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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1171379 |
審判番号 | 不服2003-10395 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-06 |
確定日 | 2008-02-04 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第517609号「明るさを強化した反射偏光子」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月29日国際公開、WO95/17692、平成 9年 7月 8日国内公表、特表平 9-506985、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成 6年12月20日(パリ条約による優先権主張1993年12月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年6月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年7月7日付けで手続補正がなされたものである。 平成17年11月14日付で、本件審判請求は、成り立たない旨の審決がなされた後、知的財産高等裁判所において、審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10138号、平成19年1月30日判決言渡)があったので、さらに審理し、平成19年3月30日付で平成15年7月7日付の手続補正を却下するとともに、当審から新たな拒絶の理由を通知したところ、平成19年10月10日付で意見書とともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は、平成19年10月10日付補正書の請求項1?6に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「光学表示装置であって、 液晶モジュール、 光共振器、及び 前記光共振器と液晶モジュールとの間に配置された広角の反射偏光子であって、 その広角の反射偏光子は第一の偏光状態の光を透過し、法線及び法線から大きく傾いた角度で入射する第一の偏光状態を有さない光を反射する広角の反射偏光子 を含み、 前記表示装置の明るさを向上させるためにその反射光が前記共振器によってその方向および偏光状態をランダム化され再循環される、光学表示装置。」 3.引用例 当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-308106号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 ア.「【特許請求の範囲】 (1)光源と、光源の背後に設けられたミラーと、光源の前方に設けられた直線偏光素子を有する偏光光源に於いて、該直線偏光素子は一方の偏光を透過し他の一方の偏光を反射する反射型直線偏光素子であり、該反射型直線偏光素子とミラーとの間に位相差板を配置した事を特徴とする直線偏光光源。」(第1頁左下欄第4行?第11行) イ.「〔産業上の利用分野〕 直線偏光光源は例えば液晶表示素子に用いられている。液晶表示素子は低消費電力のフラットパネルディスプレイやプロジェクション用のライトバルブとして広く応用されている。本発明は偏光としてはランダムな光源から1種類の直線偏光を非常に高効率に出射する直線偏光光源に関する。」(第1頁右下欄第4行?第10行) ウ.「〔実施例〕 以下、実施例に基づき本発明を説明する。第1図は本発明の1実施例を示す説明図である。4は光源の前方に設けられた反射型直線偏光素子である。本発明の特徴は該反射型直線偏光素子4とミラー2の間に位相差板3を配置している事にある。 本発明の動作を説明する。一方の偏光10は反射型直線偏光素子4を通過する。他の一方の偏光11は反射型直線偏光素子4によって12の如く反射され位相差板3を通過し楕円偏光13となる。楕円偏光13はミラー2で反射し逆回りの楕円偏光14となり再び位相差板3を通過し、偏光10と同じ成分を有する偏光15となり非常に高効率に反射型直線偏光素子4を通過する。 位相差板3は可視光に対しほぼ4分の1波長の位相差を生ずる位相差板であり、その光学軸は反射型直線偏光素子4の偏光軸に対しほぼ45度の角度に設置された時に該直線偏光光源の効率が最大となり、ランダムな偏光光源の光をほぼ100%の効率で1種類の偏光に変換できる。 第3図は反射型直線偏光素子4である。数千オングストロームのピッチでアルミ、クロム等の導電性の金属線状パタン41とすると、線方向の直線偏光は反射し、それと垂直方向の直線偏光は透過する反射型の直線偏光素子が得られる。 第2図は本発明の他の実施例を示す説明図である。本実施例の特徴はミラー2が楕円面の少なくとも1部の曲面を用いた楕円ミラーであり、光源1は該楕円の1つの焦点32付近に配置され、反射型直線偏光素子4は該楕円の2つの焦点32、33の間に配置されている事にある。本実施例では光源1の光はほぼすべて1種類の直線偏光として反射型直線偏光素子4を通過し更に焦点33を通過する。よって焦点33を疑似点光源とみなした高効率直線偏光光源とみる事ができる。レンズ31を焦点が楕円焦点33となるように配置すれば、非常に高効率の平行直線偏光光源が得られる。」(第2頁左上欄第11行?左下欄第7行) エ.〔発明の効果〕 以上の実施例で明らかな如く、本発明の効果は従来捨てていた他の一方の偏光も利用する事を可能とし、従来にない高効率の直線偏光光源を提供する。(第2頁左下欄第8行?第12行) オ.第2図には、様々な角度で入射された一方の偏光が反射型直線偏光素子4を通過し、他の一方の偏光は反射型直線偏光素子4によって反射される点が記載されている。 これらの記載と第1乃至3図と、液晶表示素子が液晶モジュールを有することは自明であることにより、引用例1には、 「液晶表示素子であって、 液晶モジュール、 ミラー2と光源1と位相差板3と、 前記位相差板3と液晶モジュールとの間に配置され、様々な角度で入射された一方の偏光を通過し、他の一方の偏光を反射する反射型直線偏光素子4 を含み、 従来にない高効率の直線偏光光源を提供するためにその反射光が、ミラー2と位相差板3とにより一方の偏光と同じ成分を有する偏光となり非常に高効率に反射型直線偏光素子4を通過する液晶表示素子。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 また、同じく、当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-168626号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 カ.〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら直線偏光を得るためにそれに垂直な偏光成分を吸収しているため、自然光入射時で光利用効率は50%以下、実際には40%未満となっており損失が大きい。(公報第2頁左上欄2?6行) キ.〔実施例〕 以下図面を用いて本発明の詳細な説明する。 第1図は、本発明の第1の実施例を示す液晶表示体の光学系の断面図である。図中の偏光子2はグリッド偏光子である。これは金属を平行に配列した非常に細かい格子構造をしており、この格子間隔の2倍以上の波長を持つ光が入射する場合、格子に平行な偏光成分は反射し、格子に垂直な偏光成分は透過する。 光源11より放射した自然光が拡散板1を透過し偏光子2に入射し、このうち金属格子に垂直な偏光成分は透過し、残りの偏光成分は反射する。(公報第2頁右上欄6?17行) ク.第2図に示す液晶表示体の光学系の断面図のような構成が考えられる。これは偏光面を回転させる素子として第1図における4分の1波長板10の代りに、光源11と偏光子2の間の拡散板1を利用するものである。 すなわち拡散板1における透過率を多少犠牲にし、十分な拡散を行わせ偏光子2で反射した直線偏光の偏光面をランダムにするのである。次に拡散板1を透過した光束をミラー12で反射させ再び偏光子2に入射させ画面の輝度向上に利用する。(公報第2頁左下欄下から2?右下欄8行) 4.対比 引用発明の「液晶表示素子」は、本願発明の「光学表示装置」の下位概念であることは明らかであり、引用発明の「液晶表示素子」は、本願発明の「光学表示装置」に相当する。 本願発明の「光共振器」は、光学表示装置の「バックライト」であることもあり(「平成8年6月21日付特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付された明細書の翻訳文」(以下、「本願明細書」という。)の第8頁21行)、また、図1、2、及びそれに関連した本願明細書第3、4頁の記載からも光源の概念に含まれるものであることは明らかであるので、引用発明の「ミラー2と光源1と位相差板3」と、本願発明の「光共振器」は、ともに「光源手段」ということができる。 引用発明の「様々な角度で入射された」は、実質的に本願発明の「法線及び法線から大きく傾いた角度で入射する」に相当する。したがって、引用発明の「様々な角度で入射された一方の偏光を通過し、他の一方の偏光を反射する反射型直線偏光素子4」は、本願発明の「広角の反射偏光子であって、その広角の反射偏光子は第一の偏光状態の光を透過し、法線及び法線から大きく傾いた角度で入射する第一の偏光状態を有さない光を反射する広角の反射偏光子」に相当する。そして、引用発明において、ミラー2と光源1は、反射型直線偏光素子4に対し、液晶モジュールとは反対側に配置されるので、引用発明の「前記位相差板3と液晶モジュールとの間に配置され、様々な角度で入射された一方の偏光を通過し、他の一方の偏光を反射する反射型直線偏光素子4」と、本願発明の「前記光共振器と液晶モジュールとの間に配置された広角の反射偏光子」とは、「前記光源手段と液晶モジュールとの間に配置された広角の反射偏光子」の点で一致する。 引用発明も、反射型直線偏光素子4により反射された反射光をミラーで再反射させ、再び反射型直線偏光素子4に入射させる、すなわち「再循環」させるものなので、引用発明の「従来にない高効率の直線偏光光源を提供するためにその反射光が、ミラー2と位相差板3とにより一方の偏光と同じ成分を有する偏光となり非常に高効率に反射型直線偏光素子4を通過する」は、実質的に本願発明の「表示装置の明るさを向上させるためにその反射光が前記光源装置によって再循環される」に相当する。 したがって、引用発明と本願発明とは、 「光学表示装置であって、 液晶モジュール、 光源手段、及び 前記光源手段と液晶モジュールとの間に配置された広角の反射偏光子であって、 その広角の反射偏光子は第一の偏光状態の光を透過し、法線及び法線から大きく傾いた角度で入射する第一の偏光状態を有さない光を反射する広角の反射偏光子 を含み、 前記表示装置の明るさを向上させるためにその反射光が前記光源手段によって再循環される、光学表示装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1; 本願発明は、光源手段が、「光共振器」であり、反射偏光子の反射光が光共振器によって、「その方向および偏光状態をランダム化され」るのに対し、引用発明は、光源手段が、「ミラー2と、光源1と、位相差板3」であり、反射型直線偏光素子4の反射光は「ミラー2と位相差板3とにより一方の偏光と同じ成分を有する偏光となり非常に高効率に反射型直線偏光素子4を通過する」点。 5.当審の判断 相違点1について 本願発明の「光共振器」は、上記「4.対比」で検討したように「バックライト」あるいは「光源」を含む概念のもので、反射光を、その方向および偏光状態をランダム化するものある。 引用例2に記載された、光源11、ミラー12及び拡散板1からなる光源手段は、グリッド偏光子2(本願発明の「反射偏光子」に相当する。)で反射された直線偏光の偏光面をランダムにし、ミラー12で反射させ再び偏光子2に入射させ画面の輝度向上に利用するもので、本願発明の光共振器と類似の作用・効果を奏するものである。 しかし、引用例2には、光源手段が、反射光の方向をランダム化するかどうかに関し、明確な記載がない。また、本願明細書に光共振器の明確な定義はないが、引用例2に示された光源手段が、光共振器であるともいえない。 結局、引用発明のミラー2と光源1と位相差板3とを、引用例2に記載された光源手段に置き換えても、あるいは、引用発明に引用例2に記載された発明を適用しても、本願発明とすることはできない。 また、平成19年3月30日付拒絶理由で示した他の引用例にも、上記の点が記載されておらず、当業者がそれらの引用例に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。 請求項2?6に係る発明についても、同様の理由により、平成19年3月30日付拒絶理由で示した各引用例から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 6.結び したがって、本願については、原査定の拒絶理由、及び当審から新たに通知した拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-10-26 |
結審通知日 | 2005-11-01 |
審決日 | 2005-11-14 |
出願番号 | 特願平7-517609 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉野 公夫 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
江塚 政弘 森内 正明 青木 和夫 安田 明央 |
発明の名称 | 明るさを強化した反射偏光子 |
代理人 | 小林 純子 |
代理人 | 片山 英二 |