• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1175069
審判番号 不服2007-24282  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-04 
確定日 2008-03-17 
事件の表示 特願2006-275126「離床検知通報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-167624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年10月6日(優先権主張 平成17年10月7日、平成17年11月24日)の出願であって、平成19年2月14日に特許請求の範囲及び明細書についての補正がされたものの、同年7月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年9月21日に特許請求の範囲及び明細書についての補正がされたものである。

2.平成19年9月21日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲における請求項1及び2のうちの請求項1は、
「ベッド上の患者の在床・離床を検知する離床検知通報システムであって、
同一の周波数でかつ時分割で発信し受信し、ベッドの横方向に所定の間隔をもって配設され、それぞれ一部重なり合ってカバーできるベッドの複数の領域を分割検知する複数の超音波送信器と1又は複数の超音波受信器とを有し、ベッド上での患者の状態を検知する超音波レーダと、
前記超音波送信器からパルス波状の超音波を時分割で送信させるパルス波時分割発信装置と、
前記超音波受信器からの信号を受信する受信装置と、
前記受信装置からの信号の反射波のピーク値の大きさと時刻とにより、ベッド上での患者の動き及び患者と前記超音波レーダとの距離を検知するとともに、前記超音波送信器と前記超音波受信器との組み合わせのうち、どの組み合わせ反射波が検出されたかにより、前記ベッドの複数の領域のうち患者の起床領域を検知する検知装置と、
前記検知装置の検知結果から患者の在床・離床又はベッドからの落下を判断する判断部と、
前記判断部により患者の離床又はベッドからの落下が確認されたら警報信号を送信(注:「受信」は誤記と認める。)する通報装置と、
前記警報信号(注:「通報信号」は誤記と認める。)を受けて警報を発する警報装置とを備える離床検知通報システム。」
と補正された。

上記補正は、実質的に、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「超音波レーダ」の「複数の超音波送信器と1又は複数の超音波受信器と」が、「ベッドの横方向に所定の間隔をもって配設され、それぞれ一部重なり合ってカバーできるベッドの複数の領域を分割検知」するものであることを特定し、また、「検知装置」が「患者の起床領域」をベッドの「複数の領域のうち」から検知することを特定したものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-327549号公報(以下「引用例」という。)には、「動態検出システム、及び動態検出装置」と題して、図面と共に、以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】ベッド上の被介護者の動態を非接触検出する動態検出システム、及び動態検出装置に関する。」

・「【0043】・・・なお、長座位検出手段は、光センサに限らず例えば超音波センサや熱線センサであってもよい。」

・「【0059】まず、図1を参照して動態検出装置10の設置構成を説明する。図1は、本発明に係る動態検出装置10をベッド2に適用した例を示す外観図である。動態検出装置10は、2個の上部光センサ11,11、2枚の感圧シート12,12、下部光センサ13より構成される。
【0060】図1に示す様に、ベッド2のヘッドボード2cには、マット側側面の上端中央部2箇所に夫々独立した上部光センサ11,11が、ベッド2の長手方向に投光可能な様に配設される。また、台座2bには、平面上の両側縁端部にテープ状の2枚の感圧シート12,12が、ベッド2の長手方向に沿って敷設される。そして、台座2bの上層部には台座2bと略同形のマット2aが載置される。更に、ヘッドボード2cに接触する壁面におけるベッド2の角部近傍2箇所には、下部光センサ13,13がベッド2の長手方向に投光可能な様に設置される。」

・「【0062】上部光センサ11は、微弱な光線L1を常時投光する反射型の人感センサである。上部光センサ11は、内部に投光部11aと受光部11bを有する。投光部11aはセンサ側より該センサの設置面に対して垂直方向に光線L1を投射し、受光部11bはその反射光を受信して人体までの距離を測定する。ここで、人体が所定の距離内に存在する場合、伝送装置20へ検出信号を送信する。なお、各々の上部光センサ11が相互干渉しない様に、外部トリガ信号の出力タイミングは可変に設定されている。」

・「【0066】伝送装置20は、制御部21、入力部22、記憶部23、伝送部24より構成され、各部はバスで接続される。制御部21は、伝送装置20の各部を統一的に制御し、動態検出装置10から反射光として検出されたセンサ信号は、入力部22へ入力されると、上部光センサ11、感圧シート12、下部光センサ13の組み合わせで被介護者の動態を判定する。
【0067】次に、制御部21は、該判定結果に基づいて動態信号を生成する。すなわち、何れの検出信号も受信しない場合、「就寝姿勢(横になった姿勢)」の動態信号を生成し、上部光センサ11の検出信号のみ受信した場合、「長座位(上体のみ起きた姿勢)」の動態信号を生成する。また、上部光センサ11の検出信号の解除後、感圧シート12、下部光センサ13の検出信号を受信した場合、「端座位(ベッド端に座った姿勢)」の動態信号を生成し、その後、感圧シート12の検出信号が解除された場合、「立位(ベッド脇に立った姿勢)」の動態信号を生成する。更に、その後、下部光センサ13の検出信号が解除された場合、「歩行開始」の動態信号を生成する。」

・「【0070】出力部30は、例えばPHS(Personal Handyphone System)31、ポケベル32、ナースコール33、テレメータ34等である。」

・「【0073】ナースコール33は、病院や老人養護施設内のナースステーションに設置される看護婦への通報装置である。ナースコール33は、表示ランプを有し、伝送部24から伝送される動態信号に基づいてLED(Light-Emitting Diode)32aを点灯または点滅させる。すなわち、LED32aは、例えば伝送された動態信号が「就寝姿勢」の場合は緑色、「長座位」の場合は黄色、「端座位」の場合は赤色を点灯させ、「立位」の場合は赤色を点滅させ、「歩行開始」の場合は赤色を素早く点滅させる。また、スピーカ32bが鳴動するメロディやチャイム等の警報音の種類によって各動態を通知する構成としてもよい。」

・「【0076】次に、図3(b)は、被介護者の長座位時における動態検出動作を説明する斜視図である。図3(b)に示す様に、被介護者が長座位に移行した場合、上部光センサ11,11の投射する2本の光線L1,L1の少なくとも一方が被介護者を感知する。このため、上部光センサ11は伝送装置20へ検出信号を送信する。更に、5秒後、伝送装置20が上部光センサ11から再度検出信号を受信した時、伝送装置20は、該検出信号を受信し、「長座位」の動態信号を出力部30へ送信する。」

・図1には、2つの上部光センサ11,11が、ベッドの横方向に所定の間隔をもって配設されていることが示されている。

これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例には、
「ベッド上の被介護者の動態を検出する動態検出システムであって、
ベッドの横方向に所定の間隔をもって配設され、ベッド上での被介護者の動態を検出する2つの超音波センサと、
前記超音波センサにより、ベッド上での被介護者の動態及び被介護者と前記超音波センサとの距離を検出する動態検出装置と、
前記動態検出装置の検出信号から被介護者の動態を判定する制御部と、
前記制御部により被介護者の動態信号を伝送する伝送部と、
前記動態信号を受けて警報音を発する出力部とを備える動態検出システム。」
という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定することができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「被介護者の動態を検出する動態検出システム」は、被介護者に患者が含まれ得ること及び被介護者(患者)の動態に在床・離床が含まれ得ること並びに引用発明が動態を伝送するものであることがいずれも明らかであるから、本願補正発明の「患者の在床・離床を検知する離床検知通報システム」に相当し、引用発明の「被介護者の動態を検出する2つの超音波センサ」は本願補正発明の「患者の状態を検知する超音波レーダ」に相当する。
また、本願補正発明の「超音波送信器からパルス波状の超音波を時分割で送信させるパルス波時分割発信装置と、超音波受信器からの信号を受信する受信装置と、前記受信装置からの信号の反射波のピーク値の大きさと時刻とにより、ベッド上での患者の動き及び患者と超音波レーダとの距離を検知する」ことと、引用発明の「超音波センサにより、ベッド上での被介護者の動態及び被介護者と前記超音波センサとの距離を検出する」こととは、「超音波レーダにより、ベッド上での患者の動き及び患者と超音波レーダとの距離を検知する」という概念で共通する。
そして、引用発明の「動態検出装置」は本願補正発明の「検知装置」に相当し、以下同様に、「検出信号」は「検知結果」に、「被介護者の動態を判定する制御部」は「患者の在床・離床又はベッドからの落下を判断する判断部」に、それぞれ相当する。
さらに、引用発明の「被介護者の動態信号を伝送する伝送部」及び「動態信号を受けて警報音を発する出力部」は、本願補正発明の「患者の離床又はベッドからの落下が確認されたら警報信号を送信する通報装置」及び「警報信号を受けて警報を発する警報装置」にそれぞれ相当する。

よって、両者は、
「ベッド上の患者の在床・離床を検知する離床検知通報システムであって、
ベッドの横方向に所定の間隔をもって配設され、ベッド上での患者の状態を検知する超音波レーダと、
前記超音波レーダにより、ベッド上での患者の動き及び患者と超音波レーダとの距離を検知する検知装置と、
前記検知装置の検知結果から患者の在床・離床又はベッドからの落下を判断する判断部と、
前記判断部により患者の離床又はベッドからの落下が確認されたら警報信号を送信する通報装置と、
前記警報信号を受けて警報を発する警報装置とを備える離床検知通報システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点1
超音波レーダの具体的な構成として、本願補正発明では、「同一の周波数でかつ時分割で発信し受信」するものであり、「それぞれ一部重なり合ってカバーできるベッドの複数の領域を分割検知する複数の超音波送信器と1又は複数の超音波受信器とを有」するものであると特定されているのに対し、引用発明ではかかる特定がなされていない点。

・相違点2
超音波レーダに関し、本願補正発明では「超音波送信器からパルス波状の超音波を時分割で送信させるパルス波時分割発信装置と、超音波受信器からの信号を受信する受信装置」という構成を具備するのに対し、引用発明ではかかる構成が明確にされていない点。

・相違点3
検知装置にてベッド上での患者の動き及び患者と超音波レーダとの距離を検知するのに際し、本願補正発明では「受信装置からの信号の反射波のピーク値の大きさと時刻」を用いるのに対し、引用発明では何を用いるのか明確にされていない点。

・相違点4
検知装置にて、本願補正発明では「超音波送信器と超音波受信器との組み合わせのうち、どの組み合わせ反射波が検出されたかにより、ベッドの複数の領域のうち患者の起床領域を検知する」構成を備えるのに対し、引用発明ではかかる構成を備えていない点。

(4)判断
・相違点1について
超音波レーダにおいて、複数の超音波送信器及び複数の超音波受信器を備え、検知領域が重複する場合の干渉を防ぐために、同一の周波数の超音波を用いて時分割で発受信を行うことは周知の技術(例えば、実願平5-6099号(実開平6-59162号)のCD-ROM【0002】?【0006】及び【0014】?【0016】を参照)である。
また、超音波センサを、複数の超音波送信器と1又は複数の超音波受信器とで構成することも周知の技術(例えば、特開昭59-44676号公報2ページ右下欄14?16行を参照)である。
そして、引用例【0062】に「なお、各々の上部光センサ11が相互干渉しない様に、外部トリガ信号の出力タイミングは可変に設定されている。」と記載されていることから、引用発明における超音波レーダの具体的な構成を、超音波が相互に干渉しないようなものとして構成することに格別の困難性はない。
そうすると、引用発明に周知の技術を採用して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
超音波レーダにおいて、送信装置からのパルス状の超音波を超音波送信器で送信し、送信した超音波の反射波を超音波受信器で受信して受信装置に送ることは周知の技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-199122号公報【0004】及び【0009】?【0015】等を参照)である。
また、「時分割」についても、上記相違点1についてで述べたとおり、周知の技術である。
そうすると、引用発明に周知の技術を採用して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

・相違点3について
超音波レーダにおいて、超音波の送受信の時間差で距離を測定することや、かかる測定の際にピーク値の大きさで受信波(反射波)の検出を行うことは周知の技術(例えば、特開2004-29974号公報【0066】や、特開2004-45188号公報【0058】を参照)である。
そうすると、引用発明に周知の技術を採用して、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

・相違点4について
超音波レーダにおいて、複数の超音波送受信器の検出領域を重複させ、該複数の超音波送受信器による検出の組合せで検出対象がどの検出領域にいるかを検出することは周知の技術(例えば、特開昭59-74905号公報2ページ右下欄7行?3ページ左上欄8行並びに第4図及び第5図を参照)である。
そして、引用発明が超音波レーダを用いたものであるうえ、上記(2)で摘記した引用例【0066】には各種センサの組合せで動態検出することが示唆されていることに照らせば、引用発明に周知の技術を採用して、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の全体構成から奏される効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明については、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年2月14日付け手続補正書における特許請求の範囲における請求項1及び2のうちの請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ベッド上の患者の在床・離床を検知する離床検知通報システムであって、
同一の周波数でかつ時分割で発信し受信する、複数の超音波送信器と1又は複数の超音波受信器とを有し、ベッド上での患者の状態を検知する超音波レーダと、
前記超音波送信器からパルス波状の超音波を時分割で送信させるパルス波時分割発信装置と、
前記超音波受信器からの信号を受信する受信装置と、
前記受信装置からの信号の反射波のピーク値の大きさと時刻とにより、ベッド上での患者の動き及び患者と前記超音波レーダとの距離を検知するとともに、前記超音波送信器と前記超音波受信器との組み合わせのうちどの組み合わせで反射波が検出されたかにより、ベッド上での患者の起床領域を検知する検知装置と、
前記検知装置の検知結果から患者の在床・離床又はベッドからの落下を判断する判断部と、
前記判断部により患者の離床又はベッドからの落下が確認されたら警報信号を送信する通報装置と、
前記警報信号を受けて警報を発する警報装置とを備える離床検知通報システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「超音波レーダ」の「複数の超音波送信器と1又は複数の超音波受信器と」が、「ベッドの横方向に所定の間隔をもって配設され、それぞれ一部重なり合ってカバーできるベッドの複数の領域を分割検知」するものであるという特定を省き、また、「検知装置」が「患者の起床領域」をベッドの「複数の領域のうち」から検知するとの特定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、特許法49条2号の規定に該当し拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-27 
結審通知日 2007-12-18 
審決日 2008-01-04 
出願番号 特願2006-275126(P2006-275126)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 剛史  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 谷口 耕之助
本庄 亮太郎
発明の名称 離床検知通報システム  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ