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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1172996
審判番号 無効2006-80146  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-08-10 
確定日 2008-01-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2083348号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第2083348号は、昭和61年6月26日に出願した特願昭61-150205号の一部を平成5年4月6日に新たな特許出願(特願平5-78394号)としたものであって、平成8年8月23日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成18年8月10日付で特許無効の審判請求がなされ、これに対して、同年10月20日付で被請求人から答弁書が提出されるとともに、同日付で訂正請求がなされ、同年12月18日付で請求人から弁駁書が提出された。

2 訂正請求について

2-1 訂正請求の内容
被請求人が平成18年10月20日付で行った訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、すなわち、以下のとおりに訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。
「所定枚数のメダルの投入後のスタートレバーの操作によって複数の回転リールを回転させ、前記回転リールの回転を停止スイッチの操作によって停止させ、その停止時に回転リールの表面に表示された絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すスロットマシンにおいて、
上記回転リールの絵柄には、特定絵柄を表示し、
前記スロットマシンには、前記回転リールの停止時に、回転リールの表面に表示された絵柄の組合せを判定する判定装置を設け、
前記判定装置には、
前記回転リールの停止時に入賞絵柄が揃っているか否かを判定する入賞絵柄判定手段と、
この入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていると判定された場合には、当該入賞絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すメダル払い出し制御手段と、
前記回転リールの停止時に前記特定絵柄の有無を判定する特定絵柄判定手段と、
前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判定され、かつ前記特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定されたことを条件に、新たなメダルの投入無しに、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態でスタートレバーの操作が行なえるように制御するスタートレバー制御手段とを備え、スタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成したことを特徴とするスロットマシン。」

(2)訂正事項2
特許明細書の段落【0009】を次のとおり訂正する。
「最後に、スタートレバー制御手段であり、このスタートレバー制御手段は、前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判定され、かつ前記特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定されたことを条件に、新たなメダルの投入無しに、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態でスタートレバーの操作が行なえるように制御し、このスタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成したものである。」

2-2 訂正請求に対する請求人の主張
請求人は、上記訂正請求による訂正事項は、訂正の目的制限の要件を満たしておらず、新規事項の追加をするものであり、実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張し、さらに、独立特許要件を満たしていないとも主張している。

2-3 訂正の適否

(1)訂正事項1について
上記訂正事項1の内容は、特定の条件下でのスタートレバーの操作に関して、「新たなメダルの投入無しに」行なえること、「特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態で」行なえること、さらに「スタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成した」ことを付加することにより、特許請求の範囲の記載を明確化し、下位概念化するものであるから、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、特許明細書の段落0022には「・・・特定絵柄がある場合には、メダル投入後の状態、即ちステップ40の前に戻って、新たなメダルの投入なしに再遊技が行なえることとなる。・・・」と記載されており、「再遊技」が「新たなメダルの投入無しに」行なえることが記載されている。そして、同段落中の「ステップ40」とは「スタートレバーの操作」であることを考慮すると(段落0018及び第2図参照)、「スタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成した」ことについても実質的に記載されている。さらに、本発明がゲームの内容に「引き分け」の概念を持ち込むものであって(段落0005及び段落0026参照)、特定絵柄が有ると判定された遊技の「引き分け」による「再遊技」を行なうものであることを考慮すると、同段落中の「メダル投入後の状態」が「特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態」を意味することは自明である。よって、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2の内容は、特許請求の範囲の請求項1を上記訂正事項1のとおりに訂正したことに対応して発明の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)独立特許要件について
請求人は、上記訂正請求による訂正事項は独立特許要件を満たしていないと主張するが、独立特許要件は、平成6年改正前特許法第126条第3項を準用する特許法第134条の2第5項の規定(読み替え部分参照)により、無効審判が申し立てられている請求項に関する訂正については適用されず、無効審判が申し立てられていない請求項に関する訂正についてのみ適用されるものであるから、請求人の主張は失当である。
なお、訂正後における特許請求の範囲の請求項1に係る発明が甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるかについては、「6 対比・判断」において判断している。

(4)むすび
以上のとおり、上記訂正請求は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、これを認める。

3 特許無効に関する請求人の主張
請求人は、甲第1乃至甲4号証として刊行物を提出して、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、該請求項1に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである旨、主張している。
甲第1号証:実願昭58-128414号(実開昭60-37381号) のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭59-121693号(実開昭61-36686号) のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭53-6163号(実開昭54?110286号)の マイクロフィルム
甲第4号証:1975 Model 1083 “DOUBLE OR NOTHING”
Bally SLOT MACHINES, Electro-Mechanicals 1964-1980
LIBERTY BELL BOOKS, p.45

4 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明は、平成18年10月20日付の訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本件特許発明」という)である。
「所定枚数のメダルの投入後のスタートレバーの操作によって複数の回転リールを回転させ、前記回転リールの回転を停止スイッチの操作によって停止させ、その停止時に回転リールの表面に表示された絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すスロットマシンにおいて、
上記回転リールの絵柄には、特定絵柄を表示し、
前記スロットマシンには、前記回転リールの停止時に、回転リールの表面に表示された絵柄の組合せを判定する判定装置を設け、
前記判定装置には、
前記回転リールの停止時に入賞絵柄が揃っているか否かを判定する入賞絵柄判定手段と、
この入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていると判定された場合には、当該入賞絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すメダル払い出し制御手段と、
前記回転リールの停止時に前記特定絵柄の有無を判定する特定絵柄判定手段と、
前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判定され、かつ前記特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定されたことを条件に、新たなメダルの投入無しに、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態でスタートレバーの操作が行なえるように制御するスタートレバー制御手段とを備え、スタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成したことを特徴とするスロットマシン。」

5 甲各号証に記載された発明

(1)甲第1号証について
甲第1号証(実願昭58-128414号(実開昭60-37381号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、以下の記載がある。
「2.実用新案登録請求の範囲
周縁部にそれぞれ複数種類の絵柄が配列された複数個のリールが回転停止された際に、所定の入賞ライン上に位置する各リールの絵柄の組み合わせによつて入賞が決定されるスロツトマシンにおいて、前記リールの少なくとも1個についてその複数種類の絵柄のうちの特定の絵柄が前記入賞ライン上に停止しているか否かをゲーム毎に検出する検出装置と、この検出装置からの検出信号を積算計数する計数装置とを備え、この積算計数値が所定値に達することにより補助入賞特典を与えるよう構成したことを特徴とするスロツトマシン。」(第1頁第5?15行)
「本考案はスロツトマシンに関し、特に従来のスロツトマシンにおける入賞の外に、補助的入賞を付加したスロツトマシンに係るものである。」(第1頁第17?19行)
「本考案は以上のような従来のスロツトマシンにおける難点に鑑み、通常の入賞すなわちリールの全ての絵柄の組み合わせによる入賞の決定の外に、特定の絵柄(エキストラ絵柄)の現出回数をカウントし、その積算値が一定値に対すると、例えば一定数のコインの払い出し、又は望ましくない絵柄が現われている任意のリールを再回転させることができる補助入賞特典が与えられる。」(第2頁第14行?第3頁第1行)
「第1図は本考案スロツトマシンの一例を示す外観図で、遊戯者はコイン投入口1より1?3枚のコインを投入することによりゲームを開始できる。このコインの投入枚数に応じて入賞ライン21、22、23の何ラインが入賞判定の際に有効化されるかが決められることになる。こうしてコイン投入後にスタートレバー2が操作されると全リール3、4、5が回転させることゝなるが、第1リール3、第2リール4は例えば乱数制御などによるランダム性をもつて適当な時間の経過後に自動的に順次停止される。この時点で所定の入賞ライン上にもたらされる第1リール3、第2リール4の絵柄が決定されることになりその絵柄は対応するリール窓13、14から識別される。この後、第3リール5は低速で回転するとともに、操作許可表示8が点灯してストツプボタン7の操作が可能であることが表示される。その後ストツプボタン7が操作されると第3リール5も停止し、全てのリールの絵柄が決定されることになり、入賞の判定がなされると共に遊戯者もこの絵柄の組み合わせをリール窓13?15より観察できる。本考案のスロツトマシンにおいては、前述した補助入賞が設けられている。これはリール周縁部に配列されている複数種類の絵柄のうち、第2図に示すような特定の絵柄(以下、これをエキストラ絵柄と称する)である「UNIVERSAL(登録商標)」が入賞ライン上で停止された場合に、エキストラポイント“1”が得られるようになつている。なお、例えば1回のゲームに際して投入されたコインが3枚であれば、第1図における入賞ライン21、22、23全てが有効化されるので、そのいずれかの入賞ラインに前記のエキストラ絵柄「UNIVERSAL」が停止されゝば、投入コイン数に応じてエキストラポイント“3”が得られる。従つて、仮に第1図における第1リール3、第2リール4が入賞を構成し得ない絵柄の組み合わせで停止されていても、遊戯者は第3リール5に関してエキストラ絵柄を狙つてストツプボタン7を操作するというゲーム性が残されていることになる。このエキストラポイントの有無は毎回のゲーム毎に判定され、その結果はゲームの続行中順次エキストラポイント表示部24に積算表示されてゆき、遊戯者はエキストラポイントが何点になつているかを識別できるようになつている。そして例えばエキストラポイントの積算値が“20”点になると補助入賞としてすでに停止されている第1又は第2リールのうち希望する1つのリールについて再度回転できる特典が得られる。」(第3頁第4行?第5頁第11行)
「第3図は本考案の電気的構成を示す機能ブロツク図である。コインの投入後に、スタートレバー2を手前に引くと、これに連動するスイツチ30がONし、発生したスタート信号をマイクロコンピユータ31に入力する。このマイクロコンピユータ31は、周知のようにCPU,ROM,RAM,I/Oポート,制御回路とから構成されるものであるが、この第3図ではマイクロコンピユータ31の機能に基づいてブロツク化されている。
前記スイツチ30がONすると、モータ制御部32,33が作動を開始し、パルス発生部34からのパルスをモータ駆動回路35?37に送つて、パルスモータ38?40をそれぞれ駆動する。
乱数発生部42は、2個の乱数値をサンプリングし、この乱数値に応じてモータ制御部32を制御する。すなわち、パルスモータ38の始動後約2秒経過すると、乱数発生部42からサンプリングした乱数値に応じてパルスモータ38を停止させる。更に、約1.5秒経過すると、もう1つの乱数値に応じてパルスモータ39が停止する。このようにして第1及び第2リール3,4が順次停止する。
前記第2リール4の停止と同時に、モータ制御部33は、パルスモータ40の回転を低速(高速時の1/8)に切り換える。このパルスモータ40が低速回転になると、第1図に示すストツプボタン操作許可表示8が点灯する。遊戯者は、第3リール5の絵柄を見ながら、入賞絵柄の配列が完成されるように、ストツプボタン7を押す。このストツプボタン7が押されると、モータ制御部33は周数数の低いパルスをモータ駆動回路37へ送るのを停止する。この結果、第3リール5の回転が停止する。
前記モータ駆動回路35?37に入力されるパルスは、カウンタ44?46でカウントされている。こゝで、各リール3?5の遮光片3a,4a,5aが光検出器47?49で検出され、リールの原点位置を示す信号が出力され、この原点信号で前記カウンタ44?46がそれぞれリセツトされる。したがつて、各カウンタ44?46はリールが1回転する毎にリセツトされ、原点位置からのパルスの個数をカウントすることになる。
前記各カウンタ44?46の内容は、各リールの絵柄の配列を記憶した絵柄検出部50?52に送られ、入賞ラインにある絵柄が何であるかを検出する。具体的には、絵柄のピツチは5個のパルスに対応しているから、パルスが5個入力された時に、各カウンタ44?46は10進法で「1」ずつカウントアツプし、このカウンタ44?46の内容をアドレス信号として絵柄判定部50?52をアクセスすればよい。なお、中央の入賞ラインの上又は下に位置する入賞ラインにある絵柄は、各カウンタ44?46の内容に「+1」又は「-1」を加えてから絵柄判定部50?52をアクセスすればよい。こうして得た3個の絵柄の組合せは、入賞判定部53に記憶された各入賞絵柄と比較され、当りであるかどうかが判定される。当りの場合には、コイン排出制御部54はホツパー55の駆動を制御し、入賞絵柄に応じた個数のコインを排出する。
前記絵柄検出部50?52の出力は、エキストラ絵柄判定部58に入力され、入賞ラインにエキストラ絵柄が現われているかどうかが判定され、1個のリールに対してエキストラ絵柄が現われている場合には、エキストラポイント「1」が与えられる。なお、このエキストラ絵柄判定部58は、投入されたコイン数をエキストラポイントに垂算する。したがつて、投入コイン数が3の時にはエキストラポイントが「3」となり、また最大エキストラポイントはリールの個数が「3」の場合に「9」である。
エキストラ絵柄判定部58から出力されたエキストラポイントは、カウンタ59で加算され、その加算結果は、駆動回路60を介してエキストラポイント表示部24に表示される。
エキストラポイントが「20」になると、再スタート制御部61が作動され、操作許可表示部9が点灯して第1リール3又は第2リール4のうち任意のリールの再回転を許容する。こゝで、望ましくない絵柄が現われているリールに対応する再スタートスイツチ6を押せば、選んだリールが再回転する。その後、乱数発生部42でサンプリングした乱数値に応じて回転しているリールが停止する。」(第6頁第1行?第10頁第4行)
「本考案スロツトマシンにおいては、通常の入賞すなわち複数リール全てによる絵柄の組み合わせによる入賞の他に、少なくとも1個のリールに関して特定の絵柄が有効入賞ライン上に得られた場合には補助入賞による得点が与えられるようにしたので、ゲーム性を一層高めることができることになる。
なお、例えば3個のリールのそれぞれを停止ボタン操作により任意停止させるスロツトマシンについても本考案は等しく適用できることはもとより、この場合ゲームの興味を最後まで持続させる意味で、最終停止させるリールに対して補助入賞が与えられるように各リールのリール停止ボタンの操作順序を監視しながら、補助入賞判定部を作動させるようにすることもcpu処理プログラムにより容易に実現できる。」(第10頁第12行?第11頁第7行)

以上の記載事項及び第1図乃至第3図を参酌すると、甲第1号証には次の発明が記載されている(以下、「甲第1号証発明」という)。
「コイン投入後にスタートレバー2が操作されると全リール3、4、5が回転され、3個のリールのそれぞれを停止ボタン操作により任意停止させ、リールの絵柄の組合せが当たりの場合には、入賞絵柄に応じた個数のコインを排出するスロツトマシンにおいて、
リールの絵柄には、エキストラ絵柄を表示し、
スロツトマシンには、リールの停止時に、入賞ラインにある絵柄が何であるかを検出する絵柄検出部50?52を備えたマイクロコンピュータ31を設け、
マイクロコンピュータ31には、
絵柄の組合せを入賞絵柄と比較して、当たりであるかどうか判定する入賞判定部53と、
入賞絵柄判定部53により、当たりであると判定された場合には、入賞絵柄に応じた個数のコインを排出するコイン排出制御部54と、
リールの停止時にエキストラ絵柄が現れているかどうかを判定するエキストラ絵柄判定部58と、
リールの停止時にリールに対してエキストラ絵柄が現れている場合には、エキストラ絵柄判定部58から所定のエキストラポイントが出力され、エキストラポイントが「20」になると、すでに停止されているリールのうち希望するリールの再回転を許容する再スタート制御部が作動され、対応する再スタートスイッチ6を押せば、選んだリールが再回転するスロツトマシン。」

(2)甲第2号証について
甲第2号証(実願昭59-121693号(実開昭61-36686号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、以下の記載がある。
「1 (a) スタートスイッチの作動により複数個のステッピングモータヘ励磁パルスを送るドライバー手段、
(b) ステッピングモータに対応して設けられている停止スイッチ、および
(c) 各停止スイッチの最初の作動によりドライバー手段からの励磁パルスの送出を止め、2回目の作動によりドライバー手段から対応したステッピングモータに再励磁パルスを送出し、3回目の作動により再励磁パルスの送出を止める再回転手段
を有してなる電動型スロットマシンのリール再回転装置。」(第1頁第7?19行、実用新案登録請求の範囲)
「電動型スロットマシンは、多数の絵柄がその周囲に表示されている複数(通常3本)のリールと、各リールごとにリールを回転駆動するステッピングモータと、各リールをそれぞれ停止する停止スイッチを有しており、メダルを投入し、ステッピングモータを駆動させることによりリールを回転させ、遊戯者が任意に停止スイッチを作動させることにより対応するリールを順次停止させ、停止した各リールの特定位置における表示絵柄の組合せを検出し、それらの絵柄の組合せが特定の組合せであるばあいのみ、所定枚数のメダルを払出すように構成されている。
このように、従来のスロットマシンは電動型に限らず機械的に駆動されるものを含めてすべて、一旦停止スイッチを作動させてリールを停止させると、ゲームが終了するまでもはやそのリールを回転して絵柄を移動させることができないものである。」(第2頁第12行?第3頁第10行)
「本考案は、一旦停止したリールを再回転させることにより絵柄の変更を可能にすることにより、遊戯者がゲームに参加できる部分を拡大しうるリール再回転装置を提供しうるものである。」(第3頁第12?15行)
「本考案のリール再回転装置は、第1図に示す機能実現手段とスイッチ群とステッピングモータを組合わせることによって実現できる。」(第4頁第12?14行)
「第1図に示す機能実現手段は、たとえばマイクロコンピュータを用いる第2図に示すハードウェアにより達成できる。
(10)はインプットポートであり、スタートスイッチ(1)および停止スイッチ(b1)、(b2)、(b3)からの出力を受ける。(11)、(12)、(13)はそれぞれCPU、ROMおよびRAMである。アウトプットポート(14)からはステッピングモータ(d1)、(d2)、(d3)に励磁パルスおよび再励磁パルスが送出される。」(第6頁第2?11行)
「スタートスイッチの作動(100)により、各停止スイッチに対応したカウンタの内容を「ゼロ」にし(101)、全リールを回転させる(102)。ついでいずれか1つの停止スイッチが作動する(103)と、その停止スイッチがどのリールの停止スイッチであるかを判断し(104)、(108)、ついでカウンタの内容が「ゼロ」か否かを見る(105)、(109)、(112)。「ゼロ」ならばカウンタの内容を「1」に更新し(106)、(110)、(113)、リールを停止する(107)、(111)、(114)。」(第8頁第2?12行)
「第5A?5C図につぎの規定に基づいて実行されるプログラムの一実施例のフローチャートを示す。
(4):他のリールが回転していても再回転可能
(5):任意の1本のリールのみ再回転可能
(6):再回転前に全リールを停止したばあいは、所定時間内のみ再回転可能
第5A図中(300)から(314)までの処理および判断は第3図における(100)から(114)に対応している。ただし、作動した停止スイッチのカウンタの内容が「ゼロ」でないばあいは第5B図に示す○Aで始まるサブルーチン(400)?(405)に入る。
すなわち、作動した停止スイッチのカウンタの内容が「ゼロ」でない(「1」である)ばあい、再回転カウンタ(再回転により内容が「1」となり、再停止により内容が「2」となる)の内容が「2」であるか否かを判断し(400)、「2」でなければ「1」であるかを判断し(401)、「1」でなければ再回転カウンタの内容を「1」とし(402)、リールを再回転する(403)。再回転カウンタの内容が「1」であれば再回転カウンタの内容を「2」とする(404)と共にリールを再停止する(405)。
処理(307)、(311)、(314)、(403)、(405)ののちは、全リールが停止しているか否かを判断し(315)、停止していれば再回転カウンタの内容が「2」であるか否かを判断する(316)。再回転カウンタの内容が「2」であれば表示絵柄を比較し(320)、当りであれば(321)、コインまたはメダルを払出す(322)。」(第10頁第4行?第11頁第14行)
「本考案の装置を用いるときは、一旦停止したリールを再度回転させて絵柄を変更することができるので、ゲームへの興味を倍増させることができると共に、ゲームへの参加の度合を増やすことができる。」(第12頁第7?11行)

(3)甲第3号証について
甲第3号証(実願昭53-6163号(実開昭54?110286号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、以下の記載がある。
「(1) 外周に数種類の図柄を表示した複数個のリールが特定の図柄の組合せ位置に停止した場合に、所定回数ハンドルをロック解除の状態に置き、以後所定回数メダルの投入無くしてハンドル操作を可能とする機構及び電気回路を有し、且つ前記ハンドル操作により回転せしめたリールの夫々を単独で停止し得るようにし、その停止位置の図柄が一定の場合にペイアウト回路を作動させ、所定枚数のメダルを払戻すように構成したスロットマシン。」(第1頁第5?14行、実用新案登録請求の範囲)
「ところが本考案装置は、確率は極めて低いが特定の図柄の組合せの場合、例えば第1図に示す如く、3つの図柄が共に「7、7、7」となって、リール(3)(3)(3)が停止した場合には、引き続き「特別のゲーム」を続行し得るようにし、その際メダル投入口(1)よりメダルを投入することなくして、ハンドル(2)を操作し得るようにしてある。」(第5頁第12?19行)
「而してこの「特別のゲーム」につき先ず第1図に基き説明すると、前述の如く特定の図柄の組合せの場合にはゲームを続行でき、メダルを投入することなくハンドル(2)の操作が可能で、3つのリール(3)(3)(3)を同時に高速回転させることができる。」(第6頁第4?9行)
「図のLD1はステッピングリレーで、ハンドル(2)を引く毎にその接続点は○1→○2→○3→○4→○1と移動するように構成してあり、所定回数(この場合4回)ハンドル(2)を引くと、接続点は最初の位置○1へ戻る。その際リレーR2はブレークする。従って前記リレーR2は所定回数ハンドル(2)を引くまでは励磁状態にあり、これによりハンドルロック回路(G)の接点r2を閉じた状態とし、ハンドルロック解除コイル(19)を励磁して、ハンドル(2)をロック解除の状態におく。
第2にメダルの投入なくしてハンドル操作を可能とし、これにより同時に各リール(3)(3)(3)を独立回転させる構成としている。」(第9頁第6?19行)

(4)甲第4号証について
甲第4号証(1975 Model 1083 “DOUBLE OR NOTHING”, Bally SLOT MACHINES, Electro-Mechanicals 1964-1980, LIBERTY BELL BOOKS, p.45)には次の記載がある。
「When a win shows on any or all qualified pay lines, player may press button to collect win or wins. Or he may pull handle again to spin Double-or-Nothing Reel, normally concealed but open to view, during double-or-nothing spin.」
また、上記記載事項は、請求人が甲第4号証の翻訳文として提出した甲第4号証の1によると、次のように翻訳される。
「限られたペイライン(入賞ライン)のどれかまたは全てで当たりが表示されると、遊技者はボタンを押して当たりを受け取れます。あるいは、もう一度ハンドルを引いて、ダブルオアナッシングリールを回すことができ、このダブルオアナッシングリールは通常、隠れていますが、ダブルオアナッシングのスピン時に見えるようになります。」
なお、被請求人が主張するとおり、甲第4号証は発行日が明らかでなく、請求人も発行日についてなんら主張・立証していないので、当審としては、甲第4号証が本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物であると認めることはできないものの、甲第4号証の記載事項については以下の検討に含めることとする。

6 対比・判断

(1)対比
本件特許発明と甲第1号証発明を比較すると、甲第1号証発明の「コイン」は本件特許発明の「メダル」に相当し、以下同様に、「スタートレバー2」は「スタートレバー」に、「リール3、4、5」は「回転リール」に、「停止ボタン」は「停止スイッチ」に、「リールの絵柄の組合せが当たりの場合には、入賞絵柄に応じた個数のコインを排出する」は「停止時に回転リールの表面に表示された絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出す」に、「スロツトマシン」は「スロットマシン」に、「エキストラ絵柄」は「特定絵柄」に、「入賞ラインにある絵柄が何であるかを検出する絵柄検出部50?52を備えたマイクロコンピュータ31」は「回転リールの停止時に、回転リールの表面に表示された絵柄の組合せを判定する判定装置」に、「絵柄の組合せを入賞絵柄と比較して、当たりであるかどうか判定する入賞判定部53」は「入賞絵柄が揃っているか否かを判定する入賞絵柄判定手段」に、「入賞絵柄判定部53により、当たりであると判定された場合」は「入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていると判定された場合」に、「コイン排出制御部54」は「メダル払い出し制御手段」に、「エキストラ絵柄が現れているかどうかを判定するエキストラ絵柄判定部58」は「特定絵柄の有無を判定する特定絵柄判定手段」にそれぞれ相当する。
また、甲第1号証発明の「リールの停止時にリールに対してエキストラ絵柄が現れている場合には、エキストラ絵柄判定部58から所定のエキストラポイントが出力され、加算されたエキストラポイントが「20」になると」と、本件特許発明の「前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判定され、かつ前記特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定されたことを条件に」とは、「回転リールの停止時に特定絵柄が有ると判定され、さらに所定の条件を満たす場合」で共通する。
さらに、甲第1号証発明の「すでに停止されているリールのうち希望するリールの再回転を許容する再スタート制御部が作動され、対応する再スタートスイッチ6を押せば、選んだリールが再回転する」と本件特許発明の「新たなメダルの投入無しに、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態でスタートレバーの操作が行なえるように制御するスタートレバー制御手段とを備え、スタートレバーの操作によって再遊技が行える」とは、「新たなメダルの投入無しに、回転リールを再回転できる」で共通する。
したがって、両者は、
「所定枚数のメダルの投入後のスタートレバーの操作によって複数の回転リールを回転させ、前記回転リールの回転を停止スイッチの操作によって停止させ、その停止時に回転リールの表面に表示された絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すスロットマシンにおいて、
上記回転リールの絵柄には、特定絵柄を表示し、
前記スロットマシンには、前記回転リールの停止時に、回転リールの表面に表示された絵柄の組合せを判定する判定装置を設け、
前記判定装置には、
前記回転リールの停止時に入賞絵柄が揃っているか否かを判定する入賞絵柄判定手段と、
この入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていると判定された場合には、当該入賞絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すメダル払い出し制御手段と、
前記回転リールの停止時に前記特定絵柄の有無を判定する特定絵柄判定手段と、
前記回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定され、さらに所定の条件を満たす場合に、新たなメダルの投入無しに、前記回転リールを再回転できるスロットマシン。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
回転リールを再回転することができる条件として、本件特許発明では、入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判定され、かつ特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に特定絵柄が有ると判定されたことを条件にしているのに対して、甲第1号証発明では、入賞絵柄が揃っていないと判定されることを条件とせず、特定絵柄判定手段から出力・加算されたエキストラポイントが「20」になることを条件にしている点。

(相違点2)
回転リールを再回転することにより行われる遊技の内容が、本件特許発明では、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態で行なわれる「再遊技」であるのに対して、甲第1号証発明では、すでに停止されているリールのうち希望するリールから選ばれた回転リールの再回転である点。

(相違点3)
回転リールを再回転するための操作手段が、本件特許発明では、スタートレバー制御手段により制御されるスタートレバーであるのに対して、甲第1号証発明では、再スタート制御部により制御される再スタートスイッチである点。

(2)判断
上記相違点2について検討するに、請求人は、弁駁書において、「訂正後の発明における「再遊技」については、訂正明細書には、その説明がなされていないし、実施態様についても説明されていないので、「再遊技」とはリールを再回転させて再び遊技を開始することを包含するものと解される」と主張し、さらに「特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態で」という限定事項についても、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明を引用しつつ「このような限定はリールの再回転の条件設定として容易に想定し、選択しうるものにすぎない」と主張している。
しかしながら、上記相違点2の「再遊技」は、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態で行なわれるものであって、いわば特定絵柄が有ると判定された遊技を最初からやり直すものであるから、甲第1号証発明の「すでに停止されているリールのうち希望するリールから選ばれた回転リールの再回転」とは本質的に異なるものである。また、この点は、甲第2号証乃至甲第4号証にも記載も示唆もされていないし、従来周知の技術とも認められない。
そして、上記相違点2に係る構成によって、「ゲームの内容に引き分けの概念を持ち込み、引き分け時には新たなメダルの投入がなくても次のゲームが行なえるようにして、ゲーム性の向上及び同一枚数のメダルを用いての遊技時間の延長を図ることができる」という明細書に記載の顕著な効果を奏するのであるから、上記相違点2に係る構成は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易になし得たものとすることはできない。
したがって、本件特許発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
また、他に本件特許を無効とすべき理由を発見しない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スロットマシン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】所定枚数のメダルの投入後のスタートレバーの操作によって複数の回転リールを回転させ、前記回転リールの回転を停止スイッチの操作によって停止させ、その停止時に回転リールの表面に表示された絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すスロットマシンにおいて、
上記回転リールの絵柄には、特定絵柄を表示し、
前記スロットマシンには、前記回転リールの停止時に、回転リールの表面に表示された絵柄の組合せを判定する判定装置を設け、
前記判定装置には、
前記回転リールの停止時に入賞絵柄が揃っているか否かを判定する入賞絵柄判定手段と、
この入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていると判定された場合には、当該入賞絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すメダル払い出し制御手段と、
前記回転リールの停止時に前記特定絵柄の有無を判定する特定絵柄判定手段と、
前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判断され、かつ前記特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定されたことを条件に、新たなメダルの投入無しに、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態でスタートレバーの操作が行なえるように制御するスタートレバー制御手段とを備え、スタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成したことを特徴とするスロットマシン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はスロットマシン、更に詳しくはスロットマシンに設けた複数本の回転リールの回転が停止した時に、特定の絵柄が回転リール上に表われている時には、新たなメダルの投入なしに再びゲームを開始することができるスロットマシンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、スロットマシンは提供され、かつ多くの人の遊技に供されてきた。
このようなスロットマシンは、一般に、メダルを投入した後に、スタートレバーを操作して回転リールの回転を開始させ、その後に各回転リールに対応する停止スイッチを押すことによって、各回転リールの回転を停止させるものである。
【0003】
またこのように各回転リールが停止した時に、停止した回転リールの表面に描かれた絵柄の組合せが予め設定した組合せである場合には、各々の組合せに対応した枚数のメダルを払い出すようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスロットマシンは、ゲームをスタートさせるためには、必ずメダルの投入が必要とされていた。
このことは、スロットマシン自体がオールオアナッシングという考え方に基づいて作られたものであり、引き分けという概念がなかったからである。
【0005】
一方、スロットマシンもギャンブル的に使用するだけでなく、ゲームを楽しむことが行なわれるようになってきた。したがって、同一のメダル枚数で、比較的長時間ゲームが続行できることが望ましいものとなってきた。
そこで、本発明は、ゲームの内容に引き分けの概念を持ち込み、引き分けの時には新たなメダルの投入がなくても次のゲームが行なえるスロットマシンを提供して、ゲーム性の向上及び同一枚数のメダルを用いての遊技時間の延長を図ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した目的を達成するためのものであり、以下にその内容を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明は、大別すると、次の3つの構成を備えている点を特徴とする。
第1に、回転リールの絵柄には、特定絵柄を表示している。
【0007】
第2に、スロットマシンには、前記回転リールの停止時に、回転リールの表面に表示された絵柄の組合せを判定する判定装置を設けている。
第3に、前記判定装置には、次の4つの構成を備えている。
まず、入賞絵柄判定手段であり、この入賞絵柄判定手段は、前記回転リールの停止時に入賞絵柄が揃っているか否かを判定するものである。
【0008】
つぎに、メダル払い出し制御手段であり、このメダル払い出し制御手段は、前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていると判定された場合には、当該入賞絵柄の組合せによって設定枚数のメダルを払い出すものである。
さらに、特定絵柄判定手段であり、この特定絵柄判定手段は、前記回転リールの停止時に前記特定絵柄の有無を判定するものである。
【0009】
最後に、スタートレバー制御手段であり、このスタートレバー制御手段は、前記入賞絵柄判定手段により、入賞絵柄が揃っていないと判定され、かつ前記特定絵柄判定手段により、回転リールの停止時に前記特定絵柄が有ると判定されたことを条件に、新たなメダルの投入無しに、特定絵柄が有ると判定された遊技での投入メダル枚数と同一枚数のメダルが投入された状態でスタートレバーの操作が行なえるように制御し、このスタートレバーの操作によって再遊技が行えるように形成したものである。
【0010】
【作用】
本発明によれば、次のような作用を奏する。
すなわち、回転リール(12)の停止時に表われる絵柄(13)が特定絵柄(13)であった場合には、次ゲームが新たなメダルの投入なしに、単にスタートレバー(26)を操作するだけで再遊技が行なえる。
【0011】
これに加えて、判定装置(図示せず)は、停止時の回転リール(12)の表面に描かれた絵柄(13)の組合せが、メダルの払い出しを行う組合せでない場合に限り、再遊技の処理を行えば足りるので、再遊技の制御を簡便に且つ迅速に処理できる。
【0012】
【実施例】
以下本発明の実施例を、図示例と共に説明する。
第1図は、スロットマシンの正面図である。
図において、このスロットマシンは、箱体10に前扉11を開閉自在に軸支した形状となっている。
【0013】
この箱体10内部には、詳細な図示を省略するが、回転リール12、回転リール12の回転停止装置、回転リール12の停止時に表われる絵柄13の判定装置、メダルの投入選別装置、メダルの払出装置等が付設してある。
また、前扉11には、上部から順次、遊技方法の説明板14、絵柄13の表示部15、回転リール12の操作部16、メダルの払出部17が設けられている。
【0014】
説明板14には、得点確率が向上した時のゲーム方法を示す向上表示18、得点確率が向上した状態でのゲームであることを示す状態表示19が描かれている。
絵柄13の表示部15には、縦方向に絵柄13が少なくても3つは見えるようになっている表示窓20が各回転リール12毎に3つ設けてあると共に、投入メダル枚数に応じて設定されたラインを表示するためのライン表示21、払出メダルの枚数を表示するための枚数表示22、組合せに応じて払い出すメダル枚数を表示した払出表示23及びメダルの投入口24、キャンセルボタン25が設けてある。
【0015】
操作部16には、回転リール12の回転を開始させるためのスタートレバー26、各回転リール12の停止スイッチ30、飾り板70及び前扉11の開閉鍵27が設けてある。
また、払出部17は、箱体10内部のメダル払出装置からの払出メダルを受けるように受皿状に形成されている。
このようなスロットマシンは、投入口24にメダルを投入することによってゲームが開始する。
【0016】
投入口24に1枚乃至3枚のメダルを投入すると、回転リール12の回転スタートレバー26が操作可能となり、かつこの回転スタートレバー26を投入することによって回転リール12が回転を開始することとなる。
このように回転リール12が回転している時に各回転リール12に対応する停止スイッチ30を押すと、その停止スイッチ30を押した回転リール12が回転を停止する。
【0017】
このようにして3つの回転リール12がすべて回転を停止した時に、表示窓20にあらわれた各回転リール12の絵柄13が入賞絵柄となっているか否かを絵柄13の判定装置によって判定し、入賞している時には、その入賞時の絵柄13の組合せに応じて、あらかじめ設定した枚数のメダルを払い出すものである。
さらに、入賞絵柄でない場合であっても、次に判定装置が再遊技を行なうための特定絵柄が有るか否かを判定する。
【0018】
第2図に示したのは、このような各種の判定を示したフローチャートである。
この図において、メダルの投入が行なわれて、ゲームがスタート可能となった時を「スタート」とする。
このような状態でスタートレバー26の操作を行なう(ステップ40)。
すると、各回転リール12が回転を開始することとなる(ステップ41)。
【0019】
この時に、各回転リール12に対応する停止スイッチ30を投入することによって、各回転リール12の回転が停止することとなる(ステップ42)。
すると、まず停止した各回転リール12の絵柄13の組み合わせが、あらかじめ設定したメダルの払い出しに対応する組合せであるか否かが、判定装置によって判定される(ステップ43)。
【0020】
上記判定は、判定装置の入賞絵柄判定手段により行われる。
その判定の結果、メダルの払い出しを行なうような組合せである場合には、対応枚数のメダルを、図示しないメダル払出装置によって、払い出して(ステップ44)、1ゲームが終了することとなる。
上記メダル払出装置は、判定装置のメダル払い出し制御手段により制御されている。
【0021】
また、判定の結果、メダルの払い出しを行なうような組合せでないような場合は、次に回転を停止した回転リール12の絵柄13中に、引き分けとなるような特定絵柄があるか否かが、判定装置によって判定される(ステップ45)。
上記判定は、判定装置の特定絵柄判定手段により行なわれている。
その結果、特定絵柄がない場合には1ゲームが終了する。
【0022】
これに対し、特定絵柄がある場合には、メダル投入後の状態、即ちステップ40の前に戻って、新たなメダルの投入なしに再遊技が行なえることとなる。
上記一連の処理は、判定装置のスタートレバー制御手段により行われている。
すなわち、上記スタートレバー制御手段は、ステップ43で“N”と判定され、かつステップ45で“Y”と判定されたことを条件に、メダルの投入無しにスタートレバーの操作が行なえるように制御するものである。
【0023】
なお、以上の説明中における特定絵柄は、例えば各回転リール12中に描かれた絵柄13であって、特に定めた絵柄13をいうが、その絵柄13が1つでもあれば、再遊技可能とすることもできる。
また、例えば、停止した回転リール12の絵柄13の内で特定絵柄が、2つ揃った時に再遊技を可能とすることもできるし、3つ揃った時に再遊技を可能とすることもできる。
【0024】
その他にも、各回転リール12の絵柄13がばらばらであっても、特定の絵柄13が見えるような位置にあった時に、再遊技可能とすることもできる。
一方、例えば、停止した回転リール12の内の1の回転リール12に特定絵柄が表れた時には、再遊技ではメダルを1枚投入した状態でゲームが行われ、2つの回転リール12に特定絵柄が表れた時には、再遊技ではメダルを2枚投入した状態でのゲーム、3つの回転リール12に特定絵柄が表れた時には、3枚のメダルを投入した状態でのゲームが各々行えるようにすることもできる。
【0025】
また、例えばこのようにしてメダルが1枚あるいは2枚投入した状態でゲームが開始されるような時には、更に遊技者がメダルを追加投入することができるようにしてもよい。
さらに、特定絵柄として説明したので、必ず絵柄があるものと考えられるが、例えば絵柄13の印刷が行われていない回転リール12の空白部分を特定絵柄として使用することもできる。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明によれば、ゲームの内容に引き分けの概念を持ち込み、引き分け時には新たなメダルの投入がなくても次のゲームが行なえるようにして、ゲーム性の向上及び同一枚数のメダルを用いての遊技時間の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
スロットマシンの正面図である。
【図2】
スロットマシンの作動を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 箱体 11 前扉
12 回転リール 13 絵柄
14 説明板 15 表示部
16 操作部 17 払出部
18 向上表示 19 状態表示
20 表示窓 21 ライン表示
22 枚数表示 23 払出表示
24 投入口 25 キャンセルボタン
26 スタートレバー 27 開閉鍵
30 停止スイッチ 70 飾り板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-03-29 
結審通知日 2007-04-05 
審決日 2007-04-18 
出願番号 特願平5-78394
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 中槙 利明
川島 陵司
登録日 1996-08-23 
登録番号 特許第2083348号(P2083348)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 井口 嘉和  
代理人 正林 真之  
代理人 黒田 博道  
代理人 黒田 博道  

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