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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1173027
審判番号 不服2005-24718  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-22 
確定日 2008-02-14 
事件の表示 平成 6年特許願第 60965号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月17日出願公開、特開平 7-265523〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件の出願からの主立った経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成6年3月30日 本件出願
・平成16年7月20日付け 原審にて拒絶理由通知
・同年9月21日付け 意見書及び手続補正書提出
・平成17年4月5日付け 原審にて最後の拒絶理由通知
・同年6月3日付け 意見書及び手続補正書提出
・同年10月27日付け 原審にて平成17年6月3日付けの手続補正を却下
・同日付け 原審にて拒絶の査定
・同年12月22日付け 本件審判請求
・平成18年1月13日付け 手続補正書提出(平成6年改正前特許法17条の2第1項第5号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年1月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的違反
本件補正後の請求項1には、「前記前枠部の下枠板には、第1位置決め孔と第2位置決め孔とが前後方向に貫通して形成され、前記ベース枠のセット板の前面には、前記第1位置決め孔の後方から挿入される第1後位置決め突部と、前記第2の位置決め孔の後方から挿入され且つ前記発射装置の打球杆の支軸を回動可能に支持する軸受けが嵌込み可能であってその先端の外径が縮小された小径部を有するように形成された筒状の第2後位置決め突部が一体状に突設され、前記ベース枠の第2後位置決め突部の筒内に、前記打球杆の支軸の軸受けを嵌込んで組み付けた後、前記前枠部の第1位置決め孔及び第2位置決め孔の後方から前記第1後位置決め突部と第2後位置決め突部とをそれぞれ嵌込むことで、前記前枠部の後側に、前記ベース枠を位置合わせして取り付ける」(下線は当審で付加。)と記載されている。
そして、本件補正前の請求項1には、「位置決め孔の後方から挿入される筒状の位置決め突部」及び「前記ベース枠の位置決め突部は、その筒内に発射装置の打球杆の支軸を回動可能に支持する軸受けが嵌込み可能に形成され」と記載されているように、本件補正前「位置決め孔」は、本件補正後の「第2位置決め孔」に相当する構成であり、本件補正後の「第1位置決め孔」、「第1後位置決め突部」は本件補正前の「位置決め孔」、「筒状の位置決め突部」を限定するものでなく、他に本件補正前には「第1位置決め孔」、「第1後位置決め突部」に対応する構成は見あたらない。さらに、「第1位置決め孔」、「第1後位置決め突部」を追加し複数の位置決め孔、位置決め突部を有することより、「前枠部とベース枠」を適正な位置に合わせことができるとの課題を解決することができるようになったので、「第1位置決め孔」、「第1後位置決め突部」を追加することにより課題が追加されている。
してみれば、本件補正後の「第1位置決め孔」、「第1後位置決め突部」は、本件補正前の構成の事項の「位置決め孔」、「筒状の位置決め突部」を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく、また、本件補正の目的を明りょうでない記載の釈明と解することはできない。そして、本件補正が請求項削除や誤記の訂正を目的とするものでないことも明らかである。すなわち、本件補正は平成6年改正前特許法17条の2第3項各号の規定に違反している。

2.新規事項追加
本件補正後の請求項1及び段落【0004】には、「前枠部の下枠板の前側に下皿が設けられ且つ第1前位置決め突部と凹部を有する環状の第2前位置決め突部とが形成された下皿プレートが取り付けられ」、「下皿が設けられる前記下皿プレート」、段落【0005】及び【0006】には、「下皿を有する下皿プレート」、「下皿が設けられる下皿プレート」と記載されている。
これに対し、出願当初の明細書の段落【0014】には「下皿6には下皿本体6aと、下皿プレート6bと、灰皿6cとが形成され」と下皿に下皿プレートが形成される点が記載されているものの、下皿が設けられる下皿プレートについては記載されていない。
してみれば、当該補正された事項は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、また、当初明細書又は図面の記載から自明な事項であるとも認められないので、当該補正は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものとは認められない。

次に、本件補正後の請求項1及び段落【0004】には、「セット板の後側に発射装置」が取り付けられる旨記載されている。
これに対し、出願当初の明細書において、「セット板の後側」に「発射装置」が取り付けられる旨の直接の記載が無く、また、何によって構成されるものを「発射装置」としているのかが明確でない以上は、段落【0022】や図3の記載等から、発射装置の打球杆21が、支軸21aを除いて、「セット板の後側」に位置すると仮に言えたとしても、「発射装置」が「セット板の後側」に取り付けられることが記載されていたとはいい得ず、自明でもない。なお、審判請求書の平成18年1月13日付けの手続補正書第3頁第10,11行には、「〔図3〕において「セット板10の裏面に打球杆21や発射モータ(符号なし)等からなる発射装置」が明確に記載されている」と述べているが、図3では符号21が記載されている打球杆以外の発射装置は、どこに配置されているのか不明瞭であり、打球杆21や発射モータ(符号なし)等の”等”の記載では、何が発射装置に含まれるのかも不明瞭である。
してみれば、セット板の後側に発射装置が取り付けられるとする記載は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、また、当初明細書又は図面の記載から自明な事項であるとも認められないので、当該補正は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものとは認められない。

以上のとおりであるから、上記補正事項を含む本件補正は当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものでなく、平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
本件補正は平成6年改正前特許法17条の2第3項及び同法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定に違反しているから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
平成17年6月3日付けの手続補正は原審において、平成18年1月13日付けの手続補正は当審においてそれぞれ却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年9月21日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「前枠部の前側に下皿が取り付けられ、前記前枠部の後側に、発射レールを備えたベース枠が取り付けられたパチンコ機であって、前記前枠部には位置決め孔が形成され、前記ベース枠には、前記位置決め孔の後方から挿入される筒状の位置決め突部が突設され、前記ベース枠の位置決め突部は、その筒内に発射装置の打球杆の支軸を回動可能に支持する軸受けが嵌込み可能に形成され、前記ベース枠の位置決め突部の筒内に、前記打球杆の支軸の軸受けを嵌込んで組み付けた後、前記前枠部の位置決め孔の後方から前記筒状の位置決め突部を嵌込むことで、前記前枠部の後側に、前記ベース枠を位置合わせして取り付ける構成にしてあることを特徴とするパチンコ機。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-54830号(実開昭58-157181号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)、実願平4-39357号(実開平6-485号)のCD-ROM(以下「引用例2」という。)には、次の記載がある。
ア.「取付基板の一側面に中空状の保持筒を突設し、その保持筒の内部の前後位置にカラーにより一定の間隔を置いて軸孔の径が大小に異なる2個のベアリングを保持させ、打玉鎚の回動軸には位置決め用の段部を形成してその細径とした先端を前記軸孔の小さなベアリングに嵌挿すると共に、後端を軸孔の大きなベアリングに嵌挿して回動自在に軸支し、さらにその回動軸の保持筒より後方へ突出する部分に前記段部を基準として打球鎚を正確に位置づける断面角形部を形成し、その断面角形部に打玉鎚の角孔を嵌合してナットにより締着固定して成るパチンコ機における打玉鎚の軸受構造」(引用例1実用新案登録請求の範囲)
イ.「機枠に取付けるだけで打玉槌が打玉発射部に対して正しく位置づけされるようなパチンコ機における打玉鎚の軸受構造を提供すること」(引用例1第2頁第5行?第8行)
ウ.「1は所要の大きさと厚みを有した金属製の取付基板であり、その一端面に両端が開口した中空状の保持筒2を一体に有する。保持筒2の内部の前後位置にはカラー3を介して2個のベアリング4,5が配置され、これら2個のベアリング4,5は保持筒2を被覆する合成樹脂部材6により同芯状に整列して強固に保持される。」(引用例1第2頁第10?16行)
エ.「7は打玉鎚8の回動軸で、先端近くに段部9が設けられており、その段部9により境された細径部7aを前記軸孔の小さなベアリング4に嵌挿し、大径部7bを軸孔の大きなベアリング5に嵌挿して回動自在に軸支される。」(引用例1第2頁第20行?第3頁第4行)
オ.「回動軸7の固定は先端ねじ部11に螺合したナット13を締着して段部9を前部位置のベアリング4側面に圧接させることによって達せられ、また打玉鎚8はこれを形成した角孔14を断面角形部10に嵌合してナット15を締着することにより回動軸7に一体に固着して構成される。そして、これを機枠16に取付けるには図面に示すように保持筒2を機枠16に穿設した透孔17に裏面側から嵌め込んで取付基板1をその機枠16の裏面に当てがいビス等によって固着する。」(引用例1第3頁第8行?第17行)

カ.「組立が容易であり、しかも使用中に弾球機構と発射レールのセンターが狂うおそれのないパチンコ機の弾球装置を提供する」(引用例2段落【0003】)
キ.「図1及び図2において、1は例えば合成樹脂、アルミダイカスト、鉄板等からなる垂直なハンドルセット板であり、その裏面には弾球槌2、弾球用カム3、弾球用モータ4などの弾球機構が取り付けられ、またその表面には弾球力調整用ハンドル軸5などのハンドル機構が取り付けられている。これらの各機構自体は、従来から知られているものと特に変わりはない。」(引用例2段落【0005】)
ク.「本考案では、ハンドルセット板1の上部に水平な段差部6を介して垂直なレール取付け板部7を一体に形成してある。この段差部6の片側には窓孔8が設けられており、弾球槌2の先端部9をこの窓孔8から突出させてある。またこのレール取付け板部7には、発射レール10をビス11によって斜めに固定してある。発射レール10は金属板をV字状に加工して焼入れ加工したものであって、その下端が上記の弾球槌2の先端部9と一致するようにレール取付け板部7に固定されている。
なお12は段差部6の窓孔8に臨ませて取り付けられた球送り機構、13はハンドルセット板1をパチンコ機の台盤に取り付けるためのねじ孔である。」(引用例2段落【0006】)

3.引用例1記載の発明の認定
したがって、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。
「機枠には透孔が形成され、取付基板に、前記透孔の裏面側から嵌め込まれる合成樹脂部材で被覆された保持筒が突設され、前記合成樹脂部材で被覆された保持筒は、その筒内に打球鎚の回動軸を回動自在に軸支するベアリングとカラーが配置され、前記合成樹脂部材で被覆された保持筒内に、前記打球鎚の回動軸を支持するベアリングとカラーを配置した後、前記機枠の透孔の裏面側から前記合成樹脂部材で被覆された保持筒を嵌め込み取付基板を当てがい固着することで、前記機枠の裏面に、取付基板を取り付ける構成にしてあるパチンコ機。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の(a)「機枠」、(b)「透孔」、(c)「裏面側から嵌め込まれる」、(d)「合成樹脂部材で被覆された保持筒」、(e)「打球鎚」、(f)「回動軸を回動自在に軸支する」及び(g)「ベアリングとカラー」は、それぞれ本願発明の(a)「前枠部」、(b)「位置決め孔」、(c)「後方から挿入される」、(d)「筒状の位置決め突部」、(e)「発射装置の打球杆」、(f)「支軸を回動可能に支持する」及び(g)「軸受け」にそれぞれ相当する。
そして、引用例1の図面の記載から、ベアリングとカラーが、合成樹脂部材で被覆された保持筒に「嵌込」まれていることは明らかである。また、引用例1記載ウに、取付基板が保持筒を一体に有することが記載されているので、引用発明において、ベアリングとカラーが嵌込まれる「合成樹脂部材で被覆された保持筒」と、「取付基板」とが、一体となったものは、本願発明における、軸受けが嵌込み可能に形成された「ベース枠」に対応する。さらに、引用例1の合成樹脂部材で被覆された保持筒は機枠の透孔に嵌め込まれているので、合成樹脂部材で被覆された保持筒と一体になり機枠の裏面に設けられた取付基板は、機枠の裏面に位置合わせされているものと認められる。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「パチンコ機であって、前枠部には位置決め孔が形成され、ベース枠には、前記位置決め孔の後方から挿入される筒状の位置決め突部が突設され、前記ベース枠の位置決め突部は、その筒内に発射装置の打球杆の支軸を回動可能に支持する軸受けが嵌込み可能に形成され、前記ベース枠の位置決め突部の筒内に、前記打球杆の支軸の軸受けを嵌込んで組み付けた後、前記前枠部の位置決め孔の後方から前記筒状の位置決め突部を嵌込むことで、前記前枠部の後側に、前記ベース枠を位置合わせして取り付ける構成にしてあるパチンコ機。」である点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点1〉本願発明では「前枠部の前側に下皿が取り付けられ」ているのに対し、引用発明では下皿について記載されていない点。

〈相違点2〉本願発明では「前枠部の後側に、発射レールを備えたベース枠」を設けているのに対し、引用発明では発射レールについて記載されていない点。

(相違点3)本願発明では、ベース枠は筒状の位置決め突部を前枠部の位置決め孔に嵌込むことで前枠部に取り付けているのに対し、引用発明では機枠の透孔に合成樹脂部材で被覆された保持筒を嵌め込み取付基板を当てがい固着することで、機枠の裏面側に、合成樹脂部材で被覆された保持筒と取付基板を取り付けている点。

5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
パチンコ機において、前枠部の前側に下皿を取り付けることは周知技術(必要ならば、特開平4-197372号公報(第2頁左上欄第18、19行)、特開平5-237220号公報(段落【0008】)、特開平2-77280号公報(第3頁左下欄第19行?右上欄第8行)を参照されたい。)にすぎないので、引用発明に当該周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。
よって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって容易に想到し得る事項である。

(2)相違点2について
引用例2記載キ、クには、発射レールと弾球機構を備えたハンドルセット板が取り付けられたパチンコ機が記載されている。そして、引用例1は「機枠に取付けるだけで打玉槌が打玉発射部に対して正しく位置づけされるようなパチンコ機における打玉鎚の軸受構造を提供すること」(記載イ)を技術的課題としており、引用例2は「組立が容易であり、しかも使用中に弾球機構と発射レールのセンターが狂うおそれのないパチンコ機の弾球装置を提供する」(記載カ)ことを技術的課題としていることから、両者の課題はともにパチンコ機の打球の発射部品を正しい位置関係とすることである。してみれば、引用発明の取付基板を所定の大きさとし、引用例2のように弾球機構だけでなく発射レールをも備えるようになすことは、当業者が容易に想到する事項にすぎない。
すなわち、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって容易に想到し得る事項である。

(3)相違点3について
本願発明ではベース枠を予め1つの部材として前枠部の後方に取り付け、引用発明では合成樹脂部材で被覆された保持筒と取付基板の2つの部材を機枠の裏面側で組み合わせて取り付けている点で相違するが、予め一つの部材として取り付けるか組み合わせて一つの部材として取り付けるかは、当業者が適宜設計変更する事項にすぎない。

(4)本願発明の進歩性の判断
以上述べたとおり、相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって容易に想到し得る事項であるか設計事項であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-12 
結審通知日 2007-12-18 
審決日 2007-12-28 
出願番号 特願平6-60965
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小林 俊久
野村 伸雄
発明の名称 パチンコ機  
代理人 今崎 一司  

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