的機械的研磨(CMP)は、一般に是認された平坦化の1つの方法である。この平坦化方法は、基板がキャリアあるいはポリシング・ヘッドの上に搭載されていることを通常必要とする。基板の露出した表面は、回転しているポリシング・パッドに対して設置される。ポリシング・パッドは、「標準の」あるいは固定研磨パッドのいずれであってもよい。標準のポリシング・パッドが耐久性のある粗い表面を有するのに対して、固定研磨パッドは収納媒体(containment media)に含まれる研磨粒子を有する。キャリア・ヘッドは、ポリシング・パッドに基板を押し付けるために、制御可能な負荷すなわち圧力を基板に加える。少なくとも1つの化学反応剤を有する研磨スラリーと、標準のパッドが使用される場合には研磨粒子が、ポリシング・パッドの表面に供給される。
【0004】
CMPプロセスの有効性は、その研磨速度により、また基板表面の仕上げ(小規模な粗さがないこと)と平面度(大規模なトポグラフィーがないこと)の結果により、測定することができる。研磨速度、仕上げ及び平面度は、パッドとスラリーの組み合わせ、基板とパッドの間の相対速度、及びパッドに対して基板を押し付ける力により決定される。
【0005】
CMPにおいて再発している課題は、いわゆる「端部効果」、すなわち、研磨される基板の端縁が基板の中心とは異なる速度になる傾向である。端部効果は、基板外辺部、たとえば、200ミリ・ウェーハの最外部の5から10ミリメートルにおいて、オーバーポリシング(基板からの材料の除去が多すぎる)を通常もたらす。オーバーポリシングは、基板の総合的な平面度を減少させ、基板の端縁を集積回路製造用には不適当にして、プロセス歩留りを減少させる。
【0006】
【概要】
1つの態様において、本発明は化学的機械的研磨用のキャリア・ヘッドに重点を置いている。キャリア・ヘッドは、基板マウンティング面及び研磨の間にマウンティング面の下に基板を維持するための止め輪を有する。止め輪は、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られている底部表面を有する下部の部分、ならびに、第一の材料より剛性である第二の材料で作られている上部の部分を有する。
【0007】
本発明の具体化例は下記を含むことが可能である。第一の材料は、化学的機械的研磨プロセスに対してほぼ不活性であるプラスチック、たとえば、硫化ポリフェニレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリエーテル・エーテル・ケトン、あるいは、ポリブチレン・テレフタレートとすることができる。第二の材料は金属、たとえば、スチール、アルミニウム、またはモリブデン、あるいはセラミックスとすることができる。下部の部分は、研磨される基板より厚く、たとえば、約100から400ミルの間にすることができる。第一の材料は、ショアーDスケールで約80から95の間のデュロメーター測定値を与えることができる。第二の材料は、第一の材料の弾性率の約10倍から100倍、たとえば、50倍を有することができる。下部の部分は、上部の部分に対して、たとえば緩硬性エポキシを使用して接着して取り付けられてもよく、あるいは圧入されてもよい。
【0008】
本キャリア・ヘッドの他の態様において、下部の部分は第一の弾性率を有する第一の材料で作られ、上部の部分は第二の弾性率を有する第二の材料で作られており、また第二の弾性率は、研磨の間に止め輪の下部表面の偏向を実質的に防止するように、第一の弾性率より十分に大きいように選択されている。
【0009】
本キャリア・ヘッドの他の態様において、下部の部分は第一の弾性率を有する第一の材料で作られ、上部の部分は第二の弾性率を有する第二の材料で作られており、また第二の弾性率は、止め輪がキャリア・ヘッドに係合される止め輪の下部表面の変形を実質的に防止するように、第一の弾性率より十分に大きいように選択されている。
【0010】
他の態様において、本発明は、基板用のマウンティング面を有するキャリア・ヘッドのための止め輪に重点を置いている。止め輪は、研磨の間にポリシング・パッドと接触するための底部表面を有し、化学的機械的研磨プロセスにおいて不活性である第一の材料で作られている全体として環状の下部の部分、ならびに、下部の部分に係合されており、第一の材料より剛性である第二の材料で作られている全体として環状の上部の部分を有する。
【0011】
他の態様において、回転可能なポリシング・パッドと、ポリシング・パッドの上にスラリーを分配するためのスラリー供給源と、基板マウンティング面及び研磨の間にマウンティング面の下に基板を維持するための止め輪を有するキャリア・ヘッドを有する化学的機械的研磨装置に、本発明は重点を置いている。止め輪は、研磨の間にポリシング・パッドと接触し、第一の材料で作られた下部の部分、ならびに、第一の材料より剛性である第二の材料で作られた上部の部分を有する。
【0012】
本発明の利点には下記を含むことが可能である。端部効果は減少し、結果として基板の平面度及び仕上げは改良される。
【0013】
本発明の他の利点及び特徴は、図面及び特許請求の範囲を含む以下の説明から明白であろう。
【0014】
【詳細説明】
図1を参照すると、1つ以上の基板10が化学的機械的研磨(CMP)装置20により研磨される。同種のCMP装置の記述は、米国特許第5,738,574号に見ることができ、その開示の全体は参考文献として本明細書に含まれる。
【0015】
CMP装置20は、その上に搭載されたテーブル・トップ23及び除去可能な上部外側カバー(図示せず)を有する下部機械ベース22を有する。テーブル・トップ23は、一連のポリシング・ステーション25a、25b及び25c、ならびに基板のローディング及びアンローディングのためのトランスファー・ステーション27を支持している。トランスファー・ステーション27は、3つのポリシング・ステーション25a、25b及び25cと共に、全体として正方形の配置を形成してもよい。
【0016】
各ポリシング・ステーション25a-25cは、その上にポリシング・パッド32を設置した回転可能なプラテン30を有する。基板10が8インチ(200ミリ)あるいは12インチ(300ミリ)の直径のディスクであれば、プラテン30及びポリシング・パッド32は、それぞれ約20インチあるいは30インチの直径である。プラテン30は、機械ベース22の中に配置されたプラテン駆動モータ(図示せず)に接続されることができる。多くの研磨プロセスに対して、プラテン駆動モータは、毎分30から200回転でプラテン30を回転させるが、より低速あるいは高速の回転速度が使用されてもよい。各ポリシング・ステーション25a-25cは、ポリシング・パッドの研磨条件を維持するために、対応するパッド・コンディショナー装置40をさらに有してもよい。
【0017】
反応剤(たとえば、酸化物研磨用の脱イオン水)及び化学反応触媒(たとえば、酸化物研磨用の水酸化カリウム)を含むスラリー50は、スラリー/リンス共用アーム52により、ポリシング・パッド32の表面に供給されてもよい。ポリシング・パッド32が標準のパッドであれば、スラリー50は研磨粒子(たとえば、酸化物研磨用の二酸化珪素)をさらに含んでもよい。通常、ポリシング・パッド32の全体をカバーし、濡らすために十分なスラリーが供給される。スラリー/リンスアーム52は、各ポリシング・コンディショニング・サイクルの終了と共に、ポリシング・パッド32に高圧リンスを供給するいくつかのスプレーノズル(図示せず)を有する。
【0018】
カルーセル支持プレート66及びカバー68を有する回転可能なマルチヘッド・カルーセル60は、下部機械ベース22の上に設置されている。カルーセル支持プレート66は、センター・ポスト62により支持され、センター・ポスト62の上で、機械ベース22の中に配置されたカルーセル・モータ組立体により、カルーセル軸64の周りに回転される。マルチヘッド・カルーセル60は、カルーセル支持プレート66の上にカルーセル軸64の周囲に等角度で搭載された4つのキャリア・ヘッド装置70a、70b、70c及び70dを有する。キャリア・ヘッド装置の3つは、基板を受け、保持し、ポリシング・ステーション25a-25cのポリシング・パッドに基板を押し付けることにより基板を研磨する。キャリア・ヘッド装置の1つは、トランスファー・ステーション27から基板を受け取り、トランスファー・ステーション27へ基板を送出する。カルーセル・モータは、キャリア・ヘッド装置70a-70dとそれに取り付けられた基板を、ポリシング・ステーションとトランスファー・ステーションの間で、カルーセル軸64の周囲に旋回させることができる。
【0019】
各キャリア・ヘッド装置70a-70dは、研磨あるいはキャリア・ヘッド100を有する。各キャリア・ヘッド100は、それ自身の軸の周囲を独立して回転し、カルーセル支持プレート66の中に形成されたラジアル・スロット72の中を独立して横に往復する。キャリア駆動軸74は、キャリア・ヘッド回転モータ76(カバー68の4分の1を取り除いて示す)をキャリア・ヘッド100に接続するために、スロット72を通して延びている。各ヘッドに対して、1つのキャリア駆動軸とモータがある。各モータ及び駆動シャフトは、キャリア・ヘッドを横に往復させるために、半径方向駆動モータによりスロットに沿って直線的に駆動されるスライダ(図示せず)の上に支持されていてもよい。
【0020】
実際の研磨の間は、キャリア・ヘッドの中の3個、たとえば、キャリア・ヘッド装置70a-70cは、各ポリシング・ステーション25a-25cの上に位置している。各キャリア・ヘッド100は、基板を下降させてポリシング・パッド32に接触させる。一般的には、キャリア・ヘッド100は、ポリシング・パッドに対して所定の位置に基板を保持し、基板の裏面にわたって力を分散させる。キャリア・ヘッドは、駆動シャフトから基板へのトルクも伝達する。
【0021】
図2において、キャリア・ヘッド100は、ハウジング102、ベース104、ジンバル機構106、ローディング・チャンバ108、止め輪110、及び基板裏当て組立体112を有する。同種のキャリア・ヘッドの記述は、Zuniga他による、1996年11月8日出願の、本発明の被譲渡人に譲渡された、化学的機械的研磨装置用の可撓膜を有するキャリア・ヘッドと題する、米国特許出願番号第08/745,670号に見ることができ、その開示の全体は参考文献として本明細書に含まれる。
【0022】
ハウジング102は、研磨の間ポリシング・パッドの表面にほぼ垂直の回転軸107の周囲に回転軸107と共に研磨中に回転するように、駆動シャフト74に接続することができる。ローディング・チャンバ108は、負荷すなわち下方への圧力をベース104に加えるように、ハウジング102とベース104の間に配置されている。ポリシング・パッド32に対するベース104の垂直の位置も、ローディング・チャンバ108により制御される。
【0023】
基板裏当て組立体112は、支持構造114、支持構造114をベース104に接続している撓みダイアフラム116、及び支持構造114に接続された可撓性の部材あるいは膜118を有する。可撓膜118は、基板に対してマウンティング面120を用意するために、支持構造114の下に延びている。ベース104と基板裏当て組立体112の間に位置するチャンバ190の加圧は、基板をポリシング・パッドに対して押し付けるように、可撓膜118を下向きに押す。
【0024】
ハウジング102の形状は、研磨される基板の円形の輪郭に対応するために、通常円形である。円筒状のブシュ122をハウジングを介して垂直の導孔124に適合させることができ、キャリア・ヘッドの空気制御のために、2つの流路126及び128がハウジングを介して延びることができる。
【0025】
ベース104は、ハウジング102の下に位置する全体として環状の胴部である。ベース104は、アルミニウム、ステンレス鋼あるいは繊維により強化されたプラスチックのような剛性の材料で形成することができる。流路130はベースを介して延びることが可能であり、2つの取付具132及び134は、流路128を流路130に流体的に結合するために、ハウジング102とベース104の間に可撓管を接続するための取付点を用意することができる。
【0026】
ブラダー144を定めるために、弾性のある可撓膜140をクランプ・リング142によってベース104の下部表面に取り付けることができる。クランプ・リング142は、ねじ、あるいはボルト(図示せず)によって、ベース104に固定することができる。流体たとえば空気のようなガスをブラダーの中にあるいはブラダーから導き、それによって支持構造114及び可撓膜118に対する下方への圧力を制御するために、第一のポンプ(図示せず)をブラダー144に接続することができる。
【0027】
ジンバル機構106は、ポリシング・パッドの表面にベースがほぼ平行しているように、ベース104がハウジング102に対して枢動することを可能にする。ジンバル機構106は、円筒状のブシュ122及びベース104に固定されている撓みリング152を介して流路154に適合しているジンバル・ロッド150を有する。ジンバル・ロッド150は、ベース104に垂直の動きを与えるために流路154に沿って垂直に滑動することができるが、ハウジング102に対するベース104のどのような横の動きも防止する。
【0028】
ローリング・ダイアフラム160の内縁は、インナー・クランプ・リング162によりハウジング102にクランプされることができ、アウター・クランプ・リング164は、ローリング・ダイアフラム160の外縁をベース104にクランプすることができる。したがって、ローリング・ダイアフラム160は、ローディング・チャンバ108を定めるために、ハウジング102とベース104の間のスペースを封止する。ローリング・ダイアフラム160は、全体として環状の厚さ60ミルのシリコン薄板でもよい。第二のポンプ(図示せず)は、ローディング・チャンバ内の圧力とベース104に印加される負荷を制御するために、ローディング・チャンバ108に流体的に接続されることができる。
【0029】
基板裏当て組立体112の支持構造114は、ベース104の下に配置されている。支持構造114は、サポート・プレート170、下部環状クランプ172及び上部環状クランプ174を有する。サポート・プレート170は、それを通過する複数のアパーチャー176を有する全体としてディスク形の剛性の部材とすることができる。さらに、サポート・プレート170は、下向きに突出しているリップ178を、その外縁に有してもよい。
【0030】
基板裏当て組立体112の撓みダイアフラム116は、全体として平坦な環状の環である。撓みダイアフラム116の外縁は、ベース104と止め輪110の間にクランプされ、撓みダイアフラム116の内縁は、下部クランプ172と上部クランプ174の間にクランプされている。撓みダイアフラム116は可撓性であり、弾性であるが、半径方向及び接線方向には剛性でもよい。撓みダイアフラム116は、ネオプレンのようなゴム、ナイロン(商標名)あるいはノーメックス(商標名)のようなエラストマーを塗布した織物、プラスチック、あるいは、ガラスファイバーのような複合材で作成することができる。
【0031】
可撓膜118は、クロロプレンあるいはエチレン・プロピレン・ゴムのような可撓性で弾性のある材料で形成された全体として円形の薄板である。可撓膜118の一部は、サポート・プレートと下部クランプ172の間にクランプされるように、サポート・プレート170の端縁の周りに延びている。
【0032】
可撓膜118、支持構造114、撓みダイアフラム116、ベース104、及びジンバル機構106の間の封止された容積は、加圧可能なチャンバ190を定めている。第三のポンプ(図示せず)は、チャンバ内の圧力したがって基板上の可撓膜の下方への力を制御するために、チャンバ190に流体的に接続されることができる。
【0033】
止め輪110は、ベース104の外縁に、たとえば、ボルト194(図2の断面図に一方のみを示す)によって固定された全体として環状の環とすることができる。流体がローディング・チャンバ108に送り込まれ、ベース104が下向きに押されると、止め輪110も、ポリシング・パッド32に負荷を加えるように下向きに押される。止め輪110の内部表面188は、可撓膜118のマウンティング面120と連係して、基板収容陥凹部192を定める。止め輪110は、基板が基板収容陥凹部から逃れるのを防止する。
【0034】
図3において、止め輪110は、ポリシング・パッドに接触することができる底部表面182を有する環状の下部の部分180、及び、ベース104に接続された環状の上部の部分184を含む複数の部分を有する。下部の部分180は、接着層186を使用して上部の部分184に接着されてもよい。
【0035】
下部の部分は、CMPプロセスで化学的に不活性な材料で形成される。さらに、止め輪に対する基板端部の接触が基板の欠損あるいは亀裂を生じないように、下部の部分180は十分に弾性であるべきである。他方、下部の部分180は、止め輪に対する下方への圧力が下部の部分180を基板収容陥凹部192の中に突き出させるほど弾性であるべきではない。具体的にいうと、下部の部分180の材料は、ショアーDスケールで約80-95のデュロメーター測定値を有することができる。一般に、下部の部分180の材料の弾性率は、約0.3-1.0×10の6乗ポンド毎平方インチの範囲とすることができる。下部の部分はさらに耐久性であるべきであり、低い摩耗率を有するべきである。しかし、下部の部分180が徐々に摩耗することは、基板端部が内部表面188の中に深いグループを切ることを防止することが明らかなので、許容できる。たとえば、下部の部分180は、米国インディアナ州、エヴァンズビルのDSMエンジニアリング・プラスチックからテクトロン(商標名)の商品名で入手できる硫化ポリフェニレン(PPS)のようなプラスチックで作ることができる。米国デラウエア州ウィルミントンのデュポンから入手できるデルリン(商標名)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)あるいは、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)あるいは、やはりデュポンから入手できるZYMAXX(商標名)のような複合材、のような他のプラスチックも適当であるかもしれない。
【0036】
下部の部分180の厚さT_(1)は、基板10の厚さT_(s)より大きくあるべきである。具体的にいうと、下部の部分は、基板がキャリア・ヘッドにより固定されているときに、基板が接着層と擦れあわないほどに、十分厚くあるべきである。他方、下部の部分が厚すぎれば、止め輪の底部表面は、下部の部分の可撓性の性質による変形を受けやすいであろう。下部の部分180の初期の厚さは、約200から400ミル(溝の深さが100から300ミル)とすることができる。溝が摩耗したときに、下部の部分は交換することが可能である。したがって、下部の部分は約100から400ミルの間の厚さT_(1)を有することになる。止め輪が溝を有しなければ、残りの厚さが基板の厚さとほぼ等しくなったときに、下部の部分は交換することができる。
【0037】
下部の部分180の底部表面は、ほぼ平坦であってもよく、あるいは、止め輪の外側から基板へのスラリーの搬送を容易にするために、複数のチャネルを有してもよい。
【0038】
止め輪110の上部の部分184は、金属、たとえば、ステンレス鋼、モリブデン、あるいはアルミニウム、あるいはセラミックス、たとえば、アルミナ、あるいは他の代表的な材料のような、剛性の材料で作られている。上部の部分の材料は、約10-50×10の6乗ポンド毎平方インチの弾性率、すなわち下部の部分の材料の弾性率の約10倍から100倍、を有することができる。たとえば、下部の部分の弾性率は約0.6×10の6乗ポンド毎平方インチであってもよく、上部の部分の弾性率は約30×10の6乗ポンド毎平方インチであってもよく、したがって比率は約50対1である。上部の部分184の厚さT_(s)は、下部の部分182の厚さT_(1)より大きくあるべきである。具体的にいうと、上部の部分は、約300-500ミルの厚さT_(2)を有することができる。
【0039】
接着層186は、2液性の緩硬性エポキシでもよい。緩硬性とは、エポキシが接着するまでに数時間から数日程度かかることを通常示す。エポキシは、米国ジョージア州、シャンブリーのマグノリア・プラスチックから入手できるマグノボンド6375(商標名)でもよい。あるいは、上部の部分にねじを使用して接着して取り付けられる、あるいは圧入される代わりに。
【0040】
止め輪の底部表面の平面度が端部効果に関連していることは明白である。具体的にいうと、底部表面が非常に平坦であれば、端部効果は減少する。止め輪が比較的可撓性であれば、たとえばボルト194により止め輪がベースに係合される所で、止め輪は変形する恐れがある。この変形は、非平坦な底部表面を作り、その結果端部効果を増加させる。止め輪はキャリア・ヘッド上に設置後にラップ仕上げまたは機械加工することができるが、ラッピングは、基板を損傷しあるいはCMPプロセスを汚染する恐れがある破片を底部表面に埋め込む傾向があり、機械加工は多くの時間を必要として不便である。他方、ステンレス鋼の環のような完全に剛性の止め輪は、亀裂に基板を生じ、あるいはCMPプロセスを汚染するおそれがある。
【0041】
本発明による止め輪を使用すると、止め輪110の上部の部分184の剛性は、全体がPPSのような可撓性の材料で作られた止め輪と比較して、止め輪の全体の曲げ剛性を、たとえば30-40倍増加させる。剛性の上部の部分によって与えられる増加した剛性は、ベースに止め輪を取り付けることによるこの変形を減少あるいは除去し、その結果端部効果を減少させる。さらに、止め輪は、キャリア・ヘッドに固定された後に、ラップ仕上げされる必要がない。さらに、PPSの下部の部分はCMPプロセスで不活性であり、基板端部の欠損あるいは亀裂を防止するために十分に弾性である。
【0042】
本発明による止め輪の増加した剛性の他の利点は、パッドの圧縮性に対する研磨プロセスの感度を減少させることである。どのような特定の理論にも限定されずに、特に可撓性の止め輪について、端部効果に対する1つの実現可能な寄与は、止め輪の「偏向」と呼ぶことができるものである。具体的にいうと、キャリア・ヘッドの立ち下がり区間における止め輪の内部表面上の基板端部の力は、止め輪を偏向させる、すなわち、ポリシング・パッドの表面に平行な軸の周りに僅かに局部的にねじる恐れがある。これは止め輪の内径をポリシング・パッドの中に、より深く押し付け、ポリシング・パッドの上に生じる圧力を増加させ、ポリシング・パッドの材料を「流出させ」、基板の端縁に向かって排出させる。ポリシング・パッドの材料の排出は、ポリシング・パッドの弾性特性に依存する。したがって、パッドの中に偏向することができる比較的可撓性の止め輪は、パッド材料の弾性特性に対して研磨プロセスを非常に高感度にする。しかし、剛性の上部の部分により与えられる増加した剛性は、止め輪の偏向を減少させ、その結果、パッドの変形、パッドの圧縮性に対する感度、及び端部効果を減少させる。
【0043】
本発明を多くの実施例に関して説明した。しかし、本発明は図に示し説明した実施例に制限されるものではない。より正確に言えば、本発明の範囲は添付した特許請求の範囲により定められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
化学的機械的研磨装置の分解斜視図である。
【図2】
本発明によるキャリア・ヘッドの概略断面図である。
【図3】
止め輪を示す図2のキャリア・ヘッドの拡大図である。
【符号の説明】
10 基板20 化学的機械的研磨装置25a、25b、25c ポリシング・ステーション27 トランスファー・ステーション30 プラテン32 ポリシング・パッド40 パッド・コンディショナー装置50 スラリー60 マルチヘッド・カルーセル70a、70b、70c、70d キャリア・ヘッド装置100 キャリア・ヘッド110 止め輪180 下部の部分187 上部の部分。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-05-20 
出願番号 特願2000-551919(P2000-551919)
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (B24B)
P 1 651・ 16- ZD (B24B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 和田 雄二  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
岡野 卓也
登録日 2003-05-23 
登録番号 特許第3431599号(P3431599)
権利者 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
発明の名称 化学的機械的研磨用の多層の止め輪を有するキャリア・ヘッド  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 山田 行一  
代理人 鈴木 康仁  

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