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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
審判 全部無効 2項進歩性  C04B
審判 全部無効 1項2号公然実施  C04B
管理番号 1175034
審判番号 無効2006-80236  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-11-15 
確定日 2008-03-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第3659867号発明「調湿建材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許3659867号の請求項1乃至3に係る発明は、平成12年5月19日に特許出願され、平成17年3月25日にその特許の設定登録がなされたものであり、これに対して、鈴木産業株式会社(以下、「請求人」という。)から平成18年11月15日付けで請求項1乃至3に係る発明の特許について、無効審判の請求がなされたところ、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
答弁書: 平成19年 2月19日
上申書(被請求人): 平成19年 3月23日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成19年 9月13日
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成19年 9月13日
口頭審理: 平成19年 9月13日
上申書(被請求人): 平成19年 9月27日
上申書(請求人): 平成19年10月11日

II.本件発明
本件請求項1乃至3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物を固化してなることを特徴とする調湿建材。
【請求項2】オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後、固化してなることを特徴とする調湿建材。
【請求項3】オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後、600?900℃で低温焼成することを特徴とする調湿建材。」

III.請求人の主張と証拠方法
1.請求人の主張
請求人は、特許第3659867号を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、無効審判請求、口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)及び上申書において、証拠方法として、下記「2.」に示した証拠を提出して、次に示す無効理由1乃至4を主張している。無効理由1乃至4について、これまでの主張を整理すると、次のとおりである。

(1)無効理由1
本件発明1乃至3に係る各発明は、以下に述べるとおり、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書第5頁第7?10行)
(ア)本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明1では天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲第1号証に記載された発明では、天然鉱物の稚内層珪藻土を使用している点で相違する。しかしながら、参考資料2、3及び9には、「稚内層珪藻土」が、オパーリンシリカとスメクタイトとを含んでなる天然鉱物であることが記載されており、参考資料2及び3には、オパーリンシリカが吸放湿機能を有することが記載されている。また、甲第3号証には、スメクタイトを主成分とする粘土鉱物であるモンモリロナイトに吸放湿性があることが記載されている。したがって、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」は吸放湿機能を有する点で主成分といえるから、オパーリンシリカとスメクタイトとを含んでなる天然鉱物である「稚内層珪藻土」は、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」に含まれるものであるといえ、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と明らかに同一である。(審判請求書第7頁第17行?第10頁第1行、第14頁第18行?第15頁第10行、口頭審理陳述要領書第3頁第24行?第4頁第5行、第8頁第4?19行、第17頁第5行?第18頁第4行、上申書第4頁第9?22行)
(イ)甲第1号証には、他のセラミックス原料を配合すること、及び800℃で焼成することが記載されているから、本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明と同一である。(審判請求書第18頁第14行?第19頁第21行)

(2)無効理由2
本件の請求項1乃至3に係る各発明は、以下に述べるとおり、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書第5頁第13?17行)
(ウ)本件の特許請求の範囲における「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の語は、「オパーリンシリカとスメクタイトとを配合して得られた、オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を含まないことすら明確でいない。(口頭審理陳述要領書第3頁第17?20行)
(エ)一般的に「主成分」の語は、量的なことを意味する場合も、質(特性)なことを意味する場合もあるから、甲第1号証に記載された「稚内層珪藻土」が「スメクタイトを主成分とする天然鉱物」であるか否かについて解釈の余地が全くないわけでもない。しかしながら、甲第1号証に記載された「稚内層珪藻土」が「オパーリンシリカを主成分とする天然鉱物」であることに疑問の余地はない。したがって、甲第5号証に記載されている近年望まれている有機結合剤を使用しない、甲第1号証や甲第2号証や甲第4号証に記載されているような無機調湿建材を得ることを目的として、甲第1号証に記載された高い吸放湿性のある稚内層珪藻土の主成分である「オパーリンシリカ」と、甲第2号証の実施例2に記載されている珪質頁岩(稚内層珪藻土を構成する主鉱物)と配合させる神楽粘土に代えて、甲第3号証に吸放湿性があることが記載され、且つ、甲第5号証に水硬性物質であることが記載されているモンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物、すなわち「スメクタイト」を用い、固化することに格別な困難性はなく、当業者が容易に想到できるものにすぎない。(審判請求書第15頁第11行?第17頁第19行)
(オ)「オパーリンシリカとスメクタイトとを配合した天然鉱物」によっても十分な強度が得られることについての検証実験から、調湿性と強度等を同時に満たすためには、珪藻頁岩とベントナイトの配合割合を最適化すればよいことは明らかである。そして、甲第2号証には、稚内層珪藻土に対する神楽粘土の配合比率を変化させることで曲げ強度を大きくできることが記載されている。したがって、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする単独の天然鉱物」としても、配合したものと効果について差異はないから、本件特許に進歩性はない。(審判請求書第17頁第20?24行、口頭審理陳述要領書第11頁第4行?第17頁第4行)

(3)無効理由3
本件発明1及び2は、以下に述べるとおり、甲第6号証の記載から蓋然性が確認できるように、特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書第5頁第18?22行)
(カ)甲第6号証に粘土質の土として記載されている「田圃の土や自分の敷地を掘った土」や「上質の粘土(田圃の底土や山土のようなもの)」に、参考文献6に記載されている飯塚泥岩層のような「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」が用いられていた蓋然性は極めて高い。従って、上記の記載から、本件発明1及び2に係る特許発明が、古来より実施されていた蓋然性が極めて高いと言わざるを得ない。(審判請求書第17頁第25行?第19頁第2行)

(4)無効理由4
本件特許の出願の発明の詳細な説明の記載が、以下に述べるとおり、当業者が本件発明1乃至3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本件発明1乃至3は、特許法第36条第4項の規定を満たしていないものであり、その特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書第5頁第25?29行)
(キ)「オパーリンシリカ」、「スメクタイト」及び「主成分」の語は、いずれも当業者が一義的に決定できるものでないことが明らかであるのにもかかわらず、発明の詳細な説明には、これらについて説明されていない。一般に、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」には多様な種類と特性の天然鉱物を含むものである。従って、当業者が、本件発明に係る「調湿建材」を得るためには、多様な種類及び特性の天然鉱物から試行錯誤しなければならないことから、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(審判請求書第19頁第22行?第20頁第9行)

(5)無効理由1?4以外の主張について
口頭審理陳述要領書において、次の無効理由を主張している。
(ク)甲第2号証に記載されている「神楽粘土」は、参考資料7から、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする単独の天然鉱物」と呼べるものに他ならないから、甲第2号証に、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であることが明らかな「神楽粘土」を使用して調湿セラミックス建材を作製することが記載されている以上、本件発明1乃至3は、甲第2号証に記載の発明と同一であり、特許を受けることができるものとはならない。(口頭審理陳述要領書第4頁第18行?第6頁第8行)
(ケ)甲第7号証には、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」である能登珪藻土が、珪藻土(オパーリンシリカ)と、介在するモンモリロナイト(スメクタイト)などの粘土分との働きによって大きな吸放湿性能を発揮することが示されており、当該能登珪藻土は、そのまま左官工法で固化して壁材として使用できることが開示されている。よって、本件発明1は、甲第7号証に記載されている事項であり、新規性のないことは明白である。(口頭審理陳述要領書第9頁第23行?第11頁第3行)

2.証拠の記載事項
(1)甲第1号証(特許第2652593号公報)
甲第1号証には、「稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料」に関して、次の事項が記載されている。
(1a)「稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれとその他のセラミックス原料と配合して任意の形状に成形し、焼成することを特徴とする稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法。」(特許請求の範囲、請求項1)
(1b)「稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれをフィラーとしてその他の材料と複合し、不焼成とすることを特徴とする稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法。」(特許請求の範囲、請求項2)
(1c)「最近の建築様式は高断熱、高気密化の趨勢にあるが、一般に使用されている内装材は調湿機能がなく、結露及びカビやダニの発生が住環境の重大問題となっており、多種多様な調湿材料が期待されている。」(段落【0001】、第1頁右欄第9?13行)
(1d)「本発明では、天然無機資源を出発原料として幅広い用途の調湿機能材料を安価に提供し、上記の問題を解決したものである。」(段落【0004】、第2頁左欄第27?29行)
(1e)「本発明で使用する稚内層珪藻土粉砕物の粉体特性の一例は下記の通りである。・・・稚内層珪藻土は、粒子に極めて微細な細孔を有していることにより、比表面積は128.9m^(2)/gを示し、一般的な珪藻土の3?4倍の大きさである。・・・稚内層珪藻土は、多孔質構造のクリストバライトを主成分とし、特有の細孔分布を示し、一般的な珪藻土とは異なる原料的特性を有している。・・・稚内層珪藻土の調湿機能は、杉材並びに一般的な珪藻土、ゼオライト等無機質多孔体と比べ、極めて卓越している。」(段落【0006】、第2頁左欄第42行?右欄第31行)
(1f)「図10は稚内層珪藻土を粉砕し、それ単独で乾式プレス成形後、800℃で焼成し、タイル状にしたものの調湿機能である。」(段落【0007】、第2頁右欄第34?37行)
(1g)「図12は稚内層珪藻土粉砕物と粘土窯業原料として使用されている北海道旭川地区のせっ器質粘土と配合し、タイル状に乾式プレス成形後、800℃焼成したものの調湿機能である。」(段落【0007】、第2頁右欄第47行?第3頁左欄第1行)
(1h)「一般住宅の内壁材として利用した場合にも、その優れた調湿機能が確認できた。」(段落【0007】、第3頁左欄第9?11行)

(2)甲第2号証(特許第2964393号公報)
甲第2号証には「調湿セラミックス建材」に関して、次の事項が記載されている。
(2a)「天然無機鉱物であり、多孔質クリストバライトを主成分とし、細孔分布において半径20?100Åの細孔が全細孔容量の70%以上を有する珪質頁岩の粉砕物に、成形性と強度の向上およびデザインの多様化を図る目的からその他のセラミックス原料を配合し、水、または水と有機バインダーを加えて成形し、焼成することによって連続気孔を多数形成することを特徴とする調湿セラミックス建材。」(特許請求の範囲、請求項2)
(2b)「珪質頁岩は湿度の変化に応じて速やかに吸放湿し、卓越した調湿機能を有している。」(段落【0014】、第2頁右欄第35?36行)
(2c)「実施例2?珪質頁岩とせっ器質粘土を配合した調湿セラミックス建材
粒径0.4mm以下に調製した珪質頁岩と神楽粘土の配合比が10:0,9:1,8:2,7:3,6:4,5:5の6種類の練土状素地を調製した。これらの素地で真空土練成形機を用いて大きさ110×60×15mmの板状に押し出し成形し、焼成温度900℃、1時間保持の条件で焼成して板状調湿セラミックス建材を作製した。前記神楽粘土は、せっ器質タイルなどに利用されている一般的なせっ器質粘土である。配合比別製品の物性値を図8?11に示した。調湿機能は珪質頁岩の配合比に一義的に支配され、その配合量が多いほど大きい。曲げ強度は神楽粘土の配合量が多くなるほど大きい。このように珪質頁岩粉砕物と他のセラミックス原料を配合することによって目的とする特性に応じた多種多様な調湿セラミックス建材の製造が可能である。」(段落【0019】)

(3)甲第3号証(特開平6-1926号公報)
甲第3号証には、「調湿性を有する塗材」に関して、次の事項が記載されている。
(3a)「モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物と、無機塩と、水硬性物質と、合成樹脂エマルジョンと、水との混合物を必須成分とする塗料組成物からなることを特徴とする調湿性を有する塗材。」(特許請求の範囲、請求項1)
(3b)「無機塩は比較的大きな吸湿性を有しており、モンモリロナイトも吸湿性があるので、塗膜が良好な吸湿作用を奏するばかりでなく、粘土鉱物や無機塩は吸湿性と共に比較的水分を放湿しやすいので、室内の湿度状況に即応して吸放湿作用を行い、優れた室内調湿機能を発揮するものである。」(段落【0013】、第3頁左欄第29?34行)

(4)甲第4号証(特開平7-265650号公報)
甲第4号証には、「湿度調節材料」に関して次の事項が記載されている。
(4a)「珪酸塩を1種以上の水硬性物質に配合後、これを硬化した後、酸処理をおこなうことを特徴とする成形体。」(特許請求の範囲、請求項5)
(4b)「本発明は、美術館、博物館、展示室、貯蔵庫、住宅等において、内装材、内壁材、及び天井材として使用される調湿材料に関するものである。」(段落【0001】)
(4c)「本発明で使用する水硬性物質は水と混合することによって硬化するものであれば特に限定されない。用いうる水硬性物質の具体例としては、α、β、γ型半水石膏、無水石膏、二水和石膏等の石膏、普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、スラグセメント等のセメント、高炉水砕スラグとアルカリ刺激剤との混合物、モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土類が挙げられる。これらの水硬性物質は単独であるいは2種以上を混合して使用できる。」(段落【0019】)

(5)甲第5号証(特開平11-347488号公報)
甲第5号証には、「ベントナイトの吹き付け防水工法」に関して、次の事項が記載されている。
(5a)「乾式における、2.36mmフルイ残分が5重量%以下で250μmフルイ通過分が10重量%以下、且つ膨潤力が10ml/2g以上の粒状ベントナイト、及び、水又はスメクタイトスラリーを別々のノズルから噴出させ、被付着物迄の飛翔空間及び被付着物上で両者を混合し、ベントナイトを被付着物表面に吹き付ける工法であって、前記粒状ベントナイト1重量部に対して、0.5?1.1重量部の水又は0.4?1.2重量部のスメクタイトスラリーを使用することを特徴とする、ベントナイトの吹き付け防水工法。」(特許請求の範囲、請求項1)
(5b)「スラリーの中に使用されるスメクタイトが、モンモリロナイト、ヘクトライト及びサポナイトからなる群から選択された少なくとも1種を主成分とする粘土鉱物である、請求項4に記載された防水工法。」(特許請求の範囲、請求項5)
(5c)「本発明は、ベントナイトの吹き付け防水工法に関し、特に、有機物を全く用いることがなく、微生物に対する耐腐食性が要求される箇所や土壌と親和性のある防水層が要求される場合、或は、高温にする被付着物に対して防水性を付与する場合等に有用な、ベントナイトの吹き付け防水工法に関する。」(段落【0001】)
(5d)「本発明においては、粒状ベントナイトが、空中で水又はスメクタイトスラリーと接触し、その表面が膨潤し粘結性を有するようになるので、有機系の接着剤を全く用いないにもかかわらず、任意の形状の被付着物表面に容易に防水性のベントナイト防水層を形成させることができる。」(段落【0025】、第4頁右欄第15?20行)

(6)甲第6号証(佐藤嘉一郎他、土壁・左官の仕事と技術、(株)学芸出版社、2001年2月20日発行、第65?75頁)
甲第6号証には、次の事項が記載されている。
(6a)「荒壁土(練り土)
荒壁塗用の土。粘土質の土で、瓦屋根葺にも使用する。古くは田圃の土や自分の敷地を掘った土など、手近なものを使用していた」(第68頁第1?3行)
(6b)「荒壁土
上質の粘土(田圃の底土や山土のようなもの)に二?三寸の切藁を練り込み」(第72頁第2?3行)

(7)甲第7号証(平成9年度研究報告書能登地域未利用資源活用事業、石川県工業試験場、平成10年3月、第1?17頁)

(8)参考資料1(地学団体研究会編、新版地学事典、初版、(株)平凡社、1996年10月20日、第183頁、第382?384頁、第657頁)
参考資料1には、「オパーリンシリカ」、「オパール」、「珪質頁岩」、「スメクタイト」について、次の事項が記載されている。
(8a)「オパーリンシリカ・・・X線的に無定形な二酸化珪素の水和物(SiO_(2)・nH_(2)O)で,オパールと同義。オパールは生物および無機物起原の珪酸体に対する包括的用語。土壌中には植物起原のオパール(プラントオパール),土壌の生成過程で形成されるオパール(オパーリンシリカ),デュリ盤中のシリカ集積物などがある。」(第183頁左欄第44行?右欄第1行)
(8b)「オパール・・・非晶質またはそれに近い含水珪酸鉱物。蛋白石とも。・・・非晶質または結晶度の悪いトリディマイトやクリストバライト構造からなるものも多い。まったくの非晶質のものをopal-Aという。クリストバライト構造がトリディマイト構造より卓越するものをopal-CTと呼んでいる。」(第183頁右欄第10?19行)
(8c)「珪質頁岩・・・微晶質石英やオパールCTなどのシリカ鉱物と粘土鉱物などの細粒砕屑粒子との混合物からなる。」(第382頁左欄第32?38行)
(8d)「スメクタイト・・・2:1型の層状珪酸塩粘土鉱物。層間に交換性陽イオンと水分子を有する。2八面体型と3八面体型に分類される。2八面体型スメクタイトの化学式は,・・・で表され,モンモリロナイト・バイデライト・ノントロン石などがこれに属する。」(第657頁左欄第57行?右欄第4行)

(9)参考資料2(平成5年度共同研究報告書本道珪藻土の高度利用と資源評価に関する研究、北海道立工業試験場・北海道立地下資源調査所、平成6年3月、第1?35頁)
参考資料2には、「稚内層」に関して、次の事項が記載されている。
(9a)「稚内層は主にクリストバライトよりなり、少量の石英とトリディマイトを含有する。また、粘土鉱物と長石は極く少量含まれる。声問層は石英と非晶質シリカおよび少量のクリストバライト・長石・粘土鉱物を含有する。粘土鉱物はいずれも少量であるが認められ、KMS-2で雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物が、KMS-8で雲母型粘土鉱物と雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物、スメクタイトが認められる。とくに、KMS-11でスメクタイトの量が多い。」(第8頁第4?8行)
(9b)「表IV-1」(第3頁)には、「珪藻土・珪質泥岩の化学分析値」が記載されており、「KMS-2」、「KMS-8」が「恵北稚内層」であることが示されている。
(9c)「稚内層はいずれもオパールCT帯に属するが、X線回折強度でみるかぎり、北側の恵北や樺岡東方地域の稚内層はクリストバライトが卓越するのに対し、豊富地域など南側ではクリストバライトを多く含有するものの石英・長石・粘土鉱物などの含有量も多い。また、声問層はオパールA帯に属する。
粘土鉱物は雲母型粘土鉱物が多く、他に雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物を伴っていることが多い。これは堆積粒子としての雲母型粘土鉱物が堆積時にすでに、風化により雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物やスメクタイトに変化したものと考えられる。また、稚内層中にスメクタイトがほとんどなく、混合層鉱物であるのは、続成過程でスメクタイトから混合層鉱物への変換が行われたためであろう。」(第19頁第2?10行)
(9d)「稚内層の調湿機能は最低でも8以上あり、声問層の3倍以上である。稚内層にあっては樺岡、上幌延が小さく上部層のTMU-29、恵北が大きい。(第31頁第18?19行)
(9e)「稚内層は主に珪質泥岩?頁岩より構成され、オパールCT帯に属する。地区毎に鉱物組成の違いが認められ、クリストバライトが卓越、Si/Al比が高いのは樺岡東方地区や恵北地区である。他の地区は石英や長石の含有量がやや多い。粘土鉱物は雲母型粘土鉱物と雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物よりなる。」(第34頁第22?25行)
(9d)「調湿機能は稚内層最上部付近で高く、中部から下部に向かって低下し、増幌層と声問層ではさらに低くなる。また、その機能はSiO_(2)含有率、鉱物組成、クリストバライトの結晶度とは直線的な相関関係はなく、基本的には細孔構造に支配されると考えている。(第34頁第29?31行)

(10)参考資料3(平成4年度共同研究報告書本道珪藻土の高度利用と資源評価に関する研究、北海道立工業試験場・北海道立地下資源調査所、平成5年3月、第1?25頁)
参考資料3には、「稚内層」に関して、次の事項が記載されている。
(10a)「以上5地域の泥岩類について比較すると、稚内層はいずれもオパールCT帯に属するが、X線回折強度でみるかぎり、北部の恵北や樺岡東方地域の稚内層はクリストバライトが卓越するのに対して、豊富地域など南部ではクリストバライトを多く含有するものの石英・長石・粘土鉱物などの含有量も多い。また、声問層はオパールA帯に属する。」(第13頁第10?13行)
(10b)「稚内層・声問層の珪(藻)質泥岩について、恵北・樺岡東方・豊富温泉・上幌延・ロクシナイの5地域について調査し、X線解析などで鉱物組成の概要を検討した。その結果、稚内層がオパールCT帯、声問層がオパールA帯に属することが確認できた。恵北・樺岡東方地域の稚内層はクリストバライトが卓越するのに対して、豊富地域などではクリストバライトを多く含有するものの石英・長石・粘度鉱物などの含有量も多いという結果が示された。」(第23頁第14?18行)
(10c)「稚内層珪質頁岩特有の機能の一つに吸放湿(調湿)機能があり、その機能は一般的な建築材料として使用される杉材よりもはるかに優れている。」(第23頁第30?31行)

(11)参考資料4(化学大辞典編集委員会編、化学大辞典、縮小版、共立出版(株)、昭和39年3月15日、第9巻、第310?312頁)
参考資料4には、「モンモリロン石」及び「モンモリロン石群鉱物」について記載されている。

(12)参考資料5(化学大辞典編集委員会編、化学大辞典、縮小版、共立出版(株)、昭和39年2月15日、第8巻、第569?570頁)
参考資料5には、「ベントナイト」について記載されている。

(13)参考資料6(石川県珪藻土利用研究会基礎部会編、能登産珪藻土の基礎研究、石川県工業試験場、昭和41年3月31日、第19?39頁、表5)
参考資料6には、「能登産珪藻土」に関して、次の事項が記載されている。
(13a)「表5」には「珪藻泥岩中の諸鉱物の産状」について記載され、「飯塚層」が「Opaline silica(蛋白石質シリカ)」と「Clay minerals(粘土鉱物)」を含有することが示されている。
(13b)「飯塚泥岩 S2 図21
上部の試料はモンモリロン石・イライト・ハロイサイトよりなるが、下部になるに従ってモンモリロナイトは減少し、イライトが増加する。」(第28頁右欄末行?第31頁左欄第3行)

(14)参考資料7(岡部賢二他、北海道せっ器粘土鉱床開発に関する研究-その3旭川地域-、地質調査所月報、1985年、第36巻、第9号、第479?511頁)
参考資料7には、「神楽台地区の粘土は・・・長石,有色鉱物,石英等の斑晶と,モンモリロナイト,カオリン等の粘土鉱物からなる基質で構成されている.」(第491頁右欄第28行?第494頁左欄第5行)と記載されている。

(15)参考資料8(素木洋一、わかりやすい工業用陶磁器、第1版、技報堂出版(株)、1969年6月30日、第13?56頁)
参考資料8には、「粘土というのは「一般に天然に存在する微細なアルミノ珪酸塩を主成分とする土状混合物で,その微粉末を湿らせれば可塑性を生じ,乾けば剛性を示し,相当の高温度で焼成すれば鋼のように硬くなるものをいう」と定義されている。」(第37頁第末行?第38頁第2行)と記載されている。

(16)参考資料9(福沢仁之、新第三紀層状珪質岩の堆積機構-北海道北部,上部中新統稚内層を例として-、地質学雑誌、1988年9月、第94巻、第9号、第669?688頁)
参考資料9には、「稚内層」について、次の事項が記載されている。
(16a)「稚内層を構成する層状珪質岩は一般に泥質部が珪質部に比べて軟らかく,硬軟互層形態を呈する(福沢,1982,1985).肉眼および鏡下において,硬質薄層(I)と軟質薄層(II)で相異なる堆積学的特徴としては,次の7つの特徴を挙げることができる.1)色調の相違,2)bioturbationの有無,3)基底砂岩の有無,4)薄層基底層理面の形態の相違,5)淘汰度の相違,6)上方細粒化を示す級化構造の有無,7)葉理形態の相違.」(第671頁右欄第3?10行)
(16b)「前に述べた硬軟薄層の堆積学的特徴の組合せに基づいて,稚内層の層状珪質岩をタイプAからタイプEの5互層型に分けることができる」(第673頁左欄第34?36行)
(16c)「タイプDの層状珪質岩は暗灰色の泥岩からなる硬質薄層(I)と灰色の珪藻質砂質シルト岩からなる軟質薄層(II)の互層形態を呈する.硬軟両薄層にはcomposite burrowsが認められることがあり,淘汰は両者ともほぼ良好である.硬軟薄層の境界層理面は不明瞭なことが多い.級化構造は両薄層ともに認められないが、レンズ状葉理は両者に認められることが多い.軟質薄層に比べて硬質薄層の陸源性砕屑粒子の含有量は少ない.硬質薄層に比べて軟質薄層のオパールCTの含有量は一般に多いが,そうでないこともある.幌延町問寒別西方のヌカナン川本流(F2ルート)のタイプDは,硬質薄層に比べて軟質薄層のオパールCT含有量の方が多い(Fig.7).オパールCTの(101)面間隔は軟質薄層に比べて硬質薄層の方が大きな値を示している(Fig.7).また,軟質薄層に比べて硬質薄層は暗い色調を呈しており,粘土鉱物が多い.」(第677頁左欄第19行?右欄第5行)

V.被請求人の反論と証拠方法
1.被請求人の反論
被請求人は、請求人の主張に対して、下記「2.」に示した証拠を提出して、答弁書、平成19年3月23日付け上申書、口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)、及び平成19年9月27日付け上申書を整理すると、本件発明1乃至3は、新規な技術思想で構成されているので、甲第1号証の発明と同一でなく、また実質同一でもないので、特許法第29条第1項第3号には該当せず、本件発明1乃至2は、甲第6号証の記載から公然実施された発明と認められることはできないので、特許法第29条第1項第2号には該当せず、本件発明1乃至3は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明を寄せ集めても、当業者が容易に発明できたものではないので、特許法第29条2項の規定に違反せず、そして、本件特許の明細書は、当業者が容易に実施することができる程度に記載されているので、特許法第36条第4項の規定に違反していないと反論し、主に次の点を主張している。

(1)無効理由1に対する反論
(あ)甲第1号証には、調湿機能についての記載しかなく、本件特許の特徴である自硬性、耐摩耗性、強度についての記載が一切ない。また、参考資料2には、稚内層にスメクタイトはほとんど含まれていないことが記載されていることから、甲第1号証の発明は、本件発明1乃至3とは明らかに相違している。(答弁書第5頁第16行?第7頁第27行)

(2)無効理由2に対する反論
(い)「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」については、発明の詳細な説明と図面の記載を考慮して、用語を解釈すれば、単独の地層から採取したものであることが必要である。また、「主成分」とは質的内容である。(平成19年9月27日付け上申書第2頁第9行?第3頁第25行)
(う)甲第1号証乃至甲第5号証を組み合わせることができたとしても、甲第1号証乃至甲第5号証の目的、効果から判断すれば、本件特許の耐摩耗性、強度を発揮できる発明をすることができない。そもそも、本件発明1乃至3の発明特定事項である「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の存在を開示も示唆もしていない甲第1号証に基づいて、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」が有する優れた吸放湿機能、優れた強度、耐摩耗性に着目して、これらを要件として完成させた「調湿建材」に係る発明である本件発明1乃至3に、容易に想到し得たということはできない。(答弁書第17頁第22行?第20頁22行)

(3)無効理由3に対する反論
(え)甲第6号証は、単なる荒壁用の左官材料についての記載であり、荒壁用の材料には床材のような耐摩耗性や強度は要求されないので、「田圃の土」や「上質の粘土」に、調湿性を保ちつつ耐摩耗性や強度を有する「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」が含まれている蓋然性はない。また、参考文献6には、飯塚泥層がいかに利用されていたか一切の記載がなく。甲第6号証に適用することはできない。したがって、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を利用している本件発明1乃至2が、甲第6号証、参考文献6に記載されている公然実施された発明に該当するということはできない。(答弁書第14頁第6?28行、第16頁第19行?第17頁第21行)

(4)無効理由4に対する反論
(お)実施例には当業者が実施できるように明確かつ充分に記載されている。「多様な種類及び特性の天然鉱物から試行錯誤する」ことは、当業者の当然の技術開発努力である。(答弁書第20頁第23行?第21頁9行)

2.証拠の記載事項
(1)乙第1号証(高田忠彦の陳述書、平成19年2月19日)
乙第1号証には、添付資料A?Kを添付すると共に、「甲第1号証、甲第2号証と本件特許発明とは別異の技術である」こと、「本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証の耐摩耗性及び強度の不足を高めるところから開発が始まったもので、本件特許発明は、耐摩耗性及び強度の点で、甲第1号証及び甲第2号証にない作用効果を奏する」こと、及び「本件特許発明の実施品は、優れた製品であることが、公的にも、そして業界にも認められている」ことについて記載されている。
(添付資料)
(a)添付資料A(「豊ヘルス」カタログ、鈴木産業株式会社)
(b)添付資料B(高田忠彦、珪藻土建材の開発とその応用、建材フォーラム、‘97-10号、第10?15頁)
(c)添付資料C-1(「新産業創出奨励事業に係る鈴木産業(株)への回答について」、北海道経済部産業振興課新産業推進係長、平成11年9月30日)
(d)添付資料C-2(「新産業創出奨励事業に認定された事業に付いて」、鈴木産業株式会社、平成11年8月11日)
(e)添付資料C-3(「新産業創出奨励事業道が対象6件を決定」、北海道新聞、1999年8月8日)
(f)添付資料C-4(「補助金の交付の決定について」、北海道経済部長堀武、平成11年10月6日)
(g)添付資料D(福沢仁之、北海道天北-羽幌地域の上部新第三系層序の再検討-とくに“稚内”・“声問”層について-、地質学雑誌、1985年12月、第91巻、第12号、第833?849頁)
(h)添付資料E(特許第3375927号公報)
(i)添付資料F(山本良一監修、エコマテリアルハンドブック、丸善(株)、平成18年12月30日、第711?714頁)
(j)添付資料G(賞状「奨励賞、調湿性内装仕上材「シリックスリターナブルパウダー」」、北海道知事、平成16年2月17日)
(k)添付資料H(「リターナブルパウダー」パンフレット、株式会社サメジマコーポレーション)
(l)添付資料I(「くらしEタイル」パンフレット、株式会社サメジマコーポレーション)
(m)添付資料J(平成6年度共同研究報告書本道珪藻土の高度利用と資源評価に関する研究、北海道立工業試験場・北海道立地下資源調査所、平成7年3月、第1?41頁)
(n)添付資料K(JIS、A5209、「陶磁器質タイル」)

(2)参考公報1(特許第3041348号公報)
参考公報1には、「天然鉱物」の表示方法について、「本発明において、アロフェン又はイモゴライトとしては、アロフェン又はイモゴライトを主成分とする鹿沼土、大沢土及び膠質土、水土、味噌土と呼ばれる各地の火山軽石層の鉱物が実質的に使用される。」(段落【0009】)と記載されている。

V.当審の判断
1.「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の検討
(一)無効理由1乃至4を検討するにあたって、まず、本件発明1乃至3の発明特定事項である「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との用語について検討する。

(二)「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との用語について文理解釈すると、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分」とは、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」の両方が「主成分」であることを示していることは明らかである。また、「主成分とする天然鉱物」は、「主成分とする」との語が「天然鉱物」を修飾していることから、単一の「天然鉱物」の「主成分」について限定していることは明らかである。
してみると、当該「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との用語は、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」の両方が「主成分」として含まれている単一の「天然鉱物」を示しているといえる。

(三)この点について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、次に示すとおり、当該「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との用語が、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」の両方が「主成分」として含まれている単一の「天然鉱物」であること以外のことを意味するといえない。
すなわち、本件特許明細書には、「粒径1mm以下に粉砕したオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とし、調湿性と自硬性とを備えた天然鉱物(浅茅野層、ポンニタチナイ層、17線川層等の地層に広く分布している:以下、OPS粉体と略称する)」(段落【0015】)と記載され、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」として、単一の天然鉱物といえる「浅茅野層」、「ポンニタチナイ層」、「17線川層」が例示されている。そして、本件特許明細書には、例えば、「オパーリンシリカを主成分とする天然鉱物」と「スメクタイトと主成分とする天然鉱物」を混合したような天然鉱物が、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を構成することを示唆する記載もない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当該「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との用語は、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」の両方が「主成分」として含まれている単一の「天然鉱物」を示しているといえる。

(四)以上の点に関して、請求人は、本件の特許請求の範囲における「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の語は、「オパーリンシリカとスメクタイトとを配合して得られた、オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を含まないことすら明確でいないと主張している(請求人の主張(ウ)を参照)。しかしながら、上記(二)及び(三)で検討したように、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との文言からみても、また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「オパーリンシリカとスメクタイトとを配合して得られた、オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を含まないことは明らかである。よって、請求人の主張は採用できない。

(五)さらに、上記「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の「主成分」の用語の意味についてみてみると、例えば、化学大辞典編集委員会編、化学大辞典、縮小版、共立出版(株)、1963年10月15日、第4巻、第692?693頁に、「主成分」について「注目する試料が含有する化学的な成分のうちその物質の特性を与えているところの主要なものをさす.この場合化学的成分は元素でもイオンでも原子団,分子,またはそれらの混合物もしくは組成不明の物質群であってもさしつかえない.」(第692頁右欄第37?42行)、「一つの岩石を構成する鉱物のうち,その鉱物が存在するか否かで岩石の分類上の位置が変わるもの,すなわちその岩石の定義に必要な鉱物を主成分という.したがって主成分は,必ずしも多量に存在する成分鉱物とは限らない.」(第692頁右欄第53行?第693頁左欄第4行)と記載されているように、「主成分」は、物質の特性を与えているところの主要な成分であるといえる。
したがって、本件発明1乃至3の発明特定事項である「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の「主成分」とは、「天然鉱物」の特性を与えている成分といえる。
そして、「天然鉱物」の特性について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「天然鉱物の優れた調湿性と自硬性とを利用した」(段落【0001】)、「調湿性及び自硬性、並びに低温焼結性を備えるオパーリンシリカとスメクタイトとを主鉱物とした天然鉱物」(段落【0008】)、「調湿性と自硬性とを備えた天然鉱物」(段落【0009】、段落【0011】、段落【0012】、段落【0013】及び段落【0015】)と記載されていることから、「天然鉱物」は、「調湿性及び自硬性、並びに低温焼結性」との特性を有しているといえる。したがって、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」は、天然鉱物のこれら特性を与えている成分といえる。特に、「スメクタイト」は、発明の詳細な説明に「この天然鉱物が備える自硬性はスメクタイトの特性に基づくものと考えられる」(段落【0013】)と記載されていることから、天然鉱物のこれら特性のうち、「自硬性」を与えている成分といえる。そして、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」は、天然鉱物が上記特性を有するための有意な量が含まれているといえる。

2.無効理由1の検討
2-1.本件発明1について
(一)甲第1号証には、記載事項(1b)によれば、「稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれをフィラーとしてその他の材料と複合」して、「不焼成すること」で「製造」した「稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料」が記載されているといえる。そして、記載事項(1d)によれば、「稚内層珪藻土」は、「天然無機資源」といえ、また、記載事項(1e)によれば、「稚内層珪藻土」の「調湿機能」は「クリストバライト」を含有することによるものといえるから、「稚内層珪藻土」は、「クリストバライト」を「主成分」とした「天然無機資源」といえる。また、「調湿機能材料」は、記載事項(1c)及び(1h)によれば、「内装材」として用いることから、「内装材用の調湿機能材料」といえる。
これら記載を本件発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土の粉砕物を単独で、あるいはこれをフィラーとしてその他の材料と複合して使用し、不焼成することで製造した内装材用の調湿機能材料」の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「内装材用の調湿機能材料」は、本件発明1の「調湿建材」に相当する。また、甲1発明1の「不焼成することで製造」することは、焼成することなく調湿機能材料を製造していることを意味し、固化することは明らかであるから、本件発明1の「固化」に相当する。さらに、甲1発明1の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土の粉砕物」と本件発明1の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」とは、「天然鉱物」である点で共通する。
したがって、両者は、「天然鉱物を固化してなることを特徴とする調湿建材」で一致し、本件発明1の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲1発明1の天然鉱物が「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」である点(相違点A)で相違している。

(二)そこで、上記相違点Aについて検討すると、参考資料1の記載事項(8a)に「オパーリンシリカ」は「X線的に無定形な二酸化珪素の水和物(SiO_(2)・nH_(2)O)で,オパールと同義」であることが記載され、また記載事項(8b)に「オパール」は「非晶質または結晶度の悪いトリディマイトやクリストバライト構造からなるもの」であり、「クリストバライト構造がトリディマイト構造より卓越するものをopal-CTと呼んでいる」ことと記載されている。
そして、「稚内層」に関して、参考資料2には、記載事項(9a)に「稚内層は主にクリストバライトよりなり・・・粘土鉱物・・・は極く少量含まれる。・・・粘土鉱物はいずれも少量であるが認められ、KMS-2で雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物が、KMS-8で雲母型粘土鉱物と雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物、スメクタイトが認められる」と記載され、記載事項(9b)に、この「KMS-2」、「KMS-8」が、「恵北稚内層」であることが示されている。さらに、参考資料2には、記載事項(9c)に「稚内層はいずれもオパールCT帯に属するが、・・・北側の恵北や樺岡東方地域の稚内層はクリストバライトが卓越するのに対し、豊富地域など南側ではクリストバライトを多く含有するものの石英・長石・粘土鉱物などの含有量も多い。・・・粘土鉱物は雲母型粘土鉱物が多く、他に雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物を伴っていることが多い。」、記載事項(9e)に「稚内層は・・・オパールCT帯に属する。・・・クリストバライトが卓越、・・・粘土鉱物は雲母型粘土鉱物と雲母型粘土鉱物/スメクタイト混合層鉱物よりなる。」と記載されている。
また、参考文献3には、記載事項(10a)に「稚内層はいずれもオパールCT帯に属するが、・・・豊富地域など南部ではクリストバライトを多く含有するものの石英・長石・粘土鉱物などの含有量も多い。」、記載事項(10b)に「稚内層がオパールCT帯・・・に属することが確認できた。恵北・樺岡東方地域の稚内層はクリストバライトが卓越するのに対して、豊富地域などではクリストバライトを多く含有するものの石英・長石・粘度鉱物などの含有量も多い」と記載されている。
さらに、参考文献9には、記載事項(16a)に「稚内層を構成する層状珪質岩は一般に泥質部が珪質部に比べて軟らかく,硬軟互層形態を呈する」、記載事項(16b)に「稚内層の層状珪質岩をタイプAからタイプEの5互層型に分けることができる」、記載事項(16c)に「タイプDの層状珪質岩は暗灰色の泥岩からなる硬質薄層(I)と灰色の珪藻質砂質シルト岩からなる軟質薄層(II)の互層形態を呈する.・・・硬質薄層に比べて軟質薄層のオパールCTの含有量は一般に多い・・・軟質薄層に比べて硬質薄層は暗い色調を呈しており,粘土鉱物が多い.」と記載されている。
したがって、参考文献2、3及び9の記載事項によれば、「稚内層」は、「オパールCT帯に属し、主にクリストバライトよりなり、粘土鉱物としてスメクタイトを含有している」といえ、また、参考文献1の記載事項によれば、「クリストバライト」や「オパールCT」は、本件発明1の「オパーリンシリカ」に相当するといえる。
以上のことから、甲1発明1の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」は、「オパーリンシリカを主成分とし、スメクタイトを含有する天然鉱物」といえる。

(三)そして、「稚内層珪藻土」に含有する「スメクタイト」が、本件発明1の「主成分」に該当するかについて検討すると、本件発明1において、「スメクタイト」が「主成分」であることは、上記「1.「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の検討」で検討したとおり、本件発明1の「天然鉱物」が「自硬性」を有するために、「スメクタイト」が有意な量が含まれていることを意味しているといえる。
また、参考資料8に「粘土というのは「一般に天然に存在する微細なアルミノ珪酸塩を主成分とする土状混合物で,その微粉末を湿らせれば可塑性を生じ,乾けば剛性を示し,相当の高温度で焼成すれば鋼のように硬くなるものをいう」と定義されている。」と記載されているから、粘土鉱物の1つである「スメクタイト」が自硬性を有することは、当業者にとって明らかなことである。
しかしながら、甲1発明1の「稚内層珪藻土」に含まれる「スメクタイト」が、「稚内層珪藻土」に「自硬性」を与えているだけの有意な量が含まれていることは、甲第1号証、あるいは、参考資料2、3及び9に記載されていないし、示唆もなされていない。また、請求人が提示した他の甲号証や参考資料をみても、「稚内層珪藻土」に含まれる「スメクタイト」が、「稚内層珪藻土」に「自硬性」を与えているだけの有意な量が含まれているとはいえない。
したがって、「稚内層珪藻土」に含有する「スメクタイト」は、「稚内層珪藻土」に「自硬性」を与える「主成分」であるとはいえず、甲1発明1の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」が、本件発明1の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」と実質的に同一の天然鉱物であるとはいえない。

(四)してみると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、また実質同一でもないので、特許法第29条第1項第3号には該当しない。

(五)この点に関して、請求人は、「オパーリンシリカ」と「スメクタイト」は吸放湿機能を有する点で主成分といえるから、オパーリンシリカとスメクタイト含んでなる天然鉱物である「稚内層珪藻土」は、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」に含まれるものであると主張している(請求人の主張(ア)参照)。
しかしながら、上記「1.「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」の検討」の「(五)」で検討したように、スメクタイトは、本件発明1の天然鉱物の特性のうち、「自硬性」を与える成分といえるから、単に、スメクタイトが吸放湿性を有することによって、「主成分」とすることはできない。
よって、請求人の主張は採用できない。

2-2.本件発明2について
(一)本件発明2と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「内装材用の調湿機能材料」は、本件発明2の「調湿建材」に相当する。また、甲1発明1の「不焼成することで製造」することは、焼成することなく調湿機能材料を製造していることを意味し、固化することは明らかであるから、本件発明2の「固化」に相当する。さらに、甲1発明1の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土の粉砕物を単独で、あるいはこれをフィラーとしてその他の材料と複合して使用し」と本件発明2の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体」とは、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体」である点で共通する。
したがって、両者は、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を、固化してなることを特徴とする調湿建材」で一致し、本件発明2の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲1発明1の天然鉱物が「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」である点(相違点B)、及び、本件発明2が固化する前に「成形」しているのに対して、甲1発明1では、「成形」することについて明示されていない点(相違点C)で相違している。

(二)そこで上記相違点について検討すると、相違点Bは、「2-1.本件発明1について」で検討した「相違点A」と同じ相違点であるから、「2-1.本件発明1について」の「(二)」及び「(三)」で検討したとおり、甲1発明1の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」は、本件発明2の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」と実質的に同一の天然鉱物であるとはいえない。

(三)してみると、本件発明2は、相違点Cについて検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、また実質同一でもないので、特許法第29条第1項第3号には該当しない。

2-3.本件発明3について
(一)甲第1号証には、記載事項(1a)によれば、「稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれとその他のセラミックス原料と配合して任意の形状に成形」して、「焼成すること」で「製造」した「稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料」が記載されているといえる。そして、記載事項(1d)によれば、「稚内層珪藻土」は、「天然無機資源」といえ、また、記載事項(1e)によれば、「稚内層珪藻土」の「調湿機能」は「クリストバライト」を含有することによるものといえるから、「稚内層珪藻土」は、「クリストバライト」を「主成分」とした「天然無機資源」といえる。また、「調湿機能材料」は、記載事項(1c)及び(1h)によれば、「内装材」として用いることから、「内装材用の調湿機能材料」といえる。また、「焼成」は、記載事項(1f)及び(1g)によれば、「800℃で焼成」しているといえる。
これら記載を本件発明3の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれとその他のセラミックス原料と配合して任意の形状に成形して、800℃で焼成することで製造した内装材用の調湿機能材料」の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件発明3と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2の「内装材用の調湿機能材料」は、本件発明3の「調湿建材」に相当する。また、甲1発明2の「800℃で焼成することで製造」することは、本件発明3の「600?900℃で低温焼結すること」に相当する。さらに、甲1発明2の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれとその他のセラミックス原料と配合して」と、本件発明3の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体」とは、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体」である点で共通する。
したがって、両者は、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後、600?900℃で低温焼成することを特徴とする調湿建材」で一致し、本件発明3の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲1発明2の天然鉱物が「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」である点(相違点D)で相違している。

(二)そこで上記相違点について検討すると、相違点Dは、「2-1.本件発明1について」で検討した「相違点A」と同じ相違点であるから、「2-1.本件発明1について」の「(二)」及び「(三)」で検討したとおり、甲1発明2の「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」は、本件発明3の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」と実質的に同一の天然鉱物であるとはいえない。

(三)してみると、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、また実質同一でもないので、特許法第29条第1項第3号には該当しない。

3.無効理由2の検討
3-1.本件発明1について
(一)本件発明1と甲1発明1とを対比すると、「1.無効理由1の検討」の「2-1.本件発明1について」で検討したとおり、両者は、「天然鉱物を固化してなることを特徴とする調湿建材」で一致し、本件発明1の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲1発明1の天然鉱物が「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」である点(相違点A)で相違している。

(二)上記相違点Aについて検討する。
天然鉱物に関して、甲第2号証には、記載事項(2a)によれば、「天然無機鉱物であり、多孔質クリストバライトを主成分とし、細孔分布において半径20?100Åの細孔が全細孔容量の70%以上を有する珪質頁岩の粉砕物」が記載され、記載事項(2b)によれば、「珪質頁岩」は「卓越した調湿機能を有している」と記載されているといえる。そして、この「珪質頁岩」は、参考資料1の記載事項(8c)によれば、「微晶質石英やオパールCTなどのシリカ鉱物と粘土鉱物などの細粒砕屑粒子との混合物」といえるから、甲第2号証には、「調湿機能を有している、微晶質石英やオパールCTなどのシリカ鉱物と粘土鉱物などの細粒砕屑粒子との混合物である珪質頁岩」が記載されているといえる。
甲第3号証には、記載事項(3a)によれば、「モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物」が記載され、記載事項(3b)によれは、「モンモリロナイト」は「吸湿性がある」と記載されているといえる。そして、「モンモリロナイト」は、甲第5号証の記載事項(5b)の「スメクタイトが、モンモリロナイト、ヘクトライト及びサポナイトからなる群から選択された少なくとも1種を主成分とする粘土鉱物である」との記載、及び、参考資料1の記載事項(8d)の「2八面体型スメクタイトの化学式は,・・・で表され,モンモリロナイト・・・がこれに属する。」との記載から、「スメクタイト」に属するといえるから、甲第3号証には、「吸湿性がある、スメクタイト」が記載されているといえる。
甲第4号証には、記載事項(4a)乃至(4c)によれば、「調湿材料」に配合される「水硬性物質」として「モンモリロナイト」が記載されているといえる。そして、上記のとおり、「モンモリロナイト」は、「スメクタイト」に属するといえるから、甲第4号証には、「水硬性である、スメクタイト」が記載されているといえる。
甲第5号証には、記載事項(5d)によれば、「スメクタイトスラリー」が記載され、記載事項(5a)、(5c)及び(5d)によれば、「ベントナイトの吹き付け防水工法」の「ベントナイト」に「粘結性」を与えることが記載されているといえる。してみると、甲第5号証には、「粘結性がある、スメクタイトスラリー」が記載されているといえる。
以上のとおり、甲第2号証には、「オパールCTなどのシリカ鉱物と粘土鉱物とを含む天然鉱物」が記載され、甲第3号証乃至甲第5号証には、「スメクタイト」が記載されている。しかしながら、甲第2号証乃至甲第5号証には、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」について、記載も示唆もなされていない。
したがって、甲1発明1に甲第2号証乃至甲第5号証に記載された発明を組み合わせても、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を用いることは、当業者が容易に導き出せない。

(三)また、甲第3号証乃至甲第5号証によれば、「スメクタイト」は、「吸湿性」、「水硬性」、「粘結性」を有しているといえる。
また、甲第2号証には、記載事項(2c)に「珪質頁岩と神楽粘土の・・・練土状素地を調製し・・・成形し、焼成温度900℃、1時間保持の条件で焼成して板状調湿セラミックス建材を作製した。・・・曲げ強度は神楽粘土の配合量が多くなるほど大きい。」と記載されている。そして、参考資料7に「神楽台地区の粘土は・・・長石,有色鉱物,石英等の斑晶と,モンモリロナイト,カオリン等の粘土鉱物からなる基質で構成されている.」と記載されているように、「神楽粘土」は、モンモリロナイト等の粘土鉱物から構成されているといえるから、天然鉱物である「珪質頁岩」に「モンモリロナイト」を混ぜて、調湿セラミックス建材の強度を高めることは、公知の技術といえる。
したがって、甲1発明1の「オパーリンシリカと主成分とし、スメクタイトを含有する天然鉱物」に相当する「稚内層珪藻土」に、吸湿性、水硬性、粘結性を与え、強度を高めるために、これら特性が得られる量の「スメクタイト」を添加することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
しかしながら、甲1発明1の「オパーリンシリカと主成分とし、スメクタイトを含有する天然鉱物」に相当する「稚内層珪藻土」に「スメクタイト」を添加したものは、「稚内層珪藻土」と「スメクタイト」との組成物が得られるにすぎず、単一の天然鉱物とはならない。
また、「稚内層珪藻土」と「スメクタイト」との組成物から、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を当業者が容易に導き出せるともいえない。

(四)してみると、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明を寄せ集めても、当業者が容易に発明できたものではないので、特許法第29条2項の規定に違反しない。

(五)この点に関して、請求人は、「稚内層珪藻土」と「スメクタイト」との組成物は、甲第1号証乃至甲第5号証から当業者が容易に想到すること(請求人の主張(エ)参照)、及び、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする単独の天然鉱物」としても、配合したものと効果について差異はないから、本件特許に進歩性はないこと(請求人の主張(オ)参照)を主張している。
しかしながら、上記(二)及び(三)で検討したとおり、「稚内層珪藻土」と「スメクタイト」との組成物は、単一の天然鉱物とはいえず、また、「稚内層珪藻土」と「スメクタイト」との組成物から、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分」とする単一の「天然鉱物」を当業者が容易に導き出せるものでないから、請求人の主張は採用できない。

3-2.本件発明2について
(一)本件発明2と甲1発明1とを対比すると、「2.無効理由1の検討」の「2-2.本件発明2について」で検討したとおり、両者は、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を、固化してなることを特徴とする調湿建材」で一致し、本件発明2の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲1発明1の天然鉱物が「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」である点(相違点B)、及び、本件発明2が固化する前に「成形し」ているのに対して、甲1発明1では、「成形」することについて明示されていない点(相違点C)で相違している。

(二)そこで上記相違点について検討すると、相違点Cについては、甲第1号証の記載事項(1a)に「稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれとその他のセラミックス原料と配合して任意の形状に成形し、焼成することを特徴とする稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法。」と記載され、調湿機能材料を特定形状にするために成形することが示されているから、甲1発明1において、固化する前に、「成形」することは、当業者であれば容易になし得ることである。

(三)しかしながら、上記相違点Bについて検討すると、相違点Bは、「3-1.本件発明1について」で検討した「相違点A」と同じ相違点であるから、「3-1.本件発明1について」の「(二)」及び「(三)」で検討したとおり、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明、並びに、参考資料1乃至参考資料9から、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との発明特定事項を当業者が容易に導き出せない。

(四)したがって、本件発明2は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明を寄せ集めても、当業者が容易に発明できたものではないので、特許法第29条2項の規定に違反しない。

3-3.本件発明3について
(一)本件発明3と甲1発明2とを対比すると、「2.無効理由1の検討」の「2-3.本件発明3について」で検討したとおり、両者は、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を成形した後、600?900℃で低温焼成することを特徴とする調湿建材」で一致し、本件発明3の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲1発明2の天然鉱物が「クリストバライトを主成分とした天然無機資源である稚内層珪藻土」である点(相違点D)で相違している。

(二)そこで、上記相違点Dについて検討すると、相違点Dは、「3-1.本件発明1について」で検討した「相違点A」と同じ相違点であるから、「3-1.本件発明1について」の「(二)」及び「(三)」で検討したとおり、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明、並びに、参考資料1乃至参考資料9から、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」との発明特定事項を当業者が容易に導き出せない。

(三)したがって、本件発明3は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明を寄せ集めても、当業者が容易に発明できたものではないので、特許法第29条2項の規定に違反しない。

4.無効理由3の検討
4-1.本件発明1について
(一)甲第6号証には、記載事項(6a)に「荒壁土(練り土)」として、「田圃の土や自分の敷地を掘った土など、手近なものを使用していた」ことが記載されている。また、記載事項(6b)に「上質の粘土(田圃の底土や山土のようなもの)に二?三寸の切藁を練り込」むことが記載されている。これら記載事項を整理すると、甲第6号証には、「田圃の土や自分の敷地を掘った土や、これら土に二?三寸の切藁を練り込んだ荒壁土」が記載されているといえる。
甲第6号証は、本件特許の出願日より後の平成13年2月20日に頒布されたものであるが、甲第6号証に記載を参酌すると、「田圃の土や自分の敷地を掘った土や、これら土に二?三寸の切藁を練り込んだ荒壁土からなる荒壁」の発明(以下、「甲6発明」という。)は、本件特許の出願前に公然に実施されていたものと認められる。
そこで、本件発明1と甲6発明とを対比すると、甲6発明の「荒壁」と本件発明1の「調湿建材」とは、「建材」である点で共通し、また、甲6発明の「田圃の土や自分の敷地を掘った土」と、本件発明1の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」とは、「天然鉱物」である点で共通する。
したがって、両者は、「天然鉱物を固化してなることを特徴とする建材」で一致し、本件発明1の建材が「調湿建材」であるのに対して、甲6発明の建材が「荒壁」である点(相違点E)、及び、本件発明1の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲6発明の天然鉱物が「田圃の土や自分の敷地を掘った土」である点(相違点F)で相違している。

(二)そこで上記相違点のうち、相違点Fについて検討する。
上記「2.無効理由1の検討」の「2-1.本件発明1について」の「(二)」で検討したとおり、参考文献1、2、3及び9の記載事項を参酌すると、甲第1号証には、「オパーリンシリカとスメクタイトを含有する天然鉱物」に相当する「稚内層珪藻土」が記載されているといえる。
また、参考資料6には、記載事項(13a)及び(13b)によれば、「オパーリンシリカとモンモリロナイトを含有する飯塚層珪藻土」が記載されているといえ、そして、「モンモリロナイト」について、甲第5号証の記載事項(5b)の「スメクタイトが、モンモリロナイト、ヘクトライト及びサポナイトからなる群から選択された少なくとも1種を主成分とする粘土鉱物である」との記載、及び、参考資料1の記載事項(8d)の「2八面体型スメクタイトの化学式は,・・・で表され,モンモリロナイト・・・がこれに属する。」との記載から、「モンモリロナイト」は「スメクタイト」に属するといえるから、参考資料6には、「オパーリンシリカとスメクタイトを含有する飯塚層珪藻土」が記載されているといえる。
以上のことから、「オパーリンシリカとスメクタイトを含有する天然鉱物」は、「珪藻土」として公知のものといえる。
しかしながら、「稚内層珪藻土」や「飯塚層珪藻土」は、「スメクタイト」を含有しているが、これら「天然鉱物」に自硬性を与える有意な量が含まれているといえないから、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるとはいえない。しかも、甲第1号証乃至甲第5号証並びに参考資料1乃至9の記載をみても、「稚内層珪藻土」や「飯塚層珪藻土」を「荒壁土」として用いることは記載も示唆もなされていない。
したがって、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を「荒壁土」として用いられていたとすることはできない。

(三)してみると、本件発明1は、相違点Eについて検討するまでもなく、甲第6号証の記載から確認される公然実施された発明といえないので、特許法第29条第1項第2号には該当しない。

(四)この点に関して、請求人は、甲第6号証に記載された「荒壁土」として、参考文献6に記載されている飯塚泥岩層が用いられている蓋然性が高く、本件発明1に係る特許発明が、古来より実施されていた蓋然性が極めて高いこと(請求人の主張(カ)参照)を主張している。
しかしながら、上記(二)で検討したように、飯塚泥岩が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるとはいえないし、また、飯塚泥岩を「荒壁土」として用いることも示されていないから、本件発明1が、古来より実施されていたとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

4-2.本件発明2について
(一)本件発明2と甲6発明とを対比すると、甲6発明の「荒壁」と本件発明1の「調湿建材」とは、「建材」である点で共通し、また、甲6発明の「田圃の土や自分の敷地を掘った土や、これら土に二?三寸の切藁を練り込んだ荒壁土」と、本件発明2の「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体」とは、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体」である点で共通する。
したがって、両者は、「天然鉱物の単独粉体又はこれと他の原料とを配合した混合粉体を、固化してなることを特徴とする建材」で一致し、本件発明2の建材が「調湿建材」であるのに対して、甲6発明の建材が「荒壁」である点(相違点G)、及び、本件発明2の天然鉱物が「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」であるのに対して、甲6発明の天然鉱物が「田圃の土や自分の敷地を掘った土」である点(相違点H)で相違している。

(二)そこで上記相違点について検討すると、相違点Hは、「4-1.本件発明1について」で検討した「相違点F」と同じ相違点であるから、「4-1.本件発明1について」の「(二)」で検討したとおり、甲6発明の「荒壁土」として、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」を用いられていたとすることはできない。

(三)してみると、本件発明2は、相違点Gについて検討するまでもなく、甲第6号証の記載から確認される公然実施された発明といえないので、特許法第29条第1項第2号には該当しない。

5.無効理由4の検討
(一)本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者が本件発明1乃至3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているかについて検討する。
本件発明1乃至3の発明特定事項である「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」に関しては、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例には、「粒径1mm以下に粉砕したオパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とし、調湿性と自硬性とを備えた天然鉱物(浅茅野層、ポンニタチナイ層、17線川層等の地層に広く分布している:以下、OPS粉体と略称する)」(段落【0015】)と記載され、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」が「浅茅野層」、「ポンニタチナイ層」、「17線川層」から得られる天然鉱物であることが記載されている。
そして、上記天然鉱物である「OPS粉体」を用いて、本件発明1乃至3の調湿建材を作製することが、実施例1乃至実施例6に記載されている。
以上のことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1乃至3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(二)請求人は、「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」には多様な種類と特性の天然鉱物を含むものであり、当業者が、本件発明1乃至3の「調湿建材」を得るためには、多様な種類及び特性の天然鉱物から試行錯誤しなければならないことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないこと(請求人の主張(キ)参照)を主張している。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記(一)で検討したとおり、本件発明1乃至3の「オパーリンシリカとスメクタイトとを主成分とする天然鉱物」について産地が特定されているから、当業者が本件発明1乃至3を実施するにあたって、過度の試行錯誤を要するものといえず、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1乃至3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。

6.無効理由1?4以外の主張について
請求人は、口頭審理陳述要領書において、「本件発明1乃至3は、甲第2号証に記載の発明と同一であり、特許を受けることができない」ことを主張(請求人の主張(ク)参照)し、また、新たな証拠として甲第7号証を提示すると共に、「本件発明1は、甲第7号証に記載されている発明と同一であり、特許を受けることができない」ことを主張している(請求人の主張(ケ)参照)。
しかしながら、これら主張は、審判請求書の請求の理由に記載された主張の要旨を変更するものであり、特許法第131条の2第1項に規定されているように、これら主張は認められるものでないから、口頭審理調書に記載したとおり、これら主張及び甲第7号証の提出は認められない。

VII.結び
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1乃至3に係る特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-10 
結審通知日 2008-01-16 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願2000-148392(P2000-148392)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (C04B)
P 1 113・ 112- Y (C04B)
P 1 113・ 536- Y (C04B)
P 1 113・ 113- Y (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武重 竜男  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 斎藤 克也
宮澤 尚之
登録日 2005-03-25 
登録番号 特許第3659867号(P3659867)
発明の名称 調湿建材  
代理人 梶原 克哲  
代理人 鈴木 正次  
代理人 近藤 利英子  
代理人 涌井 謙一  
代理人 鈴木 正次  
代理人 山本 典弘  
代理人 山本 典弘  
代理人 涌井 謙一  
代理人 吉田 勝廣  
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