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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1171791
審判番号 不服2004-7379  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2008-01-21 
事件の表示 平成 9年特許願第360052号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月13日出願公開、特開平11-188136〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成9年12月26日の出願であって、平成16年3月8日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月12日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成19年10月19日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年10月19日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の図柄を移動表示可能な複数の図柄表示装置と、
前記図柄表示装置の移動表示を開始させるスタートスイッチと、
前記各図柄表示装置に対応し、当該図柄表示装置の移動表示を個別に停止させる複数のストップスイッチと、
前記各図柄表示装置、スタートスイッチ及びストップスイッチを制御する電子的制御装置とを備え、
前記電子的制御装置には、
前記図柄表示装置における図柄の停止態様を決定するための乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記乱数発生手段により発生した乱数を抽出する乱数抽出手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記図柄表示装置の移動表示を開始させ、前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数と、前記各ストップスイッチのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を個別に停止可能な遊技制御手段とを備え、
前記遊技制御手段には、
通常遊技を制御する通常遊技制御手段と、
この通常遊技の結果、図柄表示装置の停止態様が特別遊技移行態様に一致したことを条件に、前記通常遊技より遊技者に有利な特別遊技を行わせる特別遊技制御手段と、
前記複数のストップスイッチのうち、予め設定した少なくとも一つのストップスイッチからのストップ信号に従って、当該対応する図柄表示装置の移動表示を停止可能な停止制御解除遊技を行わせる停止制御一部解除遊技制御手段と、
前記通常遊技制御手段による通常遊技、前記特別遊技制御手段による特別遊技、及び停止制御解除手段による停止制御一部解除遊技の遊技結果を停止図柄の組合せが所定の図柄の組合せか否かによって判定する遊技結果判定手段と、
前記遊技結果判定手段による入賞との判定結果にもとづいて、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、を備え、
前記停止制御一部解除遊技制御手段には、
前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域及び前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域以外の制御解除領域の2つの領域を有する停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルと、
前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域に属するものであると判定されたことを条件に、前記判定結果とストップスイッチからのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を停止させて、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄となるように図柄の移動表示の停止を制御する引込み手段と、
前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの制御解除領域に属するものであると判定されたことを条件に、ストップスイッチからのストップ信号にもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を停止させて、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄とならないように図柄の移動表示を制御すると共に、ストップスイッチからのストップ信号に従って直ちに図柄の移動表示を停止させると、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄以外の図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄となる場合には、直ちに図柄の移動表示を停止させる制御を行う蹴飛ばし手段とを備え、
前記遊技結果判定手段は、停止制御一部解除遊技制御手段による停止制御解除遊技において、前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が制御解除領域に属するものであると判定されているときに、停止図柄の組み合わせが入賞となる図柄の組み合わせと一致したときには、入賞と判定するようにした
ことを特徴とするスロットマシン。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
当審における拒絶の理由に引用した特開平9-285596号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?エの記載が図示とともにある。
ア.「複数の図柄を移動表示可能な複数の図柄表示装置と、
前記図柄表示装置の移動表示を開始させるスタートスイッチと、
前記各図柄表示装置に対応し、当該図柄表示装置の移動表示を個別に停止させる複数のストップスイッチと、
前記図柄表示装置、スタートスイッチ及びストップスイッチを制御する電子的制御装置とを備え、
前記電子的制御装置には、
前記図柄表示装置における図柄の停止態様を決定するための乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記乱数発生手段により発生した乱数を抽選する乱数抽選手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記図柄表示装置の移動表示を開始させ、
前記乱数抽選手段により抽選した抽選乱数と、前記各ストップスイッチのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を個別に停止可能なゲーム制御手段とを備え、
前記ゲーム制御手段には、
通常ゲームを制御する通常ゲーム制御手段と、
この通常ゲームの結果、図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致したことを条件に、前記通常遊技より遊技者に有利な特別ゲームを行わせる特別ゲーム制御手段と、
前記複数のストップスイッチのうち、予め設定した少なくとも1つのストップスイッチからのストップ信号に従って、当該対応する図柄表示装置の移動表示を停止させる停止制御解除ゲームを行わせる停止制御解除手段と、
前記通常ゲーム制御手段による通常ゲーム、前記特別ゲーム制御手段による特別ゲーム、及び停止制御解除手段による停止制御解除ゲームのゲーム結果を判定するゲーム結果判定手段とを備え、
前記電子的制御装置には、
前記停止制御解除手段による停止制御解除ゲームのゲーム回数を計数する回数計数手段と、
前記通常ゲーム制御手段による通常ゲームから停止制御解除手段による停止制御解除ゲームへの移行条件、及び停止制御解除手段による停止制御解除ゲームから通常ゲーム制御手段による通常ゲームへの移行条件を判定する条件判定手段とを備え、
前記条件判定手段には、
前記通常ゲーム制御手段による通常ゲーム中、停止制御解除ゲーム移行条件が達成されたことを判定し、前記停止制御解除ゲーム手段による停止制御解除ゲームを開始させる開始条件判定手段と、
前記回数計数手段より計数した停止制御解除ゲームのゲーム回数が、所定のゲーム回数に達したことを条件に、前記停止制御解除手段による停止制御解除ゲームを終了させる終了条件判定手段とを備え、
スロットマシンの前面には、回数計数手段により計数した停止制御解除ゲームの回数を表示する回数表示装置を備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「条件判定手段には、
停止制御解除手段による停止制御解除ゲームにおいて、図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致する可能性があるかを判定する中断条件判定手段を備え、
ゲーム制御手段には、
前記中断条件判定手段からの中断判定信号の入力を条件に図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致しないように図柄表示装置の停止態様を制御する停止制御解除一時中断手段を備えたことを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載のスロットマシン。」(【請求項6】)
ウ.「停止制御解除ゲームにおいて、条件判定手段180の中断条件判定手段183により、図柄表示装置40における図柄の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致する可能性があるかを判定する。具体的には、例えば図柄表示装置40における図柄の停止態様が特別ゲーム移行態様、例えば「7」「7」「7」で停止する可能性があるか否かを判定する。」(段落【0088】)
エ.「特別ゲーム移行態様に一致する可能性があると判定した場合には、ゲーム制御手段160の停止制御解除一時中断手段165により、図柄表示装置40の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致しないように図柄表示装置40における図柄の停止態様を制御する。すなわち、遊技者によるストップスイッチ70の操作により、例えば図柄表示装置40おける有効ライン上の図柄が、左側から順に「7」「7」と停止した場合に、遊技者が右側の図柄を「7」で停止させようと、ストップスイッチ70を操作しても、停止制御解除一時中断手段165により、図柄は「7」以外の停止態様、例えば「クイーン」で停止するように制御する。」(段落【0089】)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の請求項6において請求項1を引用する発明を独立形式で書き下すと、次のとおりである。
「複数の図柄を移動表示可能な複数の図柄表示装置と、
前記図柄表示装置の移動表示を開始させるスタートスイッチと、
前記各図柄表示装置に対応し、当該図柄表示装置の移動表示を個別に停止させる複数のストップスイッチと、
前記図柄表示装置、スタートスイッチ及びストップスイッチを制御する電子的制御装置とを備え、
前記電子的制御装置には、
前記図柄表示装置における図柄の停止態様を決定するための乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記乱数発生手段により発生した乱数を抽選する乱数抽選手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記図柄表示装置の移動表示を開始させ、
前記乱数抽選手段により抽選した抽選乱数と、前記各ストップスイッチのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を個別に停止可能なゲーム制御手段とを備え、
前記ゲーム制御手段には、
通常ゲームを制御する通常ゲーム制御手段と、
この通常ゲームの結果、図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致したことを条件に、前記通常遊技より遊技者に有利な特別ゲームを行わせる特別ゲーム制御手段と、
前記複数のストップスイッチのうち、予め設定した少なくとも1つのストップスイッチからのストップ信号に従って、当該対応する図柄表示装置の移動表示を停止させる停止制御解除ゲームを行わせる停止制御解除手段と、
前記通常ゲーム制御手段による通常ゲーム、前記特別ゲーム制御手段による特別ゲーム、及び停止制御解除手段による停止制御解除ゲームのゲーム結果を判定するゲーム結果判定手段と、後記中断条件判定手段からの中断判定信号の入力を条件に図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致しないように図柄表示装置の停止態様を制御する停止制御解除一時中断手段を備え、
前記電子的制御装置には、
前記停止制御解除手段による停止制御解除ゲームのゲーム回数を計数する回数計数手段と、
前記通常ゲーム制御手段による通常ゲームから停止制御解除手段による停止制御解除ゲームへの移行条件、及び停止制御解除手段による停止制御解除ゲームから通常ゲーム制御手段による通常ゲームへの移行条件を判定する条件判定手段とを備え、
前記条件判定手段には、
前記通常ゲーム制御手段による通常ゲーム中、停止制御解除ゲーム移行条件が達成されたことを判定し、前記停止制御解除ゲーム手段による停止制御解除ゲームを開始させる開始条件判定手段と、
前記回数計数手段より計数した停止制御解除ゲームのゲーム回数が、所定のゲーム回数に達したことを条件に、前記停止制御解除手段による停止制御解除ゲームを終了させる終了条件判定手段と、
停止制御解除手段による停止制御解除ゲームにおいて、図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致する可能性があるかを判定する中断条件判定手段を備え、
スロットマシンの前面には、回数計数手段により計数した停止制御解除ゲームの回数を表示する回数表示装置を備えたスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「乱数抽選手段」、「ゲーム制御手段」、「通常ゲーム」、「通常ゲーム制御手段」、「特別ゲーム」「特別ゲーム制御手段」及び「ゲーム結果判定手段」は、本願発明の「乱数抽出手段」、「遊技制御手段」、「通常遊技」、「通常遊技制御手段」、「特別遊技」、「特別遊技制御手段」、「停止制御解除遊技」及び「遊技結果判定手段」にそれぞれ相当し、引用発明1の「停止制御解除ゲーム」は本願発明の「停止制御一部解除遊技」及び「停止制御解除遊技」の双方に相当し(本願発明において、「停止制御一部解除遊技」及び「停止制御解除遊技」が異なる意味で使用されていると認めることができない。)、並びに引用発明1の「停止制御解除手段」は本願発明の「停止制御一部解除遊技制御手段」及び「停止制御解除手段」の双方に相当する(本願発明において、「停止制御一部解除遊技制御手段」及び「停止制御解除手段」が異なる意味で使用されていると認めることができない。)。
本願発明の「遊技結果判定手段による入賞との判定結果にもとづいて、遊技者に利益を付与する利益付与手段」が引用発明1に備わっていることは自明である。
本願発明の「遊技結果判定手段」は、「停止制御一部解除遊技の遊技結果」についても「停止図柄の組合せが所定の図柄の組合せか否かによって判定する」のであり、「前記遊技結果判定手段は、停止制御一部解除遊技制御手段による停止制御解除遊技において、前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が制御解除領域に属するものである」か否かにかかわらず、「停止図柄の組み合わせが入賞となる図柄の組み合わせと一致したときには、入賞と判定する」ものであるから、「前記遊技結果判定手段は、停止制御一部解除遊技制御手段による停止制御解除遊技において、前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が制御解除領域に属するものであると判定されているときに、停止図柄の組み合わせが入賞となる図柄の組み合わせと一致したときには、入賞と判定するようにした」との発明特定事項は、他の発明特定事項に何もつけ加えない。すなわち、一致点及び相違点の認定においては考慮する必要がない。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「複数の図柄を移動表示可能な複数の図柄表示装置と、
前記図柄表示装置の移動表示を開始させるスタートスイッチと、
前記各図柄表示装置に対応し、当該図柄表示装置の移動表示を個別に停止させる複数のストップスイッチと、
前記各図柄表示装置、スタートスイッチ及びストップスイッチを制御する電子的制御装置とを備え、
前記電子的制御装置には、
前記図柄表示装置における図柄の停止態様を決定するための乱数を発生させる乱数発生手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記乱数発生手段により発生した乱数を抽出する乱数抽出手段と、
前記スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記図柄表示装置の移動表示を開始させ、前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数と、前記各ストップスイッチのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を個別に停止可能な遊技制御手段とを備え、
前記遊技制御手段には、
通常遊技を制御する通常遊技制御手段と、
この通常遊技の結果、図柄表示装置の停止態様が特別遊技移行態様に一致したことを条件に、前記通常遊技より遊技者に有利な特別遊技を行わせる特別遊技制御手段と、
前記複数のストップスイッチのうち、予め設定した少なくとも一つのストップスイッチからのストップ信号に従って、当該対応する図柄表示装置の移動表示を停止可能な停止制御解除遊技を行わせる停止制御一部解除遊技制御手段と、
前記通常遊技制御手段による通常遊技、前記特別遊技制御手段による特別遊技、及び停止制御解除手段による停止制御一部解除遊技の遊技結果を停止図柄の組合せが所定の図柄の組合せか否かによって判定する遊技結果判定手段と、
前記遊技結果判定手段による入賞との判定結果にもとづいて、遊技者に利益を付与する利益付与手段と、を備えたスロットマシン。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明の「停止制御一部解除遊技制御手段」が、「前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域及び前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域以外の制御解除領域の2つの領域を有する停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブル」、「前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域に属するものであると判定されたことを条件に、前記判定結果とストップスイッチからのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を停止させて、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄となるように図柄の移動表示の停止を制御する引込み手段」及び「前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの制御解除領域に属するものであると判定されたことを条件に、ストップスイッチからのストップ信号にもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を停止させて、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄とならないように図柄の移動表示を制御すると共に、ストップスイッチからのストップ信号に従って直ちに図柄の移動表示を停止させると、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄以外の図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄となる場合には、直ちに図柄の移動表示を停止させる制御を行う蹴飛ばし手段」を備えるのに対し、引用発明1のそれは「停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブル」を備えず、「停止制御解除手段による停止制御解除ゲームにおいて、図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致する可能性があるかを判定する中断条件判定手段」及び「中断判定信号の入力を条件に図柄表示装置の停止態様が特別ゲーム移行態様に一致しないように図柄表示装置の停止態様を制御する停止制御解除一時中断手段」を備える点。なお、引用発明1では、構文上「停止制御解除一時中断手段」は「ゲーム制御手段」に属する手段ではあるが、「停止制御解除手段」に属する手段であるとされていないけれども、「停止制御解除手段」も「ゲーム制御手段」に属するのだから、「停止制御解除一時中断手段」が「停止制御解除手段」に属するとするのは単なる認識の問題である。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
引用発明1の「停止制御解除一時中断手段」は、「例えば図柄表示装置40おける有効ライン上の図柄が、左側から順に「7」「7」と停止した場合に、遊技者が右側の図柄を「7」で停止させようと、ストップスイッチ70を操作しても、停止制御解除一時中断手段165により、図柄は「7」以外の停止態様、例えば「クイーン」で停止するように制御する。」(記載エ参照)とされているから、本願発明の「ストップスイッチからのストップ信号にもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を停止させて、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄とならないように図柄の移動表示を制御すると共に、ストップスイッチからのストップ信号に従って直ちに図柄の移動表示を停止させると、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄以外の図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄となる場合には、直ちに図柄の移動表示を停止させる制御を行う蹴飛ばし手段」と格別異ならない。
すなわち、本願発明における「前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの制御解除領域に属するものであると判定されたことを条件」とした制御と、引用発明1における「停止制御解除ゲーム」の制御内容は同一であると認めることができる。また、「判定結果とストップスイッチからのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を停止させて、前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる図柄の組み合わせと一致する図柄が停止図柄となるように図柄の移動表示の停止を制御する引込み手段」自体は、引用発明1の通常ゲームにおいて採用されている制御手段である。これらのことを考慮すると、上記相違点は「停止制御一部解除遊技制御手段」に関する相違点として、次のように整理することができる。
(a)本願発明が「特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域及び前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域以外の制御解除領域の2つの領域を有する停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブル」を備えるが、引用発明1はかかる停止図柄決定テーブル」を備えない。
(b)本願発明では、「乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの制御解除領域に属するものであると判定された」場合のみ、引用発明1の「停止制御解除ゲーム」と同じ制御を行う。
(c)本願発明では、「前記乱数抽出手段により抽選した抽選乱数が停止制御一部解除遊技用の停止図柄決定テーブルの前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域に属するものであると判定された」場合に、引用発明1の「通常ゲーム」と同じ制御を行う。

当審における拒絶の理由に引用した登録実用新案第3038903号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のオ?キの記載がある。
オ.「従来この種のスロットマシンでは、投入口に遊技メダルを投入し、横3列に配置された各回転ドラムを回転させ、停止スイッチのボタンを順次押して各回転ドラムを停止し、停止後の回転ドラムの外周表面に表示された図柄の組合せに応じて、所定の遊技メダルを賞出するようにしている。」(段落【0002】)
カ.「大当たりを引き当てた遊技者にとって、より遊技メダルの獲得を図ることが出来る機会を与えるようにした新たな特別ゲームのルールが提案されている。すなわち、大当たりによるビッグボーナスゲームの終了時に、改めて抽選を行い、この抽選に当選すると、規定に従った追加のゲームができるようになっている。」(段落【0005】)
キ.「追加のゲームは、例えば、チャレンジタイムゲームとして、遊技者の回転リールを停止する技量が発揮できるように制御され(但し、小役図柄に対してのみ目押し停止が可)、規定ゲーム数を消化するか、規定枚数を獲得するか、新たに大当たりを引き当てるかすると終了するようなゲーム内容となっている。」(段落【0006】)

引用例2に直接的な記載がすべてあるわけではないけれども、「チャレンジタイムゲーム」が「遊技者の回転リールを停止する技量が発揮できる」とされていること、「ビッグボーナスゲーム」(本願発明の「特別遊技」に相当)等の記載があることを考慮すれば、本願発明及び引用発明1に共通する「図柄表示装置における図柄の停止態様を決定するための乱数を発生させる乱数発生手段」、「スタートスイッチのスタート信号にもとづいて、前記乱数発生手段により発生した乱数を抽選する乱数抽選手段」、「乱数抽選手段により抽選した抽選乱数と、前記各ストップスイッチのストップ信号とにもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示を個別に停止可能なゲーム制御手段」が引用例2記載のスロットマシンにも備わっていることは明らかである。なお、これら各手段及び抽選乱数と停止図柄の関係を定める「停止図柄決定テーブル」は、本願出願時においてのみならず、引用例2の出願時においても、スロットマシンにおいて極めて普通に採用されているありふれた手段である。
「チャレンジタイムゲーム」以外の通常遊技であれば、抽選乱数と、各ストップスイッチのストップ信号にもとづいて、対応する図柄表示装置の移動表示が停止されるため、遊技者の回転リールを停止する技量が発揮することが困難であり、そのため特別の遊技として「チャレンジタイムゲーム」が採用されたと解するよりなく、そうである以上、引用例2記載の「チャレンジタイムゲーム」は本願発明の「停止制御一部解除遊技」及び「停止制御遊技」に相当する。
記載キによれば、小役図柄に対してのみ目押し停止が可とされているから、ビッグボーナスゲーム対応図柄を目押し停止することができない。それにもかかわらず、記載キによればチャレンジタイムゲーム中に「新たに大当たりを引き当てる」ことがあり得るとされている。そうであれば、チャレンジタイムゲーム中であっても、何らかの条件が成立した場合に限り、ビッグボーナスゲーム対応図柄を停止可能と解さなければならない。その何らかの条件について、引用例2には特段記載はないが、チャレンジタイムゲーム以外の通常遊技であれば、先に述べたように、乱数抽選がなされ、抽選結果がビッグボーナスゲーム入賞である時に限ってビッグボーナスゲーム対応図柄を停止できることを考慮すれば、何らかの条件とは通常遊技と同様に乱数抽選結果がビッグボーナスゲーム入賞である場合と解するのが自然であり、仮にそのように解せないとしても、何らかの条件を「乱数抽選結果がビッグボーナスゲーム入賞」とすることには何の困難性もない。
この点請求人は、「引用例2にいう「目押し停止」とは、ストップスイッチを操作して遊技者が図柄表示装置の移動表示を直ちに停止させることができた現象を指すものであって、スロットマシンの図柄表示装置の移動表示を停止させる制御そのものを示すものではない。」(平成19年10月19日付け意見書6頁5?7行)と主張するが、直ちに停止させることも1つの制御であるから、請求人の上記主張を採用することはできない。請求人は上記主張に続けて、「したがって、小役図柄に対してのみ「図柄表示装置の移動表示を直ちに停止させる」ことと、「図柄表示装置の移動表示を直ちに停止させ」て「大当たりを引き当てる」こととは矛盾しない。」(同書同頁7?10行)とも主張するが、小役図柄に対してのみ図柄表示装置の移動表示を直ちに停止させる以上、同じ条件下で大当たり対応図柄を直ちに停止させることはできない。また、「小役図柄に対してのみ目押し停止が可」とすることの意義が、目押し停止対象を大当たり対応図柄にまで拡張した場合、停止技量に優れた遊技者にとってあまりにも有利になりすぎることの防止(これは、引用発明1が「中断条件判定手段」及び「停止制御解除一時中断手段」を備える趣旨と同じである。)にあることは明らかであるから、チャレンジタイムゲーム中常に、大当たり対応図柄停止可能とされているのでないことも明らかである。すなわち、「図柄表示装置の移動表示を直ちに停止させる」ことと、チャレンジタイムゲーム中に「大当たりを引き当てる」ことを矛盾なく理解するためには、何らかの条件のもとで「大当たりを引き当てる」と理解しなければならない。もっとも、何らかの条件のもとで「大当たりを引き当てる」に際して、通常遊技同様に引込み手段による制御をしなければならない理由は必ずしもない。しかし、入賞すべき図柄が定まっている場合(「小役図柄に対してのみ目押し停止が可」の場合には、スロットマシンは停止図柄を定めない。)、引込み手段による制御をする方が目押し停止よりも遊技者に有利であるから、より遊技者に有利となるように、通常遊技同様に引込み手段による制御をすることは設計事項である。以上のとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。
ここで、引用発明1においては、「中断条件判定手段」及び「停止制御解除一時中断手段」を備え、停止制御解除ゲーム中においては、決して特別遊技に入賞確定しないようにしているのであるが、引用例2記載のスロットマシンでは、何らかの条件成立のもとで、チャレンジタイムゲーム(停止制御解除ゲーム)中であってもビッグボーナスゲーム(特別遊技)に入賞確定することが可能とされており、どちらの遊技ルールを採用しても構わないことは明らかであるから、引用発明1を出発点として、引用例2記載の遊技ルールに変更することは当業者にとって想到容易である。
引用例2記載のスロットマシンが、何らかの条件が成立した場合に限り、チャレンジタイムゲーム中にビッグボーナスゲーム対応図柄を停止可能であること、及びその何らかの条件を「乱数抽選結果がビッグボーナスゲーム入賞」とすることには何の困難性もないことは前示のとおりである。ところで、通常遊技では各種入賞があり、どの入賞であるか又は外れであるかを区別しなければならないが、チャレンジタイムゲーム中であって乱数抽選結果がビッグボーナスゲーム入賞でない場合には、小役図柄を目押し停止するのだから、ビッグボーナスゲーム入賞でない場合をこと細かに区別する必要はない。そうである以上、チャレンジタイムゲーム中にビッグボーナスゲーム対応図柄を停止可能かどうかを決定するための「停止図柄決定テーブル」としては、「前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域及び前記特別遊技を行わせる図柄の組み合わせとなる領域以外の制御解除領域の2つの領域を有する」テーブルで十分なことは自明である。
以上のとおりであるから、引用発明1を出発点として、引用例2記載のスロットマシン同様、「停止制御解除ゲーム」中にも特別遊技入賞が可能なように、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-19 
結審通知日 2007-11-22 
審決日 2007-12-04 
出願番号 特願平9-360052
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 中槙 利明
太田 恒明
発明の名称 スロットマシン  
代理人 竹山 宏明  
代理人 米山 淑幸  

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