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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D |
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管理番号 | 1171367 |
審判番号 | 不服2007-14061 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-16 |
確定日 | 2008-01-15 |
事件の表示 | 特願2003- 68617「羽根構造およびそれを用いた放熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-169680〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年3月13日(優先権主張2002年11月18日、台湾)の出願であって、平成18年8月30日に明細書についての補正がなされたものの平成19年2月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月16日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに明細書についての補正がなされたものである。 2.平成19年5月16日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)本件補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし14のうち、請求項4については、 「頂面を備えた軸ハウジングと、 前記軸ハウジングを囲むように設けられた複数枚の動翼とを具備し、 吸入気流量を増大させるため及び前記軸ハウジングの前記頂面の空気を軸方向に放出するため、前記複数枚の動翼が前記軸ハウジングの中心位置に向かって放射状に延伸し、前記複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁は、軸方向に前記軸ハウジングを超えて延伸し且つ前記頂面に開かれていることを特徴とする羽根構造。」 と補正された。 上記補正は、請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数枚の動翼」が「軸ハウジングの中心位置に向かって放射状に延伸し」たものであると限定するものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-310097号公報(平成14年10月23日公開、以下「引用例」という。)には、「車両用軸流ファン」と題して、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0009】これにより、軸端面(211a)側からブレード(212)の根元側に向かって流れる空気により、ブレード(212)の根元側における翼面と空気との抵抗が小さくなるので、ブレード(212)の根元側での失速を抑制できる。したがって、ボス部(211)前方側の空気を有効に外方向(ブレード(212))に流すことができるので、風量低下を抑制することができる。」 ・「【0024】また、送風機200は、図1(b)に示すように、ボス部211から放射状に延びる複数枚のブレード212からなる軸流ファン210、・・・(後略)・・・。」 ・「【0027】因みに、軸流ファンとは、JIS B 0132 番号1012に規定されているように、気体(空気)が軸方向に通り抜けるファンを言う。 【0028】そして、本実施形態では、図2に示すように、ボス部211の軸方向と直交する方向(紙面垂直方向)から見て、ブレード212の負圧面212a(図3(b)参照)の稜線であるブレード211の前縁部212bは、ボス部211の軸方向端部に位置する軸端面211aより空気流れ上流側にずれるように構成されている。 【0029】具体的には、図3(a)、(b)に示すように、ブレード212の根元側(ボス部211側)のうち前縁部212b側の約半分の領域が、負圧面212a側に位置する軸端面211aより空気流れ上流に突出したような形状となっている。」 ・「【0030】なお、ブレードの負圧面とは、例えば流体工学(東京大学出版会)に記載されているように、ブレードの翼面のうち空気の吹き出しの向きの面(圧力面)と反対の面を言い、ブレードの前縁部とは、上記書籍に記載されているように、ブレードのうち進行方向前端部を言う。 【0031】また、ブレード212の根元側のうち軸端面211aより空気流れ上流に突出した部分は、図3(a)に示すように、ブレード212の根元側から軸端面211aに掛けて滑らかな曲面213にて繋がっており、この曲面213は、ボス部211の軸方向から見ると、図1(b)に示すように、曲面213の輪郭線213aが流線形又は翼形を描くように形成されている。」 ・「【0035】本実施形態では、ボス部211の軸方向と直交する方向から見て、ブレード212(注:「211」は誤記)の前縁部212bが軸端面211aより空気流れ上流側にずれるように構成されているので、軸端面211a側からブレード212の根元側に空気が流通することができる。 【0036】したがって、軸端面211a側からブレード212の根元側に向かって流れる空気(図2、図1(b)参照)により、ブレード212の根元側における翼面と空気との抵抗が小さくなるので、ブレード212の根元側での失速を抑制できる。 【0037】したがって、空気が外径方向に流れることを抑制できるので、空気が実質的に流通することができる空間寸法が小さくなってしまうことを抑制でき、送風機200の送風量及びファン効率が低下してしまうことを抑制できる。 【0038】また、ブレード212の根元側から軸端面211aは、滑らかな曲面213にて繋がっているので、軸端面211a側からブレード212の根元側に向かって空気をスムーズに流通させることができる。したがって、ブレード212の根元側における翼面と空気との抵抗がより小さくすることができるので、ブレード212の根元側での失速を確実に抑制できる。 【0039】また、曲面213は、ボス部211の軸方向から見て、曲面213の輪郭線213aが流線形又は翼形を描くように形成されているので、軸端面211a側からブレード212の根元側に向かって空気をスムーズに流通させることができる。 【0040】また、曲面213はドーム状に湾曲した曲面であるので、ブレード21の根元側の機械的強度を高めることができる。」 ・図1(b)には、複数枚のブレード212がボス部211の中心位置に向かって放射状に延伸している構成が示されている。 ・図3(a)及び(b)には、ブレード212の前縁部212bが、ブレード212の根元側で軸方向にボス部211を超えて延伸するものとして示されている。 ・図2には、ボス部211の軸端面211aの空気がブレード212に放射状に導入されることが示されている(図中の軸端面211a付近の矢印の向きを参照)。 これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例には、 「軸端面を備えたボス部と、 前記ボス部から放射状に延びる複数枚のブレードとを具備し、 風量低下を抑制するため及び前記ボス部の前記軸端面側からブレードの根元側へ空気を流通させるため、前記複数枚のブレードが前記ボス部の中心位置に向かって放射状に延伸し、前記複数枚のブレードの負圧面の稜線である前縁部は、軸方向に前記ボス部を超えて延伸し、前記ボス部の前記軸端面の空気がブレードに放射状に導入される軸流ファン。」という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定することができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「軸端面」はボス部における吸入側の軸方向端部に位置する面を指すので本願補正発明の「頂面」に相当し、以下同様に、「ボス部」は「軸ハウジング」に、「ブレード」は「動翼」に相当する。 また、引用発明の「ボス部から放射状に延びる複数枚のブレード」は、複数枚のブレードがボス部を囲むように設けられているといえるから、本願補正発明の「軸ハウジングを囲むように設けられた複数枚の動翼」に相当するといえる。 次に、引用発明の「風量低下を抑制するため及びボス部の軸端面側からブレードの根元側へ空気を流通させるため」という事項は、引用発明ではボス部前方側の空気をブレードに流通させることで風量低下を抑制するのであるからボス部前方側の空気の分だけ吸入気流量が増えることになるので、風量低下を抑制することは吸入気流量が増大することといえ、且つ、ボス部の軸端面側からブレードの根元側へ空気を流通させることは、かかるブレードが軸流ファンのものであるので該ブレードへ流通させられた空気は軸方向へ放出されることになるから、本願補正発明の「吸入気流量を増大させるため及び軸ハウジングの頂面の空気を軸方向に放出するため」という事項に相当するといえる。 そして、引用発明の「複数枚のブレードの負圧面の稜線である前縁部」は、引用例の【0030】において負圧面が空気の吹き出しの向きの面と反対の面と説明されていることから負圧面側は吸入口側であるといえ、且つ、かかる前縁部がブレードの縁を構成するものであるから、本願補正発明の「複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁」に相当するといえる。 さらに、引用発明の「軸流ファン」がボス部とブレードとの配置関係といった羽根構造を有しているのは明らかであるから、引用発明の「軸流ファン」は本願補正発明の「羽根構造」に相当するといえる。 したがって、両者は、 「頂面を備えた軸ハウジングと、 前記軸ハウジングを囲むように設けられた複数枚の動翼とを具備し、 吸入気流量を増大させるため及び前記軸ハウジングの前記頂面の空気を軸方向に放出するため、前記複数枚の動翼が前記軸ハウジングの中心位置に向かって放射状に延伸し、前記複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁は、軸方向に前記軸ハウジングを超えて延伸し(た)羽根構造。」 である点で一致し、次の点で一応相違している。 [相違点] 本願補正発明では、複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁が「頂面に開かれている」ことを特定しているのに対し、引用発明では「軸ハウジングの頂面の空気が動翼に放射状に導入される」ことを特定している点。 (4)判断 本願補正発明において、「複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁」に関し「頂面に開かれている」とした発明特定事項は、請求項4の記載だけではその技術的意義を一義的に明確に理解することができない。 そこで、本願明細書中の発明の詳細な説明を参酌するに、羽根縁が頂面に開かれていることを説明したものとしては、次の記載が存在するのみである。 ・「 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は軸ハウジングと、軸ハウジング周囲を囲むように設けた複数枚の動翼とを具備し、複数枚の動翼が軸ハウジング上方に沿いながら、軸ハウジングの中心位置に向かって放射状に延伸し、複数枚の動翼の羽根縁が軸方向で軸ハウジングの頂面より高く、軸ハウジングの頂面の空気が動翼に放射状に導入されるように開かれている。」(平成18年8月30日付け手続補正書にて補正された後のもの) 上記の記載内容からみて、羽根縁が「頂面に開かれている」ことは、羽根縁を「軸ハウジングの頂面の空気が動翼に放射状に導入されるように」構成したものであると、機能的に特定することができる。そうすると、上記の構成をもって、本願補正発明における羽根縁が「頂面に開かれている」という発明特定事項に対応するものと解するのが相当である。 一方、引用発明は「軸ハウジングの頂面の空気が動翼に放射状に導入される」羽根構造を有するので、かかる羽根構造を有する動翼の羽根縁についても同様の構成となっていることは明らかである。よって、引用発明の羽根縁は、「軸ハウジングの頂面の空気が動翼に放射状に導入されるように」構成したものに該当するから、「頂面に開かれている」ものといわざるを得ない。 よって、上記相違点は実質的なものではなく、両者の間に構成上の差異は存在しない。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)予備的判断 ところで、請求人は、引用発明の動翼がその根元側で曲面として頂面に繋がっていることを「閉じている」と表現し、これは本願補正発明のように開かれたものではない旨を例えば以下のように主張している。 すなわち、審判請求書の【本願発明が特許される理由】2.(2)において、「これに対し、引用文献2(特開2002-310097号公報)には、車両用の軸流ファンが開示されている。しかしながら、引用文献2に記載の軸流ファンのブレード212は、根元側から曲面213を滑らかにカーブして、軸端面211aに繋がっている。ブレード212の根元側では、さらに軸端面211aを超えて空気流の上流へ向かって突き出た部分は、図3(a)に示された曲面213として、ブレード212の根元側から軸端面211aへ繋がっている。曲面213は、軸端面211aのブレード212の根元側を閉じており、そしてそれにより、軸端面211a上の空気はブレード212に放射状に入ることができない。従って、引用文献2に記載の軸流ファンは、ブレード212の根元側の失速を抑え、取り入れ空気流を減らすことのみができ、そして、その空気流は軸方向に排出されない。」と主張している。 上記の主張によれば、請求人は、羽根縁が頂面に開かれているということを、軸ハウジングの頂面に対し動翼の根元が動翼面として立ち上がった状態で接続されていることと解釈しているものと考えられる。 羽根縁が頂面に開かれていることについての当審の対比・判断は上記「2.(3)及び(4)」で述べたところではあるが、請求人の上記解釈に基づいて、予備的に上記相違点についての当審の判断を示しておく。 本願明細書の【0010】には、「吸入口端の羽根20の、軸ハウジング10頂面よりも高くなっている羽根縁が、どのような設計であったとしても、『吸入口端の羽根が軸ハウジング頂面上方に沿いながら、軸ハウジングの中心位置へ向かって放射状に延伸し、且つ、羽根縁が軸向で軸ハウジングよりも高い』という本発明の特徴から外れない限り、設計上の変更、修正を行ってもよい。」と記載されている。 一方、引用発明にて動翼の根元側から頂面までを滑らかな曲面にて繋いだのは、頂面側から動翼の根元側に向かって空気を「スムーズに」流通させることができるようにするためであり(引用例【0038】参照)、また、動翼の根元側の機械的強度を高めるためである(引用例【0040】参照)。頂面側から動翼の根元側に向かって空気を流通させるだけならば動翼の羽根縁を頂面より空気流れ上流側にずらすだけで済むところ(引用例【0035】参照)、かかる空気の流通をスムーズにさせるべく、曲面にて繋ぐ構成を採用している。また、軸ハウジングに動翼を接続するには動翼をそのままの向きで接続するのが通常であるところ、動翼の根元側の機械的強度を考慮して曲面にて繋ぐ構成を採用したものと考えられる。つまり、軸ハウジングに動翼を接続するに際し、動翼の根元側が頂面に対し平面として立ち上がった状態のまま繋げばよいところ、さらに改良を加えて曲面にて繋ぐようにしたのが引用発明であるといえる。 よって、かかる改良がなくとも頂面側から動翼の根元側に向かって空気を流通させることができるのであるから、引用発明において「複数枚の動翼が軸ハウジングの中心位置に向かって放射状に延伸し、複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁は、軸方向に前記軸ハウジングを超えて延伸し」た構成の下で、羽根縁を頂面に曲面にて繋ぐ構成としていたものを頂面に対し平面として立ち上がった状態で接続する構成のものに変更・修正することで請求人の主張する「頂面に開かれている」構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、請求人の上記解釈によったとしても、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下を免れない。 3.本願発明について 平成19年5月16日付けの手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「頂面を備えた軸ハウジングと、 前記軸ハウジングを囲むように設けられた複数枚の動翼とを具備し、 吸入気流量を増大させるため及び前記軸ハウジングの前記頂面の空気を軸 方向に放出するため、前記複数枚の動翼の吸入口側の羽根縁は、軸方向に前記軸ハウジングを超えて延伸し且つ前記頂面に開かれていることを特徴とする羽根構造。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数枚の動翼」が「軸ハウジングの中心位置に向かって放射状に延伸し」たものであるとの限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり引用例に記載された発明であり、又は、前記「2.(5)」に記載したとおり引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明であり、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明については、引用例に記載された発明であり、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号又は同法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-21 |
結審通知日 | 2007-08-22 |
審決日 | 2007-09-04 |
出願番号 | 特願2003-68617(P2003-68617) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(F04D)
P 1 8・ 575- Z (F04D) P 1 8・ 121- Z (F04D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 真誠 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
丸山 英行 本庄 亮太郎 |
発明の名称 | 羽根構造およびそれを用いた放熱装置 |
代理人 | 服部 雅紀 |