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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部無効 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1171279 |
審判番号 | 無効2006-80147 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-08-10 |
確定日 | 2007-12-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3690418号発明「アクリルエマルジョン組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第3690418号に係る発明についての出願は、平成16年6月9日の出願であり、その発明について特許権の設定登録が平成17年6月24日になされ、その請求項1?4に係る発明の特許について平成18年8月10日に ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社 より無効審判が請求され、平成18年10月27日に答弁書とともに訂正請求書が提出され、平成18年12月13日に弁駁書が提出され、平成19年3月13日に口頭審理陳述要領書(被請求人)が提出され、同日口頭審理が行われ、口頭審理終了後に書面審理への移行が告げられ、平成19年3月27日に上申書(請求人)が提出され、平成19年5月24日に上申書(被請求人)が提出され、平成19年7月3日付けで、請求人が平成19年3月27日付けで提出した上申書による請求の理由の補正を許可する旨の決定がなされ、平成19年7月17日に答弁書とともに訂正請求書が提出され、平成19年8月24日に弁駁書が提出されたものである。 第2.訂正の適否について 1.訂正の内容 平成19年7月17日付け訂正請求書により被請求人が求める訂正の内容は、以下のとおりである。 なお、平成19年7月17日付け訂正請求書の提出にともない、平成18年10月27日付け訂正請求は特許法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項a:特許明細書の特許請求の範囲請求項1?4の 「【請求項1】 酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、 前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であるアクリルエマルジョン組成物。 【請求項2】 前記マグネシウム化合物が、Mg(OH)_(2)、MgO、MgCO_(3)、及び3MgCO_(3)・Mg(OH)_(2)・3H_(2)Oからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項3】 pHが4?9である請求項1又は2に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項4】 床磨き剤として用いられる請求項1?3のいずれか一項に記載のアクリルエマルジョン組成物。」を、 「【請求項1】 酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、 前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、 前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、 前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、 アクリルエマルジョン組成物。 【請求項2】 前記マグネシウム化合物が、Mg(OH)_(2)、MgO、MgCO_(3)、及び3MgCO_(3)・Mg(OH)_(2)・3H_(2)Oからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項3】 pHが5.5?8.0である請求項1又は2に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項4】 床磨き剤として用いられる請求項1?3のいずれか一項に記載のアクリルエマルジョン組成物。」と訂正するものであり、請求項1における「アクリル共重合体」に関し「前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、」との事項を追加する訂正事項(以下、「訂正事項a-1」という。)と請求項3における「pHが4?9」を「pHが5.5?8.0」とする訂正事項(以下、「訂正事項a-2」という。)を含むものである。 (2)訂正事項b:特許明細書段落【0009】の「[1]酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であるアクリルエマルジョン組成物。」を、 「[1]酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、アクリルエマルジョン組成物。」とする訂正。 (3)訂正事項c:特許明細書段落【0012】の「[3]pHが4?9である前記[1]又は[2]に記載のアクリルエマルジョン組成物。」を、 「[3]pHが5.5?8.0である前記[1]又は[2]に記載のアクリルエマルジョン組成物。」とする訂正。 (4)訂正事項d:特許明細書段落【0016】の「本発明のアクリルエマルジョン組成物は、酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃の純水に対する水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物とを含み、マグネシウム化合物の含有量が、アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量である。以下、その詳細について説明する。」を、 「本発明のアクリルエマルジョン組成物は、酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃の純水に対する水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物とを含み、マグネシウム化合物の含有量が、アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である。以下、その詳細について説明する。」とする訂正。 (5)訂正事項e:特許明細書段落【0017】の 「(1)アクリル共重合体(共重合体(A)) 本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物に含まれるアクリル共重合体(以下、単に「共重合体(A)」ともいう)としては、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩(以下、単に「(a)成分」ともいう)、エチレン系不飽和スルホン酸単量体及び/又はその塩(以下、単に「(b)成分」ともいう)、並びに(a)及び(b)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体(以下、単に「(c)成分」ともいう)からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体を挙げることができる。」を、 「(1)アクリル共重合体(共重合体(A)) 本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物に含まれるアクリル共重合体(以下、単に「共重合体(A)」ともいう)としては、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩(以下、単に「(a)成分」ともいう)、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体(以下、単に「(c)成分」ともいう)からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体を挙げることができる。」とする訂正。 (6)訂正事項f:特許明細書段落【0021】の記載の削除。 (7)訂正事項g:特許明細書段落【0022】の記載の削除。 (8)訂正事項h:特許明細書段落【0023】の記載の削除。 (9)訂正事項i:特許明細書段落【0024】の「(c)成分としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、フッ素含有(メタ)アクリレート類、アミノ基含有(メタ)アクリレート類、芳香族ビニル化合物、不飽和アミド化合物、シアン化ビニル化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ビニルエステル類、不飽和エポキシ化合物、カルボニル基含有不飽和化合物等を挙げることができる。」を、 「(c)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。」とする訂正。 (10)訂正事項j:特許明細書段落【0026】の記載の削除。 (11)訂正事項k:特許明細書段落【0027】の記載の削除。 (12)訂正事項l:特許明細書段落【0028】の記載の削除。 (13)訂正事項m:特許明細書段落【0029】の記載の削除。 (14)訂正事項n:特許明細書段落【0030】の記載の削除。 (15)訂正事項o:特許明細書段落【0031】の記載の削除。 (16)訂正事項p:特許明細書段落【0032】の記載の削除。 (17)訂正事項q:特許明細書段落【0033】の記載の削除。 (18)訂正事項r:特許明細書段落【0034】の記載の削除。 (19)訂正事項s:特許明細書段落【0035】の記載「上述してきたこれらの(c)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、(c)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート類、芳香族ビニル化合物、カルボニル基含有不飽和化合物が好ましく、特に、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ジアセトンアクリルアミドが好ましい。」を、 「上述してきたこれらの(c)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、(c)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、特に、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。」とする訂正。 (20)訂正事項t:特許明細書段落【0044】の記載「本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物は、そのpHが4?9の範囲内であることが好ましく、5?9の範囲内であることが更に好ましく、6?8の範囲内であることが特に好ましい。pHが4未満であると、塗膜の耐BHM性が低下する傾向にある。一方、pHが9超であると、エマルジョンの安定性が低下する傾向にある。」を、 「本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物は、そのpHが5.5?8.0の範囲内であることが好ましく、6?8の範囲内であることが特に好ましい。pHが5.5未満であると、塗膜の耐BHM性が低下する傾向にある。一方、pHが8.0超であると、エマルジョンの安定性が低下する傾向にある。」とする訂正。 (21)訂正事項u:特許明細書段落【0046】の記載「共重合体エマルジョンは、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分のうちの少なくとも2種以上の単量体を、乳化剤、重合開始剤の存在下、水性媒体中、必要に応じて還元剤、連鎖移動剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加して重合することにより調製することができる。」を、 「共重合体エマルジョンは、(a)成分、及び(c)成分のうちの少なくとも2種以上の単量体を、乳化剤、重合開始剤の存在下、水性媒体中、必要に応じて還元剤、連鎖移動剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加して重合することにより調製することができる。」とする訂正。 (22)訂正事項v:特許明細書段落【0049】の記載「(b)成分のうち、例えば、スチレン-3-スルホン酸ナトリウム、スチレン-4-スルホン酸塩、α-メチルスチレン-3-スルホン酸塩、α-メチルスチレン-4-スルホン酸塩、アリルアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルの硫酸塩類、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルの硫酸塩類等は、反応性乳化剤として作用するものである。従って、これらの単量体又はその塩を(b)成分として使用する場合には、別途の乳化剤は必ずしも用いなくともよい。但し、所望により別途の乳化剤を更に添加してもよい。好ましい別途の乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び水溶性高分子等を挙げることができる。」を、 「好ましい乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び水溶性高分子等を挙げることができる。」とする訂正。 (23)訂正事項w:特許明細書段落【0054】の記載「乳化重合に際し、乳化剤は、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、又はこれらを組み合わせた方法によって重合系に添加することができる。乳化剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し0.05質量部(反応性乳化剤として作用する(b)成分を含む)以上であることが好ましい。但し、反応性乳化剤として作用する(b)成分が存在しない場合においては、乳化剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し5質量部以下であることが好ましい。」を、 「乳化重合に際し、乳化剤は、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、又はこれらを組み合わせた方法によって重合系に添加することができる。乳化剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し0.05質量部以上であることが好ましい。但し、乳化剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し5質量部以下であることが好ましい。」とする訂正。 (24)訂正事項x:特許明細書段落【0079】の記載「なお、本実施形態のアクリルエマルジョン組成物には、共重合体(A)及びマグネシウム化合物以外の成分として、更に、消泡剤を添加することもできる。また(c)成分としてアクロレイン、ジアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有不飽和化合物を用いた共重合体(A)に対しては、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物を添加してもよい。」を、 「なお、本実施形態のアクリルエマルジョン組成物には、共重合体(A)及びマグネシウム化合物以外の成分として、更に、消泡剤を添加することもできる。」とする訂正。 2.訂正の適否の判断 (1)訂正事項aについて 訂正事項a-1は、訂正前の請求項1における「アクリル共重合体」について、特許明細書の段落【0017】?【0020】、【0024】?【0025】、【0082】?【0092】の記載に基づいて減縮したものであり、訂正事項a-2は、訂正前の請求項3の「pH」を、特許明細書の段落【0044】の記載および同段落【0082】?【0092】の記載に基づいて減縮したものであって、ともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、ともに特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項b?xについて 訂正事項b?xは訂正事項aに係る特許請求の範囲の減縮にともなって、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、この訂正は、訂正事項aと同様に、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、訂正事項a?xは、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定および同法同条第5項の規定により準用する同法第126条第3項および第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3.本件発明 本件特許3690418号の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、 前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、 前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、 前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、 アクリルエマルジョン組成物。 【請求項2】 前記マグネシウム化合物が、Mg(OH)_(2)、MgO、MgCO_(3)、及び3MgCO_(3)・Mg(OH)_(2)・3H_(2)Oからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項3】 pHが5.5?8.0である請求項1又は2に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項4】 床磨き剤として用いられる請求項1?3のいずれか一項に記載のアクリルエマルジョン組成物。」 第4.当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、審判請求書、平成18年12月13日付け弁駁書、平成19年3月27日付け上申書および平成19年8月24日付け弁駁書において、「特許第3690418号の請求項1?4に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、その証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第4号証を提出しているところ、その理由の概略は以下のとおりである。 (1)無効理由1 本件発明1?4は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 (2)無効理由2 本件発明1?4は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証に記載された発明、あるいは甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3)無効理由3 本件発明1?4は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証および乙第2号証(甲第3号証)に記載された発明に基いて、あるいは甲第1号証、甲第2号証および乙第2号証(甲第3号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (4)無効理由4 本件発明1?4は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証に記載された発明と、甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて、あるいは甲第1号証および甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて、または甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (5)無効理由5 本件発明3は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証および甲第4号証に記載された発明と、甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 なお、無効理由3は、平成18年12月13日付け弁駁書において新たに主張された理由であるが、これは平成18年10月27日付け訂正請求に伴うものであり、請求理由の補正として認められるものである(口頭審理陳述要領書参照)。 また、無効理由4および5は、請求人の平成19年3月27日付け上申書において新たに主張された理由であるが、これについても同訂正請求に伴うものであり、当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことは明らかであるから、特許法第131条の2第2項の規定により、平成19年7月3日付けで請求の理由の補正を許可する旨の決定がなされたものである。 記 甲第1号証:特開平9-176578号公報 甲第2号証:特公昭49-1458号公報 甲第3号証:「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-第4回?第5回のまとめについて」(平成12年12月22日)(乙第2号証と同じ) 甲第4号証:特開昭59-184271号公報 2.被請求人の主張 被請求人は、平成18年10月27日付け答弁書、平成19年3月13日付け口頭審理陳述要領書、平成19年5月24日付け上申書、平成19年7月17日付け答弁書、および平成19年7月17日付け訂正請求書を提出し、本願発明1?4について「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、その証拠方法として下記の乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。 記 乙第1号証:日本化学会編「新実験化学講座8 無機化合物の合成〔III〕」、丸善株式会社、昭和52年6月20日発行、第1569頁?第1570頁、第1575頁?第1576頁 乙第2号証:「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-第4回?第5回のまとめについて」(平成12年12月22日) 乙第3号証:平成19年2月27日、加藤稔作成「比較実験証明書」 第5.甲各号証の記載事項 請求人の提出した甲第1号証?甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 1)甲第1号証:特開平9-176578号公報 記載事項1-1 「【請求項1】 a) 重合単位として0.5重量%から100重量%のアセトアセテート官能性モノマーを含むポリマーであって、-20℃から150℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマー、および b) 2価金属イオンを含み、 アセトアセテート官能性モノマーの2価金属イオンに対するモル比が20:1から2:1の範囲にあり、組成物が実質的にスルホポリエステルを含まず、組成物が実質的にアミノ官能性シランを含まない、 被覆組成物。 【請求項2】 前記2価金属イオンがアルカリ土類金属イオンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の被覆組成物。 【請求項3】 前記ポリマーがさらに、重合単位として3%から50%の酸官能性モノマーを含み、アセトアセテート官能性モノマーと酸官能性モノマーの合計のモル数の2価金属イオンに対するモル比が20:1から2:1の範囲にある、請求項1記載の被覆組成物。」(特許請求の範囲請求項1?3) 記載事項1-2 「本発明は水性被覆組成物に関する。より詳細には、本発明の水性被覆組成物は低レベルの揮発性有機物質(VOC)を含有し、その乾燥フィルムは優れた抵抗特性と耐久性を有する。本発明の水性被覆組成物は、抵抗特性と耐久性が重要なポリッシュおよび被覆用途に有用である。」(段落【0001】) 記載事項1-3 「本発明は、亜鉛及び多量のVOCに伴う環境上の課題を、高価なアミノ官能性シランを使用しないで解決するものである。本発明者はアセトアセテート官能性ポリマーと特定の2価金属イオンを配合することにより、VOCの量が7%以下である水性組成物から抵抗特性と耐久性を有する被覆を形成できることを見いだした。本発明の被覆組成物は強靱で抵抗性のある被覆を、床、壁、木材、金属、プラスチック、石、紙、皮革およびコンクリートのような種々の基体上に形成するために使用する事ができる。」(段落【0004】) 記載事項1-4 「本発明のポリマーはほとんどの場合はアセトアセテート官能性モノマーと他のモノマーとのコポリマーである。本明細書において、『(メタ)アクリレート』とは、アクリレートとメタアクリレートのいずれかを意味するものとして使用される。コモノマーとして有用なものの例としては、エチレンのような単純なオレフィン、アルキル基が1から20個、好ましくは1から12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソボルニルメタアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンのようなビニルハライド、アルキルマレエート、およびアルキルフマレートがあげられる。 本発明の好ましい実施態様においては、ポリマーは重合単位として酸官能性モノマーまたはそれらの塩をも含有する。好適な酸官能性モノマーとしては、例えば、カルボン酸モノマー、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタアリルスルホン酸ナトリウム、ホスホエチルメタアクリレート、または2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸があげられる。好ましくは、酸官能性モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、およびイタコン酸などのカルボン酸モノマーである。酸官能性モノマーは、組成物から形成された乾燥フィルムの除去性(removability)を提供するのに十分な量で使用される。酸官能性モノマーの量は、好ましくはポリマー重量の3%よりも多く、より好ましくは5から75重量%である。最も好ましくは、酸官能性モノマーの量はポリマー重量の8重量%から50重量%であり、乾燥した被覆に洗剤抵抗性と耐水性を付与する。あまりに多量の酸官能性モノマーをポリマーに加えると、フィルムのアルカリ洗剤溶液による耐スクラブ性、および水性溶液に対する耐性が大きく低下する。」(段落【0011】?【0012】) 記載事項1-5 「・・・本発明のポリマーは-20℃から150℃、好ましくは0℃から150℃の範囲のガラス転移温度を有する。溶解したポリマーがフィルム形成工程で使用される場合、より高いガラス転移温度を有するポリマーはフィルム形成性であるので、容易に使用することができる。」(段落【0019】) 記載事項1-6 「2価金属化合物 本発明の被覆組成物はアセトアセテート官能性ポリマーに加えて2価金属イオンを含む。本発明において有用な2価金属イオンとしては、たとえば、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、およびそれらの混合物が上げられる。好ましくは被覆組成物は亜鉛を含まない。より好ましくは本発明に使用される2価金属イオンはアルカリ土類金属イオンである。カルシウム、マグネシウム、およびそれらの混合物が特に好ましい。アルカリ土類金属イオンを含む被覆組成物は亜鉛を含む被覆組成物よりも、より硬い被覆表面を与える。すなわち、より低いガラス転移温度のポリマーをアルカリ土類金属イオンとともに使用すことができ、その結果、被覆組成物中のVOC造膜助剤の量を低くすることができる。『低VOC』とは、被覆組成物中の揮発性有機化合物の総量が被覆組成物総量の15重量%未満であることをいい、好ましくは9重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。」(段落【0021】) 記載事項1-7 「2価金属イオンは好ましくは金属酸化物、テトラ-アミノ金属炭酸水素錯体、-NH-もしくは-NH_(2)-官能性化合物の金属錯体、または金属塩として導入される。好ましくはたとえば水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物が使用される。」(段落【0024】) 記載事項1-8 「塗布 本発明は、種々の水平及び垂直平面に対する表面被覆を形成するために使用することのできる被覆組成物を提供する。より詳細には、本発明の被覆組成物はポリッシュ剤、インク、および他の被覆に有用である。被覆組成物から形成された乾燥フィルムは、耐ブラックヒールマーク性、耐スカッフマーク性、耐プリント性、耐傷つき性、耐ブロック性、および耐衝撃性のような特性について改良を示す。 本発明の被覆組成物が塗布される基体としては、たとえば弾性および非弾性の床、壁、大理石、石、テラゾ、コンクリート、アスファルト、ルーフィング基体、リノリュームのような建築材料、木材、パーチクルボード、中密度フィバーボード(MDF)、金属、セラミック、皮革、プスチック、ガラス、紙、厚紙、キッチンキャビネットおよびカウンタートップ、並びに家具製品などの工業材料があげられる。好ましい基体は家具、フローリング、および紙である。本発明の被覆組成物は、スプレー、ブラシ、モップ、ローラー、およびダイレクトまたはリバースロール塗布のような公知の方法により基体に塗布することができる。」(段落【0030】?【0031】) 記載事項1-9 「実施例 以下の全ての実施例は配合された被覆組成物について行われた。本発明のエマルションポリマーの配合は、公知の一般的な方法で行われた。使用された成分、それらの割合および添加方法は一般的に行われているものである。 実施例1(比較例) 実施例1-3は、アセトアセテート官能性ポリマーを含む被覆組成物に異なった量のカルシウムを加えると被覆の耐久性と抵抗性が改良されることを示すものである。実施例1の被覆組成物はアセトアセテート官能性ポリマーを含むが、2価金属を含まない。 ラテックスポリマーの調製 ・・・、ブチルアクリレート35.38g、メチルメタアクリレート17.15g、メタアクリル酸9.23gおよび水43.93gのモノマーエマルション混合物を、次いでケトルに加え、20gの水中の過硫酸ナトリウム4.25gを加え、5分後に61gの水中の炭酸ナトリウム4.15gを加えた。5分間保持した後、22.14gのRhodapex CO-436、ラウリル硫酸ナトリウム5.07g、ブチルアクリレート(BA)737.92g、アセトアセトキシエチルメタアクリレート(AAEM)336.2g、メチルメタアクリレート(MMA)370.41g、メタアクリル酸(MAA)192.47gおよび水916.07gのモノマーエマルション混合物を、約85℃で90分にわたり徐々に加えた。・・・。冷却後、ラテックスを55gの水で希釈した。ラテックスの測定ガラス転移温度は22℃であり、46BA/22MMA/20AAEM/12MAAのポリマーを含んでいた。次いで水を加え、固形分を38%にした。 水性被覆組成物の配合 以下の配合により実施例1-19、および25-32の被覆組成物を調製した。水の量は固形分を23.8%にする量であり、それぞれのラテックスの固形分と造膜助剤の量の相違を補償した。以下の物質を示した順番で添加した。 【表1】 ![]() 4%の造膜助剤(VOC)を有する実施例1の被覆組成物について、耐久性と抵抗特性を評価した。結果を表2に示す。」(段落【0038】?【0042】) 記載事項1-10 「実施例16 実施例16-19は、2段階の異なる量のアセトアセテート官能性を含むポリマーを使用した場合の耐久性と抵抗特性についての改良について示す。実施例16はアセトアセテート官能性を含まない比較例である。ポリマーラテックスを、36BA/39MMA/15STY/10MAAのモノマー組成で、実施例1に記載された方法で調製し、Tg=59℃のポリマーを得た。水酸化マグネシウム4.55gのスラリーを、実施例4に記載した手順で800gのラテックスに加え、0.5当量のマグネシウムを含むラテックスを調製した。この後処理されたラテックスは、実施例1に記載されているようにして被覆組成物に配合された。ただし、6.0gのジエチレングリコールエチルエーテルを使用した。実施例16の被覆組成物について、耐久性と抵抗特性を評価した。結果を表6に示す。 実施例17 実施例17の被覆組成物は、5%のAAEMを有するポリマーを含む。ポリマーラテックスを、35BA(ブチルアクリレート)/23MMA(メチルメタクリレート)/5AAEM(アセトアセトキシエチルメタクリレート)/25STY(スチレン)/12MAA(メタアクリル酸)のモノマー組成で・・・調製し、Tg=57℃のポリマーを得た。水酸化マグネシウム4.55gのスラリーを、・・・800gのラテックスに加え、0.5当量のマグネシウムを含むラテックスを調製した。この後処理されたラテックスは、・・・被覆組成物に配合された。実施例17の被覆組成物について、耐久性と抵抗特性を評価した。結果を第6表に示す。」(段落【0063】?【0064】) 記載事項1-11 「【表6】 ![]() 」(段落【0067】) 記載事項1-12 「実施例21(比較例) 実施例21の被覆組成物は、2価金属イオンを含むが、AAEMを含まない比較例である。ポリマーラテックスを、実施例20と同じ組成、同じ方法で調製した。水酸化マグネシウム4.55gのスラリーを、実施例4に記載した手順で800gのラテックスに加え、0.5当量のマグネシウムを含むラテックスを調製した。この後処理されたラテックスは、実施例20に記載されているようにして、後処理されたラテックス65gと水16gを使用して被覆組成物に配合された。実施例21の被覆組成物について、耐久性と抵抗特性を評価した。結果を表9に示す。」(段落【0073】) 記載事項1-13 「実施例23 実施例23の被覆組成物は、AAEMも2価金属イオンも含む。ポリマーラテックスを、実施例22と同じ組成、同じ方法で調製した。水酸化マグネシウム4.55gのスラリーを、実施例4に記載した手順で800gのラテックスに加え、0.5当量のマグネシウムを含むラテックスを調製した。この後処理されたラテックスは、実施例20に記載されているようにして、後処理されたラテックス66gと水15gを使用して被覆組成物に配合された。実施例23の被覆組成物について、耐久性と抵抗特性を評価した。結果を表9に示す。 実施例24 実施例20-23の組成物について、耐久性と抵抗特性を評価した。表9に示された結果は、アセトアセテート官能性と2価金属イオンを有する本発明の組成物を顔料を含む系に使用した場合の、耐傷つき性、耐スカッフ性、耐ブラックヒールマーク性における向上を示している。 【表9】 ![]() 」(段落【0075】?【0077】) 2)甲第2号証:特公昭49-1458号公報 記載事項2-1 「1(a) 少なくとも一つのモノエチレン不飽和単量体の乳化重合によって得られる水に不溶の付加重合体の10?100重量部、 (b) アルカリ可溶性樹脂が(a)の重量基準で50重量%を越えないという条件付でアルカリ可溶性樹脂の0?50重量部、 (c) 蝋の0?90重量部、 (d) (a)、(b)及び(c)の合計の0.5?20重量%の量で湿潤、乳化及び分散剤、 (e) (a)の約1?50重量%の量の少なくとも一つの多価金属錯体 を含む、床、家具及び類似物に光沢を与えるために使用するのに適する組成物において、該多価金属錯体が二座アミノ酸配位子の多価金属キレート又は二座アミノ酸配位子の多価金属アンモニウムキレートである改良。」(特許請求の範囲) 記載事項2-2 「本発明は、水不溶性付加重合体、多価金属キレート及び、任意成分として、蝋及びアルカリ可溶性樹脂を含み、多価金属キレートは多価金属イオン及び二座アミノ酸配位子から導かれる、被覆組成物、特に床光沢組成物に関するものである。 本発明は木、・・・高い光沢の仕上げをつくる被覆組成物、特に床光沢組成物、として有用な分散を含む組成物に関するものである。」(第1頁1欄25?35行) 記載事項2-3 「本発明の床光沢処方物に用いられる多価金属錯体には、多価金属残基、有機二座アミノ酸配位子残基及び、キレートが可溶化した形態で処方物に加える場合は、概してアルカリ性残基が含まれる。多価金属イオンはベリリウム・・・、マグネシウム、亜鉛、・・・又は他の多価金属イオンとすることができ、これらは、少なくとも約1重量%のような、水中に顕著な溶解性を有する酸化物、水酸化物又は塩基性、酸性又は中性塩として組成物に加えることができる。」(第2頁3欄24?36行) 記載事項2-4 「水不溶性重合体は、エステルのアルコール残基が・・・、炭素数1?8のアルカノールから導かれるアクリル酸又はメタクリル酸のアクリルエステルを含む、一以上のモノエチレン不飽和単量体の乳化重合によって得られる。好ましい重合体はアクリル酸のこれらのエステルの少くとも一つと(C_(1)?C_(4))-アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン(o,m又はp)塩化ビニル又は塩化ビニリデンから成る群から選ばれる一以上の単量体とを含む共重合体である。好ましいタイプの重合体は、アクリル酸エステル成分の一部又は全部の代りに、(C_(5)?C_(18))-アルキルメタクリレートを含むことができる。これらの共重合体の混合物も使用できる。・・・ 共重合体はマレイン酸、フマル酸、アコニット酸、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はイタコン酸のようなα・β-モノエチル不飽和酸の1?18%を含むことができ、後者の三つが希薄なアンモニア水のようなアルカリ性媒質の適用によって容易に除去可能な堆積した被覆を作る目的に好ましい。」(第3頁5欄23行?同頁6欄10行) 3)甲第3号証:「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-第4回?第5回のまとめについて」 記載事項3-1 「1.個別の揮発性有機化合物(VOS)の指針値等について 今般、室内空気汚染に係るガイドラインとして、新たにエチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチルの室内濃度に関する指針値等をとりまとめたので、下記に概要を示す。 (1)室内濃度に関する指針値の概要(別添1) ここに示した指針値は、現状において入手可能な科学的知見に基づき、人がその化学物質の示された濃度以下の暴露を一生涯受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろうとの判断により設定された値である。・・・ 今回指針値を策定した4物質(エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル)は、・・・選定されたものである。 これら物質の指針値は、いづれも長期間の暴露によって起こる毒性を指標として策定している。 指針値の策定によって、室内空気汚染の低減化が促進され、快適で健康な室内空間が確保されることを期待する。」(2/44ページ) 4)甲第4号証:特開昭59-184271号公報 記載事項4-1 「(1) 酸性単量体少なくとも1種の残基約3重量%?50重量%を含有するエマルジョン共重合体と、その共重合体酸残基の当量当り少なくとも約15%の遷移金属イオン架橋剤を包含し、さらにアルカリ金属の塩基性の塩少なくとも1種を約10/0.10?1.0/3.0の遷移金属/アルカリ金属モル比になるように包含することを特徴とする、改善された耐久性を有する床みがき剤を生ずる床みがき剤ビヒクル組成物。」(特許請求の範囲請求項1) 記載事項4-2 「発明の分野 本発明は改善された耐久性を有する床用、家具用等のみがき剤を製造するために有効な組成物に関する。」(第2頁右下欄14?17行) 記載事項4-3 「先行技術 イオン架橋された床みがき剤ビヒクル組成物はよく知られている。床みがき剤ビヒクル組成物は水不溶性合成樹脂皮膜形成剤の水性分散物および水溶性または水分散性金属塩および錯体を包含するものと定義される。・・・酸官能性残基を含有する水不溶性エマルジョン共重合体の水性分散物をベースにしそして多価金属イオンまたは錯体架橋剤によってイオン架橋された床みがき剤組成物はよく知られている。」(第3頁左上欄5?16行) 記載事項4-4 「アクリル系重合体および共重合体は床みがき剤に最も普通に使用されている種類の樹脂である。配合されたみがき剤の改善された耐摩耗性は(a)重合体分子量の増加、(b)共重合体の硬質(即ち、高ガラス遷移温度)単量体含量の増加、(c)(もし存在するならば)共重合体中のスチレン含量の減少、(d)(もし存在するならば)共重合体中の酸官能基の増加、および(e)多価金属架橋剤の量の増加によって達成できると云うことがよく知られそして実施されている。」(第3頁右上欄17行?同頁左下欄6行) 記載事項4-5 「従来の床みがき剤ビヒクルに使用されているアクリレートと多量のスチレンとの共重合は劣った耐ブラックヒールマーク性によって特徴づけられる高光沢みがき剤ビヒクルをもたらすと云うことはよく認識されている。これ等変性アクリレート共重合体中のスチレンを減少させると、これらみがき剤の一般的耐摩耗性が改善されるであろうが、その改善は低下した光沢および劣った耐水性と耐アルカリ洗剤性と云う犠牲の上に生ずる。」(第3頁左下欄20行?同頁右下欄9行) 記載事項4-6 「本発明に使用されるイオン架橋剤は多価金属部分、有機配位子部分、および、架橋剤がキレートとして可溶化された形態で配合物に添加される場合にはアルカリ性部分を含有する多価金属錯体であってもよい。多価金属イオンは水中で少なくとも約1重量%のような適する溶解度を有する酸化物、水酸化物、塩基性塩、酸性塩または中性塩として組成物に添加することができるベリリウム・・・、マグネシウム、亜鉛、・・・またはその他多価金属のイオンであってもよい。」(第9頁左下欄2?14行) 第6.当審の判断 1.無効理由1について(特許法第29条第1項第3号違反について) (1)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、床等に適用されるポリッシュ剤として有用な被覆組成物が記載されており、その被覆組成物から形成されたフィルムは耐ブラックヒールマーク性等の改良を示すことが記載されている(記載事項1-2、1-3、1-8) そして、当該被覆組成物として、特許請求の範囲には次のとおりのものが記載されている。 「【請求項1】 a) 重合単位として0.5重量%から100重量%のアセトアセテート官能性モノマーを含むポリマーであって、-20℃から150℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマー、および b) 2価金属イオンを含み、 アセトアセテート官能性モノマーの2価金属イオンに対するモル比が20:1から2:1の範囲にあり、組成物が実質的にスルホポリエステルを含まず、組成物が実質的にアミノ官能性シランを含まない、 被覆組成物。 【請求項2】 前記2価金属イオンがアルカリ土類金属イオンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の被覆組成物。 【請求項3】 前記ポリマーがさらに、重合単位として3%から50%の酸官能性モノマーを含み、アセトアセテート官能性モノマーと酸官能性モノマーの合計のモル数の2価金属イオンに対するモル比が20:1から2:1の範囲にある、請求項1記載の被覆組成物。」(記載事項1-1)。 なお、ここで請求項3の%は請求項1の記載からみて重量%と解するのが相当である。 そして、甲第1号証には、アセトアセテート官能性モノマーを含むポリマーは、アセトアセテート官能性モノマーと他のモノマーとのコポリマーであることが記載され、他のモノマーとして、アルキル基が1から20個、好ましくは1から12個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、酸官能性モノマー(記載事項1-4)が例示されている。すなわち、当該ポリマーとしてアセトアセテート官能性モノマー、アルキル基が1から20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび酸官能性モノマーのコポリマーが開示されている。 そうであるから、甲第1号証には「a)重合単位として0.5重量%から100重量%のアセトアセテート官能性モノマーおよび3重量%から50重量%の酸官能性モノマーを含むポリマーであって、-20℃から150℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマー、および b) アルカリ土類金属イオンを含み、 アセトアセテート官能性モノマーと酸官能性モノマーの合計のモル数のアルカリ土類金属イオンに対するモル比が20:1から2:1の範囲にあり、組成物が実質的にスルホポリエステルを含まず、組成物が実質的にアミノ官能性シランを含まない、 被覆組成物。」の発明(以下、「甲1特許発明」という。)が記載されているものと認められる。 そして、甲第1号証には、実施例17に、「35BA(ブチルアクリレート)/23MMA(メチルメタクリレート)/5AAEM(アセトアセトキシエチルメタクリレート)/25STY(スチレン)/12MAA(メタアクリル酸)のモノマー組成で調製した、Tg=57℃のポリマーラテックスを得て、これを被覆組成物に配合すること」が記載されている(記載事項1-9、1-10)。 また、実施例23には、実施例17と同じ被覆組成物について、耐久性と抵抗特性を評価したことが記載されている(記載事項1-11)。 ここで、BAはブチルアクリレート、MMAはメチルメタクリレート、AAEMはアセトアセトキシエチルメタクリレート、STYはスチレン、MAAはメタクリル酸の略称を示すものであるが、以下、このように略称することがある。 また、各モノマーの前の数字は、その総和が100となること、実施例17には、「5%のAAEMを有するポリマーを含む」と記載されており、それに続いて「35BA/23MMA/5AAEM/25STY/12MAA」と記載され、そのAAEMについての数値5が一致していること、および、記載事項1-1の請求項1および記載事項1-4ではモノマー量は重量%で示されていることからみて、重量%を示すものと解するのが相当である。 さらに、甲第1号証には、実施例16および実施例21として「36BA/39MMA/15STY/10MAA」のモノマー組成で調製したTg=59℃のポリマーを含むラテックス800gに、水酸化マグネシウム4.55gのスラリーを加え、0.5当量のマグネシウムを含むラテックスを調製し、これを被覆組成物に配合することが記載されている(記載事項1-10、1-12)。 当該実施例16および実施例21は、甲1特許発明の実施例17および実施例23に対応するものであって、実施例17および実施例23のポリマー組成からAAEMを除いたポリマーを用いた比較例として記載されているものである。 以上のことから、甲第1号証には、「a)モノマー組成が『36重量%BA/39重量%MMA/15重量%STY/10重量%MAA』で、ガラス転移温度が59℃のポリマーおよびb)水酸化マグネシウム0.5当量を含むラテックスを含有する被覆組成物」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 (2)対比・判断 ア.本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明のポリマーは、BA、MMA、MAAというアクリル系モノマーを含むものであるから、アクリル共重合体といえるものである。 そして、MAAは本件発明1のエチレン系不飽和カルボン酸単量体に相当し、BA、MAAは本件発明1のアルキル(メタ)アクリレート類に相当する。 そして、甲1発明のポリマーは酸官能性モノマーであるMAAを10重量%含むものであるから、これの酸価を計算すると、652(MAA100%の場合の酸価)×0.1(ポリマー組成中のMAAの割合)=65.2mgKOHとなる。また、そのガラス転移温度は59℃であるから、本件発明1のアクリル共重合体のガラス転移温度と重複一致する。 さらに、水酸化マグネシウムは、本件発明2で「20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物」として特定されているものであり、「20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物」に相当するものであることは明らかである。 また、ラテックスは、ゴム、プラスチックなど高分子が乳化剤によりコロイド状の水中に分散した乳濁液であるから、エマルジョンといえるものである。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、「酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、 前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、 前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、 前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、 アクリルエマルジョン組成物。」である点で一致するが、次の相違点1で相違する。 【相違点1】:本件発明1は、アクリル共重合体の構成モノマーとしてスチレン(STY)を含まないのに対し、甲1発明のポリマーは構成モノマーとしてスチレン(STY)を含むものであり、そのアクリル共重合体のモノマー組成が異なる点。 相違点1に対する判断 スチレン(STY)は、その構造、物性等がアクリル系モノマーとは異なるものであるところ、共重合体において、そのモノマー組成が異なれば、その性状も異なるのが通常であるから、甲1発明のモノマー組成「36BA/39MMA/15STY/10MAA」の共重合体が、モノマーとしてSTYを含まない本件発明1のアクリル共重合体と同等のものと認めることはできない。 そして、請求人の提示する全証拠および本願出願時の技術常識を考慮してもこれに反する事情は認められない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ということはできない。 なお、これに対して、請求人は平成18年12月13日付け弁駁書において、「甲第1号証には、アクリル共重合体のコモノマーとして、スチレンとアルキル(メタ)アクリレートが同列に記載されていること、および、特許明細書の段落0024において、芳香族ビニルはアルキル(メタ)アクリレート類等とアクリル共重合体の共重合体構成モノマーとして技術的に均等のものとして記載されていることから、スチレンとアルキル(メタ)アクリレート類とは実質的に同一のものである。」旨の主張をしている。 しかしながら、まず、スチレンとアルキル(メタ)アクリレート類とはその化学構造が全く異なるモノマーであって、その物性においても異なるものであり、アクリル共重合体の共重合体構成モノマーとして実質的に同一のモノマーとはいえないものである。 そして、請求人の主張する甲第1号証のコモノマーの記載(記載事項1-4)は、甲第1号証の特許請求の範囲に記載された発明のアセトアセテート官能性モノマーを必須成分として含むポリマーのコモノマーに関する記載であって、比較例に関する記載ではない。したがって、アセトアセテート官能性モノマーを含まない甲1発明においてスチレンとアルキル(メタ)アクリレート類とが同等であることまでを示すものではない。 また、特許明細書の段落0024の記載は、本件発明1?4に関する記載であって、甲1発明において、スチレンとアルキル(メタ)アクリレート類が同等であることを示すものではない。さらにいえば、当該記載は共重合体構成モノマーとして用いることが可能なものを挙げたものであって、その作用効果において全く同一とするものではない。 よって、甲第1号証のコモノマーの記載および特許明細書の段落0024の記載は、スチレンとアクリル(メタ)アルキレートがアクリル共重合体の共重合体構成モノマーとして実質的に同一のものであることを示す根拠となるものとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 イ.本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 本件発明1は、上記1)に記載したとおり、甲第1号証に記載された発明ということはできないものであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明2?4についても、同様の理由により甲第1号証に記載された発明ということはできない。 2.無効理由2について(特許法第29条第2項違反について) (1)甲第1号証に記載された発明からの容易性について ア.本件発明1について (ア)甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とは、上記第6.1.(2)で述べた一致点で一致し、相違点1で相違するものである。 (イ)相違点に対する判断 そこで、当該相違点1について検討する。 まず、甲1発明は、甲1特許発明に対する比較例として記載されているものであって、そのスタッカビリティー、耐傷つき性において甲1特許発明に比して劣るものである(記載事項1-11)から、甲第1号証には、あえて、この比較例の組成物のポリマー組成を変更する動機付けが存在しない。 また、仮に、当業者が当該ポリマー組成を変更することを試みるとしても、甲1発明のポリマーは4種類のモノマーからなるものであり、特にその4種の中の1種のスチレンのみを変更する格別な理由も認められないし、さらに、甲第1号証には、アセトアセテート官能性モノマーと共重合可能な他のモノマーとして種々のモノマーが挙げられており(記載事項1-4)、その多くの選択肢の中から特に甲1発明のスチレンに代えてアルキル(メタ)アクリレート類を選択する理由も認められない。 そうであるから、多くの選択肢のなかから、格別の選択の動機付けもなく、甲1発明の「36BA/39MMA/15STY/10MAA」の共重合体において、そのスチレンをアルキル(メタ)アクリレート類に変更することを、当業者が容易に想到し得たものと認めることはできない。 そして、本件発明1は、特許明細書の実施例に示されているように、耐BHM性、重ね塗り性、光沢維持率、密着性において優れた特性を示すものであり、答弁書6頁の参考比較例および乙第3号証に示されているように当該特性は甲1発明に比して格別顕著なものと認められる。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 なお、請求人は平成19年8月24日付け弁駁書において、(i)答弁書6頁の参考比較例に比して特許明細書段落【0092】の表1の実施例5又は実施例7が格別優れているとは認められない旨、(ii)同参考比較例のデータと乙第3号証の表中の「本件特許発明の比較例追加」のデータが相違している点をあげて、実験結果は信憑性がない旨主張している。 しかしながら、(i)については、当該参考比較例は実施例1に対応する比較例であり、両者は、その効果において顕著な差異があるものである。そして、当該参考比較例と実施例5又は実施例7とは、スチレンの有無のみならず、アクリル共重合体のモノマー組成、水酸化マグネシウムの含有量が異なるものであるから、当該参考比較例は実施例5又は実施例7に対する比較例とはいえないものであり、その効果を対比することに技術的な意義があるものとはいえない。 また、(ii)については、前者の光沢維持性は特許明細書と同様の2週間放置後のデータと解されるのに対し、後者の光沢保持性は床置き10日後のデータであるから、その条件が相違するものであるから、評価結果が相違するのが自然であり、それをもって信憑性がないとまではいえない。 イ.本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 本件発明1は、上記ア.に記載したとおり、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないものであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明2?4についても、同様の理由により甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (2)甲第1号証および甲第2号証に記載された発明からの容易性について ア.甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、その特許請求の範囲に「(a) 少なくとも一つのモノエチレン不飽和単量体の乳化重合によって得られる水に不溶の付加重合体の10?100重量部、 (b) アルカリ可溶性樹脂が(a)の重量基準で50重量%を越えないという条件付でアルカリ可溶性樹脂の0?50重量部、 (c) 蝋の0?90重量部、 (d) (a)、(b)及び(c)の合計の0.5?20重量%の量で湿潤、乳化及び分散剤、 (e) (a)の約1?50重量%の量の少なくとも一つの多価金属錯体 を含む、床、家具及び類似物に光沢を与えるために使用するのに適する組成物。」(記載事項2-1)が記載されており、その(b)および(c)が0の場合には、「(a) 少なくとも一つのモノエチレン不飽和単量体の乳化重合によって得られる水に不溶の付加重合体の10?100重量部、 (d) (a)の0.5?20重量%の量で湿潤、乳化及び分散剤、 (e) (a)の約1?50重量%の量の少なくとも一つの多価金属錯体 を含む、床、家具及び類似物に光沢を与えるために使用するのに適する組成物。」となる。 そして、甲第2号証には(a)の水不溶性重合体の単量体として、「炭素数1?8のアルカノールから導かれるアクリル酸又はメタクリル酸のアクリルエステル(当審注:アクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルの誤記と認められる。)」が記載され(記載事項2-4)、さらに、その共重合成分としてアクリル酸、メタクリル酸のようなα・β-モノエチル不飽和酸(当審注:α・β-モノエチレン不飽和酸の誤記と認められる。)を1?18%含むことができ」ること(記載事項2-4)が記載されている。 また、甲第2号証には、当該組成物は分散を含む組成物であることが記載されている(記載事項2-2)から、当該組成物は、エマルジョンと認められる。 そうすると、甲第2号証には、「(a) 少なくとも一つの炭素数1?8のアルカノールから導かれるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルおよびα・β-モノエチレン不飽和酸1?18%の乳化重合によって得られる水に不溶の付加重合体の10?100重量部、 (d) (a)の0.5?20重量%の量で湿潤、乳化及び分散剤、 (e) (a)の約1?50重量%の量の少なくとも一つの多価金属錯体 を含む、床、家具及び類似物に光沢を与えるために使用するのに適するエマルジョン組成物。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 イ.本件発明1について (ア)甲2発明との対比 甲2発明の「(a)少なくとも一つの炭素数1?8のアルカノールから導かれるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルおよびα・β-モノエチレン不飽和酸1?18%の乳化重合によって得られる水に不溶の付加重合体」はアクリル共重合体といえるものであり、α・β-モノエチレン不飽和酸はエチレン系不飽和カルボン酸単量体に相当するものである。 さらに、甲第2号証には、多価金属錯体の多価金属イオンとしてマグネシウムイオンがあげられている(記載事項2-3)。 また、本件発明1はアクリル共重合体と、マグネシウム化合物とを含む組成物であって、他の成分を排除するものではないところ、訂正明細書の段落【0065】に分散剤、乳化剤を加えてもよいことが記載されているから、本件発明1は甲2発明の(d)成分を含む態様を包含するものである。 そうであるから、本件発明1と甲2発明とは、 「アクリル共重合体と、マグネシウム化合物と、を含み、前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、アクリルエマルジョン組成物。」の点で一致し、次の相違点2?5で相違する。 【相違点2】:本件発明1は、アクリル共重合体が「酸価が30?180mgKOH/gである」と特定されているのに対し、甲2発明の付加重合体には係る特定はなされていない点。 【相違点3】:本件発明1は、アクリル共重合体が「ガラス転移点(Tg)が-30?70℃である」と特定されているのに対し、甲2発明の付加重合体には係る特定はなされていない点。 【相違点4】:本件発明1は、マグネシウム化合物が「20℃における水溶解度が1質量%未満である」と特定されているのに対し、甲2発明の多価金属錯体には係る特定はなされていない点。 【相違点5】:本件発明1は、「マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量である」と限定されているのに対し、甲2発明ではかかる限定はなされていない点。 (イ)相違点に対する判断 相違点4について 甲第2号証には、多価金属錯体に関し、「本発明の床光沢処方物に用いられる多価金属錯体には、多価金属残基、有機二座アミノ酸配位子残基及び、キレートが可溶化した形態で処方物に加える場合は、概してアルカリ性残基が含まれる。多価金属イオンはベリリウム・・・、マグネシウム、亜鉛、・・・又は他の多価金属イオンとすることができ、これらは、少なくとも約1重量%のような、水中に顕著な溶解性を有する酸化物、水酸化物又は塩基性、酸性又は中性塩として組成物に加えることができる。」(記載事項2-3)と記載されている。甲第2号証には、その溶解性について、温度の規定はなされていないものの、溶解性とは、通常室温での溶解性を意味すると解するのが自然であり、本件の20℃との条件と実質的な差異はないものと認められる。 そして、上記記載事項2-3には、「少なくとも約1重量%のような、水中に顕著な溶解性を有する酸化物・・・」と記載されているのであるから、「20℃における水溶解度が1質量%未満である」マグネシウム化合物を含まないことは明らかであるし、この記載は「20℃における水溶解度が1質量%未満である」マグネシウム化合物を適用することを阻害する要因となるものといえる。 また、水酸化マグネシウムは訂正明細書段落【0086】に記載されているように20℃における水溶解度が0.01質量%以下であるから、たとえ甲第1号証に2価金属イオンとして、水酸化マグネシウムが記載されているとしても、上記甲第2号証の記載に接した当業者が、甲第2号証の多価金属錯体として水酸化マグネシウムを適用することを容易に想到するものとは認められない。 そして、訂正明細書には、20℃における水溶解度が0.01質量%以下のMg(OH)_(2)を用いる実施例1は、それに対応する20℃における水溶解度が56.7質量%のMg(CH_(3)COO)_(2)を用いる比較例2に比して、顕著な効果を奏することが記載されている。 したがって、甲2発明の多価金属錯体として、「20℃における水溶解度が1質量%未満である」マグネシウム化合を適用することを当業者が容易になし得たものとは認められない。 上記のとおりであるから、相違点2、3、5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証および甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 ウ.本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 本件発明1は、上記1)に記載したとおり、甲第2号証および甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないものであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明2?4についても、同様の理由により甲第2号証および甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 3.無効理由3について(特許法第29条第2項違反について) (1)甲第1号証および乙第2号証(甲第3号証と同じ、以下「甲第3号証」という。)に記載された発明からの容易性について ア.本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とは、上記第6.1.(2)で述べた一致点で一致し、相違点1で相違するものである。 (イ)相違点に対する判断 甲第3号証には、シックハウス(室内空気汚染)問題に係る検討会において、個別の揮発性有機化合物(VOC)の指針値として、スチレンに関する指針値が策定されたことが記載されている(記載事項3-1)。 しかしながら、これは、その個別の揮発性有機化合物としてのスチレンに関する指針値が示されているのみであって、スチレンを構成モノマーとする共重合ポリマーについては何ら記載されていない。 そして、当該指針が有機化合物の揮発性の問題であることに鑑みれば、ポリマー中の共重合成分としてのスチレンは、スチレン単独化合物と同様の揮発性を有するものではないから、甲第3号証の記載からスチレン共重合ポリマーについても同様の問題が生ずることを想定することはできない。 そうであるから、甲第3号証の記載は、甲1発明のスチレンを他のモノマーに変更する動機付けとなるものではない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証および甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 イ.本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 本件発明1は、上記1)に記載したとおり、甲第1号証および甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないものであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明2?4についても、同様の理由により甲第1号証および甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (2)甲第1号証、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明からの容易性について ア.本件発明1について 本件発明1が甲第2号証および甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないことは上記第6.2.(2)において述べたとおりであり、また、甲第3号証にはスチレン含有ポリマーに関する記載はなく、ポリマー組成の変更の動機付けとなるものではないことは上記第6.3.(1)において述べたとおりである。 したがって、本件発明1が、甲第1号証、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 イ.本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 本件発明1は、上記1)に記載したとおり、甲第1号証、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないものであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明2?4についても、同様の理由により甲第1号証、甲第2号証および甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 4.無効理由4について(特許法第29条第2項違反について) (1)甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術からの、または甲第1号証、甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術からの、あるいは甲第1号証および甲第4号証に記載された発明からの容易性について ア.本件発明1について 上記第6.3.(1)で述べたように甲第3号証には、スチレン含有ポリマーに関する記載はない。 また、甲第4号証には、床みがき剤に使用されるアクリル共重合体において、共重合体中のスチレン含量の減少により耐摩耗性が改善されるが、光沢の低下、劣った耐水性と耐アルカリ洗剤性という犠牲の上のものであることが記載されている(記載事項4-4、4-5)。 しかしながら、この記載は、水不溶性合成樹脂皮膜形成剤の水性分散物および水溶性または水分散性金属塩および錯体を包含する床みがき剤ビヒクル組成物に関する記載であり(記載事項4-1?4-3)、その水溶性または水分散性金属塩および錯体とは、「本発明に使用されるイオン架橋剤は多価金属部分、有機配位子部分、および、架橋剤がキレートとして可溶化された形態で配合物に添加される場合にはアルカリ性部分を含有する多価金属錯体であってもよい。多価金属イオンは水中で少なくとも約1重量%のような適する溶解度を有する酸化物、水酸化物、塩基性塩、酸性塩または中性塩として組成物に添加することができるベリリウム・・・、マグネシウム、亜鉛、・・・またはその他多価金属のイオンであってもよい。」(記載事項4-6)と記載されているように、「水中で少なくとも約1重量%のような適する溶解度を有する酸化物、水酸化物、塩基性塩、酸性塩または中性塩」であって、水酸化マグネシウムについては記載されていない。 したがって、甲第4号証には、「水中で少なくとも約1重量%のような適する溶解度を有する酸化物、水酸化物、塩基性塩、酸性塩または中性塩」を含有する床みがき剤組成物が記載されているのみであり、その上位概念である「多価金属イオンによってイオン架橋された床みがき剤組成物」全般において、「床みがき剤の耐摩耗性を向上させるために共重合体のスチレン含量低下させること」が周知であることまでは記載されていない。 そうであるから、甲第4号証の記載からは、請求人の主張する「多価金属イオンによってイオン架橋された床みがき剤組成物おいて、床みがき剤の耐摩耗性を向上させるために共重合体のスチレン含量低下させること」が周知であるということはできない。 また、甲第4号証に記載された技術を、水酸化マグネシウムを含有する甲1発明に対して適用することを当業が容易に想到するものとも認められない。 さらに、甲第1号証の特許請求の範囲に記載された発明は、甲第4号証に記載されているような先行技術を背景としているものであり、その抵抗特性と耐久性、具体的には耐ブラックヒールマーク性、耐スカッフ性、耐傷付き性等をアセトアセテート官能性モノマーを用いることによって解決するものであり、その比較例である甲1発明に対して、あえて光沢の低下、劣った耐水性と耐アルカリ洗剤性という犠牲を伴うスチレンの減少という手段を選択する動機付けが存在しない。 したがって、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないし、甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 さらに、本件発明1が、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記第6.2.(2)において述べたとおりである。そして、甲第3号証および/または甲第4号証には請求人の主張するような周知技術は記載されていないことは上記したとおりであるから、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいうことはできない。 イ.本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 本件発明1は、上記1)に記載したとおり、甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないものであり、また、甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできないものであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明2?4についても、同様の理由により甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないものであり、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。さらに、甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできないものである。 5.無効理由5について(特許法第29条第2項違反について) 本件発明3は、本件発明1を直接的あるいは間接的に引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含むものである。 上記第6.3.(1)で述べたように甲第3号証には、スチレン含有ポリマーに関する記載はない。 そして、本件発明1は、上記第6.4.(1).ア.で述べたように甲第1号証および甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできないものである。 したがって、本件発明1は、甲第1号証および甲第4号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 そうであるから、本件発明1を特定するために必要な事項をすべて含む本件発明3についても同様の理由により、甲第1号証および甲第4号証に記載された発明並びに甲第3号証および/または甲第4号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 6.まとめ 以上のとおりであって、本件発明1?4は、いずれも特許法第29条第1項第3号の規定および同法第29条第2項の規定に違反するものではない。 第7.結び 以上のとおりであるから、請求人の主張および証拠方法によっては、本件発明1?4の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 アクリルエマルジョン組成物 【技術分野】 【0001】 本発明はアクリルエマルジョン組成物に関し、更に詳しくは、床磨き剤用、及び家具、車両等の艶出し剤用の組成物として好適なアクリルエマルジョン組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ホテル、デパート等で用いられる床材には美麗な外観が要求されるため、各種の床磨き剤(艶出し剤)が従来使用されている。一方、これらの床材は靴(特に、婦人用のハイヒール)等による過酷な接触を繰り返し受けるため、優れた美観性のみならず、例えば耐ブラックヒールマーク(BHM)性をはじめとする高度の耐久性をも要求される。これらの要求を満たすべく、銅や鉄等の重金属のスルホン酸塩構造を有するエチレン系不飽和カルボン酸共重合体を用いた水性被覆組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。但し、環境に対する負荷を軽減する等の目的から、重金属類、特に亜鉛を用いない艶出し剤等の開発が近年求められている。 【0003】 重金属類を使用しないものとしては、架橋性不飽和単量体を用いた、耐煮沸性に優れた艶出し剤が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、近年、床磨き剤はより高いレベルの耐久性を有するものであることが要求されており、特許文献2において開示された艶出し剤(床磨き剤)であってもこのような要求を十分に満足できるものとはいえなかった。また、再塗装に先立つアルカリによる剥離性も十分とはいえないため、更なる改良を図る必要性がある。 【0004】 一方、優れた耐久性、光沢性、及び密着性等を備えたものとして、所定の(メタ)アクリレート単量体とエチレン性不飽和カルボン酸とを含む単量体成分を乳化重合してなる水性共重合体ラテックスが開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、ガラス転移点(Tg)が22℃より高い所定の酸性単量体の共重合体と、遷移金属化合物とを反応させて得られる生成物を含む床磨き剤等に使用される組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。 【0005】 しかしながら、近年はコンクリート、石材、木材等の各種基材への密着性及び重ね塗り性を改善することが要求されており、前記特許文献3、4において開示された水性共重合体ラテックスや床磨き剤用の組成物を用いた床磨き剤はこれらの要求を必ずしも十分に満足するものであるとはいえなかった。 【特許文献1】特表平8-501577号公報 【特許文献2】特公平1-59310号公報 【特許文献3】特開平4-311712号公報 【特許文献4】特開平2-219863号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重金属を用いることなく、耐BHM性、重ね塗り性、光沢保持性、及び密着性に優れた床磨き剤として好適なアクリルエマルジョン組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、その酸価が所定の範囲内であるアクリル共重合体と、水溶解度が比較的低い難溶性のマグネシウム化合物とを含むエマルジョン組成物によって、上記の課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0008】 即ち、本発明によれば、以下に示すアクリルエマルジョン組成物が提供される。 【0009】 [1]酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、アクリルエマルジョン組成物。 【0010】 【0011】 [2]前記マグネシウム化合物が、Mg(OH)_(2)、MgO、MgCO_(3)、及び3MgCO_(3)・Mg(OH)_(2)・3H_(2)Oからなる群より選択される少なくとも1種である前記[1]に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【0012】 [3]pHが5.5?8.0である前記[1]又は[2]に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【0013】 [4]床磨き剤として用いられる前記[1]?[3]のいずれかに記載のアクリルエマルジョン組成物。 【発明の効果】 【0014】 本発明のアクリルエマルジョン組成物は、酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物とを含み、マグネシウム化合物の含有量が、アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であるものであるため、重金属を用いることなく、耐BHM性、重ね塗り性、光沢保持性、及び密着性に優れた床磨き剤として好適なものである。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。 【0016】 本発明のアクリルエマルジョン組成物は、酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃の純水に対する水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物とを含み、マグネシウム化合物の含有量が、アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である。以下、その詳細について説明する。 【0017】 (1)アクリル共重合体(共重合体(A)) 本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物に含まれるアクリル共重合体(以下、単に「共重合体(A)」ともいう)としては、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩(以下、単に「(a)成分」ともいう)、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体(以下、単に「(c)成分」ともいう)からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体を挙げることができる。 【0018】 (a)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]等のハーフエステル類等を挙げることができる。これらのエチレン系不飽和カルボン酸単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 【0019】 また、エチレン系不飽和カルボン酸単量体の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。これらのエチレン系不飽和カルボン酸単量体の塩は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、(a)成分としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、若しくはフタル酸モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]、又はこれらの2種以上の混合物が好ましい。 【0020】 共重合体(A)における(a)成分の含有率は、5?50質量%であることが好ましく、7?45質量%であることが更に好ましく、10?40質量%であることが特に好ましい。共重合体(A)における(a)成分の含有率が5質量%未満であると、床磨き剤として用いた場合に形成される塗膜の耐久性、剥離性が低下する傾向にあり、50質量%超であると、塗工性が低下する傾向にある。 【0021】 【0022】 【0023】 【0024】 (c)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。 【0025】 前記アルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、i-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。 【0026】 【0027】 【0028】 【0029】 【0030】 【0031】 【0032】 【0033】 【0034】 【0035】 上述してきたこれらの(c)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、(c)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、特に、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。 【0036】 本実施形態のアクリルエマルジョン組成物に含まれる共重合体(A)の酸価は、30?180mgKOH/gであり、40?170mgKOH/gであることが好ましく、50?160mgKOH/gであることが更に好ましい。共重合体(A)の酸価が30mgKOH/g未満であると、塗膜の耐BHM性が低下する傾向にある。一方、共重合体(A)の酸価が180mgKOH/g超であると、塗膜のレベリング性が低下する傾向にある。 【0037】 共重合体(A)のガラス転移点(Tg)は、-30?70℃であり、-20?60℃であることが好ましく、-10?60℃であることが更に好ましい。共重合体(A)のTgが-30℃未満であると、床磨き剤として用いた場合に形成される塗膜の耐BHM性や耐汚れ性が低下する。一方、70℃超であると、重ね塗り性や塗膜の密着性が低下する。 【0038】 共重合体(A)は、その示差熱量曲線の転移領域内に存在するTgが1点のみであっても2点以上であってもよい。また、示差熱量曲線の転移領域内に2点以上のTgが存在する場合、最も高いTg(℃)と最も低いTg(℃)との差ΔTg(℃)が5℃以上であることが好ましい。更に、共重合体(A)の構造を、低いTgが存在する共重合体成分と高いTgが存在する共重合体成分とが、同一粒子内に併存する異相構造とすると、床磨き剤として用いた場合に形成される塗膜の耐久性をより向上させることが可能となるために好ましい。 【0039】 共重合体(A)の平均粒子径は、0.02?0.5μmであることが好ましく、0.03?0.3μmであることが更に好ましく、0.05?0.2μmであることが特に好ましい。共重合体(A)の平均粒子径が0.02μm未満であると、床磨き剤として用いた場合に形成される塗膜のレベリング性が低下する傾向にあり、0.5μm超であると、形成される塗膜の光沢が低下するおそれがある。 【0040】 (2)マグネシウム化合物 本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物に含まれるマグネシウム化合物の20℃における水溶解度(以下、単に「水溶解度」ともいう)は、1質量%未満であり、0.7質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることが更に好ましい。マグネシウム化合物の水溶解度が1質量%以上であると、塗膜の耐久性や重ね塗り性が低下する傾向にある。なお、本発明においてはマグネシウム化合物の水溶解度の下限値については特に限定されないが、実質的な入手可能性等の観点からは10^(-5)質量%以上であればよい。 【0041】 また、本実施形態のアクリルエマルジョン組成物中のマグネシウム化合物の含有量は、共重合体(A)の酸価の0.02?1当量であり、0.03?0.7当量であることが好ましく、0.05?0.5当量であることが更に好ましい。マグネシウム化合物の含有量が、共重合体(A)の酸価の0.02当量未満であると、床磨き剤として用いた場合に形成される塗膜の耐久性が不十分となる傾向にあり、1当量超であると、塗工性が低下する傾向にある。 【0042】 なお、本明細書にいう「マグネシウム化合物の含有量が、アクリル共重合体(共重合体(A)の酸価の0.02?1当量である」とは、例えば、共重合体(A)の酸価が56mgKOH/g、マグネシウム化合物がMg(OH)_(2)(分子量=58)である場合を想定すると、この共重合体(A)の1gに対して、Mg(OH)_(2)を0.58?29mg含有することをいう。 【0043】 本実施形態のアクリルエマルジョン組成物に含まれるマグネシウム化合物の好適な具体例としては、Mg(OH)_(2)、MgO、MgCO_(3)、若しくは3MgCO_(3)・Mg(OH)_(2)・3H_(2)Oの単一物、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせた混合物を挙げることができる。 【0044】 本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物は、そのpHが5.5?8.0の範囲内であることが好ましく、6?8の範囲内であることが特に好ましい。pHが5.5未満であると、塗膜の耐BHM性が低下する傾向にある。一方、pHが8.0超であると、エマルジョンの安定性が低下する傾向にある。 【0045】 次に、本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物の製造例について説明する。本実施形態のアクリルエマルジョン組成物を製造する方法については特に制限はないが、先ず通常の乳化重合法により共重合体(A)のエマルジョン(共重合体エマルジョン)を調製し、次いでこの共重合体エマルジョンにマグネシウム化合物を添加する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。 【0046】 共重合体エマルジョンは、(a)成分、及び(c)成分のうちの少なくとも2種以上の単量体を、乳化剤、重合開始剤の存在下、水性媒体中、必要に応じて還元剤、連鎖移動剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加して重合することにより調製することができる。 【0047】 なお、(a)成分として、モノカルボン酸の無水物(例えば、(メタ)アクリル酸無水物等)、又はジカルボン酸の無水物(例えば、無水マレイン酸等)を用いる場合、これら無水物は乳化重合時の水性媒体中においてカルボン酸となるものである。従って、これら無水物をエチレン系不飽和カルボン酸単量体成分として乳化重合時に使用することもできる。 【0048】 乳化重合に際して単量体を仕込む方法としては、公知の方法、例えば、全単量体を反応系に一括して仕込む方法、単量体の一部を仕込んで反応を開始させた後、残部を連続的に若しくは分割して仕込む方法、又は単量体を連続的に若しくは分割して仕込む方法等を採用することができる。 【0049】 好ましい乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び水溶性高分子等を挙げることができる。 【0050】 前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルサルフェートナトリウム塩等の高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステル塩等を挙げることができる。より具体的には、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの陰イオン性界面活性剤は、それぞれ単独で若しくは2種以上を混合して使用することができ、又は後述する非イオン性界面活性剤や水溶性高分子の1種以上と併用することもできる。なお、陰イオン性界面活性剤としては、ラウリルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩等が特に好ましい。 【0051】 前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等を挙げることができる。これらの非イオン性界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が特に好ましい。 【0052】 また、前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタインが好ましい。一方、前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライド等が好ましい。 【0053】 前記水溶性高分子としては、例えば、部分けん化又は完全けん化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、水溶性(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体塩、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性(メタ)アクリルアミド共重合体等を挙げることができる。これらの水溶性高分子は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、水溶性高分子としては、部分けん化ポリビニルアルコール、水溶性(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体塩、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体塩等が特に好ましい。 【0054】 乳化重合に際し、乳化剤は、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、又はこれらを組み合わせた方法によって重合系に添加することができる。乳化剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し0.05質量部以上であることが好ましい。但し、乳化剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し5質量部以下であることが好ましい。 【0055】 重合開始剤としては、例えば、水溶性又は油溶性の重合開始剤を挙げることができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸塩、過酸化水素等を挙げることができる。これらの水溶性重合開始剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、水溶性重合開始剤は、必要に応じて、1種以上の還元剤、例えば、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸やその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄等と組み合わせて用いることができる。 【0056】 また、前記油溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)等を挙げることができる。これらの油溶性重合開始剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 【0057】 なお、油溶性重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)等が特に好ましい。乳化重合に際し、油溶性重合開始剤は単量体又は溶剤に溶解して用いることができる。 【0058】 乳化重合に際し、重合開始剤は、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、又はこれらを組み合わせた方法によって重合系に添加することができる。重合開始剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し0.03?3質量部であることが好ましく、0.1?1重量部であることが更に好ましい。 【0059】 連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素類(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム等)、メルカプタン類(例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、チオグリコール酸アルキル等)、キサントゲン類(例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等)、テルペン類(例えば、ジペンテン、ターピノーレン等)、1,1-ジフェニルエチレン、不飽和環状炭化水素類(例えば、9,10-ジヒドロアントラセン、1,4-ジヒドロナフタレン、インデン、1,4-シクロヘキサジエン等)、不飽和ヘテロ環状化合物(例えば、キサンテン、2,5-ジヒドロフラン等)や、α-メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。なお、前記α-メチルスチレンダイマーは、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(I)、2,4-ジフェニル-4-メチル-ペンテン(II)、及び1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン(III)の少なくとも1種からなるものが好ましく、(I)/{(II)+(III)}=40?100/0?60(質量比)であるものが更に好ましい。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 【0060】 乳化重合に際し、連鎖移動剤は、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、又はこれらを組み合わせた方法によって重合系に添加することができる。連鎖移動剤の添加量(使用量)は、全単量体100質量部に対し5質量部以下であることが好ましい。 【0061】 pH調整剤としては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム等を挙げることができる。これらのpH調整剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。pH調整剤の使用量は、全単量体100質量部に対し1質量部以下であることが好ましい。 【0062】 キレート化剤としては、例えば、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等を挙げることができる。これらのキレート化剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。キレート化剤の使用量は、全単量体100質量部に対し1質量部以下であることが好ましい。 【0063】 なお、乳化重合に際し、作業性、防災安全性、環境安全性、及び製造安全性を損なわない範囲内の量で、必要に応じて溶剤を使用することができる。溶剤の使用量は、全単量体100質量部に対し5質量部以下であることが好ましい。溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トリクロロトリフルオロエタン、ジメチルスルホキサイド、トルエン、ジ-n-ブチルフタレート、トリ(2-n-ブトキシエチル)ホスフェート、メチルピロリドン、酢酸エチル、アルコール類、セロソルブ類、カルビトール類等を挙げることができる。なお、これらの溶剤の2種以上を混合して使用することもできる。 【0064】 乳化重合に際しての重合温度は、通常、30?100℃であることが好ましく、40?95℃であることが更に好ましい。また、重合時間は、通常、1?30時間であることが好ましく、2?20時間であることが更に好ましい。乳化重合における最終的な重合転化率は、通常、90?100質量%とすることが好ましく、95?100質量%とすることが更に好ましい。 【0065】 次いで、調製した共重合体エマルジョンにマグネシウムを添加及び混合撹拌することにより、本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物を得ることができる。マグネシウム化合物は、粉末のまま添加しても、水分散体(スラリー体)として添加してもよい。マグネシウム化合物を粉末として添加する場合における粉末の平均粒子径は、0.01?100μmであることが好ましく、0.01?50μmであることが更に好ましい。また、マグネシウム化合物を水分散体として添加する場合は、適当な分散剤や乳化剤を加えてもよい。 【0066】 共重合体エマルジョンとマグネシウム化合物との混合撹拌は、共重合体(A)のTgを超える温度で行うことが好ましく、共重合体(A)のTgより5?80℃高い温度で行うことが更に好ましく、共重合体(A)のTgより10?70℃高い温度で行うことが特に好ましい。このことにより、共重合体(A)とマグネシウム化合物とを含むアクリルエマルジョン組成物を速やかに調製することができる。なお、温度が高過ぎると、共重合体エマルジョンが不安定となり凝固物が生成する場合がある。撹拌時間は、通常、30分?5時間であることが好ましく、1?4時間程度であることが更に好ましい。共重合体(A)とマグネシウム化合物との混合撹拌は、回分式、半連続式、又は連続式の何れの方式で行ってもよい。 【0067】 また、共重合体(A)とマグネシウム化合物との混合撹拌に際し、マグネシウム化合物の添加前、添加と同時、又は添加後に、更にpH調整剤としてアンモニア(水)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、エタノールアミン、アルキルアミノエタノール、カルボジイミド若しくはその誘導体、ポリカルボジイミド樹脂、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、又はヒドラジド樹脂等の成分を添加してもよい。これらの成分の添加量は、マグネシウム化合物100質量部に対し、通常、0.1?20質量部であることが好ましく、0.2?10質量部であることが更に好ましい。 【0068】 本発明の実施形態であるアクリルエマルジョン組成物には、床磨き剤として好適に使用すべく、共重合体(A)及びマグネシウム化合物以外の成分として、共重合体(A)以外の樹脂若しくはゴムエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、ワックスエマルジョン、造膜助剤、可塑剤、湿潤剤、分散剤、レベリング剤、防腐剤、充填剤等を更に添加することができる。 【0069】 前記樹脂又はゴムエマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン-アクリロニトリル共重合体エマルジョン、ポリスチレンエマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ポリウレタン樹脂エマルジョン、シリコーン樹脂エマルジョン、アクリルゴムエマルジョン、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)エマルジョン、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)エマルジョン等を挙げることができる。これらのエマルジョンは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 【0070】 前記樹脂又はゴムエマルジョンのなかでもアクリル樹脂エマルジョンが好ましい。また、アクリル樹脂エマルジョンのなかでも、アクリル樹脂のTgが-30?+70℃であるアクリル樹脂エマルジョンが好ましく、-25?+40℃であるアクリル樹脂エマルジョンが更に好ましく、-20?+20℃であるアクリル樹脂エマルジョンが特に好ましい。このようなアクリル樹脂エマルジョンを添加することにより、造膜助剤や可塑剤の使用量を減ずる、又はこれらの使用を止めることもできる。 【0071】 一方、アクリル樹脂のTgが20?100℃、好ましくは30?80℃であるアクリル樹脂エマルジョンを添加することにより、床磨き剤として用いた場合に形成される塗膜の耐汚染性を著しく高めることが可能となる。なお、2種以上のアクリル樹脂エマルジョンを添加する場合、並びにアクリル樹脂エマルジョンと、このアクリル樹脂エマルジョン以外の樹脂エマルジョン及び/又はゴムエマルジョンとを添加する場合においては、これらのエマルジョンの混合物中の樹脂又はゴム成分の平均Tgが-30?+70℃となるように調整することが好ましく、-20?+50℃となるように調整することが更に好ましく、-10?+40℃となるように調整することが特に好ましい。 【0072】 前記アクリル樹脂エマルジョンとしては、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択されるの少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートを含む共重合体のエマルジョンであることが好ましい。また、アクリル樹脂エマルジョンは、上記のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を、10?90質量%含む共重合体のエマルジョンであることが好ましく、15?85質量%含む共重合体のエマルジョンであることが更に好ましく、20?80質量%含む共重合体のエマルジョンであることが特に好ましい。 【0073】 共重合体(A)と樹脂又はゴムエマルジョンとの比率は、固形分の質量換算で、100/0?10/90であることが好ましく、100/0?15/85であることが更に好ましく、100/0?20/80であることが特に好ましく、100/0?30/70であることが最も好ましい。この比率が10/90未満であると、床磨き剤として用いる場合の重ね塗り性や、形成される塗膜の密着性が低下する傾向がある。 【0074】 前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/α,β-不飽和カルボン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル/α,β-不飽和カルボン酸/スチレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂等を挙げることができる。これらのアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらのアルカリ可溶性樹脂を添加することにより、床磨き剤用の組成物として用いた場合に形成される塗膜のレベリング性及びアルカリによる剥離性を更に向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂の添加量は、共重合体(A)100質量部に対し、通常、50質量部以下であることが好ましく、5?40質量部であることが更に好ましく、10?30質量部であることが特に好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が50質量部を超えると、形成される塗膜の耐久性が低下する傾向にある。 【0075】 前記ワックスエマルジョンとしては、例えば、ポリエチレン系エマルジョン等を挙げることができる。ワックスエマルジョンの添加量は、固形分換算で、共重合体(A)100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、5?30質量部であることが更に好ましく、10?30質量部であることが特に好ましい。ワックスエマルジョンの添加量が40質量部を超えると、形成される塗膜の光沢が低下して外観が損なわれる傾向にある。 【0076】 前記造膜助剤としては、例えば、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコール又はそのエーテル類、3-メトキシ-1-ブタノールのモノメチルエーテル又はモノエチルエーテル等を挙げることができる。また、前記可塑剤としては、例えば、トリ-n-ブトキシホスフェート、トリ(2-n-ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、多価アルコール類、沸点260℃以上のポリアルキレングリコールアルキルエーテル、イソホロン、ベンジル・n-ブチルフタレート、ジ-n-ブチルフタレート、ジメチルフタレートや、テキサノールCS-12(商品名(チッソ社製))等を挙げることができる。 【0077】 これらの造膜助剤や可塑剤は、それぞれ単独で又はそれぞれ2種以上を混合して使用することができ、また造膜助剤と可塑剤とを併用することもできる。造膜助剤と可塑剤との合計添加量は、共重合体(A)100質量部に対し、通常、60質量部以下であることが好ましく、5?50質量部であることが更に好ましく、10?40質量部であることが特に好ましい。造膜助剤と可塑剤との合計添加量が60質量部を超えると、形成される塗膜の耐久性が低下する傾向にある。なお、本実施形態のアクリルエマルジョン組成物は、低沸点の造膜助剤を減量することができ、又は添加する必要がないため、TVOCを低減することができる。 【0078】 前記湿潤剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩、シリコン系湿潤剤、アセチレン系湿潤剤等を挙げることができる。また、前記分散剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。なお、前記レベリング剤としては、例えば、ロジン酸エステル等を挙げることができる。前記防腐剤としては、例えば、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソアゾリン-3-オンと5-クロル-2-メチル-4-イソアゾリン-3-オンとの混合物等を挙げることができる。また、前記充填剤としては、例えば、コロイダルシリカ、マイカ、りん片状充填剤等を挙げることができる。 【0079】 なお、本実施形態のアクリルエマルジョン組成物には、共重合体(A)及びマグネシウム化合物以外の成分として、更に、消泡剤を添加することもできる。 【0080】 本発明のアクリルエマルジョン組成物は、床材、家具、車両等の艶出し剤として有用である。本発明のアクリルエマルジョン組成物を床磨き剤として用いる場合、布拭き、ブラシがけ、ハケスプレー等の通常の方法により塗布した後、風乾又は加熱乾燥することにより、強固な塗膜を形成することができる。 【実施例】 【0081】 以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0082】 (実施例1) 撹拌機、コンデンサー、温度計、及び滴下ロートを備えたガラス製反応容器(容量:3L)に、イオン交換水100質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3質量部、及び過硫酸アンモニウム0.1質量部を仕込み、反応容器内部の空気を窒素置換した後、内容物を撹拌しつつ温度を65℃に調整した。その後、この反応容器に、イオン交換水50質量部、ラウリル硫酸ナトリウム1質量部、過硫酸アンモニウム0.1質量部、並びに単量体としてブチルアクリレート34.8質量部、メチルメタクリレート50質量部、及びメタクリル酸15.2質量部を混合撹拌して別途調製したエマルジョンを3時間かけて滴下した。なお、滴下中は窒素を導入し、温度を80℃に保持した。滴下終了後、更に85℃で2時間撹拌し、次いで25℃に冷却して共重合体エマルジョンを得た。このときの重合転化率は98%以上であり、重合中凝固物の発生は殆どみられなかった。なお、得られた共重合体エマルジョンに含まれる共重合体のTg(℃)及び酸価(mgKOH/g)を表1に示す。 【0083】 得られた共重合体エマルジョンを50℃に保って撹拌しつつ、アクリル共重合体の酸価の0.2当量に相当するMg(OH)_(2)を徐々に添加した。添加完了後、約2時間撹拌してアクリルエマルジョン組成物を調製した。なお、Mg(OH)_(2)の20℃における水溶解度は、0.0009質量%である。 【0084】 (床磨き剤の調製) 調製したアクリルエマルジョン組成物に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びトリ(2-n-ブトキシエチル)ホスフェートを4:1(質量比)の割合で混合して、最低造膜温度(MFT)を5℃以下に調整した。次いで、固形分が19質量%となるようにイオン交換水を加えて所定の組成物を調製した。 【0085】 調製した前記組成物80質量部、ワックスエマルジョン(商品名:HYTEC E-4000(東邦化学社製)、固形分19質量%)15質量部、アルカリ可溶性樹脂水溶液(ロジンエステル樹脂の水溶液(商品名:LR400(荒川化学社製)、固形分15質量%、pH8.6))5質量部、及びフッ素系界面活性剤(C_(6)F_(17)SO_(2)N(C_(2)H_(5))CH_(2)COOK)の水溶液(固形分1質量%)0.5質量部を混合することにより、床磨き剤(実施例1)を調製した。 【0086】 (実施例2?8、比較例1?9) 表1に示す単量体及び金属化合物を、それぞれ表1に示す質量部及び当量で用いた(但し、比較例9については金属化合物を用いていない)こと以外は、前述の実施例1の場合と同様の操作により、床磨き剤(実施例2?8、比較例1?9)を調製した。なお、MgCO_(3)、MgO、Mg(CH_(3)COO)_(2)の20℃における水溶解度は、それぞれ0.01質量%以下、0.4質量%以下、56.7質量%である。また、比較例8のアクリルエマルジョン組成物を調製するに際して用いたZn錯塩は、酸化亜鉛14質量部、炭酸アンモニウム12質量部、アミノ酢酸20質量部、及び25体積%アンモニア水30質量部を、全体が100質量部となるように水に溶解することにより調製した。 【0087】 調製した各床磨き剤について耐BHM性、重ね塗り性、光沢保持性、及び密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、各評価の実施方法を以下に示す。 【0088】 [耐ブラックヒールマーク(BHM)性]:試料(床磨き剤)を、塗布量が10g/m^(2)となるようにホモジニアスタイル上に塗布し、次いで乾燥する操作を3回繰り返して、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを、人通りの多い場所(通行量=50?100人/日)に10日間設置して、ブラックヒールマーク(BHM)の付着程度を目視にて観察し、下記の基準で5段階に評価した。なお、耐BHM性は、光沢維持率とともに形成された塗膜の耐久性を評価する指標となる。 5:BHMの付着が殆ど認められない。 4:BHMの付着が少ない。 3:BHMの付着がやや多い。 2:BHMの付着が多い。 1:BHMの付着が非常に多い。 【0089】 [重ね塗り性]:試料(床磨き剤)を、塗布量が10g/m^(2)となるようにホモジニアスタイル上に塗布し、次いで乾燥する操作を5回繰り返して、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプル表面の艶引け状態を目視にて観察し、下記の基準で2段階に評価した。 ○:艶引けなし。 ×:艶引けあり。 【0090】 [光沢保持性]:前述の「耐ブラックヒールマーク(BHM)性」の評価の場合と同様の操作によって評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルについて、作製直後の60°反射率(初期光沢)、及び2週間放置後の60°反射率(放置後光沢)を測定し、下記計算式を用いて光沢維持率(%)を算出した。なお、60°反射率は、村上式光沢計(商品名)を使用して測定した。 光沢維持率(%)=(放置後光沢×100)/(初期光沢) 【0091】 [密着性]:前述の「耐ブラックヒールマーク(BHM)性」の評価の場合と同様の操作によって評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルについて、透明粘着テープ(幅18mm(日東電工社製))を用いた剥離試験を行い、評価用サンプルの側に剥離せずに残った塗膜の面積割合(%)により下記の基準で5段階に評価した。 5:90?100% 4:70?89% 3:50?69% 2:30?49% 1:0?29 【0092】 【表1】 ![]() 【0093】 表1に示すように、実施例1?8の床磨き剤は、比較例1?7、及び9の床磨き剤に比して優れた耐BHM性、重ね塗り性、光沢保持性、及び密着性を示すものであることが明らかである。 【0094】 なお、比較例8の床磨き剤については、実施例と同等の特性を示すことが明らかである。しかしながら、比較例8の床磨き剤は重金属である亜鉛(Zn)が含まれているものであり、このような重金属を含むことのない実施例1?8の床磨き剤は、環境に対する負荷軽減を図りつつも優れた特性を示すものであることが明らかである。 【産業上の利用可能性】 【0095】 本発明アクリルエマルジョン組成物は、耐BHM性、重ね塗り性、光沢保持性、及び密着性に優れた床磨き剤用の組成物として好適である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸価が30?180mgKOH/gであるとともにガラス転移点(Tg)が-30?70℃であるアクリル共重合体と、20℃における水溶解度が1質量%未満であるマグネシウム化合物と、を含み、 前記マグネシウム化合物の含有量が、前記アクリル共重合体の酸価の0.02?1当量であり、 前記アクリル共重合体が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩[(a)成分]、並びに(a)成分とは異なるエチレン系不飽和単量体[(c)成分]からなる群より選択される2種以上の単量体を共重合させてなる共重合体であり、 前記(c)成分が、アルキル(メタ)アクリレート類である、 アクリルエマルジョン組成物。 【請求項2】 前記マグネシウム化合物が、Mg(OH)_(2)、MgO、MgCO_(3)、及び3MgCO_(3)・Mg(OH)_(2)・3H_(2)Oからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項3】 pHが5.5?8.0である請求項1又は2に記載のアクリルエマルジョン組成物。 【請求項4】 床磨き剤として用いられる請求項1?3のいずれか一項に記載のアクリルエマルジョン組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2007-10-10 |
結審通知日 | 2007-10-15 |
審決日 | 2007-10-29 |
出願番号 | 特願2004-171561(P2004-171561) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(C08L)
P 1 113・ 113- YA (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 秀次 |
特許庁審判長 |
一色 由美子 |
特許庁審判官 |
井出 隆一 高原 慎太郎 |
登録日 | 2005-06-24 |
登録番号 | 特許第3690418号(P3690418) |
発明の名称 | アクリルエマルジョン組成物 |
代理人 | 特許業務法人センダ国際特許事務所 |
代理人 | 渡邉 一平 |
代理人 | 橋本 幸治 |
代理人 | 近藤 実 |
代理人 | 木川 幸治 |
代理人 | 松崎 智徳 |
代理人 | 渡邉 一平 |
代理人 | 木川 幸治 |