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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680074 審決 特許
無効200680263 審決 特許
無効200580144 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A43B
審判 全部無効 2項進歩性  A43B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A43B
管理番号 1172999
審判番号 無効2004-80040  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-07 
確定日 2008-02-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3502044号発明「ヒーリング装置とヒーリング方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3502044号の請求項1ないし37に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3502044号の請求項1ないし37に係る発明は、平成12年3月31日に特許出願され、平成15年12月12日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後の平成16年5月7日に、株式会社ジョイナスよりその発明に係る特許について無効審判の請求がされ、平成17年5月10日付けで無効理由が通知され、その指定期間内の平成17年7月25日に訂正請求がされるとともに、同日付けで意見書が提出され、これに対して平成17年10月18日付けで訂正拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成17年12月12日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。

II.訂正の適否
1.平成17年12月12日付け手続補正書による補正の適否
平成17年12月12日付け手続補正書による補正は、訂正事項の削除とそれに伴う訂正事項の項番号の繰り上げのみであり、請求書の要旨を変更しない範囲での補正と認められる。

2.訂正の内容
上記1.で説示したとおり、上記補正は認められるから、特許権者が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、平成17年12月12日付け手続補正書により補正された平成17年7月25日付け訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書の記載からみて、以下のとおりであると認められる。
(1)訂正事項1:
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲請求項1を、「履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はそれに形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部内に保持された転がり手段を備えていて;
転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は少なくとも第1の転がり手段を含み、全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、ソールのつま先部は、転がりモードにおいて地面の前上方に持上げられ、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではなく、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びており、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。」と訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項2を、「少なくとも第1の転がり手段は、使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へ履物のアイテムの少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができ、また、つま先部は摺動するために操作可能な板を備えていない請求項1記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(3)訂正事項3:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項3を、「少なくとも第1の転がり手段は、第1の部分と第2の部分とを備えていて、少なくとも第1の転がり手段の第1の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部内に存在するように、また、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に、かつ履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在するように配置されていて、履物は、人が、転がらないモードから、少なくとも第1の転がり手段が地面と接触して転がる転がりモードへ、ついでソールのヒール部の一部分が地面と接触するヒールブレーキ状態に変移することを可能にする請求項1記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(4)訂正事項4:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項4を、「少なくとも第1の転がり手段の開口部内に保持されている部分は、開口部の外側にある転がり手段の部分よりも大きい請求項3記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(5)訂正事項5:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項6を、「少なくとも第1の転がり手段は車輪で、第1のセグメントと第2のセグメントとの間の軸に回転可能に設けられていて、軸は、軸の回転を阻止するように第1のセグメントと第2のセグメントとに保持されている請求項1記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(6)訂正事項6:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項7を、「第1の精密ベアリングと;
第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた少なくとも第1の転がり手段は、第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第1の凹部に設けられ、第2の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第2の凹部に設けられている請求項6記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(7)訂正事項7:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項10を、「転がり手段は外径を有していて、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分は、転がり手段の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在する請求項9記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(8)訂正事項8:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項14を、「少なくとも第1の転がり手段は、唯一の転がり手段で、ヒール部に設けられていて、ソールのつま先部はローラーを備えていない請求項13記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(9)訂正事項9:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項17を、「少なくとも第1の転がり手段は、ローラーである請求項16記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(10)訂正事項10:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項18を、「少なくとも第1の転がり手段は、球形のボールである請求項16記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(11)訂正事項11:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項19を、「少なくとも第1の転がり手段は、車輪である請求項16記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(12)訂正事項12:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項20を、「少なくとも第1の転がり手段は、履物のソールのヒール部に形成された開口部内で取り外し可能に結合されている請求項1記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(13)訂正事項13:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項21を、「少なくとも第1の転がり手段は、履物のソールのヒール部に形成された開口部内に引き込み可能に結合されている請求項1記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(14)訂正事項14:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項22を、「履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に存在する転がり手段の第2の部分を覆うために操作可能な少なくとも第1の転がり手段カバーをさらに備えた請求項4記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(15)訂正事項15:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項24を、「少なくとも第1の転がり手段は、軸開口部を有する車輪と、第1の側で軸開口部を取り囲む車輪の第1の側の第1の環状の凹部と、第2の側で軸開口部を取り囲む車輪の第2の側の第2の環状の凹部とを備えていて、さらに:
車輪の第1の側の第1の環状の凹部に設けられた第1のベアリングと;
車輪の第2の側の第2の環状の凹部に設けられた第2のベアリングと;
および車輪が、第1のベアリングと第2のベアリングとによって軸に回転可能に結合されるように車輪の軸開口部内に設けられた軸と;
をさらに備えた請求項1記載の履物のアイテム。」と訂正する。
(16)訂正事項16:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項26を、「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、アーチ部を有し、および底面を有するヒール部を有し;
履物に接続された軸を備え;および装置は、人が歩行状態または走行状態から、軸に設けられた車輪が転がるために地面と接触しかつ履物のつま先部の底面が地面の上方に持上げられているヒール転がり状態に変移することを可能にするように軸に設けられた車輪を備えていて;
ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられておらず、ソールのつま先部は、ヒール転がり状態において地面の上方に持ち上げられ、さらにまたソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされ、その時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物の装置。」と訂正する。
(17)訂正事項17:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項29を、「履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はソールのヒール部の一部分に形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部に保持された転がり手段を備えていて、転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されているのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。」と訂正する。
(18)訂正事項18:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項30を、「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、アーチ部を有し、およびソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有するヒール部を有し、第1のセグメントと第2のセグメントとを有する軸を備え;および軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え、軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されていて、装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は実質的に全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な装置。」と訂正する。
(19)訂正事項19:
本件特許明細書の特許請求の範囲請求項36を、「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、アーチ部を有し、およびソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有するヒール部を有し、第1のセグメントと第2のセグメントとを有する軸を備え;および軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え、軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されていて、装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は実質的に全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な装置。」と訂正する。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、以下のように整理できる。
(アー1)
訂正前の(以下、「旧」という。)請求項1に記載された「転がり手段」が「少なくとも第1の転がり手段を含」むものとする。
(アー2)
「ソールのつま先部」について、旧請求項1では、転がりモードにおいて、地面の「上方」に持上げられているとしていたものについて、「上方」を「前上方」とする。
(アー3)
同じく「ソールのつま先部」について、さらに、「地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではな」いものとする。
(アー4)
同じく「ソールのつま先部」について、さらに、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びており、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」なものとする。
そこで、(アー1)ないし(アー4)について検討する。
(アー1)について
ところで、「少なくとも第1の」とは、単数又は複数のものの1つを特定していうことと理解されるが、本件特許明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、「転がり手段」に関する記載として、請求項17ないし19に、「転がり手段」が、「ローラー」、「球形のボール」及び「車輪」であることが記載されており、少なくとも1つの転がり手段についての記載があるといえる。
また、段落【0063】には、「本発明は、ヒールの開口部に配置される複数の車輪を確実に意図しカバーする。」と記載されているから、本件特許明細書等には、1つの履物に複数の転がり手段が備えられていることも実質的に記載されている。
したがって、いずれにしても、「少なくとも第1の転がり手段を含むこと」は、本件特許明細書等に記載されている事項と認められる。
(アー2)について
本件特許明細書等には、転がりモードにおいて、「ソールのつま先部」を「前上方」に持上げることについての直接的な記載はないが、履物において、「前」と「後」の方向付けは、足の前方側、すなわちつま先側が「前」で、足の後方側、すなわち踵側が「後」に当たることは技術常識である。
そして、上記の履物に関する前後関係を考慮すると、「ソールのつま先部」を「上方」に持上げることは、「前上方」に持上げることになるから、(アー2)の訂正事項は、本件特許明細書等に記載されている事項を明記したにすぎない。
(アー3)について
(アー3)の訂正事項に関する記載として、本件特許明細書等には、請求項5に、「ソールのヒール部の部分は、ヒールブレーキである」との記載、請求項14に、「ソールのつま先部はローラーを備えていない」との記載、請求項30に、「このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、」との記載、請求項33に、「装置は、ソールのヒール部の一部分が地面と接触して、人がヒールブレーキ状態に変移するためにさらに操作可能である」との記載があり、これらの記載からみて、「ソールのつま先部」が、「地面上を走行、歩行、停止する為」のものであることも、「転がる為ではない」ものであることも、本件特許明細書等に記載されている事項と認められる。
(アー4)について
(アー4)の訂正事項に関する記載として、本件特許明細書等には、段落【0007】に、「地面上でヒーリング装置を使用するための方法は、ヒーリング装置のソールのつま先部(forefoot portion)が地面と接触するように使用することによって走行し、」との記載、段落【0017】に、「ソール14はまた、図1に示されたように、(1)ヒール部18、(2)アーチ部20、および(3)つま先部22の3つの部分すなわち領域に分割される。」との記載、段落【0050】に、「地面と接触するためにヒーリング装置のソールのつま先部を使用することによって地面を走り、」及び「この方法は、・・・(中略)・・・、地面を歩行することを含んでいる。」との記載、段落【0051】に、「この方法の他の変形は、転がっている地面の直ぐ後ろの地面と接触するために、ヒーリング装置のソールのつま先部を使用することにより地面上を走行することによって、地面上の転がりから、走行すること、歩行すること、または停止することのいずれかへの変移を含んでいる。」との記載、段落【0052】に、「例えば、回転は摩擦を生じ、また、地面から車輪を離すためにヒーリング装置のソールのつま先部を地面と接触することによって遅くされる。」との記載がある。
また、図面の図1には、運動靴に使用して実行されたヒーリング装置の側面図が示され、図2Aないし3Bには、ソールの底面図が示され、ソールの底面の略全面(図2A、B及び図3Bあるいはソールのアーチ部を除いた面(図3A)に波形部が形成されていることが示されている。
そして、上記図3Aに示された波形部は滑り防止の処理がなされた部位と理解され、滑り防止の処理がなされた箇所は、地面と接触する部位といえるから、その地面と接触する部位を指して、「地面接触部」ということができ、「ソールのつま先部」が、「地面接触部」を有することは、本件特許明細書等に記載されているに等しい事項といえる。
また、「ソール」の「第1の側」及び「第2の側」については、本件特許明細書等に、それらを直接的に説明する記載は見出し得ないが、そもそも、請求項1の「履物のアイテム」の「履物」としては、本件特許明細書等の段落【0008】に、「例えば、・・・(中略)・・・実質的に利用可能などのような履物を使用しても本発明を実行する可能性を有している。」と記載されているように、様々な履物が含まれ、それに従って、「ソール」の形状・構造も、様々な形状・構造を含むものといえるところ、「ソール」には、「第1の側」及び「第2の側」と呼ぶことができる箇所、例えば、「ソール」の幅方向の両側のうちの「一方」の側、「他方」の側として、「ソール」の「内側」及び「外側」、或いは「右側」、「左側」等が存在することは明らかである。
さらに、本件特許明細書等の図2Aないし図3Bには、ソール14の、波形部が形成された部位、すなわち地面接触部に相当する箇所が、履物の底面の幅方向の両側のうちの「内側」及び「外側」、或いは「右側」、「左側」と呼ばれる部分の「一方の側」(第1の側)から「他方の側」(第2の側)に延びている態様が示されているから、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びて」いることは、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
さらにまた、「地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」であることについては、上記(アー3)についてで説示したと同様の理由から、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
したがって、訂正事項(アー1)ないし(アー4)は、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項(アー1)は、旧請求項1に係る発明を特定する事項である「転がり手段」を、それが「少なくとも第1の転がり手段を含」むものに限定するものであり、訂正事項(アー2)は、旧請求項1に係る発明を特定する事項である「ソールのつま先部」が、転がりモードにおいて、地面の「上方」に持上げられているとしていたものの、「上方」を、これに含まれる事項である「前上方」に変更するものであり、訂正事項(アー3)は、同じく「ソールのつま先部」について、それが、「地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではな」いものに限定するものであり、上記訂正事項(アー4)は、同じく「ソールのつま先部」について、それが、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びており、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」なものに限定するものであり、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、いずれの訂正事項も、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(イ)訂正事項2ないし4、6ないし7及び9ないし15について
訂正事項2ないし4、6ないし7及び9ないし15は、旧請求項2ないし4、7、10、17ないし22及び24に係る発明を特定する事項である「転がり手段」を、それが「少なくとも第1の転がり手段を含」むものに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記(ア)で説示したと同様の理由から、いずれも、新規事項の追加に該当せず、いずれの訂正事項も、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(ウ)訂正事項5について
訂正事項5は、旧請求項6に係る発明を特定する事項である「転がり手段」をこれに含まれる事項である、それが「少なくとも第1の転がり手段を含」み、「車輪」であるものに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記(ア)で説示したと同様の理由から、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(エ)訂正事項8について
訂正事項8は、旧請求項14に係る発明を特定する事項である「1つのみの転がり手段」を、「少なくとも第1の転がり手段は、唯一の転がり手段で、」に変更するものであり、「1つのみ」と「唯一」は同じ意味であるから、実質的に「1つのみの転がり手段」を、「少なくとも第1の転がり手段」に限定するものといえる。
したがって、上記(ア)で説示したと同様の理由から、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(オ)訂正事項16について
訂正事項16は、以下のように整理できる。
(オー1)
旧請求項26に記載された「履物を転がすための車輪」が「ヒール部に設けられてい」るとされていたものを、それが「全てヒール部に設けられてい」るものとする。
(オー2)
「ソールのつま先部」について、「ヒール転がり状態において地面の上方に持ち上げられ」るものとする。
(オー3)
同じく「ソールのつま先部」について、それが、「地面上を走行、歩行、停止する為のものであ」るとする。
(オー4)
同じく「ソールのつま先部」について、それが、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされ、その時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」なものとする。
そこで、(オー1)ないし(オー4)について検討する。
(オー1)について
(オー1)の訂正事項に関する記載として、本件特許明細書等には、段落【0031】に、「図3Bはさらに、車輪42Aと車輪42Bとが、開口部40Aと開口部40B内で各両端部に結合された軸52を示している。」との記載があり、また、図面の図3Bには、該記載に対応して、車輪42Aと車輪42Bがソール14のヒール部に設けられていることが示されている。
したがって、これらの記載からみて、「履物を転がすための車輪」が、「全てヒール部に設けられてい」ることは、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
(オー2)について
(オー2)の訂正事項に関する記載として、本件特許明細書等には、請求項30に、「装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられて・・・(中略)・・・装置。」との記載があるから、「ソールのつま先部」について、「ヒール転がり状態において地面の上方に持ち上げられ」ることは、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
(オー3)について
上記(アー3)についてで説示したと同様の理由から、「ソールのつま先部」が、「地面上を走行、歩行、停止する為」のものであることは、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
(オー4)について
訂正事項(オー4)は、訂正事項(アー4)と同様の訂正事項であるから、上記(アー4)についてで説示したと同様の理由から、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
したがって、訂正事項(オー1)ないし(オー4)は、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項(オー1)は、旧請求項26に係る発明を特定する事項である「ヒール部に設けられている」「履物を転がすための車輪」を、それが「全て」「ヒール部に設けられている」いるものに限定するものであり、訂正事項(オー2)ないし(オー4)は、旧請求項26に係る発明を特定する事項である「ソールのつま先部」が、ヒール転がり状態において地面の上方に持ち上げられ」、「地面上を走行、歩行、停止する為であ」るものに限定し、さらに、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされ、その時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」なものに限定するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、いずれの訂正事項も、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(カ)訂正事項17について、
訂正事項17のうち、旧請求項29に記載された「また、履物のアイテムは転がらず」を「また、」と訂正する訂正事項は、旧請求項29の「履物のアイテムは転がらず」との意味が不明な記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、訂正事項17のうち、残りの訂正事項は、「転がり手段」が「ヒール部に設けられてい」るとされていたものを、それが「全てヒール部に設けられてい」るものとするとともに、「ソールのつま先部」について、それが、「地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」なものとするものであるが、それらの訂正事項は、(オー1)ないし(オー4)の訂正事項と同様の訂正事項といえ、上記(オ)で説示したと同様の理由から、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(キ)訂正事項18ないし19について
訂正事項18ないし19は、旧請求項30及び36に記載された「履物を転がすための車輪」が「ヒール部に設けられてい」るとされていたものを、それが「実質的に全てヒール部に設けられてい」るものとするとともに、「ソールのつま先部」について、それが、「地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」なものとするものである。
そして、それらの訂正事項は上記(カ)の「残りの訂正事項」と同様の訂正事項といえ、上記(カ)で説示したと同様の理由から、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

4.まとめ
以上検討したことから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項但し書に適合し、同条第5項において準用する特許法第126条第3項ないし第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.請求人の主張の概要
請求人は、「特許第3502044号の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め」(請求の趣旨)、証拠方法として下記甲第1ないし5号証を提出するとともに、無効とすべき理由を下記のように主張している。

(1)証拠方法
甲第1号証:特許第3502044号公報
甲第2号証:特許第3502044号の特許原簿
甲第3号証:昭和17年実用新案出願公告第3781号公報
甲第4号証:登録実用新案第368449号公報
甲第5号証:実願昭57-39679号(実開昭58-142078号)のマイクロフィルム
(2)理由
(2-1)理由1
本件の請求項1ないし37に係る発明は、いずれも甲第3ないし5号証に記載された発明並びに周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に発明をすることができたものであり、本件の請求項1ないし37に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第2項に該当し、無効とすべきものである。
(2-2)理由2
平成15年8月25日付け手続補正書により補正された下記(a)ないし(c)の事項は、国際出願日における国際出願の明細書(PCT/US00/08633)、請求の範囲又は図面(以下、「原文」という。)に記載した事項を超えてなされたものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第184条の18で読み替える特許法第123条第1項第5号に該当し、無効とすべきものである。
(a)請求項1ないし25及び請求項29に記載の事項
「転がりモード」、「転がらないモード」、「モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、」
(b)請求項6、請求項30ないし35及び請求項36ないし37に記載の事項
「第1セグメント」、「第2セグメント」
(c)請求項26ないし28、請求項30ないし37及び請求項36ないし37に記載の事項
「ヒール転がり状態」
(2-3)理由3
本件の請求項1ないし37に記載された事項と対応する事項が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないから、本件の請求項1ないし37係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
なお、審判請求人は、無効理由3については、平成17年1月14日に行われた第1回口頭審理において、主張を撤回した。(第1回口頭審理調書)

IV.被請求人の主張の概要
1.請求人の主張に対して
被請求人は、答弁書において、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め(答弁の趣旨)、請求人の主張はいずれも根拠がなく、失当である旨、主張している。

2.当審により通知した無効の理由に対して
被請求人は、本件訂正をするとともに、同日付け意見書において、下記の証拠方法を提出し、本件特許発明1?37は、刊行物1又は刊行物2記載の発明及び周知技術に基づいて容易に想到できるものではないし、本件特許発明1,2,23,26,27,29は、刊行物2記載の発明と同一であるということもできない旨、主張している。


乙第1号証:本件特許発明に係る製品(HEELYS)に付属しているビデオテープ
乙第2号証:本件特許発明に係る製品(Cruz)に付属しているビデオテープ
乙第3号証:ヒーリーズのデモンストレータである福原正之氏の陳述書(本件特許発明に係る製品に関する意見の陳述、及び刊行物1ないし4の図面に記載された履物に関する意見の陳述)
乙第4号証:上記福原正之氏の報告書(試作された刊行物1記載の図面に基づく試作品(検乙第1号証の履物)を使用した時の報告)
検乙第1号証:刊行物1に記載された図面に基づいて製造した履物の試作品

V.訂正後の発明に係る特許の無効理由の存否について
1.本件発明
上記II.のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし37に係る発明(以下、「本件特許発明1ないし37」という。)は、平成17年12月12日付け手続補正書により補正された平成17年7月25日付け訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の特許請求の範囲請求項1ないし37に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

(本件特許発明1)
「履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はそれに形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部内に保持された転がり手段を備えていて;
転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は少なくとも第1の転がり手段を含み、全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、ソールのつま先部は、転がりモードにおいて地面の前上方に持上げられ、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではなく、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びており、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。」
(本件特許発明2)
「少なくとも第1の転がり手段は、使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へ履物のアイテムの少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができ、また、つま先部は摺動するために操作可能な板を備えていない請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明3)
「少なくとも第1の転がり手段は、第1の部分と第2の部分とを備えていて、少なくとも第1の転がり手段の第1の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部内に存在するように、また、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に、かつ履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在するように配置されていて、履物は、人が、転がらないモードから、少なくとも第1の転がり手段が地面と接触して転がる転がりモードへ、ついでソールのヒール部の一部分が地面と接触するヒールブレーキ状態に変移することを可能にする請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明4)
「少なくとも第1の転がり手段の開口部内に保持されている部分は、開口部の外側にある転がり手段の部分よりも大きい請求項3記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明5)
「ソールのヒール部の部分は、ヒールブレーキである請求項4記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明6)
「少なくとも第1の転がり手段は車輪で、第1のセグメントと第2のセグメントとの間の軸に回転可能に設けられていて、軸は、軸の回転を阻止するように第1のセグメントと第2のセグメントとに保持されている請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明7)
「第1の精密ベアリングと;
第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた少なくとも第1の転がり手段は、第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第1の凹部に設けられ、第2の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第2の凹部に設けられている請求項6記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明8)
「第1の精密ベアリングが第1のリングクリップを使用して軸に設けられていて、第2の精密ベアリングが第2のリングクリップを使用して軸に設けられている請求項7記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明9)
「ヒール制御板を有する据え付け構造部をさらに供えた請求項4記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明10)
「転がり手段は外径を有していて、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分は、転がり手段の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在する請求項9記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明11)
「ソールのアーチ部に結合された摺擦板をさらに備えたことを特徴とする請求項10記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明12)
「2つの開口部がヒール部に設けられている請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明13)
「ソールのアーチ部に結合された摺擦板をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明14)
「少なくとも第1の転がり手段は、唯一の転がり手段で、ヒール部に設けられていて、ソールのつま先部はローラーを備えていない請求項13記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明15)
「履物のソールのヒール部の一部分は、ヒールブレーキ状態において地面と接触し、ヒール部のこの部分は、履物の後部とソールのヒール部の底面に形成された開口部との間に設けられている請求項14記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明16)
「ヒールブレーキ状態において地面と接触する履物のソールのヒール部の部分は、耐磨耗性の材料で形成されている請求項15記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明17)
「少なくとも第1の転がり手段は、ローラーである請求項16記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明18)
「少なくとも第1の転がり手段は、球形のボールである請求項16記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明19)
「少なくとも第1の転がり手段は、車輪である請求項16記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明20)
「少なくとも第1の転がり手段は、履物のソールのヒール部に形成された開口部内で取り外し可能に結合されている請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明21)
「少なくとも第1の転がり手段は、履物のソールのヒール部に形成された開口部内に引き込み可能に結合されている請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明22)
「履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に存在する転がり手段の第2の部分を覆うために操作可能な少なくとも第1の転がり手段カバーをさらに備えた請求項4記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明23)
「請求項1に記載されたものの1対の履物のアイテム。」
(本件特許発明24)
「少なくとも第1の転がり手段は、軸開口部を有する車輪と、第1の側で軸開口部を取り囲む車輪の第1の側の第1の環状の凹部と、第2の側で軸開口部を取り囲む車輪の第2の側の第2の環状の凹部とを備えていて、さらに:
車輪の第1の側の第1の環状の凹部に設けられた第1のベアリングと;
車輪の第2の側の第2の環状の凹部に設けられた第2のベアリングと;および車輪が、第1のベアリングと第2のベアリングとによって軸に回転可能に結合されるように車輪の軸開口部内に設けられた軸と;
をさらに備えた請求項1記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明25)
「車輪は:軸開口部と、第1の環状の凹部と、第2の環状の凹部とを形成し、湾曲した外側表面を有した内側コア部をさらに備え;および車輪の内側コア部の湾曲した外側表面に設けられた比較的軟らかい外側タイヤをさらに備えた請求項24記載の履物のアイテム。」
(本件特許発明26)
「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、アーチ部を有し、および底面を有するヒール部を有し;
履物に接続された軸を備え;および装置は、人が歩行状態または走行状態から、軸に設けられた車輪が転がるために地面と接触しかつ履物のつま先部の底面が地面の上方に持上げられているヒール転がり状態に変移することを可能にするように軸に設けられた車輪を備えていて;ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられておらず、ソールのつま先部は、ヒール転がり状態において地面の上方に持ち上げられ、さらにまたソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされ、その時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物の装置。」
(本件特許発明27)
「軸に設けられた車輪は、軸に設けられた1つ以上の車輪を備えている請求項26記載の履物の装置。」
(本件特許発明28)
「第2の軸に設けられた第2の車輪をさらに備えていて、第2の軸に設けられた第2の車輪は、転がり状態の間転がるために地面と接触する請求項26記載の履物の装置。」
(本件特許発明29)
「履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はソールのヒール部の一部分に形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部に保持された転がり手段を備えていて、転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されているのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。」
(本件特許発明30)
「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、アーチ部を有し、およびソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有するヒール部を有し、第1のセグメントと第2のセグメントとを有する軸を備え;および軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え、軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されていて、装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は実質的に全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な装置。」
(本件特許発明31)
「軸に回転可能に設けられた車輪は、開口部内に存在する車輪の第1の部分が、開口部の下方に存在する車輪の第2の部分より大きいようにソールのヒール部の開口部内に設けられている請求項30記載の装置。」
(本件特許発明32)
「第1の精密ベアリングと;
第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた車輪が第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが車輪と軸との間で第1の凹部に設けられていて、第2の精密ベアリングが車輪と軸との間で第2の凹部に設けられている請求項30記載の装置。」
(本件特許発明33)
「装置は、ソールのヒール部の一部分が地面と接触して、人がヒールブレーキ状態に変移するためにさらに操作可能である請求項30記載の装置。」
(本件特許発明34)
「ソールのアーチ部に隣接して結合された摺擦板をさらに備えた請求項30記載の装置。」
(本件特許発明35)
「軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に設けられた回転可能な車輪は、履物のソールのヒール部に配置された軸に設けられた1つ以上の車輪としてさらに規定されている請求項30記載の装置。」
(本件特許発明36)
「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、アーチ部を有し、およびソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有するヒール部を有し、第1のセグメントと第2のセグメントとを有する軸を備え;および軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え、軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されていて、装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は実質的に全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な装置。」
(本件特許発明37)
「車輪は、外形を有していて、車輪の第2の部分は、車輪の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の最も低い位置の下方に存在する請求項36記載の装置。」

2.職権審理による無効理由の概要
下記の刊行物を引用し、本件特許の請求項1ないし37に係る発明についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、無効とすべきものであるというものである。

(1)刊行物
刊行物1:実願昭49-50354号(実開昭50-139077号)のマイクロフィルム
刊行物2:登録実用新案第6417号明細書
刊行物3:昭和17年実用新案出願公告第3781号公報
刊行物4:実願昭57-39679号(実開昭58-142078号)のマイクロフィルム
刊行物5:米国特許第3306623号明細書
刊行物6:特表平9-508826号公報
刊行物7:実願昭54-84292号(実開昭56-1685号)のマイクロフィルム
刊行物8:実願昭59?181543号(実開昭61-94621号)のマイクロフィルム
刊行物9:特開平7-79804号公報
刊行物10:国際公開第98/1051号パンフレット
刊行物11:特表平10-509059号公報、
刊行物12:国際公開第96/40393号パンフレット
刊行物13:実願昭63-161748号(実開平2-82903号)のマイクロフィルム
刊行物14:米国特許第4364187号明細書
刊行物15:米国特許第5236224号明細書
刊行物16:米国特許第5769432号明細書
刊行物17:実願昭57-150244号(実開昭59-55574号)のマイクロフィルム
刊行物18:米国特許第3983643号明細書
刊行物19:実願昭56-124613号(実開昭58-30474号)のマイクロフィルム
刊行物20:実願昭56-33300号(実開昭57-145459号)のマイクロフィルム

3.刊行物記載事項
(3-1)刊行物1
本件特許の出願日前に公知の刊行物である刊行物1には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(3-1-1)
「底板部(a)の底面部を、その長さ方向に沿うほぼ中央で二分して外側半部を接地底(1)とし、これに続く後端部は踵部(2)とするとともに、前記接地底(1)及び踵部(2)に対応する内側はその厚さを薄くして段状凹部(3)及び非接地踵部(4)とし、前記段状凹部(3)には外周縁が接地底(1)よりも内方に入らせたローラー(5)・・・(5)を支軸(51)・・・(51)により回動自在に装着した滑走具を有する履物。」(明細書、実用新案登録請求の範囲)
(3-1-2)
「本考案は靴、下駄等の履物、特に底部一側に滑走具を備えた履物に関する。
本考案の目的は平常は一般の履物と同様に使用して歩行の用に供するとともに、急ぎの場合にはローラー部を利用してスケーティング走行が行える安全な履物を提供しようとするものである。」
(明細書、第1頁第13?第2頁第3行)
(3-1-3)
「 本考案は歩行具として用いることを主たる目的とし、必要に応じて滑走も行える履物を提供しようとするものであり以下に記載する考案の完成によりその目的を達成することができたものである。」
(明細書、第2頁第11?第14行)
(3-1-4)
「 図は靴に応用した例を示しており、総括的に(a)で示す底板部はその底面部を長さ方向のほぼ中央で二分して外側半部を接地底(1)とし、これに続く後端部は踵部(2)とするとともに前記接地底(1)と対応する内側には段状凹部(3)を、又前記踵部(2)と対応する内側には非接地踵部(4)を前記踵部(2)よりも低くなるよう一体的に形成している。(5)・・・(5)は段状凹部(3)に装着したローラーであり、支軸(51)・・・(51)を接地底(1)の側面に固定するようにして支持させている。なおこのローラー(5)・・・(5)はその外周縁が接地底(1)より突出しないように装着することが必要である。
本考案は叙上のように底板部(a)の底面部を、その長さ方向に沿うほぼ中央で二分し、内側半部を段状凹部(3)として接地しないようにしてこの段状凹部(3)にローラー(5)・・・(5)をその周縁部が接地底(1)よりも少許ばかり内方に入るように装着したので通常の歩行の場合には第3図例示のように接地底(1)部分のみが接地して従来の履物となんら変りがない歩行を行うことができる。又これを滑走具として使用したい場合には第4図に例示するように着用者が底面部をやや内傾するようにすれば段状凹部(3)に装着したローラー(5)・・・(5)部分が接地するようになり、然も接地底(1)及び踵部(2)が浮き上るのでローラー(5)・・・(5)による滑走が行えるものであり、この滑走を止めたい場合には重心を外側半部に移動させるだけで簡単に停止することができる他、重心を踵部(2)に移動させることによる停止も行えるものである。
このように接地底(1)による通常の歩行即ち長距離、長時間の歩行或は走ることと併せてローラー(5)・・・(5)による滑走も行えるようにしたことにより使用の場所を選ばずに履物としてのあらゆる用法が得られる特徴がある。」
(明細書、第3頁第1行?第5頁第4行)
(3-1-5)
第1図には、足形状の底面図が、第2図には、側面図が、第3図には、歩行時を示す斜視図が、第4図には、滑走時を示す斜視図が、第5図には、制動時を示す斜視図が示されている。
(3-2)刊行物2
本件特許の出願日前に公知の刊行物である刊行物2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(3-2-1)
「圖面ニ示セル如キ爪立臺及ヒ踵臺ヲ有スル一輪下駄」(明細書、登録請求範圍)
(3-2-2)
「(イ)ハ爪立臺ニシテ將ニ轉行ヲ起サントスル時或ハ轉行ヲ停止セントスル時若クワ歩ミテ坂路ヲ昇降スル時ニ之ヲ用ヒ、(ロ)ハ踵臺ニシテ後方ニ轉倒スルヲ防クノ用ヲ為ス、(ハ)ハ車輪、(ニ)ハ軸木」(明細書、第1頁第6行?第14行)
(3-2?3)
第1図には、一輪下駄の側面図が、第2図には、同裏面図が示されており、両図には、長方形の下駄台上に鼻緒が設けられ、下駄の進行方向前側部分の下面に斜面を設けつつ突出した爪立台(イ)と、下駄台進行方向後ろの部位の下面に突出した踵台(ロ)と、爪立台(イ)と踵台(ロ)に挟まれた下駄台中央やや後部の下面に開口して設けられた空所内に取り付けられ、軸木(ニ)で支持され、下駄が水平なときにその最下端が下駄全体で最下方に位置するようになされた車輪(ハ)が示されている。
(3-3)刊行物3
本件特許の出願日前に公知の刊行物である刊行物3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-3-1)
「圖面ニ示ス如ク表面ヲ燒成シテ磨キ上ケ木目ヲ隆起セシメタル木製ノ主體(1)ノ裏部ノ踵ニ非金屬體の轉子(2)ヲ蕊軸(3)ニヨリ樞着シ更ニ非金屬體ノ滑板(4)ヲ爪先ヨリ中央ニ達スル如ク縦方向ニ植設シ尚緊縛絛(5)ヲ具ヘテ成ル「スケート」ノ構造」(明細書、登録請求の範囲)
(3-3-2)
「本案品ハ緊縛絛(5)ニヨリ本品ヲ足裏ニ装着シテ使用スルモノトス・・・(中略)・・・重量ノ最モ掛ル踵部ニ轉子ヲ使用スルタメ克ク摩滅ヲ輕減シテ使用ヲ長期ナラシメ更ニ滑板(4)ハ接地面少ニシテ輕快ナル走行ヲ容易ナラシムルト共ニ足先ヲ傾斜セシメテ滑板(4)ヲ走行方向ニ對シ傾斜セシムルコトニヨリ急速停止ヲ行ヒ得ヘク尚輕量ニシテ金属製品ニ匹敵シ身體ノ反射平衡運動能力ヲ練磨シ更ニ修繕容易ナル等ノ諸多實益ヲ有スルモノトス」(明細書、第1頁下段第6?第19行)
(3-3-3)
第2図には側面図が、第3図には裏面図がそれぞれ示されており、第3図には、本案品の轉子(2)が踵部に形成された空所にのみ設けられており、第2図には、轉子(2)の空所内にある部分(図中の破線で示された部分)は、該空所の外側にある部分(図中の実線で示された部分)よりも大きいことが示されている。
(3-4)刊行物4
本件特許の出願日前に公知の刊行物である刊行物4には、次の事項が記載されている。 (3-4-1)
「ただ1個の単一車輪体6(または6D)を支台1の下側位置において配装してなり、フィギュアを楽しめるようにしたことを特徴とするローラスケート。」(実用新案登録請求の範囲)
(3-4-2)
「図面の第1図について、1は支台であって、少くとも上面はほぼ板状であるのを可とする好ましくは金属製の基本的な体重支承部材である。・・・(中略)・・・支台1の前端部付近の下面には斜め前方に斜行するゴム製、合成樹脂製であるのを可とするブレーキ突起2が設けられているが、これは必要に応じ省略することができる。・・・(中略)・・・靴3を着脱可能に装着できるように、靴の移動止め部材4C,4Dを取付けて、矢印AまたはBで示すように、それら2つのうちのいずれかを支台1の縦方向に動かし、その位置をロックするようにしても良い。」(明細書、第3頁第18行?第4頁第15行)
(3-4-3)
「5A,5Bは支持部であって、支台1の下面より下方に突出して形成するか、あるいは支台1に取付けられてなるもので、単一の車輪体6の中心穴6Aに嵌め込まれて貫通伸張している軸7の両端部7A,7Bをカシメ加工により、上記の支持部5A,5Bに固定してあるので、車輪体6は自由回転をなしうる。・・・(中略)・・・車輪体6としては、全体を金属製、合成樹脂もしくは硬質または半硬質のゴム製としてもよい。図示の場合は中心体部6Bをそのようにして、外周部6Cを比較的軟かいゴム製あるいは合成樹脂製を可とする外輪タイヤにした構造例を示している。」(明細書、第5頁第1行?第20行)
(3-4-4)
第1図には、側面図が示されており、支台1の上部に靴3の前端部を止める移動止め部材4Cと靴3の後端部を止める移動止め部材4Dが設けられている点が示されている。
(3-5)刊行物5ないし20
(記載を省略)

4.対比・判断
(4-1)その1
(4-1?1)本件特許発明1
刊行物1には、上記3.の(3-1-1)に示すように、「底板部(a)の底面部を、その長さ方向に沿うほぼ中央で二分して外側半部を接地底(1)とし、これに続く後端部は踵部(2)とするとともに、前記接地底(1)及び踵部(2)に対応する内側はその厚さを薄くして段状凹部(3)及び非接地踵部(4)とし、」と記載されているが、該記載を図1及び図2の図示内容と合わせてみると、該外側半部には、接地底(1)及び踵部(2)が含まれ、それらに対応する内側の半部には、段状凹部(3)及び非接地踵部(4)が形成されているものといえるから、上記3.の(3-1-1)ないし(3-1-5)の記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には、下記の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(刊行物1発明)
「靴の足形状の底板部(a)の底面部を、その長さ方向に沿うほぼ中央で二分した外側半部を接地底(1)及び、これに続く後端部の踵部(2)とするとともに、前記接地底(1)及び前記踵部(2)に対応する内側半部はその厚さを薄くして段状凹部(3)及び非接地踵部(4)とし、前記段状凹部(3)にローラー(5)・・・(5)をその外周縁が前記接地底(1)よりも少許ばかり内方に入るようにして、前記接地底(1)の側面に固定した支軸(51)・・・(51)により回動自在に前記ローラー(5)・・・(5)を装着した、底部一側に滑走具を有し、通常の歩行あるいは走ることと併せて前記ローラー(5)・・・(5)による滑走も行えるようにした滑走具を備えた履物であって、通常の歩行の場合には、前記接地底(1)部分のみが接地して従来の履物となんら変わりがない歩行を行うことができ、これを滑走具として使用する場合は、着用者が前記底面部をやや内傾するようにすれば前記ローラー(5)・・・(5)が接地するようになり、前記接地底(1)及び前記踵部(2)が浮き上るので前記ローラー(5)・・・(5)による滑走が行えるものであり、この滑走を止めたい場合には、重心を前記外側半部の接地底(1)に移動させるだけで停止させることができる他、重心を踵部(2)に移動させることにより停止も行える滑走具を備えた履物。」

また、刊行物3及び4について、それぞれ上記3.の(3-3-1)ないし(3-3-3)及び(3-4-1)ないし(3-4-4)の記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物3及び4には、それぞれ下記の2つの発明(以下、「刊行物3発明」及び「刊行物4発明」という。)が、記載されているものと認められる。

(刊行物3発明)
「足裏に装着して使用するスケートであって、爪先、中央、踵部からなる主体(1)と、主体(1)裏部の踵に、空所に軸が枢着された転子(2)とを備え、前記転子(2)の前記空所内にある部分は、前記空所の外側にある部分よりも大きく、非金属体の滑板(4)を爪先より中央に達するように縦方向に植設した、足裏に装着して使用するスケート。」
(刊行物4発明)
「ローラースケートであって、靴3の前端部から後端部をそれぞれ止める靴の移動止め部材4C、4Dを上部に設けた支台1と、前記支台1の下面より下方に突出して形成された支持部5A、5Bとを有し、前記支持部5A,5Bに車輪体6が軸7を介して自由回転できるように支持され、前記支台1の前端部付近の下面にブレーキ突起2が設けられているローラースケート。」

そこで、本件特許発明1と刊行物1発明を対比すると、後者の「足形状の底板部(a)」は、その機能及び構造からみて、前者の「つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソール」に相当し、以下、同様に、「ローラー(5)・・・(5)」は「転がり手段」及び「少なくとも第1の転がり手段」に、「通常の歩行の場合」は「(転がり手段が)転がらないモード」に、「履物」は「履物のアイテム」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「段状凹部(3)」は、凹部の形成の結果として外面への開口が果たされているものであるから、前者の「開口部」に相当し、それとともに、後者の「段状凹部(3)にローラー(5)・・・(5)をその外周縁が接地底(1)よりも少許ばかり内方に入るように装着」する態様は、前者の「開口部内」に「転がり手段」が「保持」された態様に相当する。
また、後者の「滑走具として使用する場合は、着用者が底面部をやや内傾するようにすればローラー(5)・・・(5)が接地するようになり、しかも接地底(1)及び踵部(2)が浮き上る」状態は、つまるところ、滑走時に履物のうちローラーのみが地面と接している状態を意味するので、前者の「転がり手段」が「地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて」、「ソールのつま先部」は、「転がりモードにおいて地面の」「上方に持ち上げられ」ている状態に等しいといえる。
さらに、後者の「通常の歩行の場合には、接地底(1)部分のみが接地して」いる態様は、つまるところ、履物の底のうちローラーは接地せず、ローラーではない部分が地面と接触することによって歩行をなすことを意味しているので、前者の「使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触」が「ソール」によって「なされ」、かつ、「転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく」との態様に等しいとともに、上記の対応関係をも併せると、「モードの切り換え」が「使用者の体重の移動によって実行され」に相当するものといえる。
同じように、後者の「重心を前記外側半部の接地底(1)に移動させるだけで停止させることができる他、重心を踵部(2)に移動させることにより停止も行える」ことは、後者の構造からみて、外側半部の接地底(1)及び踵部(2)が地面に触れて摩擦ブレーキとなることが明らかであるから、前者の「転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり」に相当するといえる。
さらにまた、上記のことから、後者の「外側半部」は、「地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではな」いものであることは明らかであるとともに、「転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触」がなされるという機能を共通に有するという限りにおいて、前者の「つま先部」及び後者の「外側半部」は、「接地面部」という概念で共通する。
したがって、両者は「履物のアイテムであって:
つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、開口部を有していて;
開口部内に保持された転がり手段を備えていて;
転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールによってなされ、また、転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は少なくとも第1の転がり手段を含み、モードの切り換えは、使用者の体重の移動によって実行され、ソールの接地面部は、転がりモードにおいて地面の上方に持上げられ、また、ソールの接地面部は、地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではなく、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールの接地面部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。」において一致し、下記の点で相違している。
【相違点1】:
接地面部及び「転がり手段」の設置箇所に関し、本件特許発明1では、接地面部が、「ソールのつま先部」にてなされ、「転がり手段」の設置箇所が、「ヒール部に設けられていてつま先部には設けられて」いないとされ、「ソールのつま先部」は、「転がりモードにおいて地面の前上方に持上」げられ、また、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びて」いるのに対して、刊行物1発明では、接地面部が、外側半部の接地底(1)及び踵部(2)にてなされ、「転がり手段」の接地箇所が、外側半部の接地底(1)に対応する内側の段状凹部(3)であり、外側半部の接地底(1)及び踵部(2)が、 「転がりモード」において、「地面」の「上方に持上げられて」いるが、「地面の前上方に持上げられて」いるか否かが明らかでなく、転がらないモードに変移した時、外側半部の地面接触部が「一般にソールの第1の側から第2の側に延びて」いるか否かが明らかでない点。
【相違点2】:
開口部の設置箇所に関し、本件特許発明1では、「ヒール部」に「形成」されているのに対して、刊行物1発明では、「接地底(1)及び踵部(2)に対応する内側半部」である点。
【相違点3】:
「モードの切り換え」に際しての「使用者の体重の移動」方向に関し、本件特許発明1では、「つま先部から転がり手段へ」、すなわち、「つま先部」と「ヒール部」との間の移動であるのに対して、刊行物1発明では、履物の内側と外側との間での移動である点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
本件特許発明1と刊行物1発明は、「転がりモード」と「転がらないモード」の両モードを選択することができる「転がり手段」を設けた履物に関する点で共通するものであるが、「転がりモード」に関与する「転がり手段」と、「転がらないモード」に関与する「地面との本質的接触」をなす部分が、「ソール」においてどのような配置・構造となっているか等について、その具体的態様に相違があり、相違点1ないし3は、該具体的態様に関する相違点といえる。
ここで、相違点1のうち、接地面部及び「転がり手段」の設置箇所に関する相違点に関しては、それらのどちらか一方をソールの一方位置に設置すれば、他方はソールの他方位置に設置することになる、という排他的関係にあるといえる。
そして、本件特許発明1と刊行物1発明における「転がり手段」と接地面部の「ソール」における設置位置を対比すると、本件特許発明1では、「転がり手段」を「ヒール部」に設け、接地面部を「つま先部」とするものであるのに対して、刊行物1発明では、転がり手段を底板部の内側半部に、地面との本質的接触をなす部分を外側半部にするものであり、要するに、本件特許発明1は、両者を履物の長手方向に配置する形式のものであり、刊行物1発明は、両者を履物の幅方向に配置する形式のものであるといえる。
ところが、両者を履物の長手方向に配置することは、他に履物の幅方向の配置の選択肢がある以上、二者択一的なことであり、当業者であれば、本件特許発明1が採用した両者の配置を長手方向にすることは、刊行物1発明の両者が幅方向に配置された構成から容易に想到することのできるものといえる。
そして、両者を長手方向に配置にし、かつ転がり手段を履物の後半部分に設置する形式のものは、刊行物3発明、刊行物4発明がそうであるように周知の技術であるから、当業者であれば、両者を長手方向に配置し、その際に、「転がり手段」を履物の後半部分に、「地面との本質的接触」をなす部分を履物の前半部分に設置することは、格別困難なく採用し得たことといえる。
また、開口部の位置について本件訂正明細書の段落【0018】に、「ソール14の底部の開口部の位置、およびそれ故車輪16は、好ましくはソール14のヒール部分に設けられているけれども、そのような開口部は、ヒール部18とアーチ部20との境界、アーチ部20、あるいはソール14の実質的にどの部分にでも配置されることもまた理解しなければならない。」と記載されているように、開口部の位置をソールのヒール部分に設置しないと、本件訂正明細書の請求項各項に記載された発明の効果を奏するのに本質的な影響を与えるものとはいえないこと、すなわち、転がり手段を履物の台の後半部の前側から後側のどの位置に設置したとしても、使用者の体重がかかる位置を車輪が設置されている位置とすれば、転がり手段は転がることが可能であることが技術常識であって、開口部の配置位置に格別の技術的意味が存在するものとはいえないことを考慮すると、転がり手段の設置位置をさらに限定して、「ヒール部に設けられてい」るようにすること、反対に、「つま先部には設けられて」いないようにすることは、当業者において設計的事項の範疇に属するものといえる。
さらに、相違点1の「転がり手段」と「地面との本質的接触」をなす部分は上記したような排他的関係にあり、「転がり手段」を「ヒール部」に設けた場合は、「地面との本質的な接触」をなす部分の位置は転がり手段を設けた位置以外の履物の部分となることは必然であり、該部分を転がり手段の設置位置と反対の「つま先部」とすることは、履物の機能、及び構成からみて自然であるから、「地面との本質的な接触」をなす部分、すなわち、接地面部を「つま先部」とすることも、当業者において格別困難なこととはいえない。
そして、そのような配置・構造にした場合、「転がりモード」にあっては、「つま先部」の「持上」がり状態が「前上方」に持上がるのは自然であり、刊行物1発明において、「転がり手段」を履物の後半部分に、「地面との本質的接触」をなす部分を履物の前半部分に設置した場合には、履物の両側のうち一方の側(例えば、内側)と他方の側(例えば、外側)とを別構造とする必要性はないから、ソールのつま先部の地面接触部をソールの「第1の側から第2の側」(例えば、内側から外側)「に延びて」いるようにすることは、当然の事項にすぎない。
上記のことから、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が、刊行物1発明及び上記周知の技術から容易になし得たものといえる。
相違点2について
「開口部」は、「転がり手段」を収容するためのものであるから、相違点1の「転がり手段」の設置位置が決まれば、必然的にそれに従ってその設置位置が決まるものである。
そして、転がりモードと転がらないモードを選択的に採用し得る履物において開口部をヒール部分の裏面に形成し、その開口部に転がり手段を設けたものが、刊行物5の図2、刊行物6の図2に示されているように周知の技術であることを考慮すると、「開口部」の設置位置を「ヒール部」に形成することも、当業者において、格別困難なこととはいえない。
したがって、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が、刊行物1発明及び上記周知の技術から容易になし得たものといえる。
相違点3について
上記相違点1についてで、刊行物1発明から当業者が容易になし得るものと説示した、接地面部と「転がり手段」との配置構成として、両者を履物の長手方向の前後に配置する形式のものでは、使用者の体重の移動は、「つま先部」と「ヒール部」との間の移動となることが必定といえるから、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項も当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、本件特許発明1の有する発明の効果は、刊行物1発明並びに上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本件特許発明1は、当業者が刊行物1発明及び上記周知の技術から容易になし得たものであるといえる。
(4-1-2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」について、「使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へ履物のアイテムの少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができ、また、つま先部は摺動するために操作可能な板を備えていない」と限定したものである。
ところが、刊行物1発明について、その機能及び構成からみて、転がり手段は、「使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へローラーが少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができ」るものであるといえる。
そして、上記(4-1-1)で検討したような、刊行物1発明に上記周知の開口部をヒール部分の裏面に形成して、その開口部に転がり手段を設ける技術を適用したものは、つま先部に「摺動するために操作可能な板」を特に設けたものであるとはいえない。
したがって、相違点1ないし3の他に、実質的な相違点は認められない。
また、相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
(4-1-3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、ここで、「第1の部分」及び「第2の部分」とは、履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部内に転がり手段が存在することを前提にして、その開口部内に収められる部分を「第1の部分」とし、開口部外に突出した部分を「第2の部分」とするものである。 そして、本件特許発明3を上記のように解釈して、刊行物1発明と対比すると、両者は、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点4】:
転がり手段について、本件特許発明3では、「第1の部分と第2の部分とを備えて」いて、「第1の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部内に存在する」ように、また、「第2の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に、かつ履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在するように配置されてい」るものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成となっていない点。

相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点4について検討する。
上記(4-1-1)で検討したような、刊行物1発明に上記周知の開口部をヒール部分の裏面に形成して、その開口部に転がり手段を設ける技術を適用したものは、刊行物1発明の「段状凹部(3)」が周知の技術の開口部に置き換えられたものといえ、そうしたものは、相違点4に係る本件特許発明3の発明特定事項と実質的に相違するものとはいえない。
してみると、相違点4に係る本件特許発明3の発明特定事項は、上記(4-1-1)で説示したと同様の理由から、当業者が、刊行物1発明及び上記周知の技術から容易になし得たものといえる。
(4-1-4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明3を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」の露出態様をさらに限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし4に加え、下記の点で相違する。
【相違点5】:
本件特許発明4では、「転がり手段の開口部内に保持されている部分は、開口部の外側にある転がり手段の部分よりも大きい」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えているか否かが直接的には明らかでない点。

相違点1ないし4については、上記(4-1-1)及び(4-1-3)で説示したとおりである。
そこで、相違点5について検討する。
転がりモードと転がらないモードを選択的に採り得る履物において開口部をヒール部分の裏面に形成し、その開口部に転がり手段を設けたものは、周知の技術であることは、上記(4-1-1)で説示したとおりであるが、該周知の技術に関連して、該転がり手段の露出態様を具体化した相違点5にかかる「転がり手段の開口部内に保持されている部分は、開口部の外側にある転がり手段の部分よりも大きい」点も、同じく刊行物5の図1、刊行物6の図1に示されているように周知の技術である。
したがって、相違点1に関して上記(4-1-1)において説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用して相違点5に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-5)本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4を引用しつつ、本件特許発明3の「ソールのヒール部」の「部分」をさらに限定したものである。
上記(4-1-1)で説示したように、該限定事項は、刊行物1発明が備えるものである。
したがって、両者の相違点としては、相違点1ないし5のみであり、これらについては、上記(4-1-1)、(4-1-3)及び(4-1-4)で説示したとおりである。
(4-1-6)本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点6】:
本件特許発明6では、「転がり手段」は、「車輪」で、「第1のセグメントと第2のセグメントとの間の軸に回転可能に設けられていて、軸は、軸の回転を阻止するように第1のセグメントと第2のセグメントとに保持されている」ものであるのに対して、刊行物1発明では、そのような態様であるか否か明らかでない点。

相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点6について検討する。
相違点6は、要するに、転がり手段が、車輪で、固定軸に回転自在に取り付けられ、かつ、固定軸の両端部分が第1のセグメントと第2のセグメントにより固定保持されてなる態様を規定したものと解せる。
刊行物1発明は、「ローラー(5)・・・(5)を支軸(51)により回動自在に装着した」ものであり、固定軸に対してローラー(5)・・・(5)が回転可能か、ローラー(5)・・・(5)を軸着した軸が回転可能かは明らかではないが、転がり手段が、車輪で、固定軸に回転自在に取り付けられたものは、刊行物7の図面、刊行物16の図8に示されているように周知の技術である。
したがって、刊行物1発明に上記周知の技術を適用して相違点6に係る本件特許発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-7)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明6を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」をさらに限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3及び相違点6に加え、下記の点で相違する。
【相違点7】:
本件特許発明7では、「第1の精密ベアリングと;第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた少なくとも第1の転がり手段は、第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第1の凹部に設けられ、第2の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第2の凹部に設けられているもの」であるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3及び相違点6については、上記(4-1-1)及び(4-1-6)で説示したとおりである。
そこで、相違点7について検討する。
相違点7に係る転がり手段は、ローラースケート靴の分野で刊行物7の図面に記載されているように周知の技術である。
したがって、刊行物1発明における支軸(51)により回動自在に装着したローラー(5)・・・(5)に上記相違点6に係る周知の技術を適用して相違点7に係る本件特許発明7の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-8)本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明7を引用し、その「転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3及び相違点6ないし7に加え、下記の点で相違する。
【相違点8】:
本件特許発明8では、「第1の精密ベアリングが第1のリングクリップを使用して軸に設けられていて、第2の精密ベアリングが第2のリングクリップを使用して軸に設けられている」のに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3及び相違点6ないし7については、上記(4-1-1)、(4-1-6)及び(4-1-7)で説示したとおりである。
そこで、相違点8について検討する。
車輪装置一般において、ベアリングにリングクリップの範疇に含まれる、スナップリングを使用することは、刊行物8の第2図に示されているように周知の技術である。
したがって、刊行物1発明における支軸(51)により回動自在に装着したローラー(5)・・・(5)に上記周知のリングクリップを適用して相違点8に係る本件特許発明8の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-9)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明4を引用し、それをさらに限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし5に加え、下記の点で相違する。
【相違点9】:
本件特許発明9では、「ヒール制御板を有する据え付け構造部をさらに備えた」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えているか否かが明らかでない点。

相違点1ないし5については、上記(4-1-1)、(4-1-3)及び(4-1-4)で説示したとおりである。
そこで、相違点9について検討する。
本件訂正明細書の段落【0039】には、「ヒール制御板72は、ヒーリング装置の使用者が、ヒーリング装置を用いてよりよい制御とより大きな達成とを得ることを可能にする。」と記載されており、また、その段落【0040】には、「ヒール制御板72は、ヒーリング装置120のよりよい取り扱いと達成を提供するため、所望により使用者のヒールがヒール制御板に圧力を適用するように靴の内側にある。」と記載されている。
これらの記載及び図7の図示内容から、本件特許発明9の「ヒール制御板」とは、使用者の踵に接する履物内側に配置され、踵で圧力をかけ得る機能を有するものと解することが相当である。
また、本件特許発明9の「据え付け構造部」とは、本件特許発明9が引用する本件特許発明4及び本件特許発明4が引用する本件特許発明3の機能及び構成からみて、転がり手段を保持する構造部が別体として構成され開口部に据え付けられる構造となっていると解することが相当である。
してみると、「据え付け構造部」は転がり手段を回転可能に保持する一般に車輪の軸受けとして理解される部分と該軸受けを支持する部分との双方を指すものであって、「据え付け構造部」が「ヒール制御板」をさらに有することにより、使用者の体重を車輪に伝達し易くなる結果、「ヒーリング装置の使用者が、ヒーリング装置を用いてよりよい制御とより大きな達成とを得ることを可能にする。」ものと理解することが相当である。
ところで、刊行物1発明の履物の操作に関し考察してみると、刊行物1発明の「底板部(a)の底面部を、その長さ方向に沿うほぼ中央で二分して外側半部を接地底(1)とし、これに続く後端部は踵部(2)とするとともに、前記接地底(1)及び踵部(2)に対応する内側はその厚さを薄くして段状凹部(3)及び被接地踵部(4)とし、前記段状凹部(3)にローラー(5)・・・(5)をその外周縁が接地底(1)よりも少許ばかり内方に入るように装着し」たものでは、その機能及び構造からみて、底板部(a)自体が、使用者の体重を受け、かつ、ローラーに伝達し、転がり状態の制御に寄与するものと理解することが相当であり、本件特許発明9の「ヒール制御板」が奏する機能と同等の機能を奏するものといえる。
上記のことから、刊行物1発明は、実質的に相違点9に係る発明特定事項を備えてなるものといえる。
なお、車輪の取付け部を支える板状部分を含む部材は、刊行物18に支持部材9として、刊行物19に連結部材1として示されているように、周知の技術であり、該周知の板状部分を含む部材にあっては、クッションとサスペンションの付加的利点の提供も可能といえる。
(4-1-10)本件特許発明10について
本件特許発明10は、本件特許発明9を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし5及び相違点9に加え、下記の点で相違する。
【相違点10】:
本件特許発明10では、「転がり手段は外径を有していて、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分は、転がり手段の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在する」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし5及び相違点9については、上記(4-1-1)、(4-1-3)、(4-1-4)及び(4-1-9)で説示したとおりである。
そこで、相違点10について検討する。
相違点10のように、「転がり手段の第2の部分」を、「転がり手段の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在するもの」とした点は、当業者において必要に応じて適宜なし得る設計的事項といえる。
(4-1-11)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明10を引用し、それをさらに限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし5及び相違点9ないし10に加え、下記の点で相違する。
【相違点11】:
本件特許発明11では、「ソールのアーチ部に結合された摺擦板をさらに備えた」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3、相違点9ないし10については、上記(4-1-1)、(4-1-3)、(4-1-4)、(4-1-9)及び(4-1-10)で説示したとおりである。
そこで、相違点11について検討する。
本件訂正明細書の段落【0030】には、「摺擦板44は、使用者が、ハンドレール、縁石、段差、角部、およびそれに類するような種々の表面を「摺擦する(grind)」すなわち「摺動する(slide)」ことを可能にするための、滑らかなまたは比較的滑らかな面を有している。摺擦板44は、好ましくはある程度薄くて、プラスチックまたはポリマー材料で形成されている。」と記載されている。
ところで、ソールのアーチ部にプラスチック等の部材を当てて摺動させることのできる履物は、刊行物10の第6頁第17行?第18行に記載されているように周知の技術である。
したがって、刊行物1発明に上記周知の技術を適用して相違点11に係る本件特許発明11の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-12)本件特許発明12について
本件特許発明12は、本件特許発明1を引用し、その「開口部」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点12】:
本件特許発明12では、「2つの開口部がヒール部に設けられている」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点12について検討する。
ソールに2つの回転機構が収納される開口部を並列に設けたものは、刊行物6に記載されているように周知の技術である。
そして、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すれば、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、開口部を並列に設けた上記周知の技術を適用して相違点12に係る本件特許発明12の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-13)本件特許発明13について
本件特許発明13は、本件特許発明1を引用し、その「ソール」をさらに限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点13】:
本件特許発明12では、「ソールのアーチ部に結合された摺擦板をさらに備えた」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点13について検討する。
相違点13は、相違点11と共通するから、相違点11に関して上記(4-1-11)で説示したことを考慮すると、相違点13に係る本件特許発明13の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。(4-1-14)本件特許発明14について
本件特許発明14は、本件特許発明13を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3及び相違点13に加え、下記の点で相違する。
【相違点14】:
本件特許発明14では、「少なくとも第1の転がり手段は、唯一の転がり手段で、ヒール部に設けられていて、ソールのつま先部はローラーを備えていない」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3及び相違点13については、上記(4-1-1)及び(4-1-13)で説示したとおりである。
そこで、相違点14について検討する。
唯一の転がり手段がヒール部近傍に設けられているものは、刊行物2発明、刊行物3発明がそうであるように周知の技術であり、「ソールのつま先部はローラーを備えていない」点は相違点1に含まれる。
したがって、相違点1ないし3に係る上記(4-1-1)において説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、同時に該周知の唯一の転がり手段をヒール部近傍に設ける技術を適用して相違点14に係る本件特許発明14の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-15)本件特許発明15について
本件特許発明15は、本件特許発明14を引用し、その「ソール」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、刊行物1発明の「重心を踵部(2)に移動させることによる停止も行える」こと及びその際の接触箇所は、本件特許発明15の「履物のソールのヒール部の一部分は、ヒールブレーキ状態において地面と接触し」及び「ヒール部のヒールブレーキ状態において地面と接触」する部分が、「履物の後部とソールのヒール部の底面に形成された開口部との間」に相当するといえるから、本件特許発明15と刊行物1発明の相違点は、いずれも、相違点1ないし3及び相違点14に含まれるといえる。
それらの相違点については、上記(4-1-1)及び(4-1-14)で説示したとおりである。
(4-1-16)本件特許発明16について
本件特許発明16は、本件特許発明15を引用し、その「ソール」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3及び相違点13ないし14に加え、下記の点で相違する。
【相違点15】:
ヒールブレーキ状態において地面と接触する履物のソールのヒール部の部分が、本件特許発明15では、「耐磨耗性の材料で形成されている」ものであるのに対して、刊行物1発明では、そのような材料で形成されているものであるか否か明らかでない点。

相違点1ないし3及び相違点13ないし14については、上記(4-1-1)及び(4-1-13)ないし(4-1-14)で説示したとおりである。
そこで、相違点15について検討する。
地面と接触する履物のソールのヒール部の部分はブレーキとして機能する部分であるから、耐摩耗性を要求されることは当然であり、耐摩耗性を達成するために耐摩耗性材料で形成して相違点15に係る本件特許発明16の発明特定事項とする程度のことは当業者が必要に応じてなし得る設計的事項にすぎない。
(4-1-17)本件特許発明17について
本件特許発明17は、間接的に本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、本件特許発明17と刊行物1発明を対比すると、刊行物1発明において、本件特許発明1の「少なくとも第1の転がり手段」に相当するものは、「ローラー(5)・・・(5)」であるから、上記相違点1ないし3及び相違点13ないし15の他に、特に相違点は認められない。
また、相違点1ないし3及び相違点13ないし15については、上記(4-1-1)、(4-1-13)ないし(4-1-16)で説示したとおりである。
(4-1-18)本件特許発明18について
本件特許発明18は、間接的に本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3及び相違点13ないし15に加え、下記の点で相違する。
【相違点16】:
転がり手段が、本件特許発明18では、「球形のボール」であるのに対して、刊行物1発明では、そのような形状の態様でない点。
相違点1ないし3及び相違点13ないし15については、上記(4-1-1)及び(4-1-13)ないし(4-1-16)で説示したとおりである。
そこで、相違点16について検討する。
転がり手段としての車輪やローラに替えて、球形のボールを採用し、相違点16に係る本件特許発明18の発明特定事項とすることは、ボールベアリングのボールで知られるように、球形のボールが転がり手段として周知の技術であることを考慮すると、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-19)本件特許発明19について
本件特許発明19は、間接的に本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、刊行物1発明の「ローラー(5)・・・(5)」は車輪の一種であるといえるから、両者には、相違点1ないし3及び相違点13ないし15の他に、特に相違点は認められない。
相違点1ないし3及び相違点13ないし15については、上記(4-1-1)及び(4-1-13)ないし(4-1-16)で説示したとおりである。
(4-1-20)本件特許発明20について
本件特許発明20は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点17】:
転がり手段が、本件特許発明20では、「履物のソールのヒール部に形成された開口部内で取り外し可能に結合されている」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点17について検討する。
車輪を取り外し可能としたローラー付きの靴は、刊行物5の図4に示されているように周知の技術である。
そして、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、車輪を取り外し可能としたローラー付きの靴に関する該周知の技術を適用して相違点17に係る本件特許発明20の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-21)本件特許発明21について
本件特許発明21は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点18】:
転がり手段が、本件特許発明21では、「履物のソールのヒール部に形成された開口部内に引き込み可能に結合されている」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。
相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点18について検討する。
車輪を履物のソールに形成された開口部内に引き込み可能に取り付けたものは、刊行物6の図1、刊行物13の第1図及び第3図に示されているように周知の技術である。
そして、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、車輪を履物のソールに形成された開口部内に引き込み可能に取り付けた該周知の技術を適用して相違点18に係る本件特許発明21の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-22)本件特許発明22について
本件特許発明22は、本件特許発明4を引用し、それを限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし5に加え、下記の点で相違する。
【相違点19】:
転がり手段が、本件特許発明22では、「履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に存在する転がり手段の第2の部分を覆うために操作可能な少なくとも第1の転がり手段カバーをさらに備えた」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし5については、上記(4-1-1)、(4-1-3)及び(4-1-4)で説示したとおりである。
そこで、相違点19について検討する。
ローラースケートにおいて、その車輪回転機構を覆うための取り外し可能のカバー部材を設けたものは、刊行物14の図1、刊行物15の図4に示されているように周知の技術である。
そして、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、車輪回転機構を覆うための取り外し可能のカバー部材を設けた該周知の技術を適用して相違点19に係る本件特許発明22の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-23)本件特許発明23について
本件特許発明23は、本件特許発明1を引用し、履物のアイテムが一対であることを限定したものであるが、刊行物1発明と対比すると、刊行物1発明は、履物に係るものであり、履物は通常一対で使用されるものであることを考慮すると、相違点1ないし3の他に、特に相違点は認められない。
また、相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
(4-1-24)本件特許発明24について
本件特許発明24は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3に加え、下記の点で相違する。
【相違点20】:
転がり手段が、本件特許発明24では、「軸開口部を有する車輪と、第1の側で軸開口部を取り囲む車輪の第1の側の第1の環状の凹部と、第2の側で軸開口部を取り囲む車輪の第2の側の第2の環状の凹部とを備えていて、さらに、車輪の第1の側の第1の環状の凹部に設けられた第1のベアリングと、車輪の第2の側の第2の環状の凹部に設けられた第2のベアリングと、および車輪が、第1のベアリングと第2のベアリングとによって軸に回転可能に結合されるように車輪の軸開口部内に設けられた軸とをさらに備えた」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
そこで、相違点20について検討する。
相違点20に係る転がり手段に相当するものは、ローラースケート靴の分野で刊行物11の図3及び刊行物16の図1に示されているように周知の技術である。
そして、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、相違点20に係る転がり手段に相当する該周知の技術を適用して相違点20に係る本件特許発明24の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-25)本件特許発明25について
本件特許発明25は、本件特許発明24を引用し、その「車輪」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点1ないし3及び相違点20に加え、下記の点で相違する。
【相違点21】:
車輪が、本件特許発明25では、「軸開口部と、第1の環状の凹部と、第2の環状の凹部とを形成し、湾曲した外側表面を有した内側コア部をさらに備え、および車輪の内側コア部の湾曲した外側表面に設けられた比較的軟らかい外側タイヤをさらに備えた」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点1ないし3及び相違点20については、上記(4-1-1)及び(4-1-24)で説示したとおりである。
そこで、相違点21について検討する。
ローラースケートの分野において、いわゆるウレタンタイヤと称されるコアを有する2部品構造のものは、刊行物17の第3頁第7?第10行に記載されているように周知の技術である。
そして、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すると、刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、上記2部品構造の周知の技術を適用して相違点21に係る本件特許発明25の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-26)本件特許発明26について
本件特許発明26と上記刊行物1発明を対比すると、後者の「靴」は、その機能及び構造からみて、前者の「前部、後部、上方部、およびソールを有する履物」に相当し、以下、同様に、「足形状の底板部(a)」は「前部、後部」に、「ローラー(5)・・・(5)」は「車輪」に、「通常の歩行の場合」は「歩行状態」に、「走ること」は「走行状態」に、「接地底(1)の側面に固定した支軸(51)・・・(51)」は「履物に接続された軸」に、「支軸(51)・・・(51)により回動自在にローラー(5)・・・(5)を装着した」は「軸に設けられた車輪」に、「滑走具を備えた履物」は「地面上で使用するための装置」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「足形状の底板部(a)の底面部」は、その形状からみて、前者の「歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、アーチ部を有し、および底面を有するヒール部を有し」ているものに相当することは明らかである。
また、後者の「滑走具として使用する場合は、着用者が底面部をやや内傾するようにすればローラー(5)・・・(5)が接地するようになり、しかも接地底(1)及び踵部(2)が浮き上る」状態は、つまるところ、人が歩行状態から転がり状態に変移することを可能にすることを意味するとともに、滑走時に履物のうちローラーのみが地面と接している状態であることも意味しているものといえるので、前者の「車輪が転がるために地面と接触しかつ履物の」「底面が地面の上方に持ち上げられている」「転がり状態に変移することを可能にする」こと及び「転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず」の状態に等しいといえる。
さらに、後者の「重心を前記外側半部の接地底(1)に移動させるだけで停止させることができる他、重心を踵部(2)に移動させることにより停止も行える」ことは、後者の構造からみて、外側半部の接地底(1)及び踵部(2)が地面に触れて摩擦ブレーキとなることが明らかであるから、前者の「履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり」に相当するといえる。
さらにまた、上記のことから、後者の「外側半部」は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであることは明らかであるとともに、「歩行状態と走行状態の間地面と係合する」という機能を共通に有するという限りにおいて、前者の「つま先部」及び後者の「外側半部」は、「接地面部」という概念で共通する。
したがって、両者は、「地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態から転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:
前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するための接地面部を有し、
アーチ部を有し、および底面を有するヒール部を有し;
履物に接続された軸を備え;および装置は、人が歩行状態または走行状態から、軸に設けられた車輪が転がるために地面と接触しかつ履物の接地面部の底面が地面の上方に持上げられている転がり状態に変移することを可能にするように軸に設けられた車輪を備えていて;
転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、ソールの接地面部は、転がり状態において地面の上方に持ち上げられ、さらにまたソールの接地面部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、地面と本質的な接触がなされ、その時に、接地面部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物の装置。」において一致し、下記の点で相違している。
【相違点22】:
接地面部の設置箇所及び「履物を転がすための車輪」の「全て」の設置箇所に関し、本件特許発明26では、接地面部が、「ソール」の「つま先部」であり、「履物を転がすための車輪」の「全て」の設置箇所が、「ヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない」とされ、「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び」ているものであるのに対して、刊行物1発明では、接地面部が、外側半部の接地底(1)及び踵部(2)であり、「履物を転がすための車輪」の「全て」の設置箇所が、同じく、外側半部の接地底(1)に対応する内側の段状凹部(3)であり、転がらないモードに変移した時、「ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び」ているか否かが明らかでない点。
【相違点23】:
本件特許発明26では、転がり状態が「ヒール転がり状態」であって、「ヒール転がり状態」では「履物のつま先部の底面が地面の上方に持上げられている」のに対して、刊行物1発明では、転がり状態は、着用者が底面部をやや内傾する状態であり、該内傾する状態では、外側半部の底面が地面の上方に持ち上げられている点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点22について
本件特許発明26と刊行物1発明は、「転がり状態」と「歩行状態又は走行状態」の両状態を選択することができる「車輪」を設けた履物である点で共通するものであるが、「転がり状態」に関与する「車輪」と、「歩行状態」及び/又は「走行状態」に関与する「地面と係合」するための箇所が、「ソール」においてどのような配置・構造となっているか等について、その具体的態様に相違があり、相違点22ないし23は、該具体的態様に関する相違点といえる。
ここで、相違点22のうち、接地面部及び「履物を転がすための車輪」の設置箇所に関する相違点については、本件特許発明26の「履物を転がす車輪」が、本件特許発明1の「転がり手段」を具体的に限定したものといえるから、相違点22における接地面部と「履物を転がすための車輪」との関係は、相違点1における、接地面部と「転がり手段」との関係と同様な関係であるといえる。
したがって、上記(4-1-1)で説示したことを考慮すると、当業者であれば、本件特許発明26が採用したように、接地面部及び「履物を転がすための車輪」の配置を長手方向にし、かつ、その際に、「履物を転がすための車輪」の「全て」を履物の後半部分に、接地面部を履物の前半部分に設置することは、格別困難なく採用し得たことといえる。
また、車輪の設置位置をさらに限定して、「ヒール部に設けられてい」るようにすること、反対に、「つま先部には設けられていない」ようにすることは、当業者において設計的事項の範疇に属するものといえる。
さらに、接地面部を「つま先部」とすることも、当業者において格別困難なこととはいえない。
そして、そのような配置・構造にした場合、転がらないモードに変移した時、接地面部、すなわち、「つま先部」が「一般にソールの第1の側から第2の側に延びて」いる構造を採用することは、機能及び構造からみて、当業者が通常、選択する選択肢の1つといえ、格別困難なこととはいえない。
したがって、相違点22に係る本件特許発明26の発明特定事項とすることは、当業者が、刊行物1発明及び上記周知の技術から容易になし得たものといえる。
相違点23について
「車輪」のソールにおける設置位置が決まれば、転がり状態の態様は決まるものであるから、相違点23は、「車輪」のソールにおける位置関係に依るものであり、相違点22に係る「車輪」が「ヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない」状態であれば、「ヒール転がり状態」をなすものといえる。
また、その状態においては、相違点23に係る「履物のつま先部の底面が地面の上方に持上げられている」要件を満足しているといえる。
そして、本件特許発明26の有する発明の効果は、刊行物1発明並びに上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本件特許発明26は、当業者が刊行物1発明及び上記周知の技術から容易になし得たものであるといえる。
(4-1-27)本件特許発明27について
本件特許発明27は、本件特許発明26を引用し、その「車輪」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、刊行物1発明の「ローラー(5)・・・(5)」は、本件特許発明27の「軸の設けられた1つ以上の車輪を備え」たものに相当するから、相違点22ないし23の他に、特に相違点は認められない。
また、相違点22ないし23については、上記(4-1-26)で説示したとおりである。
(4-1-28)本件特許発明28について
本件特許発明28は、本件特許発明26を引用し、その「車輪」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点22ないし23に加え、下記の点で相違する。
【相違点24】:
軸に設けられた車輪について、本件特許発明28では、「第2の軸に設けられた第2の車輪をさらに備えていて、第2の軸に設けられた第2の車輪は、転がり状態の間転がるために地面と接触する」ものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えているか否かが明らかでない点。

相違点22ないし23については、上記(4-1-26)で説示したとおりである。
そこで、相違点24について検討する。
相違点24に係る「第1の軸に加え、第2の軸をさらに備え、第2の軸に設けられた第2の車輪が転がり状態の間転がるために地面と接触する」転がり手段に相当するものは、刊行物6の図2及び刊行物18の図2に示されているように、歩行とローラースケートの両方が可能な履物の分野で周知の技術である。
したがって、相違点22ないし23に関して上記(4-1-26)で説示した刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、相違点24に係る上記周知の技術を適用して相違点24に係る本件特許発明28の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-29)本件特許発明29について
本件特許発明29は、本件特許発明1とその基本的な発明特定事項において共通することから、本件特許発明29を本件特許発明1と対比すると、要するに、以下(a)ないし(b)の点で、その発明特定事項の規定に相違があるといえる。
(a)転がり手段について、本件特許発明1では、「ヒール部の開口部内に保持された」と規定されているのに対して、本件特許発明29では、「ヒール部の開口部に保持された」と規定されている点。
(b)本件特許発明1では、「転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく」と規定されているのに対して、本件特許発明29では、そのような規定がされていない点。
そこで、上記(a)ないし(b)を考慮しつつ、本件特許発明29と刊行物1発明を対比すると、本件特許発明1と相違する上記(a)の点も(b)の点も共に本件特許発明1に対する限定を外すものであって、それらにより本件特許発明29に本件特許発明1に加える限定を付すものではないから、本件特許発明29と刊行物1発明とは、上記相違点1ないし3の他に、特に相違点は認められない。
また、相違点1ないし3については、上記(4-1-1)で説示したとおりである。
(4?1-30)本件特許発明30
本件特許発明30は、本件特許発明26とその基本的な発明特定事項において共通することから、本件特許発明30を本件特許発明26と対比すると、両者は、要するに、以下(c)ないし(d)の点でその発明特定事項の規定に相違があるといえる。
(c)ヒールに関し、本件特許発明26では、それが「底面を有する」と規定されているのに対して、本件特許発明30では、それが「ソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有する」と規定されている点。
(d)軸、車輪等に関し、本件特許発明26では、軸が「履物に接続された」と規定されているのに対して、本件特許発明30では、軸が「第1のセグメントと第2のセグメントとを有し」と規定され、さらに車輪について、「軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え、軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されてい」ることが規定されている点。
そして、上記(c)ないし(d)を考慮しつつ、本件特許発明30と刊行物1発明を対比すると、両者は、相違点22ないし23に加え、下記の点で相違している。
【相違点25】:
本件特許発明30では、軸が、「第1のセグメントと第2のセグメントとを有し」、さらに「軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え」ているものであるのに対して、刊行物1発明では、そのような態様ではない点。
【相違点26】:
ヒール部に関して、本件特許発明30では、「ソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有する」ものであるのに対して、刊行物1発明ではそのような態様でない点。
【相違点27】:
本件特許発明30では、「軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されてい」るのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点22ないし23については、上記(4-1-26)で説示したとおりである。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点25について
相違点25に係る、軸が、「第1のセグメントと第2のセグメントとを有し」、さらに「軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え」ているものは、刊行物5の図4に示されているように、歩行とローラースケートの両方が可能な履物の分野で周知の技術である。 したがって、相違点22ないし23に関して上記(4-1-26)で説示した刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、上記相違点25に係る上記周知の技術を適用して相違点25に係る本件特許発明30の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
相違点26について
ヒール部に開口部を有する相違点については、上記(4-1-1)に相違点2として挙げられており、また、「開口部をソールの少なくとも一部分に形成された」としても、刊行物1発明との間に、新たな相違点を加えるものとはいえない。
よって、上記(4-1-1)で説示したと同様の理由から、相違点26に係る本件特許発明30の発明特定事項は、当業者が容易になし得たものといえる。
相違点27について
相違点27は、それが「車輪」に関する相違点であり、相違点4が「転がり手段」に関する相違点であることを除いて、相違点4と共通するが、上記(4-1-3)における相違点4についての説示は、「転がり手段」が「車輪」に限定されてもいえることから、相違点27に係る本件特許発明30の発明特定事項は、刊行物1発明におけるローラー(5)・・・(5)に上記周知の技術を適用して、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-31)本件特許発明31について
本件特許発明31は、本件特許発明30を引用し、その「車輪」の露出態様を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点22ないし23及び相違点25ないし27に加え、下記の点で相違する。
【相違点28】:
本件特許発明31では、「軸に回転可能に設けられた車輪は、開口部内に存在する車輪の第1の部分が、開口部の下方に存在する車輪の第2の部分より大きいようにソールのヒール部の開口部内に設けられている」のに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点22ないし23及び相違点25ないし27については、上記(4-1?26)及び(4-1-30)で説示したとおりである。
そこで、相違点28について検討する。
相違点28と本件特許発明3を引用する本件特許発明4に係る相違点5とは、相違点28が「車輪」に関する相違点であるのに対し、相違点5が「転がり手段」に関する相違点であることを除いて共通し、相違点5についての上記(4-1-4)の説示は、「転がり手段」が「車輪」に限定されてもいえることから、相違点28に係る本件特許発明31の発明特定事項は、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-32)本件特許発明32について
本件特許発明32は、本件特許発明30を引用し、その「車輪」及び「軸」をさらに限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点22ないし23及び相違点25ないし27に加え、下記の点で相違する。
【相違点29】:
本件特許発明32では、「第1の精密ベアリングと;第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた車輪が第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが車輪と軸との間で第1の凹部に設けられていて、第2の精密ベアリングが車輪と軸との間で第2の凹部に設けられている」のに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点22ないし23及び相違点25ないし27については、上記(4-1-26)及び(4-1-30)で説示したとおりである。
そこで、相違点29について検討する。
相違点29と相違点7とでは、相違点29が「車輪」に関する相違点であるのに対し、相違点7が「転がり手段」に関する相違点であることを除いて共通し、相違点7についての上記(4-1-7)の説示は、「転がり手段」が「車輪」に限定されてもいえることから、相違点29に係る本件特許発明32の発明特定事項は、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-33)本件特許発明33について
本件特許発明33は、本件特許発明30を引用し、それを限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、刊行物1発明は、「重心を踵部(2)に移動させることによる停止も行える」ものであり、該踵部(2)は、その機能及び構造からみて、本件特許発明33の「ソールのヒール部の一部分」に相当するといえるから、刊行物1発明は、本件特許発明33の「ソールのヒール部の一部分が地面と接触して、人がヒールブレーキ状態に変移するためにさらに操作可能としたものである」点に相当する構成を備えるものであり、相違点22ないし23及び相違点25ないし27の他に特に相違点は認められない。
また、相違点22ないし23及び相違点25ないし27については、上記(4-1-26)及び(4-1-30)で説示したとおりである。
(4-1-34)本件特許発明34について
本件特許発明34は、本件特許発明30を引用し、それを限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点22ないし23及び相違点25ないし27に加え、下記の点で相違する。
【相違点30】:
本件特許発明34では、「ソールのアーチ部に隣接して結合された摺擦板をさらに備えた」のに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点22ないし23及び相違点25ないし27については、上記(4-1-26)及び(4-1-30)で説示したとおりである。
そこで、相違点30について検討する。
本件特許発明10を引用する本件特許発明11に係る相違点11は、「ソールのアーチ部に隣接して結合された摺擦板を備えたものである」点を含むものであり、相違点30と共通する。
したがって、該相違点11に係る上記(4-1-11)の説示を考慮すれば、相違点30に係る本件特許発明34の発明特定事項も、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-35)本件特許発明35について
本件特許発明35は、本件特許発明30を引用し、要するにその「車輪」の数を「1つ以上」としたものと認められる。
そうとすれば、刊行物1発明の「ローラー(5)・・・(5)」のローラーの数は複数であるから「1つ以上の車輪」に相当し、かかる要件を満足するので、両者には、相違点22ないし23及び相違点25ないし27の他に、特に相違点は認められない。
また、相違点22ないし23及び相違点25ないし27については、上記(4-1-26)及び(4-1-30)で説示したとおりである。
(4-1-36)本件特許発明36について
本件特許発明36は、本件特許発明30とその基本的な発明特定事項において共通することから、本件特許発明36を本件特許発明30と対比すると、両者には、車輪の支持機構に関し若干相違があり、該相違を考慮しつつ、本件特許発明36と刊行物1発明とを対比すると、両者は、相違点22ないし23及び相違点25ないし27に加え、下記の点で相違している。
【相違点31】:
軸及び車輪に関して、本件特許発明36では、「少なくとも第1の係合可能なセグメントに隣接する軸に取着された少なくとも1つの車輪を備えてい」るのに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。
【相違点32】
軸及び車輪に関して、本件特許発明36では、「軸に取着された少なくとも1つの車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように係合可能なセグメントを介して装置に結合されてい」るのに対して、刊行物1発明ではかかる構成を備えていない点。

相違点22ないし23及び相違点25ないし27については、上記(4-1-26)及び(4-1-30)で説示したとおりである。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点31について
ローラースケートの車輪構造として「少なくとも第1の係合可能なセグメントに隣接する軸に取着された少なくとも1つの車輪を備えて」なるものは、刊行物19及び20に記載されているように周知の技術である。
したがって、相違点31に係る本件特許発明36の発明特定事項は、上記(4-1-30)で説示した刊行物1発明に上記周知の技術を適用する際に、相違点31に係る上記周知の技術を適用することにより当業者が容易になし得たものといえる。
相違点32について
相違点32と相違点4は、相違点32が「車輪」に関する相違点であり、相違点4が「転がり手段」に関する相違点であることを除いて、共通し、相違点4についての上記(4-1-3)の説示したことは、「転がり手段」が「車輪」に限定されてもいえることから、相違点32に係る本件特許発明36の発明特定事項は、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-1-37)本件特許発明37について
本件特許発明37は、本件特許発明36を引用し、その「車輪」の露出態様を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、相違点22ないし23、相違点25ないし27及び相違点31ないし32に加え、下記の点で相違する。
【相違点33】:
本件特許発明37では、「車輪は、外形を有していて、車輪の第2の部分は、車輪の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の最も低い位置の下方に存在する」のに対して、刊行物1発明では、かかる構成を備えていない点。

相違点22ないし23、相違点25ないし27及び相違点31ないし32については、上記(4-1-26)、(4-1-30)及び(4-1-36)で説示したとおりである。
そこで、相違点33について検討する。
相違点33と相違点10とでは、相違点33が「車輪」に関する相違点であり、相違点10が「転がり手段」に関する相違点であることを除いて、共通し、相違点10についての上記(4-1-10)で説示したことの検討は、「転がり手段」が「車輪」に限定されてもいえることから、相違点33に係る本件特許発明37の発明特定事項も、当業者が容易になし得たものといえる。
(4-2)その2
(4-2?1)本件特許発明1について
上記3.の(3-2-1)ないし(3-2-3)の記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、下記の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認められる。

(刊行物2発明)
「一輪下駄であって、
長方形の下駄台を備え、下駄台の下面の中央やや後部に空所が設けられており、空所内に軸木(ニ)で軸支される形で保持された車輪(ハ)を備えていて、これから転行を始めようとするときや停止しようとするとき、もしくは歩いて坂路を昇降するときには、下駄の進行方向前側の下面に設けられた爪立台(イ)が用いられ、車輪(ハ)は、下駄が水平なときにその最下端が下駄全体で最下方に位置するように取り付けられており、下駄の進行方向後ろの部位の下面に突出した踵台(ロ)は後方に転倒するのを防止するために用いられるものである一輪下駄。」
そこで、本件特許発明1と刊行物2発明を対比すると、後者の「一輪下駄」は、その機能及び構造からみて、前者の「履物のアイテム」に相当し、以下、同様に、「下駄台」の「下面」は「ソール」に、「空所」は「開口部」に、「空所内に軸木(ニ)で軸支される形で保持された車輪(ハ)」は「開口部内に保持された転がり手段」及び「少なくとも第1の転がり手段」に、「これから転行を始めようとするとき」及び「歩いて坂路を昇降するとき」は「転がらないモード」にそれぞれ相当する。
そして、後者において、「車輪(ハ)は、下駄が水平な時にその最下端が下駄全体で最下方に位置するように取り付けられており」ということは、後者が、前者の「転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず」かつ「ソールのつま先部は、転がりモードにおいて地面の前上方に持ち上げられ」ているとの態様を備えているといえる。
また、後者の「下駄台」は、使用者の足裏全体を載せ得るものと通常考えられるので、つま先やアーチ、ヒールと通常称される足の部位に対応する部位を備えたものといえるから、前者の「つま先部、アーチ部およびヒール部を有する」ものといえる。
このことと関連して、後者の「空所」が設けられる「下駄台中央やや後部」は、使用者の踵に接する部位を含んで位置するといえるから、前者の「ヒール部」を含み得るといえ、同時に「履物のアイテムを転がすための転がり手段はヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず」の要件を満足する。
さらに、後者の「これから転行を始めようとするときや停止しようとするとき」及び「歩いて坂路を昇降するとき」に、「下駄の進行方向前側の下面に設けられた爪立台(イ)が用いられ」る態様は、下駄の通常の歩行態様から見て、「爪立台(イ)」が地面に接することにより達成されると見てよいから、前者の「使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ」ることに相当するとともに、前者の「ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではな」いこと、及び「地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」であるとの要件を満足する。
加えて、「爪立台(イ)」が「用いられ」るということは、逆に、「車輪(ハ)」を含めた爪立台(イ)以外の部分が機能しないことを意味するから、前者の「また、転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく」といった要件を満足するといえる。
さらにまた、後者の「一輪下駄」の機能及び構造からみて、後者の 「爪立台(イ)」が、前者の「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びて」いる要件を満足していることは明らかである。
最後に、後者の「停止しようとするとき」に「下駄の進行方向前側の下面に設けられた爪立台(イ)が用いられ」る態様は、「爪立台(イ)」の「下面」が接地することにより、「下面」がブレーキ及び接触の作用を発揮するものといえるから、かかるケースでの後者の「爪立台(イ)」の「下面」は、前者の「転がり手段以外の部材」に相当するとともに、後者の「停止しようとする」状態は、前者の「ブレーキ状態」に相当し、同様に「爪立台(イ)」の「下面」が「用いられ」る状態、すなわち接地する状態は、前者の「地面と接触した場合」に相当するといえる。
したがって、両者は「履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はそれに形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部内に保持された転がり手段を備えていて;
転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は少なくとも第1の転がり手段を含み、全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、ソールのつま先部は、転がりモードにおいて地面の前上方に持上げられ、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではなく、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びており、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。」において一致し、下記の点で一応相違している。
【相違点1】:
本件特許発明1では、「モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され」としているのに対して、刊行物2発明では、モードの切り換えに関する操作内容が明らかでない点。

そこで、上記相違点1について検討する。
刊行物2発明は、「これから転行を始めようとするときや停止しようとするとき、もしくは歩いて坂路を昇降するときには、下駄の進行方向前側の下面に設けられた爪立台(イ)が用いられ」るものであり、ここで、「爪立台(イ)」を「用い」るためには、「爪立台(イ)」を地面に接触させる状態としなければならず、また、車輪(ハ)は、当然に、その「爪立台(イ)」が地面に接触させる位置ではない、すなわち、「爪立て台(イ)」が地面から持ち上がっている状態で転がるものであり、その両状態でモードが切り換わるものといえる。
そしてその両状態を変更するためには、一般の履物における踏み位置の変更がそうであるように使用者の体重の移動によるものと考えることが相当である。
してみると、刊行物2発明においても、モード移行の操作方法は使用者の体重の移動によって実行されるものといえるから、相違点1にかかるモードの切り換えの点において、刊行物2発明のものも、本件特許発明1のものと実質的に相違するものではない。
したがって、本件特許発明1は、刊行物2発明と同一であり、少なくとも当業者が刊行物2発明に基づき容易になし得たものである。
(4-2-2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、その「少なくとも第1の転がり手段」について、「使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へ履物のアイテムの少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができ、また、つま先部は摺動するために操作可能な板を備えていない」と限定したものである。
ところが、刊行物2発明について、その機能及び構成からみて、転がり手段は、使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へ一輪下駄が少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、平坦面において、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができるものであるといえる。
また、刊行物2発明は、つま先部に「摺動するために操作可能な板」を特に設けたものであるとはいえない。
さらに、相違点1については、上記(4-2-1)で説示したとおりである。
したがって、本件特許発明2は、刊行物2発明と同一であり、少なくとも当業者が刊行物2発明に基づき容易になし得たものである。
(4-2-3)本件特許発明23について
本件特許発明23は、本件特許発明1を引用し、履物のアイテムが一対であることを限定したものであるが、刊行物2発明と対比すると、刊行物2発明は、履物に係るものであり、履物は通常一対で使用されるものであることを考慮すると、特に相違点は認められない。
また、相違点1については、上記(4-2-1)で検討したとおりである。
したがって、本件特許発明23は、刊行物2発明と同一であり、少なくとも当業者が刊行物2発明に基づき容易になし得たものである。
(4-2?4)本件特許発明26について
本件特許発明1と刊行物2発明を対比すると、後者の「一輪下駄」は、その機能及び構造からみて、前者の「地面上で使用するための装置」及び「履物」に相当し、以下、同様に、「下駄台」の「下面」は「ソール」に、「軸木(ニ)で軸支され」た「車輪(ハ)」は「軸に設けられた車輪」に、「軸木(ニ)」は「履物に接続された軸」に、「これから転行を始めようとするとき」及び「歩いて坂路を昇降するとき」は「歩行状態」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「下駄台」は、使用者の足裏全体を載せ得るものと通常考えられるので、つま先やアーチ、ヒールと通常称される足の部位に対応する部位を備えたものといえるから、前者の「つま先部を有し、アーチ部を有し、および底面を有するヒール部を有」するものといえるとともに、後者の「下駄台」を備えた「一輪下駄」は、前者の「前部、後部、上方部、およびソールを有する履物」との態様を満足し、後者の[一輪下駄]も下駄の上半分を備えることは明らかであるから、後者の「人の足に装着可能」であるといえる。
また、後者の「車輪(ハ)は、下駄が水平な時にその最下端が下駄全体で最下方に位置するように取り付けられており」は、前者の「車輪が転がるために地面と接触しかつ履物のつま先部の底面が地面の上方に持ち上げられている」との態様を満足する。
さらに、上記のことと関連して、後者の「空所」が設けられる「下駄台の下面の中央やや後部」は、使用者の踵に接する部位を含んで位置するといえるから、前者の「ヒール部」を含み得るといえ、後者は、前者の「履物を転がすための車輪は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない」要件を満足するといえるとともに、後者の「車輪(ハ)」の転がり状態は、前者の「ヒール転がり状態」といえるものであり、同じく、後者は、前者の「ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触」しない要件も満足するといえる。
さらにまた、後者の「これから転行を始めようとするとき」及び「歩いて坂路を昇降するとき」に、「下駄の進行方向前側の下面に設けられた爪立台(イ)が用いられ」る態様は、下駄の通常の歩行状態及び走行状態から見て、「爪立台(イ)」が地面に接することにより達成されるとみてよいから、前者の「歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部」の要件を満足するとともに、「歩行状態または走行状態から」、「ヒール転がり状態に変移すること」が可能な要件、「ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであ」る要件、及び「地面と本質的な接触がなされ、その時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能」である要件を満足するといえる。
最後に、後者の「停止しようとするとき」に「下駄の進行方向前側の下面に設けられた爪立台(イ)が用いられ」る態様は、「爪立台(イ)」の「下面」が接地することで用をなすと理解することが相当であるから、「下面」が制動ないし保持作用を発揮するものといえるから、かかるケースでの後者の「爪立台(イ)」の「下面」は、前者の「車輪以外の部分」に相当するとともに、後者の「停止しようとする」状態は、前者の「ブレーキ状態」に相当し、同様に「爪立台(イ)」の「下面」が「用いられ」る状態、すなわち接地する状態は、前者の「地面と接触した場合」に相当するといえ、後者の「一輪下駄」の機能及び構造からみて、後者の 「爪立台(イ)」が、前者の「転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びて」いる要件を満足していることは明らかである。
上記のことから、両者には、格別の相違があるものといえない。
したがって、本件特許発明26は、刊行物2発明と同一であり、少なくとも当業者が刊行物2発明に基づき容易になし得たものである。
(4-2-5)本件特許発明27について
本件特許発明27は、本件特許発明26を引用し、その「車輪」を限定したものであり、刊行物1発明と対比すると、刊行物2発明の「車輪(ハ)」は、本件特許発明27の「軸の設けられた1つ以上の車輪を備え」たものに相当するから、限定した点について、本件特許発明27と刊行物2発明に相違があるとはいえない。
したがって、本件特許発明27は、刊行物2発明と同一であり、少なくとも当業者が刊行物2発明に基づき容易になし得たものである。
(4-2-6)本件特許発明29について
本件特許発明29は、上記(4-1-29)で説示したとおり、本件特許発明1とその基本的な発明特定事項において共通しており、本件特許発明29と刊行物2発明とは、特に相違があるとはいえない。
また、相違点1については、上記(4-2-1)で説示したとおりである。
したがって、本件特許発明29は、刊行物2発明と同一であり、少なくとも当業者が刊行物2発明に基づき容易になし得たものである。
(4-2-7)本件特許発明3ないし22、24ないし25、28、30ないし37について
本件特許発明3ないし22、24ないし25は、本件特許発明1と主要な発明特定事項において共通し、また、本件特許発明28及び30ないし37は、本件特許発明26と主要な発明特定事項において共通し、発明の具体的態様においては相違があるが、該具体的態様についての上記(4-1-3)ないし(4-1-22)、(4-1-24)ないし(4-1-25)、(4-1-28)、(4-1-30)ないし(4-1-37)の刊行物1発明に対する上記周知技術等の適用について説示したことは、主引用例発明が刊行物1発明から刊行物2発明に変更されても、同様にいえることから、上記(4-1-3)等で説示したことを考慮すると、本件特許発明3ないし22、24ないし25、28、30ないし37は、当業者が刊行物2発明及び上記周知の技術から容易になし得たものといえる。
また、本件特許発明3ないし22、24ないし25、28、30ないし37の有する発明の効果は、刊行物2発明並びに上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。

5.まとめ
上記のことから、他の理由及び証拠について検討するまでもなく、本件特許発明1ないし37は、刊行物1発明又は刊行物2発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件特許発明1ないし2、23、26ないし27及び29は、刊行物2発明である。

VI.むすび
以上のとおりであるから、他の無効理由を検討するまでもなく、本件特許発明1ないし37は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件特許発明1ないし2、23、26ないし27及び29に係る発明は、同法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1ないし37に係る発明についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ヒーリング装置とヒーリング方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はそれに形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部内に保持された転がり手段を備えていて;
転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がらないモードにおいて、履物のアイテムが転がるためにまたは滑るために操作可能ではなく、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は少なくとも第1の転がり手段を含み、全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、ソールのつま先部は、転がりモードにおいて地面の前上方に持上げられ、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為であって、転がる為ではなく、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延びており、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。
【請求項2】少なくとも第1の転がり手段は、使用者にとって可能にするために走行の通常の方向へ履物のアイテムの少なくとも長手方向軸線に沿って自由に回転可能であり、適切にバランスしている場合、走行の通常の方向へ地面に沿って転がることができ、また、つま先部は摺動するために操作可能な板を備えていない請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項3】少なくとも第1の転がり手段は、第1の部分と第2の部分とを備えていて、少なくとも第1の転がり手段の第1の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部内に存在するように、また、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分が履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に、かつ履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在するように配置されていて、履物は、人が、転がらないモードから、少なくとも第1の転がり手段が地面と接触して転がる転がりモードへ、ついでソールのヒール部の一部分が地面と接触するヒールブレーキ状態に変移することを可能にする請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項4】少なくとも第1の転がり手段の開口部内に保持されている部分は、開口部の外側にある転がり手段の部分よりも大きい請求項3記載の履物のアイテム。
【請求項5】ソールのヒール部の部分は、ヒールブレーキである請求項4記載の履物のアイテム。
【請求項6】少なくとも第1の転がり手段は車輪で、第1のセグメントと第2のセグメントとの間の軸に回転可能に設けられていて、軸は、軸の回転を阻止するように第1のセグメントと第2のセグメントとに保持されている請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項7】第1の精密ベアリングと;
第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた少なくとも第1の転がり手段は、第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第1の凹部に設けられ、第2の精密ベアリングが少なくとも第1の転がり手段と軸との間で第2の凹部に設けられている請求項6記載の履物のアイテム。
【請求項8】第1の精密ベアリングが第1のリングクリップを使用して軸に設けられていて、第2の精密ベアリングが第2のリングクリップを使用して軸に設けられている請求項7記載の履物のアイテム。
【請求項9】ヒール制御板を有する据え付け構造部をさらに供えた請求項4記載の履物のアイテム。
【請求項10】転がり手段は外径を有していて、少なくとも第1の転がり手段の第2の部分は、転がり手段の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の底面の最も低い位置の下方に存在する請求項9記載の履物のアイテム。
【請求項11】ソールのアーチ部に結合された摺擦板をさらに備えたことを特徴とする請求項10記載の履物のアイテム。
【請求項12】2つの開口部がヒール部に設けられている請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項13】ソールのアーチ部に結合された摺擦板をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項14】少なくとも第1の転がり手段は、唯一の転がり手段で、ヒール部に設けられていて、ソールのつま先部はローラーを備えていない請求項13記載の履物のアイテム。
【請求項15】履物のソールのヒール部の一部分は、ヒールブレーキ状態において地面と接触し、ヒール部のこの部分は、履物の後部とソールのヒール部の底面に形成された開口部との間に設けられている請求項14記載の履物のアイテム。
【請求項16】ヒールブレーキ状態において地面と接触する履物のソールのヒール部の部分は、耐磨耗性の材料で形成されている請求項15記載の履物のアイテム。
【請求項17】少なくとも第1の転がり手段は、ローラーである請求項16記載の履物のアイテム。
【請求項18】少なくとも第1の転がり手段は、球形のボールである請求項16記載の履物のアイテム。
【請求項19】少なくとも第1の転がり手段は、車輪である請求項16記載の履物のアイテム。
【請求項20】少なくとも第1の転がり手段は、履物のソールのヒール部に形成された開口部内で取り外し可能に結合されている請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項21】少なくとも第1の転がり手段は、履物のソールのヒール部に形成された開口部内に引き込み可能に結合されている請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項22】履物のソールのヒール部の底面に形成された開口部の下方に存在する転がり手段の第2の部分を覆うために操作可能な少なくとも第1の転がり手段カバーをさらに備えた請求項4記載の履物のアイテム。
【請求項23】請求項1に記載されたものの1対の履物のアイテム。
【請求項24】少なくとも第1の転がり手段は、軸開口部を有する車輪と、第1の側で軸開口部を取り囲む車輪の第1の側の第1の環状の凹部と、第2の側で軸開口部を取り囲む車輪の第2の側の第2の環状の凹部とを備えていて、さらに:車輪の第1の側の第1の環状の凹部に設けられた第1のベアリングと;
車輪の第2の側の第2の環状の凹部に設けられた第2のベアリングと;および車輪が、第1のベアリングと第2のベアリングとによって軸に回転可能に結合されるように車輪の軸開口部内に設けられた軸と;
をさらに備えた請求項1記載の履物のアイテム。
【請求項25】車輪は:軸開口部と、第1の環状の凹部と、第2の環状の凹部とを形成し、湾曲した外側表面を有した内側コア部をさらに備え;および車輪の内側コア部の湾曲した外側表面に設けられた比較的軟らかい外側タイヤをさらに備えた請求項24記載の履物のアイテム。
【請求項26】地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、アーチ部を有し、および底面を有するヒール部を有し;
履物に接続された軸を備え;および装置は、人が歩行状態または走行状態から、軸に設けられた車輪が転がるために地面と接触しかつ履物のつま先部の底面が地面の上方に持上げられているヒール転がり状態に変移することを可能にするように軸に設けられた車輪を備えていて;ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられておらず、ソールのつま先部は、ヒール転がり状態において地面の上方に持上げられ、さらにまたソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされ、その時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物の装置。
【請求項27】軸に設けられた車輪は、軸に設けられた1つ以上の車輪を備えている請求項26記載の履物の装置。
【請求項28】第2の軸に設けられた第2の車輪をさらに備えていて、第2の軸に設けられた第2の車輪は、転がり状態の間転がるために地面と接触する請求項26記載の履物の装置。
【請求項29】履物のアイテムであって:つま先部、アーチ部およびヒール部を有するソールを備えていて、ヒール部はソールのヒール部の一部分に形成された開口部を有していて;
ヒール部の開口部に保持された転がり手段を備えていて、転がり手段は、使用の際、転がらないモードにおいて、履物のアイテムの地面との本質的な接触がソールのつま先部によってなされ、また、転がりモードにおいて、転がり手段は、地面上で転がることを使用者に可能にするように地面との本質的な接触を提供するように配置されているのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、転がりモードにおいて転がり手段以外の部材は地面と接触せず、また、履物のアイテムは前記転がり手段以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物のアイテムを転がすための転がり手段は全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていず、モードの切り換えは、つま先部から転がり手段への使用者の体重の移動によって実行され、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な履物のアイテム。
【請求項30】地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、アーチ部を有し、およびソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有するヒール部を有し、第1のセグメントと第2のセグメントとを有する軸を備え;および軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に回転可能に設けられた車輪を備え、軸に回転可能に設けられた車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように装置に結合されていて、装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は実質的に全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない、また、ソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な装置。
【請求項31】軸に回転可能に設けられた車輪は、開口部内に存在する車輪の第1の部分が、開口部の下方に存在する車輪の第2の部分より大きいようにソールのヒール部の開口部内に設けられている請求項30記載の装置。
【請求項32】第1の精密ベアリングと;
第2の精密ベアリングとをさらに備えていて、軸に回転可能に設けられた車輪が第1の凹部を有する第1の側部と第2の凹部を有する第2の側部とを有し、第1の精密ベアリングが車輪と軸との間で第1の凹部に設けられていて、第2の精密ベアリングが車輪と軸との間で第2の凹部に設けられている請求項30記載の装置。
【請求項33】装置は、ソールのヒール部の一部分が地面と接触して、人がヒールブレーキ状態に変移するためにさらに操作可能である請求項30記載の装置。
【請求項34】ソールのアーチ部に隣接して結合された摺擦板をさらに備えた請求項30記載の装置。
【請求項35】軸の第1の部分と軸の第2の部分との間の軸に設けられた回転可能な車輪は、履物のソールのヒール部に配置された軸に設けられた1つ以上の車輪としてさらに規定されている請求項30記載の装置。
【請求項36】地面上で使用するための装置であって、この装置は、歩行状態または走行状態からヒール転がり状態に変移するために人の足に装着可能であり、この装置は:前部、後部、上方部、およびソールを有する履物を備え、このソールは;
歩行状態と走行状態の間地面と係合するためのつま先部を有し、このつま先部は歩行状態と走行状態において地面上の転がり用には操作されないものであり、アーチ部を有し、およびソールのヒール部の少なくとも一部分に形成された開口部を有するヒール部を有し、少なくとも第1の係合可能なセグメントを有する軸を備え;およびこの少なくとも第1の係合可能なセグメントに隣接する軸に取着された少なくとも1つの車輪を備えていて、軸に取着された少なくとも1つの車輪は、第1の部分、第2の部分を有していて、車輪の第1の部分が履物のソールに形成された開口部内に存在するように、また、車輪の第2の部分が履物のソールに形成された開口部の下方に存在するように係合可能なセグメントを介して装置に結合されていて、装置は、人が、歩行状態または走行状態から、軸に回転可能に設けられた少なくとも1つの車輪が転がるために地面と接触するヒール転がり状態に変移することを可能にするために操作可能であるのに対して、ソールのつま先部は地面の上方に持上げられていて、ヒール転がり状態において車輪以外の部材は地面と接触せず、また、履物は前記車輪以外の部材が地面と接触した場合にブレーキ状態になり、さらに、履物を転がすための車輪は実質的に全てヒール部に設けられていてつま先部には設けられていない、またソールのつま先部は、地面上を走行、歩行、停止する為のものであり、転がらないモードに変移した時、ソールのつま先部の地面接触部は一般にソールの第1の側から第2の側に延び、地面と本質的な接触がなされた時に、ソールのつま先部を使用して走行、歩行、停止することが可能な装置。
【請求項37】車輪は、外形を有していて、車輪の第2の部分は、車輪の外径の半分に等しいか半分より小さい量だけ、履物のソールのヒール部の最も低い位置の下方に存在する請求項36記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】関連する出願との関係
合衆国法典(U.S.C.)第119条(e)にしたがって、この出願は、ここで参照してあらゆる目的のために取り込む発明者アール アダムス(R.Adams)の名前で表題「ヒーリング装置およびヒーリング方法」として1999年4月1日に出願された出願番号第60/127、459号の予備特許出願の利益を請求する。
【0002】発明の技術的分野
本発明は、一般的に履物(footwear)の分野と活動的なスポーツに関し、特にヒーリング装置とその方法に関する。
【0003】発明の技術的背景
活動的すなわち過激なスポーツは、例えば、スケートボード、スノーボード、インラインスケート、ロッククライミング、およびスカイダイビングがある。最も活動的すなわち過激なスポーツは、費用がかさみ、選択的で、また時として限定された範囲でのみ使用可能な扱いにくい装置を必要とする。この選択および限定された範囲が多くの人には不便であるので、これらの活動は選択的な時間のみにしか楽しむことができない。これは、大きくまとまった時間が、活動のために利用可能なそのような選択的および限定された範囲に移行するために利用可能な場合、時々しか使用されない装置における実質的投資を招く。これらの制限および不便さのために、活動に興味的な多くの時間が少なくなる。
【0004】発明の概要本発明は、上述したような欠点、限定、および問題点を蒙ることがなく、多くの訴える点を有する全く新しいスポーツと活動を作り出すためのまれな機会を与える。上記の点から、装置への大きな投資の必要性なしで、多くの位置付けおよび条件において遂行できる新しい活動すなわち激しいスポーツ用に、ヒーリング装置(heeling apparatus)と関連する方法のための必要性が生ずることを理解してほしい。
【0005】本発明の1つの態様によれば、車輪装置(wheel assembly)を収容するために、ソール(sole)のヒール部のようなソールに開口部を有する履物を備えたヒーリング装置と、履物のソールの開口部に配置された車輪装置とが提供される。車輪装置は、軸(axle)と、軸に設けられた車輪と、軸を支持するために操作可能な装着構造部(mounting structure)とを有する。これに替わる実施例において、車輪装置は、装着構造部を必要としないで軸に設けられた車輪のみを有する。他の実施例において、装着構造部は、履物のソールの開口部の一部分として一体にされるかまたは含まれている。
【0006】本発明の他の態様によれば、ヒーリング装置の車輪装置に使用される車輪と軸の装置は、車輪と、第1のベアリングと、第2のベアリングと、軸とを有して提供される。車輪は、軸開口部と、軸開口部を第1の側部で取り囲む車輪の第1の側部における第1の環状の凹部と、軸開口部を第2の側部で取り囲む車輪の第2の側部における第2の環状の凹部とを有している。第1のベアリングは、車輪の第1の側部で第1の環状の凹部に配置されていて、第2のベアリングは、車輪の第2の側部で第2の環状の凹部に配置されている。軸は、車輪が、第1のベアリングと第2のベアリングによって軸に結合されるように、車輪の軸開口部内に配置されている。
【0007】本発明のさらに他の態様によれば、地面上でヒーリング装置を使用するための方法は、ヒーリング装置のソールのつま先部(forefoot portion)が地面と接触するように使用することによって走行し、ヒーリング装置の車輪を地面と接触するように使用することによって、ソールの底部より下方に延びたヒーリング装置の車輪が地面と接触して転がることを含んでいる。本発明のさらに他の態様によれば、ソールの底面まで延びた履物のソールの開口部を形成し、車輪装置を履物のソールの開口部に配置するようにしたソールを有する履物を提供するヒーリング装置を製造する方法が提供される。本発明は、豊富な技術的利点を提供する。それは、ヒーリング装置が、通常の歩行用の、および走行においてさえも快適な履物として機能し、また、ここでは「ヒーリング(heeling)」としてのみ参照する回転式履物として機能する可能性を有している。
【0008】本発明の他の技術的利点は、例えば、従来の靴、ブーツ、夜会靴、平底靴、サンダル、スリッパ、ひも付き靴、および類似のもののような、実質的に利用可能などのような履物を使用してでも本発明を実行する可能性を有している。従来の履物は、好ましくは、そのような従来の履物のソールのヒール部に開口部を形成するかまたは切除することによって、ヒーリング装置内に組み込まれる。このように、本発明は、通常の使用において従来の履物として外見的に見える従来の履物を使用して実行される。これは、本発明が、外見からして「内密(stealth)」すなわち「秘密(covert)」的活動として実行されることを可能にし、従来の履物を使用して達成される。本発明の好ましい実施例において、従来の運動靴のソールは、車輪を収容するために不恰好な厚底靴をデザインする必要がなく、本発明に使用される。
【0009】本発明のさらなる技術的利点は、摺擦(grinding)すなわち摺動機能性もまた提供するような、SOAPによってなされる摺擦ショー(grind show)のような摺擦ショーに、本発明を他のスポーツアクセサリーとともに実行する可能性を有する。さらに他の技術的利点は、全体的なアエロビック練習を楽しく得られるために本発明を使用する可能性を有している。
【0010】本発明のよりさらに他の技術的利点は、耐久性、信頼性、および機械的強度を依然として呈しながら、回転性と操縦性のための促進された制御の可能性を有している。本発明は、あらゆる種類のジャンプ、スピンおよび操縦の力に耐える可能性を有する苛酷な環境およびきつくて要求的な使用におけるこの耐久性と信頼性を提供する。他の技術的利点は、ベアリングが容易に交換され維持されるように、また、異なったタイプの車輪、ベアリング、および軸が使用者によって所望なように、条件によって指定されるように使用できるような、取り外し可能な車輪と軸の可能性を有している。
【0011】本発明のさらに他の技術的利点は、摩擦適合のようなものによって、車輪装置または装着構造部に容易に挿入されまたは取り外すことができる車輪と軸の装置を有している。他の実施例において、車輪装置、またはヒーリング装置は、引っ込めることが可能な車輪の可能性を有している。これは、使用者に、ヒーリング装置を通常の履物としての使用から、「ヒーリング」用の使用に素早くまた便利に変換することを可能にする。車輪は、ヒーリング装置のソールすなわちヒールの引っ込められた位置から、車輪の少なくとも一部分が回転するようにソールの下方に露出して延びた位置に移動される。挿脱可能な車輪は、組み立て式の軸、ヒンジ式配置、またはばね配置による使用によって、キングピン装置、2重位置付け配置のようないくつもの数の設計、および/または、構成を使用して実行される。他の技術的利点は、以下の図面、記述、および請求の範囲からこの分野の当業者にとって容易に明らかになる。
【0012】発明の詳細な説明本発明とその利点のより完全な理解のために、添付した図面と詳細な記述に関連させた参照が以下の簡単な記述になされ、類似する参照符号は類似する部品に付されている。最初に、本発明の例示的装置が以下に示されているが、本発明は、現在知られているか存在している技法、材料、デザイン、及び構成のいくつもの数を使用して装備できることを理解しなければならない。本発明は、ここで示され述べられた例示的デザインと装置を含み、以下に示された例示的装置、図面、及び技法、に決して限定されるものではない。
【0013】最初に、本発明の複数の例示的装置が以下に示されているが、本発明は、メカニズム、配置、構造、および/または、技法のいくつもの数を使用して装備できることを理解しなければならない。したがって、本発明は、ここで示され述べられた例示的装置、図面、及び技法に決して限定されるように解釈されるべきではない。
【0014】図1は、本発明の一実施例による運動靴12を使用して装着されたヒーリング装置10の側面図である。ヒーリング装置10は好ましくは、履物のソールのヒール部における開口部に設けられた車輪装置を有している。例えば、運動靴12は、ソール14のヒール部18の底部に開口部を有していて、その孔内には、車輪16がソール14の底部より下方に延びるような車輪装置が設けられている。車輪装置は好ましくは、軸(図1には示されていない)に回転可能に設けられた車輪16のような、少なくとも1つの車輪を有している。軸に設けられた車輪16は、好ましくは、車輪16の部分がソール14のヒール部18の下方に延びるように軸を支持するために操作可能な装着構造部(図1には示されていない)によって、ソールの開口部に配置されている。
【0015】距離24として規定されたソール14の下方へ延びる車輪16の部分の量すなわち長さは、好ましくは車輪16の直径よりも小さい。しかしながら、距離24は、車輪16の直径よりも大きいか、小さいか、あるいは等しくともよい。ほとんどの履物がそうであるように、運動靴12は、ソール14と上方部26を有するように全体的に述べられる。上方部26は、例えば、レザー(leather)、プラスチック、またはカンバス(canvas)のような実質的にどのような材料によっても構成できる。ソールは、(1)内側のソールすなわち内側ソール(insole)(図1には示されていない);(2)中間ソール(midsole)28;および(3)外側のソールすなわち外側ソール(outsole)30の3つの部分を有している。内側ソールは、取り外し可能か、または、取り外しできない付属クッションを有していてもよい。いくつかの実施例において、内側ソールは、スコール博士(DR.SCHOLL)の内側ソールのような取り外し可能な部分と、運動靴12に取着されて残っている部分とを有している。外側ソール30は、好ましくはゴムのような耐久性の材料で形成されていて、付加的な牽引力(traction)を提供するために凹凸(knobby)を有するような織り目(texture)表面を有している。中間ソール28は、全体的に軟らかいすなわち「クッション性」の材料で構成されていて、また、全体的に内側ソールおよび外側ソール30よりも厚い。しかしながら、ある実施例において、ソール14は、平底のレザーソールのような1つの部品のみを有していてもよい。
【0016】他の実施例において、ソール14は、レザーのウィングチップ(wingtip)夜会靴のヒールのような履物を持上げた分離型ヒールブロックまたは対象物を有していてもよい。このヒールブロックまたは対象物は、ソール14のヒール部18の部分と考えられる。本発明は、事実上、ソール14のデザインまたは仕立てに無関係にどのような履物にも実行されることを理解しなければならない。履物の多くのスタイル、または、履物の多くの製造方法がこの分野で知られていて、また、この分野の通常の当業者によって知られている。例えば、米国特許第4、245、406号、5、319、869号、5、384、973号、5、396、675号、5、572、804号、5、595、004号、および5、885、500号があり、あらゆる目的のためにこれらをここで参照して取り込むが、これらは、履物の多くのスタイル、または、履物の多くの製造方法に関する多くの背景情報を提供している。
【0017】運動靴12を含む多くの履物において、ソール14はまた、図1に示されたように、(1)ヒール部18、(2)アーチ部20、および(3)つま先部22の3つの部分すなわち領域に分割される。ソール14のヒール部18、アーチ部20、およびつま先部22は正確に規定し位置付けることはできず、また、それらの部分は、ある履物タイプから他の履物タイプに変わる。このように、ヒール部18、アーチ部20、つま先部22同士の位置付け、それらの間の境界、および寸法は極めて概略的なものである。
【0018】ソール14の底部の開口部の位置、およびそれ故車輪16は、好ましくはソール14のヒール18部分に設けられているけれども、そのような開口部は、ヒール部18とアーチ部20との境界、アーチ部20、あるいはソール14の実質的に他のどの部分にでも配置されることもまた理解しなければならない。ソール14の底部の開口部は、例えば、ソール14を完全に通って、例えば、外側ソール、中間ソールおよび内側ソールを通って延びているか、または、ソールの一部分のみを通って、例えば、外側ソール、および中間ソールの一部分または全体を通って延びていてもよい。
【0019】車輪16は、例えば、ウレタン、プラスチック、ポリマー、金属、合金、木、ゴム、混合材料および類似のもののような実質的に公知すなわち利用可能な材料で構成され形成される。これは、例えば、アルミニューム、チタン、鋼、および樹脂を含んでいてもよい。材料は好ましくは、耐久性があり、静音仕上げであって、また「柔軟な」または「クッション性の」感触になるように提供される。1つの実施例において、車輪16は、精密ベアリングがそれ自身で車輪16そのもののようになるような1つまたはそれ以上の精密ベアリングとして装着されてもよい。さらに他の実施例において、車輪装置は、誰かがヒーリング装置10を装着して歩いた場合のように、車輪が地面と接触し力が地面の方向へ運動靴12に加わった場合に付加的なクッションすなわちサスペンションを提供するために、例えば、板ばねのようなばねすなわちサスペンションを有していてもよい。ばねは、好ましくは車輪装置の中間ソールの部分として設けられる。さらに他の実施例において、車輪16は、ウレタンタイヤのような外側のタイヤで取り囲まれた硬質内側コアのような内側のコアを有する2部品車輪を備えている。
【0020】所望の装置に応じて、車輪16と軸とは車輪装置から取り外し可能である。そのような場合において、破片(debris)や土砂(dirt)が開口部に入らないようにするために開口部を覆うために、ソール14の開口部に取り外し可能なカバーが設けられる。取り外し可能なカバーは、この分野の当業者によってすでに確認可能な実質的にどのような利用可能な構成にでも設けられる。取り外し可能なカバーの1つの実施例において、取り外し可能なカバーの軸部分は、車輪16が車輪装置の装着構造部に適合し、および/または、結合して設けられる軸と同一のまたは類似の方法で、装着構造部に適合し、および/または、結合する。工具もまた、軸と車輪16との取り外しを容易にするために用いられる。この工具は、好ましくは、ヒーリング装置10のどのような調整も可能にするために小型で複数の機能を有していて、ねじ回し、レンチ、および類似のものである。ヒーリング装置の他の実施例において、車輪16は、ソール14の開口部内に伸縮自在である。このように、車輪16は、ソール14内に引っ込められ、それ故、ソール14の底部の下方へ延びていない。これは、ヒーリング装置10が、運動靴12のような通常の履物とまったく同様に機能することを可能にする。
【0021】本発明の一実施例において、車輪装置は軸を有していず、またほぼ間違いなく装着構造部がなく、また、車輪16はソール14のヒール部18の底部の開口部に回転可能に配置されたステンレススチールのボールベアリングのような球形であって、その一実施例は図13に示されている。他の実施例においては、車輪装置は、ソール14が軸を支持し、また、車輪がソール14の開口部の軸に回転可能に設けられるように、ソール14のヒール部18を完全に通ってまたは部分的に通って配置された軸を有している。このように、装着構造部の必要性は除去される。
【0022】操作において、ヒーリング装置10を装着した人は、車輪16のみまたはほとんど車輪16のみが地面と接触するように、ソール14を持上げることによって、通常に歩行するかまたは車輪16で転がることができる。この動作は、「ヒーリング(HEELING)」または「ヒール(HEEL)」として参照される。本発明の所望の装置に依存して、車輪16は取り外されるか、または、車輪16がソール14の底部より下方に延びない位置に引っ込められる。これは、一般的に、ヒーリング装置10が、関連した履物のように作動する結果となる。車輪16が取り外されるか引っ込められた場合、取り外し可能なカバーは、破片が開口部から侵入し車輪装置を潜在的に損傷するのを阻止するために、ソール14の底部の開口部を覆って配置される。さらに他の実施例において、歩行するのを補助するために車輪16の一部分がソール14の底部の下方に延びたままになっているので、取り外し可能なカバーは、車輪16を覆うように配置されるが、この例は図12に示されている。
【0023】しかしながら、車輪16が上述したように取り外されるか引っ込められない場合であっても、車輪が延びているにもかかわらず、使用者は依然として快適に歩いたり走ったりすることを理解しなければならない。これは、ヒールのために「内密の」すなわち「秘密の」態様を提供するように、距離24が最小にできるので通常起きる。これはまた、ヒーリング装置10のソール14の開口部すなわち孔で車輪が回転することとなる。1つの実施例において、距離24は、車輪16の半径よりも小さく、その結果、車輪のほとんどがソール14の開口部内に存在する。
【0024】図2Aと2Bは、ヒーリング装置10のソール14の2つの実施例の底面図である。特に、外側ソール30すなわちソール14の底部は図2Aに示されていて、ソール14のヒール部18に開口部40を有している。図示された実施例において、開口部40は正方形または矩形の形状を有している。しかしながら、開口部40は、例えば、円形または楕円形の形状のような、実質的にどのような形状でもよい。
【0025】上述したように、開口部40は、ソール14を部分的にまたは完全に通って延びていてもよい。開口部40はヒールブロックまたは対象物を通って設けられる。さらに、開口部40は、ヒール部18、アーチ部20、およびつま先部22の近傍に、あるいはそれらの組み合せに配置される。図2Bは、開口部40の位置付けと形状についての第2の実施例を示している。外側ソール30は、ソール14のヒール部18に開口部40Aと開口部40Bとを有して示されている。このように、1つまたはそれ以上の軸を有する1つまたはそれ以上の車輪は、開口部40Aと40Bの両方に配置されている。
【0026】図3Aと3Bは、図2Aと図2Bに示されたソール14の実施例の底面図であって、ソール14の各開口部の車輪を示している。これは、図3Aの開口部40に配置された車輪42と、図3Bの開口部40Aと40Bに各配置された車輪42Aと42Bとを有している。車輪42と、車輪42Aおよび42Bとは、円筒状の車輪として示されている。しかしながら、これらの車輪は、実質的に利用可能などのような形状で設けられてもよい。さらに、1つまたはそれ以上の車輪が各開口部に配置され得る。
【0027】図3Aはさらに、軸50と取り外し可能に結合するために使用される装着構造部の第1の部材48と第2の部材54とを有する車輪装置の他の要素を示している。軸50は、車輪42が軸50と回転可能に結合されまたは設けられるように、車輪42を通って延びている。これは、好ましくは、車輪42の両側環状凹部のような凹部に設けられた高級仕上げ精密ベアリングのような精密ベアリングを使用している。第1の精密ベアリング56と第2の精密ベアリング58とは、ABEC等級の精密ベアリングで、隠れ線で示されていて、車輪42の第1の凹部と第2の凹部とに配置されている。これに代わる実施例において、緩い(loose)ボールベアリングが使用される。
【0028】軸50は、少数の名を挙げれば、強度および重量のような適切な物理特性を有するどのような材料ででも形成できる。軸50は、好ましくは、硬化された鋼で形成されていて、円筒状の形状であって、各端部は丸められていて、装着構造部の第1の部材48と第2の部材54とが各取り外し可能に結合されている。好ましい実施例において、球形のすなわちボールベアリングは、好ましくは移動可能なスプリング、および/または、ねじ偏倚を使用して接触するようにされ、そして一方または装着構造部の部材と軸50との間に側壁力をおよぼすために使用される。
【0029】ヒーリング装置10の使用者の体重が大きな下方への力をおよぼし、大地すなわち地面もそれに等しい上方への力をおよぼすので、軸50それ故車輪42は、通常適切な位置内に強制されるということもまた注目すべきである。ヒールが地面から持上げられた場合のみ、ある力すなわち摩擦が軸50を適切な位置に保持するために要求される。このように、本発明は、軸50と車輪42とを適切な位置に保持するために大きな側方力を必要としない。この事実の認識は、開示された実施例用の本発明の態様と考えられる。この認識は、最適にデザインされた軸50と、第1の部材48および第2の部材54との間の取り外し可能な結合を可能にする。
【0030】図3Aはまた、本発明のヒーリング装置10とともに使用される摺擦板44(摺動板44としてもまた参照される)を示している。摺擦板44は、使用者が、ハンドレール、縁石、段差、角部、およびそれに類するような種々の表面を「摺擦する(grind)」すなわち「摺動する(slide)」ことを可能にするための、滑らかなまたは比較的滑らかな面を有している。摺擦板44は、好ましくはある程度薄くて、プラスチックまたはポリマー材料で形成されている。好ましい実施例において、摺擦板44はソール14の外側ソール30のアーチ部20に取り外し可能に取着されている。摺擦板44は、例えば、摺擦板44の周面の種々の位置に示されたファスナー46のような、どのような公知のまたは採用可能なファスナーを使用して取着されてもよい。
【0031】図3Bはさらに、車輪42Aと車輪42Bとが、開口部40Aと開口部40B内で各両端部に結合された軸52を示している。軸52は、図3Bでは見えないが、車輪42Aと42Bの両方を通って、また、ソール14の部分を通って延びている。これは、軸52を支持するのに役立ち、ソール14が車輪装置の装着構造部として役立つ位置を示す。これは全体の部品点数を減少する。これに代わる実施例において、金属または他のいくつかの適切な材料が、軸52が付加的な支持と安定性を与えるために配置されたソール14のヒール部18内で使用される。これは、装着構造部がソール14内に事実上一体にされた例である。この分野の当業者は、本発明がいくつもの方法で装着されることを理解してほしい。
【0032】図4は、軸62に回転可能に設けられた車輪60の斜視図であって、本発明の一実施例によって車輪装置またはヒーリング装置に使用するための車輪と軸の装置としてもまた参照される。車輪60と軸62はまた、車輪と軸の装置400として参照される。この実施例において、軸62は、車輪60を通って延びていて、丸められたまたは弾丸のような2つの端部を有する。精密ベアリング64は、軸62の周りでの車輪60の回転を容易にするために、車輪60の環状の凹部として示された凹部内に配置されて示されている。図4には示されていないけれども、そのような回転を容易にするために、好ましくは第2の精密ベアリングが第2の凹部に配置されている。
【0033】スリップクリップ、スリップリング、またはリングクリップ66は、精密ベアリング64の近傍で軸62の周りに、または周りの近傍に配置して示されている。これは、精密ベアリング64が車輪60の凹部の適切な位置に維持するのを確実にするのに役立つ。スリップクリップまたはリングクリップ66は、好ましくは、軸62のラジアル(radial)溝またはラジアル凹部のような溝を通って軸62に配置されている。しかしながら、精密ベアリング64を適切な位置に留まらせるのを確実にするために、この分野の通常の知識を有する者が、他の多くの配置のいずれかを使用することが理解されなければならない。これに替わる実施例において、精密ベアリング64は除去され、または緩いベアリングが使用される。
【0034】これに替わる実施例において、軸62に回転可能に設けられた車輪60は本発明の車輪装置として役立つ。そのような場合において、軸62は、その端部で中間ソールおよびヒール部のようなソールに設けられているので、車輪60はソールの開口部に回転可能に設けられている。このように、装着構造部の必要性は除去されたものと考えられるか、またはこれに替わって、装着構造部は履物のソール内に一体として考えられる。
【0035】図5は、車輪装置を形成するために、図4に示されたような、軸に回転可能に設けられた車輪を有して使用するための装着構造部70の斜視図である。装着構造部70は、全体的にヒール制御板72、第1の部材74、および第2の部材76を有している。これに替わる実施例において、板ばねのようなばねが、2つの部材がヒール制御板72と接触する場所に設けることができる。これは、より大きいクッションとサスペンションの付加的利点を提供する。2つの部材は、軸の端部を受けるために、第1の部材74の開口部78のような開口部を有している。開口部は、実質的にどのような形状にでも設けることができることができるが、それは、部材を通って延びているか、部材の異なった位置に配置されているか、引っ込み可能な位置と延びた位置とで車輪と軸の装置400を設けるための複数の位置でさえも有している。
【0036】第1の部材74と第2の部材76の開口部に配置されるべき軸は、好ましくは取り外し可能に結合されている。これは、本発明の目的内に入るいくつもの配置または構成によって達成される。そのような配置の1つは、第1の部材74に設けられたねじ/ばね/ボールベアリング装置80である。この配置は、軸が開口部78内に挿入された場合におよぼされる調整可能な偏倚または力を提供する。ねじは、使用者によってアクセス可能でありまた調整可能である。ねじの回転はばねの圧縮に影響をおよぼし、次いで、開口部78内に延出したボールベアリングに力を与える。軸が開口部78内に挿入された場合、ボールベアリングはかなり移動され、ねじ/ばね/ボールベアリング装置80は、軸が取着されるのを可能にする側方力を提供するが、依然として取り外し可能である。同様の配置は、第2の部材76にも設けられ、軸62の他方の端部に嵌合または結合する摩擦を提供する。
【0037】図5のねじ/ばね/ボールベアリング装置80は、第1の部材74の水平開口部を通って装着されているように示されているが、これは、その部材の実質的な方法で整列された開口部を使用して装着される。例えば、ねじ/ばね/ボールベアリング装置80の張力または圧力の調整は、通常はねじ頭部の端部であるが、ねじ/ばね/ボールベアリング装置80の露出した端部が、図5の参照符号74用の参照線が第1の部材74を接触する所に設けられるように、対角線状の開口部を通って達成されてもよい。これは、図6に示された車輪装置100ような車輪装置が、ヒーリング装置を形成するためにソールの開口部内に係合されまたは配置される場合に、軸に適合した張力と摩擦を調整するためのより容易なアクセスを提供する。
【0038】装着構造部70は、実質的にどのような材料からでも形成でき、一般的に、例えば硬度および強度のような所望の機械的特性に依存する。これらの材料は、例えば、プラスチック、ポリマー、金属、合金、木、ゴム、混合材料、および類似のものを含む。これは、アルミニューム、チタン、鋼、および樹脂を含んでいてもよい。一つの実施例において、装着構造部70は、アルミニュームのような金属で形成されていて、装着構造部70が黒い色または色合いを呈するように陽極処理されている。
【0039】図6は、車輪装置100の底面図で、図4に示されたような軸62に回転可能に設けられた車輪60と、図5の装着構造部70を有している。第1の部材74と第2の部材76は、ねじ/ばね/ボールベアリング装置80のような偏倚機構を使用して装着された偏倚機構によって、軸62の端部と各取り外し可能に結合する。ボールベアリング102は、開口部内で軸62の一方の端部と接触して示されている。さらに、リングクリップ66のようなスリップクリップまたはリングクリップ(スナップリングまたはスリップリングとしてもまた参照される)は、車輪の凹部に配置された精密ベアリングが定位置に配置されるのを確実にするために設けられている。ヒール制御板72は、ヒーリング装置の使用者が、ヒーリング装置を用いてよりよい制御とより大きな達成とを得ることを可能にする。
【0040】図7は、ヒーリング装置120を形成するように開口部の上方でそこを通って配置された車輪装置100の側面図である。ヒール制御板72は、ヒーリング装置120のよりよい取り扱いと達成を提供するため、所望により使用者のヒールがヒール制御板に圧力を適用するように靴の内側にある。
【0041】図8A、図8B、図8Cおよび図8Dは、本発明の種々の実施例に使用される車輪の表面輪郭を示す種々の車輪の輪郭図である。図8Aにおいて、車輪202は平坦なすなわち四角形の表面輪郭すなわち外径輪郭204を有して示されている。図8Bにおいて、車輪206は反転して凹んだ(inverted)表面輪郭208を有して示されている。図8Cにおいて、車輪210は丸い球形の表面輪郭212を有して示されている。最後に、図8Dにおいて、車輪214は急勾配(steep)の表面輪郭216を有して示されている。本発明は、実質的に車輪の利用可能などのような表面輪郭形状をとることもできる。
【0042】図9は、ヒーリング装置の車輪装置に使用するための他の実施例の装着構造部500を示す斜視図である。装着構造部500は、軸502を有していて、この軸は部材を通って延び、部材を通って設けられた一方の軸と考えられ、または、軸502の反対で部材506と結合する軸504とともに部材506と結合する軸502として考えられる。装着構造部500は、車輪装置を形成するために設けられた2つの車輪を可能にする。上述して示したように、車輪は、好ましくは精密ベアリングを使用して軸502に回転可能に設けられ、また、車輪は、好ましくは同様に精密ベアリングによって軸504に回転可能に設けられている。
【0043】軸502と軸504とは、ロックナット510のようなナットが車輪を各軸に取着するように、ねじが切られた部分を有している。他の実施例において、軸の端部は、図示されたような外側のねじ山に対して内側のねじ山を有していて、ねじは、図10に示されたような六角ねじ(hex screw)である。軸と部材との間に実質的にどのような結合手段でも適用できることを理解しなければならない。
【0044】図10は、ヒーリング装置に使用するために、さらに他の実施例を使用する車輪装置520を示す斜視図であって、精密ベアリング526を使用して軸524に回転可能に設けられた車輪522と、六角ねじ532のようなねじによって軸524の各端部に結合された第1の部材528と第2の部材530を有する。車輪装置520は、車輪と軸の装置が容易に挿入できずまた取り外せないことを除いて、図6に関連して上述した車輪装置100と類似のものである。
【0045】図11は、一部を切り欠いた側面図であって、ソール604に設けられた車輪装置602と、ソールを完全に通って延びていないソールの開口部606を示すヒーリング装置600の一実施例を示している。そのようなものとして、装着構造部608はソール内に設けられすなわち統合されていて、容易にまたは簡単に取り外せない。車輪610はまた、ソール604の底部の下方に部分的に延びて示されていて、これは、秘密のヒールの利点を提供する。
【0046】図12は、本発明のヒーリング装置620を示す他の実施例の側面図であって、ソール628の車輪624と開口部626を覆うために配置された取り外し可能な車輪カバー622を有している。取り外し可能な車輪カバー622は、車輪が延びた位置すなわちソール628の底面の下方に設けられるが、回転のための地面との接触がないことを可能にする。本発明のヒーリング装置620は、車輪が係合された位置においてさえ使用者が歩行することと走ることとを可能にするが、取り外し可能な車輪カバー622は、土砂および破片から保護しより大きな安定性を提供する。
【0047】他の実施例において、図12には明確に示されていないが、車輪624の回転を停止するために、取り外し可能な車輪カバー622に替わって、またはそれと一緒に車輪停止部が設けられてもよい。一つの実施例において、車輪停止部は、スポンジまたは可撓性の材料のような実質的にどのような材料で形成されてもよく、それは、車輪624を停止し車輪624の回転を阻止して摩擦によって所定の位置に留めるために、車輪624と開口部626との間にくさび止めされている。
【0048】車輪カバー622の他の実施例において、車輪カバーは、車輪624がヒーリング装置620から取り外された場合に設けられる。好ましい実施例において、この車輪カバーは、ソール628の底部の残りの部分とほぼ同一平面をなしていて、それ故、所望な場合に規定の靴の機能を提供し開口部を保護する。この車輪カバーは、適用可能などのような方法でも結合するが、好ましくは、車輪と軸の装置が装着構造部に結合されるのと同一かまたは類似の方法で車輪装置に結合される。取り外し可能な車輪カバーは、多くの異なった方法で車輪装置にクリップすなわち取着される。
【0049】図13は、車輪のような働きをし、ソール706のヒール部の開口部内の装着構造部704に配置された球形のボール702を有するヒーリング装置700の他の実施例示す底面図である。
【0050】図14は、本発明を「ヒール」に使用した「ヒール人間(heeler)」800を示す透視図である。ヒーリングは、種々の技法を使用して達成することができ、また一般的に、バランス、位置決め、柔軟性、および協調性のセットの能力を必要とする。地面にヒーリング装置を使用するために開示された方法は、地面と接触するためにヒーリング装置のソールのつま先部を使用することによって地面を走り、それにより、地面に接触するヒーリング装置の車輪を使用することによって、ソールの開口部を通ってソールの底部の下方に延びたヒーリング装置の車輪で地面を転がることを含んでいる。地面を走る(走行する)のに先立って、この方法は、ヒーリング装置のソール部分の底部の下方へ延びたヒーリング装置の車輪を有するヒーリング装置を装着しているけれども、地面を歩行することを含んでいる。
【0051】このヒーリングの方法はまた、歩行するのに先立ってヒーリング装置のソール部分の底部の下方に延びたヒーリング装置の車輪を地面に係合することを含んでいる。この方法はまた、ヒーリング装置の車輪を係合する前に、引っ込められたヒーリング装置の車輪を有したヒーリング装置を装着しているけれども、地面を歩行することを含んでいる。この方法の他の変形は、転がっている地面の直ぐ後の地面と接触するために、ヒーリング装置のソールのつま先部を使用することにより地面上を走行することによって、地面上の転がりから、走行すること、歩行すること、または停止することのいずれかへの変移を含んでいる。
【0052】ヒーリングの間の好ましい位置は、図14のヒール人間によって示されていて、一方のヒーリング装置802が、地面上を転がっている他方のヒーリング装置804の前方に位置している。ヒーリング装置802の後部ヒール部806から分かるように、後部ヒール部806と地面との間の間隙は時として小さい。その結果、好ましい実施例において、後部ヒール部806は耐磨耗性の材料で形成される。ヒーリングの方法はまた、遅くしたり停止したりする多くの技法を実行する。例えば、回転は摩擦を生じ、また、地面から車輪を離すためにヒーリング装置のソールのつま先部を地面と接触することによって遅くされる。他の例は、ヒーリング装置のソールのヒール部分を地面と接触することによって遅くすることを含んでいる。
【0053】図15は、組み立て式(collapsible)の軸904に回転可能に設けられた車輪902を示す斜視図であって、図4と類似した車輪と軸の装置900として同様に参照される。組み立て式の軸904は、図16に示されたのと同様のばね負荷またはねじ組み立て式の軸のような、どのような方法によっても装着される。これは、車輪と軸の装置900がヒーリング装置に装着された場合、車輪が地面と係合しない位置で、より容易に取り外し可能に、および/または、挿脱可能になることを可能にする。
【0054】図16は、ばね負荷組み立て式の軸904として装着された図15の車輪と軸の装置900の組み立て式の軸904を示す断面図である。図示されたように、組み立て式の軸904は、内部ばね力に打ち勝つために組み立て式の軸904の両端部を内側に圧縮することによって調整されまたは縮小される。
【0055】図17は、車輪装置を形成するために、図15と図16に各示されたような車輪と軸の装置900、および組み立て式の軸904とともに使用するための他の装着構造部920を示す斜視図である。組み立て式の軸904は、車輪が引っ込められた位置にあるように、第1の位置926で第1の部材922と第2の部材924に結合される。組み立て式の軸904はまた、車輪が延びた位置にあるように、第2の位置928で第1の部材922と第2の部材924に結合される。
【0056】図18は、キングピン装置または2重キングピン装置として参照されるような、アセンブリを使用した挿脱可能な車輪948を提供するための装着構造部946に結合する軸944の一実施例を示すソール942の開口部を通って配置された車輪装置940の切欠き側面図である。キングピン950(ねじまたはボルトとして装着される)は、装着構造部946の部材のねじが切られた開口部にねじによって係合されて示されている。キングピン950が部材の開口部内にさらにねじ込まれるのにつれて、軸944はさらに引っ込められる。キングピン950は、軸944の他方の側を持上げるために他方の部材にもまた設けられている。図9の装着構造部500のような他の実施例において、部材と軸との結合によって挿脱可能な車輪を提供するために、単一のキングピンが単一の部材を通って設けられることができる。
【0057】キングピンタイプの装置の例は、1979年7月18に出願され、1981年10月20日にデービッド エル ランディ(David L.Landay)他に発行された米国特許第4、295、655号に示されているが、あらゆる目的のためにここで参照して取り込む。この特許は、本発明の実施例に装着できるようなキングピンタイプのアセンブリを示している。
【0058】図19は、図18の車輪装置940を示す底面図であって、装着構造部946の部材を通った2重キングピン配置とキングピン950とをさらに示している。
【0059】図20は、装着構造部946の一方の部材を示す側面図であって、図18と同様の2重キングピン配置を使用した軸944の装着構造部946への結合をさらに示している。上記で述べたように、これは、軸944、それ故取着された車輪が、所望のレベルに、また引っ込められた位置から延びた位置に変移されることを可能にする。
【0060】軸は、どのような利用可能な技法によってでも、また実質的に限定されない多くの方法を使用して、装着構造部の部材に結合されることを理解しなければならない。例えば、軸は、ばねの配置によって引っ込んだ位置から延びた位置に移動するための装着構造部の第1の部材および第2の部材と結合してもよい。同様に、軸は、ヒンジの配置によって引っ込んだ位置から延びた位置に移動するための装着構造部の第1の部材および第2の部材と結合してもよい。
【0061】他の多くの例が可能であり、例えば、全ての目的のためにここで参照して取り込むが、1975年5月23日に出願され、1976年10月5日にウォルターシュレーヤー(Walter Schreyer)他に発行された米国特許第3、983、643号は、本発明の一実施例に装着され得る挿脱可能な機構を示している。全ての目的のためにここで参照して取り込むが、1997年6月20日に出願され、1998年7月28日にレイモンド ジェー ギャラント(Raymond J.Gallant)に発行された米国特許第5、785、327号は、同時に挿脱可能な車輪を示している。
【0062】図21は、本発明において使用されるような、内側のコア972、ウレタン車輪のような外側のタイヤ974、軸976(スキル(skill)のために示されない)、および、ベアリング978を有する2部品車輪970を示す分解斜視図である。好ましい実施例において、ベアリング978は、2部品車輪970と比較して小さく、例えば、ベアリング978は、外側のタイヤ974の外径の半分よりも小さい外形を有している。これは、より軟らかい支承(ride)、よりよい制御、およびより長い永続性を有するような優れた利点を提供する。これは、外側のタイヤ974がより大きく、またより厚い理由である。他の実施例において、ベアリング978は、比較的大きく、また、外径は外側のタイヤ974の外径の半分よりも大きい。好ましい実施例において、2部品車輪の内側のコア部分は、集約されたベアリング支持部用に硬さを提供する比較的硬い材料で形成されているのに対して、外側のタイヤ部分は、改善された動作とより静かな支承のために、やわらかいウレタンのような比較的軟らかい材料で形成されている。これらのタイプの車輪は、「2重硬度計(dual durometer)」タイプの車輪として参照される。
【0063】このように本発明によれば、上記で述べたような利点の1つまたはそれ以上を満足する新規な活動とスポーツを規定するヒーリング装置と方法が提供されることが明らかである。好ましい実施例が詳細に述べられたけれども、上述した利点の全てが存在しなくとも、本発明の目的からそれることなく、多くの変更、置き換え、および交換がなされることを理解しなければならない。例えば、ここで図面に示された種々の実施例は、本発明が、異なった方法で装着され実行されるであろうことを示しているが、依然として本発明の目的内に入るものである。同様に、別個のすなわち個別の好ましい実施例においてのべられ示された、技法、デザイン、部材、および方法は、本発明の目的からそれることなく、他の技法、デザイン、部材または方法と組み合わされすなわち集合される。例えば、車輪装置は、履物のソール内で取り外し可能にまたは一体にできる。本発明は、ヒールの開口部に配置された1つのみの車輪について主として述べられてきたが、本発明は、ヒールの開口部に配置される複数の車輪を確実に意図しカバーする。他の変形例、置き換え、および交換は、当業者にとって容易に確かめ得ることであり、本発明の目的と精神からそれることなくなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にしたがって、運動靴に使用して実行されたヒーリング装置を示す側面図。
【図2A】ソールに開口部を有するヒーリング装置のソールの一実施例を示す底面図。
【図2B】ソールに開口部を有するヒーリング装置のソールの他の実施例を示す底面図。
【図3A】図2Aに示されたソールの実施例の底面図であって、ソールの開口部の車輪を示す図。
【図3B】図2Bに示されたソールの実施例の底面図であって、ソールの開口部の車輪を示す図。
【図4】本発明の一実施例による車輪装置に使用され、車輪と軸の装置としてもまた参照される軸に回転可能に設けられた車輪を示す斜視図。
【図5】車輪装置を形成するために、図4に示されたような軸に回転可能に設けられた車輪とともに使用するための装着構造部を示す斜視図。
【図6】図4に示されたような軸に回転可能に設けられた車輪と、図5の装着構造部とを有する車輪装置を示す底面図。
【図7】ヒーリング装置を形成するために、履物の開口部の上方とそれを通って配置された車輪装置を示す側面図。
【図8A】本発明の種々の実施例に使用される車輪の表面輪郭を示す車輪の輪郭を示す図。
【図8B】本発明の種々の実施例に使用される車輪の表面輪郭を示す車輪の輪郭を示す図。
【図8C】本発明の種々の実施例に使用される車輪の表面輪郭を示す車輪の輪郭を示す図。
【図8D】本発明の種々の実施例に使用される車輪の表面輪郭を示す車輪の輪郭を示す図。
【図9】ヒーリング装置の車輪装置に使用するための装着構造部の他の実施例を示す斜視図。
【図10】ヒーリング装置に使用するための、さらに他の実施例に使用する車輪装置を示す斜視図。
【図11】ヒーリング装置のソールに設けられた車輪装置と、ソールを完全には通って延びていないソールの開口部とを示すヒーリング装置の一実施例を示す一部を切り欠いた側面図。
【図12】車輪とソールの開口部とを覆うために配置された取り外し可能な車輪カバーを有する本発明のヒーリング装置を示す他の実施例の側面図。
【図13】車輪のように作用し、ソールのヒール部の開口部の装着構造部に配置された球形のボールを有する本発明の他の実施例を示す底面図。
【図14】本発明を「ヒール」として使用する「ヒール人間」を示す斜視図。
【図15】図4と同様に、車輪と軸の装置としてもまた参照され、軸に回転可能に設けられた車輪を示す斜視図。
【図16】ばね負荷組み立て式の軸として装着された図15の車輪と軸の装置の組み立て式の軸を示す切り欠き図。
【図17】車輪装置を形成するために、図15と図16とに示されたような車輪と軸の装置と組み立て式の軸を有して使用するための装着構造部の他の実施例を示す斜視図。
【図18】キングピン装置として参照される装置を使用した挿脱可能な車輪を提供するために、装着構造部に結合する軸の一実施例を示すソールの開口部を通って配置された車輪装置を示す側面切り欠き図。
【図19】2重キングピン装置をさらに示す図18の車輪装置を示す底面図。
【図20】2重キングピン装置を使用した軸と装着構造部の結合部をさらに示す装着構造部の一部材を示す側面図。
【図21】内側コアと外側タイヤを有し、本発明に使用される2部品車輪を示す分解斜視図。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-01-25 
結審通知日 2006-01-30 
審決日 2006-02-14 
出願番号 特願2000-608897(P2000-608897)
審決分類 P 1 113・ 832- ZA (A43B)
P 1 113・ 113- ZA (A43B)
P 1 113・ 121- ZA (A43B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 川本 真裕
山崎 豊
登録日 2003-12-12 
登録番号 特許第3502044号(P3502044)
発明の名称 ヒーリング装置とヒーリング方法  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 藤沢 則昭  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 哲  
代理人 中村 誠  
代理人 藤沢 正則  
代理人 鈴江 武彦  

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