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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1171769
審判番号 不服2006-841  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-12 
確定日 2008-01-24 
事件の表示 平成11年特許願第306685号「画像認識方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月11日出願公開、特開2001-126069〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年10月28日の出願であって、平成17年9月6日付けで最後の拒絶理由通知がされ、これに対し同年11月4日に手続き補正がなされ、この手続き補正に対し同年12月7日付けで補正却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月2日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年2月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明について補正するものであり、これにより、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ノズルに保持された電子部品をカメラで撮像して得られた画像データを画像記憶部に記憶させ、登録パターン記憶部に記憶された検出目標の登録パターンと前記画像記憶部から読み出された画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法であって、検出目標のマスター画像をフィルタリング処理することによりこのマスター画像内での輝度差に基づいて検出目標の輪郭線を抽出し、この抽出された輪郭線を含む画像を前記登録パターンとして用いるものであり、
前記フィルタリング処理は、電子部品のY方向の辺A11を横切って設定された直線LLに沿う各画素の輝度分布を求め、この輝度分布より隣接する各画素間での輝度差の分布を求め、前記直線LLを前記辺A11に沿ってスキャンすることにより、前記辺A11方向の境界線である輪郭線BL1を得、
また電子部品のX方向の辺A12を横切る直線を設定して前記Y方向の場合と同様にして前記辺A12方向の境界線である輪郭線BL2を得、
輪郭線BL1、BL2に対応する範囲の画素のみを用いてマッチング処理を行うことを特徴とする画像認識方法。」
と補正された。
上記特許請求の範囲についての補正は、平成17年8月4日付け補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「マッチング」に関し、「輪郭線BL1、BL2に対応する範囲の画素のみを用いてマッチング処理を行う」との限定を付加したものであり、実質的に特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-129770号公報(以下「引用例1」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】 原画像を入力する画像入力部と、前記画像入力部より入力された前記原画像の中から必要な領域の切り出しを行う画像切出部と、前記画像切出部によって切り出された画像に対して特徴抽出処理を行う特徴抽出部と、前記特徴抽出部にて抽出された特徴点を合わせてテンプレート画像を生成する最適テンプレート生成部とを備えた画像処理装置。
(中略)
【請求項3】 前記特徴抽出部として、2値化処理およびラベリング処理を行い、図形の輪郭線を抽出する処理を行うことによって特徴抽出処理を行う輪郭座標抽出部を用いたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。」

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ロボットや産業機械の位置制御及び検査などに使われる視覚装置における画像処理装置および画像処理方法に関するものであり、特にテンプレートマッチング法のためのテンプレート画像の生成、およびテンプレートマッチング方法に関するものである。」

ウ 「【0070】実施例3.次に、この発明の実施例3を図について説明する。図5は請求項3に記載した発明の一実施例を示す構成図で、相当部分には図1と同一符号を付してその説明を省略する。図において、47は2値化回路、ラベリング回路、膨張収縮回路などを内蔵して、2値化処理およびラベリング処理、さらには図形の輪郭線の抽出処理を実行することで特徴抽出処理を行い、特徴抽出部として機能する輪郭座標抽出部である。
【0071】次に動作について説明する。ここで、図6はこの実施例3による処理の流れを示すフローチャートであり、図7はこの実施例3による画像処理の過程をイメージ的に示した説明図である。このように構成された画像処理装置では、濃淡テンプレートマッチングのプログラミングは次のように行われる。ユーザはまず、自分が登録したい対象物40を画像入力部41で撮像し、その画像をフリーズして原画像として入力する(ステップST11)。ユーザは次に、画面全体の中から対象物40の写っている部分を画像切出部42にて切り出す(ステップST12)。なお、ここまでの処理は実施例1および2の場合と同じである。
【0072】次に、この画像切出部42で切り出された画像が輪郭座標抽出部47に入力される。この輪郭座標抽出部47では、入力された画像に対して2値化処理が施され、さらにノイズ除去などの前処理が必要に応じて行なわれた後、ラベリングを行なう(ステップST13)。このようにしてラベリングされた画像のうちから、対象物40のラベルを選択し、膨張収縮処理を行なって、対象物40の輪郭点の座標を抽出する(ステップST14)。抽出された輪郭部を特徴部とし、その座標と対応する原画像の画像値が最適テンプレート生成部44へ送られる。最適テンプレート生成部44では特徴のある部分だけを抽出したテンプレート画像を生成し、テンプレートデータとして保存する(ステップST15)。」

エ 「【0080】このようにして作られたテンプレートデータを用いたテンプレートマッチングは次のようにして行なわれる。以下、図14を用いて、テンプレートマッチングの処理の流れを説明する。上記実施例によるプログラミングデータを用いるテンプレートマッチング法では、まず、サーチ画像が入力される(ステップST41)。次に作業対象領域が設定されている場合にはその部分の切り出しが行われる(ステップST42)。次にその領域内において、まず最適テンプレートデータをロードし、その最適テンプレートデータを用いて次の式(8)で相関値を計算し、しきい値以上の部分を残す(ステップST43)。
(中略)
【0083】次に標準テンプレートデータをロードして、候補位置で前に述べた式(1)による相関値を求め(ステップST44)。最高点をとった位置をワーク位置として出力する(ステップST45)。」

これらの記載及び図面図5ないし図7によれば、引用例1には、
「登録したい対象物40をテレビカメラ等の画像入力部41で撮像して入力し、その画像から対象物40の写っている部分を切り出し、
切り出した画像を輪郭座標抽出部47に入力し、
輪郭座標抽出部47では、対象物40の輪郭点の座標を抽出し、抽出された輪郭部を特徴部とし、その座標と対応する原画像の画像値を最適テンプレート生成部44へ送り、
最適テンプレート生成部44では、特徴のある部分だけを抽出したテンプレート画像を生成し、テンプレートデータとして保存し、
該テンプレートデータを用いてテンプレートマッチングを行う画像処理装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-188596号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子部品等の部品を撮像装置により撮像し、その撮像データから部品の位置を認識するようにした部品位置認識方法及びその装置に関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】例えばIC等の部品をプリント基板に自動的に装着する部品実装装置は、図5に示すように、部品供給部において装着ヘッドに設けられた吸着ノズル1により部品2の中心部を吸着して取得し、その部品2を基板3上の接着剤4が塗布された所定の装着ポイントまで移送し、基板3上に装着するようになっている。
(中略)
【0004】そこで、この種の部品実装装置にあっては、実装精度を向上させるために、部品位置を検出するための部品位置認識装置を組込むことが行われている。この部品位置認識装置は、例えば吸着ノズル1の所定位置において、カメラによりその吸着ノズル1に吸着された部品2を下方から撮像し、その撮像データに基づいて画像処理装置によりその部品2の中心位置及び回転角を検出し、その結果に基づいて位置ずれが補正されるものである。
【0005】ところで、上記のような画像データから部品2の中心位置及び回転角を求める画像処理の方法としては、主に次の3種類の方法があった。
(1)慣性モーメントを求めて算出する方法
(2)撮影画像の投影を求めて算出する方法
(3)部品に相当するテンプレート画像を、撮影画像に重ね合わせて部品位置を算出する方法(一般的なテンプレートマッチング法)」

これらの記載によれば、引用例2には、
「電子部品等の部品の位置ずれを補正するための部品位置認識方法であって、電子部品等の部品を撮像装置により撮像し、その撮像データから部品の位置を認識するようにした部品位置認識方法において、吸着ノズル1の所定位置において、カメラによりその吸着ノズル1に吸着された部品2を下方から撮像し、その撮像データに基づいて、部品に相当するテンプレート画像を、撮影画像に重ね合わせて部品位置を算出するテンプレートマッチング法によりその部品2の中心位置及び回転角を検出する部品位置認識方法」
の発明が記載されていると認める。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-214888号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「上記課題を達成するための本発明の画像処理方法の構成は第1図に示すように、撮像手段によって物品100の二次元画像データを得る入力工程と、二次元画像データを、異なる2方向、例えば図示の如くx、y方向について複数の領域に分割する分割工程と、x、y2方向の各方向に関して、隣接する2つの領域間でサンプルした画像データ値の変化を、全領域について検出する変化点検出工程と、上記変化が所定の閾値以上のサンプル数の上記2方向についての度数分布を求める分布工程と、上記度数分布に基づいて前記物品の端部の位置を検出する端部検出工程とからなる。」(3ページ左上欄4行?15行)

イ 「第1図は、この物品端部位置確認のための本発明に係る基本的な実施例の原理を説明する図である。略四角形状を有する物品100を例えばCCDエリアセンサ(又はラインセンナ)等を有するカメラ等で撮像すると、同図(b)に示したような二次元の多値画像データが得られる。これらの多値画像データの1画素は、通常CODセンナの1画素に対応し、例えば8ビツト256階調の濃度変化を表現する。物品100の表面が同じ物質で覆われているならば、上記二次元の多値画像データの値は、その端部部分を除いて、僅かの変化しかない。一方、端部部分は輝度が大きく変化するために、その多値画像データ値は大きく変化する。これが画像エツジである。この変化は通常端部において、明度が暗くなるものとして認識される。更に、この端部部分の画像では、ハレーションや乱反射等により、上記の画像エツジ位置にバラツキを生じている。この様子を第1図(b)に示す。第1図(b)では、x、y座標で示す画像平面内で、z軸方向に多値画像データ値を三次元的に示している。
このような分布をもつ多値画像データについて、x方向とy方向の夫々の隣接する2画素について、画像データ値の変化を検出する。第1図(c)は、y方向の各ライン毎にx方向に互いに隣接する2画素間の画像データ値の差をz軸方向にとって、三次元的に示している。同じく第1図(d)は、y方向に互いに隣接する2画素間で、その画像データ値の差をz軸方向にとって、三次元的に示している。この差が大きい点は物品100の端部の画像エツジに対応する筈である。
これら2つの分布から、上記差が所定値以上のものであるサンプル点の数を累積して、度数図(ヒストグラム)としたものが、第1図(e)、(f)である。この度数図において、ピーク値をもつサンプル点の位置が、物品の端部に対応する画像エツジの中心であると考えられる。」(3ページ左上欄19行?左下欄15行)

これらの記載及び図面第1図によれば、引用例3には、
「略四角形状を有する物品をカメラで撮像し、異なる2方向(x、y方向)の分割された複数の領域ごとに、全領域について、二次元画像データを得て、
y方向の各ライン毎に、x方向に互いに隣接する2画素間の画像データ値の差から、該差が所定値以上のものであるサンプル点の数の度数分布を求め、同様に、x方向の各ライン毎に、y方向に互いに隣接する2画素間の画像データ値の差から、該差が所定値以上のものであるサンプル点の数の度数分布を求め、
これらの度数分布においてピーク値をもつサンプル点の位置を、物品の端部に対応する画像エッジの中心として検出する画像処理方法」
の発明が記載されていると認める。

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「テンプレート画像」は、登録したい対象物40から生成され、テンプレートデータとして保存される、テンプレートマッチングのための画像であるから、本願補正発明の「登録パターン」に相当する。
引用発明における「登録したい対象物40の画像から対象物40の写っている部分を切り出した画像」は、本願補正発明の「検出目標のマスター画像」に相当する。
引用発明における「輪郭部」は、対象物40の輪郭点の座標を抽出し、抽出された輪郭部を特徴部としたものであるから、本願補正発明の「輪郭線」に相当する。
また、引用発明は、抽出された輪郭部を特徴部とし、その座標と対応する原画像の画像値から特徴のある部分だけを抽出したテンプレート画像を生成し、テンプレートデータとするものであり、引用発明と本願発明とは、「検出目標のマスター画像から、検出目標の輪郭線を抽出し、この抽出された輪郭線を含む画像を登録パターンとして用いるもの」である点で一致し、更に、引用発明において、前記特徴のある部分だけを抽出したテンプレート画像を用いてテンプレートマッチングを行う以上、抽出された輪郭部に対応する画素のみを用いてテンプレートマッチングを行うことは明らかであるから、引用発明と本願発明とは、「輪郭線に対応する範囲の画素のみを用いてマッチング処理を行う」点でも一致する。
そして、引用発明と本願発明とは、「検出目標の登録パターンと画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法」である点で一致する。

以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、
「検出目標の登録パターンと画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法であって、
検出目標のマスター画像から、検出目標の輪郭線を抽出し、この抽出された輪郭線を含む画像を前記登録パターンとして用いるものであり、
前記輪郭線に対応する範囲の画素のみを用いてマッチング処理を行う画像認識方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】
本願補正発明は、「ノズルに保持された電子部品をカメラで撮像して得られた画像データを画像記憶部に記憶させ、登録パターン記憶部に記憶された検出目標の登録パターンと前記画像記憶部から読み出された画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法」であるのに対し、引用発明は、「検出目標の登録パターンと画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法」である点。

【相違点2】
本願補正発明は、「検出目標のマスター画像をフィルタリング処理することによりこのマスター画像内での輝度差に基づいて検出目標の輪郭線を抽出し、この抽出された輪郭線を含む画像を登録パターンとして用いるものであり、前記フィルタリング処理は、電子部品のY方向の辺A11を横切って設定された直線LLに沿う各画素の輝度分布を求め、この輝度分布より隣接する各画素間での輝度差の分布を求め、前記直線LLを前記辺A11に沿ってスキャンすることにより、前記辺A11方向の境界線である輪郭線BL1を得、また電子部品のX方向の辺A12を横切る直線を設定して前記Y方向の場合と同様にして前記辺A12方向の境界線である輪郭線BL2を得」て登録パターンとして用いるのに対し、引用発明は、「検出目標のマスター画像から、検出目標の輪郭線を抽出し、この抽出された輪郭線を含む画像を前記登録パターンとして用いる」点。

4.判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
「検出目標の登録パターンと画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法」を、電子部品の位置決めにおける画像認識に適用することは、引用例2に、前記「2.(2)」のとおり、「電子部品等の部品の位置ずれを補正するための部品位置認識方法であって、電子部品等の部品を撮像装置により撮像し、その撮像データから部品の位置を認識するようにした部品位置認識方法において、吸着ノズル1の所定位置において、カメラによりその吸着ノズル1に吸着された部品2を下方から撮像し、その撮像データに基づいて、部品に相当するテンプレート画像を、撮影画像に重ね合わせて部品位置を算出するテンプレートマッチング法によりその部品2の中心位置及び回転角を検出する部品位置認識方法」の発明が記載されており、周知の技術である。
したがって、引用発明の「画像認識方法」を、前記引用例2に記載された電子部品の位置決めに適用することに格別の困難性はない。

(2)相違点2について
引用例3には、前記「2.(3)」のとおり、「略四角形状を有する物品をカメラで撮像し、異なる2方向(x、y方向)の分割された複数の領域ごとに、全領域について、二次元画像データを得て、y方向の各ライン毎に、x方向に互いに隣接する2画素間の画像データ値の差から、該差が所定値以上のものであるサンプル点の数の度数分布を求め、同様に、x方向の各ライン毎に、y方向に互いに隣接する2画素間の画像データ値の差から、該差が所定値以上のものであるサンプル点の数の度数分布を求め、これらの度数分布においてピーク値をもつサンプル点の位置を、物品の端部に対応する画像エッジの中心として検出する画像処理方法」の発明が記載されている。
引用例3に記載された発明は、物品を撮像した画像から、物品の端部に対応する「画像エッジ」、即ち、物品と背景との境界線である輪郭線、を検出するものであり、「部品のy方向の辺を横切って設定された直線に沿う各画素の輝度分布を求め、この輝度分布より隣接する各画素間での輝度差の分布を求め、前記直線を前記y方向の辺に沿ってスキャンすることにより、前記y方向の辺方向の境界線である輪郭線を得、また部品のx方向の辺を横切る直線を設定して前記y方向の場合と同様にして前記x方向の辺方向の境界線である輪郭線を得る画像処理方法」と換言でき、また該画像処理方法は、一種の「フィルタリング処理」ということができる。
したがって、引用発明において、検出目標のマスター画像から、検出目標の輪郭線を抽出するための構成として、引用発明と同じ画像処理の技術分野に属することが明らかな、引用例3に記載された発明を採用することに格別の阻害要因はなく、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用例1ないし3に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.平成18年2月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月4日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ノズルに保持された電子部品をカメラで撮像して得られた画像データを画像記憶部に記憶させ、登録パターン記憶部に記憶された検出目標の登録パターンと前記画像記憶部から読み出された画像とをマッチングさせることにより検出目標を特定する画像認識方法であって、検出目標のマスター画像をフィルタリング処理することによりこのマスター画像内での輝度差に基づいて検出目標の輪郭線を抽出し、この抽出された輪郭線を含む画像を前記登録パターンとして用いるものであり、
前記フィルタリング処理は、電子部品のY方向の辺A11を横切って設定された直線LLに沿う各画素の輝度分布を求め、この輝度分布より隣接する各画素間での輝度差の分布を求め、前記直線LLを前記辺A11に沿ってスキャンすることにより、前記辺A11方向の境界線BLを得、
また電子部品X方向の辺A12を横切る直線を設定して前記Y方向の場合と同様にして前記辺A12方向の境界線BL2を得ることを特徴とする画像認識方法。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし3及びその記載事項は、前記「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「マッチング」に係る限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3.」、「第2 4.」に記載したとおり、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-20 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-10 
出願番号 特願平11-306685
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 則和  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 脇岡 剛
加藤 恵一
発明の名称 画像認識方法  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  

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