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審決分類 |
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D |
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管理番号 | 1173127 |
審判番号 | 不服2004-7324 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-12 |
確定日 | 2008-02-22 |
事件の表示 | 平成6年特許願第504476号「ビルダー入り染料移動阻止組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成6年2月3日国際公開、WO94/02576、平成8年12月24日国内公表、特表平8-512332〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は1993年6月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1993年6月9日 欧州特許機構(EP))を国際出願日とする出願であって、平成16年1月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年4月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年4月27日付けで手続補正がなされ、その後、平成18年4月12日付けで当審による拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成18年10月5日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願請求項1?3に係る発明は、平成15年10月27日付け、平成16年4月27日付け及び平成18年10月5日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】a)アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000を有するポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)0.05?1重量%、および、b)ゼオライトビルダー10?80重量%、を含む、顆粒状染料移動阻止組成物。 【請求項2】さらに、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはそれらの混合物から選ばれるセルロース誘導体、から選ばれる再沈着防止剤を含む、請求項1に記載の染料移動阻止組成物。 【請求項3】請求項1に記載の染料移動阻止組成物を含み、さらに、界面活性剤、ビルダー、キレート化剤、漂白剤、酵素、起泡抑制剤、汚物放出剤、蛍光増白剤、研磨剤、殺菌剤、色あせ防止剤、着色剤、香料またはそれらの混合物を含む、洗剤組成物。」 3.当審による拒絶の理由 平成18年4月12日付けの当審による拒絶の理由の概要は、理由1として、「本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項、第5項第1号及び第2号、並びに第6項に規定する要件を満たしていない。」というものであって、不備な点として次の点を指摘している。 「(あ)本願明細書の記載を参酌するに、本願発明において、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」を添加することの技術的意義が認められず、本願明細書の記載は、本願発明の目的ないし効果について、矛盾ないし論理的把握が不可能な記載になっており、当業者が容易に本願発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではないので、特許法第36条第4項の規定に適合しない。 (い)本願明細書には、「アミン対アミンN-オキシドの比率」を「1:7?1:1,000,000」とし、及び「分子量」を「3,000?20,000」とすることの構成及び効果(特に臨界的な効果を定量的に裏付ける比較実験データ等)についての記載が不十分であり、当業者が本願発明の内容を理解できる程度に記載されていないので、特許法第36条第4項の規定に適合しない。 (う)本願明細書の上記「例I」及び「例II」における「その他 100まで」との記載について、「その他」とは如何なるものか不明であるので、本願明細書の記載は、当業者が本願発明を容易に実施できる程度に、その構成を開示しているとは認められず、特許法第36条第4項の規定に適合しない。 (え)本願明細書の記載からみて、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」の添加量がゼロであっても、「着色布帛と着色及び白色布帛の混合物で顕著なカラーケア性能」が示されるのであるから、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではなく、特許法第36条第5項第2号の規定に適合しない。 (お)本願明細書の第7頁第8行?第8頁第5行には、「ポリアミンN-オキシドの製造方法」として、ポリサイエンシス社の「MW50000」のポリ-4-ビニルピリジンを酸処理して、「アミン:アミンN-オキシド比は1:4」のポリアミンN-オキシドを製造した具体例が記載されているところ、これは本願請求項1又は6の「アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000」という数値範囲から外れるものであるので、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に実質的に記載したものではなく、特許法第36条第5項第1号の規定に適合しない。」 4.請求人の主張 これに対して、平成18年10月5日付けの意見書において、請求人は、 「(3)拒絶理由1について (拒絶理由1(あ)について) 拒絶理由1(あ)に鑑み、本請求人は、本意見書と同日付で提出しました手続補正書によって、本願明細書から、例I、IIおよび第39頁の記載を削除しました。補正後の本願明細書の記載は、審判官殿ご指摘の矛盾ないし論理論理的把握が不可能な記載が無くなっておりますので、明瞭な記載となっているものと思料します。 よって拒絶理由1(あ)は解消したものと思料します。 (拒絶理由1(い)について) 上記のように、補正後の本願発明の特徴は、特定のPVNOと、ゼオライトビルダーとの組み合わせにあるのであり、補正後の本願明細書は、その点についての技術的意義・効果を明確に記載したものとなっております。 よって拒絶理由1(い)は解消したものと思料します。 (拒絶理由1(う)について) 拒絶理由1(う)に鑑み、本請求人は、本意見書と同日付で提出しました手続補正書によって、本願明細書から、例IおよびIIの記載を削除しました。 よって拒絶理由1(う)は解消したものと思料します。 (拒絶理由1(え)について) 拒絶理由1(え)に鑑み、本請求人は、本意見書と同日付で提出しました手続補正書によって、本願明細書から、例IおよびIIの記載を削除しました。 よって拒絶理由1(え)は解消したものと思料します。 (拒絶理由1(お)について) 審判官殿ご指摘のポリアミンN-オキシドの製造方法の記載は、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された範囲内の例にすぎません。現状の特許請求の範囲に記載された範囲内のポリアミンN-オキシドについては、当業者が必要に応じこの記載を参照して製造することや、購入することが容易にできるものと思料します。 よって拒絶理由1(お)は解消したものと思料します。 したがって、特許法第36条違背との拒絶理由1はすべて解消したものと思料します。」 と主張している。 5.当審の判断 そこで、平成18年10月5日付けで提出された意見書及び手続補正書によって、記載不備が解消されたか否かを検討する。 (あ)について、請求人は、『本請求人は、本意見書と同日付で提出しました手続補正書によって、本願明細書から、例I、IIおよび第39頁の記載を削除しました。補正後の本願明細書の記載は、審判官殿ご指摘の矛盾ないし論理論理的把握が不可能な記載が無くなっておりますので、明瞭な記載となっているものと思料します。よって拒絶理由1(あ)は解消したものと思料します。』と主張しているが、ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシドの添加量が、0%であっても1%であっても、同様に着色及び白色布帛の混合物で顕著なカラーケア性能を示すという矛盾についての釈明がなされておらず、補正後の本願明細書の記載を精査しても、その矛盾を解消し得る記載は見当たらない。よって、本願明細書の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではなく、特許法第36条第4項に規定される要件を満たすものではない。 (い)について、請求人は、『補正後の本願発明の特徴は、特定のPVNOと、ゼオライトビルダーとの組み合わせにあるのであり、補正後の本願明細書は、その点についての技術的意義・効果を明確に記載したものとなっております。よって拒絶理由1(い)は解消したものと思料します。』と主張しているが、本願請求項1に記載される発明は、「アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000を有するポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)」を含むことも発明の特徴としているものである。よって、「アミン対アミンN-オキシドの比率」と「分子量」の数値範囲に関する技術的意義が本願明細書において明らかにされていない以上、本願明細書の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではなく、特許法第36条第4項に規定される要件を満たすものではない。 (う)について、請求人は、『本請求人は、本意見書と同日付で提出しました手続補正書によって、本願明細書から、例IおよびIIの記載を削除しました。よって拒絶理由1(う)は解消したものと思料します。」と主張しているが、平成18年10月5日付けの手続補正によって、本願明細書から本願発明の具体例に相当する記載が全て削除された。よって、本願明細書の記載は、本願発明を具体的に実施する方法についての記載が明確かつ十分でないので、当業者が本願発明を容易に実施できる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載するものではなく、特許法第36条第4項に規定される要件を満たすものではない。 (え)について、請求人は、『本請求人は、本意見書と同日付で提出しました手続補正書によって、本願明細書から、例IおよびIIの記載を削除しました。よって拒絶理由1(え)は解消したものと思料します。』と主張しているが、平成18年10月5日付けの意見書には、「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」の添加量がゼロであっても「着色布帛と着色及び白色布帛の混合物で顕著なカラーケア性能」が示されるということに対する釈明がなされていない。よって、本願請求項1に記載された「ポリ(4-ビニルピリジン)-N-オキシド」については、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項であると認められないので、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではなく、特許法第36条第5項第2号に規定される要件を満たしていない。 (お)について、請求人は、『審判官殿ご指摘のポリアミンN-オキシドの製造方法の記載は、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された範囲内の例にすぎません。現状の特許請求の範囲に記載された範囲内のポリアミンN-オキシドについては、当業者が必要に応じこの記載を参照して製造することや、購入することが容易にできるものと思料します。よって拒絶理由1(お)は解消したものと思料します。』と主張しているが、本願明細書には、現状の特許請求の範囲に記載された「アミン対アミンN-オキシドの比率1:7?1:1,000,000、分子量3,000?20,000」という範囲内の「ポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)」についての具体的な記載がないので、現状の本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に実質的に記載したものではなく、特許法第36条第5項第1号に規定される要件を満たしていない。 6.むすび 以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項、第5項第1号及び第2号、並びに第6項に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-25 |
結審通知日 | 2006-10-27 |
審決日 | 2006-11-07 |
出願番号 | 特願平6-504476 |
審決分類 |
P
1
8・
534-
WZ
(C11D)
P 1 8・ 531- WZ (C11D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 浩子 |
特許庁審判長 |
原 健司 |
特許庁審判官 |
天野 宏樹 木村 敏康 |
発明の名称 | ビルダー入り染料移動阻止組成物 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 横田 修孝 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 紺野 昭男 |