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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800067 審決 特許
無効2007800046 審決 特許
無効2007800058 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  G21K
管理番号 1171277
審判番号 無効2007-800068  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-03 
確定日 2007-12-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3059348号発明「誘電体バリア放電装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3059348号の請求項1、3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3059348号の請求項1?4に係る発明についての出願は、平成6年11月25日に特許出願され、平成12年4月21日にその発明について特許権の設定登録がなされたものである。

(2)請求人は、平成19年4月3日に請求項1及び3に係る発明の特許に対して特許無効審判を請求した。

(3)被請求人は、平成19年6月21日に答弁書及び訂正請求書を提出し、また、請求人は、同年7月30日に弁駁書を提出し、その後、被請求人は同年9月5日に答弁書を提出した。

2.訂正の可否について
被請求人は、平成19年6月21日付けの訂正請求書を提出して、本件特許明細書の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求しているので、まず、この訂正の可否について検討する。

(1)本件訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。

(a)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の
「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、」

「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、」
と訂正する。

(b)訂正事項b
本件特許明細書の段落【0012】の
「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、」

「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、」
と訂正するとともに、段落【0016】の
「各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)は、その出力振動波の位相において互いに非同期であり、かつ独立に出力電力調整が可能である。」

「各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)は、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ独立に出力電力調整が可能である。」
と訂正する。

(c)訂正事項c
本件特許明細書の段落【0018】の
「しかし、独立な発振周波数決定手段が、例えば精密高安定な水晶発振器を利用したものでない限り、一般に全ての各給電装置(S,S_(1),S_(2),・・・・)の発振周波数は厳密には互いに異なっているため、意識的に発振周波数を互いにずらすことをしなくても前記電磁ノイズ放射の影響は低減されるが、効果的な電磁ノイズ放射低減を行いたい場合は確実に各発振周波数が少しづつ差を有するように設定しておくほうが良い。」
を削除する。

(2)訂正の可否についての判断
(a)訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項である「出力振動波」について、その「発振周波数を異ならせて設定し、」という限定を付加するものであって、平成6年改正前特許法(以下「旧法」という。)第134条第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、旧法第134条第2項ただし書に適合し、特許法第134条の2第5項で準用する旧法第126条第2項の規定に適合する。
さらに、特許無効審判の請求がされていない請求項2及び請求項4について検討すると、前記訂正事項aによる訂正後の請求項2及び請求項4に係る発明は出願の際、独立して特許を受けることができるものであるから、前記訂正事項aは、特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する旧法第126条第3項の規定に適合する。

(b)訂正事項bは、前記訂正事項aによる特許請求の範囲の訂正に応じて、訂正前の請求項1に係る発明に対応する段落【0012】、段落【0016】の記載を、訂正後の請求項1の記載に整合させるものであるから、旧法第134条第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、旧法第134条第2項ただし書に適合し、特許法第134条の2第5項で準用する旧法第126条第2項の規定に適合する。

(c)訂正事項cは、前記訂正事項aによる特許請求の範囲の訂正に応じて、訂正後の請求項1に係る発明についての詳細な説明を整合させるものであり、旧法第134条第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、旧法第134条第2項ただし書に適合し、特許法第134条の2第5項で準用する旧法第126条第2項の規定に適合する。

(3)訂正の可否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、旧法第134条第2項ただし書に適合するものであり、かつ、特許法第134条の2第5項で準用する旧法第126条第2項及び第3項の規定にも適合するものである。
よって、前記結論のとおり、訂正を認める。

3.本件発明
本件特許の請求項1及び3に係る発明(以下「本件発明1」、「本件発明3」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された次のとおりのものにある。

本件発明1
「誘電体バリア放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)があって、前記放電用ガスに放電現象を誘起せしめるための一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうちの少なくとも一方と前記放電用ガスの間に誘電体(D,D_(1),D_(2),‥‥)が介在する構造を有する複数の誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)と、
前記各誘電体バリア放電ランプの前記一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)に交流の高電圧を印加するための給電装置とを有する誘電体バリア放電装置において、
前記誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の各々に対応して、各1個の給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が設けられているものであって、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、前記各誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の消費電力バランスを任意に調整可能としたことを特徴とする誘電体バリア放電装置。」

本件発明3
「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の周波数が、互いに平均周波数値の2%以上異なるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の誘電体バリア放電装置。」

4.請求人の主張
(1)請求人は、本件特許の請求項1及び3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね次の主張をしている。

(a)本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下「無効理由1」という。)。

(b)また、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下「無効理由2」という。)。

(c)本件請求項3に係る特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下「無効理由3」という。)。

(d)また、本件請求項3に係る特許発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下「無効理由4」という。)。

(e)さらに、本件請求項1の特許発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第13号証に記載された発明に基づき、或いは甲第1号証乃至甲第3号証及び甲第13号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)そして、請求人は、証拠方法として次の甲第1号証?甲第11号証を提出している。
甲第1号証:特開平6-312130号公報

甲第2号証:特開平6-197555号公報

甲第3号証:特開平6-89788号公報

甲第4号証:「改訂新版 放電ハンドブック」 電気学会発行
昭和62年1月15日再版六刷発行

甲第5号証:「新村出編 広辞苑 第五版」 岩波書店発行
2005年1月25日第五版第三刷発行

甲第6号証:実開平5-53196号公報

甲第7号証:特開平5-135895号公報

甲第8号証:実開平2-108297号公報

甲第9号証:実開平3-124495号公報

甲第10号証:特開平6-267684号公報

甲第11号証:特開昭58-176631号公報

また、請求人は、他の証拠として、平成19年7月30日付け弁駁書において甲第12号証(特開2006-269273号公報)、甲第13号証(特開平5-205879号公報)を提出している。

5.被請求人の主張
(1)一方、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね次の主張をしている。

(2)無効理由1に対して
次の理由(a)?(c)により、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第3号証?甲第11号証に記載される周知の基礎技術を勘案しても、甲第1号証、甲第2号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(a)甲第1号証には、誘電体バリア放電ランプへの給電装置の構成については何ら記載されておらず、本件請求項1の構成(エ)「誘電体バリア放電ランプの各々に対応して、各1個の給電装置が設けられている」構成について何ら記載されていない。
甲第2号証に記載された発明は、誘電体バリア放電ランプに関するものではない。
誘電体バリア放電ランプではない一般の放電ランプ、例えば甲第2号証の冷陰極管、甲第6号証や甲第7号証の蛍光ランプは、回路構成上、特別な工夫を図らない限り、1つの給電装置で複数の放電ランプを点灯させることはできない。つまり、一般の放電ランプは、複数の放電ランプがあった場合は、それぞれに対応して、各1個の給電装置を設けるという構成が一般的である。これは、一般の放電ランプは、一つの給電回路に複数のランプを並列接続して点灯させようとしても、個々のランプの点灯特性が若干異なるため、どちらか一方のランプが点灯すると、他方のランプに高電圧がかからなくなり、他方のランプが点灯しなくなるためである。
一方、誘電体バリア放電ランプは、放電を開始してもランプ電圧が低下せず、他のランプに電圧がかからなくなることがないため、回路構成上の特別な工夫を図ることなく、簡単に1つの給電装置で複数のランプを点灯させることが可能である。
従って、複数の誘電体バリア放電ランプに個々に対して、各1個の給電装置を設けるという構成は、コスト高や、部品点数の増加などの要因になるため、普通は、わざわざ採用しない。
本件特許は、通常、1つの給電装置で複数のランプを点灯させるように構成される誘電体バリア放電装置において、あえて、複数の誘電体バリア放電ランプの個々に対応させて各1個の給電装置を設けるという構成を採用することにより、必要な領域の光照射エネルギー密度の均一性または可制御性の問題を改善したものであり、誘電体バリア放電ランプ以外の一般の放電ランプにおいて、ランプの個々に対応して各1個の給電装置を設けるという構成が周知の基礎技術として存在するからといって、誘電体バリア放電ランプにおいて、当該技術を採用することが容易であるとは必ずしもいえない。

(b)本件特許は、「各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期とした」ことに特徴をもつものであり、これにより電磁ノイズの放射電力スペクトル分布を広く拡散させることができる。甲第1号証、甲第2号証には、この点について何ら記載されていないばかりか、甲第3号証?甲第11号証を参照しても、この点について何ら記載されていない。
請求人が主張するように、交流電源を設けた場合、各交流電源同士の出力振動波の周波数は互いにばらつきが生ずる可能性はある。しかし、このばらつきは、使用した部品等に応じて定まるものであり、そのばらつきの程度は様々であって、大きくばらつくこともあるし、またほとんどばらつかない場合もあり、必ずしも所望の周波数のばらつきにはならない。
これに対し、本件特許においては、出力振動波の発振周波数の設定により、電磁ノイズの放射電力スペクトル分布を所望のものとすることができる。

(c)甲第1号証の段落0012の記載は一般論としてランプの入力電力を調整することにより、ランプから放射される紫外線の量を調整できることを述べたものにすぎず、ランプの出力電力を調整可能に構成することを述べたものでないと解される。
甲第1号証に記載のものは段落0012の記載等から見てランプ配置などにより光照射エネルギー密度の均一化を図っているものと解され、本件特許のように「各給電装置が独立に出力電力調整可能であることによって、各誘電体バリア放電ランプの消費電力バランスを任意に調整可能とする」ものではない。
以上のように甲第1号証には、本件特許の構成(カ)「各給電装置が、独立に出力電力調整可能であることによって、各誘電体バリア放電ランプの消費電力バランスを任意に調整可能としたこと」について何ら記載されていないばかりか、示唆もされていない。
甲第2号証、甲第11号証に記載されるランプは、誘電体バリア放電ランプではない一般の放電ランプである。一般の放電ランプにおいて、ランプの個々に対応して各1個の給電装置を設け、各ランプの消費電力バランスを任意に調整可能にすることが周知の基礎技術として存在するからといって、誘電体バリア放電ランプにおいて、当該技術の採用は、当業者が容易になし得たことであるとすることは出来ない。

(3)無効理由2に対して
次の理由(a)?(c)により、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第4号証?甲第11号証に記載される周知の基礎技術を勘案しても、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(a)甲第3号証には、本件請求項1の(オ’)「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、」については記載されていない。
甲第3号証に記載のものにおいては、非同期ではあるものの、各インバータ(各給電装置に対応)は同一の周波数(30kHz程度)で駆動される。このためリップル電流を小さくすることはできるものの、インバータの駆動周波数が同一であるため、電磁ノイズがその特定の周波数にて協調的に放射される。
すなわち、甲第3号証のものにおいては電磁ノイズがその特定の周波数で放射され、本件特許のように、その放射電力スペクトル分布において電磁ノイズが広く拡散し、全体として、低い電磁ノイズ放射水準に抑えられるという作用効果を得ることができない。

(b)甲第2号証に記載されるランプは、誘電体バリア放電ランプではない一般の放電ランプであり、誘電体バリア放電ランプ以外の一般の放電ランプにおいて、ランプの個々に対応して各1個の給電装置を設け、各ランプの消費電力バランスを任意に調整可能にすることが周知の基礎技術として存在するからといって、誘電体バリア放電ランプにおいて、当該技術の採用は、当業者が容易になし得たことであるとすることは出来ない。

(c)甲第3号証には、「誘電体バリア放電ランプの各々に対応して、各1個の給電装置を設ける」構成が記載されているものの、「各給電装置が、独立に出力電力調整可能であることによって、各ランプの消費電力バランスを任意に調整可能とする」ことについては何ら記載されていない。

(4)無効理由3、4に対して
本件特許の請求項1の発明が甲第1号証?甲第3号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明できたものではない以上、請求項1の従属項である請求項3の発明も、甲第1号証?甲第3号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明できたものではない。

(5)さらに、被請求人は、平成19年6月21日付け訂正請求書において、訂正前の請求項1の記載が「[1]複数電源の発振周波数は同じで、各発振周波数の位相が異なる実施形態」および「[2]複数電源の発振周波数を同じ値になるように設定したが、発振器の個体差により結果的に各発振器の発振周波数が異なった値になる実施形態」を含むと解釈される可能性のある記載となっていたため、各給電装置の出力振動波の発振周波数を異ならせて設定することを限定することにより、上記[1],[2]の実施形態を本件特許の権利範囲から積極的に除外し、上記[1],[2]の実施形態が本件特許に含まれないことを明確にしたものである旨を主張している。

6.甲各号証の記載事項
請求人が提出した甲各号証のうちの甲第1号証及び甲第2号証には、それぞれ、次の事項が記載されている。

(1)甲第1号証(特開平6-312130号公報)の記載事項
甲第1号証には、図1?図3とともに以下の事項が記載されている。

(a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、大面積の被処理物を均一に、かつ高速で洗浄出来る洗浄方法を提供することである。」

(b)「【0009】
【実施例】本発明の実施例である半導体ウエハの洗浄方法の概略図を図1に示す。洗浄ダクト3内に誘電体バリヤ放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eが被洗浄物であるシリコン半導体ウエハ8に近接して設けられている。・・・」

(c)「【0010】実施例に使用した同軸円筒形誘電体バリヤ放電ランプの概略図を図2に示す。放電容器13は石英ガラス製で内側管14と外側管15を同軸に配置して中空円筒状にしたもので、外側管15は誘電体バリヤ放電の誘電体バリヤと光取り出し窓を兼用しており、その外面に光を透過する金属網からなる電極17が設けられている。内側管14の内径部には紫外線の反射板を兼ねた円筒状の金属電極16が設けられている。・・・放電空間20に誘電体バリヤ放電によってエキシマ分子を形成する放電用ガスを封入して、誘電体15の表面に設けられた金属網からなる透明電極17と内側管14の内径部には紫外線の反射板を兼ねた円筒状の金属電極16に交流電源21によって電圧を印加すると、放電空間20内にいわゆる誘電体バリヤ放電、別名オゾナイザ放電あるいは無声放電が発生して、誘電体15、透明電極17を通して、高効率で紫外線が放射される。・・・」

(d)「【0012】・・・また、従来の低圧水銀ランプの場合と異なって、ランプへの入力電力を変化させることによって分光分布を変えること無く光出力を変化できるので、ランプへの入力電力と誘電体バリヤ放電ランプと半導体ウエハの間の距離を調整する事により、半導体ウエハ8に照射される紫外線の量を制御できる。・・・」

そして、前記甲第1号証記載事項(c)によれば「放電空間20内にいわゆる誘電体バリヤ放電、別名オゾナイザ放電あるいは無声放電が発生して、誘電体15、透明電極17を通して、高効率で紫外線が放射される。」ということであるから、図2の図示内容をあわせみると、少なくとも透明電極17と、放電空間20の間に誘電体15が介在していることは明らかである。
また、甲第1号証に記載された洗浄方法が、誘電体バリア放電ランプを用いた装置を使用していることも明らかである。

したがって、前記甲第1号証記載事項(a)?(d)及び図面の図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「誘電体バリヤ放電によってエキシマ分子を形成する放電用ガスを封入した放電空間20があって、透明電極17と金属電極16のうちの少なくとも透明電極17と、放電空間20の間に誘電体15が介在する複数の誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eと、前記各誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eの透明電極17と金属電極16に電圧を印加する交流電源21とを有する誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eを用いた装置において、誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eへの入力電力を変化させることによって光出力を変化できる誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eを用いた装置。」

(2)甲第2号証(特開平6-197555号公報)の記載事項
甲第2号証には、図1、図2とともに以下の事項が記載されている。

(e)「【0002】
【従来の技術】従来、液晶パネル等のバックライトとして冷陰極管等の複数のランプを点灯させるランプ点灯回路が知られており、この一例としてインバータ回路を用いたものが知られている。この一例として2つのランプを点灯させる回路例を図2に示す。・・・」

(f)「【0011】また、ランプ6aの他端はコンデンサC1を介して第1のインバータ回路4aの二次巻線412 の他端に接続され、ランプ6bの他端はコンデンサC2を介して第2のインバータ回路4bの二次巻線412 の他端に接続されている。」

(g)「【0014】・・・電圧Vd1,Vd2の値は、演算増幅器23a,23bの入力端において発振器21の出力電圧Voscの最大値と最小値との間の値となるように抵抗器R1?R4及び可変抵抗器VR1,VR2の値が設定され、さらに可変抵抗器VR1,VR2の値は十分な調光効果が得られる値に設定されている。これにより、演算増幅器23a,23bからトランジスタ24a,24bにローレベルの信号が出力されている間だけ、各チョッパ回路3a,3bのFET31を介して対応するインバータ回路4a,4bの変圧器41に電流が供給されるので、可変抵抗器VR1,VR2の抵抗値を変化させて演算増幅器23a,23bの出力信号のパルス幅を変えることにより、ランプ6a,6bの輝度を調節することができる。」

(h)「【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述した従来のランプ点灯回路においては、発振器21の発振周波数f3と第1のインバータ回路4aの動作周波数f1とは一致しているものの、これらの周波数f1,f3と第2のインバータ回路4bの動作周波数f2とが異なるため、これらの周波数のビートが発生する。このビートは多次に亙って発生し、複数の周波数成分を含むので、可聴ノイズを発生したり、或いは液晶ディスプレイのバックライト点灯用に使用した場合には液晶ディスプレイのフレーム周波数との干渉による画面ビート、フリッカ等を引き起こす。・・・」

7.対比・判断
(1)本件発明1について
(a)対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「エキシマ分子を形成する放電用ガスを封入した放電空間20」及び「誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eを用いた装置」は、それぞれ本件発明1の「エキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)」及び「誘電体バリア放電装置」に相当する。
また、引用発明の「透明電極17」及び「金属電極16」は、前記甲第1号証記載事項(c)によれば、交流電源21によって電圧を印加されるものであり、該電圧の印加により、放電空間20内に誘電体バリア放電が生じるものであるから、本件発明1の「前記放電用ガスに放電現象を誘起せしめるための一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)」に相当する。そうすると引用発明の「透明電極17と金属電極16のうちの少なくとも透明電極17と、放電空間20の間に誘電体15が介在する複数の誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4e」は、本件発明1の「前記放電用ガスに放電現象を誘起せしめるための一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうちの少なくとも一方と前記放電用ガスの間に誘電体(D,D_(1),D_(2),‥‥)が介在する構造を有する複数の誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)」に相当する。
そして、引用発明の「前記各誘電体バリア放電ランプ4a,4b,4c,4d,4eの透明電極17と金属電極16に電圧を印加する交流電源21」は、交流の電圧を印加する給電装置であるといえ、少なくとも放電空間20内に誘電体バリア放電を生じさせる程度の高い電圧を印加していることは明らかであるから、本件発明1の「前記各誘電体バリア放電ランプの前記一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)に交流の高電圧を印加するための給電装置」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
「誘電体バリア放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)があって、前記放電用ガスに放電現象を誘起せしめるための一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうちの少なくとも一方と前記放電用ガスの間に誘電体(D,D_(1),D_(2),‥‥)が介在する構造を有する複数の誘電体バリア放電ランプと、
前記各誘電体バリア放電ランプの前記一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)に交流の高電圧を印加するための給電装置とを有する誘電体バリア放電装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
[相違点1]
給電装置について、本件発明1は「前記誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の各々に対応して、各1個の給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が設けられているものであって」、「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、前記各誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の消費電力バランスを任意に調整可能とした」のに対し、引用発明は、誘電体バリア放電ランプへの入力電力を変化させることによって光出力を変化できるものではあるものの、給電装置をどのように設けるのかが不明である点。

[相違点2]
給電装置の出力振動波について、本件発明1は、各給電装置が「発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期」であるのに対し、引用発明は、そのような構成を有するものであるのかが不明である点

(b)判断
[相違点1]について
引用発明の解決しようとする課題として、前記甲第1号証記載事項(a)には、大面積の被処理物を均一に洗浄することが示されており、被処理物を均一に照射するという課題が示唆されているといえる。
一方、前記甲第2号証記載事項(e)?(g)及び図2の図示内容をみると、甲第2号証には、複数のランプ6a,6bの各々に対応して、各1個のインバータ回路4a(又は4b)及びチョッパ回路3a(又は3b)が設けられ、可変抵抗器VR1(又はVR2)の抵抗値を変化させることにより、各チョッパ回路3a(又は3b)のFET31を介して対応するインバータ回路4a(又は4b)の変圧器41に供給される電流を変化させ、ランプ6a,6bの輝度を調節する点が記載されている。そして、このインバータ回路4a(又は4b)及びチョッパ回路3a(又は3b)をあわせたものが、本件発明1の「給電装置」に相当するから、複数のランプの各々に対応して、各1個設けられる給電装置が独立に出力電力調整可能であることによって、ランプの消費電力バランスを任意に調整可能としているといえる。
また、複数のランプを用いる装置において、照射面での光出力分布を均一なものとするために、各ランプの各々に対応した給電装置により、各ランプの光出力を独立に調整することは、例えば特開平5-114570号公報、実願平2-27215号(実開平3-118594号)のマイクロフィルム、特開平4-199622号公報等にも示されているように本件特許の出願前より周知の技術であるといえ、引用発明において、被処理物を均一に照射するために、前記周知の技術を参酌して、甲第2号証に記載されたランプの各々に対応して、各1個の給電装置を設け、各給電装置が独立に出力電力調整可能であることによって、ランプの消費電力バランスを任意に調整可能とする構成を採用し、本件発明1の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
本件発明1の「各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり」という構成の進歩性を検討するにあたり、本件発明1が、設定方法に関する発明ではなく、「誘電体バリア放電装置」という「物」の発明であることを勘案すると、装置の製造時等に、どのような設定が行われたか、又は何等、設定が行われなかったかにかかわらず、各給電装置の出力振動波自体に着目し、発振周波数が異なり、位相が互いに非同期であるという構成の採用が容易であるか、否かについて、検討を行うべきである。
そして、給電装置を複数用いる場合、この給電装置に発振周波数を一致させるための特別な調整手段を施さない限り、その出力振動波の発振周波数や位相が異なるものとなることは、例えば前記甲第2号証記載事項(h)や、実願平3-18615号(実開平4-124894号)のマイクロフィルム(特に段落【0018】?【0020】参照)等にも示されているように、本件特許の出願前より当業者に知られている事項である。そうすると、前記「相違点1]についての検討で示したように、引用発明に、甲第2号証に記載されたランプの各々に対応して、各1個の給電装置を設け、各給電装置が独立に出力電力調整可能であることによって、ランプの消費電力バランスを任意に調整可能とする構成を採用する際、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成を採用すれば、各給電装置の出力振動波の発振周波数は異なり、位相も互いに非同期なものになると考えられる。
ここで、甲第2号証には、ビートの発生を防止したランプ点灯回路を提供することを目的として、第1及び第2のインバータ回路4a,4bの動作周波数f1,f2を一致させる点が記載されているが、複数の給電装置を有する装置において、発振周波数を一致させるための特別な調整手段を設けないものは、甲第2号証に【従来の技術】として記載されている他、例えば特開平6-267674号公報(特に図2に関する記載参照)、特開平5-82275号公報(特に図25に関する記載参照)、実願平2-27215号(実開平3-118594号)のマイクロフィルム、特開平6-98879号公報等にも示されているように、本件特許の出願前より当業者に広く知られた技術である。このことを勘案すると、引用発明に甲第2号証に記載された構成を採用する際、各給電装置の出力振動波の発振周波数を一致させるための特別な調整手段を設けないこと、つまり、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成を採用することに、格別の困難性はないというべきである。
したがって、引用発明に、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成を採用し、本件発明1の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

なお、被請求人は、平成19年9月5日付けの答弁書において、「『発振周波数を異ならせて設定する』ことは、発振周波数が異なるように設定することを意味しており、仮に、発振周波数を何ら調整することなく、発振器を組み立て結果的に発振周波数が異なる値になり、本件特許の請求の範囲に含まれるようになった場合も含むことは明らかである。」(第8頁第1行?第4行)と主張しており、この主張によれば、本件発明1の「各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり」という構成は、装置の製造時等に、どのような設定が行われたか、又は何等、設定が行われなかったかにかかわらず、結果的に、各給電装置の出力振動波の発振周波数が異なり、位相が互いに非同期であるものを含むと解され、やはり、引用発明に、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成を採用し、本件発明1の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

そして、本件発明1の作用効果についても、引用発明、甲第2号証に記載された事項及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本件発明1は、周知の技術を参酌することにより、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において「前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の周波数が、互いに平均周波数値の2%以上異なるようにしたこと」を限定したものである。
ここで、本件発明3も「誘電体バリア放電装置」という「物」の発明であることを勘案すると、前記「7.(1)(b)」の[相違点2]についての検討と同様に、装置の製造時等に、どのような設定が行われたか、又は何等、設定が行われなかったかにかかわらず、各給電装置の出力振動波自体に着目し、周波数が、互いに平均周波数値の2%以上異なるという構成の採用が容易であるか、否かにより本件発明3の進歩性を検討するべきである。
一般的に各部品に、製造誤差、バラツキが存在することは知られており、こららの部品を複数、組み立てて装置を製造する際、製造誤差、バラツキをどの程度、許容するかは、費用対効果等を考慮の上、当業者が適宜、選択し得るものである。
そして、引用発明に、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成を採用する際、給電装置を構成する部品の製造誤差、バラツキを通常、許容される程度のものとすれば、各給電装置の出力振動波の周波数において、互いに平均周波数値の2%程度のバラツキは生じるものと考えられる。

したがって、本件発明3は、周知の技術を参酌することにより、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)被請求人の主張について
(a)誘電体バリア放電ランプに対する各1個の給電装置の採用について
被請求人は、一般の放電ランプにおいて、ランプの個々に対応して各1個の給電装置を設けるという構成が周知の基礎技術として存在するからといって、誘電体バリア放電ランプにおいて、当該技術を採用することが容易であるとは必ずしもいえないと主張している。
しかしながら、誘電体バリア放電ランプが、その特性上、回路構成上の特別な工夫を図ることがなく、簡単に1つの給電装置で複数のランプを点灯させることが可能であったとしても、このことをもって、誘電体バリア放電ランプの各々に対応して、各1個の給電装置を設けることを妨げるものではない。
複数のランプに給電するにあたり、複数のランプを1つの給電装置に接続するか、複数のランプの各々対応して、各1個の給電装置を設けるかは、それぞれの利点や、欠点を考慮の上、選択可能な事項であると考えられ、前記「7.(1)(b)」の[相違点1]についての検討で示した周知の技術によれば、複数のランプの各々に対応して、各1個の給電装置を設けた場合、少なくとも各ランプの光出力を独立に調整でき、照射面での光出力分布を均一なものにすることができるという利点を有するのであるから、引用発明の誘電体バリア放電ランプに給電するにあたり、前記利点を考慮の上、甲第2号証に記載されたランプの各々に対応して、各1個の給電装置を設けるという構成を採用することに、格別の困難性はないというべきである。
したがって、前記被請求人の主張は採用できない。

(b)出力振動波の周波数の設定について
被請求人は、甲第1号証、甲第2号証には、「各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期とした」点について何ら記載されていないばかりか、甲第3号証?甲第11号証を参照しても、この点について何ら記載されていないと主張し、これに対し、本件特許においては、出力振動波の発振周波数の設定により、電磁ノイズの放射電力スペクトル分布を所望のものとすることができると主張している。
しかしながら、前記「7.(1)(b)」の[相違点2]についての検討でも示したように、本件発明1及び本件発明3が、設定方法に関する発明ではなく、「誘電体バリア放電装置」という「物」の発明であることを勘案すると、装置の製造時等に、どのような設定が行われたか、又は何等、設定が行われなかったかにかかわらず、「誘電体バリア放電装置」という「物」において、各給電装置の出力振動波がどのようなものであるか、つまり、結果として、発振周波数が異なるものであり、位相が互いに非同期であるかについて、進歩性を判断せざるを得ないといえる。
そして、引用発明に、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成を採用した場合、各給電装置の出力振動波の発振周波数は異なるものとなり、位相も互いに非同期となることは、前記「7.(1)(b)」の[相違点2]についての検討で示したとおりである。
したがって、前記被請求人の主張は採用できない。

(c)甲第1号証の均一照射手段について
被請求人は、甲第1号証に記載のものは段落【0012】の記載等から見てランプ配置などにより光照射エネルギー密度の均一化を図っているものと解され本件特許のように「各給電装置が、独立に出力電力調整可能であることによって、各誘電体バリア放電ランプの消費電力バランスを任意に調整可能とする」ものではないと主張している。
ここで、甲第1号証に記載されたものが、被処理物を均一に洗浄する、つまり被処理物を均一に照射するという課題を、ランプ配置の工夫等、本件発明1や、本件発明3とは異なる手段で解決しようとするものであるとしても、この課題の解決をさらに図り、より均一な照射を行うため、他の課題解決手段を付加することを妨げるものではない。
すなわち、前記課題を有する引用発明において、他の課題解決手段が存在することをもって、甲第2号証に【従来の技術】として記載された構成の採用を阻害するとはいえない。
したがって、前記被請求人の主張は採用できない。

(d)訂正の趣旨について
被請求人は、平成19年6月21日付け訂正請求書において、訂正前の請求項1の記載が「[1]複数電源の発振周波数は同じで、各発振周波数の位相が異なる実施形態」および「[2]複数電源の発振周波数を同じ値になるように設定したが、発振器の個体差により結果的に各発振器の発振周波数が異なった値になる実施形態」を含むと解釈される可能性のある記載となっていたため、各給電装置の出力振動波の発振周波数を異ならせて設定することを限定することにより、上記[1],[2]の実施形態を本件特許の権利範囲から積極的に除外し、上記[1],[2]の実施形態が本件特許に含まれないことを明確にしたものである旨を主張している。
一方、被請求人は、平成19年9月5日付けの答弁書において、「発振周波数を異ならせて設定する」ことには、発振周波数を何ら調整することなく、発振器を組み立て結果的に発振周波数が異なる値になったものも含む旨の主張をしている。
これらの記載によると、「発振周波数を異ならせて設定する」という構成が、発振器を組み立て結果的に発振周波数が異なる値になったものも含むのか、否かが必ずしも明確ではないが、前記「7.(3)(b)」でも示したように、本件発明1及び本件発明3が「誘電体バリア放電装置」という「物」の発明であることを勘案すると、結果として、発振周波数が異なるものであるかについて、進歩性を判断せざるを得ないといえる。
したがって、「発振周波数を異ならせて設定する」が、発振器を組み立て結果的に発振周波数が異なる値になったものを含むものであっても、含まないものであっても、進歩性の判断を左右するものではない。

8.むすび
したがって、本件発明1及び本件発明3は、周知の技術を参酌することにより、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び本件発明3についての特許は、他の無効理由及び証拠を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人がそれを負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
誘電体バリア放電装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】誘電体バリア放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)があって、前記放電用ガスに放電現象を誘起せしめるための一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうちの少なくとも一方と前記放電用ガスの間に誘電体(D,D_(1),D_(2),‥‥)が介在する構造を有する複数の誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)と、
前記各誘電体バリア放電ランプの前記一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)に交流の高電圧を印加するための給電装置とを有する誘電体バリア放電装置において、
前記誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の各々に対応して、各1個の給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が設けられているものであって、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、前記各誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の消費電力バランスを任意に調整可能としたことを特徴とする誘電体バリア放電装置。
【請求項2】1個の発振器(M)の信号(X)から生成された互いに異なる周波数の信号(K,K_(1),K_(2),‥‥)によって、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波が励振されることを特徴とする請求項1に記載の誘電体バリア放電装置。
【請求項3】前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の周波数が、互いに平均周波数値の2%以上異なるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の誘電体バリア放電装置。
【請求項4】前記各誘電体バリア放電ランプの一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうち、一方の電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)が外界に面している部分が大きく、他方の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥)が外界に面している部分が小さい構造を有するものであって、前記外界に面している部分が大きい方の電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)を共通に接続し、かつ、接地したことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3のいずれかに記載の誘電体バリア放電装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば、光化学反応用の紫外線光源として使用される放電ランプの一種で、誘電体バリア放電によってエキシマ分子を形成し、前記エキシマ分子から放射される光を利用するいわゆる誘電体バリア放電ランプのための放電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明に関連した技術として、誘電体バリア放電ランプについては、例えば日本国公開特許公報平2-7353号があり、そこには、放電容器にエキシマ分子を形成する放電用ガスを充填し、誘電体バリア放電(別名オゾナイザ放電あるいは無声放電。電気学会発行改定新版「放電ハンドブック」平成1年6月再版7刷発行第263ページ参照)によってエキシマ分子を形成せしめ、前記エキシマ分子から放射される光を取り出す放射器が記載されている。
【0003】
上記のような誘電体バリア放電ランプおよびこれを含む光源装置は、従来の低圧水銀放電ランプや高圧アーク放電ランプには無い種々の特長を有しているため応用の可能性が多岐にわたっている。とりわけ、近来の環境汚染問題への関心の高まりのなかで、紫外線による光化学反応を応用した無公害の材料処理はその最も重要な応用のひとつである。従って、誘電体バリア放電光源装置に対する高出力化または照射面積広大化に対する要求には非常に強いものがある。
【0004】
この要求に沿う提案のひとつとして、例えば日本国公開特許公報平4-229671号があり、そこには複数の誘電体バリア放電ランプの並列点灯によって光源の大規模化、照射面積の広大化を図る構成が述べられている。しかし、このような従来の技術のみによっては解決できない大きな2つの問題があった。第1の問題は、高出力化と照射面積広大化、すなわち装置の大電力化に伴って発生する電磁ノイズ放射が大きくなる点である。第2の問題は、広い面積を照射する場合の照射エネルギー密度の均一化または可制御化が困難な点である。
【0005】
第1の問題である電磁ノイズ放射が大きい点に関し、その改善が要求される事情について以下簡単に説明する。
近来、電磁障害の原因となるノイズ放射の抑制に対する要求が特に強く叫ばれるようになっており、一般に、全ての装置はノイズ放射水準を定められた基準以下とするよう種々の規制により求められている。実際、前記のように誘電体バリア放電装置の重要な応用の一例として紫外線による材料処理を挙げたが、このような材料処理設備は普通コンピュータや各種センサを含む高度な自動制御システムを構成する。この種の高度なシステムは一般に電磁ノイズに弱いため、とりわけ複数のランプを同時点灯するような大規模、大電力の誘電体バリア放電装置においては、その全ての構成要素は電磁ノイズ発生が小さいものでなければならないことは明白である。
【0006】
第2の問題である照射エネルギー密度の均一化または可制御化が困難である点に関し、その改善が要求される理由について以下簡単に説明する。
誘電体バリア放電ランプの紫外線による材料処理作用は非常に複雑で高度な光化学反応によるものであり、大面積の材料に対して所望の材料処理効果を得るためには、照射エネルギー密度分布において所望の分布に対する過不足があってはならない。照射エネルギー密度が不足している場合は照射の効果が低いため問題であることは明らかである。一方照射エネルギー密度が過剰である場合にも、例えば照射紫外線による分解生成物が再反応を起こして意図しない分子合成がおこなわれ、対象処理材料表面に不均一な不純物質層を形成することがある。したがって、照射エネルギー密度の過不足には、行おうとする材料処理反応の種類に依存したある許容範囲が存在し、理想的な誘電体バリア放電装置に対して、この許容範囲を満足するような照射エネルギー密度の均一化が求められ、またそれを達成するために装置には可制御性が求められるわけである。
【0007】
以下、誘電体バリア放電装置において、前記第1、第2の問題が生ずる理由を図1(イ),(ロ),(ハ)を用いて説明する。
誘電体バリア放電ランプを点灯させる際は、その一対の電極E,Fには、例えば、周波数10kHzから200kHz、電圧2kV?10kVrmsの高周波の交流高電圧が印加される(図1の(イ)参照)。ところが誘電体バリア放電ランプTには、放電プラズマの空間Gを挟んで電極E,Fの間に1枚または2枚の誘電体Dが存在し、これがコンデンサの働きをすることによって電流が流れることになる(図1の(ロ)参照)。ここで、放電プラズマに印加される電圧は交流であるから、その半サイクル毎に放電開始と放電停止を繰り返しており、したがって、誘電体バリア放電ランプは基本的には非線形素子である。
しかし、放電中の放電プラズマを近似的に純抵抗と見なすことにするならば、すなわち放電中の誘電体バリア放電ランプは、ある静電容量Cを有する等価コンデンサとある抵抗値Rとを有する等価抵抗とを直列に接続したものとして近似的に理解することができる(図1の(ハ)参照)。放電空間の抵抗に並列の静電容量も存在するが、通常これは小さいので無視してよい。例えば、厚さ1mmの石英板2枚の間隙Yを4mmとし、これを放電空間Gとして、キセノンガスが約40000Pa(25℃基準)の圧力で満された電極面積200cm^(2)の誘電体バリア放電ランプを、周波数約100kHz、印加電圧約4kVrmsにおいて点灯した場合には、発明者らの測定実験においては、約200pFのコンデンサと約1.5kΩの抵抗とを直列に接続したものと近似的に等価とであるとの結果を得た。
【0008】
前記のように、誘電体バリア放電ランプにおいては、その半サイクル毎に放電開始と放電停止を繰り返す非線形動作をしており、放電は放電空間Gへの高電圧の印加のもとで生じる。したがって、放電空間に印加される電圧が放電開始電圧に達した瞬間に、大電流パルスが放電プラズマ中に発生し、放電空間Gを発生源とする高調波を含んだ強烈な電磁ノイズが発生する。これが前記第1の問題の誘電体バリア放電装置における電磁ノイズ放射が大きい理由である。
【0009】
ところで、ランプの製造に関して、その材料調達または製造工程においては必ず加工誤差およびバラツキが存在し、ランプの点灯特性は個々のランプ毎に異なっている。例えば、誘電体バリア放電ランプの誘電体Dとして石英材を使用する場合、経済的に入手可能な公称厚さ1mmの石英ガラスには厚さバラツキが0.3mm程度存在する。このため、前記ランプ等価コンデンサの静電容量には個々に30%程度のバラツキを生ずることになる。さらに、2枚の石英板の間隔や充填ガスの圧力にバラツキがある場合は前記ランプ等価抵抗の抵抗値にバラツキを生ずることになる。これらバラツキは、誘電体バリア放電ランプの放電開始電圧のバラツキおよび放電開始後のプラズマ発光効率のバラツキとなって現れる。このようなバラツキを有する複数のランプを単純に並列接続した誘電体バリア放電装置の場合は、当然ながら、個々のランプ毎に消費電力のバラツキすなわち発光強度のバラツキが生じ、前記照射エネルギー密度分布が装置設計時のランプ配置に基づく期待される分布からずれたものとなってしまう。これが、前記第2の問題のなかの誘電体バリア放電装置における照射エネルギー密度の均一化が困難である理由である。
【0010】
ここで、ランプのバラツキについてさらに言えば、これが小さくありさえずれば照射エネルギー密度分布に関する全ての問題が解決するわけではない。一般に、ある領域に複数のランプの光を照射する場合、領域の端の部分では照度が低下する傾向がある。これを改善する簡単な方法として、照射領域を必要領域よりも広く設定する、端の領域でランプの配置密度を高くする、端の領域に対応するランプを強力なものにする、などの方法がとられるが、いずれも良い方法とは言えない。照射領域を必要領域よりも広く設定したり、端の領域でランプの配置密度を高くする方法の場合は、結局、ランプの本数を増やすことにほかならず、また、端の領域に対応するランプを強力なものにする場合は、ランプの種類または給電装置の数が増えることにほかならないため、いずれも、高コストになってしまう。すなわち、仮にランプのバラツキが無くても、照射エネルギー密度分布を所望のもの、例えば均一なものに改善することが経済的に行えないことがわかる。これが、前記第2の問題のなかの誘電体バリア放電装置における照射エネルギー密度の可制御化が困難である理由である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記第1の問題である電磁ノイズ放射の抑制が達成されると同時に、前記のようなバラツキを有するものを含む複数の誘電体バリア放電ランプを点灯する場合でも、前記第2の問題である必要な領域の光照射エネルギー密度の均一化または可制御化の困難の問題が改善された経済的な誘電体バリア放電装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、誘電体バリア放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)があって、前記放電用ガスに放電現象を誘起せしめるための一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうちの少なくとも一方と前記放電用ガスの間に誘電体(D,D_(1),D_(2),‥‥)が介在する構造を有する複数の誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)と、
前記各誘電体バリア放電ランプの前記一対電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)に交流の高電圧を印加するための給電装置とを有する誘電体バリア放電装置において、
前記誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の各々に対応して、各1個の給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が設けられているものであって、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が、独立に出力電力調整可能であることによって、前記各誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の消費電力バランスを任意に調整可能とするものである。
【0013】
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明において、1個の発振器(M)の信号(X)から生成された、互いに異なる周波数の信号(K,K_(1),K_(2),‥‥)によって、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波が励振されるようにするものである。【0014】
本発明の請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれかの発明において、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の周波数が互いに平均周波数値の2%以上異なるようにするものである。
【0015】
本発明の請求項4の発明は、請求項1,請求項2または請求項3のいずれかの発明において、前記各誘電体バリア放電ランプの一対の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥),(F,F_(1),F_(2),‥‥)のうち、一方の電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)が外界に面している部分が大きく、他方の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥)が外界に面している部分が小さい構造を有するものであって、前記外界に面している部分が大きい方の電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)を共通に接続しかつ接地するものである。
【0016】
【作用】
本発明の請求項1の発明の作用について図2を用いて説明する。
図2に示す構成において、複数の誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)には、その各々に対応して各1個の給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)が設けられている。それら各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)は、その出力振動波の発振周波数を異ならせて設定し、位相において互いに非同期であり、かつ独立に出力電力調整が可能である。ここで重要な点は、給電装置が小さな給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の集合体であって、かつその出力振動波の位相において互いに非同期であることで、このことにより、電磁ノイズ対策上の利点と照射エネルギー密度の可制御化の利点とが同時に得られる。
【0017】
大電力の誘電体バリア放電装置において、電磁ノイズが大きい理由は、それぞれ1本のランプが発生する電磁ノイズが許容できる程度の大きさであっても、複数のランプからの電磁ノイズが加算されて大きいものとなるからであるが、電磁ノイズの加算に際しては、協調的に加算される場合、すなわち各ランプからの電磁ノイズがコヒーレントな場合に問題が最も深刻になる。
例えば、一般に電気機器の電磁放射試験においては、放射電力スペクトル分布に対して規制値以下であるか否かが測定されることを見てもわかるように、電磁ノイズについては、特定の周波数の電磁ノイズを集中的に放射することが最も問題となるのである。例えば、前記従来の技術の節のなかで記した前記日本国公開特許公報平4-229671号においては1個の給電装置により複数のランプを並列点灯する構成について述べられているが、このような構成では各ランプ内での放電現象は完全に同期して生起するため、これらから発生する電磁ノイズは特定の周波数にて協調的に放射され、したがって、電磁ノイズによって外部に与える影響が大きいと考えられる。
【0018】
これに対し、本発明の請求項1の発明の構成においては、複数のランプを点灯する場合であっても、それぞれ1本のランプしか点灯しない小さな給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)を、出力振動波の位相において互いに非同期に動作させるため、各ランプからの電磁ノイズの加算に際しても協調的に加算されることがなく、したがって、各ランプからの電磁ノイズの成分が放射電力スペクトル分布において広く拡散されることになり、結果として、特定の周波数にて強い放射を生ずることなく、全体として、低い電磁ノイズ放射水準に抑えられる。
なお、各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の位相において互いに非同期とするための最も単純な方法は、各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)がそれぞれ独立に発振周波数決定手段を有しており、各発振周波数を少しづつ異なるように設定しておくことである。
【0019】
一方、給電装置それ自体の出力電力を調整できるようすることは比較的容易であるが、これに複数のランプが並列接続されている場合、個々のランプ毎に消費電力を調整することは非常に困難である。例えば、同じく前記従来の技術の節のなかで記した前記日本国公開特許公報平4-229671号において述べられている構成は、まさしくこのような個々のランプ毎の消費電力調整が全く不可能なものとなっている。
これに対し、本発明の請求項1の発明の構成において、各ランプに対応する各給電装置について出力電力を独立に調整できるものとすることは可能であるから、各誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の消費電力バランスが任意に調整可能となり、したがって各ランプの発光量バランスを調整して、結果として照射エネルギー密度の分布を所望のものとすることが可能となる。
【0020】
このように、本発明の請求項1の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられ、かつ個々のランプの発光量バランスを調整し、結果として照射エネルギー密度の分布を所望のものに改変することが可能となる。
【0021】
本発明の請求項2の発明の作用について、図3、図4を用いて説明する。
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明において、1個の発振器(M)の信号(X)から生成された互いに異なる周波数の信号(K,K_(1),K_(2),‥‥)によって前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波が励振されるようにしたものである。
【0022】
本発明の請求項1の発明の作用の説明において、効果的な電磁ノイズ放射低減を行いたい場合は各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の各発振周波数は確実に少しづつ差を有するようなものが良いことを述べた。しかし、独立な発振周波数決定手段が高価で精密高安定な水晶発振器を利用したものでない限り、そのような各発振周波数が少しづつ差を有する状態を確実にかつ安定的に維持することはできない。ここで大切なことは、各発振周波数が少しづつ差を有する状態の確実性と安定性であって、周波数値それ自体の安定性は求められていないことである。
本発明の請求項2の発明は、周波数値それ自体の安定性を不必要に高めることなく、安価な部品を用いて各発振周波数が少しづつ差を有する状態を確実かつ安定に維持することを実現することができる。
【0023】
それほど高い周波数安定度を必要としない1個の発振器(M)からのクロック信号(X)は、前記給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)のそれぞれに対応して設けられた各周波数変換器(H,H_(1),H_(2),‥‥)に入力される。各周波数変換器(H,H_(1),H_(2),‥‥)の簡単な実現方法は、これらを周波数分周回路によって構成し、それぞれの周波数分周比を少しづつ変えておくことである。例えば、発振器(M)の発振周波数を1MHzとし、各周波数分周回路の周波数分周比をそれぞれ48、49、50、51、52としたときは、各周波数分周回路が生成した信号(K,K_(1),K_(2),‥‥)の周波数は、それぞれ20.8kHz、20.4kHz、20.0kHz、19.6kHz、19.2kHzとなる。
【0024】
周波数変換器(H)としての最も簡単な周波数分周回路(B)は、図4に示されているように、例えば、ディジタルのダウンカウンタ(Q)を主体とし、このダウンカウンタ(Q)のカウント値が0になったならば、そのダウンカウンタ自身(Q)にロード信号(J)を発して前記周波数分周比より1だけ小さいプリセット値(V)をロードするような、よく知られている回路を使えばよく、非常に安価に実現できる。
各周波数変換器(H,H_(1),H_(2),‥‥)の他の実現方法は、これらを周波数逓倍回路によって構成し、それぞれの周波数逓倍比を少しづつ変えておくことである。例えば、発振器(M)の発振周波数を200Hzとし、各周波数逓倍回路の周波数逓倍比をそれぞれ98、99、100、101、102としたときは、各周波数逓倍回路が生成した信号(K,K_(1),K_(2),‥‥)の周波数は、それぞれ19.6kHz、19.8kHz、20.0kHz、20.2kHz、20.4kHzとなる。周波数逓倍回路は、よく知られているように、周波数分周回路を応用したPLL回路により実現できる。
【0025】
このように1個の発振器の信号から生成された互いに異なる周波数にて前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波を励振することの利点は、各周波数の比が、各周波数変換器(H,H_(1),H_(2),‥‥)の変換定数、例えば前記周波数分周回路を周波数変換器(H,H_(1),H_(2),‥‥)とするものの場合はその分周比によって決まるため、発信器(M)から生成された信号(X)に、例えば温度変化等に起因する周波数ゆらぎがあっても各周波数の比は不変に保たれ、したがって常に前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の周波数が互いに異なっている状態が維持されることである。よって、1個の発信器(M)として、安定度の高い高価な発振器を使用しなくても確実かつ安定に電磁ノイズ放射の低い状態が維持される。
このように、本発明の請求項2の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、高価な発振器を使用すること無く、確実かつ安定に、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられた状態が維持されることが可能となる。また、本発明の請求項1の発明の特徴を継承しているため、個々のランプの発光量バランスを調整し、照射エネルギー密度の分布を所望のものに改変することも可能である。
【0026】
本発明の請求項3の発明の作用について説明する。
本発明の請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれかの発明において、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2)‥‥)の出力振動波の周波数が互いに平均周波数値の2%以上異なるようにしたものである。
【0027】
本発明の請求項1の発明の作用の説明において、前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),‥‥)の出力振動波の周波数の差が小さすぎると電磁ノイズ放射低減の効果が小さいことを述べており、よって前記周波数の差はある程度大きくとらなければならないことがわかる。効果的な電磁ノイズ放射低減を行うためには、前記発振周波数の差は経験上互いに平均周波数値の2%以上であれば十分である。
もちろん2%より有意に大きな周波数差を設けることもできるが、このような場合には、前記発振周波数の差は厳密にはランプの点灯条件の差として現れる現象に注意する必要があり、もし、前記発振周波数の差が過大であるとランプ毎の発光状態が互いに異なってしまうと言う不都合が生じる。この発光状態の相違が許される周波数差の最大限度は経験上20%である。
一例として、ランプを5本同時点灯する装置においては、例えば各ランプについて均等な各格差を考えるとすると、ランプ本数から1を減じた値、つまり4で前記最大限度の20%を除することによって5%という値が得られるから、この例の場合は、前記各給電装置の周波数が互いに平均周波数値の5%異なることが限度となる。
【0028】
このように、本発明の請求項3の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられた状態を確実に実現することが可能となる。また、基本的に本発明の請求項1の発明の特徴を継承しているため、個々のランプの発光量バランスを調整し、照射エネルギー密度の分布を所望のものに改変することも可能である。
【0029】
本発明の請求項4の発明の作用について、図5、図6、図7を用いて説明する。
図5に示すように、本発明の請求項4の発明においては、請求項1,請求項2または請求項3のいずれかの発明において、複数の誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),‥‥)の一対の電極のうち、外界に面している部分が大きい方の電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)が共通に接続されかつ接地されている。このことにより電磁ノイズ対策上のさらに大きな利点が生まれる。
【0030】
前記のように、誘電体バリア放電装置の重要な応用の一例として、紫外線による材料処理を挙げることができるが、点灯状態の誘電体バリア放電ランプにおいては、放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)に高電圧が印加され、瞬間的な大電流パルスのバーストが放電プラズマ中に発生するため、放電空間(G,G_(1),G_(2),‥‥)が主な電磁ノイズ発生源となる。
一般に、電磁ノイズ発生源は、それを接地された導体で囲むことにより、外部への電磁ノイズの放出を抑制することが可能である。ここで、図5に示すように、各誘電体バリア放電ランプの外側に面している部分が一方の電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)において広くなる構造とした上でこの電極を共通に接続して接地すると、この電極(F,F_(1),F_(2),‥‥)は、結局、放電空間を囲む接地された導体と同様の働きをする。したがって、誘電体バリア放電ランプが発生する電磁ノイズの放出を抑制する効果が得られる。なお、この効果は、外界に面している部分が小さい方の電極(E,E_(1),E_(2),‥‥)を接地しても得られない。
【0031】
この電磁ノイズの放出を抑制する効果を最大限に発揮させるためには誘電体バリア放電ランプの構造として、例えば、図6、図7に示すように、ランプ自体の外側の外表面の大部分が一方の電極(F)で覆われている構造とすることが理想的である。ここで図7は、図6に示すランプのA-A断面図である。
図6、図7に示すランプは、例えば石英ガラスなどの誘電体の外管1と内管2よりなる2重管の両端を封止した構造を有しており、外管1、内管2および封止部3a,3bに囲まれた中空円筒状の空間(G)に放電用ガスが充填され、外管1の外側に、外界に面している部分が大きい方の一方の電極(F)が設けられ、内管2の内側に他方の電極(E)が設けられている。ここで、両電極のうちのいずれか一方または両方を透明電極または網状電極とすることにより、電極を通して、ランプ放電プラズマよりの放射光を取り出して利用できる。このとき、外管1の外側に設けられた外界に面している部分が大きい方の電極(F)を接地することにより、放電空間(G)が発生する電磁ノイズの大部分の放出を抑制することができる。
【0032】
このように、本発明の請求項4の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、電極の一方が共通に直接に接地されているという点で安全であり、かつ、電磁ノイズの放出を抑制された誘電体バリア放電装置を実現することができる。また、基本的に本発明の請求項1の発明の特徴を継承しているため、個々のランプの発光量バランスを調整し、照射エネルギー密度の分布を所望のものに改変することも可能である。
【0033】
【実施例】
図8は、本発明の実施例の一例を簡略化して示すものである。
本実施例においては、給電装置(S)として、ハーフブリッジ方式と呼ばれるスイッチングインバータにより構成されるものを示している。通常の商用電力ライン10から、整流ダイオードブリッジ11と平滑コンデンサ12によって共通の直流電源を構成する。この直流電源は、給電装置(S)内の電界効果トランジスタ14、ダイオード15、チョークコイル16より成るチョッパに供給される。前記チョッパの出力は、ほぼ同じ静電容量を有する2個の直列に接続されたコンデンサ17a,17bにより平滑化されて、給電装置(S)専用のチョッパ型直流電源を構成する。このチョッパ型直流電源は、デューティサイクル可変のゲート駆動回路13のデューティサイクルを調整することにより電圧を変化させることができる。このチョッパ型直流電源には、2個の電界効果トランジスタ20a,20bがスイッチングインバータのためのスイッチング素子として接続され、トランス22の1次側巻線に流す電流の方向が交互にスイッチングされる。スイッチング動作は、ゲート駆動回路19により駆動されるが、このゲート駆動回路19は、周波数変換器(H)から供給される信号Kに従って動作する。トランス22の2次側巻線には、概ねコンデンサ17aまたは17bの電圧に、その巻き数比を乗じた値を振幅とする電圧が発生するが、本実施例ではさらに、コイル23とコンデンサ24より成るいわゆるLC直列共振回路が接続され、共振現象により、トランス22の2次側巻線の電圧よりさらに高い電圧をコンデンサ24の両端に発生させ、この電圧を誘電体バリア放電ランプ(T)の点灯のために供給する。
【0034】
他の給電装置(S_(1),S_(2),S_(3))の構造は、前記給電装置(S)の構造と同様であるので、図8においては省略されている。給電装置(S_(1),S_(2),S_(3))には、それぞれのスイッチングのタイミングを規定するための信号(K_(1),K_(2),K_(3))が周波数変換器(H_(1),H_(2),H_(3))から供給されている。また給電装置(S_(1),S_(2),S_(3))は、誘電体バリア放電ランプ(T_(1),T_(2),T_(3))の点灯のためにそれぞれの出力電圧を供給する。
各周波数変換器(H,H_(1),H_(2),H_(3))は、本発明の請求項2の発明に従って1個の発振器(M)のクロック信号(X)からそれぞれの信号(K,K_(1),K_(2),K_(3))を生成するもので、例えば図4に記載した周波数分周回路(B)によって構成され、周波数分周比は互いに異なっており、従って各給電装置(S,S_(1),S_(2),S_(3))の出力振動波は互いに異なる周波数にて励振される。
【0035】
なお、図8のようなハーフブリッジ方式のスイッチングインバータにおいては、ゲート駆動回路19は、例えば、供給される信号(K,K_(1),K_(2),K_(3))の2周期にて1周期のスイッチング動作を行うものが経済的に構成しやすいことが多い。このような場合は、各給電装置(S,S_(1),S_(2),S_(3))に供給する信号(K,K_(1),K_(2),K_(3))がランプ(T,T_(1),T_(2),T_(3))に供給したい駆動周波数の2倍となるよう発振器(M)の出力周波数を2倍に補正すればよい。
また、全ての誘電体バリア放電ランプ(T,T_(1),T_(2),T_(3))は、本発明の請求項4の発明に従って図6および図7の形状のものとし、それぞれの外側に面している部分が大きい方の電極を共通に接続して接地されている。
【0036】
本実施例においては、デューティサイクル可変のゲート駆動回路13が各給電装置それぞれに独立に設けられ、独立に調整可能である。したがって、本実施例の誘電体バリア放電装置は、本発明の請求項1に関する説明において記載したように、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられ、かつ個々のランプの発光量バランスを調整し、結果として照射エネルギー密度の分布を所望のものに改変することが可能である。
【0037】
また、本実施例の誘電体バリア放電装置は、本発明の請求項2の発明に関する説明において記載したように、発信器(M)から生成された信号(X)に、例えば温度変化等に起因する周波数ゆらぎがあっても各周波数の比は不変に保たれ、したがって常に前記各給電装置(S,S_(1),S_(2),S_(3))の出力振動波の周波数が互いに異なっている状態が維持され、よって、確実かつ安定に電磁ノイズ放射の低い状態が維持される。
さらに、本実施例の誘電体バリア放電装置は、本発明の請求項4の発明に関する説明において記載したように、全てのランプの形状が図6および図7に示したものであり、ランプ自体の外側の外表面の大部分が一方の電極(F)で覆われている構造であって、ランプの外側の外表面の大部分を覆う電極(F)を全て共通に接続し、そして接地しているため安全であり、かつ電磁ノイズの放出が抑制されたものとなっている。
【0038】
なお、ここで記載した以外にも次のような構成が可能である。
(1)例えば、チョッパ型直流電源の出力電圧、すなわち2個の直列に接続されたコンデンサ17a,17b全体の電圧を検出し、これが可変設定の目標電圧に一致するように、フィードバック制御に基づく、ゲート駆動回路13のデューティサイクルを自動調整することにより、出力電圧が可変かつ安定化されたチョッパ型直流電源とすること。
(2)例えば、ランプに印加される電圧またはランプに流れる電流あるいはランプの発光量を検出し、これが可変設定の目標水準に一致するように、フィードバック制御に基づく、ゲート駆動回路13のデューティサイクルを自動調整することにより、ランプ電力が可変かつ近似的安定化がなされた給電装置とすること。
(3)例えば、スイッチングインバータを、他の方式のインバータ例えば1個のトランジスタより成るものや、4個のトランジスタより成るフルブリッジ方式と呼ばれるものにすること。
(4)例えば、チョッパ型直流電源を設けないで、スイッチングインバータのデューティサイクルを調整またはフィードバック制御に基づき自動調整することにより、ランプ電力が可変の、または可変かつ近似的安定化がなされた給電装置とすること。
(5)例えば、コイル19とコンデンサ20より成る、LC直列共振回路を使用しないこと。
【0039】
以上の(1)から(5)は本発明の範囲内で設計者が任意に実施する事項である。なお、前記フィードバック制御などのためのランプ電流検出器として、電流経路周囲に発生する磁気を検出する方式のもの(いわゆるCT)や、抵抗値が小さい、例えば0.1Ω以下の、いわゆるシャント抵抗であれば、それが挿入された回路の動作に、ほとんど影響を与えないものであるため、電流検出器の挿入位置をランプの接地側とする構成方法でも良好に機能し、また、この構成方法は、本発明の請求項4の範囲内である。
【0040】
また、前記実施例においては、複数設けられた給電装置(S,S_(1),S_(2)‥‥)のなかの任意の1個もしくは複数個は、いずれも電力を供給すべき誘電体バリア放電ランプが1個のランプであったが、当該1個のランプを、発光強度の個差が許容値内の複数のランプを並列接続したものに置き換えても良い。この場合、発光強度の個差が許容値内のランプを選別する作業が付加されるが、本放電装置は良好に機能し、また、この構成方法は、本発明の請求項1の範囲内である。
そして、当然ながら、図8に記載の回路構成等は主要な要素を記載した一実施例であって、実際の商品設計に応用する場合は、使用する部品の特徴、極性等の違いに応じて然るべく変更され、また必要に応じて周辺素子が追加されるべきものである。
【0041】
【発明の効果】
本発明の請求項1の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられ、かつ個々のランプの発光量バランスが調整され、結果として照射エネルギー密度の分布を所望のものに改変することが可能な誘電体バリア放電装置を実現することができる。
【0042】
本発明の請求項2の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、高価な発振器を使用すること無く、確実かつ安定に、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられた状態が維持されることが可能な誘電体バリア放電装置を実現することができる。
【0043】
本発明の請求項3の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられた状態を確実に実現することが可能な誘電体バリア放電装置を実現することができる。
【0044】
本発明の請求項4の発明を用いることにより、複数の誘電体バリア放電ランプを含む誘電体バリア放電装置において、電極の一方が共通に直接に接地されているという点で安全であり、かつ、電磁ノイズの放出を抑制された誘電体バリア放電装置を実現することができる。
【0045】
以上のように、本発明によれば、バラツキを有するものを含む複数の誘電体バリア放電ランプを点灯する際に、従来より困難となっていた必要な領域の光照射エネルギー密度の均一性または可制御性の問題が改善され、放射電力スペクトル分布における電磁ノイズ放射水準が低く抑えられた経済的な誘電体バリア放電装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
誘電体バリア放電ランプに関する説明図である。
【図2】
本発明の誘電体バリア放電装置に関する説明図である。
【図3】
本発明の誘電体バリア放電装置に関する説明図である。
【図4】
周波数分周回路の説明図である。
【図5】
本発明の誘電体バリア放電装置に関する説明図である。
【図6】
誘電体バリア放電ランプに関する説明図である。
【図7】
図6におけるA-A断面で示した誘電体バリア放電ランプに関する説明図である。
【図8】
本発明の誘電体バリア放電装置の一実施例の説明図である。
【符号の説明】
1 誘電体の外管
2 誘電体の内管
3a,3b 封止部
13 ゲート駆動回路
19 ゲート駆動回路
B 周波数分周回路
C 等価コンデンサ
C_(1),C_(2) 等価コンデンサ
D 誘電体
E,F 一対の電極
G 放電空間
H 周波数変換器
M 発信器
R 等価抵抗
S 給電装置
T 誘電体バリア放電ランプ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-10-10 
結審通知日 2007-10-15 
審決日 2007-10-26 
出願番号 特願平6-314353
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (G21K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村田 尚英  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 平上 悦司
柿崎 拓
登録日 2000-04-21 
登録番号 特許第3059348号(P3059348)
発明の名称 誘電体バリア放電装置  
代理人 長澤 俊一郎  
代理人 後呂 和男  
代理人 村上 二郎  
代理人 長澤 俊一郎  
代理人 石岡 隆  
代理人 内田 敏彦  
代理人 水澤 圭子  

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